特許第5776553号(P5776553)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大正製薬株式会社の特許一覧

特許5776553酵素を用いた光学活性ビシクロ[3.1.0]ヘキサン誘導体の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776553
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】酵素を用いた光学活性ビシクロ[3.1.0]ヘキサン誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/303 20060101AFI20150820BHJP
   C07C 69/757 20060101ALI20150820BHJP
   C12P 7/62 20060101ALI20150820BHJP
   C07B 53/00 20060101ALN20150820BHJP
   C07B 57/00 20060101ALN20150820BHJP
【FI】
   C07C67/303
   C07C69/757 A
   C07C69/757 BCSP
   C12P7/62
   !C07B53/00 E
   !C07B57/00 340
【請求項の数】10
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2011-541814(P2011-541814)
(86)(22)【出願日】2010年11月18日
(86)【国際出願番号】JP2010006756
(87)【国際公開番号】WO2011061934
(87)【国際公開日】20110526
【審査請求日】2013年10月18日
(31)【優先権主張番号】特願2009-262827(P2009-262827)
(32)【優先日】2009年11月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 冗二
【審査官】 爾見 武志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−513070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/303
C07C 69/757
C12P 7/62
C07B 53/00
C07B 57/00
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)に示される化合物又はその塩の製造方法であって、
【化1】
(上記式(I)中、R1は、
(1)−OH、
(2)−O−Ra、又は
(3)−NRbc
であり、
aは、C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基であり(該C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基は、無置換又は1個以上のC1-6アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、アリール基若しくはヘテロアリール基で置換されている。)、
b及びRcは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基であり(該C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基は、無置換又は1個以上の水酸基、C1-6アルコキシ基、アリール基若しくはヘテロアリール基で置換されている。)、又はRb及びRcは、隣接する窒素原子と一緒になって互いに結合した4〜7員の飽和複素環を形成する(該飽和複素環は、無置換又は水酸基、C1-6アルキル基若しくはC1-6アルコキシ基で置換されている。)。)
(A)式(II)に示される化合物を式(III)に示される化合物に変換する工程、
【化2】
(上記式(II)中、R1は、前記式(I)中で定義したとおりである。)
【化3】
(上記式(III)中、R1は、前記式(I)中で定義したとおりであり、
2は、水素原子、C1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基又は−(CH2n−フェニル基であり(該C1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基又は−(CH2n−フェニル基は、無置換又は1個以上のハロゲン原子、水酸基、C1-6アルキル基若しくはC1-6アルコキシ基で置換されている。)、nは0、1又は2である。)
(B)前記式(III)に示される化合物を、式(IV)に示される化合物に変換する工程、
【化4】
(上記式(IV)中、R1及びR2は、前記式(I)及び前記式(III)中で定義したとおりである。)
(C)前記式(IV)に示される化合物を式(V)に示される化合物に変換する工程、及び
【化5】
(上記式(V)中、R1は前記式(I)中で定義したとおりである。)
(D)前記式(V)に示される化合物を、前記式(I)に示される化合物に変換する工程、
を含む製造方法。
【請求項2】
式(III)に示される化合物又はその塩の製造方法であって、
【化6】
(上記式(III)中、R1は、
(1)−OH、
(2)−O−Ra、又は
(3)−NRbc
であり、
aは、C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基であり(該C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基は、無置換又は1個以上のC1-6アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、アリール基若しくはヘテロアリール基で置換されている。)、
b及びRcは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基であり(該C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基は、無置換又は1個以上の水酸基、C1-6アルコキシ基、アリール基若しくはヘテロアリール基で置換されている。)、又はRb及びRcは、隣接する窒素原子と一緒になって互いに結合した4〜7員の飽和複素環を形成し(該飽和複素環は、無置換又は水酸基、C1-6アルキル基若しくはC1-6アルコキシ基で置換されている。)、
2は、水素原子、C1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基又は−(CH2n−フェニル基であり(該C1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基又は−(CH2n−フェニル基は、無置換又は1個以上のハロゲン原子、水酸基、C1-6アルキル基若しくはC1-6アルコキシ基で置換されている。)、nは0、1又は2である。)
式(II)に示される化合物を前記式(III)に示される化合物に変換する工程を含む製造方法。
【化7】
(上記式(II)中のR1は、前記式(III)中で定義したとおりである。)
【請求項3】
1が(2)−O−Raであり、Raがメチル基又はエチル基である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
2がメチル基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
式(II)に示される化合物を式(III)に示される化合物に変換する前記工程が、前記式(II)に示される化合物に、微生物由来の酵素存在下でアシル基供与体を反応させることにより、前記式(III)に示される化合物を製造する工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記微生物が、カンジダ属、アスペルギルス属、サーモミセス属、ペニシリウム属、アルカリゲネス属、ジエトリカム属、ガラクトミセス属及びディポダスカス属からなる群より選ばれる1種以上からなる、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
微生物由来の前記酵素が、リパーゼ、プロテアーゼ又はペクチナーゼである、請求項5又は6に記載の製造方法。
【請求項8】
微生物由来の前記酵素が、カンジダ・シリンドラセア、カンジダ・ルゴサ又はアルカリゲネス・エスピー由来のリパーゼである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項9】
前記酵素が担体に固定化されている、請求項5〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記アシル基供与体が酢酸ビニルまたは酢酸イソプロペニルである、請求項5〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬として有用な代謝型グルタミン酸受容体の調節物質であるビシクロ[3.1.0]ヘキサン誘導体の製造方法に関する。又、本発明は、この製造工程で製造される新規な中間体化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
グルタミン酸等の興奮性アミノ酸は、哺乳類の中枢神経系(CNS)において、長期増強(学習及び記憶)、シナプス可塑性の発生、運動制御、呼吸、心血管調節及び知覚といった種々の生理的プロセスを調節する。
【0003】
現在、グルタミン酸受容体は、「受容体がイオンチャネル型構造を持つイオノトロピック型」:イオンチャネル型グルタミン酸受容体(iGluR)及び「受容体がG−タンパク質と共役しているメタボトロピック型」:代謝活性型グルタミン酸受容体(mGluR)の2つのクラスに大きく分類されている(非特許文献1参照)。いずれのクラスの受容体も、興奮性経路に従って正常なシナプス伝達に介在しているようである。これらは、又、発生段階から生涯を通じてシナプス結合の修飾に関与しているようである(非特許文献2参照)。
【0004】
これまでに同定されている8つのサブタイプの代謝活性型グルタミン酸受容体は薬理学的特性と共役する細胞内セカンドメッセンジャーにより、3つのグループ(グループI、II及びIII)に分類される。この中で、グループIIの受容体(mGluR2/mGluR3)は、アデニル酸シクラーゼと結合し、ホルスコリン刺激による環状アデノシン−1−リン酸(cAMP)の蓄積を抑制する(非特許文献3参照)ことから、グループII代謝活性型グルタミン酸受容体に拮抗する化合物は、急性及び慢性の精神医学的疾患並びに神経学的疾患の治療又は予防に有効であると考えられる。
【0005】
3位置換の2−アミノ−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸誘導体は、グループII代謝活性型グルタミン酸受容体に対して強い拮抗作用を示すことが認められており、統合失調症、不安及びその関連疾患、二極性障害、てんかん等の精神医学的障害の治療及び予防、並びに、薬物依存症、認知障害、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、筋硬直に伴う運動障害、脳虚血、脳不全、脊髄障害、頭部障害等の神経学的疾患の治療及び予防に有用である(特許文献1〜3、非特許文献4〜6参照)。
【0006】
例えば、グループII代謝活性型グルタミン酸受容体拮抗物質として、下記式(A)に示される2−アミノ−3−アルコキシ−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸誘導体及びその薬学上許容される塩又はその水和物が開示されている(特許文献1参照)。これらは治療薬として有用であることから、費用対効果があって、かつ安全に大スケールで実施することができる、商業生産に適した合成方法の開発が必要とされている。
【0007】
【化1】
【0008】
(上記式(A)中、RA及びRBは同一又は異なって、水酸基、C1−10アルコキシ基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、1若しくは2個のフェニル基で置換されたC1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシC1−6アルコキシ基、ヒドロキシC2−6アルコキシ基、アミノ基、同一又は異なって1若しくは2個のC1−6アルキル基によって置換されたアミノ基、同一又は異なって1若しくは2個のC1−6アルコキシC1−6アルキル基によって置換されたアミノ基、同一又は異なって1若しくは2個のヒドロキシC2−6アルキル基によって置換されたアミノ基、同一又は異なって1若しくは2個のC1−6アルコキシカルボニルC1−6アルキル基によって置換されたアミノ基、あるいは、NRF−CHRG−A−COH(RF及びRGは同一又は異なって、水素原子、ヒドロキシC1−6アルキル基、ヒドロキシカルボニルC1−6アルキル基、C1−10アルキル基、フェニル基、フェニルC1−6アルキル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシフェニルC1−6アルキル基、ナフチル基、ナフチルC1−6アルキル基、芳香族複素環C1−6アルキル基、C1−6アルコキシC1−6アルキル基、アミノC2−6アルキル基、グアニジノC2−6アルキル基、メルカプトC2−6アルキル基、C1−6アルキルチオC1−6アルキル基、アミノカルボニルC1−6アルキル基を示し、あるいは、RF及びRGは互いに結合して、メチレン基、エチレン基、又はプロピレン基を形成する基を示し、互いに結合して環状アミノ基を形成することもできる。RHは水素原子又はカルボキシル基の保護基を示し、Aは単結合、メチレン基、エチレン基、又はプロピレン基を示す。)で表される天然型又は非天然型アミノ酸残基を示し、RCは、C1−10アシル基、C1−6アルコキシC1−6アシル基、ヒドロキシC2−10アシル基、C1−6アルコキシカルボニルC1−6アシル基、ヒドロキシカルボニルC1−6アシル基、又はRI−NH−A−CH−RG−CO(RG、Aは前記と同義であり、RIは水素原子又はアミノ基の保護基を示す。)で表されるアミノ酸残基を示し、RD及びREは同一又は異なって、水素原子、C1−10アルキル基、C2−10アルケニル基、フェニル基、ナフチル基、ヘテロ原子を1つ以上含む5員複素芳香環、あるいは、ハロゲン原子、C1−10アルキル基、C1−10アルコキシ基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ヒドロキシカルボニル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基及びフェノキシ基からなる群より選ばれる1〜5個の置換基で置換されたフェニル基を示す。さらに、RD及びREは、互いに結合して環状構造を形成することもできる。)
