(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
入力される1以上の音信号を処理し、n個(nは2以上の自然数)のスピーカにより放音され聴者により仮想的なスピーカから放音された音と知覚される仮想音を誘導するn個の仮想音誘導音を示すn個の仮想音誘導音信号を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成されたn個の仮想音誘導音信号を前記n個のスピーカの各々に出力する第1の出力手段と、
前記生成手段により生成されたn個の仮想音誘導音信号をサブウーファに出力する第2の出力手段と
を備え、
前記第1の出力手段と前記第2の出力手段は、前記生成手段により生成された仮想音誘導音信号を互いに逆位相で出力する
音信号処理装置。
前記第1の出力手段と前記第2の出力手段の少なくとも一方は、前記第1の出力手段と前記第2の出力手段の各々から出力される前記生成手段により生成された仮想音誘導音信号が互いに逆位相となるように位相を回転するオールパスフィルタを備える
請求項1に記載の音信号処理装置。
入力される1以上の音信号を処理し、n個(nは2以上の自然数)のスピーカにより放音され仮想的なスピーカから放音された音と聴者により知覚される仮想音を誘導するn個の仮想音誘導音を示すn個の仮想音誘導音信号を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成されたn個の仮想音誘導音信号を前記n個のスピーカの各々に出力する第1の出力手段と、
前記生成手段により生成されたn個の仮想音誘導音信号をサブウーファに出力する第2の出力手段と
を備え、
前記第2の出力手段は、前記生成手段により生成された仮想音誘導音信号の前記第1の出力手段による出力のタイミングより所定時間だけ遅延させて、前記生成手段により生成された仮想音誘導音信号を出力する
音信号処理装置。
前記第1の出力手段は、前記生成手段により生成された仮想音誘導音信号に含まれる所定のカットオフ周波数より低い周波数帯の成分を減衰させるハイパスフィルタを備え、
前記第2の出力手段は、前記生成手段により生成された仮想音誘導音信号に含まれる所定のカットオフ周波数より高い周波数帯の成分を減衰させ、前記ハイパスフィルタと同じ次数ローパスフィルタを備える
請求項1乃至3のいずれかに記載の音信号処理装置。
前記第1の出力手段は、前記n個のスピーカにより放音されるn個の実音を示すn個の実音信号の入力を受け、前記生成手段により生成されたn個の仮想音誘導音信号の各々と前記n個の実音信号の各々とをミキシングする第1のミキシング手段を備え、
前記第2の出力手段は、前記サブウーファにより放音される実音を示す実音信号の入力を受け、前記サブウーファにより放音される実音を示す実音信号と前記生成手段により生成されたn個の仮想音誘導音信号とをミキシングする第2のミキシング手段を備える
請求項1乃至4のいずれかに記載の音信号処理装置。
【背景技術】
【0002】
2チャンネルより多いチャンネル(マルチチャンネル)の音信号に従い、聴者の周囲を取り巻くように配置された複数のスピーカから音を放音することにより、より臨場感のある音場を実現するサラウンドシステムが普及している。
【0003】
サラウンドシステムにおいて用いられる音信号のチャンネル数としては、現在、通常のステレオの音場に用いられるフロント左チャンネル(以下、「Lch」という)およびフロント右チャンネル(以下、「Rch」という)に対し、フロント中央チャンネル(以下、「Cch」という)、低周波数帯域の成分を多く含む音信号のための低音域チャンネル(以下、「LFEch」という。なお、「LFE」はLow-Frequency Effectの意)、サラウンド左チャンネル(以下、「LSch」という)およびサラウンド右チャンネル(以下、「RSch」という)を加えた5.1チャンネルが広く利用されている。なお、LSchおよびRSchは各々、左後方および右後方から放音される音信号のチャンネルである。
【0004】
なお、近年は、より自然な音場を実現するために音信号のチャンネル数が増加の傾向にあり、5.1チャンネルのLSchおよびRSchの後方にバックサラウンド用の左右2チャンネルを加えた7.1チャンネルや、7.1チャンネルのLchおよびRchの上方にフロントプレゼンス用の左右2チャンネルを加えた9.1チャンネルなども普及しつつある。
【0005】
マルチチャンネルの音信号により音場を実現するもっともオーソドックスな方法は、チャンネル数に応じた数のスピーカを音空間内に配置し、それらの各々から対応するチャンネルの音信号に従った音を放音させる方法である。そのような方法による場合、多数のスピーカを音空間内に配置する必要があるため、コスト高となる、スピーカを配置するためのスペースが必要となる、音信号の伝送や電力の供給のための多数のケーブルの接続が必要となる、などの不都合・不便が伴う。
【0006】
上記の不都合・不便を解消もしくは軽減するために、仮想的にサラウンド効果を得るための技術が多く提案されている。
【0007】
