特許第5776595号(P5776595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5776595-クーラント穴付きエンドミル 図000002
  • 特許5776595-クーラント穴付きエンドミル 図000003
  • 特許5776595-クーラント穴付きエンドミル 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776595
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】クーラント穴付きエンドミル
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/28 20060101AFI20150820BHJP
   B23C 5/10 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   B23C5/28
   B23C5/10 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-62152(P2012-62152)
(22)【出願日】2012年3月19日
(65)【公開番号】特開2013-193159(P2013-193159A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100129403
【弁理士】
【氏名又は名称】増井 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(72)【発明者】
【氏名】深田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】畔上 貴行
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/094264(WO,A1)
【文献】 特開2003−117710(JP,A)
【文献】 特開平8−318419(JP,A)
【文献】 特開2010−214545(JP,A)
【文献】 特開2006−239829(JP,A)
【文献】 特開2001−25915(JP,A)
【文献】 特開2005−125433(JP,A)
【文献】 特表2009−522122(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0154272(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0188345(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/28, 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転されるエンドミル本体の先端部に、上記エンドミル本体の外周から内周側に向けて上記軸線を越えて延びる長底刃と、上記軸線から離れた位置に内周端を有する短底刃とが周方向に交互に形成され、上記長底刃とそのエンドミル回転方向前方側に隣接する短底刃との間隔は、上記短底刃とそのエンドミル回転方向前方側に隣接する長底刃との間隔よりも大きくされるとともに、上記エンドミル本体には複数のクーラント穴が形成されていて、これらのクーラント穴のうち、第1のクーラント穴は上記長底刃のエンドミル回転方向前方側に形成されたギャッシュに開口させられるとともに、第2のクーラント穴は上記短底刃の先端逃げ面に開口させられていることを特徴とするクーラント穴付きエンドミル。
【請求項2】
上記第2のクーラント穴は、上記第1のクーラント穴よりも開口面積が大きくされていることを特徴とする請求項1に記載のクーラント穴付きエンドミル。
【請求項3】
上記第1のクーラント穴は、上記第2のクーラント穴よりも上記軸線に対する径方向内周側に開口させられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のクーラント穴付きエンドミル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドミル本体の先端部に外周から内周側に向けてエンドミル本体の軸線を越えて延びる長底刃と軸線から離れた位置に内周端を有する短底刃とが形成されるとともに、エンドミル本体にクーラント穴が形成されたクーラント穴付きエンドミルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
