【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明は、
まず、母体内部に配置されたワークの座標を測定する位置測定装置
に向けられる。
【0020】
この発明に係る位置測定装置は、
母体を載置するためのステージと、
電子を発生させる陰極と、陰極から発生した電子がぶつかることによりX線を発生させるターゲットと、を含み、X線をステージに向けて照射するX線照射装置と、
X線照射装置から照射されてステージ上にある母体を透過したX線を検出し、母体内部のワークのX線画像データを作成する撮像装置と、
撮像装置から送られてきたX線画像データを処理することによって、母体内部におけるワークの座標を算出する演算装置と、
を備えている。
【0021】
そして、前述した技術的課題を解決するため、演算装置には、X線照射装置が始動してからの経過時間と、ターゲットの変形によって生じる、撮像装置により得られるX線画像のずれ量と、の関係をプロットした曲線状の検量線が記憶されており、演算装置は、ワークの撮像時点でのターゲットの変形によって生じた、撮像装置により得られるX線画像のずれ量を、検量線に基づいて求め、当該ずれ量を補正した上で、母体内部におけるワークの座標を算出するように構成したことを第1の特徴としている。
【0022】
なお、X線照射装置が始動してからの経過時間と、ターゲットの変形によって生じる、撮像装置により得られるX線画像のずれ量と、の関係をプロットして得られる上述の検量線の作成を、異なる日にわたって数回繰返して実施したところ、検量線は、良好な再現性を有していることがわかった。
【0023】
この発明に係る位置測定装置は、上記ステージにキャリブレーションマークが形成されていて、以下のように動作することを第2の特徴としている。
【0024】
(1)X線照射装置が始動してから不特定の時間が経過した第1時点(T1)において、撮像装置によりキャリブレーションマークを撮像し、演算装置において、得られたX線画像データからキャリブレーションマークの第1時点(T1)の座標(C1)を求める。
【0025】
(2)第1時点(T1)から特定の時間が経過した第2時点(T2)において、撮像装置によりキャリブレーションマークを再び撮像し、演算装置において、得られたX線画像データからキャリブレーションマークの第2時点(T2)の座標(C2)を求める。
【0026】
(3)演算装置において、第1時点(T1)の座標(C1)と、第2時点(T2)の座標(C2)と、の傾きと同じ傾きを有する検量線上の位置を求め、検量線上の位置に該当する、検量線における基準時間(t3)を
、t3=α/{(C2−C1)/(T2−T1)}の式(ただし、αは、検量線を、An=α[log{t3+(Tx−T1)}−logt3]といった対数曲線で表わしたときの傾き係数であり、TxはワークのX線画像データの撮像時点である。)により求め、次いで、検量線における基準時間(t3)から実際の基準時間(T3)を求める。
【0027】
(4)撮像装置により母体内部のワークを撮像し、ワークのX線画像データの撮像時点(Tx)と実際の基準時間(T3)との差を、検量線における基準時間(t3)に加え、検量線における撮像時点(tx)を求め、次いで、検量線における撮像時点(tx)におけるずれ量から、検量線における基準時間(t3)におけるずれ量を引く。
【0028】
(5)ずれ量を補正した上で、母体内部におけるワークの座標を算出する。
【0029】
この発明は、また、母体内部に配置されたワークの座標を測定する位置測定方法にも向けられる。
【0030】
この発明に係る位置測定方法は、
ステージ上に、母体を載置する工程と、
X線照射装置により母体にX線を照射する工程と、
撮像装置により母体を透過したX線を検出し、母体内部のワークのX線画像データを作成する工程と、
X線画像データを処理することによって、母体内部におけるワークの座標を算出する工程と、
を備えている。
【0031】
上述したX線照射装置は、電子を発生させる陰極と、前記陰極から発生した電子がぶつかることによりX線を発生させるターゲットと、を含んでいる。
【0032】
そして、この発明に係る位置測定方法は、前述した技術的課題を解決するため、X線照射装置が始動してからの経過時間と、ターゲットの変形によって生じる、撮像装置により得られるX線画像のずれ量と、の関係をプロットした曲線状の検量線を作成しておく工程をさらに備え、ワークの座標を算出する工程は、ワークの撮像時点でのターゲットの変形によって生じた、撮像装置により得られるX線画像のずれ量を、検量線に基づいて求め、当該ずれ量を補正した上で、母体内部におけるワークの座標を算出する工程を含むことを第1の特徴としている。
