(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
紫外光透過窓を有する筐体と、この筐体内に配置された、真空紫外光を放射する紫外光放射ランプとを有する光出射機構を具えてなり、前記光出射機構における前記紫外光透過窓がナノインプリント装置におけるレジストよりなるインプリント材料層に接触されるテンプレートのパターン面に間隙を介して対向するよう配置される光洗浄装置であって、
前記紫外光透過窓の周囲に、露点が−110〜10℃である乾燥空気を供給する乾燥空気供給機構に接続される乾燥空気供給口を有することを特徴とする光洗浄装置。
前記紫外光透過窓の周囲に、前記紫外光透過窓と前記テンプレートとの間の間隙に流通する乾燥空気を吸引する乾燥空気吸引口を有することを特徴とする請求項7に記載の光洗浄装置。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、液晶表示素子等の製造工程に利用されている光洗浄方法を、テンプレートの洗浄に適用した場合には、レジスト残渣を確実に除去することが困難であることが判明した。
本発明者は、このような問題について鋭意検討重ねた結果、レジスト残渣中に含まれる硫黄元素やリン元素が空気中の水と反応することにより、硫酸、リン酸、その他の硫黄化合物またはリン化合物が生成され、この硫黄化合物やリン化合物がテンプレートのパターン面に残留すると推定し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の目的は、テンプレートのパターン面に残存するレジスト残渣を除去することができるテンプレート洗浄方法および光洗浄装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、欠陥の少ないパターンを形成することができるパターン形成方法およびナノインプリント装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のテンプレート洗浄方法は、ナノインプリントに用いられるテンプレートのパターン面を光洗浄するテンプレート洗浄方法であって、
露点が−110〜10℃である乾燥空気の雰囲気下において、真空紫外光をテンプレートのパターン面に照射する
ことにより、レジストよりなるインプリント材料の残渣を除去する真空紫外光照射工程を有することを特徴とする。
【0009】
本発明のテンプレート洗浄方法においては、前記乾燥空気の露点が
−110〜10℃であるが、−90〜−30℃であることが好ましい。ここで、本明細書中における乾燥空気の露点は装置に導入する前の温度25℃のときの露点とする。ナノインプリントプロセスはクリーンルームで行われるため温度変動はほとんどないので、インラインの気体の温度は25℃の露点で管理することができるためである。
また、本発明のテンプレート洗浄方法
は、ナノインプリントに用いられるテンプレートのパターン面を光洗浄するテンプレート洗浄方法であって、露点が−110〜10℃である乾燥空気の雰囲気下において、真空紫外光をテンプレートのパターン面に照射する真空紫外光照射工程を有し、前記真空紫外光照射工程は、前記テンプレートをそのパターン面の温度が25〜150℃となるよう温度制御した状態で行われること
を特徴とする。
このようなテンプレート洗浄方法においては、前記テンプレートに接触または接近して配置された温度制御手段によって、当該テンプレートを温度制御してもよく、また、前記乾燥空気の温度を25〜150℃とすることによって、前記テンプレートを温度制御してもよい。
また、本発明における乾燥空気の露点計測器については、−80℃までをTesto社の6740型圧力露点変換器を使用し、−80℃を超えた低湿度についてはパナメトリックス社のナノトレース水分計DF750型を使用して計測した。後者では水分はppm〜pptで計測されるが、露点は計算で算出することができる。
【0010】
本発明のパターン形成方法は、パターンを形成すべき基板上にインプリント材料を塗布することによってインプリント材料層を形成し、
当該インプリント材料層に、上記のテンプレート洗浄方法によって洗浄されたテンプレートを押圧し、この状態で、当該インプリント材料層を硬化処理することを特徴とする。
【0011】
本発明のパターン形成方法においては、前記インプリント材料は、硫黄元素および/またはリン元素を含む物質が含有されてなるものであってもよい。
【0012】
本発明の光洗浄装置は、紫外光透過窓を有する筐体と、この筐体内に配置された、真空紫外光を放射する紫外光放射ランプとを有する光出射機構を具えてなり、前記光出射機構における前記紫外光透過窓がナノインプリント装置における
