(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電動機(M1)を有して冷媒を圧縮する圧縮機(10)と、室内熱交換器(21)と、室外熱交換器(11)と、前記圧縮機の吸入口(10b)および吐出口(10a)をそれぞれ前記室外熱交換器の一端(11a)および前記室内熱交換器の一端(21a)に接続する暖房接続状態(H)と前記吸入口及び前記吐出口をそれぞれ前記室内熱交換器の前記一端および前記室外熱交換器の前記一端に接続する冷房接続状態(C)とを切り替える四方切替弁(12)と、前記室内熱交換器の他端(21b)と前記室外熱交換器の他端(11b)との間に設けられる膨張機構(22)とを有し、前記冷媒が循環する冷媒回路(300)と、
前記冷媒の前記吐出口側における圧力を検出する圧力検出部(51,33)と、
前記四方切替弁を制御する機能を有し、前記四方切替弁に前記暖房接続状態を選択させた状態での前記圧力が圧力基準値よりも大きいときに、前記圧縮機を停止することなく、前記四方切替弁に前記冷房接続状態を選択させる四方切替弁制御部(41)と
を備える、空気調和機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
空気調和機において、圧縮機で圧縮された冷媒の圧力が所定の圧力基準値を超えると、圧縮機に不具合が生じ得る。
【0008】
そこで、本発明は、圧縮機によって圧縮される冷媒の圧力が圧力基準値を超えることを抑制できる空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる空気調和機の第1の態様は、電動機(M1)を有して冷媒を圧縮する圧縮機(10)と、室内熱交換器(21)と、室外熱交換器(11)と、前記圧縮機の吸入口(10b)および吐出口(10a)をそれぞれ前記室外熱交換器の一端(11a)および前記室内熱交換器の一端(21a)に接続する暖房接続状態(H)と前記吸入口及び前記吐出口をそれぞれ前記室内熱交換器の前記一端および前記室外熱交換器の前記一端に接続する冷房接続状態(C)とを切り替える四方切替弁(12)と、前記室内熱交換器の他端(21b)と前記室外熱交換器の他端(11b)との間に設けられる膨張機構(22)とを有し、前記冷媒が循環する冷媒回路(300)と、前記冷媒の前記吐出口側における圧力を検出する圧力検出部(51,33)と、前記四方切替弁を制御する機能を有し、前記四方切替弁に前記暖房接続状態を選択させた状態での前記圧力が圧力基準値よりも大きいときに
、前記圧縮機を停止することなく、前記四方切替弁に前記冷房接続状態を選択させる四方切替弁制御部(41)とを備える。
【0010】
本発明にかかる空気調和機の第2の態様は、第1の態様にかかる空気調和機であって、前記圧力検出部は、前記冷媒の前記圧力として前記室内熱交換器(21)の温度を検出する温度検出部(51)を有し、前記四方切替弁制御部(41)は、前記四方切替弁(12)に前記暖房接続状態(H)を選択させた状態での前記温度が、前記圧力基準値に対応する温度基準値よりも大きいときに、前記四方切替弁に前記冷房接続状態(C)を選択させる。
【0011】
本発明にかかる空気調和機の第3の態様は、第1の態様にかかる空気調和機であって、前記圧力検出部は、前記冷媒の前記圧力として前記電動機(M1)の電流を検出する電流検出部(33)を有し、前記四方切替弁制御部(41)は、前記四方切替弁(12)に前記暖房接続状態(H)を選択させた状態において前記圧力基準値に対応する電流基準値よりも、前記電流が大きいときに前記四方切替弁に前記冷房接続状態(C)を選択させる。
【0012】
