特許第5776552号(P5776552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5776552無機酸化物微粒子の有機溶媒分散体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776552
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】無機酸化物微粒子の有機溶媒分散体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09C 3/12 20060101AFI20150820BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20150820BHJP
   C01G 23/04 20060101ALI20150820BHJP
   C01G 25/02 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   C09C3/12
   C09D17/00
   C01G23/04 B
   C01G25/02
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-538514(P2011-538514)
(86)(22)【出願日】2010年10月26日
(86)【国際出願番号】JP2010069392
(87)【国際公開番号】WO2011052762
(87)【国際公開日】20110505
【審査請求日】2013年6月20日
(31)【優先権主張番号】特願2009-249166(P2009-249166)
(32)【優先日】2009年10月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079120
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】長川 敬一
(72)【発明者】
【氏名】川▲さき▼ 徳明
(72)【発明者】
【氏名】宮田 篤
(72)【発明者】
【氏名】平田 宜寛
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0154086(US,A1)
【文献】 特開2007−119310(JP,A)
【文献】 特開2009−073685(JP,A)
【文献】 特開2009−035573(JP,A)
【文献】 特開2009−132819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/00− 3/12
C09D 17/00
C01G 1/00− 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニアとチタニアから選ばれる無機酸化物微粒子のアルコール分散体に酸の存在下に−20〜10℃の範囲の温度にてビニルトリアルコキシシラン(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルコキシシラン及びフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種のシランカップリング剤を加え、混合、攪拌して、上記無機酸化物微粒子を表面処理した後、上記アルコールを親油性有機溶媒に置換することを含む無機酸化物微粒子の有機溶媒分散体の製造方法。
【請求項2】
酸が有機酸又は無機酸である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
無機酸化物微粒子がジルコニアであり、シランカップリング剤がビニルトリアルコキシシラン及び(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルコキシシランから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
無機酸化物微粒子がチタニアであり、シランカップリング剤が(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルコキシシラン及びフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
親油性有機溶媒がメチルエチルケトン又はトルエンである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
アルコール分散体におけるアルコールを蒸留置換法又は限外濾過濃縮置換法によって親油性有機溶媒に置換する請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無機酸化物微粒子の有機溶媒分散体の製造方法に関し、詳しくは、ジルコニアとチタニアから選ばれる無機酸化物微粒子の透明性にすぐれる有機溶媒分散体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化スズ、ジルコニア、チタニア等の無機酸化物の微粒子分散体は、種々の産業分野において用いられており、特に、光学分野においては屈折率を調節するために用いられている。なかでも、ジルコニアやチタニアは屈折率が高く、光学材料の屈折率を高めるために用いられている。
