(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、焼結体の特性を良好にできるセラミック焼結体用組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る製造方法は、
セラミック焼結体用組成物を製造する方法であって、
前記セラミック焼結体は、母材成分と1種類以上の添加成分とを有しており、
焼成後に前記母材成分の少なくとも一部となる第1母材原料および/または焼成後に前記添加成分の少なくとも一部となる第1添加原料であって、バインダ中に導入することで、溶液状の導入バインダとなり得る第1母材原料および/または第1添加原料を準備する工程と、
焼成後に前記母材成分の少なくとも一部となり、前記第1母材原料とは異なる粉末状の第2母材原料、および/または焼成後に前記添加成分の少なくとも一部となり、前記第1添加原料とは異なる粉末状の第2添加原料を準備する工程と、
前記第1母材原料および/または前記第1添加原料を前記バインダに導入する導入工程と、
前記バインダと前記第2母材原料とを混合、または前記バインダと記第2母材原料および第2添加原料とを混合する混合工程と、を有し、
前記第1母材原料は、前記母材成分の前駆体であり、前記第1添加原料は、前記添加成分の前駆体であることを特徴とする。
【0011】
本発明において、「バインダ(中)に導入」とは、バインダに対して分子レベルで良好に混合されてバインダと渾然一体となることを意味し、得られる導入バインダは、粉末状の原料を含まない趣旨である。具体的には、バインダに対して、第1母材原料および/または第1添加原料を分散、混合、混練、攪拌、捏和などの方法により「バインダ(中)に導入」することができる。あるいは、母材成分を構成する元素および添加成分を構成する元素が、分子または原子団と結合あるいは配位している状態で存在させることで、予めバインダに対して導入させておいても良い。または第1母材原料および第1添加原料がバインダ中の分子とグラフト重合されて存在させることにより、予めバインダに導入しても良い。
【0012】
本発明では、原料の一部をバインダ中に導入し、そのバインダを残りの原料とともに混合して、セラミック焼結体用組成物を得ている。バインダ中に導入する原料(第1母材原料および第1添加原料)は、セラミック焼結体を構成する成分(酸化物、窒化物等)の前駆体を用いる。
【0013】
このようにすることで、混合後の組成物において、バインダ中に導入された原料は、残りの原料の周囲に均一に存在している。したがって、この組成物を成形、焼成することで、成分の偏り等が見られず、必要最低限の添加成分量で母材成分および添加成分の双方の機能が十分発揮されたセラミック焼結体を得ることができる。
【0014】
また、バインダ中に導入する原料の量を変化させることで、組成物の組成の調整も容易に行うことができる。その結果、セラミック焼結体の組成を所望の組成に近づけることが容易となる。
【0015】
好ましくは、添加成分は、母材成分を主成分とする結晶粒子間に存在する粒界に主として含まれる成分を含む。粒界に含まれる成分の原料は、一般的に、バインダとの親和性が強いため、バインダと区別された形態で存在していると、バインダとの混合中にバインダに引き寄せられてしまう。そのため、混合後の組成物では、引き離された該原料は、第2母材原料の周囲に均一に存在していない場合がある。
【0016】
しかしながら、添加成分を第1添加原料として添加することで、第1添加原料はバインダ中に導入され、バインダと渾然一体となる。混合後の組成物では、第2母材原料の周囲をバインダが取り囲んでいるため、第1添加原料も、第2母材原料の周囲に均一かつ十分に存在している。その結果、焼成時に母材成分の結晶粒子の過度な粒成長を抑制することができる。また、このような効果を、必要最低限の添加量で得られるため、余分な添加成分の添加量を減らすことができる。しかも、バインダに導入する原料の体積分をバインダの体積から差し引くことができるため、バインダの添加量も減らすことができる。したがって、得られるセラミック焼結体は、所望の特性を容易に実現できる。
【0017】
前記導入工程と前記混合工程とは同時に行われてもよいが、好ましくは、前記導入工程では、前記導入バインダを作製し、その後に、前記混合工程が行われる。導入バインダを作製した後で混合工程を行うことで、第1添加原料を含む導入バインダを、粉末状の第2母材原料の周囲により均一に配置しやすくなる。
【0018】