本発明にかかる空気調和機の第4の態様は、第2の態様にかかる空気調和機であって、前記圧力検出部は、前記冷媒の前記圧力として前記電動機(M1)の電流を検出する電流検出部(33)をさらに有し、前記空気調和機は、前記四方切替弁(12)が前記冷房接続状態(C)を採用した状態において、前記圧力基準値に対応する電流基準値よりも前記電流が大きいときに、前記電動機(M1)を停止して前記圧縮機(10)を停止させる圧縮機停止部(35)を更に備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる空気調和機の第1の態様によれば、冷媒の吐出口側の圧力(以下、高圧)が圧力基準値よりも大きいときに四方切替弁に冷房接続状態を選択させる。これによって冷媒の高圧を低減させることができる。
【0014】
本発明にかかる空気調和機の第2の態様によれば、温度検出部を採用しているので、圧力検出センサーを用いる場合に比してコストを低減できる。
【0015】
本発明にかかる空気調和機の第3の態様によれば、電流検出部を採用しているので、圧力検出センサーを用いる場合に比してコストを低減できる。
【0016】
本発明にかかる空気調和機の第4の態様によれば、温度検出部で検出した圧力の検出精度は電流で検出した圧力の検出精度よりも低い。これは例えば次の理由による。即ち、温度検出部は室内熱交換器の温度を検出しており、実際の冷媒の飽和温度とのずれが生じるからである。
【0017】
一方で、冷房接続状態が採用された状態での圧力基準値に対応する電流基準値は、暖房接続状態が採用された状態での圧力基準値に対応する電流基準値よりも高い。これは、圧縮機の電動機へと流れる電流が同じであれば、冷房運転における冷媒の高圧は暖房運転における冷媒の高圧よりも小さいからである。
【0018】
空気調和機の第4の態様では、暖房接続状態ではより精度の低い温度により圧力を検出し、温度が温度基準値よりも大きいときに冷房接続状態を採用し、冷房接続状態ではより精度の高い電流により圧力を検出する。したがって、暖房接続状態で電流を検出し、冷房接続状態で温度を検出する場合に比べて、より正確に高圧が圧力基準値を超えることを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1の実施の形態.
図1に例示するように、空気調和機は圧縮機10と熱交換器11,21と四方切替弁12と膨張機構22とを備え、これらは冷媒回路300を形成する。
【0021】
圧縮機10は吐出口10aと吸入口10bと電動機M1と圧縮機構(不図示)とを有する。圧縮機構は電動機M1によって駆動されて、吸入口10bから吸入された冷媒を圧縮して吐出口10aから吐出する。四方切替弁12は、吐出口10aを熱交換器21の一端21aに接続し吸入口10bを熱交換器11の一端11aに接続する暖房接続状態Hと、吐出口10aを熱交換器11の一端11aに接続し吸入口10bを熱交換器21の一端21aに接続する冷房接続状態Cとを選択する。
【0022】
熱交換器11,21はそれぞれ内部を流れる冷媒と外部の空気との間で熱交換を実行する。膨張機構22は熱交換器11の他端11bと熱交換器21の他端21bとの間に設けられる。膨張機構22は冷媒を絞り膨張させる。膨張機構22は例えば電動弁であってもよく、或いは配管の構造により実現されてもよい。
【0023】
図1の例示では、圧縮機10と熱交換器11と四方切替弁12とは室外機100に設けられており、熱交換器21と膨張機構22とは室内機200に設けられている。また熱交換器(室外熱交換器)11へと送風するファン13が室外機100に設けられ、熱交換器(室内熱交換器)21へと送風するファン23が室内機200に設けられる。ファン13,23はそれぞれ熱交換器11,21における熱交換を促進させる。
【0024】
また室外機100には室外制御部4が設けられる。室外制御部4は圧縮機10、四方切替弁12およびファン13を制御して室外機100の制御を実行する。なお
図1では、室外制御部4に属する四方切替弁制御部41が例示されている。四方切替弁制御部41は四方切替弁12を制御する機能を有する。また
図1の例示では室外制御部4は圧縮機制御部3へと指令を行うことで圧縮機10の制御を行うものの、この点については後に述べる。