【0009】
上記式(A)に示されるグループII代謝活性型グルタミン酸受容体拮抗物質及びその合成中間体の実験室規模での合成法については、複数の報告がなされている(特許文献1及び3、非特許文献4及び6参照)。いずれの合成法においても、下記式(IA)に示される光学活性な化合物が合成出発物質もしくは製造中間体として用いられている。
【0010】
【化2】
【0011】
(上記式(IA)中のRAは、上記式(A)中で定義したとおりである。)
【0012】
従って、治療薬として有用と考えられる上記式(A)に示されるグループII代謝活性型グルタミン酸受容体拮抗物質の商業生産に適した製造方法を確立する上で、上記式(IA)に示される光学活性な化合物の、費用対効果が高く、安全で大量生産に適した合成方法を開発することは重要である。非特許文献7に上記式(IA)に示される光学活性な化合物の鏡像異性体の合成法が開示されている。非特許文献7に開示された合成法においては、光学活性な化合物を合成する手法としてトロストらが開発した触媒的不斉アリル化反応が用いられている。非特許文献7の中で触媒的不斉アリル化反応に光学活性配位子として用いられているトロストリガンド(N,N'−(1R,2R)−シクロヘキサン−1,2−ジイルビス[2−(ジフェニルフォスファニル)ベンズアミド])をその鏡像異性体(N,N'−(1S,2S)−シクロヘキサン−1,2−ジイルビス[2−(ジフェニルフォスファニル)ベンズアミド])に変更することにより、上記式(IA)に示される光学活性な化合物を合成することができ、従って、上記式(IA)に示される光学活性な化合物の不斉合成法は非特許文献7に開示されているということができる。
【0013】
又、上記式(IA)に示される化合物のラセミ体の合成法が、非特許文献8、9及び特許文献4に開示されている。非特許文献8では、上記式(IA)に示される化合物のラセミ体を光学異性体分離用HPLCカラムにて分離することによって上記式(IA)に示される光学活性な化合物が得られることが報告されている。さらに非特許文献10では、不斉リガンドを用いた反応により、上記式(IA)に示される光学活性な化合物が鏡像体過剰率38%及び54%にて得られることが開示されている。しかしながら、これらの合成法は上記式(IA)に示される光学活性な化合物の鏡像異性体との分離操作が必須であり、上記非特許文献7の不斉合成法に比べて大量生産に適した方法とは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2003/061698号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/000790号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2005/000791号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2002/000595号パンフレット
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Science, 258, 597−603 (1992)
【非特許文献2】Trends Pharmacol.Sci., 11, 508−515 (1990)
【非特許文献3】Trends Pharmacol.Sci., 14, 13−20 (1993)
【非特許文献4】J.Med.Chem., 47, 4570−4587 (2004)
【非特許文献5】Bioorg.Med.Chem., 14, 3405−3420 (2006)
【非特許文献6】Bioorg.Med.Chem., 14, 4193−4207 (2006)
【非特許文献7】Org.Lett., 6, 3775-3777 (2004)
【非特許文献8】J.Med.Chem., 43, 4893−4909 (2000)
【非特許文献9】Tetrahedron, 57, 7487−7493 (2001)
【非特許文献10】Org.Biomol.Chem., 2, 168−174 (2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記式(IA)に示される化合物の従来の不斉合成法(非特許文献7)では、光学活性体を得るためにトロストリガンドなどの高価な試薬を用いる必要があるため、製造費用が極めて高額であった。このため、上記式(IA)に示される化合物の商業生産に適した製造方法を確立する上で、製造費用の大幅な低減が課題とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本出願の発明者らは鋭意努力した結果、高価な試薬を用いることなく製造することのできる下記式(II)に示される非光学活性化合物に酵素を作用させて不斉アシル化反応を行い、下記式(III)に示される光学活性化合物へと高立体選択的に変換する手法開発すること、及び下記式(III)に示される化合物を下記式(I)に示される化合物へと変換する新規な合成経路を考案することにより、下記式(II)に示される非光学活性化合物から下記式(I)に示される光学活性化合物を高い光学純度で効率良く合成する新規な製造方法ならびに新規な合成中間体化合物を見出した。
【0018】
本発明は、治療薬として有用と考えられる上記式(A)に示されるグループII代謝活性型グルタミン酸受容体拮抗物質の製造上有用な、下記式(I)に示されるビシクロ[3.1.0]ヘキサン誘導体およびその塩の製造に関して、既存法との比較において製造費用の大幅な低減を可能にする製造方法を提供するものである。
【0019】
すなわち本発明は、
(i)式(I)に示されるビシクロ[3.1.0]ヘキサン誘導体およびその塩の製造方法であって、
【0020】
【化3】
【0021】
(上記式(I)中、R1は、
(1)−OH、
(2)−O−Ra、又は
(3)−NRbc
であり、
aは、C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基であり(該C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基は、無置換又は1個以上のC1-6アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、アリール基若しくはヘテロアリール基で置換されている。)、
b及びRcは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基であり(該C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基は、無置換又は1個以上の水酸基、C1-6アルコキシ基、アリール基若しくはヘテロアリール基で置換されている。)、又はRb及びRcは、隣接する窒素原子と一緒になって互いに結合した4〜7員の飽和複素環を形成する(該飽和複素環は、無置換又は水酸基、C1-6アルキル基若しくはC1-6アルコキシ基で置換されている。)。)
(A)式(II)に示される化合物を式(III)に示される化合物に変換する工程、
【0022】
【化4】
【0023】
(上記式(II)中、R1は、前記式(I)中で定義したとおりである。)
【0024】
【化5】
【0025】
(上記式(III)中、R1は、
(1)−OH、
(2)−O−Ra、又は
(3)−NRbc
であり、
aは、C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基であり(該C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基は、無置換又は1個以上のC1-6アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、アリール基若しくはヘテロアリール基で置換されている。)、
b及びRcは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基であり(該C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基は、無置換又は1個以上の水酸基、C1-6アルコキシ基、アリール基若しくはヘテロアリール基で置換されている。)、又はRb及びRcは、隣接する窒素原子と一緒になって互いに結合した4〜7員の飽和複素環を形成し(該飽和複素環は、無置換又は水酸基、C1-6アルキル基若しくはC1-6アルコキシ基で置換されている。)、
2は、水素原子、C1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基又は−(CH2n−フェニル基であり(該C1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基又は−(CH2n−フェニル基は、無置換又は1個以上のハロゲン原子、水酸基、C1-6アルキル基若しくはC1-6アルコキシ基で置換されている。)、nは0、1又は2である。)
(B)前記式(III)に示される化合物を、式(IV)に示される化合物に変換する工程、
【0026】
【化6】
【0027】
(上記式(IV)中、R1及びR2は、前記式(I)及び前記式(III)中で定義したとおりである。)
(C)前記式(IV)に示される化合物を式(V)に示される化合物に変換する工程、及び
【0028】
【化7】
【0029】
(上記式(V)中、R1は前記式(I)中で定義したとおりである。)
(D)前記式(V)に示される化合物を、前記式(I)に示される化合物に変換する工程を含む製造方法、
【0030】
(ii)式(III)に示される化合物又はその塩の製造方法であって、
【0031】
【化8】
【0032】
(上記式(III)中、R1は、前記式(I)中で定義したとおりであり、
2は、水素原子、C1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基又は−(CH2n−フェニル基であり(該C1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基又は−(CH2n−フェニル基は、無置換又は1個以上のハロゲン原子、水酸基、C1-6アルキル基若しくはC1-6アルコキシ基で置換されている。)、nは0、1又は2である。)
式(II)に示される化合物を前記式(III)に示される化合物に変換する工程を含む製造方法
【0033】
【化9】
【0034】
(上記式(II)中のR1は、前記式(III)中で定義したとおりである。)、
【0035】
(iii)R1が(2)−O−Raであり、Raがメチル基又はエチル基である、(i)又は(ii)に記載の製造方法、
【0036】
(iv)R2がメチル基である、(i)〜(iii)のいずれかに記載の製造方法、
【0037】
(v)式(II)に示される化合物を式(III)に示される化合物に変換する前記工程が、前記式(II)に示される化合物に、微生物由来の酵素存在下でアシル基供与体を反応させることにより、前記式(III)に示される化合物を製造する工程を含む、(i)〜(iv)のいずれかに記載の製造方法、
【0038】
(vi)前記微生物が、カンジダ属、アスペルギルス属、サーモミセス属、ペニシリウム属、アルカリゲネス属、ジエトリカム属、ガラクトミセス属及びディポダスカス属からなる群より選ばれる1種以上からなる、(v)記載の製造方法、
【0039】
(vii)微生物由来の前記酵素が、リパーゼ、プロテアーゼ又はペクチナーゼである、(v)又は(vi)に記載の製造方法、
【0040】
(viii)微生物由来の前記酵素が、カンジダ・シリンドラセア、カンジダ・ルゴサ又はアルカリゲネス・エスピー由来のリパーゼである、(v)に記載の製造方法、
【0041】
(ix)前記酵素が担体に固定化されている、(v)〜(viii)のいずれかに記載の製造方法、又は
【0042】
(x)前記アシル基供与体が酢酸ビニルまたは酢酸イソプロペニルである、(v)〜(ix)のいずれか1項記載の製造方法である。
【0043】
また、本発明において、たとえば以下の化合物を得ることもできる。
(xi)式(III)に示される化合物又はその塩
【0044】
【化10】
【0045】
(上記式(III)中、R1は、
(1)−OH、
(2)−O−Ra、又は
(3)−NRbc
であり、
aは、C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基であり(該C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基は、無置換又は1個以上のC1-6アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、アリール基若しくはヘテロアリール基で置換されている。)、
b及びRcは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基であり(該C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基は、無置換又は1個以上の水酸基、C1-6アルコキシ基、アリール基若しくはヘテロアリール基で置換されている。)、又はRb及びRcは、隣接する窒素原子と一緒になって互いに結合した4〜7員の飽和複素環を形成し(該飽和複素環は、無置換又は水酸基、C1-6アルキル基若しくはC1-6アルコキシ基で置換されている。)、
2は、水素原子、C1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基又は−(CH2n−フェニル基であり(該C1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基又は−(CH2n−フェニル基は、無置換又は1個以上のハロゲン原子、水酸基、C1-6アルキル基若しくはC1-6アルコキシ基で置換されている。)、nは0、1又は2である。)、又は
【0046】