【0033】
この発明に係る位置測定方法は、上記ステージにキャリブレーションマークが形成されており、ワークの座標を算出する工程は、以下の工程を含むことを第2の特徴としている。
【0034】
(1)X線照射装置が始動してから不特定の時間が経過した第1時点(T1)において、撮像装置によりキャリブレーションマークを撮像し、演算装置において、得られたX線画像データからキャリブレーションマークの第1時点(T1)の座標(C1)を求める工程。
【0035】
(2)第1時点(T1)から特定の時間が経過した第2時点(T2)において、撮像装置によりキャリブレーションマークを再び撮像し、演算装置において、得られたX線画像データからキャリブレーションマークの第2時点(T2)の座標(C2)を求める工程。
【0036】
(3)演算装置において、第1時点(T1)の座標(C1)と、第2時点(T2)の座標(C2)と、の傾きと同じ傾きを有する検量線上の位置を求め、検量線上の位置に該当する、検量線における基準時間(t3)を
、t3=α/{(C2−C1)/(T2−T1)}の式により求め、次いで、検量線における基準時間(t3)から実際の基準時間(T3)を求める工程。
【0037】
(4)撮像装置により母体内部のワークを撮像し、ワークのX線画像データの撮像時点(Tx)と実際の基準時間(T3)との差を、検量線における基準時間(t3)に加え、検量線における撮像時点(tx)を求め、次いで、検量線における撮像時点(tx)におけるずれ量から、検量線における基準時間(t3)におけるずれ量を引く工程。
【0038】
(5)ずれ量を補正した上で、母体内部におけるワークの座標を算出する工程。
【0039】
この発明は、また、母体内部に配置されたワークの座標に関連する位置に基準マークを形成するためのマーク形成装置にも向けられる。
【0040】
この発明に係るマーク形成装置は、
母体を載置するためのステージと、
電子を発生させる陰極と、陰極から発生した電子がぶつかることによりX線を発生させるターゲットと、を含み、X線をステージに向けて照射するX線照射装置と、
X線照射装置から照射されてステージ上にある母体を透過したX線を検出し、母体内部のワークのX線画像データを作成する撮像装置と、
撮像装置から送られてきたX線画像データを処理することによって、母体内部におけるワークの座標を算出するとともに、ワークの座標に基づいて基準マークの位置となる基準マーク形成予定位置を算出する演算装置と、
母体における演算装置により算出された基準マーク形成予定位置に、基準マークを形成する基準マーク形成機構と、
を備えている。
【0041】
そして、この発明に係るマーク形成装置において、演算装置には、X線照射装置が始動してからの経過時間と、ターゲットの変形によって生じる、撮像装置により得られるX線画像のずれ量と、の関係をプロットした曲線状の検量線が記憶されており、演算装置は、ワークの撮像時点でのターゲットの変形によって生じた、撮像装置により得られるX線画像のずれ量を、検量線に基づいて求め、当該ずれ量を補正した上で、母体内部におけるワークの座標を算出するように構成したことを第1の特徴としている。
【0042】
この発明に係るマーク形成装置は、ステージにキャリブレーションマークが形成されており、ワークの座標を算出するため、以下のように動作することを第2の特徴としている。
【0043】
(1)X線照射装置が始動してから不特定の時間が経過した第1時点(T1)において、撮像装置によりキャリブレーションマークを撮像し、演算装置において、得られたX線画像データからキャリブレーションマークの第1時点(T1)の座標(C1)を求める。
【0044】
(2)第1時点(T1)から特定の時間が経過した第2時点(T2)において、撮像装置によりキャリブレーションマークを再び撮像し、演算装置において、得られたX線画像データからキャリブレーションマークの第2時点(T2)の座標(C2)を求める。
【0045】
(3)演算装置において、第1時点(T1)の座標(C1)と、第2時点(T2)の座標(C2)と、の傾きと同じ傾きを有する検量線上の位置を求め、検量線上の位置に該当する、検量線における基準時間(t3)を
、t3=α/{(C2−C1)/(T2−T1)}の式により求め、次いで、検量線における基準時間(t3)から実際の基準時間(T3)を求める。