好ましくは、添加成分は、原料以外に由来するコンタミネーション成分を補償するコンタミ補償成分を含む。上記の組成物を製造する際には、原料以外に由来するコンタミネーションが混入し、所望の組成比がずれてしまうことがある。このようなコンタミネーションを完全に防ぐことは困難であるため、本発明では、コンタミネーションを補償する成分、すなわち、コンタミネーションに起因する組成比のずれを解消する成分(コンタミ補償成分)を用いている。しかも、該成分を第1母材原料あるいは第1添加原料として添加することで、組成を直接調整できるため、所望の組成比と同じあるいは極めて近くすることができる。
【0019】
好ましくは、第1母材原料および第1添加原料が、高分子化合物である。第1母材原料および第1添加原料として、母材成分あるいは添加成分を構成する元素を含む高分子化合物を用いることで、高分子化合物とバインダとが分子レベルで良好に混合され、該原料はバインダ中に速やかに導入される。
【0020】
好ましくは、第1母材原料および第1添加原料が、有機金属化合物である。第1母材原料および第1添加原料として、母材成分あるいは添加成分を構成する金属元素を含む有機金属化合物を用いることで、有機金属化合物とバインダとが分子レベルで良好に混合され、該原料はバインダ中に速やかに導入される。
【0021】
好ましくは、第2母材原料および前記第2添加原料が粉末状であって、導入バインダを得る工程の前に、第2母材原料、または、第2母材原料および第2添加原料を粉砕して粉砕原料を得る工程を有し、セラミックス焼結体の組成比Oと、粉砕原料の組成比Pと、の差分ΔSを、ΔS=O−Pとした場合に、導入バインダを得る工程において、コンタミ補償成分の組成比がΔS以下となるように第1母材原料および/または第1添加原料を添加する。
【0022】
第2母材原料および第2添加原料が粉末状である場合には、これらの原料を仮焼して粉砕することがある。あるいは、結晶粒子径等を調整するために、さらに粉砕を行うことがある。このような粉砕を行うと、粉砕用機器等からコンタミネーションが混入し、粉砕原料の組成比が所望の組成比からずれてしまうことがある。このずれを解消するために、上記のコンタミ補償成分を用いて粉砕原料の組成比を調整する。すなわち、上記のようにして、ΔSを決定し、ΔSに基づき第1母材原料および/または第1添加原料をコンタミ補償成分として添加する。
【0023】
このようにすることで、コンタミネーションに起因する組成比のずれを効果的に抑制することができる。さらには、コンタミ補償成分を第1母材原料および/または第1添加原料として添加するため、所望の特性を十分に得ることができる。
【0024】
好ましくは、母材成分がフェライトである。母材成分がフェライトである場合には、所望の磁気特性が得られる。
【0025】
本発明に係るセラミック焼結体用組成物は、母材成分と1種類以上の添加成分とを有するセラミック焼結体を製造するために用いられる組成物であって、
焼成後に前記母材成分となる原料と、焼成後に前記添加成分となる原料と、バインダと、を有し、
前記母材成分となる原料の一部および/または前記添加成分となる原料の少なくとも一部が、前記母材成分の前駆体および前記添加成分の前駆体として、前記バインダ中に導入されていることを特徴とする。
【0026】
セラミック焼結体用組成物の組成を上記のように決め、該組成物を用いてセラミック焼結体を製造することで、特性が良好なセラミック焼結体を得ることができる。
【0027】
本発明に係るセラミック焼結体の製造方法は、上記に記載のセラミック焼結体用組成物を用いてセラミック焼結体を製造することを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0030】
(セラミック焼結体)
本実施形態では、セラミック焼結体は、後述するセラミック焼結体用組成物を用いて製造される。該セラミック焼結体は、母材成分と1種類以上の添加成分とが含有されていれば特に限定されない。
【0031】
母材成分としては、酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物、これらの複合物等が挙げられ、たとえば、フェライト、アルミナ、窒化珪素などが例示される。また、添加成分としては、特に制限されないが、本実施形態では、母材成分の結晶粒子間に存在する粒界に主として存在する成分(粒界成分)、母材成分の結晶粒子に固溶する成分、あるいは該焼結体の製造工程において混入し、原料由来ではないコンタミネーション成分を補償するための成分(コンタミ補償成分)等が挙げられる。
【0032】
(セラミック焼結体用組成物)
