(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ヒートポンプは、需要温度が異なる複数の前記熱需要部に対し、前記需要温度が高いものから順に熱を供給することを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の熱供給システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般にヒートポンプでは熱源の出力温度及び出力流量が一定となる状態で駆動された場合、必ずしもエネルギー効率が高いとは言い難く、より一層のエネルギー効率の向上が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、熱需要部に対してヒートポンプによる熱供給を高い効率で行うことができる熱供給方法、及び熱供給システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱供給方法は、ヒートポンプから出力される熱源を介して熱需要部の被加熱媒体に熱を供給する熱供給方法であって、前記熱源における出力温度を所定の基準値よりも高く、前記熱需要部との間で熱交換した前記熱源における戻り温度を前記所定の基準値よりも低くするように前記ヒートポンプを駆動させることを特徴とする。
【0007】
本発明の熱供給方法によれば、熱源の出力温度を所定の基準値よりも高く、戻り温度を所定の基準値よりも低くするので、成績係数が高い状態でヒートポンプを使用することができる。よって、熱需要部に対して熱を効率的に供給することでエネルギー効率の向上を図ることができる。
【0008】
また、上記熱供給方法においては、前記熱源の流量を制御することで前記熱源における前記出力温度又は前記戻り温度を調整するのが好ましい。
この構成によれば、簡便且つ確実に熱源の温度を調整することができる。
【0009】
また、上記熱供給方法においては、需要温度が異なる複数の前記熱需要部に対して熱を供給するのが好ましい。
この構成によれば、需要温度が異なる複数の熱需要部に対して成績係数が高いヒートポンプを使用できるので、エネルギー効率をさらに向上させることができる。
【0010】
また、上記熱供給方法においては、前記熱源は、前記複数の熱需要部に対して、前記需要温度が高いものから順に熱を供給するのが好ましい。
この構成によれば、需要温度が高いものから順に熱源から熱が供給されるので、熱源の温度制御が容易となり、エネルギー効率を高めることができる。
【0011】
また、本発明の熱供給システムは、熱需要部の被加熱媒体に対して熱源を介して熱を供給するヒートポンプと、前記熱源における出力温度を所定の基準値よりも高く、前記熱需要部との間で熱交換した前記熱源における戻り温度を前記所定の基準値よりも低くするように前記ヒートポンプの駆動を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の熱供給システムによれば、制御部が熱源の出力温度を所定の基準値よりも高く、戻り温度を所定の基準値よりも低くすることで成績係数が高い状態でヒートポンプを駆動することができる。よって、熱需要部に対して熱を効率的に供給することでエネルギー効率の向上を図った熱供給システムを提供できる。
【0013】
また、上記熱供給システムにおいては、前記熱源が流れる流路と、該流路を閉塞可能なバルブと、を備え、前記制御部は、前記バルブを開閉することで前記熱源の流量を制御し、前記熱源における前記出力温度又は前記戻り温度を調整するのが好ましい。
この構成によれば、バルブの開閉を制御することで簡便且つ確実に熱源の温度を調整することができる。
【0014】
また、上記熱供給システムにおいては、前記流路は、第1の流路と、該第1の流路から分岐し、温度の異なる複数の前記熱需要部に対してそれぞれ前記熱源を供給する第2の流路と、を有し、前記バルブは、前記第1の流路における前記第2の流路との接続部分にそれぞれ設けられるのが好ましい。
この構成によれば、異なる複数の熱需要部にそれぞれ供給される熱源の流量を良好に調整できるので、エネルギー効率をさらに高めることができる。
