特許第5776583号(P5776583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776583
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/232 20060101AFI20150820BHJP
   H01G 4/228 20060101ALI20150820BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   H01G4/12 352
   H01G1/14 W
   H01G4/30 301B
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-36401(P2012-36401)
(22)【出願日】2012年2月22日
(65)【公開番号】特開2012-212861(P2012-212861A)
(43)【公開日】2012年11月1日
【審査請求日】2013年8月2日
(31)【優先権主張番号】特願2011-61414(P2011-61414)
(32)【優先日】2011年3月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079577
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 全啓
(72)【発明者】
【氏名】春木 雅良
(72)【発明者】
【氏名】竹内 嘉夫
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−161172(JP,A)
【文献】 特開2012−033660(JP,A)
【文献】 特開2004−273935(JP,A)
【文献】 特開2004−335963(JP,A)
【文献】 特開2012−094784(JP,A)
【文献】 特開平11−233370(JP,A)
【文献】 特開2012−033659(JP,A)
【文献】 特開2012−094783(JP,A)
【文献】 特開2012−023322(JP,A)
【文献】 米国特許第6438827(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/232
H01G 4/228
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する2つの端面を有する基体および前記基体の少なくとも2つの端面にそれぞれ形成される2つの外部電極を有する積層セラミックコンデンサ本体と、
前記積層セラミックコンデンサ本体の前記2つの外部電極にそれぞれ接続される2つの接続部および前記2つの接続部からそれぞれのびて形成される2つの脚部を有する2つの金属端子とを含む積層セラミックコンデンサにおいて、
前記金属端子は、端子本体とめっき膜とを有し、
前記端子本体は、Ni、Fe、Cu、Ag、Crまたはこれらの金属のうちの一種以上の金属を主成分として含む合金で形成されており、
前記接続部は、矩形板状であり、積層セラミックコンデンサ本体に形成される外部電極の実装面側の下端まで形成されており、
前記脚部は第1および第2の脚部分と、第1および第2の脚部分からのびて形成される第1および第2の折曲部分とを有しており、
前記第1および第2の脚部の第1および第2の脚部分は、第1および第2の接続部の下端から前記基体の端面に平行しかつ前記基体の主面に直交する高さ方向にのびており、
前記2つの金属端子の前記2つの脚部のそれぞれの長さであって前記積層セラミックコンデンサ本体の前記基体の前記端面に平行する方向における長さをhとし、前記2つの金属端子の前記2つの脚部のそれぞれの厚みであって前記積層セラミックコンデンサ本体の前記基体の前記端面に直交する方向における厚みをtとしたときに、6.4≦h/t≦32.0の関係を満たすことを特徴とする、積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層セラミックコンデンサに関し、特にたとえば、複数のセラミック層と内部電極とが交互に積層された基体を有する積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化・高機能化が急速に進んでおり、電子機器に搭載される積層セラミックコンデンサについても、小型化が要求されている。たとえば、積層セラミックコンデンサの場合、薄層化技術および多層化技術の進展により、アルミ電解コンデンサに代替できる高静電容量を有するものが商品化されるようになった。