このようなクーラント穴付きエンドミルとして、例えば特許文献1には、軸心に対して対称的に形成された一対の第1ギャッシュに沿って軸心付近まで設けられた一対の長底刃と、軸心まわりにおいてこれら一対の長底刃から90°の位置に、該軸心に対して対称的に外周部から第1ギャッシュに達するように形成された第2ギャッシュに沿って設けられた一対の短底刃とを有し、一対の長底刃の逃げ面に開口する一対の開口部を有してエンドミルを縦通して設けられた流体供給穴(クーラント穴)と、軸心側の端部が互いに交わっている第1ギャッシュおよび第2ギャッシュの連通面積を大きくするとともに、第1ギャッシュおよび第2ギャッシュの交差部分とクーラント穴の開口部とを接続するように設けられた一対の連通溝とを有するクーラント穴付きの4枚不等底刃のエンドミルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4409665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この特許文献1に記載のクーラント穴付きエンドミルでは、一対のクーラント穴の開口部から供給されたクーラントを、一対の連通溝を介して長底刃と短底刃の第1、第2のギャッシュに供給しているため、より多くのクーラントを供給しようとすると、クーラント穴やその開口部および連通溝を大きくしなければならない。ところが、クーラント穴は上述のように一対の開口部を長底刃の先端逃げ面に有しており、連通溝はこの開口部から第1、第2ギャッシュの交差部分に接続しているため、クーラント穴やその開口部および連通溝を大きくすると、長底刃の先端逃げ面も大きく切り欠かれることが避けられない。
【0005】
しかるに、この特許文献1に記載のように、一対の長底刃から90°の位置に一対の短底刃が形成されたクーラント穴付きエンドミルでは、長底刃と短底刃の先端逃げ面の大きさを略同じとすることができるが、ビビリ振動の発生防止のために長底刃とそのエンドミル回転方向前方側に隣接する短底刃との間隔が、短底刃とそのエンドミル回転方向前方側に隣接する長底刃との間隔よりも大きくされたエンドミルでは、長底刃の先端逃げ面が短底刃の先端逃げ面よりも小さくならざるを得ない。
【0006】
しかしながら、そのようなエンドミルにおいてこのように長底刃の先端逃げ面が大きく切り欠かれると、長底刃のエンドミル回転方向後方側におけるエンドミル本体の肉厚が削がれて長底刃の切刃強度が損なわれてしまう。しかも、長底刃は短底刃よりも長い上に、エンドミル回転方向前方側の短底刃との間隔が、短底刃とそのエンドミル回転方向前方側に隣接する長底刃との間隔より大きくされているために切削時の負荷が大きく、そのような長底刃において切刃強度が損なわれると、欠損等の損傷を生じ易くなってしまう。
【0007】
本発明は、このような背景の下になされたもので、長底刃とそのエンドミル回転方向前方側に隣接する短底刃との間隔が、短底刃とそのエンドミル回転方向前方側に隣接する長底刃との間隔よりも大きくされたエンドミルにおいて、長底刃の切刃強度を損なうことなく、十分なクーラントを供給することが可能なクーラント穴付きエンドミルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、軸線回りに回転されるエンドミル本体の先端部に、上記エンドミル本体の外周から内周側に向けて上記軸線を越えて延びる長底刃と、上記軸線から離れた位置に内周端を有する短底刃とが周方向に交互に形成され、上記長底刃とそのエンドミル回転方向前方側に隣接する短底刃との間隔は、上記短底刃とそのエンドミル回転方向前方側に隣接する長底刃との間隔よりも大きくされるとともに、上記エンドミル本体には複数のクーラント穴が形成されていて、これらのクーラント穴のうち、第1のクーラント穴は上記長底刃のエンドミル回転方向前方側に形成されるギャッシュに開口させられるとともに、第2のクーラント穴は上記短底刃の先端逃げ面に開口させられていることを特徴とする。
【0009】