レジストよりなるインプリント材料層に接触されるテンプレートのパターン面に間隙を介して対向するよう配置される光洗浄装置であって、
前記紫外光透過窓の周囲に、
露点が−110〜10℃である乾燥空気を供給する乾燥空気供給機構に接続される乾燥空気供給口を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の光洗浄装置においては、前記紫外光透過窓の周囲に、前記紫外光透過窓と前記テンプレートとの間の間隙に流通する乾燥空気を吸引する乾燥空気吸引口を有することが好ましい。
【0014】
本発明のナノインプリント装置は、チャンバ内に配置されたテンプレートと、このテンプレートの下方位置に、基板上に
レジストよりなるインプリント材料層が形成されてなる被処理物を搬送する搬送機構と、前記インプリント材料層を硬化処理する硬化処理手段とを具えてなるナノインプリント装置であって、
紫外光透過窓を有する筐体と、この筐体内に配置された、真空紫外光を放射する紫外光放射ランプとを有する、当該紫外光透過窓がテンプレートのパターン面に間隙を介して対向するよう配置される光洗浄装置を具え、
前記チャンバには、
露点が−110〜10℃である乾燥空気を供給する乾燥空気供給機構に接続される乾燥空気供給口が形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明のナノインプリント装置は、チャンバ内に配置されたテンプレートと、このテンプレートの下方位置に、基板上に
レジストよりなるインプリント材料層が形成されてなる被処理物を搬送する搬送機構と、前記インプリント材料層を硬化処理する硬化処理手段とを具えてなるナノインプリント装置であって、上記の光洗浄装置が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のテンプレート洗浄方法および光洗浄装置によれば、乾燥空気の雰囲気下において、真空紫外光をテンプレートのパターン面に照射することにより、インプリント材料が硫黄元素またはリン元素を含有してなるものであっても、硫酸などの硫黄化合物やリン酸などのリン化合物が生成されることが防止または抑制されるので、テンプレートのパターン面に残存するレジスト残渣を除去することができる。
本発明のパターン形成方法およびナノインプリント装置によれば、インプリント材料層に、上記のテンプレート洗浄方法によって洗浄されたテンプレートを押圧することにより、欠陥の少ないパターンを確実に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1(a)は、本発明のテンプレート洗浄方法およびパターン形成方法を実行するためのナノインプリント装置の一例における内部の構成の概略を示す説明図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示すナノインプリント装置をX−Xで切断して示す説明用断面図である。
図1において、1はテンプレート、2はテンプレート1を保持する保持部材、3はチャンバであって、テンプレート1はチャンバー3の内部に位置する。4は、被処理物である基板Wをテンプレート1の下方位置に搬送する搬送機構であって、この搬送機構4には、基板Wを保持するチャック4aが設けられている。5は、基板Wの表面に液状の光硬化型レジストよりなるインプリント材料を塗布することによってインプリント材料層を形成するインクジェット方式による塗布手段、6はテンプレート1の上方に位置し、基板W上に形成されたインプリント材料層にテンプレートを介して紫外光を照射することによって当該インプリント材料層を硬化処理する硬化処理手段である。30は、テンプレート1のパターン面に真空紫外光を照射する光洗浄装置であり、この光洗浄装置30は、テンプレート1のパターン面に間隙を介して配置されるよう搬送する搬送アーム(図示省略)に固定されている。
また、チャンバ3における一側壁3aの下方位置には、乾燥空気供給機構(図示省略)に接続された、基板Wと光洗浄装置との間に乾燥空気を供給するための乾燥空気供給口K1が形成され、チャンバ3における一側壁3aに対向する他側壁3bの上方位置には、乾燥空気供給口K1からの乾燥空気を排出するための乾燥空気排出口Tが形成されている。 また、チャンバ3内には、当該チャンバ3内の空気の露点を測定する露点計測器(図示省略)が設けられている。
【0019】
テンプレート1を構成する材料としては、硬化処理手段6からの紫外光を透過し得るもの、例えば合成石英ガラスを用いることが好ましい。