【0003】
積層セラミックコンデンサ1は、図10に示すように、複数のセラミック層2と内部電極3とが交互に積層された基体4を含む。複数の内部電極3のうちの隣接するものが、基体4の対向する端面に交互に引き出される。内部電極3が引き出された基体4の端面には、内部電極3に電気的に接続される外部電極5が形成される。このような構成により、基体4の対向する端部に設けられた外部電極5間に静電容量が形成される。積層セラミックコンデンサ1は、半田6によって基板7上に取り付けられる。このとき、積層セラミックコンデンサ1の外部電極5が、半田6によって基板7上に取り付けられる。
【0004】
このような積層セラミックコンデンサ1において、セラミック層2の材料として、誘電率の比較的高いチタン酸バリウムなどの強誘電体材料が一般的に用いられているが、このような強誘電体材料は圧電性および電歪性を有する。積層セラミックコンデンサ1に交流電圧が加わると、セラミック層2に機械的歪みが生じる。その振動が外部電極5を介して基板7に伝達されると、基板7全体が音響放射面となって、雑音となる振動音(鳴き)を発生する恐れがある。
【0005】
この対策として、図11に示すように、積層セラミックコンデンサ1の外部電極5に1対の金属端子8を半田で接続し、基板7と積層セラミックコンデンサ1とが間隔を隔てるようにして、金属端子8を基板7に半田付けする構成が考えられている。このような構成とすることにより、金属端子8の弾性変形によって交流電圧が加わることでセラミック層に生じる機械的歪みを吸収することができ、その振動が外部電極を介して基板に伝達されることを抑えて雑音の発生を減少することができる(特許文献1参照 図21)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−288847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、金属端子を用いて積層セラミックコンデンサを基板に取り付ける構成を採用しても、十分に基板の振動音(鳴き)を抑制する効果を得ることができない。
【0008】
それゆえに、この発明の主たる目的は、基板に取り付けても十分な振動音(鳴き)の抑制効果を得ることができる積層セラミックコンデンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、互いに対向する2つの端面を有する基体および基体の少なくとも2つの端面にそれぞれ形成される2つの外部電極を有する積層セラミックコンデンサ本体と、積層セラミックコンデンサ本体の2つの外部電極にそれぞれ接続される2つの接続部および2つの接続部からそれぞれのびて形成される2つの脚部を有する2つの金属端子とを含む積層セラミックコンデンサにおいて、金属端子は、端子本体とめっき膜とを有し、端子本体は、Ni、Fe、Cu、Ag、Crまたはこれらの金属のうちの一種以上の金属を主成分として含む合金で形成されており、接続部は、矩形板状であり、積層セラミックコンデンサ本体に形成される外部電極の実装面側の下端まで形成されており、脚部は第1および第2の脚部分と、第1および第2の脚部分からのびて形成される第1および第2の折曲部分とを有しており、第1および第2の脚部の第1および第2の脚部分は、第1および第2の接続部の下端から基体の端面に平行しかつ基体の主面に直交する高さ方向にのびており、2つの金属端子の2つの脚部のそれぞれの長さであって積層セラミックコンデンサ本体の基体の端面に平行する方向における長さをhとし、2つの金属端子の2つの脚部のそれぞれの厚みであって積層セラミックコンデンサ本体の基体の端面に直交する方向における厚みをtとしたときに、6.4≦h/t≦32.0の関係を満たすことを特徴とする、積層セラミックコンデンサである。
このような積層セラミックコンデンサにおいて、2つの金属端子の2つの脚部のそれぞれの長さhは、2つの金属端子の2つの脚部の長さの平均値で定義される。さらに、このような積層セラミックコンデンサにおいて、2つの金属端子の2つの脚部のそれぞれの厚みtは、2つの金属端子の2つの脚部の厚みの平均値で定義される。
積層セラミックコンデンサの金属端子の脚部の長さhが短くなると、金属端子の脚部の剛性が大きくなる。金属端子の脚部の剛性が大きくなると、積層セラミックコンデンサ本体に発生した変形が金属端子で吸収されにくくなり、積層セラミックコンデンサ本体の変形が基板に伝わって、基板の振動音(鳴き)が大きくなる。逆に、積層セラミックコンデンサの金属端子の脚部の長さhが長くなると、金属端子の脚部の剛性が小さくなる。金属端子の脚部の剛性が小さくなると、積層セラミックコンデンサ本体に発生した変形が金属端子で吸収されやすくなり、積層セラミックコンデンサ本体の変形が基板に伝わりにくくなって、基板の振動音(鳴き)が小さくなる。