従来、このような微粒子分散体は、分散媒が水であるものが用いられてきたが、光学用フィルムの分野においては、水分散体は樹脂成分との混練が容易ではないので、近年、分散媒が有機溶媒である分散体が強く求められるに至っている。
例えば、ジルコニア微粒子の水分散体に有機溶媒と酢酸のようなジルコニア安定化剤を加え、水を有機溶媒に置換して、ジルコニア微粒子の有機溶媒分散体を得ることが提案されている(特許文献1参照)。しかし、このように、ジルコニア微粒子の分散媒を単に水から有機溶媒の代えても、ジルコニア微粒子が凝集しやすく、透明性も十分とはいえない。
そこで、無機酸化物微粒子の有機溶媒分散体を製造するに際しては、無機酸化物微粒子を親油性に改質するために、シランカップリング剤にて表面処理することが有効であることが既に知られている。無機酸化物微粒子をシランカップリング剤にて表面処理するとき、表面処理の効果を強くするために、沸点100℃以上である両親媒性の有機溶媒、例えば、1−ブタノールを分散媒とする無機酸化物微粒子の分散体を還流下にシランカップリング剤処理して、シランカップリング剤を加水分解させ、無機酸化物微粒子の表面の水酸基と反応させて、シランカップリング剤を無機酸化物微粒子の表面に化学的に結合させることが提案されている(特許文献2参照)。
しかし、このように高い温度でシランカップリング剤を加水分解させて、無機酸化物微粒子を表面処理するときは、一方において、シランカップリング剤自体も脱水縮合し、オリゴマー化し、場合によっては高分子量化し、溶媒に不溶化し、析出することも知られている。このように、シランカップリング剤が高分子量化し、溶媒に不溶化すれば、得られる分散体の透明性に有害な影響を与える。
特に、近年、屈折率が高く、透明性にすぐれるジルコニアやチタニアの有機溶媒分散体は、その特性を活かして、光学分野、なかでも、反射防止膜をはじめとする光学用フィルム等に広く用いられるに至っているが、ジルコニアやチタニアの微粒子分散体をシランカップリング剤にて表面処理するときに、上述したように、シランカップリング剤が不溶化し、溶媒中に析出すれば、透明性にすぐれる分散体を得ることができない。
【特許文献1】特開2007−238422号公報
【特許文献2】特開2005−314197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、無機酸化物微粒子の有機溶媒分散体を製造するに際して、上述した問題を解決するためになされたものであって、ジルコニアとチタニアから選ばれる無機酸化物微粒子の透明性にすぐれる有機溶媒分散体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、ジルコニアとチタニアから選ばれる無機酸化物微粒子のアルコール分散体に酸の存在下に−20〜60℃の範囲の温度にてシランカップリング剤を混合、攪拌して、上記無機酸化物微粒子を表面処理した後、上記アルコールを親油性有機溶媒に置換することを含む無機酸化物微粒子の有機溶媒分散体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、ジルコニアとチタニアから選ばれる無機酸化物微粒子の透明性にすぐれる有機溶媒分散体を得ることができる。特に、本発明によれば、原料分散体における無機酸化物微粒子の凝集が殆どなしに、又は原料分散体における無機酸化物微粒子の凝集を低減しつつ、目的とする透明性にすぐれる無機酸化物微粒子の有機溶媒分散体を得ることができる。
更に、従来、透明性にすぐれるチタニアの有機溶媒分散体を得ることは困難であったが、本発明によれば、製造条件を最適に選ぶとき、原料分散体よりも高い透明性を有するチタニアの有機溶媒分散体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明による無機酸化物微粒子の有機溶媒分散体の製造方法は、ジルコニアとチタニアから選ばれる無機酸化物微粒子のアルコール分散体に酸の存在下に−20〜60℃の範囲の温度にてシランカップリング剤を混合、攪拌して、上記無機酸化物微粒子を表面処理する第1の工程と、次いで、このようにシランカップリング剤にて表面処理した上記無機酸化物微粒子のアルコール分散体における分散媒である上記アルコールを親油性有機溶媒に置換する第2の工程を有する。
上記第1の工程において用いるジルコニアの微粒子のアルコール分散体は、通常、オキシ塩化ジルコニウムを水中、熱又はアルカリで加水分解した後、分散媒をアルコール置換する方法によって製造されるが、しかし、市販品も用いることができる。チタニアの微粒子のアルコール分散体も、同様にして、通常、四塩化チタン等のチタン塩を加水分解した後、分散媒をアルコール置換する方法により製造されるが、市販品も用いることができる。
