(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1から
図9を参照しつつ、本発明に係る感度調整装置及びこれを備える腕時計の好適な実施形態について説明する。なお、以下では、本発明に係る感度調整装置を電波通信機器としての機能を備える腕時計に適用した場合について説明するが、感度調整装置を適用可能な実施形態はこれに限定されるものではない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る腕時計の一部を切り欠いた正面図であり、
図2は、
図1の腕時計を裏面側から見た図である。また、
図3は、
図1におけるIII−III線に沿う断面図であり、
図4は、
図3における一点鎖線部分の拡大図である。また、
図5は、
図1におけるV−V線に沿う断面図であり、
図6は、
図5における一点鎖線部分の拡大図である。
本実施形態に係る腕時計100は、電気的な駆動により図示しない指針(秒針、分針、時針)を回転させて時刻を表示するものである。なお、
図1から
図6では、指針等について図示を省略している。
【0017】
図1、
図3等に示すように、腕時計100は、中空の短柱形状に形成された外装ケース1を備えている。本実施形態において外装ケース1は、例えばステンレス、チタニウム等の金属材料によって形成されている。なお、外装ケース1は、金属材料で形成されているものに限定されず、例えば樹脂等により形成されているものであってもよい。
【0018】
この外装ケース1の上下両端部(
図1において上下端部)、つまり時計の12時方向側端部及び6時方向側端部には、時計バンド(図示せず)が取り付けられるバンド取付部11が形成されている。
また、外装ケース1の側面には、外装ケース1の内部に貫通する貫通孔12(
図3参照)が形成されている。なお、本実施形態では、貫通孔12は、腕時計100における3時方向の側面に形成されている場合を例としているが、貫通孔12が設けられる位置はこれに限定されない。例えば9時方向の位置や4時方向の位置に貫通孔12が設けられていてもよい。
【0019】
図3に示すように、貫通孔12には、中空の筒状部材13が外装ケース1の外部から内部に挿通されている。そして、外装ケース1の側部であって貫通孔12の設けられている側には、筒状部材13を介して貫通孔12に挿入され、外装ケース1の外部から内部に挿通する軸部材21と、この軸部材21の一端側に形成され、筒状部材13の内径よりも大きな径を有する竜頭トップ22とを備える竜頭2が設けられている。
軸部材21の挿入側の端部には、図示しない歯車が設けられており、この歯車は、例えば後述するモジュール3内に設けられている図示しない分針等の各種指針を回動させる輪列の一部に接続されている。そして、竜頭2を回転させるとその回転力が指針を回動させる輪列に伝達され、指針の位置調整、時刻合わせ等が可能となるように構成されている。
【0020】
外装ケース1の内部には、ほぼ円柱形状に形成されたモジュール3が配置されている。なお、モジュール3の形状は円柱形状に限定されない。モジュール3は、腕時計100の指針(図示せず)を運針させる時計ムーブメント(例えば駆動用のモータや輪列機構等。図示せず)、各種電子部品を実装した回路基板(図示せず)等が例えば樹脂等によって形成されたハウジング(図示せず)に組み込まれたものである。
モジュール3は、腕時計100の裏面側(
図3において下側)から中枠部材14によって支持されている。
【0021】
図5及び
図6に示すように、本実施形態では、モジュール3の下側(腕時計100における裏面側)であって、モジュール3の周縁部における腕時計のほぼ6時方向にあたる位置(
図1における下側位置)には凹部31が形成されており、この凹部31内にはチップ状又はループ状の小型のアンテナ4が配置されている。
アンテナ4は、例えば接着固定等によりモジュール3上に保持されている。なお、モジュール3に凹部31が形成されていることは必須ではなく、平坦な面に上にアンテナ4が配置されていてもよい。また、アンテナ4は、モジュール3の表面に貼着されていてもよいし、モジュール3内に埋設されていてもよい。また、アンテナ4の配置される位置はここに例示したものに限定されず、他の位置であってもよい。
【0022】