硬化処理手段6における紫外光光源としては、例えばメタルハライドランプ、高圧水銀灯、LEDなどを用いることができる。
【0020】
図2は、光洗浄装置30の一例における外観の構成を示す説明用斜視図であり、
図3は、
図2に示す光洗浄装置の内部の構成を示す説明用断面図である。
この光洗浄装置30における筐体10は外形が略直方体状のものであり、この筐体10内には、ランプ収容室S1および回路室S2が隔壁12を介して並ぶよう形成されており、筐体10におけるランプ収容室S1を形成する部分の上面には、例えば石英ガラスよりなる紫外光透過窓11が、枠状の固定板13によって固定されて設けられている。
筐体10におけるランプ収容室S1内には、波長200nm以下の真空紫外光を放射するエキシマランプ20が配置され、回路室S2内には、昇圧トランス25などが配置されている。また、
図2において、15は、ランプ収容室S1内に例えば窒素ガスなどのパージ用ガスを供給するためのパージ用ガス流通管である。
【0021】
図4は、エキシマランプ20の斜視図であり、
図5は、
図4に示すエキシマランプ20の説明用断面図である。このエキシマランプ20は、内部に放電空間Sが形成された全体が扁平な板状の放電容器21を有し、この放電容器21の両端には口金24が設けられ、当該放電容器21の放電空間S内には、エキシマ発光用ガスが気密に封入されている。放電容器21の一面には、網状の高電圧側電極22が配置され、当該放電容器21の他面には、網状のアース側電極23が配置されており、高電圧側電極22およびアース側電極23の各々は、高周波電源(図示省略)に接続されている。そして、エキシマランプ20は、放電容器21における高電圧側電極22が配置された一面が、筐体10における紫外光透過窓11と対向するよう配置されている。
【0022】
放電容器21を構成する材料としては、真空紫外光を良好に透過するもの、具体的には、合成石英ガラスなどのシリカガラス、サファイアガラスなどを用いることができる。
高電圧側電極22およびアース側電極23を構成する材料としては、アルミニウム、ニッケル、金などの金属材料を用いることができる。また、高電圧側電極22およびアース側電極23は、上記の金属材料を含む導電性ペーストをスクリーン印刷することにより、或いは上記の金属材料を真空蒸着することにより、形成することもできる。
放電容器21の放電空間S内に封入されるエキシマ発光用ガスとしては、真空紫外光を放射するエキシマを生成し得るもの、具体的には、キセノン、アルゴン、クリプトン等の希ガス、または、希ガスと、臭素、塩素、ヨウ素、フッ素等のハロゲンガスとを混合した混合ガスなどを用いることができる。エキシマ用発光ガスの具体的な例を、放射される真空紫外光の波長と共に示すと、キセノンガスでは172nm、アルゴンとヨウ素との混合ガスでは191nm、アルゴンとフッ素との混合ガスでは193nmである。
また、エキシマ用ガスの封入圧は、例えば10〜100kPaである。
【0023】
このようなナノインプリント装置においては、
図6(a)に示すように、搬送機構4におけるチャック4aに保持された基板Wを、当該搬送機構4によって塗布手段5の下方位置に移動させ、当該塗布手段5によって基板Wの表面に液状の光硬化型レジストよりなるインプリント材料を塗布することにより、基板W上にインプリント材料層P1を形成する。次いで、
図6(b)に示すように、搬送機構4によって、インプリント材料層P1が形成された基板Wをテンプレート1の下方位置に移動させて所要の位置に位置合わせする。そして、
図7(a)に示すように、テンプレート1を下方に移動させることにより、当該テンプレート1を、基板W上に形成されたインプリント材料層P1に接触させて押圧し、この状態で、硬化処理手段6によって、インプリント材料層P1にテンプレート1を介して紫外光を照射することにより、インプリント材料層P1を硬化させる。その後、
図7(b)に示すように、得られた硬化層P2からテンプレート1を離型させることにより、基板Wに対するパターン形成が達成される。
【0024】
このような基板Wに対するパターン形成が終了すると、真空紫外光照射工程を含むテンプレートの光洗浄が開始される。
具体的には、
図6(c)に示すように、搬送機構4によって、基板Wが、テンプレート1の下方位置からその側方位置に移動されて退避されると共に、光洗浄装置30がテンプレート1の下方位置に搬送され、その紫外光透過窓11(
図3参照)がテンプレート1のパターン面に間隙を介して対向するよう配置され、この状態で、真空紫外光照射工程が実行される。
ここで、紫外光透過窓11の外面とテンプレート1のパターン面との間の離間距離は、例えば0.3〜10.0mmである。