(xii)式(IV)に示される化合物又はその塩
【0047】
【化11】
【0048】
(上記式(IV)中、R1は、
(1)−OH、
(2)−O−Ra、又は
(3)−NRbc
であり、
aは、C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基であり(該C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基は、無置換又は1個以上のC1-6アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、アリール基若しくはヘテロアリール基で置換されている。)、
b及びRcは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基であり(該C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基は、無置換又は1個以上の水酸基、C1-6アルコキシ基、アリール基若しくはヘテロアリール基で置換されている。)、又はRb及びRcは、隣接する窒素原子と一緒になって互いに結合した4〜7員の飽和複素環を形成し(該飽和複素環は、無置換又は水酸基、C1-6アルキル基若しくはC1-6アルコキシ基で置換されている。)、
2は、水素原子、C1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基又は−(CH2n−フェニル基であり(該C1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基又は−(CH2n−フェニル基は、無置換又は1個以上のハロゲン原子、水酸基、C1-6アルキル基若しくはC1-6アルコキシ基で置換されている。)、nは0、1又は2である。)である。
【発明の効果】
【0049】
本発明により、治療薬として有用と考えられる上記式(A)に示されるグループII代謝活性型グルタミン酸受容体拮抗物質の製造上有用な、上記式(I)に示されるビシクロ[3.1.0]ヘキサン誘導体およびその塩の製造に際し、既存法で必要とされたトロストリガンドなどの高価な試薬の使用を回避することができ、製造費用の大幅な低減が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本明細書において、特に断りのない限り、「−」および「〜」を用いて記載された数値範囲は、両端の値を含む。
【0051】
「C1-6アルキル基」とは、炭素数1〜6個の直鎖状又は分枝状のアルキル基を示し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル又はn−ヘキシル等の基を示す。
【0052】
「C3-8シクロアルキル基」とは、炭素数3〜8個の環状のアルキル基を示し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチル等の基を示す。
【0053】
「C1-6アルコキシ基」とは、炭素数1〜6個の直鎖状又は分枝状のアルコキシ基を示し、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ又はn−ヘキシルオキシ等の基を示す。
【0054】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原素、臭素及びヨウ素原子である。
【0055】
「アリール基」とは、芳香族炭化水素置換基を指し、単環又は多環(好ましくは単環から3環)とすることができ、多環中の環は融合していても融合していなくてもよい。例えば、フェニル、ナフチル又はビフェニル等の基を示す。
【0056】
「ヘテロアリール基」とは、環骨格中に少なくとも一つのヘテロ原子(窒素、酸素又は硫黄)を有する芳香環のことをいう。ヘテロアリール基は、単環又は多環(好ましくは単環から3環)とすることができ、多環中の環は融合していても融合していなくてもよい。例えば、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、フラン、ピラン、オキサゾール、イソオキサゾール、プリン、ベンズイミダゾール、キノリン、イソキノリン、インドール等の基を示す。ここで定義されるヘテロアリール基が置換されている場合、置換基は、ヘテロアリール基の環を構成する炭素原子に結合していてもよいし、また、環を構成する窒素原子に結合していてもよく、置換可能な原子価を有する。置換基は、好ましくは環を構成する炭素原子に結合する。
【0057】
「隣接する窒素原子と一緒になって互いに結合した4〜7員の飽和複素環」とは、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル又はアゼパニル等の基を示す。
【0058】
「微生物由来の酵素」とは、例えば真菌又は細菌等の微生物由来の酵素を示し、これら微生物をすりつぶした抽出液又はこれら微生物の培養上清より得ることができる。酵素としてはリパーゼやアシラーゼ、プロテアーゼ、ペクチナーゼ等があるが、1種類に限定されるものではなく、複数の酵素が共存してもよい。真菌としては、カンジダ属、アスペルギルス属、サーモミセス属、ペニシリウム属、ジエトリカム属、ガラクトミセス属及びディポダスカス属等が挙げられる。細菌としてはアルカリゲネス属等が挙げられる。
【0059】
「担体」とは、酵素を固定化することが可能な担体であれば特に制限はないが、例えば、炭酸ナトリウムとともに焼成した珪藻土であるセライト(商品名)や、カオリン鉱物を塩酸酸性のもとで水熱処理した後、それを造粒、焼成して得られる多孔質セラミックス系の担体であるトヨナイト(商品名)等が挙げられる。トヨナイトは、その粒子の表面を色々な有機官能基で容易に修飾することが可能である。トヨナイトの表面の修飾に用いているカップリング剤の有機官能基の種類を変えることで(メタクリロイロキシ基、フェニルアミノ基、アミノ基等)、各種酵素をより選択的に固定化できる。酵素をセライトやトヨナイト等の単体に固定化することにより、酵素の安定性や反応活性等が増大する。
【0060】
「塩」とは、例えば、硫酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸などの無機酸との塩;
酢酸、シュウ酸、乳酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、エタンスルホン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、ガラクタル酸、ナフタレン−2−スルホン酸などの有機酸との塩;
リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオンなどの1種又は複数の金属イオンとの塩;又は
アンモニア、アルギニン、リシン、ピペラジン、コリン、ジエチルアミン、4−フェニルシクロヘキシルアミン、2−アミノエタノール、ベンザチンなどのアミンとの塩が含まれる。
【0061】
「鏡像異性的に純粋な」とは、目的とするエナンチオマーが、目的としないエナンチオマーに対して、少なくとも50%e.e.(鏡像体過剰率)以上、好ましくは80%e.e.以上、さらに好ましくは90%e.e.以上存在することを意味する。
【0062】
本発明における式(I)に示した化合物の製造方法の好ましい実施形態は、式(II)の化合物を出発原料とするものである。好ましくは、R1が(1)−OH、(2)−O−RaでRaがC1-6アルキル基、又は(3)−NRbcでRb及びRcがいずれも水素原子、である。さらに好ましくは、R1が(2)−O−Raであり、Raがメチル基又はエチル基であり、特に好ましくは、R1が(2)−O−Raであり、Raがメチル基である。
【0063】
本発明における式(V)に示した化合物の製造方法の好ましい実施形態は、式(II)の化合物を出発原料とするものである。好ましくは、R1が(1)−OH、(2)−O−RaでRaがC1-6アルキル基、又は(3)−NRbcでRb及びRcがいずれも水素原子、である。さらに好ましくは、R1が(2)−O−Raであり、Raがメチル基又はエチル基であり、特に好ましくは、R1が(2)−O−Raであり、Raがメチル基である。
【0064】
本発明における式(IV)に示した化合物の製造方法の好ましい実施形態は、式(II)の化合物を出発原料とするものである。好ましくは、R1が(1)−OH、(2)−O−RaでRaがC1-6アルキル基、又は(3)−NRbcでRb及びRcがいずれも水素原子であり、R2はC1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基又は−(CH2n−フェニル基である。さらに好ましくは、R1が(2)−O−Raであり、Raがメチル基又はエチル基であり、R2はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、モノクロロメチル基、フェニル基である。特に好ましくは、R1が(2)−O−Raであり、Raがメチル基であり、R2はメチル基である。
【0065】
本発明における式(III)に示した化合物の製造方法の好ましい実施形態は、式(II)の化合物を出発原料とするものである。好ましくは、R1が(1)−OH、(2)−O−RaでRaがC1-6アルキル基、又は(3)−NRbcでRb及びRcが水素原子であり、R2はC1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基又は−(CH2n−フェニル基である。さらに好ましくは、R1が(2)−O−Raであり、Raがメチル基又はエチル基であり、R2はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、モノクロロメチル基、フェニル基である。特に好ましくは、R1が(2)−O−Raであり、Raがメチル基であり、R2はメチル基である。
【0066】
本発明の製造方法の一実施形態は、下記スキーム1及びスキーム2に示される。
(スキーム1)
【0067】
【化12】
【0068】
スキーム1の式中、R1は、前述の定義通りである。
3及びR4は、
(1)−OH、
(2)−O−Ra、又は
(3)−NRbc
であり、
aは、C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基であり(該C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基は、無置換又は一以上のC1-6アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、アリール基若しくはヘテロアリール基で置換されている。)、
b及びRcは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基であり(該C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基は、無置換又は一以上の水酸基、C1-6アルコキシ基、アリール基若しくはヘテロアリール基で置換されている。)、又はRb及びRcは、隣接する窒素原子と一緒になって互いに結合した4〜7員の飽和複素環を形成する(該飽和複素環は、無置換又は水酸基、C1-6アルキル基若しくはC1-6アルコキシ基で置換されている。)。
【0069】
式(VI)に示される化合物は、光学活性体であっても非光学活性体であってもよい。式(VI)に示される化合物は、シクロペンタジエンを例えば過酢酸のような過酸により酸化することで合成することができる(J. Am. Chem. Soc., 82, 4328, (1960)、Org. Synth., 42, 50, (1962)、Org. Lett., 7, 4573, (2005))。また、式(VI)に示される化合物の光学活性体は、例えば金属触媒存在下シクロペンタジエンを不斉酸化することで合成できる(Synlett, 827, (1995)、Tetrahedron Letters, 37, 7131, (1996)、特開平09-052887)。
【0070】
塩基存在下、式(VI)に示される化合物と式(VII)に示される化合物とを反応させることにより、式(VIIIa)に示される化合物と式(VIIIb)に示される化合物の混合物が得られる。
【0071】
ここで、R3及びR4は、好ましくは、同一又は異なって、水酸基、C1-6アルコキシ基又はアミノ基である。さらに好ましくは、R3及びR4は、メトキシ基又はエトキシ基であり、特に好ましくは、メトキシ基である。
【0072】
反応に使用する塩基を例示すれば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド類;
水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化アルカリ金属類;
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物類;
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等の有機アミン類;及び
リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド等のアミン金属塩類等が挙げられるが、好ましくはアルカリ金属アルコキシド類を、より好ましくはアルカリ金属メトキシド又はアルカリ金属エトキシドを、さらに好ましくはナトリウムメトキシドを用いる。
【0073】
塩基の使用量としては、反応を阻害せず、且つ副反応を引き起こさない量であれば特に限定されないが、通常、式(VI)に示される化合物に対して0.5〜5モル当量の範囲で使用することができ、好ましくは1〜3モル当量の範囲であり、より好ましくは1〜2モル当量の範囲である。
【0074】
式(VII)に示される化合物の使用量としては、反応を阻害せず、且つ副反応を引き起こさない量であれば特に限定されないが、通常、式(VI)に示される化合物に対して0.5〜5モル当量の範囲で使用することができ、好ましくは1〜3モル当量の範囲であり、より好ましくは1〜2.5モル当量の範囲である。
【0075】
反応に使用する溶媒は、当該反応条件下において安定であり、かつ、目的とする反応を妨げないものであれば特に制限はないが、生成物である式(VIIIa)に示される化合物と式(VIIIb)に示される化合物の混合物の収率が溶媒の種類に依存するため、好ましくはアルコール類を、さらに好ましくはメタノールを溶媒として使用する。