また、積層セラミックコンデンサの金属端子の脚部の厚みtが厚くなると、金属端子の脚部の剛性が大きくなり、積層セラミックコンデンサ本体に発生した変形が金属端子で吸収されにくくなり、積層セラミックコンデンサ本体の変形が基板に伝わって、基板の振動音(鳴き)が大きくなる。逆に、積層セラミックコンデンサの金属端子の脚部の厚みtが薄くなると、金属端子の脚部の剛性が小さくなり、積層セラミックコンデンサ本体に発生した変形が金属端子で吸収されやすくなり、積層セラミックコンデンサ本体の変形が基板に伝わりにくくなって、基板の振動音(鳴き)が小さくなる。
ここで、積層セラミックコンデンサにおける金属端子の脚部の長さhおよび金属端子の脚部の厚みtと基板の振動音との関係を調べたところ、これらの比h/tが6.4以上で32.0以下のとき、基板の振動音を良好に抑制できることがわかった。
なお、積層セラミックコンデンサにおいて、金属端子の脚部の長さhが長くなるほどまたは金属端子の脚部の厚みtが薄くなるほど、すなわち、h/tが大きくなるほど、基板の振動音を抑制する効果が高くなるが、金属端子および外部電極間の固着強度、金属端子の脚部の強度、金属端子および基板間の固着強度などの金属端子に関連する強度が小さくなる。金属端子に関連する強度として十分な強度を得るために、h/tが10以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、積層セラミックコンデンサ本体に発生する変形が基板に伝わりにくく、基板の振動音(鳴き)を抑制することができる積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0011】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明にかかる積層セラミックコンデンサの一例を示す斜視図である。
図2図1に示す積層セラミックコンデンサの正面図である。
図3図1に示す積層セラミックコンデンサの上面図である。
図4図3の線IV−IVにおける断面図である。
図5図2の線V−Vにおける断面図である。
図6】積層セラミックコンデンサの金属端子の脚部の長さhおよび厚みtを示す図解図である。
図7】積層セラミックコンデンサの金属端子の脚部の長さhおよび厚みtを定義するための各寸法を示す図解図である。
図8】積層セラミックコンデンサを実装した基板の振動音を測定するための装置の一例を示す図解図である。
図9】積層セラミックコンデンサの金属端子に関連する強度の測定方法を示す図解図である。
図10】従来の積層セラミックコンデンサを基板に実装した状態を示す図解図である。
図11図10に示す積層セラミックコンデンサの問題点を解決するために提案された従来の積層セラミックコンデンサを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、この発明にかかる積層セラミックコンデンサの一例を示す斜視図であり、図2は、その積層セラミックコンデンサの正面図であり、図3は、その積層セラミックコンデンサの上面図である。また、図4は、図3の線IV−IVにおける断面図であり、図5は、図2の線V−Vにおける断面図である。
【0014】
図1に示す積層セラミックコンデンサ10は、積層セラミックコンデンサ本体12を含む。積層セラミックコンデンサ本体12は、たとえば直方体状の基体14を含む。
【0015】
基体14は、積層された複数のセラミック層16からなり、互いに対向する第1の主面18aおよび第2の主面18bと、互いに対向する第1の側面20aおよび第2の側面20bと、互いに対向する第1の端面22aおよび第2の端面22bとを有する。基体14は、角部24および稜部26にそれぞれ丸みがつけられていることが好ましい。
なお、第1の主面18aと第2の主面18bとが対向する方向を高さ方向、第1の側面20aと第2の側面20bとが対向する方向を幅方向、第1の端面22aと第2の端面22bとが対向する方向を長さ方向とする。
【0016】