アンテナ4は、外部の機器との間で無線信号を送受信可能なものであり、例えばBluetooth(登録商標)等の規格により通信を行う。なお、アンテナ4の通信規格、通信可能な周波数帯は、Bluetooth(登録商標)に限定されず、腕時計100によって行われる各種通信に適したもの(すなわち、周波数等が適合するもの)が適宜適用される。また、アンテナ4は小型のものであればよく、種類、形状は特に限定されない。また、後述するように、本実施形態では、アンテナ4として、最大で5m程度の範囲内に存する機器との間で信号の送受信を行うことのできる電波送受信感度のものを適用しているが、アンテナ4の電波送受信感度はこれに限定されず、感度を最大としたときにさらに離れた機器との間で信号の送受信を行うことのできるものを用いてもよい。
このアンテナ4は、図示しないコネクタ等を介して回路基板と電気的に接続されており、このコネクタを介して、図示しない電波送受信制御回路と接続されている。
なお、本実施形態では、アンテナ4及び図示しない送受信制御回路自体は、常に最大の電波送受信感度(例えば本実施形態ではアンテナ4から5m程度の範囲内で電波を送受信可能な電波送受信感度)が維持されており、後述するように、感度調整装置10(
図3参照)によるアンテナ4の被遮蔽範囲を変えることで電波送受信感度を機械的構成により調整するようになっている。
【0023】
外装ケース1内であって、モジュール3の上側(
図3に置いて上側、すなわち腕時計100の視認側)には文字板5が配置されている。なお、モジュール3の上側にはアナログ方式の文字板5の他に数字や文字等をデジタル方式で表示する液晶表示部等が設けられていてもよい。
また、この文字板5の上、すなわちモジュール3の上方には、環状(リング状)に形成された見切り部材6が、その環状中心を中心として回転可能に設けられている。なお、見切り部材6は回転可能なものに限定されない。
【0024】
外装ケース1は、表面側(
図3及び
図4において上側)の開口部と、裏面側(
図3及び
図4において下側)の開口部とを有している。そして、外装ケース1の表面側の開口部には、透明なガラス等の材料で形成された風防部材7が図示しない防水リング等を介して表面側の開口部を閉塞するように取り付けられている。
一方、外装ケース1の裏面側の開口部には、蓋部材としての裏蓋部材8が防水リング15を介して裏面側の開口部を閉塞するように取り付けられている。
【0025】
ここで、
図2から
図8を参照しつつ、本実施形態の腕時計に設けられる裏蓋部材8について、詳細に説明する。
本実施形態において、裏蓋部材8は、裏蓋本体81、回転部材82、係止用リング部材83を備えている。
本実施形態では、これら裏蓋部材8を構成する部材のうち、裏蓋本体81及び係止用リング部材83は、例えばステンレス、チタニウム等の金属材料によって形成されており、回転部材82は、例えば工業用プラスチックやエンジニアプラスチック等の樹脂(例えばポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)等)で形成されている。なお、裏蓋本体81、回転部材82及び係止用リング部材83を形成する材料はこれに限定されず、例えば裏蓋本体81や係止用リング部材83が例えば樹脂等の金属以外の材料により形成されていてもよいし、回転部材82がここに挙げた以外の材料により形成されていてもよい。
【0026】
図2、
図3、
図7等に示すように、裏蓋本体81は、ほぼ中央部が開口した環状(リング状)の部材であり、外装ケース1の開口部に取り付けられる蓋本体である。裏蓋本体81には、その外周に沿って4箇所に係止部811が設けられており、この係止部811にはねじ孔811aが形成されている。裏蓋部材8は、裏蓋本体81の係止部811をねじ84によって外装ケース1に固定することにより外装ケース1に取り付けられるようになっている。なお、裏蓋部材8を外装ケース1に取り付ける構成はここに例示したものに限定されない。
また、裏蓋本体81の内周面には、後述する係止用リング部材83のリング側ねじ溝832と螺合する本体側ねじ溝812が形成されている。
また、本実施形態では、裏蓋本体81の裏側の面(すなわち裏蓋部材8を外装ケース1に取り付けた際に外側となる面)であって、アンテナ4の設けられている位置に対応する位置(すなわち腕時計100の6時側)には、アンテナ4の位置を示すアンテナ指標813が付されている。なお、アンテナ指標813は、例えば、裏蓋本体81上に印刷、貼着、蒸着、彫刻等の手段により形成される。