【0025】
室内機200には室内制御部5が設けられる。室内制御部5はファン23を制御する。また膨張機構22が被制御の膨張弁であれば室内制御部5は膨張機構22も制御する。室外制御部4と室内制御部5とは互いに通信可能に接続されて、互いに協動して空調運転(冷房運転/暖房運転など)を実行する。
【0026】
より詳細には、本空気調和機において、四方切替弁制御部41が四方切替弁12に暖房接続状態Hを選択させ、室外制御部4が適宜に圧縮機10およびファン13を制御するとともに、室内制御部5が適宜にファン23および膨張機構22を制御する。このとき圧縮機10によって圧縮された冷媒が熱交換器21において凝縮して室内の空気へと熱量を与える。熱交換器21からの冷媒は膨張機構22によって膨張し、その後、熱交換器11において蒸発して室外の空気から熱量を吸収し、再び圧縮機10へと流れる。このようにして空気調和機は暖房運転を実行できる。
【0027】
また四方切替弁制御部41が四方切替弁12に冷房接続状態Cを選択させ、室外制御部4が適宜に圧縮機10およびファン13を制御するとともに、室内制御部5が適宜にファン23および膨張機構22を制御する。このとき圧縮機10からの冷媒が熱交換器11において凝縮して室外の空気へと熱量を与える。熱交換器11からの冷媒は膨張機構22によって膨張し、その後、熱交換器21において蒸発して室内の空気から熱量を吸収し、再び圧縮機10へと流れる。このようにして空気調和機は冷房運転を実行できる。
【0028】
なお
図1の例示では圧縮機構を駆動する電動機M1には電力変換部1が接続され、電力変換部1には電源E1が接続される。電力変換部1は圧縮機制御部3によって制御されて電源E1からの電圧を適宜に変換し、これを電動機M1へと印加する。電動機M1は印加される電圧に応じて回転し、圧縮機構を駆動する。
【0029】
電力変換部1は例えば三相インバータであり、電動機M1も三相電動機である。電力変換部1は圧縮機制御部3によって制御されて、電源E1からの直流電圧を三相交流電圧に変換して電動機M1に印加する。例えば圧縮機制御部3は室外制御部4から指令値(例えば電動機M1の回転速度、トルク又は電流などの指令値)を受け取り、当該指令に基づいて電力変換部1を制御する。よって室外制御部4は圧縮機制御部3を介して圧縮機10を制御することができる。なお、電力変換部1は単相インバータであってもよく、三相以上のインバータであってもよい。このとき電動機M1の相数はインバータに合わせられる。
【0030】
またここでは、圧縮機制御部3、室外制御部4および室内制御部5はマイクロコンピュータと記憶装置を含んで構成される。マイクロコンピュータは、プログラムに記述された各処理ステップ(換言すれば手順)を実行する。上記記憶装置は、例えばROM(Read-Only-Memory)、RAM(Random-Access-Memory)、書き換え可能な不揮発性メモリ(EPROM(Erasable-Programmable-ROM)等)、ハードディスク装置などの各種記憶装置の1つ又は複数で構成可能である。当該記憶装置は、各種の情報やデータ等を格納し、またマイクロコンピュータが実行するプログラムを格納し、また、プログラムを実行するための作業領域を提供する。なお、マイクロコンピュータは、プログラムに記述された各処理ステップに対応する各種手段として機能するとも把握でき、あるいは、各処理ステップに対応する各種機能を実現するとも把握できる。また、圧縮機制御部3、室外制御部4および室内制御部5はこれに限らず、これらの制御部によって実行される各種手順、あるいは実現される各種手段又は各種機能の一部又は全部をハードウェアで実現しても構わない。
【0031】
また
図1に示すように、室内制御部5には圧力検出部の一例たる温度検出部51が接続されている。温度検出部51は室内熱交換器21に設けられて、冷媒の飽和温度Tを検出する。冷媒の飽和温度Tは