基体14を形成するためのセラミック層16のセラミック材料としては、たとえば、BaTiO、CaTiO、SrTiO、CaZrOなどの主成分からなる誘電体セラミックを用いることができる。また、セラミック層16のセラミック材料としては、それらの主成分にMn化合物、Mg化合物、Si化合物、Co化合物、Ni化合物、希土類化合物などの副成分を添加したものが用いられてもよい。基体14の各セラミック層16の厚みは、0.5μm〜10μmであることが好ましい。
【0017】
基体14の内部には、セラミック層16間に、複数の第1の内部電極28aおよび複数の第2の内部電極28bが交互に配置される。第1の内部電極28aおよび第2の内部電極28bの材料としては、それぞれ、たとえば、Cu、Ni、Ag、Pd、Ag−Pd合金、Auなどを用いることができる。各第1の内部電極28aの厚みまたは各第2の内部電極28bの厚みは、それぞれ、0.3μm〜2.0μmであることが好ましい。
【0018】
第1の内部電極28aは、第1の対向部30aと、第1の引出し部32aと、第1の露出部34aとを有する。第1の対向部30aは、第2の内部電極28bと対向する。第1の引出し部32aは、第1の対向部30aから基体14の第1の端面22aに引出される。第1の露出部34aは、基体14の第1の端面22aに露出する。
【0019】
第2の内部電極28bは、第1の内部電極28aと同様に、第1の内部電極28aと対向する第2の対向部30bと、第2の対向部30bから基体14の第2の端面22bに引出された第2の引出し部32bと、基体14の第2の端面22bに露出する第2の露出面34bとを有する。
【0020】
基体14の外表面には、第1の外部電極36aおよび第2の外部電極36bが配置される。第1の外部電極36aは、基体14の第1の端面22aを覆い、第1および第2の主面18a、18bと第1および第2の側面20a、20bとに回り込むように形成される。この第1の外部電極36aは、基体14の第1の端面22aにおいて、第1の内部電極28aの第1の露出部34aに接続される。同様に、第2の外部電極36bは、基体14の第2の端面22bを覆い、第1および第2の主面18a、18bと第1および第2の側面20a、20bとに回り込むように形成される。この第2の外部電極36bは、基体14の第2の端面22bにおいて、第2の内部電極28bの第2の露出部34bに接続される。
【0021】
第1の外部電極36aおよび第2の外部電極36bの材料としては、たとえば、Cu、Ni、Ag、Pd、Ag−Pd合金、Auなどを用いることができるが、中でもCuを用いることが好ましい。第1の外部電極36aおよび第2の外部電極36bの厚みは、10μm〜80μmであることが好ましい。
【0022】
積層セラミックコンデンサ本体12の第1の外部電極36aには、半田接合によって第1の金属端子38aが取り付けられる。同様に、積層セラミックコンデンサ本体12の第2の外部電極36bには、半田接合によって第2の金属端子38bが取り付けられる。
【0023】
第1の金属端子38aは、たとえば矩形板状の第1の接続部40aと、第1の接続部40aからのびて形成されるたとえば断面L字状の第1の脚部42aとを有する。第1の金属端子38aの第1の接続部40aは、たとえば、基体14の第1の端面22a上の第1の外部電極36aと同じ大きさの矩形板状に形成され、片面が第1の外部電極36aに半田44で接続される。第1の金属端子38aの第1の脚部42aは、積層セラミックコンデンサ10の積層セラミックコンデンサ本体12をたとえば後述の基板50から浮かせるためのものであり、たとえば長方形板状の第1の脚部分42a1と、第1の脚部分42a1からのびて形成されるたとえば矩形板状の第1の折曲部分42a2とを有する。第1の脚部42aの第1の脚部分42a1は、第1の接続部40aの下端部からすなわち第1の接続部40aにおいて基体14の第1の端面22aおよび第2の主面18b間の稜部26側の端部から、下方にのびてすなわち基体14の端面22a、22bに平行しかつ基体14の主面18a、18bに直交する高さ方向にのびて、第1の接続部40aと一平面上に形成される。また、第1の脚部42aの第1の折曲部分42a2は、第1の脚部分42a1の下端部からすなわち第1の脚部分42a1において第1の接続部40aとは反対側の端部から、水平方向にのびてすなわち基体14の主面18a、18bに平行する長さ方向にのびて、第1のリード部分42a1と直角に形成される。この場合、第1の脚部42aの第1の折曲部分42a2は、基体14の第1の端面22a側から第2の端面22b側に向かってのびて形成される。
【0024】