【0076】
反応溶媒の使用量としては、通常式(VI)に示される化合物に対して1〜100質量倍使用することができ、好ましくは、5〜30質量倍の範囲である。
【0077】
反応温度は、通常、−80℃から使用する溶媒の沸点まで可能であるが、好ましくは−20〜60℃の範囲であり,より好ましくは20〜40℃の範囲である。
【0078】
続いて、式(VIIIa)に示される化合物と式(VIIIb)に示される化合物の混合物を、添加物存在下で加熱することにより、式(IXa)に示される化合物と式(IXb)に示される化合物の混合物が得られる。
【0079】
反応に使用する溶媒は、当該反応条件下において安定であり、且つ目的とする反応を妨げないものであれば特に制限はない。溶媒の種類に生成物である式(IXa)に示される化合物と式(IXb)に示される化合物の混合物の収率が依存するため、好ましくは水及び極性有機溶媒類を、より好ましくは水及びジメチルスルホキシドを、更に好ましくは水とジメチルスルホキシドを0:5から1:5の範囲で混合したものを用いる。
【0080】
反応溶媒の使用量としては、通常式(VIIIa)に示される化合物と式(VIIIb)に示される化合物の混合物に対して1〜100質量倍使用することができ、好ましくは1〜20質量倍の範囲であり,より好ましくは1〜10質量倍の範囲である。
【0081】
反応温度は、通常、80℃〜200℃まで可能であるが、好ましくは90〜160℃の範囲で行うのがよく、さらに好ましくは100〜130℃の範囲がよい。
【0082】
反応温度が、使用する溶媒の沸点を超える場合はオートクレーブ等の耐圧力容器中で反応させることができる。
【0083】
また、本反応は添加物を加えることにより促進されるが、使用できる添加物を例示すれば塩類が挙げられ、好ましくは塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等のアルカリ金属ハロゲン化物塩類;
シアン化ナトリウム等のアルカリ金属シアン化物塩類;
塩化テトラn−ブチルアンモニウム、臭化テトラn−ブチルアンモニウム、ヨウ化テトラn−ブチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩類;又は
トリエチルアミン塩酸塩等の有機アミン塩類あるいはそれらの混合物である。また、塩化ナトリウムなどのアルカリ金属ハロゲン化物塩類等と酢酸等の酸を組み合わせて使用することもできる。
【0084】
添加物の使用量としては、反応を阻害せず、且つ副反応を引き起こさない量であれば特に限定されないが、通常、式(VIIIa)に示される化合物と式(VIIIb)に示される化合物の混合物に対して0.5〜5モル当量の範囲で使用することができ、好ましくは1〜4モル当量の範囲であり、より好ましくは1〜3モル当量の範囲である。
【0085】
続いて、式(IXa)に示される化合物と式(IXb)に示される化合物の混合物を添加物存在下で酸化することにより式(Xa)に示される化合物と式(Xb)に示される化合物の混合物が得られる。
【0086】
本反応はバナジルアセチルアセトネート(VO(acac)2)などの触媒の存在下でtert−ブチルヒドロペルオキシドなどの酸化剤を添加することにより進行する。
【0087】
反応に使用する溶媒は、当該反応条件下において安定であり、且つ目的とする反応を妨げないものであれば特に制限はない。溶媒の種類に生成物である式(Xa)に示される化合物と式(Xb)に示される化合物の混合物の収率が依存するため、好ましくは芳香族炭化水素類やハロゲン系炭化水素類などを、より好ましくはクロロベンゼンやトルエンを、更に好ましくはクロロベンゼンを使用する。
【0088】
反応溶媒の使用量としては、式(IXa)に示される化合物と式(IXb)に示される化合物の混合物に対して3〜100質量倍使用することができ、好ましくは、3〜20質量倍の範囲であり,より好ましくは5〜10質量倍の範囲である。
【0089】
反応温度は、通常、0℃〜100℃まで可能であるが、好ましくは30〜80℃の範囲で行うのがよく、さらに好ましくは50〜60℃の範囲がよい。
【0090】
酸化剤の使用量としては、反応を阻害せず、且つ副反応を引き起こさない量であれば特に限定されないが、通常、式(IXa)に示される化合物と式(IXb)に示される化合物の混合物に対して1〜3モル当量使用することができ、好ましくは、1〜2モル当量の範囲である。
【0091】
触媒の使用量としては、反応を阻害せず、且つ副反応を引き起こさない量であれば特に限定されないが、通常、式(IXa)に示される化合物と式(IXb)に示される化合物の混合物に対して0.01〜1モル当量使用することができ、好ましくは、0.2〜0.5モル当量の範囲である。
【0092】
また、式(IXa)に示される化合物と式(IXb)に示される化合物の混合物のエポキシ化は、適当な溶媒(たとえばジメチルスルホキシドと水の混合物)中でN−ブロモスクシンイミドやN−ヨードスクシンイミド等のハロゲン化剤を作用させハロヒドリン誘導体とした後、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセンなどの塩基で処理することにより行うこともできる。
【0093】
続いて、式(Xa)に示される化合物と式(Xb)に示される化合物の混合物を、エポキシドの開環を伴う分子内シクロプロパン化反応に供することにより式(II)に示される化合物が得られる。
【0094】
この反応はルイス酸の存在下で塩基を添加することにより進行する。
【0095】
好ましい実施形態においては、まず、式(Xa)に示される化合物と式(Xb)に示される化合物の混合物をルイス酸で処理した後、塩基を添加する。式(II)に示される化合物は所望の立体異性体として得られる。
【0096】
ルイス酸を例示すれば、R3Al、R2AlX、RAlX2、Al(OR)3、Ti(OR)4、RTi(OR)3、R2Ti(OR)2、BF3エーテル錯体、Et2Zn及びSc(OTf)3などが挙げられるが、好ましくはEt3Al、Al(OiPr)3、Ti(OiPr)4、BF3エーテル錯体、Et2Zn及びSc(OTf)3などであり、より好ましくはEt3Al、Et2AlCl及びEt2Znであり、更に好ましくはEt3Alである。ここで、Xはハロゲン原子又は無機ラジカルであって、Rはそれぞれ炭化水素基である。
また、本明細書において、「Et」はエチル、「Tf」はトリフルオロメタンスルホン酸、「iPr」はイソプロピルの略語である。
【0097】
ルイス酸の使用量としては、反応を阻害せず、且つ副反応を引き起こさない量であれば特に限定されないが、通常、式(Xa)に示される化合物と式(Xb)に示される化合物の混合物に対して1〜5モル当量の範囲で使用することができ、好ましくは1.5〜3モル当量の範囲であり、より好ましくは2〜2.5モル当量の範囲である。
【0098】
塩基を例示すれば、リチウムヘキサメチルジシラジド及びリチウムジイソプロピルアミドなどであり、好ましくはリチウムヘキサメチルジシラジドである。
【0099】
塩基の使用量としては、反応を阻害せず、且つ副反応を引き起こさない量であれば特に限定されないが、通常、式(Xa)に示される化合物と式(Xb)に示される化合物の混合物に対して1〜5モル当量の範囲で使用することができ、好ましくは1.5〜3モル当量の範囲であり、より好ましくは2〜2.5モル当量の範囲である。
【0100】
反応に使用する溶媒は、当該反応条件下において安定であり、且つ目的とする反応を妨げないものであれば特に制限はない。溶媒の種類に生成物である式(II)に示される化合物の収率が依存するため、好ましくはテトラヒドロフラン(THF)などのエーテル系溶媒を使用する。
【0101】
反応溶媒の使用量としては、式(Xa)に示される化合物と式(Xb)に示される化合物の混合物に対して1〜100質量倍使用することができ、好ましくは、3〜20質量倍の範囲であり、好ましくは、5〜10質量倍の範囲である。
【0102】
反応温度は、通常、−80℃〜0℃まで可能であるが、好ましくは−60℃〜−40℃で行う。
【0103】
反応時間は、通常、0.5時間〜6時間であり、好ましくは1〜3時間である。
また、式(Xa)に示される化合物と式(Xb)に示される化合物の混合物の水酸基をtert-ブチルジメチルシリル基などで保護した後、シクロプロパン化反応に供してもよい。シクロプロパン環を構築した後、保護基を外すことにより、式(II)に示される化合物が得られる。
【0104】
(スキーム2)
【0105】
【化13】
【0106】
スキーム2の式中、R1及びR2は、前述の定義通りである。
【0107】
式(II)に示される化合物における2つの水酸基のうち一方のみを立体選択的に保護することにより、式(III)に示される化合物が得られる。
【0108】
本反応は適切な酵素存在下で所望の立体異性体を与える。
【0109】
本反応の好ましい実施形態においては、式(II)に示される化合物を酵素存在下でアシル基供与体と反応させることにより、式(III)に示される化合物が得られる。
【0110】
酵素としては、微生物が生産する立体選択的アシル化能を有する酵素を用いる。この酵素存在下で、式(II)に示される化合物とアシル基供与体を有機溶媒等の中で反応させることにより立体選択的アシル化を行うことができる。また、上記酵素を担体に固定することにより固定化酵素として反応に使用することも可能である。その場合、式(II)に示される化合物を有機溶媒等の中でアシル基供与体と混合した後、上記混合液中に酵素が固定化された担体を加えて撹拌するか、又は酵素が固定化された担体をカラムに充填し上記混合液を当該カラムに通すことで立体選択的アシル化反応を行う。反応温度は、通常−20℃〜60℃で反応できる。使用する有機溶媒等は、当該反応条件下において安定であり、且つ目的とする反応を妨げないものであれば特に制限はない。生成物である式(III)に示される化合物の収率や光学純度が溶媒の種類に依存するため、好ましくはトルエン、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、アセトン、クロロホルムなどの有機溶媒や、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェートや1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートなどのイオン性流体(Org. Lett., 2, 4189, (2000))である。
【0111】
アシル基供与体を例示すれば、酢酸ビニル、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸ビニル、プロピオン酸イソプロペニル、酪酸ビニル(ブチリル酸ビニル)、酪酸イソプロペニル(ブチリル酸イソプロペニル)、カプロン酸ビニル、カプロン酸イソプロペニル、カプリン酸ビニル、カプリン酸イソプロペニル、カプリル酸ビニル、カプリル酸イソプロペニル、クロロ酢酸ビニル、クロロ酢酸イソプロペニル、ピバリン酸ビニル、ピバリン酸イソプロペニルなどが挙げられるが、好ましくは酢酸ビニルまたは酢酸イソプロペニル、さらに好ましくは酢酸ビニルである。
【0112】
酵素源としての微生物は、好ましくは真菌又は細菌である。より好ましくは、カンジダ(Candida)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、サーモミセス(Thermomyces)属、ペニシリウム(Penicillium)属、ジエトリカム(Geotrichum)属、ガラクトミセス(Galactomyces)属、ディポダスカス(Dipodascus)属及びアルカリゲネス(Alcaligenes)属からなる群より選ばれる1種以上の真菌又は細菌であり、更に好ましくは、カンジダ・シリンドラセア(Candida cylindracea)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)、アスペルギルス・プルベルレンタス(Aspergillus pulverlentus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、サーモミセス・ランジノサス(Thermomyces langinosus)、ペニシリウム・ロクエフォルティ(Penicillium roqueforti)、ペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)、ジエトリカム・ファーメンタンス(Geotrichum fermentans)、ガラクトミセス・シトリ−アウランティ(Galactomyces aurantii)、ガラクトミセス・リエッシー(Galactomyces reessii)、ディポダスカス・アウストラリエンシス(Dipodascus australiensis)及びアルカリゲネス・エスピー(Alcaligenes sp.)からなる群より選ばれる1種以上の真菌又は細菌である。
【0113】
微生物由来の酵素としては、好ましくはリパーゼ(lipase)、プロテアーゼ(protease)又はペクチナーゼ(pectinase)、特に好ましくは、カンジダ・シリンドラセア(Candida cylindracea)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)、ペニシリウム・ロクエフォルティ(Penicillium roqueforti)及びアルカリゲネス・エスピー(Alcaligenes sp.)由来のリパーゼであり、最も好ましくはカンジダ・シリンドラセア(Candida cylindracea)由来、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)由来又はアルカリゲネス・エスピー(Alcaligenes sp.)由来のリパーゼである。微生物由来の酵素は、微生物をすりつぶした抽出液又は培養上清から常法に従って精製することが可能である。微生物由来の酵素は、必ずしも単品として精製される必要はなく、粗酵素としても使用可能である。酵素は単独若しくは複数種類を混ぜて使用できる。また、市販品の入手も可能である。
【0114】
カンジダ・シリンドラセア(Candida cylindracea)由来のリパーゼ商品としては、Lipase OF(商品名:名糖産業より入手)が挙げられる他、Lipase from Candida cylindracea(商品名、シグマアルドリッチジャパンより入手)を挙げることができる。