図2に示すように冷媒の圧力と正の相関関係を有するので、冷媒の飽和温度Tを圧力と対応付けることができる。なお
図2の例示では複数種類の冷媒についての圧力−飽和温度の曲線が示されている。
【0032】
図1を参照して、温度検出部51から冷媒の飽和温度Tを受け取った室内制御部5はこれを室外制御部4へと送信する。これによって室外制御部4は室内熱交換器21における冷媒の飽和温度Tを認識することができる。なおここでは圧縮機10の吐出口10aにおける冷媒の圧力(以下、高圧とも呼ぶ)を検出することを想定している。つまり圧縮機10によって圧縮された後の冷媒の圧力を検出することを想定している。また室内熱交換器21に圧縮後の冷媒が供給されるときは暖房接続状態Hが採用されたときである。したがって暖房接続状態Hが採用されているときの飽和温度Tが高圧と対応付けられる。
【0033】
ここでは上述のように圧力検出部の一例として温度検出部51を採用するが、これに限らず、圧縮機10の吐出口10aにおける冷媒の圧力を検出する圧力検出センサーを採用しても良い。ただし圧力検出センサーは比較的コストが高いので、温度検出部51を採用すればコストを低減できる。
【0034】
このような空気調和機において、四方切替弁制御部41は次のように動作する。即ち、暖房運転において高圧が圧力基準値Prefよりも大きいときに、四方切替弁制御部41は四方切替弁12に冷房接続状態Cを選択させる。言い換えれば、四方切替弁制御部41は、四方切替弁12に暖房接続状態Hを選択させた状態での高圧が圧力基準値Prefよりも大きいときに、四方切替弁12に冷房接続状態Cを選択させる。
【0035】
より具体的な動作の一例として、室外制御部4は例えば四方切替弁12の接続状態を不図示の記憶媒体に記憶する。また室外制御部4は飽和温度Tが温度基準値Trefよりも大きいかどうかを判断する。この温度基準値Trefは圧力基準値Prefに対応するものである。より詳細には温度基準値Trefは高圧が圧力基準値Prefを採るときの飽和温度Tと等しい値である。そして四方切替弁12が暖房接続状態Hを選択し、かつ飽和温度Tが温度基準値Trefよりも大きいときに、室外制御部4はその旨を四方切替弁制御部41に通知する。当該通知を受け取った四方切替弁制御部41は四方切替弁12に冷房接続状態Cを選択させる。
【0036】
このように冷房接続状態Cが採用されることで、高圧が低下する。これは以下の理由によると考察される。
図3にはモリエル線図における冷房運転時のサイクルと暖房運転時のサイクルが示されている。
図3では冷房運転時のサイクルが実線かつ太線で示され、暖房運転時のサイクルが破線かつ太線で示されている。ここではまず
図3を参照して冷房運転における圧縮機10の仕事量と暖房運転における圧縮機の仕事量10とについて考察する。
図3に例示するように仕事量の相違を分かりやすく説明するために、ここでは高圧が等しい場合を考察する。高圧が同じ値を採る場合、圧縮機10の吸入口10b側の冷媒の圧力(以下、低圧と呼ぶ)は暖房運転時に比べて冷房運転時の方が高い。これは、低圧は蒸発器と熱交換する空気の温度が高いほど高いからであり、冷房運転における室外の温度は暖房運転における室内の温度よりも高いからである。よって圧縮機10で増大するエンタルピーは暖房運転に比べて冷房運転の方が小さい。
図3の例示では、冷房運転におけるエンタルピーΔh1は約15kJ/kgであり、暖房運転におけるエンタルピーΔh2は約20kJ/kgである。よってこのときエンタルピーΔh1はエンタルピーΔh2の約3/4倍である。
【0037】
一方で、圧縮機10に流れる冷媒の流量は低圧に比例する。冷房運転における低圧PL1は暖房運転における低圧PL2よりも大きいので、冷房運転における冷媒の流量G1は暖房運転における流量G2よりも大きい。
図3の例示では、低圧PL1は約12kgf/cm
2であり、低圧PL2は約5kgf/cm