【0027】
裏蓋本体81には、開口部814を閉塞するように防水リング85を介してほぼ円盤状の回転部材82が回転可能に配置されている。
回転部材82は、裏蓋本体81の開口部814の内径とほぼ同じ外径を有するように形成されており、裏蓋本体81の表面側(
図3において上側)から裏蓋本体81の開口部814に嵌め込むことにより裏蓋本体81の開口部814をほぼ隙間なく閉塞する。
また、回転部材82の表面側(すなわち裏蓋部材8を外装ケース1に取り付けた際に内側となる側)の外周には、裏蓋本体81の開口部814の内径よりも大きい外径を有する鍔部822が設けられており、回転部材82を裏蓋本体81の開口部814に嵌め込んだ際に、この鍔部822が裏蓋本体81の内側に係止されるようになっている。
回転部材82は、前述のように例えば樹脂等、電波を透過可能な材料により形成されており、その一部がモジュール3の上に保持されているアンテナ4の上を覆うように配置されている。なお、回転部材82を形成する材料は樹脂に限定されない。
【0028】
図7は、回転部材82を表面側(すなわち裏蓋部材8を外装ケース1に取り付けた際に内側となる側)から見た平面図である。
図7に示すように、回転部材82の表側の面には、回転部材82の回転の周方向に沿って磁性シート825が貼付(配置)されている。磁性シート825は、例えばフェライト等の磁性材料や磁性粉を含有する材料をシート状に加工した磁性体である。
本実施形態において、磁性シート825は、リング状に形成されたシートの一部が切り欠かれたほぼC字型となっている。
磁性シート825は、アンテナ4に入射しようとする電波を磁性材料の磁気損失により吸収して電波の透過を妨げるものであり、回転部材82のうち、磁性シート825が貼付(配置)されている部分は電波の透過を妨げる遮蔽部となり、磁性シート825が貼付(配置)されていない部分(すなわち、磁性シート825が切り欠かれている部分)は電波を透過させる開放部826となっている。
【0029】
また、
図2に示すように、回転部材82の裏側の面(すなわち裏蓋部材8を外装ケース1に取り付けた際に外側となる面)であって、開放部826に対応する位置には、当該部分が電波を透過させる開放部826であることを示す感度指標827が付されている。感度指標827は、例えば、回転部材82上に印刷、貼着、蒸着、彫刻等の手段により形成される。なお、感度指標827が付される位置は開放部826に対応する位置に限定されず、例えば、開放部826と点対称となる位置(円盤状の回転部材82の中心点を対称点としたときの点対称位置)に対応する位置等であってもよい。
このように感度指標827を設けることにより、ユーザは感度指標827の位置を見ることによって、腕時計100の視認側から目視にて容易に遮蔽部(すなわち磁性シート825が貼付されている部分)及び開放部826の位置を確認することができる。
また、本実施形態では、上述のように、裏蓋本体81の裏側の面には、アンテナ4の位置を示すアンテナ指標813が付されており、感度指標827をこのアンテナ指標813に合わせることにより簡易に開放部826をアンテナ4の位置に合わせることができる。
【0030】
また、
図2及び
図5に示すように、回転部材82の裏側の面(すなわち裏蓋部材8を外装ケース1に取り付けた際に外側となる面)のほぼ中央部には、細長く形成された溝状の凹部828が設けられている。凹部828は長手方向の中央部が最も深くなった断面ほぼ円弧状に形成されている。なお、凹部828の大きさ、深さ、形状等は人の爪先や硬貨等を差し込むことができる程度であればよく、特に限定されない。
回転部材82は、この凹部828に爪先や硬貨等を差し込んで
図2におけるいずれかの矢印方向に回すことにより、回転部材82を時計回り又は反時計回りに任意の位置まで回転させることができるようになっている。そして、回転部材82を回転させることにより遮蔽部(すなわち磁性シート825が貼付されている部分)及び開放部826の位置を変更し、遮蔽部により遮蔽されるアンテナ4の被遮蔽範囲を調整することにより、アンテナ4の電波送受信感度を調整可能に構成されている。
【0031】
係止用リング部材83は、外周面にリング側ねじ溝832が形成された環状(リング状)の部材である。
