【実施例】
【0027】
[試験1]
試験1は、木材本来の衝撃吸収性能を確認することを目的とした。繊維方向が軸方向(圧縮方向)と平行になるように製材された、軸方向に直交する平断面が正四角形のスギの角材(40×40×軸方向長さ70mm)を用意し、枠体が外嵌されていない状態で株式会社島津製作所製の圧縮試験機(オートグラフAG−100KNE型)へ設置し、2mm/minの条件で軸方向に圧縮した場合の、変位と圧縮荷重(反力)との関係を測定した。その結果を
図8に示す。
【0028】
図8から明らかなように、木材をその繊維方向に沿って圧縮すると、圧縮荷重は極めて安定的に推移し、高い衝撃吸収性能を発揮することが確認された。
【0029】
[試験2]
試験2では、上記実施形態1と同様に、軸方向の平断面形状が正四角形の木材の外側に中空筒状の枠体を嵌装してなるNo.1、2の衝撃吸収部材を用意した。木材としてスギの角材を用い、枠体にはアルミニウム(A5052)の押出成形品を用いた。各衝撃吸収部材の寸法については表1に示す。なお、表1中の正四角形の一辺の外寸L及び枠体の厚みTは、
図3に示されるL及びTに対応している。
【0030】
【表1】
【0031】
次いで、No.1の衝撃吸収部材について、上記試験1と同様に軸方向に圧縮し、変位と圧縮荷重(反力)との関係を測定した。また、枠体のみを同様に圧縮して変位と圧縮荷重(反力)との関係も測定した。そして、木材に枠体が嵌装された衝撃吸収部材の結果から、枠体のみの結果を差し引き、衝撃吸収部材における木材の変位と圧縮荷重(反力)との関係を求めた。その結果を
図9に示す。また、
図10に、圧縮後の衝撃吸収部材の状態を写真で示す。No.2の衝撃吸収部材についてもNo.1と同様に衝撃吸収部材における木材の変位と圧縮荷重(反力)との関係を求め、その結果を同様に
図11、12に示す。
【0032】
各衝撃吸収部材における木材の変位と圧縮荷重(反力)との関係を示す
図9と
図11のグラフを比較すると明らかなように、(正四角形の一辺の外寸L/厚みT)比が20のNo.1に比べ、(正四角形の一辺の外寸L/厚みT)比が10のNo.2では、木材の圧力荷重の変動が極めて小さかった。そして、No.2の衝撃吸収部材における木材の圧力荷重は、木材のみを圧縮した試験1の結果と同様に安定していた。そこで、各衝撃吸収部材の変形形態に注目したところ、いずれも中の木材は倒れることなく圧縮変形していたが、枠体の変形の態様は異なっていた。No.1の衝撃吸収部材では、枠体が、隣接する面が交互に内側と外側とに折れ曲がりながら、潰れていた(
図10参照)。その結果、内側に折れ曲がった枠体が木材に食い込んでいた。これに対し、No.2の衝撃吸収部材では、枠体が、全周が外側に拡がるように膨らむ変形を繰り返しながら潰れていた(
図12参照)。そして、No.2の衝撃吸収部材では、枠体が内側に入り込むことなく潰れており、枠体は木材に食い込んでいなかった。これらの結果から、軸方向に直交する平断面が正四角形の衝撃吸収部材では、(正四角形の一辺の外寸L/厚みT)比が特定の値をとる場合にのみ、枠体が外側にのみ膨らみながら圧縮し、木材へ食い込まないことが明らかとなった。その結果、木材本来の機能を的確に発揮させることができ、圧力荷重を安定させられることが明らかとなった。
【0033】
[試験3]
そこで、試験3では、軸方向の平断面形状が正四角形の中空筒状の枠体を試料とし、試験2と同様に上記試験1と同様に圧縮し、変形の形態を観察した。
図13〜16に、圧縮後の衝撃吸収部材の状態を写真で示す。なお、試験3では、アルミニウム(A5052)を押出成形して得たA〜Dの枠体を試料とした。A〜Dの枠体は、それぞれ正四角形の一辺の外寸Lは20mmであり、軸方向の長さは70mmとした。厚みのみが異なっている。各枠体の寸法を表2に示すとともに、その圧縮変形の形態を併記する。なお、表2においては、圧縮変形の形態について、試験2のNo.1のように内側にも外側にも折れ曲がりながら潰れていた場合には×、No.2のように外側にのみ膨らみながら潰れていた場合には○と記した。
【0034】
【表2】
【0035】
表2の結果から明らかなように、枠体の(正四角形の一辺の外寸L/厚みT)比を9〜12とすれば、枠体が、全周が外側に拡がるように膨らむ変形を繰り返しながら潰れ、内側には入り込まないことが明らかとなった(
図14、15参照)。一方、枠体の(正四角形の一辺の外寸L/厚みT)比が9〜12を外れると、隣接する面が交互に内側と外側とに折れ曲がりながら潰れており、枠体の一部が内方に入り込んでいた(
図13、16参照)。
【0036】
[試験4]