2である。よってこのとき、低圧PL1は低圧PL2の約2.4倍であり、流量G1も流量G2の約2.4倍である。
【0038】
圧縮機10の仕事量はエンタルピーと流量との積で表される。上述のように流量G1,G2の比(G1/G2)の方がエンタルピーΔh1,Δh2の比(Δh1/Δh2)よりも高くなるので、結果として冷房運転における圧縮機10の仕事量W1は暖房運転における圧縮機10の仕事量W2よりも大きくなる。例えば
図3の例示では冷房運転における当該仕事量W1は暖房運転における当該仕事量W2の約1.8倍(=2.4×3/4)である。
【0039】
さて暖房運転において四方切替弁12が暖房接続状態Hから冷房接続状態Cへと切り替えれば、室内熱交換器21の機能は蒸発器の機能から凝縮器の機能へと切り替わり、室外熱交換器11の機能は凝縮器の機能から蒸発器の機能へと切り替わる。冷媒の低圧は上述のように蒸発器と熱交換する空気の温度に依存するところ、蒸発器として機能する室内熱交換器11と熱交換する室内の温度(例えば20℃)は、切り替え前に蒸発器として機能していた室外熱交換器21と熱交換する室内の温度(例えば7℃)よりも高い。よって、当該切り替りによって低圧が増大することとなる。これによって冷媒の流量は増大する一方で熱交換器11,21の熱交換率は低下する。なぜなら、室内の目標温度は暖房運転時のままであって、冷房運転によっては室内を暖めることができないので、目標温度に対して行われる温度制御において圧縮機10の仕事量も低下するからである。したがって冷媒の高圧も低下する。つまり、本来暖房運転が行われる温度条件(室内、室外の温度及び目標温度)で冷房運転を行うのでので、これに起因して高圧が低下するのである。なお冷房運転で用いられる目標温度が暖房運転で採用される目標温度以上であれば、当該切り替えに伴って冷房運転で用いられる目標温度を採用しても良い。この目標温度に対する温度制御によっても圧縮機10の仕事量も低下するので、高圧は低減される。
【0040】
また上述のように冷房運転における圧縮機の仕事量は暖房運転における圧縮機の仕事量よりも小さい。これも高圧の低下に資する。以上のように、暖房接続状態Hでの高圧が圧力基準値Prefよりも大きいときに四方切替弁12が冷房接続状態Cを選択することによって、高圧を低減することができる。よって高圧が圧力基準値Prefを超えることを抑制することができる。
【0041】
<圧力検出部>
上述の説明では圧力検出部の一例として温度検出部51を採用している。しかしながら
図1に例示する電流検出部33を圧力検出部として採用してもよい。この場合、温度検出部51は必須要件ではない。
【0042】
電流検出部33は電動機M1へと流れる電流を検出する。ただし
図1の例示では、電流検出部33は電力変換部1に入力される直流電流(以下、電流Iとも呼ぶ)を検出する。これは、当該直流電流が電力変換部1によって三相交流電流に変換されて電動機M1を流れるので、当該直流電流も電動機M1を流れる電流として把握することができるからである。なお
図1の例示とは異なって、電流検出部33は電動機M1を流れる三相の交流電流(線電流)の少なくとも何れか1相の線電流を検出しても良い。
【0043】
図4には、電動機M1の回転速度を横軸に採り、高圧を縦軸に採った座標上での、電動機M1に流れる電流(電流I或いは線電流の振幅)の等電流線が例示される。
図4の例示では、四角形、三角形、逆三角形、菱形、円形、星形、五角形および台形が付記された等電流線が、それぞれ電流値10A,12A,14A,16A,17A,18A,20A及び22Aを示す。
図4に例示するように、電動機M1の回転速度が等しければ冷媒の高圧は電動機M1に流れる電流が大きいほど高い。
【0044】