本実施形態に係るセラミック焼結体用組成物は、焼成後に母材成分となる成分の原料(第1母材原料、第2母材原料等)と、焼成後に添加成分となる成分の原料(第1添加原料、第2添加原料等)と、バインダと、を有している。
【0033】
本実施形態では、第1母材原料および第1添加原料は、バインダ中に導入されることが可能であり、バインダと分子レベルで渾然一体と成ることが可能である。すなわち、バインダ中では、第1母材原料および第1添加原料は、母材成分の前駆体および添加成分の前駆体として存在しており、母材成分を構成する元素および添加成分を構成する元素を第2母材原料等の周囲に導入するキャリアとして働く。
【0034】
たとえば、母材成分を構成する元素および添加成分を構成する元素が、分子または原子団と結合あるいは配位している状態で存在していてもよい。また、第1母材原料および第1添加原料がバインダ中の分子とグラフト重合されて存在していてもよい。
【0035】
該組成物が上記の構成を有していることで、該組成物を用いて、成形・焼成することで、特性が良好なセラミック焼結体が得られる。たとえば、第1添加原料が粒界成分である場合には、該成分は母材成分の結晶粒子の周囲に均一かつ十分に存在しているため、該結晶粒子の粒成長を効果的に抑制でき、所望の特性を得ることができる。
【0036】
また、添加成分の添加量が最低限であっても、十分な効果が得られるため、焼結体における母材成分の割合が多くすることができる。したがって、母材成分および添加成分の双方の効果が十分に得られる。さらには、製造工程におけるコンタミネーション成分が混入した場合であっても、コンタミ補償成分により、所望の組成に極めて近い焼結体を容易に得ることができる。
【0037】
また、第1母材原料および第1添加原料をバインダ中に導入し、渾然一体とすることで、これらの原料の周囲をバインダで取り囲む必要がないため、バインダの必要量を減らすことができる。さらに、第1母材原料および第1添加原料の体積分を、バインダの体積と置換することによっても、バインダの必要量を減らすことができる。その結果、より少ないバインダ量で組成物の流動性を向上させることができ、寸法精度も向上する。さらには、セラミック焼結体用組成物における母材成分および添加成分の占める割合を増やすことができる。
【0038】
本実施形態では、所望の特性や成形法に応じて、セラミック焼結体用組成物は他の成分を有していてもよい。たとえば、可塑剤、ワックス、酸化防止剤、金属石鹸、高分子シリコーン等を有していてもよい。
【0039】
(セラミック焼結体の原料)
母材成分となる原料としては、焼成後に母材成分となるものであれば、特に制限されない。また、その形態も制限されず、たとえば、粉末状であってもよいし、ペースト状であってもよいし、溶液状であってもよい。また、母材成分となる原料として、形態が異なる原料を併用してもよい。
【0040】
本実施形態では、母材成分となる原料は、第2母材原料を少なくとも含んでいればよく、第1母材原料は必ずしも含まれなくてもよい。すなわち、母材成分となる原料は、第2母材原料のみから構成されていてもよい。
【0041】
第1母材原料は母材成分の前駆体であり、たとえば、母材成分を構成する金属元素が、分子または原子団と結合あるいは配位している状態で存在している。具体的には、金属塩、高分子シリコーン、等の高分子が好ましい。また、金属石けん、金属錯体、シラン化合物、等の有機金属化合物が好ましい。第1母材原料として、上記のような原料を選択することで、バインダ中に導入することが容易となる。さらに、第1母材原料をバインダ中の分子にグラフト重合させておいてもよい。
【0042】
セラミック焼結体用組成物が成形、焼成される過程では、第1母材原料に含まれ、母材成分を構成する金属元素が酸素や窒素等と結びついて、母材成分となるため、第1母材原料に含まれる金属元素と、第2母材原料に含まれる同じ金属元素とは焼成後に一体となる。
【0043】
第2母材原料は粉末状であることが好ましい。母材成分が酸化物から構成される場合には、酸化物粉末、複合酸化物粉末を用いることができる。また、焼成後に母材成分となる炭酸塩粉末、シュウ酸塩粉末、硝酸塩粉末、水酸化物粉末等も用いることができる。さらに、上記の粉末を混合して用いてもよい。第2母材原料の粒子径あるいはBET値は、用途や所望の特性等に応じて適宜決定すればよい。
【0044】
添加成分となる原料としては、母材成分となる原料と同様に、焼成後に添加成分となるものであれば、特に制限されない。また、その形態も制限されず、たとえば、粉末状であってもよいし、ペースト状であってもよいし、溶液状であってもよい。また、添加成分となる原料として、形態が異なる原料を併用してもよい。
