【文献】
BASTASZ,R. et al,"Residual hydrogen concentration levels in graphite",Journal of Vacuum Science and Technology A,1988年,Vol.6, No.3,p.2116-2118
【文献】
周 海洋、外3名,「マイクロ波プラズマによる低温成長水素フリーカーボン者の抗菌特性」,第54回応用物理学関係連合講演会講演予稿集 No.1,(社)応用物理学会,2007年 3月27日,p.202
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、単結晶ダイヤモンドには、いわゆるIIa型ダイヤモンドやIb型ダイヤモンドと呼ばれるものがある。IIa型ダイヤモンドは、不純物である窒素を殆ど含まない高純度なダイヤモンドであり、Ib型ダイヤモンドは、不純物である窒素を0.1%程度含む不純物含有ダイヤモンドである。これらの硬度を比較すると、IIa型ダイヤモンドの方が、Ib型ダイヤモンドよりも硬くなることが知られている。このことから、単結晶ダイヤモンド中の不純物量を減じて高純度化することで、該単結晶ダイヤモンドの硬度を高くすることができるものと推察される。
【0007】
ナノ多結晶ダイヤモンドの場合も単結晶ダイヤモンドの場合と同様であると考えられるが、ナノ多結晶ダイヤモンドの場合には、単結晶ダイヤモンドの場合と同様の高純度化を行うことが困難である。その理由は、ナノ多結晶ダイヤモンドの合成工程において、通常はSi、B、H,Nを代表とする多くの不純物がダイヤモンド中に混入するからである。
【0008】
たとえば黒鉛を直接ダイヤモンドに変換することでナノ多結晶ダイヤモンドを作製することができるが、市販の黒鉛はコークスやピッチから作製されるため、黒鉛中への不純物の取込みを回避するのは困難である。そのため、当該方法で合成されたナノ多結晶ダイヤモンド中にも不純物が取り込まれてしまう。また、たとえ黒鉛の高純度化を行ったとしても、現状の技術では、黒鉛の製造中に混入する不純物を除去するのは困難である。この除去しきれなかった不純物が、合成後のナノサイズのダイヤモンド結晶の結晶粒界に偏析し、ダイヤモンド結晶が結晶粒界で滑りやすくなる。このことが、ナノ多結晶ダイヤモンドの硬度を高める際の障害となる。以上のように、従来の技術では、ナノ多結晶ダイヤモンドの高純度化および高硬度化には限界があった。
【0009】
本発明は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、高純度かつ高硬度のナノ多結晶ダイヤモンドを作製可能な黒鉛およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る黒鉛は、炭素と、該炭素以外の複数の不純物とで構成される。複数の不純物の濃度は、それぞれ0.01質量%以下であり、黒鉛は、一体の固体であり、結晶化部分を含む。
上記複数の不純物は、たとえば、水素、酸素、窒素、シリコンおよび硼素を含むものであってもよい。この場合、水素の濃度が2×10
18/cm
3以下であり、酸素の濃度が2×10
17/cm
3以下であり、窒素の濃度が4×10
16/cm
3以下であり、シリコンの濃度が1×10
16/cm
3以下であり、硼素の濃度が2×10
15/cm
3以下であることが好ましい。
上記炭素は、炭素同位体12C、13Cのいずれかであることが好ましい。また、上記黒鉛は、一部に結晶化部分を含む結晶状あるいは多結晶であり、黒鉛の密度は1.4g/cm
3以上であることが好ましい。
上記黒鉛は、5cm×5cm×5cm以内の立方体に収まる寸法を有し、1500℃以上の温度で99.99%以上の純度の炭化水素を直接熱分解することで作製することが好ましい。