例えば特許文献1には、サラウンド情報を持たないドルビーサラウンド信号の中周波数帯域の成分から擬似的な2チャンネルの音信号を生成し、それらに入力信号の低周波数帯域の成分を位相反転させたものを加算することにより、環境音や残響音の広がり感を維持しつつ、サラウンド感の向上を実現する仕組みが提案されている。
【0008】
また、例えば特許文献2には、平面上に配列された多数のスピーカ(スピーカアレイ)から指向性を有する音響ビームを壁面に対して放音することにより、壁面で反射した音響ビーム音が聴者の後方や側方から聴者に届けられることで聴者の側方や後方にスピーカを配置することなくサラウンドを実現する仕組みが記載されている。
【0009】
特許文献2の仕組みにおいては、入力される音信号の低周波数帯域の成分のうちチャンネル間で相関が高い成分と低い成分とを分離し、相関が高い成分は左右2個のウーファの中央に音像が定位するように指向性を付与し、相関が低い成分は左右2個のウーファの左右の各々に音像が定位するように指向性を付与することで、低周波数帯域の音のサラウンド感の向上が図られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、サラウンドシステムに用いられるスピーカの小型化に対するニーズが高い。例えば、液晶テレビの薄型化と大画面化に伴い、液晶テレビに内蔵されたり、液晶テレビを載置するラックの下などに配置されたりするスピーカは、スペース的な制約から小型のものが好まれる。
【0012】
広く普及しているダイナミック型のスピーカは、振動板の大きさが小さくなると低周波数帯域の音の放音が困難となる。そのため、主となるスピーカ(以下、「メインスピーカ」と呼ぶ)により放音が困難な低周波数帯域の音を放音するために、一般的に振動板の大きさがメインスピーカよりも大きく、低周波数帯域における放音能力が優れたスピーカであるサブウーファが付加的に用いられることが多い。
【0013】
サブウーファはメインスピーカよりも一般的にサイズが大きくなるため、ユーザはサブウーファを目障りでなく邪魔になりにくい部屋の側方や後方などに配置したいというニーズを持っている。そのため、無線で音信号を受信するワイヤレスのサブウーファも人気を集めている。
【0014】
人間の聴覚特性として、高周波数帯域の音と比較し低周波数帯域(例えば100Hz以下の帯域)の音の定位は知覚しにくいという特性がある。そのため、従来、そのような低周波数帯域の音の放音を担うサブウーファは音空間内のいずれの位置に配置されても、実現される音場における音の定位にはさほど影響がなかった。
【0015】
しかしながら、上述したようにメインスピーカの小型化が進むにつれて、メインスピーカが放音可能な周波数帯域が高周波数側に狭まりるため、メインスピーカにて放音できなくなった低音域をサブウーファが補い放音するためのバスマネージメント処理が行われる。このバスマネージメント処理により、サブウーファから放音される音の周波数帯域が高域に拡がるため、他のチャンネルの音の定位がサブウーファにより影響を受けてしまうようになる。
【0016】
例えば、従来は主として100Hz以下の周波数帯域の音の放音を担っていたサブウーファが、500Hz以下の周波数帯域の音の放音を担うようになると、サブウーファから放音される音の100Hz〜500Hzの周波数帯域の成分が影響を与え、メインスピーカから放音される音の定位がサブウーファの方向に引っ張られてしまうことがある。
【0017】
また、上述したように、マルチチャンネルのサラウンドを実現する際の多数のスピーカの配置に伴う不都合・不便を解消するために、仮想的にマルチチャンネルのサラウンドを実現するシステムに対するニーズがある。
【0018】
仮想的にマルチチャンネルのサラウンドを実現するシステム(以下、「バーチャルサラウンドシステム」と呼ぶ)によれば、チャンネル数より少ない数のスピーカから放音される音を聴者が聴いたとき、実在しない仮想的なスピーカから音が放音されているように聴者が知覚する。その結果、例えば2.1チャンネルのスピーカシステムによって、5.1チャンネルなどのマルチチャンネルのサラウンドシステムが仮想的に実現される。
【0019】
以下、5.1チャンネルのサラウンドシステムを例に説明すると、バーチャルサラウンドシステムにおいて仮想的なスピーカ、すなわちLSch用のスピーカ(以下、「LSsp」という)およびRSch用のスピーカ(以下、「RSsp」という)から放音される音の定位は、聴者の聴覚心理の利用により実現されているため、実在するスピーカ、すなわちLch用のスピーカ(以下、「Lsp」という)およびRch用のスピーカ(以下、「Rsp」という)およびLFEch用のサブウーファ(以下、「SW」という)から放音される音と比較して、スピーカと聴者との位置関係や壁からの反響音の状態等々の様々な外的要因による影響を受けやすい。すなわち、LSchおよびRSchの音の定位はLchおよびRchおよびLFEchの音の定位と比較して不安定である。
【0020】