上記ジルコニアやチタニアの微粒子のアルコール分散体における分散媒であるアルコールは、特に限定されるものではなく、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブチルアルコール、ヘプタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、オクタノール、ラウリルアルコール等を例示することができるが、通常、メタノール、エタノール又はイソプロパノール、が好ましく用いられ、なかでも、メタノールが特に好ましく用いられる。
また、上記ジルコニア又はチタニアの微粒子のアルコール分散体におけるジルコニア又はチタニアの微粒子の濃度は、特に限定されるものではないが、シランカップリング剤による表面処理が効率よく行うことができるように、通常、1〜40重量%の範囲であり、好ましくは、5〜30重量%の範囲である。
更に、上記ジルコニア又はチタニアの微粒子のアルコール分散体におけるジルコニア又はチタニアの微粒子の平均粒子径は、得られる有機溶媒分散体が透明性にすぐれるように、好ましくは、1〜50nmの範囲が適当である。
本発明の方法によれば、先ず、第1の工程として、上述したようなジルコニア又はチタニアの微粒子のアルコール分散体に酸の存在下に−20〜60℃の範囲の温度にてシランカップリング剤を混合、攪拌して、上記無機酸化物微粒子を表面処理する。
好ましくは、ジルコニア又はチタニアの微粒子のアルコール分散体に酸を加え、−20〜60℃の範囲の温度で適宜時間、例えば、0.5〜5時間の間、攪拌した後、この分散体にシランカップリング剤を加え、−20〜60℃の範囲の温度で適宜時間、例えば、3〜24時間の間、攪拌し、このようにして、ジルコニア又はチタニアの微粒子を表面処理する。ジルコニア又はチタニアの微粒子のアルコール分散体に酸を加えて攪拌する際の温度と、得られた分散体をシランカップリング剤にて表面処理する際の温度は同じである必要はないが、いずれも、−20〜60℃の範囲の温度であることが必要である。
本発明によれば、第1の工程においては、原料分散体、即ち、無機酸化物微粒子のアルコール分散体における無機酸化物微粒子の分散性を確保する等のために、酸の存在下に上記原料分散体の無機酸化物微粒子をシランカップリング剤にて処理する。
上記酸としては、有機酸が好ましく、具体例として、例えば、酢酸、ギ酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプロン酸、リノール酸、オレイン酸等の脂肪族カルボン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、リシノレイン酸等の脂肪族オキシカルボン酸、サリチル酸等の芳香族オキシカルボン酸を挙げることができる。このような有機酸は、ジルコニア又はチタニアの微粒子のアルコール分散体におけるジルコニア又はチタニア100重量部に対して、通常、10〜200重量部の範囲で用いられ、好ましくは、ジルコニア又はチタニアの微粒子のアルコール分散体におけるジルコニア又はチタニアに対して、10重量%以上であって、ジルコニア又はチタニアの微粒子のアルコール分散体におけるジルコニア又はチタニア100重量部に対して150重量部以下の範囲で用いられる。
しかし、本発明によれば、原料分散体をシランカップリング剤処理する際に存在させる上記酸として、無機酸も用いることができる。無機酸の具体例としては、例えば、硫酸、硝酸、リン酸等を挙げることができる。このような無機酸は、ジルコニア又はチタニアの微粒子のアルコール分散体におけるジルコニア又はチタニアに対して、通常、0.01〜1重量%の割合で用いられる。
本発明において用いるシランカップリング剤は、一般式(I)
−Si−X4−n
(式中、Rは非反応性基又は反応性官能基を含む基を示し、Xは加水分解性基又はヒドロキシ基を示し、nは1、2又は3である。)
で表される有機ケイ素化合物である。
非反応性基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基等を挙げることができ、反応性官能基を含む基としては、例えば、アミノ基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、ハロゲン原子、(メタ)アクリロイル基等を含む基を挙げることができる。
従って、非反応性基を有する所謂非反応性シランカップリング剤の具体例として、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ジメチルメトキシヒドロキシシラン等を挙げることができる。
反応性官能基を含む基を有する所謂反応性シランカップリング剤の具体例としては、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシメチルトリエキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン等を挙げることができる。