【0025】
真空紫外光照射工程においては、乾燥空気供給口K1に接続された乾燥空気供給機構を作動させ、これにより、乾燥空気供給口K1からチャンバ3内に供給された乾燥空気が、光洗浄装置30における紫外光透過窓とテンプレート1との間の間隙に流通され、その結果、テンプレート1のパターン面が乾燥空気の雰囲気とされる。そして、チャンバ3内に設けられた露点計測器(図示省略)によって測定される、当該チャンバ3内の空気の露点が所要の値に達した状態で、光洗浄装置30におけるエキシマランプ20(
図4参照)を点灯させることにより、エキシマランプ20からの真空紫外光が紫外光透過窓11を介してテンプレート1のパターン面に照射され、以て、テンプレート1の光洗浄が達成される。
その後、光洗浄装置30が搬送されてテンプレート1の下方位置から退避され、後続の基板Wに対するパターン形成が実行される。
【0026】
以上の真空紫外光照射工程において、上記乾燥空気供給機構としては、空気中の浮遊物質を除去するフィルタと、このフィルタを通過した空気を圧縮するコンプレッサと、このコンプレッサから送られる圧縮空気中に含まれる油分を除去するオイルセパレータと、このオイルセパレータを通過した圧縮空気を冷却することにより、当該圧縮空気中に含まれる水分を凝結する空気冷却器とを具えてなるものを用いることができる。
このような乾燥空気供給機構においては、コンプレッサによる圧縮空気の圧力および空気冷却器による圧縮空気の冷却温度を制御することにより、得られる乾燥空気の露点を調整することができる。
【0027】
また、紫外光透過窓11とテンプレート1との間の間隙に流通される乾燥空気は、その露点が−110〜10℃であることが好ましく、より好ましくは−90〜−30℃である。乾燥空気の露点が−110℃未満である場合には、水分子に真空紫外光が照射されたときに発生するOHラジカルの数が少なくなるため、リンや硫黄以外の異物を除去する能力が低くなり、異物がテンプレートのパターン面に残留しやすくなる。一方、乾燥空気の露点が10℃を超える場合には、乾燥空気中の水分量が過大であるため、レジスト残渣中に含まれる硫黄元素やリン元素が空気中の水と反応することにより、硫酸、リン酸、その他の硫黄化合物またはリン化合物が生成されやすくなる。
【0028】
また、本発明に用いられる乾燥空気は、UV−オゾン洗浄用の処理ガスとして機能するものであり、露点が−110〜10℃であればよく、上記のように大気中の空気の露点を調整したものに限定されない。本発明に用いられる乾燥空気は、例えば窒素と酸素を混合し、露点を調整したものであってもよく、その酸素濃度は所望量のオゾンが生成される量であればよい。
【0029】
また、紫外光透過窓11とテンプレート1との間の間隙に流通される乾燥空気の流量は、例えば1〜100L/minである。
また、テンプレート1に対する真空紫外光の照射時間は、例えば3〜3600秒間である。
【0030】
また、真空紫外光照射工程は、テンプレート1をそのパターン面の温度が25〜150℃となるよう温度制御した状態で行われることが好ましい。テンプレート1のパターン面の温度が25℃未満である場合には、レジスト残渣が分解されたときに発生する物質の粒子サイズが大きく気化しにくいので、真空紫外光の照射時間を長くすることで分解をさらに進めて粒子サイズを小さくする必要があり、洗浄効率が低下する、という問題がある。一方、テンプレート1のパターン面の温度が150℃を超える場合には、テンプレート1に残留したレジスト残渣の硬化が進行するため、当該レジスト残渣が分解されにくくなり、その結果、真空紫外光の照射時間を長くすることが必要となるので、洗浄効率が低下する、という問題がある。
【0031】
テンプレート1を温度制御する方法としては、テンプレート1に接触または近接して配置された温度制御手段によって、テンプレート1を温度制御する方法、乾燥空気供給口K1と乾燥空気供給機構との間に設けられた適宜のガス温度制御手段によって乾燥空気を25〜150℃に温度制御し、当該温度制御された乾燥空気を光処理装置30における紫外光透過窓とテンプレート1との間の間隙に流通させることにより、テンプレート1を温度制御する方法などを用いることができる。
【0032】
テンプレート1に接触または近接して配置された温度制御手段によって、テンプレート1を温度制御する場合には、当該温度制御手段は、
図8(a)に示すように、温度制御手段7がテンプレート1に接触または近接する温度制御実行位置D1と、