【0115】
カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)由来のリパーゼ商品としては、Lipase AY"Amano"30G(商品名、天野エンザイムより入手)やLipase AYS "Amano" (商品名、天野エンザイムより入手)およびLipase from Candida rugosa(商品名、シグマアルドリッチジャパンより入手)を挙げることができる。
ペニシリウム・ロクエフォルティ(Penicillium roqueforti)由来のリパーゼ商品としてはLipase R(商品名、天野エンザイムより入手)を挙げることができる。
アルカリゲネス・エスピー(Alcaligenes sp.)由来のリパーゼ商品としては、Lipase QLM(商品名:名糖産業より入手)を挙げることができる。
【0116】
その他のリパーゼとしては、Sumizyme CT-L(商品名、新日本化学工業より入手[サーモミセス・ランジノサス(Thermomyces langinosus)由来のリパーゼ]、Lipase AS "Amano"(商品名、天野エンザイムより入手[アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のリパーゼ])、Sumizyme NSL3000(商品名、新日本化学工業より入手[アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のリパーゼ]、Lipase A "Amano" 6(商品名、天野エンザイムより入手[アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のリパーゼ])等が挙げられる。
【0117】
プロテアーゼとしてはProtease M "Amano"(商品名、天野エンザイムより入手[アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)由来のプロテアーゼ])等を挙げることができる。
【0118】
ペクチナーゼとしてはPectinase G "Amano" (商品名、天野エンザイムより入手[アスペルギルス・プルベルレンタス(Aspergillus pulverlentus)由来のペクチナーゼ])等を挙げることができる。
【0119】
微生物由来の酵素は、担体に固定化して固定化酵素として使用することも可能である。酵素の固定化に用いる担体としては、セライト又はトヨナイト類(Toyonite 200、 Toyonite 200P、Toyonite 200M、 Toyonite 200A(東洋電化工業株式会社より入手))等が挙げられる。上記市販のリパーゼを固定化して得られた固定化酵素の他に、特定の微生物を培養して得られた培養液菌体上清液に上記担体を作用させて酵素を固定化したものをリパーゼ活性を有する酵素として用いることができる。特定の微生物とはジエトリカム・ファーメンタンス(Geotrichum fermentans)、ガラクトミセス・シトリ−アウランティ(Galactomyces aurantii)、ガラクトミセス・リエッシー(Galactomyces reessii)、ディポダスカス・アウストラリエンシス(Dipodascus australiensis)などが好ましい。
続いて、式(III)に示される化合物の水酸基を酸化することにより、式(IV)に示される化合物が得られる。
【0120】
本反応の好ましい実施形態においては、式(III)に示される化合物を触媒存在下で酸化剤と反応させることにより、式(IV)に示される化合物が得られる。
【0121】
触媒を例示すれば、RuCl3及び2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル(TEMPO)などである。
【0122】
触媒の使用量としては、反応を阻害せず、且つ副反応を引き起こさない量であれば特に限定されないが、通常、式(III)に示される化合物に対して0.001〜1モル当量の範囲で使用することができ、好ましくは0.01〜0.1モル当量の範囲である。
【0123】
酸化剤を例示すれば、次亜塩素酸ナトリウムなどである。
【0124】
酸化剤の使用量としては、反応を阻害せず、且つ副反応を引き起こさない量であれば特に限定されないが、通常、式(III)に示される化合物に対して1〜3モル当量の範囲で使用することができ、好ましくは1〜1.5モル当量の範囲である。
【0125】
反応に使用する溶媒は、当該反応条件下において安定であり、且つ目的とする反応を妨げないものであれば特に制限はない。生成物である式(IV)に示される化合物の収率が溶媒の種類に依存するため、好ましくはジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン又はアセトニトリルなどであり、更に好ましくはジクロロメタンである。
【0126】
上記溶媒は一種単独で又は二種以上混合して用いることができる。
【0127】
反応溶媒の使用量としては、式(III)に示される化合物に対して1〜100質量倍使用することができ、好ましくは、3〜10質量倍の範囲である。
【0128】
反応温度は、通常、−20℃〜50℃まで可能であるが、好ましくは−20℃〜20℃で行うのがよく、さらに好ましくは−10℃〜0℃で行うのがよい。
【0129】
反応時間は、通常、0.5時間〜6時間であり、好ましくは1〜3時間である。
また、式(III)に示される化合物の水酸基の酸化反応は、当業者によりよく知られた方法(たとえばSwern酸化など)により行うことができ、式(IV)に示される化合物が得られる。
【0130】
式(IV)に示される化合物に塩基又は酸を作用させると式(V)に示される化合物が得られる。
【0131】
塩基を例示すれば、たとえばトリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等の有機アミン類などが挙げられる。
【0132】
塩基の使用量としては、反応を阻害せず、且つ副反応を引き起こさない量であれば特に限定されないが、通常、式(IV)に示される化合物に対して0.5〜3モル当量の範囲で使用することができ、好ましくは0.8〜1.2モル当量の範囲である。
【0133】
酸を例示すれば、たとえばトリフルオロメタンスルホン酸及びシリカゲルなどである。
【0134】
酸の使用量としては、反応を阻害せず、且つ副反応を引き起こさない量であれば特に限定されないが、通常、式(IV)に示される化合物に対して0.1〜3モル当量の範囲で使用することができる。
【0135】
反応に使用する溶媒は、当該反応条件下において安定であり、且つ目的とする反応を妨げないものであれば特に制限はない。好ましくはジクロロメタン、メタノールを使用する。
【0136】
式(V)に示される化合物に還元剤として水素雰囲気下で触媒を作用させると式(I)に示される化合物が得られる。
【0137】
触媒を例示すれば、たとえばリンドラー触媒を挙げることができる。
【0138】
反応に使用する溶媒は、当該反応条件下において安定であり、且つ目的とする反応を妨げないものであれば特に制限はない。好ましくは酢酸エチルを使用する。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 式(I)に示される化合物又はその塩の製造方法であって、
(上記式(I)中、R1は、
(1)−OH、
(2)−O−Ra、又は
(3)−NRbc
であり、
aは、C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基であり(該C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基は、無置換又は1個以上のC1-6アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、アリール基若しくはヘテロアリール基で置換されている。)、
b及びRcは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基であり(該C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基は、無置換又は1個以上の水酸基、C1-6アルコキシ基、アリール基若しくはヘテロアリール基で置換されている。)、又はRb及びRcは、隣接する窒素原子と一緒になって互いに結合した4〜7員の飽和複素環を形成する(該飽和複素環は、無置換又は水酸基、C1-6アルキル基若しくはC1-6アルコキシ基で置換されている。)。)
(A)式(II)に示される化合物を式(III)に示される化合物に変換する工程、
(上記式(II)中、R1は、前記式(I)中で定義したとおりである。)
(上記式(III)中、R1は、前記式(I)中で定義したとおりであり、
2は、水素原子、C1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基又は−(CH2n−フェニル基であり(該C1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基又は−(CH2n−フェニル基は、無置換又は1個以上のハロゲン原子、水酸基、C1-6アルキル基若しくはC1-6アルコキシ基で置換されている。)、nは0、1又は2である。)
(B)前記式(III)に示される化合物を、式(IV)に示される化合物に変換する工程、
(上記式(IV)中、R1及びR2は、前記式(I)及び前記式(III)中で定義したとおりである。)
(C)前記式(IV)に示される化合物を式(V)に示される化合物に変換する工程、及び
(上記式(V)中、R1は前記式(I)中で定義したとおりである。)
(D)前記式(V)に示される化合物を、前記式(I)に示される化合物に変換する工程、
を含む製造方法。
2. 式(III)に示される化合物又はその塩の製造方法であって、
(上記式(III)中、R1は、
(1)−OH、
(2)−O−Ra、又は
(3)−NRbc
であり、
aは、C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基であり(該C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基は、無置換又は1個以上のC1-6アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、アリール基若しくはヘテロアリール基で置換されている。)、
b及びRcは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基であり(該C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基は、無置換又は1個以上の水酸基、C1-6アルコキシ基、アリール基若しくはヘテロアリール基で置換されている。)、又はRb及びRcは、隣接する窒素原子と一緒になって互いに結合した4〜7員の飽和複素環を形成し(該飽和複素環は、無置換又は水酸基、C1-6アルキル基若しくはC1-6アルコキシ基で置換されている。)、
2は、水素原子、C1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基又は−(CH2n−フェニル基であり(該C1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基又は−(CH2n−フェニル基は、無置換又は1個以上のハロゲン原子、水酸基、C1-6アルキル基若しくはC1-6アルコキシ基で置換されている。)、nは0、1又は2である。)
式(II)に示される化合物を前記式(III)に示される化合物に変換する工程を含む製造方法。
(上記式(II)中のR1は、前記式(III)中で定義したとおりである。)
3. R1が(2)−O−Raであり、Raがメチル基又はエチル基である、1.又は2.に記載の製造方法。
4. R2がメチル基である、1.〜3.のいずれか1つに記載の製造方法。
5. 式(II)に示される化合物を式(III)に示される化合物に変換する前記工程が、前記式(II)に示される化合物に、微生物由来の酵素存在下でアシル基供与体を反応させることにより、前記式(III)に示される化合物を製造する工程を含む、1.〜4.のいずれか1つに記載の製造方法。
6. 前記微生物が、カンジダ属、アスペルギルス属、サーモミセス属、ペニシリウム属、アルカリゲネス属、ジエトリカム属、ガラクトミセス属及びディポダスカス属からなる群より選ばれる1種以上からなる、5.に記載の製造方法。
7. 微生物由来の前記酵素が、リパーゼ、プロテアーゼ又はペクチナーゼである、5.又は6.に記載の製造方法。
8. 微生物由来の前記酵素が、カンジダ・シリンドラセア、カンジダ・ルゴサ又はアルカリゲネス・エスピー由来のリパーゼである、5.に記載の製造方法。
9. 前記酵素が担体に固定化されている、5.〜8.のいずれか1つに記載の製造方法。
10. 前記アシル基供与体が酢酸ビニルまたは酢酸イソプロペニルである、5.〜9.のいずれか1つに記載の製造方法。
11. 式(III)に示される化合物又はその塩。
(上記式(III)中、R1は、
(1)−OH、
(2)−O−Ra、又は
(3)−NRbc
であり、
aは、C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基であり(該C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基は、無置換又は1個以上のC1-6アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、アリール基若しくはヘテロアリール基で置換されている。)、
b及びRcは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基であり(該C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基は、無置換又は1個以上の水酸基、C1-6アルコキシ基、アリール基若しくはヘテロアリール基で置換されている。)、又はRb及びRcは、隣接する窒素原子と一緒になって互いに結合した4〜7員の飽和複素環を形成し(該飽和複素環は、無置換又は水酸基、C1-6アルキル基若しくはC1-6アルコキシ基で置換されている。)、