係止用リング部材83の一端側には、係止用リング部材83の環状中心に向かってほぼ水平に張り出した張出部833が形成されている。なお、張出部833は、係止用リング部材83の全周に亘って設けられていてもよいし、係止用リング部材83の内周に沿って数箇所に部分的に設けられていてもよい。
係止用リング部材83は、裏蓋本体81に回転部材82を嵌め込んだ後に回転部材82の外周面と裏蓋本体81の内周面との間に装着することにより、回転部材82が裏蓋本体81から抜け落ちないように係止するものである。
具体的には、係止用リング部材83のリング側ねじ溝832と裏蓋本体81の本体側ねじ溝812とを螺合させることにより、係止用リング部材83の張出部833が回転部材82の鍔部822を上側(
図3及び
図4において上側)から係止するようになっている。これにより、回転部材82の鍔部822が防水リング85に押し付けられて裏蓋部材8の気密性が確保された状態となるとともに、回転部材82が裏蓋本体81に対して回転可能に取り付けられる。
【0032】
前述のように、回転部材82は、磁性シート825が貼付されている部分である遮蔽部と、磁性シート825が貼付されていない部分である開放部826とを備えており、ユーザの操作により回転部材82が外装ケース1の周方向に沿って回転すると、これにより遮蔽部及び開放部826の位置が変更され、遮蔽部により覆われるアンテナ4の被遮蔽範囲を調整することができるように構成されている。
アンテナ4の被遮蔽範囲の調整について、
図8及び
図9を参照して説明する。
図8及び
図9は、モジュール3に固定されたアンテナ4及び回転部材82の配置を腕時計100の表面側(
図3における上側)から見た図であり、モジュール3及びアンテナ4を二点鎖線で表している。
【0033】
ユーザの操作により、
図8に示すように、遮蔽部(すなわち磁性シート825が貼付されている部分)がアンテナ4の配置されている位置(すなわち、腕時計100における6時方向の位置)の上方に来るように回転部材82を回転させると、アンテナ4の上方が磁性シート825によって覆われるため(すなわち、アンテナ4の被遮蔽範囲が広くなるため)、アンテナ4に入射しようとする電波が磁性シート825によって吸収され、アンテナ4の電波送受信感度は低くなる。
また、ユーザの操作により、
図9に示すように、開放部826(すなわち磁性シート825が貼付されていない部分)がアンテナ4の配置されている位置(すなわち、腕時計100における6時方向の位置)の上方に来るように回転部材82を回転させると、アンテナ4の上方が磁性シート825によって覆われないため(すなわち、アンテナ4の被遮蔽範囲がなくなるため)、アンテナ4に入射しようとする電波がアンテナ4に入りやすくなり、アンテナ4の電波送受信感度は高くなる。
【0034】
なお、本実施形態では、外装ケース1の開口部を閉塞する裏蓋部材8の裏蓋本体81と、この裏蓋本体81に対して回転可能に取り付けられた回転部材82とにより、アンテナ4の電波送受信感度を調整する感度調整装置10が構成されている。
【0035】
この他、腕時計100は、例えば、各種モード切り替え等を行うための入力操作部、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、等から構成される制御部、電波の送受信を制御する送受信制御回路部、時刻補正等を行う計時回路部、発振回路部、指針を駆動させる指針駆動回路部等を備えている。これらは、一般的な腕時計に設けられているものと同様のものであるため、図示及び説明を省略する。
【0036】
次に、本実施形態における感度調整装置10及び電波通信機器である腕時計100の作用について説明する。
【0037】
本実施形態において、腕時計100は、感度調整装置10によってアンテナ4の被遮蔽範囲を調整することにより、アンテナ4の電波送受信感度を調整できるようになっている。
すなわち、腕時計100は、異なる電波送受信感度の下で実現される複数の通信モード(本実施形態では後述する「ペアリングモード」「データ同期モード」「端末捜索モード/忘れ物防止モード」)を実現可能となっており、感度調整装置10は、これら各通信モードに適した電波送受信感度となるようにアンテナ4の被遮蔽範囲を調整する。
なお、通信モードの種類はこれに限定されない。「データ同期モード」「端末捜索モード/忘れ物防止モード」のうちいずれか1つのみを有するものであってもよいし、これら3つの通信モード以外の通信モードを実現可能となっていてもよい。