仮想音であるLSchおよびRSchの音を誘導する仮想音誘導音は実際には物理的に実在するLspおよびRspから放音されるため、それらのメインスピーカから放音が困難な低周波数帯域の成分に関してはSWから放音する必要がある。従って、バーチャルサラウンドシステムにおいても、バスマネージメント処理により、LSchおよびRSchの仮想音誘導音のうち低周波数帯域の成分はRchおよびLchの実音(実在するLspおよびRspから放音され、LspおよびRspの位置から放音されたと聴者に知覚される音)の低周波数帯域の成分とLFEchの音とともに、SWから放音される。
【0021】
バーチャルサラウンドシステムにおいて用いるメインスピーカが小型である場合、そのバーチャルサラウンドシステムにおいて用いられるSWは例えば100Hz〜500Hzといった聴者が定位を知覚する周波数帯域の音も放音する必要がある。その結果、LSchおよびRSchの音は、高周波数帯域の成分は仮想的なスピーカ、すなわちLSspおよびRSspから放音されているように知覚され、低周波数帯域の成分は実在するSWから放音されることになる。その場合、LSchおよびRSchの定位が、SWから放音される音により影響を受け、SWの位置に引っぱられてしまう、という不都合が生じる。
【0022】
本発明は、上述した事情に鑑み、バーチャルサラウンドシステムにより実現される音場において、仮想的なスピーカ位置に定位されるべき音の定位に対するサブウーファから放音される音の影響を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するため、本発明は、入力される1以上の音信号を処理し、n個(nは2以上の自然数)のスピーカにより放音され聴者により実在しない仮想的なスピーカから放音された音と知覚される仮想音を誘導するn個の仮想音誘導音を示すn個の仮想音誘導音信号を生成する生成手段と、前記生成手段により生成されたn個の仮想音誘導音信号を前記n個のスピーカの各々に出力する第1の出力手段と、前記生成手段により生成されたn個の仮想音誘導音信号をサブウーファに出力する第2の出力手段とを備え、前記第1の出力手段と前記第2の出力手段は、前記生成手段により生成された仮想音誘導音信号を互いに逆位相で出力する音信号処理装置を提供する。
【0024】
そのような音信号処理装置によれば、メインスピーカから放音される仮想的なスピーカ用のチャンネルの音と、サブウーファから放音される同じチャンネルの音に含まれる重複した帯域の音の位相が逆となり、仮想的なスピーカから放音されたと聴者により知覚される仮想音(高周波数帯域の成分を多く含む)とサブウーファから放音される仮想音(低周波数帯域の成分を多く含む)とが結合せず、仮想的なスピーカ用のチャンネルの音の定位がサブウーファの位置に引っ張られることがない。
【0025】
また、上記の音信号処理装置において、前記第1の出力手段と前記第2の出力手段の少なくとも一方は、前記第1の出力手段と前記第2の出力手段の各々から出力される前記生成手段により生成された仮想音誘導音信号が互いに逆位相となるように位相を回転するオールパスフィルタを備える、という構成が採用されてもよい。
【0026】
そのような音信号処理装置によれば、オールパスフィルタのパラメータ(位相の回転角度)を調整することで、第1の出力手段から出力される仮想音誘導音信号の位相と第2の出力手段から出力される仮想音誘導音信号の位相とを逆位相とすることができる。
【0027】
また、本発明は、入力される1以上の音信号を処理し、n個(nは2以上の自然数)のスピーカにより放音され実在しない仮想的なスピーカから放音された音と聴者により知覚される仮想音を誘導するn個の仮想音誘導音を示すn個の仮想音誘導音信号を生成する生成手段と、前記生成手段により生成されたn個の仮想音誘導音信号を前記n個のスピーカの各々に出力する第1の出力手段と、前記生成手段により生成されたn個の仮想音誘導音信号をサブウーファに出力する第2の出力手段とを備え、前記第2の出力手段は、前記生成手段により生成された仮想音誘導音信号の前記第1の出力手段による出力のタイミングより所定時間だけ遅延させて、前記生成手段により生成された仮想音誘導音信号を出力する音信号処理装置を提供する。
【0028】
そのような音信号処理装置によれば、メインスピーカから放音される仮想的なスピーカ用のチャンネルの音より、サブウーファから放音される同じチャンネルの音に含まれる重複した帯域の音が遅れて聴者に届くため、先行音効果により、メインスピーカから放音される仮想的なスピーカ用のチャンネルの音によりその音の定位が定まり、サブウーファの位置により仮想的なスピーカ用のチャンネルの音の定位が引っ張られることがない。
【0029】
また、上記の音信号処理装置において、前記第1の出力手段は、前記生成手段により生成された音信号に含まれる所定のカットオフ周波数より低い周波数帯の成分を減衰させるハイパスフィルタを備え、前記第2の出力手段は、前記生成手段により生成された音信号に含まれる所定のカットオフ周波数より高い周波数帯の成分を減衰させる前記ハイパスフィルタと同じ次数のローパスフィルタを備える、という構成が採用されてもよい。
【0030】
