特許第5776559号(P5776559)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5776559-給電制御装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776559
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】給電制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02H 7/20 20060101AFI20150820BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   H02H7/20 D
   H02J7/00 S
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-4392(P2012-4392)
(22)【出願日】2012年1月12日
(65)【公開番号】特開2013-143905(P2013-143905A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2014年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】長濱 崇裕
【審査官】 田中 寛人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−005593(JP,A)
【文献】 特開2010−251104(JP,A)
【文献】 特開平09−312172(JP,A)
【文献】 特開平07−227045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H7/00、7/10−7/20
H02J7/00−7/12、7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定温度以上に加熱された場合にバッテリから電気負荷への給電経路を遮断する遮断素子と、該給電経路に設けられ、通電によって発する熱を前記遮断素子に加える半導体スイッチとを備える給電制御装置において、
電力を供給されて発熱し、前記遮断素子を加熱する加熱素子と、
前記半導体スイッチの短絡を検出する検出手段と、
該検出手段が前記短絡を検出した場合に前記加熱素子に前記バッテリからの電力を供給する電力供給手段と
を備え
前記検出手段は、前記半導体スイッチがオンである場合に該半導体スイッチの両端間の電圧が高い程、高い電圧を出力する出力回路を有し、
前記電力供給手段は、前記バッテリから前記加熱素子へ給電される第2の給電経路に設けられ、前記出力回路が出力した電圧が所定電圧以上である場合にオンとなるスイッチを有すること
を特徴とする給電制御装置。
【請求項2】
前記半導体スイッチをオン又はオフにすることによって、前記電気負荷の駆動を制御する制御部を更に備えること
を特徴とする請求項1に記載の給電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好適に車両に搭載されて、バッテリから車載負荷への給電を、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)又はバイポーラトランジスタ等の半導体スイッチのオン/オフによって制御する給電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、車両には、ランプ、ワイパー、エアーコンディショナー、電動ブレーキ、電動パワーステアリング及びカーナビゲーション等の電気負荷が搭載されている。車両に搭載された多くの電気負荷は、半導体スイッチを介してバッテリから給電され、バッテリからの給電は半導体スイッチのオン/オフによって制御されている。
【0003】
電気負荷への給電を半導体スイッチのオン/オフによって制御する給電制御装置には、静電気、サージ電圧又は過電流等によって半導体スイッチが故障して短絡した場合、例えば、FETのドレイン及びソース間が短絡した場合に、電気負荷が作動し続け、運転者の意図に従わない動作をする虞がある。
【0004】
そこで、半導体スイッチが短絡した状態でバッテリから電気負荷への給電が継続されることを防止する給電制御装置が特許文献1に記載されている。
【0005】
特許文献1に記載の給電制御装置では、半導体スイッチとしてMOSFET(Metal-Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が用いられ、MOSFETのゲートに抵抗を介して電圧を印加することによって、MOSFETをオン/オフする。この給電制御装置は、ゲートに接続された抵抗の両端子間の電圧から、短絡する直前のMOSFETの状態を検出した場合、ゲートへの電圧印加を停止し、MOSFETをオフにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−174756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、故障によって半導体スイッチが短絡した状態でバッテリから電気負荷への給電が継続されることを防止する給電制御装置として、所定温度以上に加熱された場合にバッテリから電気負荷への給電経路を遮断する遮断素子を用いた給電制御装置が提案されている。
【0008】
半導体スイッチが故障によって短絡した場合、半導体スイッチのオン抵抗は上昇する。これにより、半導体スイッチを電流が流れた場合に半導体スイッチから発生する熱の量が上昇する。更には、半導体スイッチは短絡しているため、半導体スイッチにはバッテリから電流が流れ続け、高熱が発生する。
【0009】
