(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776424
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】エレベータ装置
(51)【国際特許分類】
B66B 5/14 20060101AFI20150820BHJP
B66B 1/44 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
B66B5/14 A
B66B1/44 D
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-170243(P2011-170243)
(22)【出願日】2011年8月3日
(65)【公開番号】特開2013-35612(P2013-35612A)
(43)【公開日】2013年2月21日
【審査請求日】2014年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】太田 天志
【審査官】
日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−072359(JP,A)
【文献】
特表2004−520243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/14
B66B 1/44
B66B 7/06
G01C 19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ昇降路内をガイドレールに沿って昇降するかごと、このかごに配置された一対の従動シーブと、前記従動シーブに巻き掛けられた主ロープと、前記かごの荷重を検出する荷重検出装置とを備えたエレベータ装置において、
前記従動シーブは前記かごに対して遥動自在になるように取り付けられており、前記荷重検出装置は、その両端部がそれぞれ前記一対の従動シーブの軸に枢着されており、前記両従動シーブの距離の変化を測定することにより荷重を検出する構成であることを特徴とするエレベータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かごに複数の従動シーブを備えたエレベータにおいて、かごの荷重を検出する荷重検出装置を備えたエレベータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かごに複数の従動シーブを備えたエレベータの荷重検出装置として、かご下に一対の従動シーブを設け、これらの従動シーブに掛かる荷重の変化を検出するものがある。この例を
図5により説明する。
【0003】
図において、2は昇降路内に立設された一対のガイドレールであり、4は床枠、5はかご床、6はかごで、これらはローラガイドやガイドシューからなる案内装置3に案内されて、ガイドレール2に沿って昇降する。7はかご6の下部に配置された支持構造体で、従動シーブ9が枢着された一対のシーブ支持体7.2と両シーブ支持体7.2が固定された湾曲支持体7.1とからなっている。8は床枠4と湾曲支持体7.1との間に設けられた防振ゴムである。
【0004】
10は主ロープであり、一端は昇降路上部の固定点11に取り付けられ、一対の従動シーブ9を経由して、駆動装置13の駆動シーブ12に巻き掛けられ、更に図示省略したカウンターウェイトの転向シーブを経由して、他端が昇降路上部の他の固定点(図示省略)に取り付けられている。15は湾曲支持体7.1に設けられたひずみゲージセンサのような曲げセンサである。
【0005】
本構成により、かご6等及びかご6内の負荷による荷重は、両従動シーブ9,9から主ロープ10に作用し、主ロープ10の張力により14で示す反力が生じる。この結果、湾曲支持体7.1には曲げモーメント及びこれに伴う撓みが生じる。この撓みは曲げセンサ15で検出されて、その信号をエレベータ制御装置(図示省略)に送る。ここで、かご6等の重量は予めわかっているから、制御装置によりかご6内の負荷による荷重を計算することができる。これにより、エレベータの荷重検出を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2004−520243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記の湾曲支持体7.1は、強度部材として重要な部品であるが、前記従来技術は、湾曲支持体7.1の撓みを曲げセンサ15で検出する構成であるため、検出精度を上げようとすれば湾曲支持体7.1の剛性を下げて撓みやすくする必要があり、強度部材としての信頼性を損なう虞があるという問題がある。
【0008】
また前記従来技術では、湾曲支持体7.1の撓みを曲げセンサ15で検出しているが、湾曲支持体7.1に掛かる負荷はエレベータによって相違する場合が多いため、エレベータ毎に曲げセンサ15やその制御装置を調整しなければならないという問題がある。
例えば、湾曲支持体7.1には、トラベリングケーブル、トラベリングケーブルが接続されるかご下接続箱、コンペンロープ、保守用のスイッチやランプなどの部品が取り付けられるため、エレベータの仕様によって各部品の重さや取付位置が変わると、湾曲支持体7.1への負荷の掛かり方が異なってくる。そのため負荷の変化に伴う湾曲支持体7.1の歪の変化、即ち曲げセンサ15の出力変化も異なってくる。更に、改修工事などによって湾曲支持体7.1に掛かる負荷の状態が変われば曲げセンサ15や制御装置の再調整が必要になるという問題もある。