【0015】
また、上記熱供給システムにおいては、前記ヒートポンプは、需要温度が異なる複数の前記熱需要部に対し、前記需要温度が高いものから順に熱を供給するのが好ましい。
この構成によれば、需要温度が高いものから順に熱源から熱が供給されるので、熱源の温度制御が容易となり、エネルギー効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱需要部に対してヒートポンプによる熱供給を高い効率で行うことができる熱供給方法、及び熱供給システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の熱供給方法及び熱供給システムに係る一実施例について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る熱供給システム100を概念的に示す図である。
図1に示されるように、熱供給システム100は、ヒートポンプ101と、ヒートポンプ101により加熱される被加熱媒体としての温水を貯留する第1水槽(熱需要部)110、第2水槽(熱需要部)111、第3水槽(熱需要部)112、及び制御部150を主体に構成されている。
【0020】
ヒートポンプ101は、蒸発、圧縮、凝縮、及び膨張の各工程からなるサイクルにより、低温の物体から熱を汲み上げ、高温の物体に熱を与える装置であり、エネルギー利用効率が比較的高く、また、CO
2等の化学物質の排出量が比較的少ないという利点を有する。
【0021】
ヒートポンプ101は、蒸発器、圧縮機、熱交換器、及び膨張弁等(不図示)を含む熱媒体回路を有する。なお、
図1では図を簡略化し、熱媒体回路のうち、第1水槽110、第2水槽111、及び第3水槽112に対して熱を供給する熱源(温水)が流れる流路120と、流路120を閉塞可能なバルブB1,B2,B3のみを図示している。第1水槽110、第2水槽111、及び第3水槽112は流路120に対して直列に接続されている。
【0022】
上記膨張弁及び蒸発器は減圧・膨張機能及び吸熱機能を有し、熱媒体が蒸発する際、その蒸発熱に相当する熱をサイクル外の熱源(例えば大気)から吸収する。また、圧縮機及び熱交換器は圧縮機能及び放熱機能を有し、熱媒体が凝縮する際、その凝縮熱に相当する熱をサイクル外の熱源(本実施例では水)に与えることができる。ヒートポンプ101の熱媒体としては、フロン系媒体、アンモニア、水などの公知の様々な熱媒体を適用可能である。
【0023】
第1水槽110、第2水槽111、及び第3水槽112は、それぞれの用途に応じた温度の温水を貯留するものである。各水槽110,111,112内の温水の温度を測定可能な温度計121,122,123がそれぞれ設けられている。
【0024】
各温度計121,122,123は制御部150に電気的に接続されており、制御部150は各水槽110,111,112内の温水の温度を検出可能となっている。第1水槽110、第2水槽111、及び第3水槽112内の温水の温度はそれぞれ異なる基準に基づいて管理される。
【0025】
具体的に本実施形態では、第1水槽110内の温水の温度は60℃を基準に管理され、第2水槽111内の温水の温度は50℃を基準に管理され、第3水槽112内の温水の温度は40℃を基準に管理される。
【0026】
本実施形態においては、熱需要部として必要とされる温度(需要温度)が高い方から順に流路120の上流側から下流側に向かって配置されている。すなわち、流路120の上流側から第1水槽110、第2水槽111、及び第3水槽112の順に配置されている。
【0027】
上記流路120は、ヒートポンプ101で加熱された温水が流れるメイン流路(第1の流路)120aと、メイン流路120aから分岐するサブ流路(第2の流路)120bと、を有する。メイン流路120aはヒートポンプ101に対して循環するように設けられている。サブ流路120bはメイン流路120aから分岐した後、第1水槽110へと引き回される第1サブ流路120b1と、第2水槽111へと引き回される第2サブ流路120b2と、第3水槽112へと引き回される第3サブ流路120b3と、を有する。