本発明によれば、このようなシランカップリング剤のなかでも、反応性官能基を含む基を有する反応性シランカップリング剤と、ハロゲン化アルキル基、なかでも、フッ化アルキル基を有する非反応性シランカップリング剤が好ましく用いられる。なかでも、本発明によれば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等のビニルトリアルコキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルコキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフッ化アルキル基を有するシランカップリング剤が好ましく用いられる。
特に、本発明によれば、ジルコニア又はチタニアの微粒子のアルコール分散体を酸の存在下に−20〜25℃の範囲の温度でシランカップリング剤処理し、この際に、好ましくは、上記ビニルトリアルコキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルコキシシラン又はフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤を用いることによって、原料分散体よりも高い透明性を有する有機溶媒分散体を得ることができる。
本発明においては、このようなシランカップリング剤は、ジルコニア又はチタニアの微粒子のアルコール分散体におけるジルコニア又はチタニア100重量部に対して5〜200重量部の範囲で用いられ、好ましくは、ジルコニア又はチタニアの微粒子のアルコール分散体におけるジルコニア又はチタニアに対して5重量%以上、特に、10重量%以上であって、ジルコニア又はチタニアの微粒子のアルコール分散体におけるジルコニア又はチタニア100重量部に対して150重量部以下の範囲で用いられる。シランカップリング剤をジルコニア又はチタニア100重量部に対して200重量部を超えて用いるときは、得られる有機溶媒分散体におけるジルコニア又はチタニアの屈折率を著しく低下させる。
特に、本発明によれば、無機酸化物微粒子がジルコニアであるとき、シランカップリング剤としては、ビニルトリアルコキシシラン及び(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルコキシシランから選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。他方、無機酸化物微粒子がチタニアであるときは、シランカップリング剤としては、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルコキシシラン及びフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。
本発明によれば、このように、無機酸化物微粒子のアルコール分散体をシランカップリング剤で表面処理した後、第2の工程として、得られた無機酸化物微粒子のアルコール分散体の分散媒である上記アルコールを親油性有機溶媒と置換し、かくして、目的とする上記無機酸化物微粒子の有機溶媒分散体を得る。
上記親油性有機溶媒としては、例えば、ケトン類、エステル類、エーテル類、炭化水素類、ハロゲン化炭素類、カルボン酸アミド類等を挙げることができる。具体的には、ケトン類としては、メチルエチルケトン(MEK)、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等、エステル類としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等を、エーテル類としては、ジブチルエーテル、ジオキサン等を、炭化水素類としては、n−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等を、また、ハロゲン化炭素水素類としては、四塩化炭素、ジクロロエタン、クロロベンゼン等を、カルボン酸アミドとしては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
無機酸化物微粒子のアルコール分散体の分散媒を親油性有機溶媒と置換するには、方法それ自体は既によく知られている蒸留置換法や限外濾過濃縮置換法によることができる。
蒸留置換法は、無機酸化物微粒子のアルコール分散体をそのアルコールの沸点以上の温度に加熱して、アルコールを蒸留し、除去しながら、分散体に目的とする有機溶媒を加える方法である。例えば、シランカップリング剤で表面処理した無機酸化物微粒子のアルコール分散体を常圧下又は減圧下に加熱し、アルコールを蒸留し、その留出速度と同じ速度にて有機溶媒を分散体に加えることによって、アルコールを上記有機溶媒に置換することができる。
従って、無機酸化物微粒子のアルコール分散体の分散媒をこのように蒸留置換法によって有機溶媒と置換するには、用いる有機溶媒は、蒸留条件下において、上記アルコールと同程度か、より高い沸点を有することが望ましい。