そのような音信号処理装置によれば、メインスピーカとサブウーファの各々に、それらのスピーカが放音を担当すべき周波数帯域の成分のみを主として含む音信号が入力される結果、音の歪みが低減されるとともに、メインスピーカおよびサブウーファの両方から重複して放音される同じチャンネルの仮想音誘導音の成分が少なくなるため、仮想的なスピーカ用のチャンネルの音の定位がより安定する。
【0031】
また、上記の音信号処理装置において、前記第1の出力手段は、前記n個のスピーカにより放音されるn個の実音を示すn個の実音信号の入力を受け、前記生成手段により生成されたn個の仮想音誘導音信号の各々と前記n個の実音信号の各々とをミキシングする第1のミキシング手段を備え、前記第2の出力手段は、前記サブウーファにより放音される音を示す音信号の入力を受け、前記サブウーファにより放音される音を示す音信号と前記生成手段により生成されたn個の仮想音誘導音信号とをミキシングする第2のミキシング手段を備える、という構成が採用されてもよい。
【0032】
そのような音信号処理装置によれば、第1のミキシング手段から出力される音信号をn個のメインスピーカの各々(またはメインスピーカに音信号を出力するアンプ等)に出力し、第2のミキシング手段から出力される音信号をサブウーファ(またはサブウーファに音信号を出力するアンプ等)に出力することで、上述した効果をもたらすバーチャルサラウンドシステムが実現される。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[従来技術]
本発明の一実施形態にかかるバーチャルサラウンドシステム1の説明に先立ち、まず従来技術にかかるバーチャルサラウンドシステム9を
図5を用いて説明する。
【0035】
従来技術にかかるバーチャルサラウンドシステム9において、まず、プレーヤ11はバーチャルサラウンドシステム9が配置された音空間において再生されるべき5.1チャンネルの音響コンテンツを示す音響データを記録媒体から順次読み出し、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)規格に従ったフォーマットで、その音響データを音信号処理装置92に対し出力する。
【0036】
音信号処理装置92が備えるHDMIレシーバ121は、プレーヤ11から入力される音響データを受け取り、音信号処理装置92が備えるDSP群922に引き渡す。
【0037】
DSP群922は、制御部129の制御の下で、デコーダ1221およびポストプロセッサ9222として機能する。
【0038】
デコーダ1221は、HDMIレシーバ121から引き渡された音響データをデコードし、5.1チャンネル、すなわちLch、Rch、Cch、LSch、RSchおよびLFEchの6つのチャンネルの音信号を生成する。デコーダ1221は、生成したそれらの音信号をポストプロセッサ9222に引き渡す。
【0039】
ポストプロセッサ9222に引き渡されたLSchおよびRSchの音信号は、バーチャルサラウンド処理部(生成手段)において仮想的なスピーカであるLSsp用の仮想音誘導音を示す仮想音誘導音信号と、仮想的なスピーカであるRSsp用の仮想音誘導音を示す仮想音誘導音信号とに変換される。LSsp用の仮想音誘導音とは、実際にはLsp13およびRsp14の各々から放音されるが、聴者Aにとっては実在しないLSspの位置に定位が知覚される音である仮想音を誘導する音である。同様に、RSsp用の仮想音誘導音とは、実際にはLsp13およびRsp14の各々から放音されるが、聴者Aにとっては実在しないRSspの位置に定位が知覚される音である仮想音を誘導する音である。
【0040】
バーチャルサラウンド処理部は、デコーダ1221から引き渡されたLSchの音信号およびRSchの音信号の各々に関し、バイノーラル化処理部におけるバイノーラル化と、クロストークキャンセル処理部におけるクロストークキャンセル処理を施すことで、仮想音誘導音信号を生成する。
【0041】
以下に、LSchの音信号を例に、バーチャルサラウンド処理の概要を説明する。
まず、バイノーラル化処理部は、LSspの位置と聴者Aの左耳の位置とにより定まる頭部伝達関数をLSchの音信号に畳み込むことにより、左耳用のバイノーラル化音を示す音信号を生成する。同様に、バイノーラル化処理部は、LSspの位置と聴者Aの右耳の位置とにより定まる頭部伝達関数をLSchの音信号に畳み込むことにより、右耳用のバイノーラル化音を示す音信号を生成する。
【0042】
聴者Aは、左耳用のバイノーラル化音を左耳のみで聴き、右耳用のバイノーラル化音を右耳のみで聴くと、それらの音のレベル差、時間差および周波数特性の差により、LSspの位置に音を知覚することになる。
【0043】
上記のようにバイノーラル化処理部により生成された音信号に示される左耳用のバイノーラル化音および右耳用のバイノーラル化音がLsp13およびRsp14から放音されると、左耳用のバイノーラル化音が右耳にも到達し、右耳用のバイノーラル化音が左耳にも到達する。
【0044】