【0028】
上記バルブB1,B2,B3は、メイン流路120aにおける上記第1サブ流路120b1、第2サブ流路120b2、及び第3サブ流路120b3との接続部分にそれぞれ設けられている。
【0029】
上記制御部150はヒートポンプ101の各構成部材の駆動を制御するためのものである。制御部150はヒートポンプ101を構成する熱媒体回路の駆動全般を制御することで流路120を介して出力される熱源の温度を調整可能となっている。また、制御部150はバルブB1,B2,B3に電気的に接続されており、サブ流路120bを閉塞可能となっている。このように制御部150は、バルブB1,B2,B3の開閉を制御することで温水が流れるサブ流路120bの切り替えを行うようになっている。
【0030】
ヒートポンプ101は、第1水槽110、第2水槽111、及び第3水槽112内の温水(被加熱媒体)とサブ流路120b内を流れる熱源との間で熱交換を行うことで、各水槽110,111,112内の温水に対して熱を供給する。ヒートポンプ101から供給される熱源は、各水槽110,111,112内の温水と対向流方式で熱交換を行う。
【0031】
ところで、上記第1水槽110、第2水槽111、及び第3水槽112においては熱の放出が起こるため、時間の経過とともに貯留する温水の温度が上記基準温度から低下してしまう。本実施形態に係る熱供給システム100は、制御部150が上記温度計121,122,123によって各水槽110,111,112内の温水の温度を随時検出している。
【0032】
熱供給システム100は、上記各水槽110,111,112内の温水が基準温度よりも所定温度(5℃)だけ低下した場合、後述のように第1水槽110、第2水槽111、及び第3水槽112内の温水の温度を所定温度まで上昇させるべく、サブ流路120b内に熱源を供給し、所望の温水に対して熱を供給する。
【0033】
図2は、ヒートポンプ101における稼働パターンを示す図である。なお、同図における丸印は対象となる水槽内の温水と流路120内の温水との間で熱交換を行うことを意味する。なお、
図2において水槽1とは第1水槽110に対応し、水槽2とは第2水槽111に対応し、水槽3とは第3水槽112に対応している。
【0034】
図2に示す稼働パターン1は第1水槽110にのみ熱を供給するパターンである。
稼働パターン1では、制御部150がバルブB1のみを開き、バルブB2,B3を閉じた状態とする。このとき、ヒートポンプ101から供給される熱源はメイン流路120aから第1サブ流路120b1を流れて第1水槽110へと供給され、該第1水槽110内に貯留される温水を加熱する。
【0035】
具体的に稼働パターン1では、ヒートポンプ101から供給された熱源はメイン流路120aから第1サブ流路120b1を介して第1水槽110へと供給される。第1水槽110内の温水と熱交換をした第1サブ流路120b1内の熱源は再びメイン流路120aへと流れ込み、ヒートポンプ101に循環される。
【0036】
また、稼働パターン2は第2水槽111にのみ熱を供給するパターンである。稼働パターン2では、制御部150がバルブB2のみを開き、バルブB1,B3を閉じた状態とする。このとき、ヒートポンプ101から供給される熱源はメイン流路120aから第2サブ流路120b2を流れて第2水槽111へと供給され、該第2水槽111内に貯留される温水を加熱する。
【0037】
具体的に稼働パターン2では、ヒートポンプ101から供給された熱源はメイン流路120aから第2サブ流路120b2を介して第2水槽111へと供給される。第2水槽111内の温水と熱交換をした第2サブ流路120b2内の熱源は再びメイン流路120aへと流れ込み、ヒートポンプ101に循環される。
【0038】
また、稼働パターン3は第3水槽112にのみ熱を供給するパターンである。稼働パターン3では、制御部150がバルブB3のみを開き、バルブB1,B2を閉じた状態とする。このとき、ヒートポンプ101から供給される熱源はメイン流路120aから第3サブ流路120b3を流れて第3水槽112へと供給され、該第3水槽112内に貯留される温水を加熱する。