限外濾過濃縮置換法は、無機酸化物微粒子のアルコール分散体を限外濾過に付して、そのアルコールを膜透過させて除去しながら、分散体に目的とする有機溶媒を加える方法である。例えば、シランカップリング剤で表面処理した無機酸化物微粒子のアルコール分散体を限外濾過モジュールに圧送し、そのアルコールを膜透過させることによって、アルコールを除去し、段階的に又は連続的に目的とする有機溶媒を分散体に加えることによって、アルコールを上記有機溶媒に置換することができる。
本発明によれば、このようにして、原料分散体における無機酸化物微粒子の平均粒子径にもよるが、前述したように、平均粒子径が1〜50nmの無機酸化物微粒子のアルコール分散体を用いることによって、その無機酸化物微粒子の凝集が殆どなしに、又はその無機酸化物微粒子の凝集を低減して、通常、平均粒子径が1〜120nm、好ましくは、5〜100nmであり、無機酸化物微粒子濃度が1〜40重量%、好ましくは、5〜30重量%の有機溶媒分散体を得ることができる。必要であれば、平均粒子径が3〜30nm程度の無機酸化物微粒子の有機溶媒分散体をも得ることができる。また、得られた無機酸化物微粒子の有機溶媒分散体は、必要に応じて、更に、有機溶媒を蒸留等によって除去し、無機酸化物微粒子の濃度を高めることができる。
【実施例】
【0007】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はそれら実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
ジルコニアのメタノール分散体(堺化学工業(株)製SZR−M、ジルコニア濃度10重量%、ジルコニアの平均粒子径3nm、全光線透過率88.1%)100gに酢酸(和光純薬工業(株)製試薬特級)13gを加え、50℃で1時間攪拌した。この分散体にビニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−1003)4gを加え、50℃で一晩攪拌した。このように処理した分散体を常圧下、加熱して、メタノールを留出させつつ、分散体に上記メタノールの留出速度と同じ速度でメチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製試薬特級)を滴下しながら溶媒置換を行って、ジルコニアのメチルエチルケトン分散体を得た。
実施例2
ジルコニアのメタノール分散体(堺化学工業(株)製SZR−M)100gに酢酸(和光純薬工業(株)製試薬特級)13gを加え、23℃で1時間攪拌した。この分散体にビニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−1003)4gを加え、23℃で一晩攪拌した。このように処理した分散体を加圧下に(株)ノリタケカンパニーリミテド製セラミックフィルターを用いて限外濾過し、メタノールを膜透過させて除去しつつ、分散体に上記メタノールの透過速度と同じ速度でメチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製試薬特級)を加えながら溶媒置換を行って、ジルコニアのメチルエチルケトン分散体を得た。
実施例3
ジルコニアのメタノール分散体(堺化学工業(株)製SZR−M)100gに酢酸(和光純薬工業(株)製試薬特級)13gを加え、50℃で1時間攪拌した。この分散体に3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−5103)2gを加え、50℃で一晩攪拌した。このように処理した分散体を常圧下、加熱して、メタノールを留出させつつ、分散体に上記メタノールの留出速度と同じ速度でメチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製試薬特級)を滴下しながら溶媒置換を行って、ジルコニアのメチルエチルケトン分散体を得た。
実施例4
ジルコニアのメタノール分散体(堺化学工業(株)製SZR−M)100gに酢酸(和光純薬工業(株)製試薬特級)13gを加え、23℃で1時間攪拌した。この分散体に3−メタアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−503)2gを加え、23℃で一晩攪拌した。このように処理した分散体を常圧下、加熱して、メタノールを留出させつつ、分散体に上記メタノールの留出速度と同じ速度でメチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製試薬特級)を滴下しながら溶媒置換を行って、ジルコニアのメチルエチルケトン分散体を得た。
実施例5
ジルコニアのメタノール分散体(堺化学工業(株)SZR−M)100gに1−ブチルアルコール(和光純薬工業(株)製試薬特級)200gを加えた後、エバポレータを用いて濃縮して、ジルコニア濃度10重量%の1−ブチルアルコール分散体100gを得た。この分散体100gに酢酸(和光純薬工業(株)製試薬特級)13gを加え、50℃で1時間攪拌した。この分散体にビニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−1003)12gを加え、50℃で一晩攪拌した。このように処理したゾルを常圧下、加熱して、1−ブチルアルコールを留出させつつ、分散体に上記1−ブチルアルコールの留出速度と同じ速度でトルエン(和光純薬工業(株)製試薬特級)を滴下しながら溶媒置換を行って、ジルコニアのトルエン分散体を得た。