【0038】
このうち、ペアリングモードは、例えばユーザが腕時計100と新たな端末装置(例えば友人の端末装置等)との間で新たにペアリングを成立させ(すなわち、端末装置間において相互に関連付けを行う初期の登録作業を行い)、データの送受信等ができる状態にするための通信モードである。例えば腕時計100と新たな端末装置である友人の携帯電話との間でペアリングを行う場合には、腕時計100からペアリングしたい端末装置に対して問合せ信号を送信し、送信先の端末装置からこの問合せ信号に対する応答信号が腕時計100に送信され、腕時計100のアンテナ4がこの応答信号を受信して制御部に送ると、腕時計100と当該端末装置との間でペアリングが成立する。
【0039】
ペアリングを行う際には、周囲に存する他の端末装置との間で予期せぬペアリングが成立することのないように、腕時計100と端末装置とが接触又はそれに近い距離まで接近した場合にのみ電波の送受信が可能な程度までアンテナ4の電波送受信感度が低くなるように調整することが好ましい。
このため、本実施形態では、入力操作部等からペアリングモードを選択する指示が入力されペアリングモードで通信を行う場合には、回転部材82の遮蔽部である磁性シート825が貼付されている部分がアンテナ4の上方に位置するように回転部材82を回転させ、アンテナ4の電波送受信感度が低くなるように調整する。
具体的には、ユーザが回転部材82の凹部828に爪部や硬貨等を差し仕込んで回転部材82を回転操作することにより、開放部826に対応して設けられている感度指標827が腕時計100の6時位置以外に配置される位置まで回転部材82を回転させ、遮蔽部(磁性シート825が貼付されている部分)がアンテナ4の上方を覆う位置にくるように調整する(
図8参照)。
この状態で、ユーザがペアリングの対象となる端末装置を腕時計100に接触又は10cm程度の距離まで近接させると、腕時計100のアンテナ4からペアリングのための問合せ信号(例えば腕時計100の個体識別番号等を含む信号)が送信され、この問合せ信号を受信可能な距離にある端末装置のみが当該信号を受信する。問合せ信号を受信した端末装置は応答信号(例えば当該端末装置の個体識別番号等を含む信号)を腕時計100に返信し、腕時計100のアンテナ4がこの応答信号を受信すると、当該応答信号が制御部に送られ、制御部は当該端末装置を以後腕時計100との間でデータの送受信が可能な端末装置として登録する。これによりペアリング(端末装置間の初期登録作業)が完了する。
【0040】
なお、ペアリングが成立したか否かは、文字板5上での指針や液晶表示部等におけるその旨の表示、図示しないライトの点滅、アラーム音等によりユーザに報知されるようにすることが好ましい。
また、アンテナ4の電波送受信感度の低い状態(すなわち、磁性シート825がアンテナ4の上方を覆っている状態)では目的の端末装置との間で適切にペアリングを成立させることができなかった場合(すなわち、ペアリングが成立していない旨の表示等がされた場合)には、ユーザが回転部材82の凹部828に爪部や硬貨等を差し仕込んで回転部材82を回転操作することにより、感度指標827が腕時計100の6時位置に配置される位置まで回転部材82を回転させ、開放部826(磁性シート825が貼付されていない部分)がアンテナ4の上方を覆う位置にくるように調整した上で、再度ペアリングを試みるようにしてもよい。
【0041】
これに対して、データ同期モードは、例えば既に腕時計100との間でペアリングが成立している端末装置であって、ユーザが身につけている端末装置等(例えば、ユーザの所持している図示しない携帯電話)、腕時計100の比較的近距離(例えばアンテナ4からの距離が1〜2m程度の範囲内)に位置する端末装置との間でデータの同期を図ることを想定した通信モードである。
また、端末捜索モードは、例えばユーザが腕時計100との間でペアリング済みである自己又は友人の端末装置等の場所を捜索する場合を想定した通信モードであり、忘れ物防止モードは、例えばユーザが腕時計100との間でペアリング済みである自分の端末装置から所定の距離(例えば5m程度)以上離れたときに、ブザー等により警告を発することを想定した通信モードである。
【0042】