【0039】
具体的に稼働パターン3では、ヒートポンプ101から供給された熱源はメイン流路120aから第3サブ流路120b3を介して第3水槽112へと供給される。第3水槽112内の温水と熱交換をした第3サブ流路120b3内の熱源は再びメイン流路120aへと流れ込み、ヒートポンプ101に循環される。
【0040】
また、稼働パターン4は第1水槽110及び第2水槽111内の温水に熱を供給するパターンである。稼働パターン4では、制御部150がバルブB1,B2を開き、バルブB3を閉じた状態とする。このとき、ヒートポンプ101から供給される熱源はメイン流路120aから第1サブ流路120b1及び第2サブ流路120b2を介して第1水槽110及び第2水槽111へと供給され、該第1水槽110及び第2水槽111内に貯留される温水を加熱する。
【0041】
具体的に稼働パターン4では、ヒートポンプ101から供給された熱源はメイン流路120aから第1サブ流路120b1を介して第1水槽110へと供給される。第1水槽110内の温水と熱交換をした第1サブ流路120b1内の熱源は再びメイン流路120aへと流れ込み、その後、第2サブ流路120b2を介して第2水槽111へと供給される。第2水槽111内の温水と熱交換をして第2サブ流路120b2内を流れる熱源は再びメイン流路120aへと流れ込み、ヒートポンプ101に循環される。
【0042】
また、稼働パターン5は第1水槽110及び第3水槽112内の温水に熱を供給するパターンである。稼働パターン5では、制御部150がバルブB1,B3を開き、バルブB2を閉じた状態とする。このとき、ヒートポンプ101から供給される熱源はメイン流路120aから第1サブ流路120b1及び第3サブ流路120b3を介して第1水槽110及び第3水槽112へと供給され、該第1水槽110及び第3水槽112内に貯留される温水を加熱する。
【0043】
具体的に稼働パターン5では、ヒートポンプ101から供給された熱源はメイン流路120aから第1サブ流路120b1を介して第1水槽110へと供給される。第1水槽110内の温水と熱交換をした第1サブ流路120b1内の熱源は再びメイン流路120aへと流れ込み、その後、第3サブ流路120b3を介して第3水槽112へと供給される。第3水槽112内の温水と熱交換をして第3サブ流路120b3内を流れる熱源は再びメイン流路120aへと流れ込み、ヒートポンプ101に循環される。
【0044】
また、稼働パターン6は第2水槽111及び第3水槽112内の温水に熱を供給するパターンである。
稼働パターン6では、制御部150がバルブB2,B3を開き、バルブB1を閉じた状態とする。このとき、ヒートポンプ101から供給される熱源はメイン流路120aから第2サブ流路120b2及び第3サブ流路120b3を介して第2水槽111及び第3水槽112内の温水を加熱する。
【0045】
具体的に稼働パターン6では、ヒートポンプ101から供給された熱源はメイン流路120aから第2サブ流路120b2を介して第2水槽111へと供給される。第2水槽111内の温水と熱交換をした第2サブ流路120b2内の熱源は再びメイン流路120aへと流れ込み、その後、第3サブ流路120b3を介して第3水槽112へと供給される。第3水槽112内の温水と熱交換をして第3サブ流路120b3内を流れる熱源は再びメイン流路120aへと流れ込み、ヒートポンプ101に循環される。
【0046】
また、稼働パターン7は第1水槽110乃至第3水槽112内の温水に熱を供給するパターンである。稼働パターン7では、制御部150がバルブB1,B2,B3全てを開いた状態とする。このとき、ヒートポンプ101から供給される熱源はメイン流路120aから第1サブ流路120b1、第2サブ流路120b2、及び第3サブ流路120b3を介して第1水槽110、第2水槽111、及び第3水槽112内の温水を加熱する。
【0047】