実施例6
ジルコニアのメタノール分散体(堺化学工業(株)SZR−M)100gに1−ブチルアルコール200gを加えた後、エバポレータを用いて濃縮して、ジルコニア濃度10重量%の1−ブチルアルコール分散体100gを得た。この分散体100gに酢酸(和光純薬工業(株)製試薬特級)13gを加え、23℃で1時間攪拌した。この分散体にビニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−1003)12gを加え、23℃で一晩攪拌した。このように処理したゾルを常圧下、加熱して、1−ブチルアルコールを留出させつつ、分散体に上記1−ブチルアルコール(和光純薬工業(株)製試薬特級)の留出速度と同じ速度でトルエンを滴下しながら溶媒置換を行って、ジルコニアのトルエン分散体を得た。
実施例7
ジルコニアのメタノール分散体(堺化学工業(株)製SZR−M)からメタノールを蒸留して、ジルコニア濃度を30重量%に調整した。この分散体100gに酢酸(和光純薬工業(株)製試薬特級)39gを加え、10℃で1時間攪拌した。この分散体に3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−503)6gを加え、10℃で一晩攪拌した。この分散体を常圧下、加熱して、メタノールを留出させつつ、分散体に上記メタノールの留出速度と同じ速度でメチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製試薬特級)を滴下しながら溶媒置換を行って、チタニアのメチルエチルケトン分散体を得た。
実施例8
ジルコニアのメタノール分散体(堺化学工業(株)製SZR−M)100gに酢酸(和光純薬工業(株)製試薬特級)13gを加え、−10℃で1時間攪拌した。この分散体に3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−503)2gを加え、−10℃で一晩攪拌した。このように処理した分散体を常圧下、加熱して、メタノールを留出させつつ、分散体に上記メタノールの留出速度と同じ速度でメチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製試薬特級)を滴下しながら溶媒置換を行って、ジルコニアのメチルエチルケトン分散体を得た。
実施例9
ジルコニアのメタノール分散体(堺化学工業(株)製SZR−M)100gに25重量%濃度の硝酸50mgを加え、50℃で1時間攪拌した。この分散体に3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−5103)2gを加え、50℃で一晩攪拌した。このように処理した分散体を常圧下、加熱して、メタノールを留出させつつ、分散体に上記メタノールの留出速度と同じ速度でメチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製試薬特級)を滴下しながら溶媒置換を行って、ジルコニアのメチルエチルケトン分散体を得た。
実施例10
アナターゼ型チタニアのメタノール分散体(堺化学工業(株)製SAD−M、チタニア濃度5重量%、チタニアの平均粒子径19nm、全光線透過率74.3%)100gに酢酸(和光純薬工業(株)製試薬特級)6.5gを加え、50℃で1時間攪拌した。この分散体に3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−503)1gを加え、50℃で一晩攪拌した。このように処理した分散体を常圧下、加熱して、メタノールを留出させつつ、分散体に上記メタノールの留出速度と同じ速度でメチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製試薬特級)を滴下しながら溶媒置換を行って、チタニアのメチルエチルケトン分散体を得た。
実施例11
アナターゼ型チタニアのメタノール分散体(堺化学工業(株)製SAD−M)100gに酢酸(和光純薬工業(株)製試薬特級)6.5gを加え、23℃で1時間攪拌した。この分散体にトリフルオロプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−7103)1gを加え、23℃で一晩攪拌した。このように処理した分散体を常圧下、加熱して、メタノールを留出させつつ、分散体に上記メタノールの留出速度と同じ速度でメチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製試薬特級)を滴下しながら溶媒置換を行って、チタニアのメチルエチルケトン分散体を得た。
実施例12