遮断素子を用いた給電制御装置では、遮断素子が半導体スイッチの近傍に配置され、半導体スイッチが短絡した場合、半導体スイッチが発する熱によって、遮断素子は所定温度以上に加熱され、遮断素子はバッテリから電気負荷への給電経路を遮断する。これにより、半導体スイッチが短絡した状態でバッテリから電気負荷への給電が継続されることが防止される。
【0010】
しかしながら、半導体スイッチから発せられる熱が十分に加えられる位置に遮断素子を配置することは難しいため、半導体スイッチが故障によって短絡したにもかかわらず、遮断素子によってバッテリから電気負荷への給電経路が遮断されず、電気負荷への給電が継続される虞がある。
【0011】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、半導体スイッチが短絡した場合に、バッテリから電気負荷への給電経路を確実に遮断することができる給電制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る給電制御装置は、所定温度以上に加熱された場合にバッテリから電気負荷への給電経路を遮断する遮断素子と、該給電経路に設けられ、通電によって発する熱を前記遮断素子に加える半導体スイッチとを備える給電制御装置において、電力を供給されて発熱し、前記遮断素子を加熱する加熱素子と、前記半導体スイッチの短絡を検出する検出手段と、該検出手段が前記短絡を検出した場合に前記加熱素子に前記バッテリからの電力を供給する電力供給手段とを備え、前記検出手段は、前記半導体スイッチがオンである場合に該半導体スイッチの両端間の電圧が高い程、高い電圧を出力する出力回路を有し、前記電力供給手段は、前記バッテリから前記加熱素子へ給電される第2の給電経路に設けられ、前記出力回路が出力した電圧が所定電圧以上である場合にオンとなるスイッチを有することを特徴とする。
【0013】
本発明にあっては、検出手段はバッテリから電気負荷への給電経路に設けられた半導体スイッチの短絡を検出する。検出手段が短絡を検出した場合、電力供給手段は加熱素子にバッテリからの電力を供給する。具体的に、検出手段の出力回路は、半導体スイッチがオンである場合において、半導体スイッチの両端間の電圧が高い程、高い電圧を出力する。出力回路が出力した電圧が所定電圧以上である場合、バッテリから加熱素子へ給電される第2の給電経路に設けられた電力供給手段のスイッチはオンとなる。これにより、加熱素子は、電力を供給されて発熱し、遮断素子を加熱する。遮断素子は、短絡した半導体スイッチが発する熱と、加熱素子によって加えられた熱とによって自身の温度が所定温度以上になった場合にバッテリから電気負荷への給電経路を遮断する。
【0014】
障によって半導体スイッチが短絡した場合、出力回路が出力した電圧が所定電圧以上となり、スイッチはオンとなる。これにより、バッテリから加熱素子へ給電され、遮断素子は半導体スイッチと加熱素子とによって加熱される。結果、バッテリから電気負荷への給電経路が確実に遮断される。
【0015】
本発明に係る給電制御装置は、前記半導体スイッチをオン又はオフにすることによって、前記電気負荷の駆動を制御する制御部を更に備えることを特徴とする。
【0016】
本発明にあっては、バッテリから負荷への給電経路に設けられた半導体スイッチをオン又はオフにすることによって電気負荷の駆動を制御する
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、半導体スイッチが短絡した場合に、バッテリから電気負荷への給電経路を確実に遮断させることができる給電制御装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る給電制御装置の実施の形態の要部構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係る給電制御装置の実施の形態の要部構成を示す回路図である。この給電制御装置1は、好適に車両に搭載され、バッテリ2の正極端子と電気負荷3の一方の端子との間に接続されている。バッテリ2の負極端子、及び、電気負荷3の他方の端子は接地されている。
【0021】
給電制御装置1は、外部から電気負荷3の駆動を指示する駆動信号を受け付けた場合に、バッテリ2からの電力を電気負荷3に供給する。
電気負荷3はランプである。なお、電気負荷3は、ランプに限定されず、ワイパー、エアーコンディショナー、電動ブレーキ、電動パワーステアリング及びカーナビゲーション等の車載負荷であってもよい。
【0022】
給電制御装置1は、遮断素子11、加熱素子12、Nチャネル型のFET13、スイッチ14、抵抗15,16、オペアンプ17、リレー18及び制御部19を備える。リレー18はリレーコイル81及びリレー接点82(a接点)を有する。
【0023】
バッテリ2の正極端子は、遮断素子11及び加熱素子12夫々の一方の端子に接続されている。FET13では、ドレインが遮断素子11の他方の端子、及び、スイッチ14の一方の端子に、ソースが電気負荷3及び抵抗15夫々の一方の端子に、ゲートが制御部19に接続されている。
【0024】
オペアンプ17では、非反転入力端子がスイッチ14の他方の端子に、反転入力端子が抵抗15の他方の端子、及び、抵抗16の一方の端子に、出力端子が抵抗16の他方の端子、及び、リレーコイル81の一方の端子に接続されている。加熱素子12の他方の端子は、リレー接点82の一方の端子に接続され、リレーコイル81及びリレー接点82夫々の他方の端子は接地されている。
【0025】
遮断素子11は、加熱素子12及びFET13の近傍に配置され、加熱素子12から発せられる熱、及び、通電によってFET13から発せられる熱を加えられる。遮断素子11は、加熱素子12及びFET13によって所定温度以上に加熱された場合に、バッテリ2から電気負荷3への給電経路を遮断する。