これらはいずれも、既に腕時計100との間でペアリングが成立している端末装置との間で行われる通信であるため、予期しない端末装置との間で通信が成立するおそれはない。
このため、本実施形態では、入力操作部等から「データ同期モード」又は「端末捜索モード/忘れ物防止モード」を選択する指示が入力されこれらの通信モードで通信を行う場合には、回転部材82の開放部826である磁性シート825が貼付されていない部分がアンテナ4の上方に位置するように回転部材82を回転させ、アンテナ4の電波送受信感度が高くなるように調整する。
具体的には、ユーザが回転部材82の凹部828に爪部や硬貨等を差し仕込んで回転部材82を回転操作することにより、開放部826に対応して設けられている感度指標827が腕時計100の6時位置に配置される位置まで回転部材82を回転させ、開放部826(磁性シート825が貼付されていない部分)がアンテナ4の上方位置にくるように調整する(
図9参照)。
これにより、腕時計100は、アンテナ4が多少離れた距離にある端末装置との間で電波を送受信することのできる状態となり、例えばユーザが身に付けている携帯電話等との間でデータの送受信を行うことにより、相互のデータを同期させることができる。また、例えば端末捜索モードであれば、腕時計100から5m程度の範囲内に存するペアリング済みの端末装置に対して、腕時計100のアンテナ4から応答を要求する信号が送信され、端末装置がこの信号を受信して応答信号を腕時計100に送信すると、その旨がブザー等の音やライトの点滅等によりユーザに報知される。また、例えば忘れ物防止モードであれば、腕時計100のアンテナ4からペアリング済みの端末装置に対して応答を要求する信号が送信され、端末装置はこの信号を受信して応答信号を腕時計100に送信する。そして、端末装置からの応答信号が受信できなくなると、腕時計100の制御部は端末装置が所定の距離(本実施形態ではアンテナ4の電波送受信可能な範囲である5m)以上ユーザから離間したと判断して、その旨をブザー等の音やライトの点滅等によりユーザに報知する。
【0043】
以上のように、本実施形態によれば、異なる電波送受信感度の下で実現される複数の通信モード(例えばペアリングモード、データ同期モード、端末捜索モード/忘れ物防止モード)を実現可能であるため、ユーザの目的・用途に応じた各種の通信を行うことができる。
そして、アンテナ4の電波送受信感度をこれらの通信モードに適した感度に調整する手法として回転部材82を回転させて遮蔽部により覆われるアンテナ4の被遮蔽範囲を調整するという機械的な構成をとっているため、受信回路等、通信関連モジュールにおいて電波送受信感度の切り替えを行う場合と比較して、アンテナ4の電波送受信感度の調整にかかる電力消費量を抑えることができる。
また、腕時計100の場合、小型・軽量化が求められ、大型のバッテリを収容するスペースを確保することが難しいが、本実施形態における腕時計100は、外装ケース1の開口部に装着される裏蓋本体81と、アンテナ4を覆う位置に配置された回転部材82とにより構成される感度調整装置10を備えており、機械的な構成によりアンテナ4の電波送受信感度を調整することができる。このため、通信関連モジュールにおいて電波送受信感度の切り替えを行う場合と比較して電力消費量を抑えることができ、大型のバッテリ等を備える必要がないため、装置の小型・軽量化を図ることができる。
また、外装ケース1の開口部を閉塞する裏蓋部材8を構成する回転部材82に遮蔽部と開放部826とを設けて、この回転部材82を回転させることによりアンテナ4の電波送受信感度を調整することができるため、新たに電波送受信感度を調整するための部材を設けることなく通信モードに適した感度の調整を行うことが可能であり、装置構成の簡易化、小型・軽量化を実現することができる。
また、遮蔽部は、回転部材82の裏面側に磁性体である磁性シート825を貼付することにより構成されているため、製造等が容易であり、生産コストを低く抑えることが可能である。
【0044】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0045】
例えば、上記実施形態では、磁性体である磁性シート825がほぼC字型に配置される場合を例としたが、磁性シート825の形状や配置はこれに限定されない。
例えば、