【0045】
本実施形態では、添加成分となる原料は、第1添加原料を少なくとも含んでいることが好ましく、第2添加原料は含まれなくてもよい。なお、上記の母材成分となる原料に第1母材原料が含まれている場合には、添加成分となる原料に第1添加原料が含まれなくてもよい。
【0046】
第1添加原料は添加成分の前駆体であり、たとえば、添加成分を構成する金属元素が、分子または原子団と結合あるいは配位している状態で存在している。具体的には、金属塩、高分子シリコーン、等の高分子が好ましい。添加成分を構成する金属元素としてSiが含まれる場合には、高分子として、第1添加原料にはシリコーンが含まれることが好ましい。また、第1添加原料としては、金属石けん、金属錯体、シラン化合物、等の有機金属化合物が好ましい。添加成分を構成する金属元素としてSiが含まれる場合には、有機金属化合物として、第1添加原料にはシラン化合物が含まれることが好ましい。さらに、第1添加原料をバインダ中の分子にグラフト重合させておいてもよい。
【0047】
セラミック焼結体用組成物が成形、焼成される過程では、第1添加原料に含まれ、添加成分を構成する金属元素が酸素や窒素等と結びついて、添加成分となるため、第1添加原料に含まれる金属元素と、第2添加原料に含まれる同じ金属元素とは焼成後に一体となる。
【0048】
第2添加原料は粉末状であることが好ましい。添加成分が酸化物から構成される場合には、酸化物粉末、複合酸化物粉末を用いることができる。また、焼成後に添加成分となる炭酸塩粉末、シュウ酸塩粉末、水酸化物粉末等も用いることができる。さらに、上記の粉末を混合して用いてもよい。第2添加原料の粒子径あるいはBET値は、用途や所望の特性等に応じて適宜決定すればよい。
【0049】
バインダは、公知のものであれば特に制限されないが、本実施形態では、有機高分子成分を含むことが好ましい。
【0050】
(セラミック焼結体用組成物の製造方法)
以下では、母材成分となる原料は第2母材原料のみであり、添加成分となる原料は第1添加原料のみである場合について述べる。
【0051】
まず、
図1(A)に示すように、原料として、上述した焼成後に母材成分となる原料(第2母材原料12)および焼成後に添加成分となる原料(第1添加原料21)を準備し、製造されるセラミック焼結体の重量あるいはモル数に応じて、各成分の原料を秤量する。また、バインダ30も準備し、秤量する。なお、必要に応じて、可塑剤等の添加物を準備してもよい。
【0052】
第2母材原料12の形態は粉末状であり、第1添加原料21の形態は溶液状である。溶液状の原料としては、たとえば、金属石けん等の固形成分を有機溶剤に溶解させたもの、有機金属化合物、シリコーンオイル等が挙げられる。あるいは、該原料がバインダに添加された後に、添加成分を構成する元素が、分子、原子団と結合あるいは配位してもよいし、バインダ中の分子にグラフト重合してもよい。
【0053】
次に、
図1(A)に示すように、第1添加原料21(溶液状原料)とバインダ30とを混合し、バインダ30中に第1添加原料21を導入して導入バインダ40を得る。該原料21は、バインダ30と分子レベルで均一に混合され、第1添加原料21とバインダ30とは渾然一体となる。この混合は、たとえば、ニーダー、一軸混練機、多軸混練機等を用いて行えばよい。
【0054】
得られた導入バインダ40(バインダ30+溶液状原料たる第1添加原料21)は、第2母材原料12(粉末状原料)とともに混練され、セラミック焼結体用組成物2とされる。
図1(A)に示すように、渾然一体となった第1添加原料21およびバインダ30は、混練が進むと、第2母材原料12の粉末粒子を取り囲み、該粉末粒子の周囲に均一に存在することになる。すなわち、溶液状原料21は、添加成分を構成する元素を該粉末粒子の周囲に導入するキャリアとして機能している。したがって、焼成時に、第1添加原料に含まれる添加成分52は、第2母材原料12の粉末粒子を均一かつ十分に取り囲んでいるため、母材成分51の粉末粒子の粒成長が進みすぎてしまうことを十分に抑制することができる。
【0055】
一方、
図1(B)に示す従来例のように、添加成分の原料としての粉末状の添加原料122と、母材原料112およびバインダ130とを混練した場合、添加原料122の粉末粒子は、バインダ130との親和性等により、母材成分の原料112の粉末粒子から引き離されてしまうことがある。そうすると、母材成分の原料112の周囲には、添加原料が十分存在できないため、
図1(B)に示すように、焼成時に母材成分151の結晶粒子の粒成長が抑制できずに望まぬ粒成長が発生する。