具体的に稼働パターン7では、ヒートポンプ101から供給された熱源はメイン流路120aから第1サブ流路120b1を介して第1水槽110へと供給される。第1水槽110内の温水と熱交換をした第1サブ流路120b1内の熱源は再びメイン流路120aへと流れ込み、その後、第2サブ流路120b2を介して第2水槽111へと供給される。第2水槽111内の温水と熱交換をして第2サブ流路120b2内を流れる熱源は再びメイン流路120aへと流れ込み、その後、第3サブ流路120b3を介して第3水槽112へと供給される。第3水槽112内の温水と熱交換をして第3サブ流路120b3内を流れる熱源は再びメイン流路120aへと流れ込み、メイン流路120aを介してヒートポンプ101に循環される。
【0048】
また、稼働パターン8は、制御部150が全てのバルブB1,B2,B3を閉じ、第1水槽110、第2水槽111、及び第3水槽112のいずれに対しても熱を供給しないパターンである。なお、ヒートポンプ101の駆動を停止し、流路120内に温水を供給しないことで稼働パターン8を構成しても構わない。
【0049】
熱供給システム100は、このような稼働パターン1乃至8のいずれかに基づいて、例えば各水槽110,111,112内の温水の温度が基準温度から5℃低下すると、上記バルブB1,B2,B3のいずれかを開いて所望の水槽110,111,112に熱源を供給するようになっている。
【0050】
図3はヒートポンプ101で生成した熱源と各水槽110,111,112内の温水との熱交換を概念的に示す図である。
図3におけるΔ´Tは熱源における出力温度と熱交換後の温水との温度差を表すものである。また、Δ´´Tは熱源における熱交換後の温度、すなわち熱交換後にヒートポンプ101へと循環する熱源の温度と熱交換前の温水の温度との温度差を表すものである。
【0051】
例えば、
図3について稼働パターン1を例に挙げて説明する。
稼働パターン1において、制御部150は温度計121の検出結果から第1水槽110の温水の温度が基準温度(60℃)から5℃低下した、すなわち55℃になったと判断すると、バルブB1を開いて第1サブ流路120b1を介して第1水槽110に熱源を供給し、第1水槽110内の温水を65℃まで加熱する。
【0052】
サブ流路120b1内の熱源と第1水槽110内の温水とは対向流方式で熱交換を行うため、温水の温度を55℃から65℃といったように温度を10℃上昇させるために必要な熱源の温度は70℃となる。したがって、制御部150は稼働パターン1においては、ヒートポンプ101から出力温度が70℃の熱源を排出させる。
【0053】
出力温度が70℃の熱源は、第1水槽110と熱交換することで温度が60℃まで低下する(
図3における右下がりの直線)。一方、熱源と熱交換を行うことで温水は、55℃から65℃まで温度が上昇する(
図3における左上がりの直線)。
【0054】
このように稼働パターン1においては、制御部150は熱源が70℃の温度で出力されるようにヒートポンプ101を駆動させることで第1水槽110内の温水に熱を効率的に供給することができる。すなわち、制御部150は熱源の出力温度のみを制御すればよい。
【0055】
このような
図3に示される熱交換は、制御部150が熱源の出力温度のみを制御することで熱需要である水槽内の温水に対して効率的に熱を供給できる場合に対応するものである。したがって、バルブB2,B3のいずれか一方のみを開き、第2水槽111及び第3水槽112のいずれかに熱源を供給する稼働パターン2、3における熱源と温水との熱交換の概念図も
図3で表すことができる。例えば、稼働パターン2ではヒートポンプ101からの熱源の出力温度が60℃に設定され、稼働パターン3ではヒートポンプ101からの熱源の出力温度が50℃に設定される。
【0056】
本実施形態における熱供給システム100では流路120に対して直列に配置される熱需要部(第1水槽110、第2水槽111、及び第3水槽112)の基準温度(順に60℃、50℃、40℃)がそれぞれ10℃ずつ異なっている。また、上述のように各水槽110,111,112による熱交換後の熱源の温度は10℃低下するようになっている。
【0057】