図8(b)に示すように、温度制御手段7が温度制御実行位置から退避した退避位置D2との間で移動可能に設けられていることが好ましい。このような構成においては、基板Wに対するパターン形成を行うときには、温度制御手段7が退避位置D2に位置された状態とされ、テンプレート1の光洗浄を行うときには、温度制御手段7が温度制御実行位置D1に位置された状態とされる。
【0033】
上記のテンプレート洗浄方法によれば、乾燥空気の雰囲気下において、光洗浄装置30によって真空紫外光をテンプレート1のパターン面に照射することにより、インプリント材料が硫黄元素またはリン元素を含有してなるものであっても、硫酸などの硫黄化合物やリン酸などのリン化合物が生成されることが防止または抑制されるので、テンプレート1のパターン面に残存するレジスト残渣を確実に除去することができる。
また、上記のパターン形成方法およびナノインプリント装置によれば、インプリント材料層P1に、上記のテンプレート洗浄方法によって洗浄されたテンプレート1を押圧することにより、欠陥の少ないパターンを確実に形成することができる。
【0034】
図1において乾燥空気排出口Tは、乾燥空気を吸引する機構を設けた乾燥空気吸引口に換えてもかまわない。
【0035】
図9は、本発明の光洗浄装置の一例における構成を、被処理物であるテンプレートと共に示す説明用断面図である。この光洗浄装置30は、ナノインプリント装置におけるテンプレートの表面を光洗浄するために用いられるものであって、紫外光透過窓11が、保持部材2によって保持されたテンプレート1のパターン面に間隙を介して対向するよう配置されて使用される。
この光洗浄装置30における筐体10には、その一側面(図において右側面)における上縁部に沿って、乾燥空気供給機構(図示省略)に接続されて乾燥空気が流通される矩形の筒状の一方のガス流路部材16が設けられていると共に、その他側面(図において左側面)における上縁部に沿って、ガス吸引機構(図示省略)に接続されて乾燥空気が流通される矩形の筒状の他方のガス流路部材17が設けられている。一方のガス流路部材16の上面には、乾燥空気供給口K1が形成され、これにより、筐体10における紫外光透過窓11の周囲に、乾燥空気供給口K1が位置されている。また、他方のガス流路部材17の上面には、乾燥空気吸引口K2が形成され、これにより、筐体10における紫外光透過窓11の周囲に、乾燥空気吸引口K2が位置されている。また、一方のガス流路部材16および他方のガス流路部材17の各々の側面には、乾燥空気が流れる方向を規制する仕切り板18が設けられている。仕切り板18は、仕切り板18と保持部材との間の間隙を紫外光透過窓11とテンプレート1との間の間隙より小さくなるように設けられている。その他の構成は、
図3および
図4に示す光洗浄装置と同様である。
【0036】
上記の光洗浄装置30においては、ナノインプリントによる基板のパターン形成が終了すると、当該光洗浄装置30における紫外光透過窓11がテンプレート1のパターン面に間隙を介して対向するよう配置され、この状態で、真空紫外光照射工程が実行される。
真空紫外光照射工程においては、乾燥空気供給口K1に接続された乾燥空気供給機構を作動させると共に、乾燥空気吸引口K2に接続されたガス吸引機構を作動させ、これにより、乾燥空気供給口K1から供給された乾燥空気が、光洗浄装置30における紫外光透過窓11とテンプレート1との間の間隙に流通され、その結果、テンプレート1のパターン面が乾燥空気の雰囲気とされる。そして、この状態で、光洗浄装置30におけるエキシマランプ20を点灯させることにより、エキシマランプ20からの真空紫外光が紫外光透過窓11を介してテンプレート1のパターン面に照射され、以て、テンプレート1の光洗浄が達成される。
その後、光洗浄装置30が搬送されてテンプレート1の下方位置から退避され、後続の基板に対するパターン形成が実行される。
上記の光洗浄装置による真空紫外光照射工程における具体的な条件は、前述のナノインプリント装置による真空紫外光照射工程と同様である。
【0037】
上記の光洗浄装置30によれば、乾燥空気供給口K1から供給された乾燥空気を、光洗浄装置30における紫外光透過窓11とテンプレート1との間の間隙に流通させることにより、乾燥空気の雰囲気下において、光処理装置30によって真空紫外光がテンプレート1のパターン面に照射されるので、インプリント材料が硫黄元素またはリン元素を含有してなるものであっても、硫酸などの硫黄化合物やリン酸などのリン化合物が生成されることが防止または抑制されるので、テンプレート1のパターン面に残存するレジスト残渣を確実に除去することができる。