【0046】
(4)撮像装置により母体内部のワークを撮像し、ワークのX線画像データの撮像時点(Tx)と実際の基準時間(T3)との差を、検量線における基準時間(t3)に加え、検量線における撮像時点(tx)を求め、次いで、検量線における撮像時点(tx)におけるずれ量から、検量線における基準時間(t3)におけるずれ量を引く。
【0047】
(5)ずれ量を補正した上で、母体内部におけるワークの座標を算出する。
【0048】
この発明に係るマーク形成装置が有利に適用されるのは、たとえば、前述した母体が、積層された複数のセラミックグリーンシートからなり、内部に未焼成の内部電極パターンが配置された、セラミックグリーンブロックであり、前述したワークが、内部電極パターンである場合である。
【0049】
この発明に係るマーク形成装置において、ステージは、撮像装置と基準マーク形成機構との間を移動できるように構成されることが好ましい。
【0050】
また、この発明に係るマーク形成装置において、ステージ、X線照射装置、撮像装置、および基準マーク形成機構が1つの筐体に収納されることが好ましい。
【0051】
この発明は、さらに、母体内部に配置されたワークの座標に関連する位置に基準マークを形成するためのマーク形成方法にも向けられる。
【0052】
この発明に係るマーク形成方法は、
ステージ上に母体を載置する工程と、
X線照射装置により母体にX線を照射する工程と、
撮像装置により母体を透過したX線を検出し、母体内部のワークのX線画像データを作成する工程と、
X線画像データを処理することによって、母体内部におけるワークの座標を算出するとともに、ワークの座標に基づいて基準マークの位置となる基準マーク形成予定位置を算出する工程と、
母体における基準マーク形成予定位置に基準マークを形成する工程と、
基準マークに基づいて、母体に対して所定の加工を行なう工程と、
を備えている。
【0053】
上述したX線照射装置は、電子を発生させる陰極と、陰極から発生した電子がぶつかることによりX線を発生させるターゲットと、を含む。
【0054】
そして、この発明に係るマーク形成方法は、X線照射装置が始動してからの経過時間と、ターゲットの変形によって生じる、撮像装置により得られるX線画像のずれ量と、の関係をプロットした曲線状の検量線を作成しておく工程をさらに備え、ワークの座標を算出する工程は、ワークの撮像時点でのターゲットの変形によって生じた、撮像装置により得られるX線画像のずれ量を、検量線に基づいて求め、当該ずれ量を補正した上で、母体内部におけるワークの座標を算出する工程を含むことを第1の特徴としている。
【0055】
この発明に係るマーク形成方法において、上述したステージにキャリブレーションマークが形成されており、ワークの座標を算出する工程は、以下の工程を含むことを第2の特徴としている。
【0056】
(1)X線照射装置が始動してから不特定の時間が経過した第1時点(T1)において、撮像装置によりキャリブレーションマークを撮像し、演算装置において、得られたX線画像データからキャリブレーションマークの第1時点(T1)の座標(C1)を求める工程。
【0057】
(2)第1時点(T1)から特定の時間が経過した第2時点(T2)において、撮像装置によりキャリブレーションマークを再び撮像し、演算装置において、得られたX線画像データからキャリブレーションマークの第2時点(T2)の座標(C2)を求める工程。
【0058】
(3)演算装置において、第1時点(T1)の座標(C1)と、第2時点(T2)の座標(C2)と、の傾きと同じ傾きを有する検量線上の位置を求め、検量線上の位置に該当する、検量線における基準時間(t3)を
、t3=α/{(C2−C1)/(T2−T1)}の式により求め、次いで、検量線における基準時間(t3)から実際の基準時間(T3)を求める工程。
【0059】
(4)撮像装置により母体内部のワークを撮像し、ワークのX線画像データの撮像時点(Tx)と実際の基準時間(T3)との差を、検量線における基準時間(t3)に加え、検量線における撮像時点(tx)を求め、次いで、検量線における撮像時点(tx)におけるずれ量から、検量線における基準時間(t3)におけるずれ量を引く工程。
【0060】
(5)ずれ量を補正した上で、母体内部におけるワークの座標を算出する工程。
【0061】
この発明に係るマーク形成方法において、好ましくは、上述の所定の加工は、母体をワークの位置に関連する位置で切断することである。