それらの逆側の耳に到達する不要なバイノーラル化音(クロストーク)を打ち消すために、クロストークキャンセル処理部は、右耳に到達する左耳用のバイノーラル化音を打ち消す処理を行い、右耳用のバイノーラル化音にミキシングした音を示す音信号をLsp13用の音信号として生成する。同様に、クロストークキャンセル処理部は、左耳に到達する右耳用のバイノーラル化音を打ち消す処理を行い、左耳用のバイノーラル化音にミキシングした音を示す音信号をRsp14用の音信号として生成する。
【0045】
上記のようにクロストークキャンセル処理部により生成されるLsp13用の音信号およびRsp14用の音信号が、LSchの仮想音誘導音信号である。バーチャルサラウンド処理部は、RSchの音信号に関しても同様の処理を行い、RSchの仮想音誘導音信号を生成する。
【0046】
バーチャルサラウンド処理部は、上記のように生成したLSchの仮想音誘導音信号およびRSchの仮想音誘導音信号のうちLsp13用の音信号により示される音をミキシングした音を示す音信号をLsp13用のLSchおよびRSchの音信号として生成する。同様に、バーチャルサラウンド処理部は、上記のように生成したLSchの仮想音誘導音信号およびRSchの仮想音誘導音信号のうちRsp14用の音信号により示される音をミキシングした音を示す音信号をRsp14用のLSchおよびRSchの音信号として生成する。以上がバーチャルサラウンド処理部の処理である。
【0047】
ポストプロセッサ9222は、デコーダ1221から引き渡されたLchの音信号およびCchの音信号と、バーチャルサラウンド処理部により生成されたLsp13用のLSchおよびRSchの音信号の各々に示される音を、必要なレベル調整を行った後にミキシングし、ハイパスフィルタ(例えば、カットオフ周波数が500Hz)により低周波数帯域の成分を減衰させた音を示す音信号を生成する。このように生成される音信号が、Lsp13から実際に放音される音を示す音信号である。
【0048】
同様に、ポストプロセッサ9222は、デコーダ1221から引き渡されたRchの音信号およびCchの音信号と、バーチャルサラウンド処理部により生成されたRsp14用のLSchおよびRSchの音信号の各々に示される音を、必要なレベル調整を行った後にミキシングし、ハイパスフィルタ(例えば、カットオフ周波数が500Hz)により低周波数帯域の成分を減衰させた音を示す音信号を生成する。このように生成される音信号が、Rsp14から実際に放音される音を示す音信号である。
【0049】
ポストプロセッサ9222は、上記のように生成したLsp13用の音信号およびRsp14用の音信号をアンプ123に出力する。アンプ123は、それらの音信号(デジタル信号)をアナログ音信号に変換し、アナログ音信号のレベルをスピーカレベルに増幅した後、Lsp13およびRsp14に対し各々出力する。Lsp13およびRsp14は、アンプ123から入力されるアナログ音信号に従い音を放音する。
【0050】
また、ポストプロセッサ9222は、デコーダ1221から引き渡されたLchの音信号、Rchの音信号、Cchの音信号およびLFEchの音信号と、バーチャルサラウンド処理部により生成されたLsp13用のLSchおよびRSchの音信号、およびRsp14用のLSchおよびRSchの音信号の各々に示される音とを、必要なレベル調整を行った後にミキシングし、ローパスフィルタ(例えば、カットオフ周波数が500Hz)により低周波数帯域の成分を減衰させた音を示す音信号を生成する。このように生成される音信号が、SW15から実際に放音される音を示す音信号である。
【0051】
ポストプロセッサ9222は、上記のように生成したSW15用の音信号をトランスミッタ124に出力する。トランスミッタ124は、SW15が備えるレシーバ151に対し無線により音信号を送信する。
【0052】
SW15は、音信号処理装置92のトランスミッタ124から送信されてくる音信号をレシーバ151により受信する。SW15は受信した音信号(デジタル信号)をアナログ音信号に変換し、アナログ音信号のレベルをアンプ152によりスピーカレベルに増幅した後、そのアナログ音信号に従い音を放音する。
【0053】
上記のようにLsp13、Rsp14およびSW15から放音された音は聴者Aの右耳および左耳に到達する。その際、聴者Aはそれらの実在する3つのスピーカ(2個のメインスピーカおよび1個のサブウーファ)から放音された音を、実際するLspおよびRspの2つのスピーカに加え、Csp(Lsp13とRsp14の中間位置に配置されCchの音を放音する仮想的なスピーカ)、LSspおよびRSspという3つの仮想的なスピーカの計5つのスピーカの位置から放音された音として知覚することになる。
【0054】
ここで、SW15から放音される音は、LFEchの音信号を除き、本来は上記5つのスピーカの位置から各々放音されるべき音の低周波数帯域の成分を集めたものである。そのため、上記のようにSW15が100Hzを超えた周波数帯域の音を放音すると、SW15と他のスピーカ位置から放音されるべき音との間で同じ信号が同位相で含まれることとなり、本来、聴者AにとってLsp13、Rsp14、Csp、LSspおよびRSspの位置に知覚されるべき音の定位が、SW15の位置に引っ張られてしまうという不都合が生じることがある。