【0011】
本発明に係る黒鉛の製造方法は、真空チャンバー内で1500℃以上の温度に基材を加熱する工程と、該真空チャンバー内に99.99%以上の純度の炭化水素ガスを導入し、基材上で炭化水素ガスを分解することで基材上に黒鉛を形成する工程とを備える。
上記黒鉛を形成する基材の表面を、ダイヤモンドあるいは黒鉛で構成することが好ましい。また、上記炭化水素ガスを基材の表面に向けて流すことが好ましい。上記炭化水素ガスは、加熱した多孔質チタンを通して基材の表面に供給してもよく、好ましくは、メタンガスである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る黒鉛では、該黒鉛に含まれる各不純物の濃度が0.01質量%以下であるので、該黒鉛を焼結することで、従来にない高純度かつ高硬度のナノ多結晶ダイヤモンドを作製することができる。
【0013】
本発明に係る黒鉛の製造方法では、真空チャンバー内に99.99%以上の純度の炭化水素ガスを導入し、加熱した基材上で炭化水素ガスを分解することで基材上に黒鉛を形成するので、不純物濃度の極めて低い黒鉛を製造することができる。この黒鉛を焼結することで、従来にない高純度かつ高硬度のダイヤモンド焼結体を作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について
図1〜
図3を用いて説明する。
本実施の形態における黒鉛(グラファイト)は、不純物量が極めて少ないものである。典型的には、黒鉛には複数の不純物が含まれるが、本実施の形態における黒鉛では、各不純物の濃度が、それぞれ0.01質量%以下である。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態の黒鉛1は、基材2上に形成され、一体の固体であり、結晶化部分を含む。
図1の例では、黒鉛1は、平板状の形状を有しているが、任意の形状、厚みとすることが考えられる。
【0017】
黒鉛中に混入する不純物としては、たとえば窒素、水素、酸素、硼素、シリコン、結晶粒の成長を促進するような遷移金属などが挙げられる。窒素は、結晶粒界への析出量が多く、また該結晶粒界における濃度も、通常は数100ppmに及ぶ。これによって結晶粒界で結晶粒が滑り易くなる。水素については、結晶粒界でのsp2結合によって安定するため、結果的に黒鉛の硬度を低下させる。従来の黒鉛を用いて作製したダイヤモンド焼結体では、上述のように黒鉛の原料がコークスやピッチであるため、高純度化処理を行っているにもかかわらず、必ず数100ppm程度の量の水素が黒鉛に混入してしまう。酸素は、炭素と反応しやすい上、硼素と酸化物を形成し、局所的な結晶粒の成長を促す。また、窒素と硼素は、結晶粒界での結晶粒の滑りを引き起こし、硬度を本質的な限界硬さにまで高める際の障害となる。
【0018】
本実施の形態における黒鉛では、窒素、水素、酸素、硼素、シリコン、遷移金属等の不純物量が、上述のように0.01質量%以下である。つまり、黒鉛中の不純物濃度が、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)分析での検出限界以下程度である。また、遷移金属については、黒鉛中の濃度が、ICP(Inductively Coupled Plasma)分析やSIMS分析における検出限界以下程度である。
【0019】
このように、黒鉛中の不純物量をSIMS分析やICP分析での検出限界レベルにまで低下させることで、該黒鉛を用いてダイヤモンドを作製した場合に、極めて高純度で高硬度のダイヤモンドを作製できることが判明した。なお、SIMS分析やICP分析での検出限界より若干多い不純物を含む黒鉛を用いた場合でも、従来と比較すると格段に優れた特性のダイヤモンドが得られる。
【0020】