2は、水素原子、C1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基又は−(CH2n−フェニル基であり(該C1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基又は−(CH2n−フェニル基は、無置換又は1個以上のハロゲン原子、水酸基、C1-6アルキル基若しくはC1-6アルコキシ基で置換されている。)、nは0、1又は2である。)
12. 式(IV)に示される化合物又はその塩。
(上記式(IV)中、R1は、
(1)−OH、
(2)−O−Ra、又は
(3)−NRbc
であり、
aは、C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基であり(該C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基は、無置換又は1個以上のC1-6アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、アリール基若しくはヘテロアリール基で置換されている。)、
b及びRcは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基であり(該C1-6アルキル基又はC3-8シクロアルキル基は、無置換又は1個以上の水酸基、C1-6アルコキシ基、アリール基若しくはヘテロアリール基で置換されている。)、又はRb及びRcは、隣接する窒素原子と一緒になって互いに結合した4〜7員の飽和複素環を形成し(該飽和複素環は、無置換又は水酸基、C1-6アルキル基若しくはC1-6アルコキシ基で置換されている。)、
2は、水素原子、C1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基又は−(CH2n−フェニル基であり(該C1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基又は−(CH2n−フェニル基は、無置換又は1個以上のハロゲン原子、水酸基、C1-6アルキル基若しくはC1-6アルコキシ基で置換されている。)、nは0、1又は2である。)
【実施例】
【0139】
以下、さらに具体的な実施例を示すが、本発明の開示はこれに限定されない。実施例1〜6に、スキーム1の方法を示す。実施例7〜10に、スキーム2の方法を示す。
【0140】
(参考例1)
フルオロ[(1R,5R)−5−ヒドロキシシクロペンタ−2−エン−1−イル]プロパン二酸ジメチル(8a)及びフルオロ[(1S,5S)−5−ヒドロキシシクロペンタ−2−エン−1−イル]プロパン二酸ジメチル(8b)の混合物
【0141】
【化14】
【0142】
フルオロプロパン二酸ジメチル(7)18.19g(121.2mmol)のメタノール(90.4mL)溶液に、ナトリウムメトキシド(NaOMe)の25w/w%メタノール溶液23.81g(110.2mmol)を3分間にわたって添加した。その間、内部の温度を25℃から38℃の間に保った。得られた溶液を15分間攪拌した後、6−オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサ−2−エン(6)4.52g(55.1mmol)を2分間にわたって添加した。その間、内部の温度を25℃から38℃の間に保った。室温下で1時間攪拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液45mLを10分間にわたって添加した。その間、内部の温度を26℃から35℃の間に保った。反応混合物を減圧下濃縮し、メタノールを概ね留去し、固形物を含む褐色溶液108gを得た。酢酸エチル136mLで2回抽出した後、水45mLで洗浄した。有機層を減圧下濃縮した後、トルエン100mLを加え再び減圧下濃縮した。濃縮残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/酢酸エチル)により精製することにより、黄色の油状物として式8aの化合物及び式8bの化合物の混合物7.21gを得た。
【0143】
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ(ppm) 2.13-2.17 (m, 1H), 2.56 (dddd, J= 2.2, 4.3, 7.1, 17.2 Hz, 1H), 3.32-3.40 (m, 1H), 3.77 (s, 3H), 3.79 (s, 3H), 4.20 (m, 1H), 5.04 (d, J= 6.1 Hz, 1H), 5.47 (ddd, J= 2.1, 4.3, 6.1 Hz, 1H), 5.85 (ddd, J= 2.2, 4.4, 6.1 Hz, 1H). 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6):δ(ppm) 41.93, 53.39 (d, J= 19.5 Hz), 58.70 (d, J= 20.8 Hz), 70.43 (d, J= 2.6 Hz), 93.55, 95.14, 125.59, 133.32, 165.42 (d, J= 15.6 Hz), 165.62 (d, J= 14.3 Hz).19F NMR (470 MHz, DMSO-d6): δ(ppm) -172.43, -172.36. HRMS(ES)m/z: [M+Na]+calcd for C10H13O5FNa; 255.0645, found 255.0635. IR (neat) 3528, 3408, 2960, 1755, 1438, 1284, 1253, 1173, 1111, 1068, 1031, 936, 838, 787, 722, 668, 415 cm-1
【0144】
(参考例2)
フルオロ[(1R,5R)−5−ヒドロキシシクロペンタ−2−エン−1−イル]酢酸メチル(9a)及びフルオロ[(1S,5S)−5−ヒドロキシシクロペンタ−2−エン−1−イル]酢酸メチル(9b)の混合物
【0145】
【化15】
【0146】
式8aの化合物及び式8bの化合物の混合物17.27g(74.50mmol)にジメチルスルホキシド(DMSO)172.51gと水25.92gを加えた。この溶液に塩化リチウム9.65g(227.65mmol)を加えて130℃で2時間加熱攪拌した。放冷後、酢酸エチル500mLで3回反応液を抽出した後、有機層を減圧濃縮し、濃縮残渣を得た。この濃縮残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:n−ヘキサン/酢酸エチル=1:1)により精製することにより、黄色の油状物として式9aの化合物及び式9bの化合物の混合物3.674gを得た。
【0147】
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ(ppm) 2.11-2.17 (m, 1.6H), 2.53-2.60 (m, 1.6H), 2.87-2.96 (m, 1.6H), 3.71 (s, 1.8H), 3.73 (s, 3H), 4.23-4.28 (m, 1.6H), 4.93 (d, J= 5.0 Hz, 0.6H), 5.07 (d, J= 5.4 Hz, 1H), 5.11 (dd, J= 4.2, 48.3 Hz, 0.6H), 5.17 (dd, J= 3.8, 48.5 Hz, 1H), 5.42-5.45 (m, 1H), 5.55-5.58 (m, 0.6H), 5.78-5.80 (m, 1.6H). 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6): δ(ppm) 41.29, 41.83, 51.95, 52.13, 56.80 (d, J= 20.8 Hz), 57.06 (d, J= 19.5 Hz), 70.49 (d, J= 5.2 Hz), 71.90 (d, J= 2.6 Hz), 88.36 (d, J= 184.3 Hz), 88.48 (d, J= 184.3 Hz), 125.93 (d, J= 5.2 Hz), 127.28 (d, J= 3.9 Hz), 131.76, 132.13, 169.05 (d, J= 24.7 Hz), 169.21 (d, J= 24.7 Hz). 19F NMR (470 MHz, DMSO-d6):δ(ppm) -197.87 (dd, J= 29.2, 47.5 Hz), -194.53 (dd, J= 25.7, 47.8 Hz). HRMS(ES)m/z: [M+Na]+calcd for C8H11O3FNa; 197.0590, found 197.0578. IR (neat) 3410, 3060, 2956, 2851, 1747, 1440, 1357, 1288, 1228, 1127, 1097, 1067, 1048, 1025, 952, 856, 724, 584, 450 cm-1.
【0148】
(参考例3)
フルオロ[(1R,5R)−5−ヒドロキシシクロペンタ−2−エン−1−イル]酢酸メチル(9a)及びフルオロ[(1S,5S)−5−ヒドロキシシクロペンタ−2−エン−1−イル]酢酸メチル(9b)の混合物
式8aの化合物及び式8bの化合物の混合物70.02g(0.3015mmol)にジメチルスルホキシド70.06gとトリエチルアミン塩酸塩45.64g(33.16mol)を加えて110〜120℃で5時間加熱攪拌した。放冷後、水350.9gを加え、メチルイソブチルケトン350gで2回反応液を抽出した。有機層を減圧濃縮することにより、式9aの化合物及び式9bの化合物の混合物46.78g(ガスクロマトグラフによる定量値)を含む褐黄色の油状物65.40gを得た。
【0149】
(参考例4)
フルオロ[(1R,5R)−5−ヒドロキシシクロペンタ−2−エン−1−イル]酢酸メチル(9a)及びフルオロ[(1S,5S)−5−ヒドロキシシクロペンタ−2−エン−1−イル]酢酸メチル(9b)の混合物
式8aの化合物及び式8bの化合物の混合物0.232g(1.00mmol)にジメチルスルホキシド1mLと塩化ナトリウム0.073g(1.25mmol)及び酢酸0.061g(1.00mmol)を加えて110〜120℃で5時間加熱攪拌した。放冷後、高速液体クロマトグラフで分析したところ、式9aの化合物及び式9bの化合物の混合物0.146g(高速液体クロマトグラフによる定量値)を得た。
【0150】
(参考例5)
フルオロ[(1R,2S,3R,5S)−3−ヒドロキシ−6−オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサ−2−イル]酢酸メチル(10a)及びフルオロ[(1S,2R,3S,5R)−3−ヒドロキシ−6−オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサ−2−イル]酢酸メチル(10b)の混合物
【0151】
【化16】
【0152】
式9aの化合物及び式9bの化合物の混合物3.644g(20.92mmol)のクロロベンゼン(18.37g)溶液に、バナジルアセチルアセトナート(VO(acac)2)0.1176g(0.444mmol)を室温下加えた。60℃に加熱し、tert-ブチルヒドロペルオキシド(tBuOOH)の70%トルエン溶液5.445g(42.29mmol)を10分間にわたって添加した。その間、内部の温度を55℃から60℃の間に保った。55℃で4時間攪拌した後、室温まで放冷した。20%チオ硫酸ナトリウム水溶液22gを加えて30分間攪拌した後、酢酸エチル50mLで4回抽出した。有機層を合わせ、減圧濃縮することにより濃縮残渣を得た。この濃縮残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:n−ヘキサン/酢酸エチル=2:1〜1:1)により精製することにより、黄色の油状物として式10aの化合物及び式10bの化合物の混合物2.402gを得た。
【0153】
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6):δ(ppm) .1.76 (s, 0.6H), 1.79 (s, 1H), 1.99 (dt, J= 7.6, 1.5 Hz, 1H), 2.02 (dt, J= 7.6, 1.5 Hz, 0.6H), 2.42-2.44 (m, 0.6H), 2.48-2.51 (m, 1H), 3.38 (d, J= 2.5 Hz, 1H), 3.55-3.56 (m, 1.6H), 3.59 (m, 0.6H), 3.75 (s, 1.8H), 3.77 (s, 3H), 4.08 (t, J= 6.9 Hz, 0.6H), 4.18 (t, J= 6.9 Hz, 1H), 4.41 (d, J= 6.5 Hz, 0.6H), 4.49 (d, J= 6.1 Hz, 1H), 5.32 (dd, J= 4.0, 47.0 Hz, 1H), 5.35 (dd, J= 3.0, 48.0 Hz, 0.6H). 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6):δ(ppm) 37.37, 37.88, 51.87 (d, J= 19.5 Hz), 51.93 (d, J= 18.2 Hz), 52.34, 52.42, 56.83 (d, J= 7.8 Hz), 57.73, 57.84, 58.20 (d, J= 2.6 Hz), 70.85 (d, J= 5.2 Hz), 72.65 (d, J= 2.6 Hz), 125.93 (d, J= 181.7 Hz), 127.28 (d, J= 183.0 Hz), 168.63 (d, J= 23.4 Hz), 168.71 (d, J= 24.7 Hz). 19F NMR (470 MHz, DMSO‐d6):δ(ppm) -198.56 (dd, J= 32.9, 47.5 Hz), -198.20 (dd, J= 32.9, 48.0 Hz). HRMS (ES)m/z: [M+Na]+ calcd for C8H11O4FNa; 213.0539, found 213.0530. IR (neat) 3506, 3032, 2959, 1758, 1639, 1440, 1408, 1364, 1288, 1226, 1098, 1077, 1012, 965, 917, 838, 802, 732, 668, 564, 444 cm-1.