試験4では、試験3と同様に、軸方向の平断面形状が正四角形の中空筒状の枠体を試料とし、試験3と同様に圧縮し、変形の形態を観察した。この試験4では、表3に示される、正四角形の一辺の外寸Lや軸方向の長さも異なるE〜Kの枠体を試験に供した。なお、試験4では、アルミニウム(A6063)を押出成形して各試料を得た。表3に、試験3と同様に圧縮変形の形態を併記する。
【0037】
【表3】
【0038】
表3に示される結果から、正四角形の一辺の外寸Lや軸方向長さを変更しても、(正四角形の一辺の外寸L/厚みT)比
が9〜12でありさえすれば、枠体が、全周が外側に拡がるように膨らむ変形を繰り返しながら潰れ、内側には入り込まないことが確認された。
図17に、代表して、枠体Kの圧縮後の状態を写真で示す。
【0039】
[試験5]
試験5では、表4に示される軸方向の平断面形状が長方形の中空筒状の枠体を試料とし、試験3、4と同様に圧縮し、変形の形態を観察した。その結果を、試験3、4と同様に表4に併記する。なお、試験5では、アルミニウム(A6063)を押出成形して各試料を得た。表4に示される短辺の外寸、長辺の外寸とは、軸方向に直交する平断面形状の長方形の外寸における短辺、長辺の長さである。
【0040】
【表4】
【0041】
表4から明らかなように、試験5においては、枠体の(長方形の短辺の外寸/厚み)比を9〜12としても、外側にのみ膨らみながら潰れる変形とはならず、内側と外側とに折れ曲がりながら潰れていた。
図18、19に、代表して、枠体S、Vの圧縮後の状態を写真で示す。この結果から、軸方向の断面が四角形の場合、少なくとも正四角形の場合には、枠体の厚みに対する辺の外寸の比を9〜12とすることで外側にのみ膨らみながら潰れるようにすることができることが明らかとなった。
【0042】
[試験6]
試験6では、上記実施形態3又は4と同様に、軸方向の平断面形状が円形の木材の外側に中空筒状の枠体を嵌装してなるNo.3〜8の衝撃吸収部材を用意した。木材としてスギの製材を用い、枠体にはアルミニウム(A5052)の押出成形品を用いた。各衝撃吸収部材の寸法については表5に示す。なお、表5中の長径a及び短径bは、
図7に示されるa及びbに対応している。次いで、No.3〜8の各衝撃吸収部材について、上記試験2と同様に圧縮し、変形の形態を観察した。
図20〜25に圧縮後の各衝撃吸収部材の状態を写真で示す。また、圧縮変形の形態について、表5に併記する。表5では、外側にのみ膨らみながら潰れていた場合には○と記し、その他の場合は注釈を付す。
【0043】
【表5】
【0044】
No.3〜6の結果から、衝撃吸収部材の軸方向に直交する平断面が円形の場合、正円形に限らず、楕円形でも枠体の厚みに関係なく全周が外側に拡がるように膨らむ変形を繰り返しながら潰れ、内側には入り込まないことが明らかとなった。なお、軸方向に直交する平断面が楕円形で枠体が肉薄のNo.5の衝撃吸収部材は、
図22(A)に示されるように、軸がずれて斜めに潰れたものの、枠体は内方へは入り込まず外方に膨らみながら潰れ、木材へ食い込まなかった。そのため、木材の繊維が不規則に傾くことはなく、
図22(B)に示されるように、圧縮荷重が安定的に推移した。また、No.5〜8の結果から、軸方向に直交する断面が楕円形の場合、その楕円形が平らになりすぎると、衝撃吸収部材全体が座屈しやすくなることも明らかとなり、楕円形の(長径a/短径b)比を3以下とすることがわかった。
【0045】
試験2〜6の結果、衝撃吸収部材の軸方向に直交する平断面形状が四角形から円形に近づくほど、枠体の厚みや平断面形状の平たさに関係なく外側にのみ膨らみながら潰れやすくなることが推察された。そこで、次の試験7では、軸方向に直交する平断面形状が四角形よりも円形に近い多角形の場合について、変形の態様を調べた。
【0046】
[試験7]
試験7では、上記実施形態2に例示されるような衝撃吸収部材の軸方向に直交する平断面形状が多角形のNo.9〜12の衝撃吸収部材を用意した。木材としてスギの製材を用い、枠体にはアルミニウム(A5052)の押出成形品を用いた。各衝撃吸収部材の形状及び寸法については表6に示す。次いで、No.9〜12の各衝撃吸収部材について、上記試験7と同様に圧縮し、変形の形態を観察した。圧縮変形の形態について、表6に併記する。表6では、外側にのみ膨らみながら潰れていた場合には○と記す。
【0047】
【表6】
【0048】
No.9〜11の結果から、軸方向に直交する平断面形状が正六角形の場合には、枠体は、厚みに関係なく全周が外側に拡がるように膨らむ変形を繰り返しながら潰れ、内側には入り込まないことが明らかとなった。
図26に、代表して、No.11の衝撃吸収部材の圧縮後の状態を写真で示す。また、軸方向に直交する平断面形状が正八角形の場合にも、枠体が全周が外側に拡がるように膨らむ変形を繰り返しながら潰れ、内側には入り込まないことが確認された(
図27参照)。これにより、軸方向に直交する平断面形状を正N角形(N≧5)とすることがわかった。