(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776414
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/00 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
B23Q1/00 S
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-165395(P2011-165395)
(22)【出願日】2011年7月28日
(65)【公開番号】特開2013-27952(P2013-27952A)
(43)【公開日】2013年2月7日
【審査請求日】2014年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(72)【発明者】
【氏名】神鳥 彌
【審査官】
小川 真
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−228057(JP,A)
【文献】
実開昭61−154635(JP,U)
【文献】
特開2006−291982(JP,A)
【文献】
実開平04−032832(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/00
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に設置されるベースと、
このベースの上面に形成された竪穴に挿入され、その先端部が前記竪穴の底面と当接し、先端部と頭部との間にねじ部分を有する高さ調整用ボルトと、
上部に加工機器が設置され、かつ前記高さ調整用ボルトの前記ねじ部分と螺合する高さ調整用ねじ孔を有し、この高さ調整用ねじ孔に螺合する前記ねじ部分の位置を変更することで前記ベースに対して高さ位置が調整自在なベッドと、
前記ベースと前記ベッドとを、これらの高さ方向の相対位置関係を維持するために互いに連結する、前記高さ調整用ボルトとは別部品からなる連結手段と、
を備え、
前記連結手段は、前記高さ調整用ボルトを用いた前記ベースに対する前記ベッドの高さ調整が完了した状態で、前記ベースおよび前記ベッドに対して、互いの係止作用または摩擦作用によりそれぞれ連結されることで、前記ベースと前記ベッドとを、これらの高さ方向の相対位置関係を維持するために互いに連結するものであり、
前記連結手段は、前記ベースの外周面を両側から挟み付けて前記ベースに固定される一対のブラケットを備え、このブラケットは、前記ベースの外周面に接触する部分である挟み付け部と、この挟み付け部から上方に立ち上がる立ち上がり部と、この立ち上がり部の上部から内向きに突出し、前記ベッドに形成された孔または凹部に係合する突起部とを有する工作機械。
【請求項2】
床面に設置されるベースと、
このベースの上面に形成された竪穴に挿入され、その先端部が前記竪穴の底面と当接し、先端部と頭部との間にねじ部分を有する高さ調整用ボルトと、
上部に加工機器が設置され、かつ前記高さ調整用ボルトの前記ねじ部分と螺合する高さ調整用ねじ孔を有し、この高さ調整用ねじ孔に螺合する前記ねじ部分の位置を変更することで前記ベースに対して高さ位置が調整自在なベッドと、
前記ベースと前記ベッドとを、これらの高さ方向の相対位置関係を維持するために互いに連結する、前記高さ調整用ボルトとは別部品からなる連結手段と、
を備え、
前記連結手段は、前記ベースの下側を通して設けられて、互いに周方向の離れた位置に2箇所以上の紐状体端結合部を有する固定補助具と、中間部が前記高さ調整用ボルトにおける頭部と前記高さ調整用ねじ孔に螺合する前記ねじ部分との間の部分に引っ掛けられ、両端部が前記2箇所以上の紐状体端結合部にそれぞれ結合された固定用紐状体とを備える工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械、特に切削加工や研削加工を行う機械加工用の工作機械における地震対策技術に関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤等の工作機械では、ベッドの水平度の調整や、ベッドの上部に設置される加工機器の高さ調整のために、床面に設置したブロック状のベースに対して、ベッドの底面四隅部を高さ調整用ボルトにより高さ調整可能に支持することが行われている。具体的には、例えば