電動機M1に流れる電流は電流基準値IrefHと比較される。電流基準値IrefHは圧力基準値Prefに対応するものである。より詳細には電流基準値IrefHは、暖房運転において高圧が圧力基準値Prefを採るときに電動機M1に流れる電流(交流電流であればその振幅)と等しい値である。またこの値が回転速度に応じて複数存在する場合は、それら値のうち最小値を採用するとよい。例えば
図4において圧力基準値Prefが45kgf/cm
2であれば、電流基準値IrefHは例えば約15.8Aである。なお電流基準値IrefHとして例えば16Aを採用すれば、圧力基準値Prefは約46.2kgf/cm
2を採用したと見なすことができる。これによって、暖房運転において回転速度がどのような値を採ったとしても、電動機M1に流れる電流が電流基準値IrefHよりも小さければ高圧は圧力基準値Prefよりも小さい。
【0045】
四方切替弁制御部41は、暖房接続状態Hが採用されたときの電流Iが電流基準値IrefHよりも大きいときに、四方切替弁12に冷房接続状態Cを選択させる。より具体的な動作の一例について説明する。
図1の例示では、圧縮機制御部3に電流検出部33が接続されており、圧縮機制御部3は電流検出部33によって検出された電流Iと電流基準値IrefHとを比較する。そして圧縮機制御部3は暖房運転において電流Iが電流基準値IrefHよりも大きいときに、その旨を室外制御部4に通知する。当該通知を受け取った室外制御部4は四方切替弁12が暖房接続状態Hを選択しているときに四方切替弁制御部41にその旨を通知し、四方切替弁制御部41が四方切替弁12に冷房接続状態Cを選択させる。
【0046】
したがって高圧を低減することができる。また圧力を検出する圧力検出部として電流検出部33を採用しているので、圧力検出センサーを用いる場合に比してコストを低減できる。
【0047】
第2の実施の形態.
図5に例示する空気調和機の概念的な構成は、圧縮機制御部3の内部構成を除いて
図1の空気調和機と同一である。なお第2の実施の形態では電流検出部33と温度検出部51との両方が設けられる。
【0048】
圧縮機制御部3はスイッチング信号生成部31と電流基準値設定部34と圧縮機停止部35とを備える。スイッチング信号生成部31は電力変換部1に与えるスイッチング信号を生成する。例えばスイッチング信号生成部31は室外制御部4から指令値(例えば電動機M1の回転速度、トルク又は電流などの指令値)を受け取って、当該指令値に基づいてスイッチング信号を生成する。
【0049】
電流基準値設定部34は電動機M1に流れる電流についての電流基準値IrefCを設定し、これを圧縮機停止部35へと出力する。この電流基準値IrefCは圧力基準値Prefに対応するものである。より詳細には電流基準値IrefCは、冷房運転において高圧が圧力基準値Prefを採るときに電動機M1に流れる電流(交流電流であればその振幅)と等しい値である。またこの値が回転速度に応じて複数存在する場合は、それら値のうち最小値を採用するとよい。この場合、冷房運転において回転速度がどのような値を採ったとしても、電動機M1に流れる電流が電流基準値IrefCよりも小さければ高圧は圧力基準値Prefよりも小さい。
【0050】
なお電流基準値IrefCは電流基準値IrefHよりも大きい。これは次の理由による。即ち、
図3を参照して説明したように高圧が同じであれば冷房運転における仕事量W1は暖房運転における仕事量W2よりも高い。言い換えれば、高圧が同じであれば冷房運転における電流は暖房運転における電流よりも高い。
【0051】
電流検出部33によって検出された電流Iは圧縮機停止部35に入力される。圧縮機停止部35は比較器351を備え、比較器351は電流Iと電流基準値IrefCとの大小を比較する。比較器351は例えばオペアンプによって形成される。圧縮機停止部35は電流Iが電流基準値IrefCよりも大きいときに電力変換部1を制御して電動機M1を停止させる。ひいては圧縮機10を停止させる。
【0052】