また、紫外光透過窓の周囲に乾燥空気吸引口K2が設けられているため、紫外光透過窓11とテンプレート1との間の間隙に流通する乾燥空気を乾燥空気吸引口K2によって吸引することにより、インプリント材料層中に含まれる水分が蒸発しても、テンプレート1の周辺の乾燥空気の露点が上昇すること、すなわちテンプレート1の乾燥空気中に含まれる水分量が増加することを抑制することができる。
また、一方のガス流路部材16および他方のガス流路部材17の各々の側面に、仕切り板18が設けられ、仕切り板18と保持部材との間の間隙を紫外光透過窓11とテンプレート1との間の間隙より小さくすることにより、光洗浄装置30における紫外光透過窓11とテンプレート1との間の間隙に、乾燥空気を確実に流通させることができる。
そして、このような光洗浄装置30により洗浄されたテンプレート1を、インプリント材料層に押圧することにより、欠陥の少ないパターンを確実に形成することができる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されず、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、光洗浄装置においては、真空紫外光放射ランプとして、エキシマランプの代わりに低圧水銀ランプを用いることができる。
また、
図9に示す光洗浄装置においては、一方のガス流路部材16と乾燥空気供給機構との間に、適宜のガス温度制御手段が設けられていてもよく、これにより、ガス温度制御手段によって乾燥空気を25〜150℃に温度制御し、当該温度制御された乾燥空気を光洗浄装置30における紫外光透過窓とテンプレート1との間の間隙に流通させることにより、テンプレート1を温度制御することができる。
また、ナノインプリント方法およびナノインプリント装置においては、熱硬化型のレジストよりなるインプリント材料を用いたナノインプリントに適用することができる。この場合には、テンプレートを構成する材料としては、炭化ケイ素(SiC)を用いることができ、インプリント材料層の硬化処理手段として、ヒータランプを具えてなるものを用いることができる。
【実施例】
【0039】
〈実施例1〉
図2〜
図4の構成に従い、下記の仕様の光洗浄装置を作製した。
[筐体]
ランプ収容室の寸法が250mm×100mm×80mmであり、紫外光透過窓は、合成石英ガラス製で、その縦横の寸法が60mm×60mm、厚みが5mmである。
[エキシマランプ]
放電容器の材質は合成石英ガラスで、その内部にキセノンガスが封入され、発光長が50mm、発光幅が40mm、入力が15Wのものである。
また、このエキシマランプは、筐体内において、放電容器における高電圧側電極が配置された一面が紫外光透過窓と対向するよう配置されており、紫外光透過窓の表面における真空紫外光の放射発散度が80mW/cm
2 である。
【0040】
また、凹凸の幅がそれぞれ20nmで、凸部の高さが70nmのライン状パターンが形成された、パターン面におけるパターン領域の寸法が10mm×10mm、厚みが6mmの石英ガラスよりなるテンプレートを作製した。
【0041】
上記のテンプレートを用い、以下のようにしてナノインプリントによるパターン形成を行った。
基板上に、硫黄元素およびリン元素を含む物質が含有されてなる液状の光硬化型レジストよりなるインプリント材料を塗布することによって、当該基板上に厚みが70nmのインプリント材料層を形成し、このインプリント材料層に、上記のテンプレートを押圧し、この状態でインプリント材料層の硬化処理を行い、その後、得られた硬化層からテンプレートを離型した。このパターン形成操作を同一のテンプレートを用いて合計12回行った。
【0042】
そして、テンプレートのパターン面に、紫外光透過窓が3mmの間隙を介して対向するよう、上記の光洗浄装置を配置し、光洗浄装置における紫外光透過窓とテンプレートとの間の間隙に、露点が10℃の乾燥空気を50L/minの流量で流通させることにより、テンプレートの周辺を乾燥空気の雰囲気とし、この状態で、光洗浄装置におけるエキシマランプを点灯させ、テンプレートに対して真空紫外光を1200秒間照射することにより、テンプレートの洗浄を行った。この洗浄において、テンプレートのパターン面の温度は30℃であった。そして、洗浄されたテンプレートを用いて上記のパターン形成操作を行い、得られた硬化層を走査型電子顕微鏡で観察し、単位面積(25μm
2 )当たりのパターン欠陥(パターンの凸部が欠けた欠陥)の数(以下、「パターン欠陥数」という。)を測定した。結果を表1に示す。
【0043】
〈実施例2〉
露点が10℃の乾燥空気の代わりに露点が−20℃の乾燥空気を用いたこと以外は実施例1と同様にして、上記テンプレートを用いた12回のパターン形成操作、テンプレートの洗浄、および洗浄されたテンプレートを用いたパターン形成操作を行い、得られた硬化層を走査型電子顕微鏡で観察し、単位面積(25μm