そのため、熱源が隣接する熱需要部(第1水槽110、第2水槽111、及び第3水槽112)に対して連続して供給される駆動パターン4,6,7においては流路120の最上流に配置された水槽の基準温度に対応させて熱源の出力温度を設定するようにヒートポンプ101を駆動することで水槽内の温水に熱を効率的に供給することができる。
【0058】
稼働パターン4では、第1水槽110及び第2水槽111の温水がそれぞれ基準温度から5℃低下していることからヒートポンプ101は第1水槽110及び第2水槽111に熱源を供給する必要がある。
【0059】
具体的に制御部150は、稼働パターン1と同様、出力温度が70℃の熱源を第1水槽110に供給する。このとき、第1水槽110内の温水は熱源と熱交換することで65℃まで加熱され、熱交換後の熱源の温度は60℃となる。60℃の熱源は第1サブ流路120b1を介してメイン流路120aから第2サブ流路120b2を介して第2水槽111へと供給される。このとき、第2サブ流路120b2内の熱源の温度は60℃であることから第2水槽111内の温水と熱源とは稼働パターン2の場合と同様の条件で熱交換を行うことができる。
【0060】
また、稼働パターン6では、稼働パターン2と同様、出力温度60℃の熱源を第2水槽111に供給し、熱交換後の熱源を第3水槽112に供給するようにヒートポンプ101及びバルブB2,B3の開閉を制御すればよい。
【0061】
また、稼働パターン7では、稼働パターン1と同様、出力温度70℃の熱源を第1水槽110に供給し、熱交換後の熱源を第2水槽111、第3水槽112へと供給するようにヒートポンプ101及びバルブB1,B2,B3の開閉を制御すればよい。
【0062】
ところで、稼働パターン5では、上述した稼働パターン1乃至4、6、7と異なり、流路120に対して連続的に配置されない第1水槽110及び第3水槽112に対して熱を供給する必要がある。また、第1水槽110及び第3水槽112は基準温度が20℃と大きく異なっている。
【0063】
図4は上記稼働パターン5において、ヒートポンプ101から熱源を出力温度70℃で流路120に供給した場合(すなわち、本願発明を適用しない場合)における熱源と水槽内の温水との熱交換を概念的に示す図である。なお、
図4におけるΔ´Tは熱源における出力温度と熱交換後の第1水槽110内の温水との温度差を表すものである。また、Δ´´Tは熱源における熱交換後の温度、すなわち第3水槽112との熱交換後に流路120を介してヒートポンプ101へと循環する熱源の温度と熱交換前の第3水槽112内の温水の温度との温度差を表すものである。
【0064】
図4に示されるように第1水槽110内の温水は熱源との熱交換前における温度が55℃であり、熱交換後における温度が65℃である。また、第3水槽112内の温水は熱源との熱交換前における温度が35℃であり、熱交換後における温度が45℃である。また、出力温度70℃でヒートポンプ101から第1水槽110に供給された熱源は、熱交換により温度が60℃まで低下する。なお、以下の説明においては、
図4に示す熱源の温度を示す線を基準温度線Kと称する。
【0065】
上述したように第1水槽110の温水を基準温度まで加熱する際に必要とされる熱源の出力温度は70℃であり、第3水槽112の温水を基準温度まで加熱する際に必要とされる熱源の出力温度は50℃である。これに対し、稼働パターン5では、第1水槽110で熱交換をして第3水槽112に供給される熱源の温度、すなわち第3水槽112に対する熱源の出力温度が60℃となっている。そのため、第3水槽112に対して必要以上に高い温度の熱源を供給していることとなる。
【0066】
従って、稼働パターン5において、上記稼働パターン1乃至4、6、7と同様、ヒートポンプ101から出力温度が70℃の熱源を供給した場合、第3水槽112内の温水に対して効率的に熱を付与することができず、ヒートポンプ101のエネルギー効率としての成績係数(COP:coefficient of performance)が高いとは言い難かった。
【0067】