【0055】
その際、実在するLsp13およびRsp14から放音されるLchおよびRchの音や、それらの中間に配置される仮想的なCspから放音されたと聴者Aに知覚されるCchの音は、バーチャルサラウンド処理により生成された音ではないため、周波数の高さによりSW15がもたらす定位感よりも強い定位感を聴者Aにもたらす。その結果、それらのチャンネルの音に関し、聴者Aが知覚する音の定位がSW15の位置に引っ張られることは少ない。
【0056】
一方、仮想的なLSspおよびRSspから放音されたと聴者Aに知覚されるLSchおよびRSchの音は、バーチャルサラウンド処理により生成された音であるため実スピーカにより放音された音に比べて定位感が不安定であり、例えば聴者Aの音空間内における位置がずれる等によりLSspおよびRSspの位置における定位感が薄らぐと、聴者AはSW15の方向にずれた位置にそれらのチャンネルの音の定位を感じてしまう。
図5において、チャンネル名を付した破線の○印は、各々、聴者Aが音空間内において、そのチャンネル名で示されるチャンネルの音の定位を知覚する位置を示している。
【0057】
なお、上述したバーチャルサラウンドシステム9において、仮にハイパスフィルタがカットオフ周波数以下の周波数帯域の成分を完全にカットでき、またローパスフィルタがカットオフ周波数以上の周波数帯域の成分を完全にカットできるならば、LSchおよびRSchの音の各々に関し、Lsp13およびRsp14から放音される音と、SW15から放音される音との間に重複がなくなるため、聴者はそれらの音が同じチャンネルの音であると認識せず、SW15の位置によりLSchおよびRSchの音の定位が影響を受ける、という問題はあまり生じない。
【0058】
しかしながら、上記のような理想的なハイパスフィルタやローパスフィルタの実現は困難であり、仮に可能であってもその処理が遅延をもたらすなどの不都合を伴うため、実際にはホワイトノイズの入力に対し
図6に模式的に示す周波数成分の音を出力するようなハイパスフィルタおよびローパスフィルタが用いられる。そして、
図6において破線の丸で示される周波数帯域においてLsp13およびRsp14とSW15が互いに近いレベルで同じ音を同位相で放音する場合、聴者はLSchおよびRSchの音の各々に関し、LSchとSW15間の何れかの位置、およびRSchとSW15間の何れかの位置に、それぞれのチャンネルの音の定位を知覚する。
【0059】
以上のように、従来技術にかかるバーチャルサラウンドシステム9によれば、仮想的なスピーカの定位がSW15の位置に引っ張られてしまう、という不都合が生じやすい。
【0060】
[実施形態]
上述したバーチャルサラウンドシステム9に対し、本発明の一実施形態にかかるバーチャルサラウンドシステム1は、上述した不都合を軽減するために、ポストプロセッサ9222の処理に変更が加えられている。
図1は、バーチャルサラウンドシステム1の構成を示した図である。なお、
図1において、バーチャルサラウンドシステム9と共通の構成部には同じ符号が用いられている。
【0061】
バーチャルサラウンドシステム1が備える音信号処理装置12は、バーチャルサラウンドシステム9が備える音信号処理装置92のDSP群922により実現されるポストプロセッサ9222に代えて、DSP群122により実現されるポストプロセッサ1222を備えている。ポストプロセッサ1222は、SW15から実際に放音される音を示す信号として、デコーダ1221から引き渡されたLchの音信号、Rchの音信号およびCchの音信号と、バーチャルサラウンド処理部により生成されたLsp13用のLSchおよびRSchの音信号、およびRsp14用のLSchおよびRSchの音信号の各々に示される音を位相反転させた音を、必要なレベル調整を行った後にミキシングし、ローパスフィルタ(例えば、カットオフ周波数が500Hz)により低周波数帯域の成分を減衰させた音を示す音信号を生成する。
【0062】
より具体的に説明すると、ポストプロセッサ1222は、バーチャルサラウンド処理部において生成したLsp13用のLSchおよびRSchの音信号の位相を、位相反転処理部において反転させる。同様に、ポストプロセッサ1222は、バーチャルサラウンド処理部において生成したRsp14用のLSchおよびRSchの音信号の位相を、位相反転処理部において反転させる。
【0063】
上記のように位相反転処理部において位相の反転されたLsp13用のLSchおよびRSchの音信号と、Rsp14用のLSchおよびRSchの音信号が、デコーダ1221から引き渡されたLchの音信号、Rchの音信号、Cchの音信号およびLFEchの音信号とミキシングされる。その結果、SW15用の音信号が生成される。
【0064】
ここで重要な点は、Lsp13用の音信号およびRsp14用の音信号の生成においては、バーチャルサラウンド処理部により生成されたLsp13用のLSchおよびRSchの音信号と、Rsp14用のLSchおよびRSchの音信号が、位相反転されることなく用いられる、という点である。