【0154】
(参考例6)
(1R,2R,4S,5S,6R)−6−フルオロ−2,4−ジヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボン酸メチル(2)
【0155】
【化17】
【0156】
式10aの化合物及び式10bの化合物の混合物2.334g(12.27mmol)のTHF(脱水、20mL)溶液を、−50℃に冷却し、0.94mol/Lトリエチルアルミニウム(Et3Al)ヘキサン溶液29.0mL(27.26mmol)を30分間にわたって添加した。その間、内部の温度を−60℃から−50℃の間に保った。−50℃で30分間攪拌した後、1mol/Lリチウムヘキサメチルジシラジド(LiHMDS)ヘキサン溶液23.6mL(23.60mmol)を45分間にわたって添加した。その間、内部の温度を−50℃から−40℃の間に保った。−50℃で2時間攪拌した後、5℃に冷却した25%クエン酸水溶液44.3gの中へ反応液を30分間にわたって添加した。この反応液を酢酸エチル50mLで4回抽出し、減圧濃縮した。濃縮残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル)により精製することにより、黄色の油状物を得た。この油状物を酢酸エチル3.0gと水0.5gの混合液から晶析させることにより、無色結晶として式2の化合物を1.027g得た。
【0157】
mp 73.9−76.5℃、1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ(ppm) 1.64 (dd, J= 4.4, 15.3 Hz, 1H), 1.96 (m, 1H), 2.17 (s, 2H), 3.72 (br s, 3H), 4.18 (d, J= 5.0 Hz, 2H), 4.93 (br s, 2H). 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6): δ(ppm) 38.03 (d, J= 11.7 Hz), 45.76 (d, J= 7.8 Hz), 52.64, 71.53, 77.52, 79.42, 168.78 (d, J= 26.0 Hz). 19F NMR (470 MHz, DMSO-d6):δ(ppm) -216.827. HRMS (ES)m/z: [M+Na]+ calcd for C8H11O4FNa; 213.0539, found 213.0537. IR (KBr) 3549, 3413, 3295, 3246, 2964, 2922, 1732, 1616, 1467, 1442, 1381, 1336, 1285, 1265, 1235, 1198, 1181, 1130, 1078, 1041, 994, 947, 890, 805, 777, 733, 646, 566, 537, 480 cm-1.
【0158】
(実施例1)
(1S,2S,4R,5R,6S)−2−(アセチルオキシ)−6−フルオロ−4−ヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボン酸メチル(3)
【0159】
【化18】
【0160】
式2の化合物の一水和物4.0gを32mLのTHF(テトラヒドロフラン)に溶解後、酢酸ビニル64mLとトルエン64mLを混合した溶液に、実施例11(後述)と同様の方法で調製した固定化酵素Lipase OF/Toyonite 200Pを1.6g加え、室温下スターラーで撹拌(600rpm)して18時間反応した。反応液を桐山濾紙No.4で減圧濾過し、濾液を減圧濃縮後、得られた油状物を前出の方法でHPLC分析したところ、4.0gの式3の化合物(光学純度93.2%e.e.)の生成を検出した。この油状物の一部を−20℃で保管したところ晶析物が得られたためこれを濾紙上でトルエン−n−ヘプタン混合溶媒を用いて洗浄後HPLC分析したところ、光学純度は98.1%e.e.であった。残りの油状物(式3の化合物3.9gを含む)をシリカゲル60N(関東化学(株)より購入)のフラッシュシリカゲルクロマトグラフィーで精製したところ、3の化合物2.84g(光学純度93.14%e.e.)を単離した。
【0161】
1H NMR (500.16MHz, CDCl3):δ(ppm)1.96(m, 1H, J=5.0, 16.4Hz), 2.11(s, 3H), 2.28(ddd, J=6.1,7.3,13.4Hz, 1H), 2.42(dd, J=6.5, 14.5Hz, 1H), 2.44(dd, J=6.5, 14.5Hz, 1H), 3.82(s, 3H), 4.44(m, 1H), 5.29(m, J=6.1Hz, 1H). 13C NMR (125.77MHz, , CDCl3):δ(ppm)21.22, 35.00(d, J=10.4Hz), 37.98(d, J=11.7Hz), 42.50(d, J=9.2Hz), 52.96, 73.09, 75.56, 168.45, 168.66, 170.23. MS (ESI/APCI Dual positive) m/z 255.0[M+Na]-.
【0162】
(実施例2)
(1S,2S,5R,6R)−2−(アセチルオキシ)−6−フルオロ−4−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボン酸メチル(4)
【0163】
【化19】
【0164】
式3の化合物 946mg(4.07mmol)のジクロロメタン(脱水、5mL)溶液を、−5℃に冷却し、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル(TEMPO)14.0mg(0.090mmol)、炭酸水素ナトリウム102.0mg(1.21mmol)、水2.0mLを順次添加した後、10%次亜塩素酸ナトリウム水溶液3.86g(5.19mmol)を添加した。この間、内部の温度を−5から0℃の間に保った。−5℃から0℃で1時間攪拌した後、分液した。有機層を水1mLで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで水分を乾燥させた後、減圧濃縮し黄色油状物として式4の化合物899mgを得た。
【0165】
1H NMR (500.16 MHz, CDCl3):δ(ppm) 2.12 (s, 3H), 2.37 (dd, J= 3.4, 19.5 Hz, 1H), 2.65 (dd, J= 19.5, 6.1 Hz, 1H), 2.73 (d, J= 6.1 Hz, 1H), 2.93 (dd, J= 1.9, 6.1 Hz, 1H), 3.83 (s, 3H), 5.50 (d, J= 6.1 Hz, 1H). 13C NMR (125.77 MHz, CDCl3): δ(ppm) 20.88, 38.19 (d, J= 11.6 Hz), 39.01 (d, J= 13.0 Hz), 43.49 (d, J= 3.9 Hz), 53.43, 69.13, 165.78, 165.93, 170.03, 204.35.
【0166】
(実施例3)
(1R,5R,6R)−6−フルオロ−4−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサ−2−エン−6−カルボン酸メチル(5)
【0167】
【化20】
【0168】
式4の化合物719mg(3.12mM)のジクロロメタン(18mL)溶液に、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)0.63mL(4.07mmol)を添加し、室温で1時間攪拌した後、1N塩酸4.2mLを添加し、攪拌、分液した。水層をジクロロメタン5mLで再抽出した後、有機層を飽和食塩水5mLで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮し、濃縮残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:n−ヘキサン/酢酸エチル)により精製することにより、式5の化合物を無色油状物として413.7mg得た。
【0169】
1H NMR (500.16 MHz, CDCl3):δ(ppm) 2.79 (d, J=5.0Hz, 1H), 3.23 (dd, J= 3.0, 6.0 Hz, 1H), 3.86 (s, 3H), 6.06 (d, J= 5.5 Hz, 1H), 7.42 (dd, J= 3.0, 5.5 Hz, 1H). 13C NMR (125.77 MHz, CDCl3):δ(ppm) 34.05 (d, J= 14.2 Hz), 34.47 (d, J= 13.0 Hz), 53.21, 133.34, 152.30 (d, J= 2.6 Hz), 165.99, 166.21, 198.56. MS (ESI/APCI Dual positive) m/z 170.9[M+H]-, (ESI/APCI Dual negative) m/z 168.9[M-H]-
【0170】
(実施例4)
(1R,5R,6R)−6−フルオロ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボン酸メチル(1)
【0171】
【化21】
【0172】
式5の化合物360.7mg(2.12mmol)を酢酸エチル18mLに溶解後、リンドラー触媒143mgを添加し、水素雰囲気下室温で16時間撹拌した。得られた溶液をセルロースパウダーでろ過し、減圧下濃縮した後、濃縮残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム)により精製することにより、無色の油状物として式1の化合物337mgを得た。
【0173】
1H NMR (500.16 MHz, CDCl3):δ(ppm) 2.22 (m, 1H), 2.28-2.34 (m, 2H), 2.43(m, 1H), 2.59(m, 1H), 2.73(d,J=2.0Hz), 3.86 (s,3H). 13C NMR (125.77 MHz, CDCl3):δ(ppm) 19.47 (d, J= 5.2 Hz), 34.11 (d, J= 13.0 Hz), 35.47 (d, J= 5.2 Hz), 40.19 (d, J= 13.1 Hz), 53.11, 167.46, 167.67, 208.73. MS (ESI/APCI Dual positive) m/z 172.9[M+H]-, TOFMS EI m/z 172.1 [M]+.