【0056】
なお、第1添加原料とバインダとを混合・混練する際には、第2母材原料が添加されてもよい。すなわち、第1添加原料、第2母材原料およびバインダが同時に混合・混練されて、セラミック焼結体用組成物とされてもよい。
【0057】
上記では、第2母材原料(粉末状原料)をそのまま用いたが、第2母材原料は、必要に応じて仮焼してもよい。また、粉末状の第2添加原料を準備している場合には、第2添加原料を第2母材原料とともに仮焼してもよい。仮焼を行うと、仮焼後の粉末状原料の粒度が粗くなるため、仮焼後の原料を粉砕して微粒とする粉砕工程を設けることがある。また、焼結体の結晶粒子の粒子径を所定の径とするために、準備した粉末状原料を粉砕して微粒とする粉砕工程を設けることがある。
【0058】
このような粉砕工程では、粉砕に用いる粉砕容器、部材、メディア等からそれらの摩耗粉等が原料に混入しコンタミネーションとなる。通常、粉砕容器等は、焼結体と同様の組成を有する材料、あるいは、焼結体に含有されても所望の特性に影響を与えない材料などで構成されている。しかしながら、コンタミネーションが混入すると、原料の組成比を変化させ、粉砕後の原料の組成は所望の組成からずれてしまうことがある。
【0059】
そこで、以下では、セラミック焼結体用組成物の製造方法に係る他の実施形態として、コンタミネーションを補償する成分(コンタミ補償成分)を用いて、所望の組成と同じあるいは極めて近いセラミック焼結体用組成物を製造する方法を示す。以下では、母材成分となる原料は第1母材原料(バインダと共に分散されて溶液状化が可能な原料)および第2母材原料(粉砕可能な粉末状原料)であり、添加成分となる原料は第1添加原料(バインダと共に分散されて溶液状化が可能な原料)および第2添加原料(粉砕可能な粉末状原料)である場合について述べる。母材成分となる原料、添加成分となる原料およびバインダについての説明は、上記と同様である。バインダと共に分散されて溶液状化が可能な原料としては、特に限定されないが、粉砕可能な粉末状原料がフェライト粉末の場合には、たとえばオクチル酸Sr,Fe,Coなどが例示される。
【0060】
本実施形態では、粉砕原料のコンタミネーション成分の分析結果に基づき、コンタミ補償成分の組成比を決定し、該コンタミ補償成分と、バインダとを混練して該コンタミ補償成分がバインダ中に導入された導入バインダを得る。そして、この導入バインダを、粉砕原料とともに混練してセラミック焼結体用組成物とする。このようにすることで、粉砕原料に対して、組成の調整を直接行うことができ、所望の組成を容易に得ることができる。
【0061】
まず、焼成後に母材成分となる第2母材原料および焼成後に添加成分となる第2添加原料を準備し、製造されるセラミック焼結体の重量あるいはモル数に基づき、各成分の原料を秤量する。
【0062】
たとえば、
図2に示すように、該セラミック焼結体の母材成分は成分A、成分Bおよび成分Cの複合物であり、添加成分は成分aおよび成分bであるとする。各成分の重量あるいはモル数は、それぞれ、O
A 、O
B 、O
C 、O
a およびO
b と表される。したがって、製造されるセラミック焼結体の重量あるいはモル数は、(O
A +O
B +O
C +O
a +O
b )となる。また、該セラミック焼結体の各成分の比、すなわち、セラミック焼結体の所望の組成比Oは、O
A :O
B :O
C :O
a :O
b となる。
【0063】
一方、
図2に示すように、母材成分の原料として秤量された第2母材原料(成分A、成分Bおよび成分Cの原料)の重量あるいはモル数は、各成分換算で、S
A 、S
B およびS
C と表される。また、添加成分の原料として秤量された第2添加原料(成分aおよび成分bの原料)の重量あるいはモル数は、各成分換算で、S
a およびS
b と表される。第2母材原料および第2添加原料の重量あるいはモル数(S
A 、S
B 、S
C 、S
a およびS
b )は、製造されるセラミック焼結体の各成分の重量あるいはモル数と同じであってもよい。しかしながら、次の粉砕工程におけるコンタミネーションを考慮すると、少なくとも一部の成分について、製造されるセラミック焼結体の各成分の重量あるいはモル数よりも少なくすることが好ましい。
【0064】
続いて、第2母材原料および第2添加原料を粉砕し、粉砕原料を得る。粉砕原料(粉砕後の第2母材原料および第2添加原料)の組成比を分析し、
図2に示すように、これを各成分換算での重量あるいはモル数(P
A、P
B、P
C、P
aおよびP
b)として算出する。粉砕原料の各成分換算での重量あるいはモル数は、粉砕前の各成分換算での重量あるいはモル数(S