図11のように、前記高さ調整用ボルト30は、そのねじ部分32がベッド1に設けられた上下に貫通する高さ調整用ねじ孔16に螺合し、その先端がベース20の上面に形成された竪穴21の底面に当接しており、高さ調整用ボルト30における高さ調整用ねじ孔16に螺合するねじ部分32の位置を変更することで、ベース20に対するベッド1の底面四隅部の高さ位置を調整する。
【0003】
また、パンチプレス等のプレス機械に限定すると、
図12のように、高さ調整用ボルト30の先端部が挿入されるベース20の竪穴を雌ねじが切られたねじ孔70とし、このねじ孔70に高さ調整用ボルト30の先端部を螺合させることで、ベース20とベッド1とを一体化することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−23647号公報
【特許文献2】特開2010−228057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図11の構成によると、高さ調整用ボルト30の先端部がベース20の竪穴21に挿入されており、ベース20とベッド1の水平方向の位置ずれが規制されている。そのため、地震発生時の横揺れに効果を発揮する。しかし、強い縦揺れの場合、ベース20の竪穴21から高さ調整用ボルト30が抜けて、工作機械がベースから落下する懸念がある。
【0006】
図12のように、ベース20とベッド1とを一体化すれば、ベース20からの工作機械の落下を防止できる。しかし、高さ調整用ボルト30をベッド1の高さ調整用ねじ孔16とベース20のねじ孔70の両方に螺合させるので、ベース20からの振動で高さ調整ボルト30が回り易い。そのため、回り止めのために複数のナット71を取付ける必要があり、組立や調製が複雑であった。また、既設の工作機械には適用できない。
【0007】
さらに、ベッド1をアンカーボルトで床面に固定することも考えられるが、それは工事が大掛かりとなる上に、工作機械を撤去した後に床面にアンカーボルトが残るので、なるべく避けるのが望ましい。
【0008】
この発明の目的は、床面に設置されたベース上にベッドが載置された工作機械において、簡単な施工で、地震発生時等におけるベースからの落下を防止できるようにすることである。
この発明の他の目的は、ベースとベッドを互いに連結する連結手段を、ベースやベッドに特別な加工せずに用いることができる構成とすることである。
この発明のさらに他の目的は、既設の工作機械にも容易に後付けできる連結手段とすることである。
この発明のさらに他の目的は、ベースとベッドとが鉛直軸回りに相対回転することを防止できる連結手段とすることである。
この発明のさらに他の目的は、施工が容易な連結手段とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の工作機械は、床面に設置されるベースと、このベースの上面に形成された竪穴に挿入され、その先端部が前記竪穴の底面と当接し、先端部と頭部との間にねじ部分を有する高さ調整用ボルトと、上部に加工機器が設置され、かつ前記高さ調整用ボルトの前記ねじ部分と螺合する高さ調整用ねじ孔を有し、この高さ調整用ねじ孔に螺合する前記ねじ部分の位置を変更することで前記ベースに対して高さ位置が調整自在なベッドと、前記ベースと前記ベッドとを、これらの高さ方向の相対位置関係を維持するために互いに連結する、前記高さ調整用ボルトとは別部品からなる連結手段とを備える。
【0010】
この構成によると、連結手段により、ベースとベッドとが高さ方向の相対位置関係を維持するように互いに連結される。そのため、地震発生時における上下方向の強い揺れに対しても、ベースからベッドが外れることがなく、ベースからの工作機械の落下を防止できる。連結手段は高さ調整用ボルトとは別部材からなるため、高さ調整用ボルト等に加工を施す必要がなく、既設の工作機械についても連結手段を容易に後付けすることができる。
【0011】
前記連結手段は、前記高さ調整用ボルトを用いた前記ベースに対する前記ベッドの高さ調整が完了した状態で、前記ベースおよび前記ベッドに対して、互いの係止作用または摩擦作用によりそれぞれ連結されることで、前記ベースと前記ベッドとを、これらの高さ方向の相対位置関係を維持するために互いに連結するもので