【0174】
以下、実施例5〜12においては、種々の微生物由来の酵素を用いて、式2の化合物を不斉アセチル化し、式3の化合物を得るためのそれぞれの反応条件検討結果を示す。
【0175】
【化22】
【0176】
原料である式2の化合物、目的物である式3の化合物及びそのエナンチオマーである式3'の化合物の生成状況は、以下に示すTLC法、及びHPLC法により確認した。
(TLC法:TLC プレート;シリカゲルSi60(メルク社製、Art 1.5715))
展開溶媒;n−ヘキサン/酢酸エチル=10/1
発色 ;アニスアルデヒド/濃硫酸/酢酸=1/2/100
Rf値 ;式1の化合物=0.20、 式3及び式3'の化合物=0.40
(HPLC法:カラム CHIRALCEL OJ−RH
4.6mm ID×150mm L(ダイセル社製))
移動相 ;メタノール/0.1%リン酸水溶液=38/62
流速 ;0.8mL/min
温度 ;35℃
検出 ;UV 195nm
保持時間;
式2の化合物: 3.8分
式3の化合物: 9.0分
式3'の化合物:10.3分
【0177】
(実施例5)
<酵素の探索>
試験に供する酵素50mgをそれぞれ共栓付き10mL容試験管に入れ、酢酸ビニル2.7mL、アセトン0.3mL、式2の化合物20mgを添加し、18〜48時間、25℃、スターラーで撹拌した(600rpm)。反応終了後、エキクロディスク25CR(日本ポール(株)製、径25mm)を用いた濾過で酵素残渣を除き、溶液を減圧乾固してメタノール1mLに溶解後、その一部をとり、TLC分析及びHPLC分析を行った。表1、表2及び表3に記される41種類の酵素をスクリーニングした。
【0178】
TLC分析の結果、表1及び表2に挙げた酵素を使用した反応では、TLC上のRf値がラセミ標準品(式3の化合物及び式3'の化合物)のRf値(0.40)と一致し、かつ同じ呈色(褐色)を示したスポットを検出した。TLC分析でアセチル化体の検出が顕著であった酵素のうち、HPLC分析によって目的生成物である式3の化合物が確認されたものについて、目的生成物の生成量と光学純度を表1に示す。また、TLC分析でアセチル化体の検出が顕著であった酵素のうち、HPLC分析によって目的生成物とは異なる光学異性体の式3'の化合物が確認されたものについて、その生成量と光学純度を以下の表2に挙げる。
【0179】
なお、本実施において式3の化合物及び式3'の化合物いずれの生成も検出できなかった酵素を表3に挙げる。
【0180】
【表1】
【0181】
【表2】
【0182】
【表3】
【0183】
(実施例6)
<固定化酵素の調製>
11種類の酵素(Sumizyme NSL3000、Sumizyme CT-L(新日本化学工業(株)より入手)、Nuclease "Amano"G、Pectinase G "Amano"、Lipase A "Amano" 6、Lipase AY"Amano"30G、Lipase PS "Amano" SD、Lipase AK "Amano"20、Lipase AYS "Amano"、Lipase R(天野エンザイム(株)より入手)、Lipase Candida cyllindracea(シグマアルドリッチジャパン(株)より入手)、それぞれ0.5g(液体酵素Sumizyme CT-Lのみ2.0mL)を10mLの100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7)に室温で溶解(不溶物は桐山濾紙No.5Bで濾過した)後、15mL容のスミロンチューブ(住友ベークライト(株)製)中でそれぞれ固定化担体のToyonite 200M(東洋電化工業(株)より購入)0.5gと混ぜて、20℃、18時間、160rpmで振盪した。振盪後、それぞれ桐山濾紙No.704(日本理化学工業製)で濾過後さらに室温下で一晩減圧乾燥して、各固定化酵素を得た。
同様にして同じ11種類の酵素を固定化担体のToyonite 200P(東洋電化工業(株)より購入)0.5gと混ぜて、各固定化酵素を調製した。
【0184】
(実施例7)
<固定化酵素による化合物変換能検出試験>
実施例6で得られた22種類の固定化酵素各50mgと式2の化合物25mgを各1mLの10%アセトン(容量)入り酢酸ビニル溶液に混ぜてから室温で反転スターラー(600rpm・2.5分間隔で反転)を用いて18時間撹拌して酵素反応を行った。酵素反応終了後、各酵素反応液をエキクロディスク25CR(日本ポール製)で濾過した後、溶液を減圧乾燥してからメタノール1mLに溶解したものをHPLC分析した。HPLC分析結果を以下の表4に記す。
【0185】
【表4】
【0186】
(実施例8)
<固定化酵素の調製と化合物変換能検出試験>
15種類の酵素(表5参照)について固形酵素は各0.5g、液体酵素の場合は2.0mLを10mLの100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7)に室温で溶解(不溶物は桐山濾紙No.5Bで濾過した)後、15mL容のスミロンチューブ(住友ベークライト(株)製)中でそれぞれ固定化担体のToyonite 200M(東洋電化工業(株)より購入)0.5gと混ぜて、25℃、17時間、150rpmで振盪した。振盪後、それぞれ桐山濾紙No.704(日本理化学工業製)で濾過後さらに室温下で一晩減圧乾燥して各固定化酵素を得た。
得られた15種類の固定化酵素各50mgと式2の化合物25mgを各1mLの10%アセトン(容量)入り酢酸ビニル溶液に混ぜてから室温で反転スターラー(600rpm・2.5分間隔で反転)を用いて18時間撹拌して酵素反応を行った。酵素反応終了後、各酵素反応液をエキクロディスク25CR(日本ポール製)で濾過した後、溶液を減圧乾燥してからメタノール1mLに溶解したものをHPLC分析した。HPLC分析結果を以下の表5に記す。
【0187】
【表5】
【0188】
(実施例9)
<固定化酵素の調製と化合物変換能検出試験>
糸状菌111菌株をそれぞれ脱脂米糠3%、コーンスティープリカー(Corn steap liquor)3%、大豆油1%、硫酸アンモニウム0.2%(pH6)からなる培地40mLを含む200mL三角フラスコで3日間、18℃〜28℃で通気撹拌培養した。培養終了後、各微生物培養液を個別に遠心管に移し、遠心器により培養液を菌体と菌体上清液に遠心分離(8000rpm、12〜15分間)した。得られたそれぞれの微生物菌体上清液(スミロンチューブなど遠心管中)に各0.1容の1Mリン酸カリウム緩衝液pH7および担体Toyonite 200M(東洋電化工業(株)より購入)を0.5g加えて25℃で一晩(最大20時間)振盪した。振盪終了後、5分間静置の後、担体を含む不溶物が遠心管の底に沈んだ後、上層の溶液をデカンテーションで除いてからこれに0.1Mリン酸カリウム緩衝液pH7〜pH7.5を15mL加えて撹拌再懸濁した。これを合計2回繰り返した後、桐山濾紙No.5B(商品名)を付した桐山漏斗(商品名)を用いて減圧濾過して濾紙上に各微生物培養液上清由来の固定化酵素を得た。各固定化酵素は濾紙上で数分間減圧濾過乾燥の後、減圧乾燥デシケータ(乾燥シリカゲル入り)に入れ、一晩(最大20時間)乾燥した。乾燥を終了した各固定化酵素を以下の酵素反応に用いた。
【0189】
上記の操作により得られた111種類の固定化酵素各20−40mgを、それぞれネジ蓋付き3.5mL容のサンプルチューブに入れ、酢酸ビニル1.8mL、アセトン0.2mLに式2の化合物の結晶を40mg添加した溶液を加え、18−21時間、室温下、スターラーで撹拌(600rpm)して反応を行った。反応終了後、エキクロディスク25CRを用いた濾過で固定化酵素を除き、溶液を減圧乾固してメタノール1mLに溶解後、前述のHPLC法で分析した。
【0190】
目的生成物である式3の化合物が著量確認されたものについて、目的生成物の生成量と光学純度を表6に示す。
【0191】
【表6】
【0192】
(実施例10)
<固定化酵素の調製と化合物変換能検出試験>
Lipase TL、Lipase PL、Lipase OFおよびLipase QLM(いずれも名糖産業(株)より入手)それぞれ4gを150mLの100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7)に室温下溶解し、これに各1gの担体Toyonite 200M(東洋電化工業(株)より購入)を加えて振盪機により室温下150rpmで19時間振盪した。振盪終了後、5分間静置の後、担体を含む不溶物が遠心管の底に沈んだ後、上層の溶液をデカンテーションで除いてからこれに0.1Mリン酸カリウム緩衝液pH7〜pH7.5を15mL加えて撹拌再懸濁した。これを合計2回繰り返した後、桐山濾紙No.5B(商品名)を付した桐山漏斗(商品名)を用いて減圧濾過して濾紙上に各固定化酵素を得た。得られた4種類の固定化酵素各50mgを、それぞれネジ蓋付き3.5mL容のサンプルチューブに入れ、これに酢酸ビニル1.8mL、アセトン0.2mLに式2の化合物の結晶40mgを添加した溶液をそれぞれ加え、16時間、室温下、スターラーで撹拌(600rpm)して反応を行った。反応終了後、エキクロディスク25CRを用いた濾過で固定化酵素を除き、溶液を減圧乾固してメタノール1mLに溶解後、前述のHPLC法で分析した。HPLC分析結果を以下の表7に記す。
【0193】
【表7】
【0194】
(実施例11)
<固定化酵素の調製と化合物変換能検出試験>
Lipase OFおよびLipase QLMを各2gずつ各2本のプラスチックボトルに入れ、これをそれぞれ100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7)に溶かしたもの(計4本の溶液を作成)にそれぞれToyonite 200MまたはToyonite 200P各4gと混ぜて4通りの酵素−担体の組み合わせを作りそれぞれ室温下、振盪機(120rpm)で18時間振盪した。振盪終了後それぞれの担体、酵素を含んだ混合溶液を各桐山濾紙No.4で減圧濾過後100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7)40mLに懸濁洗浄後、減圧濾過乾燥して各固定化酵素を得た。得られた固定化酵素とLipase TL、Lipase PL、Lipase OFおよびLipase QLMの各40mgをそれぞれネジ蓋付き3.5mL容のサンプルチューブに入れ、これに酢酸ビニル1.8mL、アセトン0.2mLに式2の化合物の結晶80mgを添加した溶液をそれぞれ加え、18時間、25℃、スターラーで撹拌(600rpm)して反応を行った。固定化酵素(4種類)については別途同様の条件で反応温度を16℃として反応を行った。各反応終了後、エキクロディスク25CRを用いた濾過で固定化酵素を除き、溶液を減圧乾固してメタノール1mLに溶解後、前述のHPLC法で分析した。HPLC分析結果を以下の表8に記す。
【0195】
【表8】
【0196】
(実施例12)
<酵素量と反応液組成の改善試験>
式2の化合物の一水和物1.0gを8mLのTHFに溶解後、酢酸ビニル16mLとトルエン16mLを混合した溶液に実施例7と同様の方法で調製した固定化酵素Lipase OF/Toyonite 200Pを103mg加え、室温下スターラーで撹拌(600rpm)して24時間反応した。反応液を桐山濾紙No.5Bで減圧濾過し、濾液を減圧濃縮後、得られた油状物を前出の方法でHPLC分析したところ、1.0gの式3の化合物(光学純度91.7%e.e.)の生成を検出した。
【産業上の利用可能性】
【0197】
本発明により、安価な原料を使用し、低コストでmGluR2/mGluR3アンタゴニストの2−アミノ−3−アルコキシ−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸誘導体及びその薬学上許容される塩の大量合成が可能となった。