A、S
B、S
C、S
aおよびS
b)と、コンタミネーションによる混入量(C
A、C
B、C
C、C
aおよびC
b)と、の和に一致する。なお、
図2では、C
CおよびC
bは0であり、コンタミネーションによる混入がない場合もありうる。
【0065】
次に、製造されるセラミック焼結体の重量あるいはモル数(O
A 、O
B 、O
C 、O
a およびO
b )と、粉砕原料の各成分換算での重量あるいはモル数(P
A 、P
B 、P
C 、P
a およびP
b )と、の差分を算出する。この差分、すなわち、該セラミック焼結体の各成分の重量あるいはモル数に対する不足量(ΔS
A 、ΔS
B 、ΔS
C 、ΔS
a およびΔS
b )が、ΔS(=O−P)となる。したがって、所望の組成比Oは、O
A :O
B :O
C :O
a :O
b =(P
A +ΔS
A ):(P
B +ΔS
B ):(P
C +ΔS
C ):(P
a +ΔS
a ):(P
b +ΔS
b )と表すことができる。
【0066】
本実施形態では、第1母材原料および第1添加原料(コンタミ補償成分)の添加量は、母材成分および添加成分での添加量がΔSとなるように決定してもよいが、ΔSよりも少なくすることが好ましい。その後の工程等で組成がずれる可能性があるため、若干のマージンを確保することで、所望の組成に近づけることが容易となる。
【0067】
算出されたコンタミ補償成分は、粉砕後の第2母材原料および第2添加原料に添加され、バインダ中に導入される。
【0068】
このようにすることで、粉砕原料の組成を調整し、製造されるセラミック焼結体の組成比(各成分の重量あるいはモル数の比)と同じあるいは極めて近くすることが容易となる。以下に、具体的な数値を用いて説明する。
【0069】
たとえば、セラミック焼結体がA成分、B成分およびC成分の複合物を母材成分とし、添加成分として、a成分およびb成分を有しているとする。そして、製造する該焼結体の重量が105gであり、そのうち、母材成分が100g(O
A :50g、O
B :30g、O
C :20g)、添加成分が5g(O
a :3g、O
b :2g)とする。このとき、第2母材原料として、A成分粉末を45g(S
A )、B成分粉末を28g(S
B )、C成分粉末を18g(S
C )準備する。また、第2添加原料として、a成分粉末を1.5g(S
a )、b成分粉末を1.5g(S
b )準備する。
【0070】
第2母材原料(A成分粉末、B成分粉末およびC成分粉末)および第2添加原料(a成分粉末およびb成分粉末)を粉砕し、粉砕後の第2母材原料および第2添加原料を得る。これらの組成比から、各成分の重量を算出する。粉砕後の第2母材原料では、A成分粉末が48g(P
A )、B成分粉末が28g(P
B )、C成分粉末が18g(P
C )であり、第2添加原料では、a成分粉末が2.5g(P
a )、b成分粉末が1.5g(P
b )であるとする。そうすると、コンタミネーションとして混入したのは、A成分およびa成分であり、その量は、A成分が3g(C
A )、a成分が1g(C
a )である。
【0071】
したがって、得られた粉砕後の原料の組成比(各成分の重量あるいはモル数)を、製造されるセラミック焼結体の組成比(各成分の重量あるいはモル数)と一致させるには、A成分を2g(ΔS
A )、B成分を2g(ΔS
B )、C成分を2g(ΔS
C )、a成分を0.5g(ΔS
a )、b成分を0.5g(ΔS
b )を添加する必要がある。すなわち、これらの合計がΔSとなる。
【0072】
そして、第1母材原料および第1添加原料として添加されるコンタミ補償成分の添加量は、上記のΔSを、第1母材原料および第1添加原料に含まれる前駆体の重量あるいはモル数に換算して算出される。
【0073】
また、
図3に示すように、コンタミネーションが予想よりも多く混入することで、粉砕後の各成分の重量あるいはモル数が、製造されるセラミック焼結体の各成分の重量あるいはモル数よりも多くなる場合がある。この場合には、製造されるセラミック焼結体の各成分の重量あるいはモル数を変更し、粉砕後の各成分の重量あるいはモル数よりも多くなるようにする。
【0074】
以下では、具体的な数値を挙げて説明する。製造するセラミック焼結体の重量が105gであり、そのうち、母材成分が100g(O
A :50g、O
B :30g、O
C :20g)、添加成分が5g(O
a :3g、O
b :2g)とする。また、粉砕後の第2母材原料では、A成分粉末が53g(P
A )、B成分粉末が29g(P
B )、C成分粉末が18g(P