本実施の形態の黒鉛が、たとえば、水素、酸素、窒素、シリコンおよび硼素を含む場合、黒鉛中の水素の濃度は2×10
18/cm
3以下程度であり、酸素の濃度は2×10
17/cm
3以下程度であり、窒素の濃度は4×10
16/cm
3以下程度であり、シリコンの濃度は1×10
16/cm
3以下程度であり、硼素の濃度は2×10
15/cm
3以下程度であれば、十分に高純度で高硬度のダイヤモンド焼結体を合成することができる。好ましくは、黒鉛中の水素の濃度は5×10
17/cm
3以下程度であり、酸素の濃度は1×10
17/cm
3以下程度であり、窒素の濃度は1×10
16/cm
3以下程度であり、シリコンの濃度は5×10
15/cm
3以下程度であり、硼素の濃度は7×10
14/cm
3以下程度である。
【0021】
図2に、本発明の1つの実施の形態における黒鉛を使用して作製したナノ多結晶ダイヤモンド中の不純物分布の一例を示す。
図3に、比較例として、従来の高純度黒鉛材料を使用して作製したナノ多結晶ダイヤモンド中の不純物分布の一例を示す。
【0022】
図2および
図3に示されるように、いずれのダイヤモンドの場合も、ダイタモンドの深さ方向の各不純物の濃度のばらつきは比較的小さいが、本実施の形態における黒鉛を使用して作製したナノ多結晶ダイヤモンド中の不純物量が極めて低い値となっていることがわかる。このようにナノ多結晶ダイヤモンド中の不純物量を低くできるので、後述する各実施例に記載のように、ナノ多結晶ダイヤモンドのヌープ硬度をたとえば150GPa以上程度と極めて高くすることができる。
【0023】
本実施の形態の黒鉛を構成する炭素は、炭素同位体12C、13Cのいずれかであることが好ましい。炭素同位体12Cを使用することで、安価に高純度かつ高硬度のダイヤモンド焼結体を合成することができる。また、炭素同位体13Cを使用することで、炭素同位体12Cの場合よりも効果的にダイヤモンドの硬度を高めることができる。
【0024】
また、本実施の形態の黒鉛は、一部に結晶化部分を含む結晶状あるいは多結晶である。つまり、本実施の形態の黒鉛は、少なくとも一部に結晶化部分を含むものであればよい。好ましくは、黒鉛は多結晶である。黒鉛の結晶粒の大きさは小さい方が好ましいが、結晶化部分における結晶粒径(結晶粒の最大長さ)は1000nm未満であればよい。このように黒鉛の結晶粒径(結晶粒の最大長さ)を1000nm未満とすることにより、該黒鉛を用いて作製したダイヤモンドの結晶粒をナノレベルの大きさとすることができる。
【0025】
本実施の形態における黒鉛のかさ密度は、たとえば0.8g/cm
3以上であればよい。好ましくは、黒鉛のかさ密度は、1.4g/cm
3以上である。この程度の密度とすることにより、高温高圧プロセス時の圧縮による体積変化を小さく抑えることができ、温度制御が容易となるばかりでなく、歩留まりをも向上させることができる。
【0026】
次に、本実施の形態における黒鉛の製造方法について説明する。
本実施の形態の黒鉛は、1500℃から3000℃程度の温度で、99.99%以上の純度の炭化水素を直接熱分解することで作製可能である。
【0027】
より詳しくは、まず真空チャンバー内に黒鉛作製用の基材を設置する。基材としては、1500℃から3000℃程度の温度に耐え得る材料であればいかなる固相材料であってもよい。具体的には、金属、無機セラミック材料、炭素材料を基材として使用可能である。黒鉛中への不純物混入を抑制するという観点からは、上記基材を炭素で構成することが好ましい。固相の炭素材料としてはダイヤモンドや黒鉛を挙げることができる。黒鉛を基材として使用する場合、本実施の形態の製造方法で作製した不純物量の極めて少ない黒鉛を基材として使用することが考えられる。基材の材料としてダイヤモンドや黒鉛のような炭素材料を使用する場合、基材の少なくとも表面を炭素材料で構成すればよい。たとえば、基材の表面のみを炭素材料で構成し、基材の残りの部分を炭素材料以外の材料で構成してもよく、基材全体を炭素材料で構成してもよい。