このように構成されたクーラント穴付きエンドミルにおいては、まず1組の長底刃と短底刃に対して、エンドミル本体に形成された複数のクーラント穴のうち第1、第2の2つのクーラント穴が開口させられているので、より多くのクーラントを供給することができる。そして、第1のクーラント穴は長底刃のギャッシュに少なくとも一部が開口するとともに、第2のクーラント穴は短底刃の先端逃げ面に開口させられているので、長底刃とそのエンドミル回転方向前方側に隣接する短底刃との間隔が短底刃とそのエンドミル回転方向前方側に隣接する長底刃との間隔よりも大きくされていて、長底刃の先端逃げ面が短底刃の先端逃げ面より小さくされていても、この長底刃の先端逃げ面にクーラント穴が開口するのは避けることができる。
【0010】
従って、長底刃のエンドミル回転方向後方側におけるエンドミル本体の肉厚が削がれるのを防ぐことができて、長底刃の切刃強度を確保することができ、切削時に長底刃に欠損が生じたりするのを防ぐことが可能となる。その一方で、短底刃の先端逃げ面は長底刃と比べて大きくすることができるため、第2のクーラント穴を開口させても短底刃の切刃強度は維持することができ、やはり欠損等が生じるのを防ぐことができる。
【0011】
また、このように短底刃の先端逃げ面を大きくできるので、第2のクーラント穴を、第1のクーラント穴よりも開口面積が大きくなるようにすることにより、長短底刃の欠損を防ぎつつ、さらに多くのクーラントを供給することが可能となる。さらにまた、第1のクーラント穴を、第2のクーラント穴よりも軸線に対する径方向内周側に開口させることにより、軸線を越えて延びる長底刃の軸線近傍の内周側から外周側に亙って満遍なくクーラントを供給することができ、長底刃によって生成される切屑を確実に排出することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、長底刃や短底刃の切刃強度を損なうことなく、より多くのクーラントを供給することが可能となり、長短底刃に欠損等の損傷が生じるのを防ぎつつ、これら長短底刃や被削材の切削部位の確実な冷却、潤滑を図って底刃やその先端逃げ面の摩耗を抑えるとともに、効率的な切屑の排出を促すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1に示す実施形態の側面図である。
図3図1に示す実施形態の拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1ないし図3は、本発明の一実施形態を示すものである。本実施形態において、エンドミル本体1は、超硬合金等の硬質材料により軸線Oを中心とした概略円柱軸状に一体に形成されていて、その後端部(図1における右上側部分。図2における上側部分)は円柱状のままのシャンク部2とされるとともに、先端部(図1における左下側部分。図2における下側部分)は切刃部3とされている。このようなエンドミルは、シャンク部2が工作機械の主軸に把持されて、軸線O回りにエンドミル回転方向Tに回転されつつ通常は軸線Oに交差する方向に送り出され、切刃部3により被削材を切削加工する。
【0015】
エンドミル本体1先端部の切刃部3の外周には、切刃部3の先端から後端側に向かうに従い軸線O回りにエンドミル回転方向T後方側に捩れる4条の切屑排出溝4が周方向に間隔をあけて形成されている。これらの切屑排出溝4のエンドミル回転方向Tを向く壁面の外周側辺稜部には、各切屑排出溝4と同様に切刃部3の先端から後端側に向かうに従い軸線O回りにエンドミル回転方向T後方側に捩れるとともに、軸線O回りの回転軌跡が該軸線Oを中心とする1つの円筒面をなす外周刃5が、やはり周方向に間隔をあけて形成されている。
【0016】
また、各切屑排出溝4の先端部には、そのエンドミル回転方向T側を向く上記壁面をエンドミル本体1の内周側に向けて切り欠くようにして凹溝状のギャッシュ6が形成されている。そして、これらのギャッシュ6のエンドミル回転方向T側を向く壁面と、切刃部3先端の先端逃げ面7との交差稜線部に、このギャッシュ6の壁面をすくい面8として外周刃5の先端から内周側に延びる4つの底刃9が、やはり周方向に間隔をあけてそれぞれ形成されている。
【0017】
ここで、本実施形態のエンドミルは、これら4つの底刃9が軸線O回りの回転軌跡において、該軸線Oに垂直な1つの平面上に略位置し、または内周側に向かうに従い該平面から僅かに後端側に向かうように延び、外周刃5と底刃9とが回転軌跡において略直交または僅かに鋭角に交差するスクエアエンドミルとされている。また、本実施形態におけるギャッシュ6は、図2に示すように、上記エンドミル回転方向T側を向いてすくい面8とされる壁面とこれに対向してエンドミル回転方向T後方側を向く壁面とがギャッシュ6の底部において凹曲面を介して結ばれた断面略V字状をなしている。