ある。
この構成であると、連結手段は、ベースおよびベッドに対して、互いの係止作用または摩擦作用によりそれぞれ連結される。そのため、ベースやベッドに特別な加工する必要がない。
【0012】
具体的に、前記連結手段として、以下の構成を採用できる。
第1の構成からなる連結手段は、前記ベースの外周面を両側から挟み付けて前記ベースに固定される一対のブラケットを備え、このブラケットは、前記ベースの外周面に接触する部分である挟み付け部と、この挟み付け部から上方に立ち上がる立ち上がり部と、この立ち上がり部の上部から内向きに突出し、前記ベッドに形成された孔または凹部に係合する突起部とを有する。
この構成の場合、ブラケットの挟み付け部とベースの外周面との摩擦作用により、ブラケットとベースとが互いに連結され、ブラケットの突起部とベッドの孔または凹部との係止作用により、ブラケットとベッドとが互いに連結される。これにより、ベースとベッドとが、ブラケットを介して、高さ方向の相対位置関係を維持するように互いに連結される。一対のブラケットでベースの外周面を両側から挟み付ける構成であるため、既設の工作機械に対しても連結手段を後付けで容易に施工できる。
【0013】
参考提案例として第2の構成からなる連結手段は、前記ベースの上面に形成された固定用ねじ孔と、前記ベッドに形成された上下方向の貫通孔に下向きに挿通され、頭部が前記ベッドにおける前記貫通孔の周囲の上面に係止し、かつ先端部に設けられたねじ部が前記固定用ねじ孔に螺合する固定用ボルトとを備える。
この構成の場合、固定用ボルトのねじ部がベースの固定用ねじ孔に螺合することで、固定用ボルトとベースとが互いに連結され、固定用ボルトの頭部がベッドにおける貫通孔の周囲の上面に係止することで、固定用ボルトとベッドとの高さ方向の相対位置関係が維持される。これにより、ベースとベッドとが、固定用ボルトを介して、高さ方向の相対位置関係を維持するように互いに連結される。高さ調整用ボルトと固定用ボルトの両方で、ベースとベッドとの水平方向の移動を規制するので、ベースとベッドとが鉛直軸回りに相対回転することを防止できる。
【0014】
第3の構成からなる連結手段は、前記ベースの下側を通して設けられて、互いに周方向の離れた位置に2箇所以上の紐状体端結合部を有する固定補助具と、中間部が前記高さ調整用ボルトにおける頭部と前記高さ調整用ねじ孔に螺合する前記ねじ部分との間の部分に引っ掛けられ、両端部が前記2箇所以上の紐状体端結合部にそれぞれ結合された固定用紐状体とを備える。
この構成の場合、固定補助具をベースの下側を通して設けたことで、ベースと固定補助具との高さ方向の相対位置関係が維持され、固定補助具の紐状体端結合部に固定用紐状体の端部を結合することで、固定補助具と固定用紐状体とが互いに連結され、固定用紐状体の中間部を高さ調整用ボルトにおける頭部とねじ部分との間の部分に引っ掛けることで、固定用紐状体とベッドとの高さ方向の相対位置関係が維持される。これにより、ベースとベッドとが、固定補助具および固定用紐状体を介して、高さ方向の相対位置関係を維持するように互いに連結される。固定用紐状体を用い、この固定用紐状体を高さ調整用ボルトに引っ掛けたり、端部を固定補助具の紐状体端結合部に結合したりするだけであるため、施工が容易である。
【発明の効果】
【0015】
この発明の工作機械は、床面に設置されるベースと、このベースの上面に形成された竪穴に挿入され、その先端部が前記竪穴の底面と当接し、先端部と頭部との間にねじ部分を有する高さ調整用ボルトと、上部に加工機器が設置され、かつ前記高さ調整用ボルトの前記ねじ部分と螺合する高さ調整用ねじ孔を有し、この高さ調整用ねじ孔に螺合する前記ねじ部分の位置を変更することで前記ベースに対して高さ位置が調整自在なベッドと、前記ベースと前記ベッドとを、これらの高さ方向の相対位置関係を維持するために互いに連結する、前記高さ調整用ボルトとは別部品からなる連結手段とを備えるため、簡単な施工で、地震発生時等におけるベースからの落下を防止することができる。
【0016】
前記連結手段が、前記高さ調整用ボルトを用いた前記ベースに対する前記ベッドの高さ調整が完了した状態で、前記ベースおよび前記ベッドに対して、互いの係止作用または摩擦作用によりそれぞれ連結されることで、前記ベースと前記ベッドとを、これらの高さ方向の相対位置関係を維持するために互いに連結するものである場合は、ベースとベッドを互いに連結する連結手段を、ベースやベッドに特別な加工せずに用いることができる。