2 )当たりのパターン欠陥数を測定した。結果を表1に示す。
【0044】
〈実施例3〉
露点が10℃の乾燥空気の代わりに露点が−30℃の乾燥空気を用いたこと以外は実施例1と同様にして、上記テンプレートを用いた12回のパターン形成操作、テンプレートの洗浄、および洗浄されたテンプレートを用いたパターン形成操作を行い、得られた硬化層を走査型電子顕微鏡で観察し、単位面積(25μm
2 )当たりのパターン欠陥数を測定した。結果を表1に示す。
【0045】
〈実施例4〉
露点が10℃の乾燥空気の代わりに露点が−50℃の乾燥空気を用いたこと以外は実施例1と同様にして、上記テンプレートを用いた12回のパターン形成操作、テンプレートの洗浄、および洗浄されたテンプレートを用いたパターン形成操作を行い、得られた硬化層を走査型電子顕微鏡で観察し、単位面積(25μm
2 )当たりのパターン欠陥数を測定した。結果を表1に示す。
【0046】
〈実施例5〉
露点が10℃の乾燥空気の代わりに露点が−80℃の乾燥空気を用いたこと以外は実施例1と同様にして、上記テンプレートを用いた12回のパターン形成操作、テンプレートの洗浄、および洗浄されたテンプレートを用いたパターン形成操作を行い、得られた硬化層を走査型電子顕微鏡で観察し、単位面積(25μm
2 )当たりのパターン欠陥数を測定した。結果を表1に示す。
【0047】
〈実施例6〉
露点が10℃の乾燥空気の代わりに露点が−90℃の乾燥空気を用いたこと以外は実施例1と同様にして、上記テンプレートを用いた12回のパターン形成操作、テンプレートの洗浄、および洗浄されたテンプレートを用いたパターン形成操作を行い、得られた硬化層を走査型電子顕微鏡で観察し、単位面積(25μm
2 )当たりのパターン欠陥数を測定した。結果を表1に示す。
【0048】
〈実施例7〉
露点が10℃の乾燥空気の代わりに露点が−110℃の乾燥空気を用いたこと以外は実施例1と同様にして、上記テンプレートを用いた12回のパターン形成操作、テンプレートの洗浄、および洗浄されたテンプレートを用いたパターン形成操作を行い、得られた硬化層を走査型電子顕微鏡で観察し、単位面積(25μm
2 )当たりのパターン欠陥数を測定した。結果を表1に示す。
【0049】
〈比較例1〉
紫外光透過窓とテンプレートとの間の間隙に乾燥空気を流通させず、大気下においてテンプレートの洗浄を行ったこと以外は実施例1と同様にして、上記テンプレートを用いた12回のパターン形成操作、テンプレートの洗浄、および洗浄されたテンプレートを用いたパターン形成操作を行い、得られた硬化層を走査型電子顕微鏡で観察し、単位面積(25μm
2 )当たりのパターン欠陥数を測定した。ここで、大気の露点は15℃であった。結果を表1に示す。
【0050】
〈参考例1〉
露点が10℃の乾燥空気の代わりに露点が−130℃の乾燥空気を用いたこと以外は実施例1と同様にして、上記テンプレートを用いた12回のパターン形成操作、テンプレートの洗浄、および洗浄されたテンプレートを用いたパターン形成操作を行い、得られた硬化層を走査型電子顕微鏡で観察し、単位面積(25μm
2 )当たりのパターン欠陥数を測定した。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜7においては、洗浄によって、テンプレートに残留したレジスト残渣が十分に除去されているため、パターン欠陥の少ないパターンが形成されることが理解される。さらに、乾燥空気の露点が−30〜−90℃となるように調整することにより、パターン欠陥数を0個/25μm
2 とすることができる。
【0053】
〈参考例2〉
テンプレートの洗浄において、温度制御手段によって、テンプレートをそのパターン面の温度が20℃となるよう温度制御したこと以外は、実施例3と同様にして、上記テンプレートを用いたパターン形成操作を12回、テンプレートの洗浄、および洗浄されたテンプレートを用いたパターン形成操作を1回行い、得られた硬化層を走査型電子顕微鏡で観察し、単位面積(25μm
2 )当たりのパターン欠陥数を測定した。結果を表2に示す。
【0054】
〈実施例8〉
テンプレートの洗浄において、温度制御手段によって、テンプレートをそのパターン面の温度が25℃となるよう温度制御したこと以外は、実施例3と同様にして、上記テンプレートを用いたパターン形成操作を12回、テンプレートの洗浄、および洗浄されたテンプレートを用いたパターン形成操作を1回行い、得られた硬化層を走査型電子顕微鏡で観察し、単位面積(25μm
2 )当たりのパターン欠陥数を測定した。結果を表2に示す。