【0018】
さらに、4条の切屑排出溝4の先端部に形成された4つのギャッシュ6のうち、周方向に1つおきの2つのギャッシュ6Aは、そのエンドミル回転方向T前方側に隣接する残りの2つのギャッシュ6Bにそれぞれ連通するように、これらのギャッシュ6Bの底刃9のすくい面8とされる上記壁面と該底刃9の先端逃げ面7とを切り欠いて延びるように形成されている。一方、残りの2つのギャッシュ6Bは、そのエンドミル回転方向T側に隣接するギャッシュ6Aには連通せず、このギャッシュ6Aの上記壁面をすくい面8とする底刃9との間に該底刃9の先端逃げ面7が残されるように形成されている。
【0019】
従って、エンドミル回転方向T後方側に隣接するギャッシュ6Bが連通していない上記2つのギャッシュ6Aの底刃9は、外周刃5の先端から内周側に向けて、互いに反対側の底刃9の先端逃げ面7同士が交差する位置まで延びることになり、エンドミル本体1先端において軸線Oを越えて延びる長底刃9Aとされる。また、この長底刃9A以外の残りの2つの底刃9は、その内周端がエンドミル本体1先端において軸線Oから間隔をあけて外周側に位置する短底刃9Bとされる。
【0020】
これら長底刃9Aと短底刃9Bとは周方向に交互に配置されて、エンドミル本体1は軸線Oに関して180°回転対称に形成されている。そして、図3に示すように、これらの底刃9は、長底刃9Aとそのエンドミル回転方向T前方側に隣接する短底刃9Bとの間隔が、短底刃9Bとそのエンドミル回転方向T前方側に隣接する長底刃9Aとの間隔よりも大きくされている。
【0021】
従って、これらの底刃9の外周端に連なる上記外周刃5も、少なくとも切刃部3の先端側では、長底刃9Aに連なる外周刃5とそのエンドミル回転方向T前方側に隣接する外周刃5との間隔が、短底刃9Bに連なる外周刃5とそのエンドミル回転方向T前方側に隣接する外周刃5との間隔よりも大きくされる。なお、外周刃5は、このような間隔を一定に維持したまま後端側に向けて延びていてもよく、またこれら隣接する外周刃5のリードを異なるものとして、後端側に向かうに従い間隔が変化するようにされていてもよい。
【0022】
さらに、エンドミル本体1内には、シャンク部2の後端面から先端側に向けて、底刃9の数と同数の複数(4つ)のクーラント穴10が穿設されている。これらのクーラント穴10は、本実施形態では軸線Oに直交する断面が円形をなし、同断面において軸線Oに直交する1つの直径線上に並ぶように、軸線Oを挟んで内周側と外周側とに2つずつ形成されていて、内周側の第1のクーラント穴10Aに対して外周側の第2のクーラント穴10Bが大きな断面積とされている。
【0023】
また、これらのクーラント穴10は、図1および図2に破線で示すように軸線O方向後端側に向かうに従い軸線O回りにエンドミル回転方向T後方側に向けて捩れるように螺旋状に穿設されており、そのリードは切屑排出溝4の捩れのリードと等しくされていて、エンドミル本体1先端側の切刃部3においては、外周側の第2のクーラント穴10Bが、長底刃9Aに連なる外周刃5が形成された切屑排出溝4とそのエンドミル回転方向T前方側の切屑排出溝4との間の部分に延びるようにされている。
【0024】
そして、これらのクーラント穴10は、エンドミル本体1先端において、第1のクーラント穴10Aが上記長底刃9Aのギャッシュ6Aに開口させられるとともに、第2のクーラント穴10Bは短底刃9Bの先端逃げ面7に開口させられている。特に、本実施形態では、第1のクーラント穴10Aは、その全部が、上述のように断面略V字状をなすギャッシュ6Aのエンドミル回転方向T後方側を向く壁面において、長底刃9Aの軸線O周辺の部分に対向するように開口させられている。
【0025】
また、第2のクーラント穴10Bは、本実施形態では、短底刃9Bの先端逃げ面7のエンドミル回転方向T側の第1逃げ面7Aと後方側の第2逃げ面7Bとの交差稜線を跨ぐように開口させられている。なお、本実施形態では、こうして1組ずつの長底刃9Aのギャッシュ6Aと短底刃9Bの先端逃げ面7に、同じく1組ずつの第1、第2のクーラント穴10A、10Bのみが開口させられており、これら以外のクーラント穴はエンドミル本体1に形成されてはいない。