第2の金属端子38bは、第1の金属端子38aと対称に形成される。そのため、第2の金属端子38bは、矩形板状の第2の接続部40bと、断面L字状の第2の脚部42bとを有し、第2の接続部40bが第2の外部電極36bに半田44で接続される。また、第2の金属端子38bの第2の脚部42bも、第1の金属端子38aの第1の脚部42aと同様に、長方形板状の第2の脚部分42b1と、第2の脚部分42b1からのびて第2の脚部分42b1と直角に形成される矩形板状の第2の折曲部分42b2とを有する。ただし、第2の脚部42bの第2の折曲部分42b2は、基体14の第2の端面22b側から第1の端面22a側に向かってのびて形成される。また、第2の金属端子38bの第2の脚部42bの第2の脚部分42b1は、積層セラミックコンデンサ本体12の下側すなわち基体14の第2の主面18b側において、第1の金属端子38aの第1の脚部42aの第1の脚部分42a1と平行に配置される。すなわち、第1の金属端子38aおよび第2の金属端子38bは、それぞれ、積層セラミックコンデンサ本体12の下面よりも下方に突出した脚部42a、42bを有する。
【0025】
なお、第1の折曲部分42a2の長さ方向の長さは、第2の主面18bに形成される第1の外部電極36aの長さ方向の長さよりも長く形成されていてもよい。同様に、第2の折曲部分42b2の長さ方向の長さは、第2の主面18bに形成される第2の外部電極36bの長さ方向の長さよりも長く形成されていてもよい。これによって、積層セラミックコンデンサ10をマウントする際において、積層セラミックコンデンサ10を下方からカメラで画像認識して部品の位置を検出する場合、積層セラミックコンデンサ10の第1および第2の外部電極36a、36bを第1および第2の金属端子38a、38bとして誤認識することを防止でき、検出ミスを防止することができる。
また、第1の折曲部分42a2の長さ方向の長さは、第1の脚部分42a1の長さよりも長く形成されていてもよく、第1の脚部分42a1と第1の折曲部分42a2とが直角に交わる角部は丸みが付けられていてもよい。同様に、第2の折曲部分42b2の長さ方向の長さは、第2の脚部分42b1の長さよりも長く形成されていてもよく、第2の脚部分42b1と第2の折曲部分42b2とが直角に交わる角部は丸みが付けられていてもよい。
【0026】
金属端子38a、38bは、好ましくは、金属本体の表面に形成されためっき膜を含む。端子本体は、たとえば、Ni、Fe、Cu、Ag、Crまたはこれらの金属のうちの一種以上の金属を主成分として含む合金で形成される。特に、端子本体は、Ni、Fe、Crまたはこれらの金属のうちの一種以上の金属を主成分として含む合金からなることが好ましい。具体的には、端子本体の母材として、Fe−42Ni合金やFe−18Cr合金などが用いられる。端子本体の厚みは、0.05mm〜0.5mm程度であることが好ましい。
【0027】
めっき膜は、たとえば、端子本体を覆う下層めっき膜と、下層めっき膜を覆う上層めっき膜とで構成される。下層めっき膜および上層めっき膜のそれぞれは、複数のめっき膜によって構成されていてもよい。
【0028】
下層めっき膜は、たとえば、Ni、Fe、Cu、Ag、Crまたはこれらの金属のうちの一種以上の金属を主成分として含む合金で形成される。特に、下層めっき膜は、Ni、Fe、Crまたはこれらの金属のうちの一種以上の金属を主成分として含む合金からなることが好ましい。下層のめっき膜の厚みは1.0μm〜5.0μm程度であることが好ましい。端子本体および下層めっき膜のそれぞれが、高融点のNi、Fe、Crまたはこれらの金属のうちの一種以上の金属を主成分として含む合金で形成することにより、外部電極36a、36bの耐熱性を向上させることができる。
【0029】
上層めっき膜は、たとえば、Sn、Ag、Auまたはこれらの金属のうちの一種以上の金属を主成分として含む合金で形成される。特に、上層めっき膜は、SnまたはSnを主成分として含む合金からなることが好ましい。上層めっき膜の厚みは、1.0μm〜5.0μm程度であることが好ましい。上層めっき膜をSnまたはSnを主成分として含む合金で形成することにより、金属端子38a、38bと外部電極36a、36bとの半田付け性を向上させることができる。
【0030】
半田44としては、たとえば、Sn−Sb系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Cu系、Sn−Bi系などのLF半田を用いることができる。中でも、Sn−Sb系半田の場合には、Sbの含有率が5%〜15%程度であることが好ましい。
【0031】