【0026】
加熱素子12は、例えば発熱抵抗であり、バッテリ2からの電力が供給された場合に熱を発する。加熱素子12は、リレー接点82がオンになった場合にバッテリ2からの電力が供給され、発熱し、遮断素子11を加熱する。
【0027】
FET13は半導体スイッチとして機能する。FET13は、ゲートに第1電圧以上の電圧が制御部19によって印加された場合にオンとなり、ゲートに電圧が印加されない場合にオフとなる。
【0028】
FET13のドレイン及びソース間の電圧をEiとすると、電圧Eiは、「電気負荷3に流れる電流の量」と「ドレイン及びソース間の抵抗値」との積で表される。
【0029】
ドレイン及びソース間のオン抵抗値は、FET13がオンである場合に数mΩであり、静電気、サージ電圧又は過電流等によってFET13が故障してドレイン及びソース間が短絡した場合に数百mΩ以上である。このため、FET13が正常に作動してオンである場合における電圧Eiは、FET13のドレイン及びソース間が短絡した場合における電圧Eiよりも低い。
【0030】
FET13が正常に作動してオンである場合における電圧Eiと、FET13のドレイン及びソース間が短絡した場合における電圧Eiとの間にある電圧を基準電圧として設定する。制御部19がFET13をオンにしている状態で電圧Eiが基準電圧以上である場合に、FET13のドレイン及びソース間の短絡が検出される。
【0031】
このように、電圧Eiの変化からFET13のドレイン及びソース間の短絡を確実に検出することができる。
なお、FET13のドレイン及びソースは特許請求の範囲における両端子に該当する。
【0032】
スイッチ14は制御部19によってオン/オフされる。
抵抗15,16及びオペアンプ17は差動増幅器として機能する。オペアンプ17の出力端子から出力される電圧をEoutとし、抵抗15及び16夫々の抵抗値をR15及びR16とすると、スイッチ14がオンである場合におけるEoutは(1)式のように表される。
Eout=(1+(R16/R15))Ein・・・(1)
スイッチ14がオフである場合、オペアンプ17の出力端子から電圧は出力されない。
【0033】
リレーコイル81には、オペアンプ17の出力端子から出力されたEoutが印加される。リレーコイル81は、Eoutが第2電圧以上である場合にリレー接点82をオンに、Eoutが第2電圧未満である場合にリレー接点82をオフにする。
【0034】
リレー接点82がオンである場合、加熱素子12はバッテリ2から電力を供給されて発熱し、リレー接点82がオフである場合、加熱素子12は電力を供給されず、発熱しない。
【0035】
抵抗値R15及びR16夫々は、電圧Eiが基準電圧未満である場合にEoutが第2電圧未満となり、電圧Eiが基準電圧以上である場合にEoutが第2電圧以上となるように設定されている。
【0036】
制御部19は、駆動信号を受け付けた場合、FET13のゲートに第1電圧以上の電圧を印加してFET13をオンにし、更には、スイッチ14をオンにする。制御部19は、駆動信号を受け付けていない場合、FET13のゲートに電圧を印加せずにFET13をオフにし、スイッチ14もオフにする。
【0037】
次に、給電制御装置1の各構成部が実行する動作を説明する。制御部19が駆動信号を受け付けてFET13及びスイッチ14をオンにした場合、バッテリ2から遮断素子11及びFET13を介して電気負荷3に給電される。
【0038】
FET13が正常に作動してオンである場合、電圧Eiは基準電圧未満であるため、故障によるFET13のドレイン及びソース間の短絡は検出されず、オペアンプ17から出力される電圧Eoutは第2電圧未満となる。これにより、リレー接点82はオフのままであり、加熱素子12に電力が供給されない。従って、遮断素子11は、所定温度以上に加熱されることはないため、バッテリ2から電気負荷3への給電経路を遮断することはない。
【0039】
故障によってFET13のドレイン及びソース間が短絡した場合、電圧Eiは基準電圧以上であるため、ドレイン及びソース間の短絡が検出され、オペアンプ17から出力される電圧Eoutは第2電圧以上となる。これにより、リレー接点82はオンになり、加熱素子12に電力が供給され、加熱素子12は遮断素子11を加熱する。
【0040】
更には、ドレイン及びソース間の抵抗が数十mΩから数百mΩ以上になるため、FET13は高熱を発し、遮断素子11を加熱する。
【0041】
従って、FET13のドレイン及びソース間が短絡した場合、遮断素子11は、加熱素子12及びFET13によって所定温度以上に加熱され、バッテリ2から電気負荷3への給電経路を遮断する。
【0042】
上述のように、故障によってFET13のドレイン及びソース間が短絡した場合、FET13だけでなく、加熱素子12によって遮断素子11は加熱されるので、バッテリ2から電気負荷3への給電経路を確実に遮断することができる。
【0043】
なお、FET13のドレイン及びソース間の短絡を検出する方法は、ドレイン及びソース間の電圧Eiに基づいて短絡を検出する方法に限定されない。
【0044】
また、短絡が検出される半導体スイッチは、Nチャネル型のFETに限定されず、Pチャネル型のFETでもよい。更には、短絡が検出される半導体スイッチはFETに限定されず、バイポーラトランジスタであってもよい。この場合、バイポーラトランジスタのコレクタ及びエミッタ間の短絡が検出される。
【0045】
開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
1 給電制御装置
11 遮断素子
12 加熱素子
13 FET
14 スイッチ
15,16 抵抗
17 オペアンプ
18 リレー
2 バッテリ
3 電気負荷
81 リレーコイル
82 リレースイッチ
図1