【0028】
上記のように真空チャンバー内に設置した基材を1500℃以上の温度に加熱する。加熱方法としては周知の手法を採用することができる。たとえば、基材を直接あるいは間接的に1500℃以上の温度に加熱可能なヒータを真空チャンバーに設置することが考えられる。
【0029】
上記の真空チャンバー内に、99.99%以上の純度の炭化水素ガスを導入し、加熱した基材上で炭化水素ガスを分解する。このとき、真空チャンバー内の真空度は、20〜100Torr程度とすればよい。それにより、気相の炭化水素から直接基材上に固相の黒鉛を形成することができる。
【0030】
炭素粉末から黒鉛を作製する場合には、通常はバインダーが必要である。しかし、バインダーは黒鉛中の不純物の原因となる。また、高純度化した黒鉛粉末を原料として固化する場合でも、粉砕処理等の際における水素、酸素、窒素等の混入は避け難く、黒鉛の結晶粒界にこれらの不純物が残存することとなる。
【0031】
そこで、本実施の形態では、バインダーを使用せず、原料の粉砕処理をも伴わず、上述のように不純物が極めて少ない高真空度のチャンバー内に気相状態の高純度の原料ガスを導入し、この原料ガスを基材上で熱分解させ、原料ガスから直接固相の黒鉛を基材上に形成している。それにより、不純物の極めて少ない一体の結晶状あるいは多結晶の固相の黒鉛多結晶体を作製することができる。
【0032】
上記炭化水素ガスは、基材の表面に向けて流すことが好ましい。それにより、基材近傍に炭化水素ガスを効率的に供給することができ、効率的に基材上に黒鉛を生成することができる。炭化水素ガスは、基材の真上から基材に向けて供給してもよく、斜め方向あるいは水平方向から基材に向けて供給するようにしてもよい。真空チャンバー内に、炭化水素ガスを基材に導く案内部材を設置することも考えられる。たとえば、加熱した多孔質チタンを通して基材の表面に炭化水素ガスを供給してもよい。炭化水素ガスとしては、メタンガスを使用することが好ましい。
【0033】
次に、本実施の形態における黒鉛を用いたナノ多結晶ダイヤモンドの製造方法について説明する。
【0034】
上述の手法で、基材上に不純物量の極めて少ない固相の黒鉛を作製し、この黒鉛に高圧下で熱処理を施す。それにより、黒鉛を、高純度かつ高硬度のナノ多結晶ダイヤモンドに変換することができる。なお、該ダイヤモンドの合成条件として、温度は1200℃から2500℃程度、圧力は7GPa以上とすればよい。好ましくは、合成温度は1900℃以上、合成圧力は12GPa以上である。
【0035】
ダイヤモンドの合成には、一軸性の圧力を加えてもよく、等方的な圧力を加えてもよい。しかし、等方的な圧力によって、結晶粒径や、結晶の異方性の程度を揃えるという観点から、静水圧下での合成が好ましい。
【0036】
黒鉛のサイズは、高圧力をかけるという観点から、大きすぎてはならない。そこで、コスト面、現実的なプレス機の使用を考慮して、黒鉛の寸法を、5cm×5cm×5cm以内の立方体に収まるものとすることが望ましい。
【0037】
次に、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0038】
真空チャンバー内で99.999%の純度のメタンガスを1900℃に加熱したダイヤモンド基板上に吹きつけた。このとき、真空チャンバー内の真空度は20〜30Torrとした。すると、ダイヤモンド基板上に黒鉛(グラファイト)が堆積した。黒鉛のかさ密度は2.0g/cm
3であった。
【0039】