【0065】
また、バーチャルサラウンドシステム1のポストプロセッサ1222が備えるハイパスフィルタおよびローパスフィルタの次数は同じである。従って、Lsp13用およびRsp14用の音信号とSW15用の音信号との間に位相のずれが生じることはない。
【0066】
その結果、Lsp13およびRsp14から放音されるLSchの音の位相と、SW15から放音されるLSchの音の位相が互いに逆位相となる。同様に、Lsp13およびRsp14から放音されるRSchの音の位相と、SW15から放音されるRSchの音の位相が互いに逆位相となる。
【0067】
仮にSW15からのLSchの低周波数帯域の音の放音を行わずに、Lsp13およびRsp14からLSchの高周波数帯域の音を放音した場合、聴者Aは仮想的なLSspの位置にLSchの音の定位を知覚する。また、仮にLsp13およびRsp14からのLSchの高周波数帯域の音の放音を行わずに、SW15からLSchの低周波数帯域の音を放音した場合、その音は100Hz〜500Hzの周波数帯域の成分を含んでいるため、聴者AはSW15の位置にLSchの音の定位を知覚する。従って、Lsp13およびRsp14からのLSchの高周波数帯域の音を、またSW15からのLSchの低周波数帯域の音を、それらの位相調整を行うことなく放音した場合、それらの音には重複する帯域の音が含まれるため、聴者Aはそれらの音を結合して知覚する結果、
図5を用いて説明したように、LSchの音の定位が本来あるべきLSchの位置からSW15の位置に引っ張られてしまう。
【0068】
しかしながら、バーチャルサラウンドシステム1においては、Lsp13およびRsp14から放音されたLSchの音のと、SW15から放音されたLSchの音とに重複して含まれる帯域の音の位相が逆位相となるため、それらの音が聴者Aの知覚において結合されることがない。聴者Aにとって、高周波数帯域の成分を主として含むLsp13およびRsp14から放音された音によるLSchの音の定位が強く知覚され、低周波数帯域の成分を主として含むSW15から放音された音によるLSchの音の定位はさほど知覚されない。その結果、聴者Aに知覚されるLSchの音の定位がSWの位置へ引っ張られることなく本来のLSspの位置に定まる。RSchの音に関しても同様である。
【0069】
その結果、LSchおよびRSchの音の定位が、本来あるべきLSspおよびRSspの位置で安定し、SW15の位置に左右されなくなる。
【0070】
以上述べたように、バーチャルサラウンドシステム1によれば、マルチチャンネルのバーチャルサラウンドシステムにおいて、メインスピーカの小型化に伴いサブウーファが聴者に定位感を与えうる周波数帯域(例えば、100Hz以上)の成分を含む音を放音するような場合であっても、仮想的に実現されるサラウンド音の定位がサブウーファの配置位置によって影響を受けにくい。そのため、音空間内におけるサブウーファの配置位置の自由度が増す。
【0071】
[変形例]
上述したバーチャルサラウンドシステム1は本発明の一具体例であって、本発明の技術的思想の範囲内において様々に変形が可能である。以下にそれらの変形の例を示す。
【0072】
[第1変形例]
図2は第1変形例にかかるバーチャルサラウンドシステム2の構成を示した図である。バーチャルサラウンドシステム2においては、位相反転処理部の位置がバーチャルサラウンドシステム1における位置と異なっている。
【0073】
すなわち、バーチャルサラウンドシステム1においては、SW15用の音信号の生成において、バーチャルサラウンド処理部により生成されるLsp13用のLSchおよびRSchの音信号と、Rsp14用のLSchおよびRSchの音信号の位相反転が行われたものが用いられる構成が採用されている。
【0074】
これに対し、バーチャルサラウンドシステム2においては、SW15用の音信号の生成においては、バーチャルサラウンド処理部により生成されるLsp13用のLSchおよびRSchの音信号と、Rsp14用のLSchおよびRSchの音信号が位相反転されることなく用いられる一方、Lsp13用およびRsp14用の音信号の生成において、バーチャルサラウンド処理部により生成されるLsp13用のLSchおよびRSchの音信号と、Rsp14用のLSchおよびRSchの音信号の位相反転が行われたものが用いられる構成が採用されている。
【0075】
バーチャルサラウンドシステム2によっても、Lsp13およびRsp14から放音されるLSchおよびRSchの音と、SW15から放音されるLSchおよびRSchの音に含まれる重複する帯域の成分の位相が逆位相の関係となるため、仮想的なスピーカ用のチャンネルの音の定位がサブウーファの位置に引っ張られることなく、本来あるべき仮想的なスピーカの位置に定まる。
【0076】
[第2変形例]