図5の例示では、例えば圧縮機停止部35は論理回路352を備えている。論理回路352は比較器351の出力とスイッチング信号生成部31の出力とが入力される。論理回路352は、電流Iが電流基準値IrefCよりも大きいときに電力変換部1を停止させるスイッチング信号を出力し、電流Iが電流基準値IrefCよりも小さいときにスイッチング信号生成部31からのスイッチング信号を電力変換部1に出力する。例えば比較器351は電流Iが電流基準値IrefCよりも大きいときに活性した信号を出力する。また例えば電力変換部1に属する不図示のスイッチング素子は活性したスイッチング信号が入力されて導通する。この場合、論理回路352は例えばアンド回路である。これによって論理回路352は、比較器351から活性した信号を受け取っているときにスイッチング信号生成部31からのスイッチング信号を電力変換部1に出力し、比較器351から非活性した信号を受け取っているときに、非活性したスイッチング信号を電力変換部1に出力する。これによって電流Iが電流基準値IrefCよりも大きいときに電動機M1を停止できる。
【0053】
さて上述したように電流基準値IrefCは電流基準値IrefHよりも大きい。そして暖房運転において高圧が圧力基準値Prefよりも小さいときには、電流Iは電流基準値IrefHよりも小さいので電流基準値IrefCを超えない。したがって、圧縮機停止部35による圧縮機10の停止は暖房運転においては実行されずに冷房運転において実行される。
【0054】
四方切替弁制御部41は第1の実施の形態で説明したように、暖房運転において温度検出部51によって検出される飽和温度Tが温度基準値Trefを超えたときに、四方切替弁制御部41が四方切替弁12に冷房接続状態Cを選択させる。したがって、暖房接続状態Hが採用された状態で高圧が圧力基準値Prefを超えることを回避できる。
【0055】
以上のように、暖房接続状態Hが採用されるときには、飽和温度Tに基づいて冷房接続状態Cを採用することで圧力が圧力基準値Prefを超えることを回避でき、冷房接続状態Cが採用されるときには、電流Iに基づいて圧縮機10を停止することで圧力が圧力基準値Prefを超えることを回避する。
【0056】
さて温度検出部51で検出した圧力の検出精度は電流検出部33で検出した圧力の検出精度よりも低い。これは例えば次の理由によると考察される。即ち、温度検出部51は室内熱交換器21の温度を検出しており、実際の冷媒の飽和温度Tとのずれが生じるからである。
【0057】
第2の実施の形態によれば、暖房接続状態Hではより精度の低い飽和温度Tにより圧力を検出し、冷房接続状態Cではより精度の高い電流Iにより圧力を検出する。したがって暖房接続状態Hで電流Iを検出し冷房接続状態Cで飽和温度Tを検出する場合に比べて、より正確に高圧が圧力基準値Prefを超えることを抑制することができる。
【0058】
しかも
図5の例示では、圧縮機停止部35は比較器351と論理回路352とを有している。よって高圧をその圧力基準値Pref以下に維持することをハードウェアで実現できる。したがってソフトウェアで実現する場合に比べて信頼性が高い。もちろん、ソフトウェアで実現してもよい。
【0059】
また
図6に例示するように電力変換部1はスイッチS1を備えていても良い。スイッチS1は電源E1と電力変換部1aとの間に設けられ、電源E1から電力変換部1aへの電源の供給/遮断を選択する。なお電力変換部1aは
図1の電力変換部1と同じであって例えば電源E1からの直流電圧を交流電圧に変換する。また
図6の例示では2つスイッチS1が電源E1と電力変換部1aとの間に設けられているが、いずれか一方のみが設けられてもよい。
【0060】
そして比較器351は電流Iと電流基準値IrefCとを比較し、電流Iが電流基準値IrefCよりも大きいときにスイッチS1を遮断する信号をスイッチS1へと与える。これによって電動機M1が停止し、ひいては圧縮機10が停止する。このような構成でも、ハードウェアで圧縮機停止部35を実現できるので信頼性が高い。