【実施例1】
【0030】
図4は、実施例1に係る半導体装置の断面図の例である。
図4を参照して、SiC基板である基板10上に、AlNからなり、膜厚が20nmのバッファ層12が設けられている。バッファ層12上に、膜厚が1000nmのGaN電子走行層14が設けられている。GaN電子走行層14上に、膜厚が0.5nm〜1.25nmのAlNスペーサ層16が設けられている。AlNスペーサ層16上に、膜厚が6nm、In組成比が17%で、GaN電子走行層14に2次元電子ガス20を生成するInAlN電子供給層18が設けられている。InAlN電子供給層18上に、膜厚が5nmのGaN層22が設けられている。GaN層22上に、ゲート電極24と、ゲート電極24を挟むソース電極26およびドレイン電極28と、が設けられている。ゲート電極24は、例えばGaN層22側からNi(ニッケル)、Au(金)が順次積層された2層構造をしている。ソース電極26およびドレイン電極28は、例えばGaN層22側からTi(チタン)、Al(アルミニウム)が順次積層された2層構造をしている。GaN層22上であって、ゲート電極24、ソース電極26、およびドレイン電極28が設けられていない領域には、例えばSiN(窒化シリコン)からなる保護膜30が設けられている。
【0031】
バッファ層12からInAlN電子供給層18は、
図1で説明した成長により形成することができる。GaN層22は、MOCVD法を用いて、以下の成長条件にて、InAlN電子供給層18上に成長させることができる。
原料ガス:TMG、NH
3
成長温度:1000℃
膜厚 :5nm
【0032】
ゲート電極24、ソース電極26、ドレイン電極28、および保護膜30は以下の方法により形成することができる。まず、GaN層22上に、例えば蒸着法およびリフトオフ法を用いて、ゲート電極24と、ゲート電極24を挟むソース電極26およびドレイン電極28と、を形成する。次いで、例えばプラズマCVD法(プラズマ化学気相成長法)を用いて、ゲート電極24、ソース電極26、およびドレイン電極28が形成された領域を除いたGaN層22上に、保護膜30を形成する。
【0033】
以上説明してきたように、実施例1によれば、基板10上にGaN電子走行層14が設けられ、GaN電子走行層14上にAlNスペーサ層16が設けられ、AlNスペーサ層16上にInAlN電子供給層18が設けられ、InAlN電子供給層18上にゲート電極24と、ゲート電極24を挟むソース電極26およびドレイン電極28とが設けられている。例えば、AlNスペーサ層16は、GaN電子走行層14上に接して設けられ、InAlN電子供給層18は、AlNスペーサ層16上に接して設けられている。そして、AlNスペーサ層16の膜厚は0.5nm以上1.25nm以下である。
図3で説明したように、InAlN電子供給層18の表面平坦性の劣化は、2次元電子ガスの移動度の低下をもたらすことから、高周波数特性の劣化を引き起こしてしまう。しかしながら、実施例1に係る半導体装置では、AlNスペーサ層16の膜厚を0.5nm以上1.25nm以下としているため、
図3のように、InAlN電子供給層18の表面平坦性を良好にすることができ、また、
図2のように、2次元電子ガスのシート抵抗を低くすることができる。このため、高周波数動作が可能となる。
【0034】
図3のように、AlNスペーサ層16の膜厚が薄いと、InAlN電子供給層18の表面のHaze値は小さく、良好な表面平坦性を得ることができる。このことから、より良好な表面平坦性を得るには、AlNスペーサ層16の膜厚は、1.0nm以下の場合が好ましく、0.8nm以下の場合がより好ましい。したがって、高周波数動作を可能とすべく、2次元電子ガスの移動度の低下をより抑えるためには、AlNスペーサ層16の膜厚は、0.5nm以上1.0nm以下の場合が好ましく、0.5nm以上0.8nm以下の場合がより好ましい。
【0035】
図3のように、AlNスペーサ層16の膜厚を0.5nm以上1.25nm以下とした場合、InAlN電子供給層18の表面におけるHaze値は120ppm以下にすることができる。また、AlNスペーサ層16の膜厚を0.5nm以上0.8nm以下とした場合、InAlN電子供給層18の表面におけるHaze値は50ppm以下にすることができる。
【0036】
図2のように、2次元電子ガスのシート抵抗は、AlNスペーサ層16の膜厚が0.5nmまでは急激に低下し、その後、1.0nmまでは徐々に低下する。このことから、AlNスペーサ層16の膜厚は、0.6nm以上の場合が好ましく、0.8nm以上の場合がさらに好ましい。したがって、高周波数動作を可能とするためには、AlNスペーサ層16の膜厚は、0.6nm以上1.25nm以下の場合が好ましく、0.8nm以上1.25nm以下の場合がより好ましい。
【0037】
図4のように、InAlN電子供給層18上にGaN層22が設けられている。例えば、GaN層22は、InAlN電子供給層18上に接して設けられている。InAlN電子供給層18は、Alを含んでいるため、大気に曝されると表面酸化が進み易く、酸化アルミニウムなどが形成され、大きな不良要因となってしまう。したがって、InAlN電子供給層18上にGaN層22が設けられていない場合でもよいが、InAlN電子供給層18の表面酸化を抑制する点からは、GaN層22が設けられている場合が好ましい。
【0038】
図4のように、GaN層22に凹部を設けず、GaN層22の上面にゲート電極24、ソース電極26、およびドレイン電極28を設ける場合を例に示したが、これに限られるわけではない。例えば、GaN層22に凹部を設けて、この凹部にゲート電極26を設けたゲートリセス構造の場合でもよく、またオーミックリセス構造の場合でもよい。
【0039】
InAlN電子供給層18のIn組成比は17%である場合を例に示したが、これに限られない。In組成比は、12%以上35%以下の範囲内であることが好ましい。In組成比が12%より小さいまたは35%より大きい場合は、a軸方向の格子歪みが大きくクラックが生じてしまうためである。また、In組成比が18%以下であると、2次元電子ガスのシート抵抗が下がっていく傾向にあるから、In組成比は、12%以上18%以下であることがより好ましい。さらに、In組成比が17%以上18%以下であることがさらに好ましい。In組成比が17%以上18%以下である場合は、InAlNはGaNと格子整合するので格子歪みが抑制されるためである。
【0040】
GaN層22は、i型の場合でもn型の場合でもよい。n型の場合は、表面電荷が安定し易く、また高温でn型のGaNを成長することでドーパントの活性化率が上がり、より表面電荷が安定されるため、デバイス全体のバンド構造が安定化し不良が低減する。なお、nドーパントとしてはSiH
4(シラン)を用いることができる。
【0041】
基板10はSiC基板である場合を例に示したが、その他に、Si基板、GaN基板、サファイア基板、Ga
2O
3基板などを用いることができる。バッファ層12はAlNである場合を例に示したが、その他に、InN、InGaN、InAlN、AlInGaNなどの窒化物半導体を用いることができる。また、成長に用いる原料は、上述した原料の他に、Al原料としてTEA(トリエチルアルミニウム)、Ga原料としてTEG(トリエチルガリウム)を用いることができる。また、電子走行層は、GaN電子走行層14である場合を例に示したが、この場合に限られず、B
αAl
βGa
γIn
1−α−β−γNからなる窒化物半導体であって、電子供給層のIn
XAl
1−XNとa軸格子定数が合うように下記の式を満たす材料を用いることができる。
2.55α+3.11β+3.19γ+3.55(1−α−β−γ)=3.55X+3.11(1−X)
【0042】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。