アナターゼ型チタニアのメタノール分散体(堺化学工業(株)製SAD−M)100gに酢酸(和光純薬工業(株)製試薬特級)6.5gを加え、10℃で1時間攪拌した。この分散体に3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−503)1gを加え、10℃で一晩攪拌した。このように処理した分散体を常圧下、加熱して、メタノールを留出させつつ、分散体に上記メタノールの留出速度と同じ速度でメチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製試薬特級)を滴下しながら溶媒置換を行って、チタニアのメチルエチルケトン分散体を得た。
実施例13
ルチル型チタニアのメタノール分散体(堺化学工業(株)SRD−M、チタニア濃度5重量%、チタニアの平均粒子径30nm、全光線透過率46.0%)100gに酢酸(和光純薬工業(株)製試薬特級)6.5gを加え、10℃で1時間攪拌した。この分散体にトリフルオロプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−7103)1gを加え、10℃で一晩攪拌した。このように処理した分散体を常圧下、加熱して、メタノールを留出させつつ、分散体に上記メタノールの留出速度と同じ速度でメチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製試薬特級)を滴下しながら溶媒置換を行って、チタニアのメチルエチルケトン分散体を得た。
実施例14
ルチル型チタニアのメタノール分散体(堺化学工業(株)SRD−M)100gに酢酸(和光純薬工業(株)製試薬特級)6.5gを加え、−10℃で1時間攪拌した。この分散体にトリフルオロプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−7103)1gを加え、−10℃で一晩攪拌した。このように処理した分散体を常圧下、加熱して、メタノールを留出させつつ、分散体に上記メタノールの留出速度と同じ速度でメチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製試薬特級)を滴下しながら溶媒置換を行って、チタニアのメチルエチルケトン分散体を得た。
比較例1
ジルコニアのメタノール分散体(堺化学工業(株)製SZR−M)100gに酢酸(和光純薬工業(株)製試薬特級)13gを加え、23℃で1時間攪拌した。この分散体にビニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−1003)4gを加え、65℃で一晩攪拌した。このように処理した分散体を常圧下、加熱して、メタノールを留出させつつ、分散体に上記メタノールの留出速度と同じ速度でメチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製試薬特級)を滴下しながら溶媒置換を行って、ジルコニアのメチルエチルケトン分散体を得た。
比較例2
ジルコニアのメタノール分散体(堺化学工業(株)SZR−M)100gに1−ブチルアルコール(和光純薬工業(株)製試薬特級)200gを加えた後、エバポレータを用いて濃縮して、ジルコニア濃度10重量%の1−ブチルアルコール分散体100gを得た。この分散体100gに酢酸13gを加え、98℃で1時間攪拌した。この分散体にビニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−1003)12gを加え、98℃で一晩攪拌した。このように処理した分散体を常圧下、加熱して、1−ブチルアルコールを留出させつつ、分散体に上記1−ブチルアルコールの留出速度と同じ速度でトルエン(和光純薬工業(株)製試薬特級)を滴下しながら溶媒置換を行って、ジルコニアのトルエン分散体を得た。
比較例3
ジルコニアのメタノール分散体(堺化学工業(株)SZR−M、ジルコニア濃度10重量%)100gに1−ブチルアルコール(和光純薬工業(株)製試薬特級)200gを加えた後、エバポレータを用いて濃縮して、ジルコニア濃度10重量%の1−ブチルアルコール分散体100gを得た。この分散体100gに酢酸13gを加え、117℃で還流下に1時間攪拌した。このように処理した分散体にビニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−1003)12gを加え、117℃で還流下に一晩攪拌した。このように処理した分散体を常圧下、加熱して、1−ブチルアルコールを留出させつつ、分散体に上記1−ブチルアルコールの留出速度と同じ速度でトルエン(和光純薬工業(株)製試薬特級)を滴下しながら溶媒置換を行った。
しかし、この溶媒置換中にジルコニアの分散体が白濁し始め、溶媒置換を終了した時点において、ジルコニアのトルエン分散体には沈殿が生じて、均一で透明な分散体を得ることができなかった。
比較例4