【0026】
このように構成されたクーラント穴付きエンドミルでは、長底刃9Aとそのエンドミル回転方向T前方側に隣接する短底刃9Bとの間隔が、短底刃9Bとそのエンドミル回転方向T前方側に隣接する長底刃9Aとの間隔よりも大きくされていて、これに伴い上述のように少なくとも切刃部3の先端側では、これらの底刃9に連なる外周刃5の間隔も不等間隔となるので、これら外周刃5や肩削りの際に底刃9が被削材に食い付く周期も不等となる。このため、すべての外周刃5や底刃9が等しい周期で被削材に食い付くことによって周期的な振動がエンドミル本体1に作用するのを防ぐことができ、このような周期的振動によってビビリ振動が生じるのを防止することができる。
【0027】
そして、このように、長底刃9Aとそのエンドミル回転方向T前方側に隣接する短底刃9Bとの間隔が、短底刃9Bとそのエンドミル回転方向T前方側に隣接する長底刃9Aとの間隔よりも大きくされるのに伴い、図3に示すように長底刃9Aの先端逃げ面7は短底刃9Bの先端逃げ面7よりも小さくならざるを得ないが、上記構成のクーラント穴付きエンドミルでは、エンドミル本体1に形成されたクーラント穴10は、長底刃9Aの先端逃げ面7を避けるようにして、第1のクーラント穴10Aが長底刃9Aのギャッシュ6Aに開口されるとともに、第2のクーラント穴10Bは短底刃9Bの先端逃げ面7に開口させられている。
【0028】
このため、長底刃9Aのエンドミル回転方向T後方側には大きな肉厚をエンドミル本体1に確保することができるので、短底刃9Bよりも長く、またエンドミル回転方向T前方側に隣接する短底刃9Bとの間隔が大きくて、切削時の負荷の大きい長底刃9Aにおいても、十分な切刃強度を維持して欠損等の損傷が生じるのを防止することが可能となる。しかも、2つ1組の長短底刃9A、9Bに対して、やはり2つ1組の第1、第2のクーラント穴10A、10Bがエンドミル本体1に形成されているので、より多くのクーラントを供給することができ、これらの底刃9や外周刃5の確実な潤滑、冷却を図って先端逃げ面7や外周刃5の逃げ面の摩耗等を抑制することができるとともに、これら底刃9および外周刃5によって生成された切屑を効率的に排出することができる。
【0029】
一方、短底刃9Bは、そのエンドミル回転方向T後方側に隣接する長底刃9Aとの間隔が大きいので先端逃げ面7を大きくすることができ、第2のクーラント穴10Bが開口していても切刃強度を維持することができる。そして、さらに本実施形態では、この第2のクーラント穴10Bの断面積が第1のクーラント穴10Aよりも大きくされていて、エンドミル本体1先端での開口面積も大きくされるので、一層多くのクーラントを供給することができ、底刃9の先端逃げ面7や外周刃5の逃げ面の耐摩耗性の向上を図ることができる。
【0030】
また、本実施形態では、第1のクーラント穴10Aが、第2のクーラント穴10Bよりも軸線Oに対する径方向内周側に開口させられており、従って長底刃9Aのギャッシュ6Aのうち、より内周側の軸線Oの近傍に第1のクーラント穴10Aを開口させることができる。このため、軸線Oを越えて延びる長底刃9Aに対して、この軸線Oの近傍の内周側から外周側に亙ってクーラントを満遍なく供給することができ、上述のように負荷の大きい長底刃9Aの一層確実な潤滑、冷却と、短底刃9Bよりも多く生成される切屑のさらに効率的な排出を図ることができる。
【0031】
なお、本実施形態では、第1のクーラント穴10Aは上述のようにその全部が長底刃9Aのギャッシュ6Aに開口させられているが、例えば一部が短底刃9Bの先端逃げ面7に跨るようにして開口させられていてもよい。また、第2のクーラント穴10Bは、本実施形態では短底刃9Bの先端逃げ面7の第1、第2逃げ面7A、7Bの交差稜線を跨ぐように開口させられているが、第2逃げ面7Bだけに開口させられていてもよく、さらに一部が長底刃9Aのギャッシュ6Aのエンドミル回転方向T後方側を向く壁面に跨って開口させられていてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 エンドミル本体
3 切刃部
4 切屑排出溝
5 外周刃
6(6A、6B) ギャッシュ
7 先端逃げ面
9 底刃
9A 長底刃
9B 短底刃
10 クーラント穴
10A 第1のクーラント穴
10B 第2のクーラント穴
O エンドミル本体1の軸線
T エンドミル回転方向
図1
図2
図3