図10に示すように、感度調整装置20を構成する回転部材92の裏面側の一部分のみに、アンテナ4を被覆することのできる大きさの磁性シート925を貼付してもよい。この場合には、磁性シート925が貼付されている部分が遮蔽部となり、それ以外の部分が開放部926となる。
したがって、ペアリングを行う際(すなわち「ペアリングモード」のとき)には、
図11に示すように、磁性シート925が貼付されている部分がアンテナ4を被覆する位置まで回転部材92を回転させる。これによりアンテナ4の電波送受信感度をペアリングに適した感度まで低下させることができる。そして、
図11に示す状態において端末装置間のペアリングが成立しなかったとき、又はペアリングが成立している端末装置同士でデータを同期させたり(すなわち「データ同期モード」のとき)、ペアリングが成立している端末の捜索等を行う場合(すなわち「端末捜索モード/忘れ物防止モード」のとき)には、
図12に示すように、開放部926(すなわち磁性シート925が貼付されていない部分)がアンテナ4の上に位置するように回転部材92を回転させる。これにより離れた場所にある端末装置間でも電波の送受信が可能な程度までアンテナ4の電波送受信感度を高くすることができる。
【0046】
また、本実施形態では、磁性体が回転部材82に貼付された磁性シート825である場合について説明したが、磁性体はシート状のものでなくてもよい。
また、磁性体は回転部材82のアンテナ4と対向する面に配置されていればよく、磁性体を配置する手法は貼付に限定されない。例えば、回転部材82の一部に磁性体を埋め込むことにより遮蔽部を形成してもよいし、磁性材料や磁性粉を含有する材料を蒸着、印刷する等の手法により回転部材82に磁性体を配置して遮蔽部を形成してもよい。
【0047】
また、本実施形態では、回転部材82において、磁性体である磁性シート825が貼付(配置)されている部分が遮蔽部となり、磁性シート825が貼付(配置)されていない部分が開放部826となる場合について説明したが、遮蔽部及び開放部の構成はこれに限定されない。
例えば、回転部材自体を電波の透過を妨げる電波遮蔽材料で形成し、この回転部材の一部を他の部分よりも厚く形成された肉厚部として、他の部分よりも電波が透過しにくいように構成してもよい。電波遮蔽材料とは、例えば電波を吸収する電波吸収体等、電波の透過を妨げることのできる材料であり、具体的には、例えば、磁性材料や磁性粉を含有する材料を所定の形状に成型したり、所定の形状に成型された基材に磁性シートを貼付することにより形成する。この場合には、肉厚部が遮蔽部となり、それ以外の部分が開放部となる。なお、肉厚部の位置を示すために、回転部材の裏側の面(すなわち裏蓋部材を外装ケースに取り付けた際に外側となる面)であって、肉厚部に対応する位置に、当該部分が遮蔽部であることを示す感度指標が付されることが好ましい。
このように肉厚部が遮蔽部となり、それ以外の部分が開放部となる場合にも、機械的な構成によりアンテナ4の電波送受信感度を調整することができ、感度調整のために大型のバッテリ等を備える必要がないため、装置の小型・軽量化を図ることができる。
【0048】
また、本実施形態では、遮蔽部に磁性体を配置して、磁性材料の磁気損失により電波を吸収することによって電波の透過を妨げる場合について説明したが、遮蔽部は電波の透過を妨げることができるものであればよく、その構成は磁気損失により電波を吸収するものに限定されない。
【0049】
また、回転部材は、アンテナ4を覆うことが可能な位置に配置され、回転させることによって遮蔽部及び開放部の位置を変更し、遮蔽部により遮蔽されるアンテナ4の被遮蔽範囲を調整することができるものであればよく、その形状や大きさ等はここに例示したものに限定されない。例えば、本実施形態で例示したものよりも径の小さな回転部材を設ける構成としてもよい。また、回転部材は、裏蓋部材8のほぼ中央部に配置されているものに限定されず、アンテナ4に対応する位置に偏って配置されていてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、裏蓋部材8が、裏蓋本体81、回転部材82、係止用リング部材83を備え、回転部材82が、係止用リング部材83によって裏蓋本体81に係止されている場合を例として説明したが、回転部材82を裏蓋本体81に係止する構成はこれに限定されない。
【0051】