上記の黒鉛を、温度2200℃、圧力15GPaの条件下で直接多結晶ダイヤモンドに変換した。この多結晶ダイヤモンドの結晶粒径は、各々10〜100nm程度の大きさであった。上記多結晶ダイヤモンドをSIMS分析したところ、H,N,B,O,Siの含有量は検出限界以下であった。また、上記多結晶ダイヤモンドのX線回折パターンから、多結晶ダイヤモンド中にはダイヤモンド以外の成分は見られなかった。このナノ多結晶ダイヤモンドのヌープ硬度は190GPaであった。
【実施例2】
【0040】
真空チャンバー内で99.999%メタンガスを、600℃に熱した多孔質チタン中を通して、1900℃に加熱したダイヤモンド基板上に吹きつけた。このとき、真空チャンバー内の真空度は20〜30Torrとした。本実施例の場合も、ダイヤモンド基板上に黒鉛(グラファイト)が堆積した。黒鉛のかさ密度は2.0g/cm
3であった。
【0041】
上記の黒鉛を、温度2300℃、圧力15GPaの条件下で直接多結晶ダイヤモンドに変換した。この多結晶ダイヤモンドの結晶粒径は各々10〜100nm程度の大きさであった。この多結晶ダイヤモンドをSIMS分析したところ、H,N,B,O,Siの含有量は検出限界以下であった。また、上記多結晶ダイヤモンドのX線回折パターンから、多結晶ダイヤモンド中にはダイヤモンド以外の成分は見られなかった。このナノ多結晶ダイヤモンドのヌープ硬度は190GPaであった。
【実施例3】
【0042】
実施例2と同様の手法で、ダイヤモンド基板上に黒鉛(グラファイト)が堆積させ、かさ密度が2.0g/cm
3である黒鉛を得た。
【0043】
上記の黒鉛を、温度2200℃、圧力16GPaの条件下で直接多結晶ダイヤモンドに変換した。この多結晶ダイヤモンドの結晶粒径は各々10〜100nm程度の大きさであった。上記多結晶ダイヤモンドをSIMS分析したところ、H,N,B,O,Siの含有量は検出限界以下であった。また、上記多結晶ダイヤモンドのX線回折パターンから、多結晶ダイヤモンド中にはダイヤモンド以外の成分は見られなかった。このナノ多結晶ダイヤモンドのヌープ硬度は190GPaであった。
【実施例4】
【0044】
実施例2と同様の手法で、ダイヤモンド基板上に黒鉛(グラファイト)が堆積させ、かさ密度が2.0g/cm
3である黒鉛を得た。
【0045】
上記の黒鉛を、温度2100℃、16GPaの条件下で直接多結晶ダイヤモンドに変換した。この多結晶ダイヤモンドの結晶粒径は各々10〜100nm程度の大きさであった。上記多結晶ダイヤモンドをSIMS分析したところ、H,N,B,O,Siの含有量は検出限界以下であった。また、上記多結晶ダイヤモンドのX線回折パターンから、多結晶ダイヤモンド中にはダイヤモンド以外の成分は見られなかった。このナノ多結晶ダイヤモンドのヌープ硬度は190GPaであった。
【実施例5】
【0046】
真空チャンバー内で99.999%メタンガスを、600℃に熱した多孔質チタン中を通し、1500℃に加熱したダイヤモンド基板上に吹きつけた。このとき、真空チャンバー内の真空度は20〜30Torrとした。本実施例の場合も、ダイヤモンド基板上に黒鉛(グラファイト)が堆積した。黒鉛のかさ密度は1.6g/cm
3であった。
【0047】
上記の黒鉛を、温度2300℃、圧力15GPaの条件下で直接多結晶ダイヤモンドに変換した。この多結晶ダイヤモンドの結晶粒径は各々10〜100nm程度の大きさであった。上記多結晶ダイヤモンドをSIMS分析したところ、H,N,B,O,Siの含有量は検出限界以下であった。また、上記多結晶ダイヤモンドのX線回折パターンから、多結晶ダイヤモンド中にはダイヤモンド以外の成分は見られなかった。このナノ多結晶ダイヤモンドのヌープ硬度は150GPaであった。
【実施例6】
【0048】