このような積層セラミックコンデンサ10において、2つの金属端子38a、38bの2つの脚部42a、42bのそれぞれの長さであって積層セラミックコンデンサ本体12の基体14の端面22a、22bに平行する方向における長さをh(図6参照)とし、2つの金属端子38a、38bの2つの脚部42a、42bのそれぞれの厚みであって積層セラミックコンデンサ本体12の基体14の端面22a、22bに直交する方向における厚みをt(図6参照)としたときに、6.4≦h/t≦32.0の関係を満たすように、各長さhおよび各厚みtが設定される。ここで、2つの金属端子38a、38bの2つの脚部42a、42bのそれぞれの長さhは、2つの金属端子38a、38bの2つの脚部42a、42bの下面から接続部40a、40bの半田44までの高さh1、h2図7参照)の平均値で示される値である。さらに、2つの金属端子38a、38bの2つの脚部42a、42bのそれぞれの厚みtは、2つの金属端子38a、38bの2つの脚部42a、42bの厚みt1、t2図7参照)の平均値で示される値である。なお、積層セラミックコンデンサ10は、6.4≦h/t≦10を満足するように構成されていることが好ましい。また、h/t≦10の関係を満たすようにすれば、積層セラミックコンデンサ本体に発生する変形が基板に伝わりにくく、基板の振動音(鳴き)を抑制することができるとともに、積層セラミックコンデンサ本体の外部電極と金属端子との間に十分な固着強度を有する積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0032】
次に、上述の積層セラミックコンデンサ10の製造方法の一例について説明する。
【0033】
まず、セラミックグリーンシート、内部電極用導電性ペーストおよび外部電極用導電性ペーストを準備する。セラミックグリーンシートや各種導電性ペーストには、バインダおよび溶剤が含まれるが、公知の有機バインダや有機溶剤を用いることができる。
【0034】
次に、セラミックグリーンシート上に、たとえば、スクリーン印刷などにより所定のパターンで内部電極用導電性ペーストを印刷し、内部電極パターンを形成する。
【0035】
そして、内部電極パターンが印刷されていない外層用セラミックグリーンシートを所定枚数積層し、その上に内部電極パターンが印刷されたセラミックグリーンシートを順次積層し、その上に外層用セラミックグリーンシートを所定枚数積層することによって、マザー積層体を作製する。
【0036】
それから、マザー積層体を静水圧プレスなどの手段により積層方向にプレスする。
【0037】
そして、プレスしたマザー積層体を所定のサイズにカットし、生のセラミック積層体を切り出す。このとき、バレル研磨などにより生のセラミック積層体の角部や稜部に丸みをつけてもよい。
【0038】
それから、生のセラミック積層体を焼成する。この場合、焼成温度は、基体や内部電極の材料にもよるが、900℃〜1300℃であることが好ましい。焼成後のセラミック積層体は、積層セラミックコンデンサの基体14、第1の内部電極28aおよび第2の内部電極28bとなる。
【0039】
焼成後のセラミック積層体の第1の端面上に外部電極用導電性ペーストを付与し、焼き付けることにより、外部電極36a、36bを形成する。ここで、焼付け温度は、700℃〜900℃であることが好ましい。なお、外部電極用導電性ペーストの焼付けおよび上述の生のセラミック積層体の焼成は、たとえば、大気中、N雰囲気中、水蒸気+N雰囲気中などにおいて行われる。
【0040】
このようにして得られた積層セラミックコンデンサ本体12の外部電極36a、36bに、半田44を用いて、第1および第2の金属端子38a、38bが接続される。このとき、たとえば、リフロー半田付けによって金属端子38a、38bが積層セラミックコンデンサ本体12の外部電極36a、36bに接続されるが、その半田付け温度として、270℃〜290℃の熱が30秒以上与えられる。
【0041】
このようにして得られた積層セラミックコンデンサ10は、基板50上に搭載される。このとき、第1の金属端子38aの第1の脚部42aの第1の折曲部分42a2および第2の金属端子38bの第2の脚部42bの第2の折曲部分42b2が、基板50上に半田付けされる。ここで、金属端子38a、38bは、脚部42a、42bを有するので、積層セラミックコンデンサ本体12が基板50の表面から浮いた状態で基板50上に取り付けられる。
【0042】