また、本実施形態では、回転部材82に凹部828を設けて、この凹部828に爪部や硬貨等を差し込んで回転部材82を回転させる場合を例として説明したが、回転部材82を回転させる構成はこれに限定されない。例えば、回転部材82に凸部を設け、ユーザが凸部に指を掛けて回転部材82を回転させる構成としてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、「ペアリングモード」で通信を行う際にはアンテナ4の上に遮蔽部を位置させ、「データ同期モード」又は「端末捜索モード/忘れ物防止モード」で通信を行う際にはアンテナ4の上に開放部を位置させるというように、アンテナ4の電波送受信感度について2段階の調整を行う場合を例として説明したが、アンテナ4の電波送受信感度の調整は2段階に限定されない。
例えば、遮蔽部とアンテナ4との位置関係を段階的に調整することにより、アンテナ4全体が遮蔽される状態、アンテナ4が一部遮蔽される状態、アンテナ4全体が遮蔽されない状態のように、複数段階の調整ができるようにしてもよい。この場合には、ユーザは、「ペアリングモード」で通信を行う際に、アンテナ4全体が遮蔽される状態ではペアリングが成立しなかった場合に、ペアリングが成立するまでアンテナ4の電波送受信感度を段階的に上げていくことができる。
【0053】
また、本実施形態においては、腕時計100が指針を備えるアナログ式の腕時計である場合について説明したが、腕時計は、アナログ式に限定されない。例えば、液晶パネル等で構成された液晶表示部を備えるデジタル式の腕時計でもよいし、指針及び液晶表示部の双方を備える腕時計であってもよい。
【0054】
また、本実施形態においては、腕時計100の外装ケース1がほぼ円形であり、裏蓋本体81が環状(リング状)である場合を例として説明したが、腕時計100の外装ケース1の形状は特に限定されず、例えば四角形、楕円形等でもよい。この場合にも、回転部材は回転可能な形状(例えば円盤状)とするが、裏蓋本体及び裏蓋部材全体の形状は外装ケース1の形状に応じた形状(例えば四角形、楕円形等)とする。
【0055】
また、上記実施形態では、感度調整装置10が腕時計に適用される場合を例として示したが、感度調整装置10を適用可能な機器は腕時計に限られず、蓋部材によって開口部を閉塞される外装ケースを有する機器であれば本発明を適用可能である。例えば、携帯電話やPDA等の各種携帯端末装置、携帯型の音楽再生装置、小型ラジオ等に本発明を適用してもよい。
【0056】
その他、本発明が本実施形態に限定されず、適宜変更可能であることはいうまでもない。
【0057】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
蓋部材により開口部を閉塞されてなる外装ケース内に収納され外部の機器との間で無線信号を送受信可能なアンテナの電波送受信感度を調整する感度調整装置であって、
前記蓋部材は、
前記外装ケースの開口部に取り付けられた蓋本体と、
前記アンテナを覆う位置に配置されるとともに前記蓋本体に対して回転可能に取り付けられた回転部材と、
を備え、
この回転部材は、回転の周方向に沿って電波の透過を妨げる遮蔽部と電波を透過させる開放部とを備え、前記回転部材を回転させることにより前記遮蔽部及び前記開放部の位置を変更し、前記遮蔽部により遮蔽される前記アンテナの被遮蔽範囲を調整することにより、前記アンテナの電波送受信感度を調整可能に構成されていることを特徴とする感度調整装置。
<請求項2>
前記遮蔽部は、前記回転部材の前記アンテナと対向する面に磁性体を設けることにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の感度調整装置。
<請求項3>
前記回転部材は、その回転の周方向の一部に他の部分よりも厚く形成された肉厚部を有し、
この肉厚部により前記遮蔽部が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の感度調整装置。
<請求項4>
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の感度調整装置と、
前記感度調整装置により電波送受信感度を調整されるアンテナと、
前記アンテナを保持するモジュールと、
前記アンテナ及び前記モジュールを収納する外装ケースと、
を備えていることを特徴とする腕時計。