C )であり、第2添加原料では、a成分粉末が2.5g(P
a )、b成分粉末が1.5g(P
b )とする。
【0075】
このとき、A成分について、P
A がO
A よりも多いため、他の成分の重量をO
B 、O
C 、O
a およびO
b となるようにしても、所望の組成比からずれてしまう。そこで、セラミック焼結体の重量を、たとえば、115.5gに変更、すなわち、セラミック焼結体の重量を10%(10.5g)増加させると(O’)、母材成分は110g、添加成分は5.5gとなる。そして、O
A を55g(O
A ’)に変更し、O
A 以外の各成分も10%増加させて、ΔSを算出すれば、各成分比(組成比)は変わらない。この算出したΔSを、第1母材原料および第1添加原料の添加量に換算して、コンタミ補償成分量を決めればよい。
【0076】
(セラミック焼結体の製造方法)
上記で得られたセラミック焼結体用組成物を用いて、セラミック焼結体を製造する。
【0077】
まず、セラミック焼結体用組成物を成形して、所望の形状を有する成形体を得る。成形方法としては、液体成分を含む組成物を用いる射出成形、押出成形、湿式成形等が好ましい。本実施形態では射出成形によりセラミック焼結体用組成物を成形する。
【0078】
なお、添加成分となる原料(溶液状原料)とバインダとを混練してから、混練物と母材成分となる原料(粉末状原料)とを混練してもよいし、母材成分となる原料と、添加成分となる原料と、バインダと、を同時に混練してもよい。
【0079】
射出成形では、上記のセラミック焼結体用組成物はニーダーを用いて製造する。このとき、必要に応じてワックスや可塑剤を投入してもよい。回転数、混練時間、混練温度等の条件は適宜決定すればよい。得られたセラミック焼結体用組成物は、ペレタイザなどを用いてペレット状にすることが好ましい。
【0080】
上述のペレットを射出成形装置に投入してCIM(ceramic injection molding)成形を行う。射出成形装置に投入されたペレットは、押出機の内部で、たとえば160〜230℃に加熱溶融・混練され、成形用原料となり、スクリューにより金型装置のキャビティ内に射出され、成形体とされる。金型装置の温度は、20〜80℃である。母材成分が磁性材料(フェライト等)である場合には、金型装置に磁場を印加してもよい。
【0081】
その後、得られた成形体に対し脱脂処理を行う。脱脂条件は、特に制限されず、公知の条件で行えばよい。
【0082】
脱脂後の成形体は、焼成され、焼結体とされる。焼成条件は特に制限されず、公知の条件で行えばよい。たとえば、焼成温度は1200℃程度が好ましい。
【0083】
他の成形方法を採用する場合にも、成形体は、乾燥等により、脱水、脱脂等が行われ、その後焼成されて、焼結体とされる。脱水あるいは脱脂時には、導入バインダ中に存在している前駆体から、キャリアが離れ、母材成分あるいは添加成分を構成する元素が残る。その後、焼成時には、これらの元素は酸素原子、窒素原子等と結びつく。その結果、母材成分を構成する元素は、第2母材原料由来の母材粒子と一体化(固溶)し、添加成分を構成する元素は、第2添加原料由来の添加成分と一体化する。
【0084】
したがって、焼成後に、
図1(A)に示すように、母材成分51の結晶粒子の周囲に添加成分52が均一かつ十分に存在しているセラミック焼結体50が得られる。
【0085】
上記の工程を経て得られた焼結体は、必要に応じて加工され、たとえばフェライト磁石、磁心材料、電磁波吸収体とされる。
【0086】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0087】
たとえば
図1(A)に示す上述した実施形態の工程図において、導入バインダ40を形成する工程40aを省略し、液状の第1添加原料21とバインダ30と粉末状の第2母材原料12と、必要に応じて可塑剤、ワックスなどとを、同時に混練して、セラミック焼結体用組成物2を作製しても良い。ただし、導入バインダ40を予め形成してから、第2母材原料12と混練することが好ましい。
【実施例】
【0088】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0089】
(実施例1〜5)
第2母材原料として、ハードフェライト粉末を準備し、第1添加原料
(溶液状原料)として、シラン化合物(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)を準備した。バインダとして、アクリル樹脂およびポリプロピレンを準備し、ワックスとして、(パラフィンワックスを準備し、可塑剤として、ジオクチルフタレート(DOP)を準備した。なお、第1母材原料および第2添加原料は準備しなかった。また、第1添加原料に含まれるSiは、焼結体中ではSiO