【0017】
前記連結手段が、前記高さ調整用ボルトを用いた前記ベースに対する前記ベッドの高さ調整が完了した状態で、前記ベースおよび前記ベッドに対して、互いの係止作用または摩擦作用によりそれぞれ連結されることで、前記ベースと前記ベッドとを、これらの高さ方向の相対位置関係を維持するために互いに連結するものである場合は、連結手段を既設の工作機械にも容易に後付けできる。
【0019】
前記連結手段が、前記ベースの下側を通して設けられて、互いに周方向の離れた位置に2箇所以上の紐状体端結合部を有する固定補助具と、中間部が前記高さ調整用ボルトにおける頭部と前記高さ調整用ねじ孔に螺合する前記ねじ部分との間の部分に引っ掛けられ、両端部が前記2箇所以上の紐状体端結合部にそれぞれ結合された固定用紐状体とを備える場合は、連結手段の施工が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(A)はこの発明の一実施形態にかかる工作機械の平面図、(B)はその正面図である。
【
図3】(A)は同ベッド支持部のベースの平面図、(B)はそのIIIB−IIIB断面図である。
【
図5】(A)は同ベッド支持部の一対のブラケットの平面図、(B)はその正面図である。
【
図6】
参考提案例にかかる工作機械のベッド支持部の斜視図である。
【
図7】同ベッド支持部の固定用ボルトおよびその周辺の断面図である。
【
図8】この発明のさらに異なる実施形態にかかる工作機械のベッド支持部の斜視図である。
【
図9】同ベッド支持部の固定補助具の斜視図である。
【
図12】従来の異なるベッド支持部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の一実施形態を
図1ないし
図5と共に説明する。この実施形態の工作機械は平行2軸旋盤であり、
図1に示すように、互いに独立した左右2つのベッド1を備え、各ベッド1上に、加工機器として、前後方向に延びる主軸2と、刃物台3とがそれぞれ設置されている。各主軸2は、ベッド1上に設置された主軸台4に回転自在に支持され、その前端にワークを把持するチャック2aを有する。刃物台3はタレットからなり、外周に取付けられた複数の工具5のうちから任意の工具5が主軸2と対向する位置に割り出される。刃物台3は送り台6に対して前後に進退自在であり、かつ送り台6はベッド1上を左右方向に移動自在である。
【0022】
各ベッド1は、その四隅の下端隅部10が、床面Fに設置されたブロック状のベース20により支持される。ベース20は、床面Fに固定されておらず、単に置いてあるだけである。左右のベッド1は独立していてもよいが、連結部材(図示せず)により互いに連結してもよい。
【0023】
図2は、四隅のベッド支持部のうち
図1(A)においてAで示すベッド支持部Aの斜視図である。他のベッド支持部もベッド支持部Aと同じ構造である。ベッド支持部Aは、前記ベース20、このベース20に対するベッド1の前記下端隅部10の高さを調整する高さ調整用ボルト30、およびベース20と下端隅部10とを互いに連結する連結手段40で構成される。
【0024】
ベッド1の下端隅部10は、ベッド1の他の部分の底板よりも少し低い高さ位置に底板11を有し、この底板11の上側に一方側に開口する小室Rが設けられている。ベッド支持部Aの場合、左右外側(
図1の左側)に開口している。小室Rは、前記底板11と、前板12と、後板13と、側板14と、天板15とで囲まれている。
【0025】
底板11には、それぞれ上下に貫通する高さ調整用ねじ孔16と、アンカーボルト挿通孔17が設けられている。高さ調整用ねじ孔16は、高さ調整用ボルト30のねじ部分32(
図4)が螺合するねじ孔であって、後記補強用リブ19を避けて、小室Rの中心よりも開口側寄りに位置している。アンカーボルト挿通孔17は、ベッド1を床面Fに直接固定する場合にアンカーボルト(図示せず)を挿通するための孔であって、高さ調整用ねじ孔16の後方に位置している。
【0026】
前板12および後板13には、それぞれ前後に貫通する吊上げ用棒挿通孔18が設けられている。吊上げ用棒挿通孔18は、出荷時に工作機械を吊り上げるために吊上げ用棒(図示せず)を挿通するための孔である。また、側板14から底板11および天板15にかけて、補強用リブ19が設けられている。