【0009】
尚、エレベータによっては床枠4と支持構造体7との間にかご枠を備え、このかご枠にトラベリングケーブル等を取り付ける構成のものもあるが、この場合においても湾曲支持体7.1の剛性低下という問題は避けられない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、エレベータ昇降路内をガイドレールに沿って昇降するかごと、このかごに配置された一対の従動シーブと、前記従動シーブに巻き掛けられた主ロープと、前記かごの荷重を検出する荷重検出装置とを備えたエレベータ装置において、前記従動シーブは前記かごに対して遥動自在になるように取り付けられており、前記荷重検出装置は
、その両端部がそれぞれ一対の従動シーブの軸に枢着されており、前記両従動シーブの距離の変化を測定することにより荷重を検出するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の従動シーブを備えたエレベータにおいて、信頼性の高い荷重検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態による荷重検出装置を備えたエレベータの説明図である。
【
図2】本発明の実施の形態による荷重検出装置を備えたエレベータの説明図である。
【
図3】本発明の他の実施の形態による荷重検出装置を備えたエレベータの説明図である。
【
図4】本発明の他の実施の形態による荷重検出装置を備えたエレベータの説明図である。
【
図5】従来の荷重検出装置を備えたエレベータを示す全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を
図1及び
図2により説明する。
図1はかごに荷重がない状態、
図2はかごに荷重がある状態を示しており、
図5と同一符号は同一のものを示している。
図において、20はかご6の下部に配置された支持部材であり、防振ゴム8を介してかご6を支持している。21は一側は軸22によって支持部材20に遥動自在に枢着され、他側は軸9aによって従動シーブ9が遥動自在に枢着されたシーブ支持体である。30はその両側が軸9a,9aに枢着された荷重検出装置であり、シリンダ31,ピストン32及びシリンダ31とピストン32との間に設けられたばね33とを備えている。34はピストン32に設けたマークである。
【0019】
図1のようにかご6に荷重がない場合のピストン32のマーク34とシリンダ31との距離をX、
図2のようにかご6に荷重がある場合のマーク34とシリンダ31との距離をYとすると、X−Yを測定することにより、かご6の荷重を検出することができる。
尚、距離の測定方法は公知の距離センサを用いればよく、また距離X−Yを荷重に変換する方法も公知の手段でよい。
【0020】
このように本実施の形態では、荷重検出装置30は支持部材20とは分離されており、単にかご6に荷重がないときの距離Xと荷重があるときの距離Yとの差を測定すればよい。つまり、ばね33のばね定数を考慮するだけでよいため、前記従来技術のように支持部材20(湾曲支持体7.1)の強度を低下させる必要がなく、また支持部材20へのトラベリングケーブルなどの負荷の掛かり方に影響されることもない。更に荷重検出装置30の両側は軸9aに枢着されているため、従動シーブ9が遥動しても、シリンダ31やピストン32に無理な力が掛かることがない。
【0021】
尚、本実施の形態では、防振ゴム8を介してかご6に支持部材20を取り付けているが、かご6と支持部材20との間にかご枠を有するタイプのエレベータでも同様に実施することができる。またかご枠を有するタイプのエレベータの場合、シーブ支持体21をかご枠に枢着し、支持部材20を省略することも可能である。
【0022】
次に本発明の他の実施の形態を
図3及び
図4により説明する。この実施の形態は、かご枠40を有し、このかご枠40の上方部にシーブ支持体21及び従動シーブ9を枢着し、従来の支持部材20を省略したものである。
図3はかごに荷重がない状態、
図4はかごに荷重がある状態を示しており、
図1,
図2と同一符号は同一のものを示している。
本実施の形態においても、前記の実施の形態と同様の効果を有する。
また、従動シーブはかご上,かご下のみならず、かごの側部など他の箇所に配置することも可能である。
【0023】
前記各実施の形態では、ピストン32に設けたマーク34とシリンダ31との距離X,Yを測定しているが、これに限ることはなく、シリンダ31とピストン32との相対移動距離を測定できればよい。またシリンダ31とピストン32は、従動シーブ9の軸9aに枢着する代わりに、軸22と軸9aとの間や、軸9aよりも反軸22側に枢着することも可能である。
また、荷重検出装置30は、シリンダ31,ピストン32及びばね33を備えた構成に限ることはなく、かご6の荷重による両従動シーブ9,9の距離の変化を測定できるものであればよい。
更に、荷重検出装置30として、棒状又は板状体を連結し、両従動シーブ9,9間の距離の変化による棒状又は板状体の歪を検出することによって荷重を検出する構成にすることも可能である。
【符号の説明】
【0024】
2 ガイドレール
6 かご
9 従動シーブ
9a 従動シーブの軸
10 主ロープ
20 支持部材
21 シーブ支持体
30 荷重検出装置
40 かご枠