2 成分として存在することになり、本実施例では、粒界成分として働く。
【0090】
まず、準備したフェライト粉末に対し水中微粉砕を行い、得られた粉砕粉を乾燥して、乾燥原料(フェライト)を得た。得られた乾燥原料と、
前記第1添加原料(溶液状原料)と、バインダと、ワックスと、可塑剤と、をニーダー内に投入し、混練を行い、回転数16rpm、混練時間2時間、混練温度195℃の条件で混練して、セラミック焼結体用組成物を得た。得られたセラミック焼結体用組成物について、流動性(MVR)を200℃、荷重10kgの条件で測定し、その後、この組成物をさらにペレタイザを用いてペレットに成形した。流動性の結果を表1および
図4に示す。
【0091】
なお、シラン化合物は、SiO
2 換算での添加量が、フェライト粉末100重量部に対して表1に示す重量部となるようにした。
【0092】
次に、磁場を利用する射出成形装置を用いて、ペレットを射出成形装置に投入し、加熱溶融・混練してから、磁場が印加されている金型装置内に射出成形した。磁場射出成形工程後の成形体の厚みは、2mmであり、円弧形状の平板を成形した。
【0093】
得られた成形体を脱脂し、その後、1200℃まで昇温して、その温度で1時間保持してフェライト磁石の焼結体を得た(焼成工程)。
【0094】
得られたフェライト磁石の焼結体について、焼結体密度、磁気配向度、残留磁束密度および保磁力を評価した。結果を表1および
図5〜10に示す。
【0095】
(実施例6〜10)
以下に示す条件以外は、実施例1と同様の条件でフェライト磁石を製造し、特性を評価した。第1添加原料として、直鎖状シリコーンを準備した。該シリコーンは、SiO
2 換算での添加量が、フェライト粉末100重量部に対して表1に示す重量部となるようにした。また、添加するシリコーンの体積分を、バインダの体積と置換した。すなわち、実施例1におけるバインダの体積は、本実施例におけるバインダの体積とシリコーンの体積との和に等しい。結果を表1および
図4〜10に示す。
【0096】
(比較例1)
以下に示す条件以外は、実施例1と同様の条件でフェライト磁石を製造し、特性を評価した。添加成分となる原料として、SiO
2 微粉(平均粒子径:0.5μm)を準備した。フェライト粉末100重量部に対し、上記のSiO
2 微粉を0.7重量部添加して、水中微粉砕を行った。得られた粉砕粉を乾燥して、乾燥原料(フェライト+SiO
2 )を得た。得られた乾燥原料と、バインダと、ワックスと、可塑剤と、をニーダー内に投入し、混練を行い、組成物を得た。結果を表1および
図4〜10に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
表1および
図4〜10より、添加成分を構成する元素、すなわち、Siを溶液状原料として添加することで、Siを酸化物粉末として添加し、他の原料と共に粉砕した場合(比較例1)に比べ良好な特性が得られることが確認できた。
【0099】
具体的には、
図4より、粒界成分を粉末状で添加しないため、組成物の流動性が向上することが確認できた。これは、粒界成分の原料を取り囲むためのバインダが必要無くなったためだと考えられる。
【0100】
また、
図5より、実施例の試料と比較例の試料とを比較すると、同バインダ量であれば、
図4と同様に、実施例の試料の方が磁気配向度は高くなることが確認できた。その結果、
図6より、残留磁束密度も実施例の方が高いことが確認できた。ただし、SiO
2 の添加量が増え、母材成分の体積比率が下がると残留磁束密度も下がる傾向にあった。
【0101】
図7より、SiO
2 の添加量が同じであれば、実施例の試料の方が保磁力は高いことが確認できた。これは、比較例の試料では、母材成分の結晶粒子の粒成長が促進されたためだと考えられる。
図8より、保磁力と残留磁束密度とのバランスも、実施例の試料の方が良好となり、磁性材料としてのポテンシャルが向上することが確認できた。
【0102】
図9より、実施例の試料は、比較例の試料よりも角型比が向上することが確認できた。これは、実施例の試料は粒成長を抑制する効果が高く、粗大粒子が生成しにくいためだと考えられる。その結果、脱磁耐性が高く、高信頼性となることが期待される。
図10より、母材成分の体積比率が増えるため、焼結体密度が向上することが確認できた。また、実施例6〜10の場合は、バインダ量を低減できるため、焼結体密度の向上に寄与することも確認できた。