本実施形態に係る熱供給システム100は、上記問題を解決するためのものであり、制御部150が熱源における出力温度を所定の基準値としての基準温度線Kの温度よりも高く、熱需要部(第1水槽110、第2水槽111、及び第3水槽112)との間で熱交換した熱源における戻り温度を基準温度線Kの温度よりも低くするようにヒートポンプ101を駆動させるようにしている。
【0068】
図5はヒートポンプ101における熱源の出力温度及び戻り温度とCOP(エネルギー効率)との関係を表したグラフ(性能直線)である。
図5に示されるように、ヒートポンプ101が出力する熱源の温度が高くなる程、COPが低くなり、熱源のヒートポンプ101への戻り温度が低くなる程、COPが高くなることが分かる。
【0069】
制御部150は、ヒートポンプ101における
図5に示した性能直線に基づいて、基準温度線Kから熱源の出力温度及び戻り温度をパラメータとして振った場合の各々について計算を行い、高いCOPが得られる出力温度及び戻り温度を算出する。そして、その出力温度及び戻り温度を得るようにヒートポンプ101を駆動させる。
【0070】
図6は本実施形態に係る熱供給システム100が上記稼働パターン5によってヒートポンプ101を駆動する場合における熱源と水槽(第1水槽110及び第3水槽112)内の温水との熱交換を概念的に示す図である。
【0071】
図6に示されるように、本実施形態においては、制御部150が流路120から出力される熱源の温度を
図4に示した基準温度線K(70℃)よりも高い76.5℃まで上昇させ、熱交換後にヒートポンプ101へと循環する熱源の温度(戻り温度)が基準温度線K(50℃)よりも低い36.5℃まで低下させるようにヒートポンプ101を駆動させる。具体的に制御部150はヒートポンプ101の出力を高めることで出力される熱源の温度を上昇させるとともに熱源の流量を絞ることで上記戻り温度を低くする。
【0072】
本実施形態に係る制御部150の制御によれば、熱源の出力温度を76.5℃、戻り温度を36.5℃としているので、
図5に示したグラフからヒートポンプ101のCOP(エネルギー効率)は3.7となる。
【0073】
図7はヒートポンプ101を稼働パターン5で駆動させる際、本願発明を適用した場合(
図6参照)におけるCOPと、本願発明を適用しなかった場合(
図4参照)におけるCOPとを
図5から読み取って表すものである。
図7に示されるように、本願を適用しなかった場合、COPが3.45となり、本願を適用した場合のCOPの3.7よりも低くなる。
【0074】
以上に述べたように、本実施形態に係る熱供給システム100によれば、制御部150が熱源の出力温度が基準温度線Kの温度よりも高く、熱交換後の熱源の戻り温度が基準温度線Kの温度よりも低くなるようにヒートポンプ101を駆動させるので、COPを高くすることができ、エネルギー効率を向上させることができる。
【0075】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることは無く、発明の主旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、熱需要部として第1水槽110、第2水槽111、及び第3水槽112の3つを備えた構成を例に説明したが、熱需要部の数はこれに限定されることはない。例えば、水槽の数は2個、又は4個以上の構成であっても構わない。
【0076】
また、熱需要部が1個の場合においても本発明は適用可能である。この場合、制御部150はヒートポンプ101における性能直線に基づいて、基準温度線Kから熱源の出力温度及び戻り温度をパラメータとして振った場合の各々について計算を行い、高いCOPが得られる出力温度及び戻り温度を決定し、ヒートポンプ101を駆動させればよい。なお、高いCOPが出力温度及び戻り温度が得られない場合は基準温度線Kに基づいてヒートポンプ101を駆動させればよい。
【0077】
また、上記実施形態では、ヒートポンプ101が熱媒体の凝縮熱によって加熱した水を熱源として熱需要部である第1水槽110、第2水槽111、及び第3水槽112に対して熱を供給する構成を例に挙げたが、凝縮したフロン系媒体、アンモニア、水などの公知の様々な熱媒体を直接流路120に供給し、熱源として用いる構成であっても構わない。