アナターゼ型チタニアのメタノール分散体(堺化学工業(株)製SAD−M)100gに酢酸(和光純薬工業(株)製試薬特級)6.5gを加え、65℃で還流下に1時間攪拌した。この分散体に3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−503)1gを加え、65℃で一晩攪拌したところ白濁した。このように処理した分散体を常圧下、加熱して、メタノールを留出させつつ、分散体に上記メタノールの留出速度と同じ速度でメチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製試薬特級)を滴下しながら溶媒置換を行った。このようにして溶媒置換を終了した後、チタニア粒子が完全に沈降して、上層が透明なメチルエチルケトンとなる二層分離状態となった。上層にレーザー光を当てたが、チンダル現象は確認されず、チタニア粒子は存在しなかった。
比較例5
ルチル型チタニアのメタノール分散体(堺化学工業(株)SRD−M)100gに酢酸(和光純薬工業(株)製試薬特級)6.5gを加え、65℃で還流下に1時間攪拌した。この分散体にトリフルオロプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−7103)1gを加え、65℃で一晩攪拌したところ、白濁した。このように処理した分散体を常圧下、加熱して、メタノールを留出させつつ、分散体に上記メタノールの留出速度と同じ速度でメチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製試薬特級)を滴下しながら溶媒置換を行った。
しかし、溶媒置換後のチタニアのメチルエチルケトン分散体は白濁しているうえに、沈殿が生じており、均一で透明な分散体を得ることができなかった。
上記実施例及び比較例において出発物質として用いたジルコニア及びチタニアの有機分散体の平均粒子径はそれぞれ下記のようにして測定した。また、上記実施例及び比較例においてそれぞれ得られたジルコニアの有機溶媒分散体及びチタニアの有機溶媒分散体について、全光線透過率と平均粒子径を測定した。結果を表1及び表2に示す。有機溶媒分散体の全光線透過率と平均粒子径は下記のようにして測定した。
全光線透過率
全光線透過率は、光路長が10mmのセルに分散液を充填し、可視紫外分光光度計(日本分光(株)製V−750)を用いて測定した。
平均粒子径
分散体における無機酸化物粒子の平均粒子径は、日機装(株)製UPA−UTを用いて、動的光散乱法により測定した。
【表1】
【表2】
比較例1は、ジルコニアのメタノール分散体を酸の存在下に65℃の温度でシランカップリング剤処理した後、分散媒をメチルエチルケトンに置換して、ジルコニアの有機溶媒分散体を得たものであるが、全光線透過率は62%である。
これに対して、実施例1〜4及び実施例7〜9は、ジルコニアのメタノール分散体を酸の存在下に本発明にて規定する範囲の温度でシランカップリング剤処理した後、分散媒をメチルエチルケトンに置換して、ジルコニアの有機溶媒分散体を得たものであり、いずれも全光線透過率が74%以上であり、好ましい場合には、全光線透過率は、原料分散体に近く、80%を越えている。
特に、ジルコニアのメタノール分散体を酸の存在下に25℃以下の温度で(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルコキシシランで処理した後、分散媒をメチルエチルケトンに置換することによって、透明性によりすぐれる有機溶媒分散体を得ることができる。
ジルコニアのメタノール分散体からトルエン分散体を得る場合、比較例2及び3においてはそれぞれ、98℃及び117℃で原料分散体をシランカップリング剤処理しており、比較例2は透明性の低いトルエン分散体を得たにすぎず、比較例3では、均一な分散体を得ることができない。
しかし、本発明によれば、実施例5及び6に示すように、比較例2に比べて、遥かに高い透明性を有するジルコニアのトルエン分散体を得ることができる。
一方、比較例4及び5にみられるように、チタニアのメタノール分散体を酸の存在下に65℃の温度でシランカップリング剤処理するときは、沈殿物が生成して、均一で透明な有機溶媒分散体を得ることができず、又は二層分離が生じて、分散体を得ることができない。
これに対して、実施例10〜14は、チタニアのメタノール分散体を酸の存在下に本発明にて規定する範囲の温度でシランカップリング剤処理した後、分散媒をメチルエチルケトンに置換して、チタニアの有機溶媒分散体を得たものであり、均一で透明なメチルエチルケトン分散体を得ることができる。
特に、本発明に従って、チタニアのメタノール分散体を酸の存在下に25℃以下の温度でトリフルオロプロピルトリメトキシシランで処理した後、分散媒をメチルエチルケトンに置換することによって、原料分散体よりも全光線透過率の高い有機溶媒分散体を得ることができる。
詳しくは、実施例14においては、原料分散体であるルチル型チタニアのメタノール分散体の全光線透過率は46.0%であるところ、原料分散体を10℃でトリフルオロプロピルトリメトキシシランで処理した後、分散媒をメチルエチルケトンに置換することによって、全光線透過率83%の有機溶媒分散体を得ることができる。実施例15においては、原料分散体を−10℃でトリフルオロプロピルトリメトキシシランで処理した後、分散媒をメチルエチルケトンに置換することによって、全光線透過率87%の有機溶媒分散体を得ることができる。