この積層セラミックコンデンサ10に交流電圧を印加することにより、セラミック層16に機械的歪みが発生する。しかしながら、積層セラミックコンデンサ本体12が基板50の表面から浮いた状態で、金属端子38a、38bによって支持されているため、金属端子38a、38bの弾性変形によって積層セラミックコンデンサ本体12に発生する変形が吸収される。
【0043】
しかしながら、金属端子38a、38bの脚部42a、42bの長さhが短くなったり、金属端子38a、38bの脚部42a、42bの厚みtが厚くなったりすると、金属端子38a、38bの脚部42a、42bの剛性が上がる。そのため、金属端子38a、38bの脚部42a、42bが曲がりにくくなり、積層セラミックコンデンサ本体12で発生する変形が吸収されにくくなる。それにより、積層セラミックコンデンサ本体12で発生する変形が基板50に伝わりやすくなり、基板50の振動音(鳴き)が大きくなる。
【0044】
反対に、金属端子38a、38bの脚部42a、42bの長さhが長くなったり、金属端子38a、38bの脚部42a、42bの厚みtが薄くなったりすると、金属端子38a、38bの脚部42a、42bの剛性が下がる。そのため、金属端子38a、38bの脚部42a、42bが曲がりやすくなり、積層セラミックコンデンサ本体12で発生する変形が吸収されやすくなる。それにより、積層セラミックコンデンサ本体12で発生する変形が基板50に伝わりにくくなり、基板50の振動音(鳴き)が小さくなる。ただし、金属端子38a、38bの脚部42a、42bの長さhが長くなりすぎたり、金属端子38a、38bの脚部42a、42bの厚みtが薄くなりすぎたりすると、金属端子38a、38bおよび外部電極36a、36b間の固着強度、金属端子38a、38bの脚部42a、42bの強度、金属端子38a、38bおよび基板50間の固着強度などの金属端子38a、38bに関連する強度が小さくなる。
【0045】
この積層セラミックコンデンサ10においては、2つの金属端子38a、38bの2つの脚部42a、42bのそれぞれの長さであって積層セラミックコンデンサ本体12の基体14の端面22a、22bに平行する方向における長さをhとし、2つの金属端子38a、38bの2つの脚部42a、42bのそれぞれの厚みであって積層セラミックコンデンサ本体12の基体14の端面22a、22bに直交する方向における厚みをtとしたときに、6.4≦h/t≦10の関係を満たすように設定されている。ここで、2つの金属端子38a、38bの2つの脚部42a、42bのそれぞれの長さhは、2つの金属端子38a、38bの2つの脚部42a、42bの下面から接続部40a、40bの半田44までの高さh、hの平均値で示される値である。さらに、2つの金属端子38a、38bの2つの脚部42a、42bのそれぞれの厚みtは、2つの金属端子38a、38bの2つの脚部42a、42bの厚みt、tの平均値で示される値である。このようにh/tの値が6.4以上であれば、積層セラミックコンデンサ本体12で発生する変形を良好に吸収することができる。また、h/tが10以下であれば、金属端子38a、38bおよび外部電極36a、36b間の固着強度、金属端子38a、38bの脚部42a、42bの強度、金属端子38a、38bおよび基板50間の固着強度などの金属端子38a、38bに関連する強度を十分に大きくすることができる。
【実施例1】
【0046】
上記の製造方法にしたがって、チップサイズ3.2mm×1.6mm×1.6mm、容量10μFの積層セラミックコンデンサ本体12を準備し、表1に示すように試料1〜9の積層セラミックコンデンサ10を作製した。このとき、hが0.8mmになるサンプルのみを選択した。なお、積層セラミックコンデンサ本体12と金属端子38a、38bの取り付けは、Sbが10%含有されたSn−Sb半田によって取り付けた。また、積層セラミックコンデンサ本体12に金属端子38a、38bを取り付ける前に、図7に示すように、2つの金属端子38a、38bの2つの脚部42a、42bの厚みt、tをマイクロメータで測定し、それらの厚みt、tの平均値を、金属端子38a、38bの脚部42a、42bの厚みtと定義した。
【0047】
次に、これらの積層セラミックコンデンサ10について、金属端子38a、38bの脚部42a、42bの長さhおよび厚みtの比h/tと、基板50の振動音(鳴き)との関係について調べた。また、比較例として、試料1〜9で用いたのと同じ積層セラミックコンデンサ本体12を準備した。ただし、比較例には金属端子を取り付けなかった。
【0048】