【0027】
ベース20は、
図3のように略円柱状であって、その上面に竪穴21が形成されている。竪穴21の位置は、ベース20の中心Oから偏心している。また、底面には中央の円形部22aから3本の溝部22bが放射状に延びた形状の凹状切欠き22が形成されている。
【0028】
高さ調整用ボルト30は例えば六角穴付きボルトであって、
図4に示すように、頭部31と先端部との間である軸部の中間部にねじ部分32を有し、このねじ部分32を底板11の前記高さ調整用ねじ孔16に螺合させ、先端部をベース20の前記竪穴21の底面に当接させて取付けられる。つまり、ベッド1の下端隅部10は、高さ調整用ボルト30によってベース20に支持される。高さ調整用ねじ孔16に螺合するねじ部分32の位置を変更することで、ベース20に対するベッド1の下端隅部10の高さ位置を調整する。
【0029】
なお、ベース20の竪穴21がベース20の中心Oから偏心して設けられているのは、底板11の高さ調整用ねじ孔16が小室Rの中心よりも開口側寄りに位置していることによる。例えば、竪穴21がベース20の中心Oに設けられていると、ベース20の一部がベッド1よりも外側に張り出した状態となる。よって、左右のベッド1が向き合うベッド支持部では、
図10のように、両ベッド支持部のベース20が互いに干渉してしまう。竪穴21がベース20の中心Oから偏心させてあると、上記干渉を避けることができる。
【0030】
連結手段40は、上記の高さ調整用ボルト30を用いたベース20に対するベッド1の高さ調整が完了した状態で、ベース20とベッド1の下端隅部10とを、これらの高さ方向の相対位置関係を維持するために互いに連結する手段であり、高さ調整用ボルト30とは別部品からなる。この実施形態の連結手段40は、
図5に示すように、一対のブラケット41と、両ブラケット41を互いに結合する結合具46とでなる。各ブラケット41は、平面形状が略円弧状の挟み付け部42と、この挟み付け部42の両側から外側に延びる結合部43と、前記挟み付け部42の円周方向中央部から上方に立ち上がる立ち上がり部44と、この立ち上がり部44の上部から内向きに突出する突起部45とで構成される。結合具46は、例えばボルトとナットである。
【0031】
ベース20とベッド1の下端隅部10との連結に際しては、一対のブラケット41を、突起部45がベッド1の吊上げ用棒挿通孔18に係合し、かつ挟み付け部42がベース20の外周面に接触してベース20を両側から挟み付けるように保持する。そして、これら一対のブラケット41の互いに対向する結合部43同士を結合具46により結合する。ベース20と一対のブラケット41とは、互いの摩擦作用により連結される。また、突起部45が吊上げ用棒挿通孔18に係合することで、ベッド1と一対のブラケット41とが、互いの係止作用によって連結される。これにより、ベース20とベッド1とが、一対のブラケット41を介して互いに連結され、両者の高さ方向の相対位置関係が維持される。
【0032】
この連結手段40によると、ベース20と一対のブラケット41とを互いの摩擦作用により連結し、かつベッド1と一対のブラケット41とを既存の吊上げ用棒挿通孔18を利用して互いの係止作用により連結するため、ベース20やベッド1に加工をする必要がない。また、一対のブラケット41をベース20の両側から挟み付ける構造であるため、工作機械を据え付けたままで、連結手段40を後付けで容易に施工できる。この連結手段40では、摩擦作用および係止作用の両方を用いるが、いずれか一方の作用のみを用いてもよい。また、一対のブラケット41は、図例のように完全に分離しているものではなく、片側同士が蝶番等で互いに連結しているものであってもよい。さらに、この実施形態では、ブラケット41の突起部45をベッド1の吊上げ用棒挿通孔18に係合させるが、突起部45を孔ではなく凹部に係合させてもよい。
【0033】
図6および
図7は、異なる連結手段を採用したベッド支持部を示す。この連結手段50は、
図7に示すように、ベース20の上面に形成された固定用ねじ孔51と、先端部にねじ部52aが設けられた固定用ボルト52と、段付きボス53とでなる。段付きボス53は、その小径部分53aで底板11の前記アンカーボルト挿通孔17に嵌合しており、下端がベース20の上面に当接し、大径部53bの下面が底板11の上面に当接している。固定用ボルト52は、段付きボス53の貫通孔53cに上から挿通されて、先端部のねじ部52aが固定用ねじ孔51に螺合している。固定用ボルト52の頭部52bは、段付きボス53の大径部分53bの上面に当接させてある。