【0055】
〈実施例9〉
テンプレートの洗浄において、温度制御手段によって、テンプレートをそのパターン面の温度が50℃となるよう温度制御したこと以外は、実施例3と同様にして、上記テンプレートを用いたパターン形成操作を12回、テンプレートの洗浄、および洗浄されたテンプレートを用いたパターン形成操作を1回行い、得られた硬化層を走査型電子顕微鏡で観察し、単位面積(25μm
2 )当たりのパターン欠陥数を測定した。結果を表2に示す。
【0056】
〈実施例10〉
テンプレートの洗浄において、温度制御手段によって、テンプレートをそのパターン面の温度が75℃となるよう温度制御したこと以外は、実施例3と同様にして、上記テンプレートを用いたパターン形成操作を12回、テンプレートの洗浄、および洗浄されたテンプレートを用いたパターン形成操作を1回行い、得られた硬化層を走査型電子顕微鏡で観察し、単位面積(25μm
2 )当たりのパターン欠陥数を測定した。結果を表2に示す。
【0057】
〈実施例11〉
テンプレートの洗浄において、温度制御手段によって、テンプレートをそのパターン面の温度が100℃となるよう温度制御したこと以外は、実施例3と同様にして、上記テンプレートを用いたパターン形成操作を12回、テンプレートの洗浄、および洗浄されたテンプレートを用いたパターン形成操作を1回行い、得られた硬化層を走査型電子顕微鏡で観察し、単位面積(25μm
2 )当たりのパターン欠陥数を測定した。結果を表2に示す。
【0058】
〈実施例12〉
テンプレートの洗浄において、温度制御手段によって、テンプレートをそのパターン面の温度が150℃となるよう温度制御したこと以外は、実施例3と同様にして、上記テンプレートを用いたパターン形成操作を12回、テンプレートの洗浄、および洗浄されたテンプレートを用いたパターン形成操作を1回行い、得られた硬化層を走査型電子顕微鏡で観察し、単位面積(25μm
2 )当たりのパターン欠陥数を測定した。結果を表2に示す。
【0059】
〈参考例3〉
テンプレートの洗浄において、温度制御手段によって、テンプレートをそのパターン面の温度が200℃となるよう温度制御したこと以外は、実施例3と同様にして、上記テンプレートを用いたパターン形成操作を12回、テンプレートの洗浄、および洗浄されたテンプレートを用いたパターン形成操作を1回行い、得られた硬化層を走査型電子顕微鏡で観察し、単位面積(25μm
2 )当たりのパターン欠陥数を測定した。結果を表2に示す。
【0060】
〈参考例4〉
テンプレートの洗浄において、温度制御手段によって、テンプレートをそのパターン面の温度が250℃となるよう温度制御したこと以外は、実施例3と同様にして、上記テンプレートを用いたパターン形成操作を12回、テンプレートの洗浄、および洗浄されたテンプレートを用いたパターン形成操作を1回行い、得られた硬化層を走査型電子顕微鏡で観察し、単位面積(25μm
2 )当たりのパターン欠陥数を測定した。結果を表2に示す。
【0061】
〈参考例5〉
テンプレートの洗浄において、温度制御手段によって、テンプレートをそのパターン面の温度が10℃となるよう温度制御したこと以外は、実施例1と同様にして、上記テンプレートを用いたパターン形成操作を12回、テンプレートの洗浄、および洗浄されたテンプレートを用いたパターン形成操作を1回行い、得られた硬化層を走査型電子顕微鏡で観察し、単位面積(25μm
2 )当たりのパターン欠陥数を測定した。結果を表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
表2には表1に示す実施例3を挿入している。表2の結果から明らかなように、乾燥空気の露点が−30℃のときにはテンプレートの洗浄において、テンプレートをそのパターン面の温度が25〜150℃となるよう温度制御することにより、テンプレートに残留したレジスト残渣が効率よく除去されるため、パターン欠陥が一層少ないパターンが形成されることが理解される。さらに、パターン面の温度が30〜150℃となるように加熱手段によって加熱することにより、パターン欠陥数を0個/25μm
2 とすることができる。
【0064】
参考例5については、実施例1に比べてテンプレートのパターン面の温度が低いことにより結露が生じたために、パターン欠陥数が急激に増加したものと推測できる。
【0065】
尚、表2における乾燥空気の露点が−30℃でのものについて(参考例5を除く)、露点が 10〜−110℃で行った場合も同様な結果であった。すなわち、テンプレートの温度が150℃まではパターン欠陥数が抑制されたが、200℃、250℃では急激にパターン欠陥数が増加した。