まず、金属端子38a、38bの脚部42a、42bの長さhを求めるために、図7に示すように、2つの金属端子38a、38bの2つの脚部42a、42bの下面から接続部40a、40bの半田44までの高さh、hを測定した。具体的には、画像寸法測定機(キーエンス社製、IM−6140)を用いて、積層セラミックコンデンサの側面から画像処理を行い、脚部42a、42b側の接続部40a、40bの半田44の最下点を求める。その後、その最下点から金属端子38a、38bの2つの脚部42a、42bの下面まで垂線を下ろし、その垂線の長さを図7に示すように金属端子の38a、38bの外側に沿って測定した。そして、それらの高さh、hの平均値を、金属端子38a、38bの脚部42a、42bの長さhと定義した。
【0049】
そして、積層セラミックコンデンサ10を基板50に取り付け、図8に示すような装置60で基板50の振動音(鳴き)を測定した。つまり、積層セラミックコンデンサ10を実装した基板50を無響箱62内に設置し、積層セラミックコンデンサ10に対して、周波数:3kHz、電圧:1Vppの交流電圧を印加した。そして、その際に発生する振動音(鳴き)を集音マイク64で集音し、騒音計66およびFFTアナライザ(株式会社小野測器製 CF−5220)68で集音された音の音圧レベルを測定した。なお、集音マイク64は、基板50から3mmだけ離して設置した。
【0050】
得られた結果を表1に示す。表1では、h/tと基板の振動音(鳴き)との関係を示すとともに、金属端子を設けず、積層セラミックコンデンサ本体12の外部電極36a、36bを直接基板50に半田付けした場合の振動音圧レベルに対する音圧レベル比を示した。
【0051】
【表1】
【0052】
表1からわかるように、h/tが6.4以上で32.0以下になると、金属端子がない積層セラミックコンデンサに比べて、基板振動音圧レベルを40%以上引き下げることができる。
【0053】
また、図9に示すように、積層セラミックコンデンサ本体12の側面20aに力を加えて、金属端子38a、38bおよび外部電極36a、36b間の固着強度、金属端子38a、38bの脚部42a、42bの強度、金属端子38a、38bおよび基板50間の固着強度などの金属端子38a、38bに関連する強度を調べた。その結果、h/tが10以下において、30N以上の強度を得ることができた。
【0054】
上述の積層セラミックコンデンサ10では、金属端子38a、38bの接続部40a、40bにおけるそれぞれ厚みと金属端子38a、38bの脚部42a、42bにおけるそれぞれ厚みとがそれぞれ同じであるが、金属端子の接続部における厚みと金属端子の脚部における厚みとは異なってもよい。ただし、上述の積層セラミックコンデンサ10にように、金属端子38a、38bの接続部40a、40bにおけるそれぞれ厚みと金属端子38a、38bの脚部42a、42bにおけるそれぞれ厚みとがそれぞれ同じであると、たとえばプレス成型などによって金属端子38a、38bを製造しやすい。
【0055】
また、上述の積層セラミックコンデンサ10では、金属端子38a、38bの脚部42a、42bの折曲部42a2、42b2が互いに内側に折り曲げられているが、これらの折曲部42a2、42b2は、互いに外側に折り曲げられてもよい。ただし、上述の積層セラミックコンデンサ10のように、金属端子38a、38bの脚部42a、42bの折曲部42a2、42b2が互いに内側に折り曲げられていると、折曲部42a2、42b2が互いに外側に折り曲げられた積層セラミックコンデンサと比べて、積層セラミックコンデンサの実装面積を小さくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
この発明にかかる積層セラミックコンデンサは、特に、たとえばノートパソコンなどのパソコンや携帯電話器などの移動体端末に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0057】
10 積層セラミックコンデンサ
12 積層セラミックコンデンサ本体
14 基体
16 セラミック層
22a 第1の端面
22b 第2の端面
28a 第1の内部電極
28b 第2の内部電極
36a 第1の外部電極
36b 第2の外部電極
38a 第1の金属端子
38b 第2の金属端子
40a 第1の接続部
40b 第2の接続部
42a 第1の脚部
42b 第2の脚部
42a1 第1の脚部分
42b1 第2の脚部分
42a2 第1の折曲部分
42b2 第2の折曲部分
44 半田
50 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11