【0034】
この構成の連結手段50の場合、固定用ボルト52のねじ部52aがベース20の固定用ねじ孔51に螺合することで、固定用ボルト52とベース20とが互いに連結され、固定用ボルト52の頭部52bがベッド1のアンカーボルト挿通孔17に嵌合した段付きボス53の上面に係止することで、固定用ボルト52とベッド1との高さ方向の相対位置関係が維持される。これにより、ベース20とベッド1とが、固定用ボルト52を介して、高さ方向の相対位置関係を維持するように互いに連結される。連結手段50でベース20とベッド1とを連結した状態では、
図6において、高さ調整用ボルト30と固定用ボルト52の両方で、ベース20とベッド1との水平方向の移動を規制するので、ベース20とベッド1とが鉛直軸回りに相対回転することを防止できる。ただし、既設の工作機械に施工する場合、ベース20に固定用ねじ孔51を加工する必要がある。
【0035】
図8は、さらに異なる連結手段を採用したベッド支持部を示す。この連結手段60は、固定補助具61と、ワイヤ等の固定用紐状体62とでなる。固定補助具61は、
図9に示すように、3つの分岐部61aが3方向に放射状に延びる板材で、各分岐部61aの先端が上方に屈曲した紐状体端結合部61bとされている。各紐状体端結合部61bには、紐状体挿通孔61cが形成されている。
【0036】
ベース20とベッド1の下端隅部10との連結に際しては、
図8に示すように、固定補助具61をベース20の下側で凹状切欠き22に嵌め込ませる。固定補助具61の各紐状体端結合部61bが、ベース20の底面の外周から上方に立ち上がった状態となっている。この状態で、固定用紐状体62の中間部を、高さ調整用ボルト30における頭部31と高さ調整用ねじ孔16に螺合するねじ部分32との間の部分に引っ掛け、その両端部を、固定補助具61における互いに周方向に離れた2つの紐状体端結合部61bにそれぞれ結合する。結合方法は、固定用紐状体62の先端部を紐状体端結合部61bの紐状体挿通孔61cに挿通して折り返し、その折り返し部分62aを非折り返し部分62と加締金具63等を用いて結合する。
図8では、1本の固定用紐状体62だけで、高さ調整用ボルト30と隣合う2箇所の紐状体端結合部61bとを連結した状態を示すが、複数本の固定用紐状体62を用いて、高さ調整用ボルト30と各紐状体端結合部61bとを連結してもよい。
【0037】
この構成の連結手段60の場合、固定補助具61をベース20の下側を通して設けたことで、ベース20と固定補助具61との高さ方向の相対位置関係が維持され、固定補助具61の紐状体端結合部61bに固定用紐状体62の端部を結合することで、固定補助具61と固定用紐状体62とが互いに連結され、固定用紐状体62の中間部を高さ調整用ボルト30における頭部31とねじ部分32との間の部分に引っ掛けることで、固定用紐状体62とベッド1との高さ方向の相対位置関係が維持される。これにより、ベース20とベッド1とが、固定補助具61および固定用紐状体62を介して、高さ方向の相対位置関係を維持するように互いに連結される。この施工は容易である。この連結手段60の場合、ベース20およびベッド1に加工をする必要はないが、固定補助具61をベース20の下側を通すために、床面Fとベッド1との間からベース20を取り出して施工する必要がある。
【0038】
上記各実施形
態および参考提案例では、工作機械が平行2軸旋盤である場合を示すが、この発明は1軸旋盤にも適用できる。さらに、旋盤等の切削加工や研削加工を行う狭義の工作機械以外、例えばパンチプレスや他のプレス機械等の広義の工作機械にも適用できる。
【符号の説明】
【0039】
1…ベッド
2…主軸(加工機器)
3…刃物台(加工機器)
16…高さ調整用ねじ孔
17…アンカーボルト挿通孔
18…吊上げ用棒挿通孔
20…ベース
21…竪穴
30…高さ調整用ボルト
31…頭部
32…ねじ部分
40,50,60…連結手段
41…ブラケット
42…挟み付け部
43…立ち上がり部
44…突起部
51…固定用ねじ孔
52…固定用ボルト
52a…頭部
61…固定補助具
61b…紐状体端結合部
62…固定用紐状体