図3は第2変形例にかかるバーチャルサラウンドシステム3の構成を示した図である。バーチャルサラウンドシステム3においては、バーチャルサラウンドシステム1における位相反転処理部の位置と、バーチャルサラウンドシステム2における位相反転処理部の位置に、それらに代えて、各々オールパスフィルタが配置される構成が採用されている。これらのオールパスフィルタは、信号信号各々、信号バーチャルサラウンド処理部により生成されSW15用の音信号の生成に用いられる音信号と、バーチャルサラウンド処理部により生成されLsp13用信号およびRsp14用の音信号の生成に用いられる音信号に対し、それらの位相が互いに180度異なるように所定角度の位相回転を行う。
【0077】
バーチャルサラウンドシステム3によっても、Lsp13およびRsp14から放音されるLSchおよびRSchの音の位相と、SW15から放音されるLSchおよびRSchの音の位相が逆位相の関係となるため、仮想的なスピーカ用のチャンネルの音の定位がサブウーファの位置に引っ張られることなく、本来あるべき仮想的なスピーカの位置に定まる。
【0078】
[第3変形例]
図4は第3変形例にかかるバーチャルサラウンドシステム4の構成を示した図である。バーチャルサラウンドシステム4においては、バーチャルサラウンドシステム1における位相反転処理部の位置に、位相反転処理部に代えて、遅延処理部が配置される構成が採用されている。この遅延処理部は、バーチャルサラウンド処理部から出力され、SW15用の音信号の生成のために用いられる音信号に対し10〜30ミリ秒程度の遅延を付加する。
【0079】
遅延処理部による遅延の付加により、Lsp13およびRsp14から放音される音に含まれるLSchおよびRSchの音が聴者Aに到達するタイミングより、SW15から放音される音に含まれるLSchおよびRSchの音が聴者Aに到達するタイミングが10〜30ミリ秒程度遅れることになる。聴者Aは先行音効果またはハース効果として知られる心理効果により、先行するLsp13およびRsp14から放音される音に含まれるLSchおよびRSchの音による定位を強く知覚し、概ね30ミリ秒以下の短い遅れを伴い後続して届くSW15から放音される音に含まれるLSchおよびRSchの音による定位を知覚しない。
【0080】
その結果、バーチャルサラウンドシステム4によっても、聴者によって知覚される仮想的なスピーカ用のチャンネルの音の定位がサブウーファの位置に引っ張られることなく、本来あるべき仮想的なスピーカの位置に定まる。
【0081】
[その他の変形例]
上述した実施形態およびその変形例においては、2.1チャンネルのスピーカシステムによって5.1チャンネルのサラウンドを仮想的に実現するバーチャルサラウンドシステムが採用されているが、1個以上のサブウーファを含むスピーカシステムを用いてバーチャルサラウンドを実現する限り、本発明は様々なチャンネル数のスピーカシステムおよび様々なチャンネル数のバーチャルサラウンドに適用可能である。例えば、5.1チャンネルのスピーカシステムを用いて9.1チャンネルのバーチャルサラウンドを実現するための音信号の生成が本発明にかかるバーチャルサラウンドシステムにおいて行われてもよい。
【0082】
また、上述した実施形態とその第1および第2変形例において、実在するスピーカから放音され仮想的なスピーカから放音されたと聴者に知覚されるチャンネルの音の位相と、サブウーファから放音される同じチャンネルの音の位相とが逆位相となるようにそれらの音の音信号の生成が行われる限り、位相反転処理部もしくはオールパスフィルタの配置や個数は様々に変更され得る。
【0083】
また、本願において、「逆位相」という場合、厳密な意味で位相が180度ずれていることを要さない。本願において「逆位相」とは、位相のずれがなければ聴者により同じチャンネルの音として結合して知覚される2つの音が、同じチャンネルの音とは知覚されず、仮想的なスピーカ用のチャンネルの音の定位がサブウーファの位置に引っ張られない程度に十分に位相がずれている状態を意味する。
【0084】
また、上述した実施形態の第3変形例において、実在するスピーカから放音され仮想的なスピーカから放音されたと聴者に知覚されるチャンネルの音より、サブウーファから放音される同じチャンネルの音が遅れて聴者に届くように、バーチャルサラウンド処理部により生成されSW15用の音信号の生成に用いられる音信号、もしくはその音信号がミキシングされた音信号に遅延処理が行われる限り、遅延処理部の配置は様々に変更され得る。例えば、
図4に示した遅延処理部の位置に代えて、ローパスフィルタの直前もしくは直後の位置に遅延処理部を配置する構成が採用されてもよい。
【0085】
また、上述した実施形態およびその変形例においては、プレーヤ11から音信号処理装置12に対しHDMI規格に従った音響信号の伝送が行われるものとしたが、他の如何なるDIR(Digital Audio Interface Receiver)が音信号処理装置12のDIRとして採用されてもよい。また、プレーヤ11がアナログ音信号を出力する場合、音信号処理装置12がAD(Analog to Digital)コンバータを備え、デジタル信号に変換した音信号をDSP群122に引き渡す構成が採用されてもよい。