真空チャンバー内で99.9999%の純度のメタンガスを、600℃に熱した多孔質チタン中を通し、1900℃に加熱したダイヤモンド基板上に吹きつけた。このとき、真空チャンバー内の真空度は20〜30Torrとした。本実施例の場合も、ダイヤモンド基板上に黒鉛(グラファイト)が堆積した。黒鉛のかさ密度は2.0g/cm
3であった。
【0049】
上記の黒鉛を、温度2300℃、圧力15GPaの条件下で直接多結晶ダイヤモンドに変換した。この多結晶ダイヤモンドの結晶粒径は各々10〜100nm程度の大きさであった。上記多結晶ダイヤモンドをSIMS分析したところ、H,N,B,O,Siの含有量は検出限界以下であった。また、上記多結晶ダイヤモンドのX線回折パターンから、多結晶ダイヤモンド中にはダイヤモンド以外の成分は見られなかった。このナノ多結晶ダイヤモンドのヌープ硬度は205GPaであった。
【実施例7】
【0050】
真空チャンバー内で99.9999%の純度のメタンガスを、600℃に熱した多孔質チタン中を通し、1500℃に加熱したダイヤモンド基板上に吹きつけた。このとき、真空チャンバー内の真空度は20〜30Torrとした。本実施例の場合も、ダイヤモンド基板上に黒鉛(グラファイト)が堆積した。黒鉛のかさ密度は1.6g/cm
3であった。
【0051】
上記の黒鉛を、温度2300℃、圧力15GPaの条件下で直接多結晶ダイヤモンドに変換した。この多結晶ダイヤモンドの結晶粒径は各々10〜100nmの大きさであった。上記多結晶ダイヤモンドをSIMS分析したところ、H,N,B,O,Siの含有量は検出限界以下であった。また、上記多結晶ダイヤモンドのX線回折パターンから、多結晶ダイヤモンド中にはダイヤモンド以外の成分は見られなかった。このナノ多結晶ダイヤモンドのヌープ硬度は160GPaであった。
【実施例8】
【0052】
真空チャンバー内で99.999%メタンガスを、600℃に熱した多孔質チタン中を通し、1900℃に加熱したダイヤモンド基板上に吹きつけた。このとき、真空チャンバー内の真空度は90〜100Torrとした。本実施例の場合も、ダイヤモンド基板上に黒鉛(グラファイト)が堆積した。黒鉛のかさ密度は2.0g/cm
3であった。
【0053】
上記の黒鉛を、温度2300℃、圧力15GPaの条件下で直接多結晶ダイヤモンドに変換した。この多結晶ダイヤモンドの結晶粒径は各々10〜100nmの大きさであった。上記多結晶ダイヤモンドをSIMS分析したところ、H,N,B,O,Siの含有量は検出限界以下であった。また、上記多結晶ダイヤモンドのX線回折パターンから、多結晶ダイヤモンド中にはダイヤモンド以外の成分は見られなかった。このナノ多結晶ダイヤモンドのヌープ硬度は190GPaであった。
【0054】
以上の実施例では、真空チャンバー内の真空度を20〜100Torrとし、該真空チャンバー内で99.999%以上の純度の炭化水素ガスを1500℃から1900℃の温度に加熱した基板上に供給することで、炭化水素ガスを基板上で熱分解することができ、該基板上に、固相で、かさ密度が1.6g/cm
3から2.0g/cm
3である極めて高純度の黒鉛を作製できることを確認できた。また、当該黒鉛を用いることで、ヌープ硬度が150GPaから205GPa程度である高純度かつ高硬度のナノ多結晶ダイヤモンドを作製できることも確認できた。しかし、上記以外の範囲の条件であっても、特許請求の範囲に記載の範囲であれば、所望の特性を有する黒鉛を作製できるものと考えられる。
【0055】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の実施の形態および実施例を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施の形態および実施例に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。