(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のものでは、結線部と樹脂モールド部との結合度を向上させる点について特に配慮されておらず、高い信頼性で樹脂モールドにより結線部を封止するのは困難である。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、樹脂モールド部が結線部を封止するときの信頼性を向上できる回転電機、固定子結合体、及び結線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、軸方向に延びる軸心を備えた回転軸と、前記回転軸に固定された回転子と、前記回転子の、径方向の外側に設けられ、複数の固定子巻線を備えた固定子と、前記複数の固定子巻線の、前記軸方向の一方側に設けられ、当該複数の固定子巻線の端部を結線する結線部と、前記結線部及び前記複数の固定子巻線を覆う樹脂モールド部と、を有
する回転電機であって、前記結線部は、前記複数の固定子巻線の前記端部と接続される複数の導電部材と、前記複数の導電部材の表面の少なくとも一部を被覆する絶縁部材と、を有し、前記絶縁部材は、前記軸方向一方側の樹脂モールド部に突出する突起部を備え、前記突起部は、前記軸方向一方側の端部が、前記樹脂モールド部の前記軸方向一方側の端面から露出しており、当該露出した部分に、前記結線部の結線態様、前記回転電機の種類、生産ロット、及び、製造時に使用した金型の種類、の少なくとも1つを表す識別表記部を設けた回転電機が適用される。
また、上記課題を解決するため、本発明の別の観点によれば、軸方向に延びる軸心を備えた回転軸と、前記回転軸に固定された回転子と、前記回転子の、径方向の外側に設けられ、複数の固定子巻線を備えた固定子と、前記複数の固定子巻線の、前記軸方向の一方側に設けられ、当該複数の固定子巻線の端部を結線する結線部と、前記結線部及び前記複数の固定子巻線を覆う樹脂モールド部と、を有し、前記結線部は、前記複数の固定子巻線の前記端部と接続される複数の導電部材と、前記複数の導電部材の表面の少なくとも一部を被覆する絶縁部材と、を有し、前記絶縁部材は、前記軸方向一方側の樹脂モールド部に突出する突起部を備え、前記突起部は、側面視が略等脚台形となるような、頂部に前記
樹脂モールド部からの露出部分としての平坦面のある略円錐形状を備えている回転電機が適用される。
また、上記課題を解決するため、本発明の別の観点によれば、軸方向に延びる軸心を備えた回転軸と、前記回転軸に固定された回転子と、前記回転子の、径方向の外側に設けられ、複数の固定子巻線を備えた固定子と、前記複数の固定子巻線の、前記軸方向の一方側に設けられ、当該複数の固定子巻線の端部を結線する結線部と、前記結線部及び前記複数の固定子巻線を覆う樹脂モールド部と、を有し、前記結線部は、前記複数の固定子巻線の前記端部と接続される複数の導電部材と、前記複数の導電部材の表面の少なくとも一部を被覆する絶縁部材と、を有し、前記絶縁部材は、前記軸方向一方側の樹脂モールド部に突出する突起部を備え、前記複数の導電部材は、同心円状に配置されるとともに、それぞれが円環状又は円弧状の形状を備えており、前記絶縁部材は、略円環状の形状を備えており、かつ、前記径方向に並んだ前記複数の導電部材を束ねるように当該径方向に延設される、バインド部を備えており、少なくとも1つの前記突起
部が、前記バインド部に設けられている回転電機が適用される
。
【0007】
また、上記課題を解決するため、本発明の別の観点によれば、複数の固定子巻線を備えた固定子と、前記複数の固定子巻線の、軸方向の一方側に設けられ、当該複数の固定子巻線の端部を結線する結線部と、前記結線部及び前記複数の固定子巻線を覆う樹脂モールド部と、を有し、前記結線部は、前記複数の固定子巻線の前記端部と接続される複数の導電部材と、前記複数の導電部材の表面の少なくとも一部を被覆する絶縁部材と、を有し、前記絶縁部材は、前記導電部材の前記軸方向の一方側を覆う部分に、前記軸方向一方側の樹脂モールド部に突出する突起部を備え
、前記突起部は、側面視が略等脚台形となるような、頂部に前記樹脂モールド部からの露出部分としての平坦面のある略円錐形状を備えている固定子結合体が適用される。
【0008】
また、上記課題を解決するため、本発明のさらに別の観点によれば、複数の固定子巻線の端部を結線するための結線基板であって、前記複数の固定子巻線の前記端部と接続される複数の導電部材と、前記複数の導電部材の表面の少なくとも一部を被覆する絶縁部材と、を有し、前記絶縁部材は、前記導電部材の軸方向の一方側を覆う部分に、樹脂固定用の突起部を備え
、前記突起部は、側面視が略等脚台形となるような、頂部に前記樹脂からの露出部分としての平坦面のある略円錐形状を備えている結線基板が適用される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、樹脂モールド部が結線部を封止するときの信頼性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0012】
<回転電機の全体構成>
図1及び
図2を用いて、本実施形態の回転電機1の全体構成について説明する。
図1及び
図2において、この例では、回転電機1は、三相交流電動機である。すなわち、回転電機1は、固定子2と回転子3を備えている。回転子3は、軸心kを備えた回転軸10の外周面に固定されている。
【0013】
回転子3は、ヨーク8と永久磁石9とを有している。回転軸10は、負荷側ブラケット11に外輪が嵌合された負荷側軸受12と、反負荷側ブラケット13に外輪が嵌合された反負荷側軸受14とにより回転自在に支持されている。
【0014】
固定子2は、回転子3の径方向外側に対向するようにフレーム4の内周面に設けられている。固定子2は、複数の積層鉄心体5と、複数の積層鉄心体5がそれぞれ挿通された複数のボビン6と、複数のボビン6にそれぞれ巻き回された複数の固定子巻線7とを有している。なお、この例では、固定子2において12個の積層鉄心体5及びボビン6が略円環状に配置され、各ボビン6に固定子巻線7が巻回されている(
図2参照)。
【0015】
各ボビン6は、積層鉄心体5と固定子巻線7とを電気的に絶縁するために、樹脂等の絶縁性材料で構成されている。複数のボビン6の反負荷側(軸方向一方側に相当。
図1中左側)には、円環状の結線基板100(結線部に相当)が設けられている。結線基板100は、複数の固定子巻線7の端部7aを所定の結線パターンで結線処理する。巻線端部7aは、半田Hにより1つの結線基板100に固定されている。結線基板100及び固定子巻線7は、樹脂モールド部15によって一体的に覆われている。
【0016】
<結線基板>
図3及び上記
図2に示すように、結線基板100は、固定子2の上記巻線端部7aと接続される、同心円状に配置された複数の円弧状(又は円環状)の導電部材110と、これら導電部材110の表面の少なくとも一部(詳細は後述)を被覆する略円環状の絶縁部材120とを有している。
【0017】
<導電部材>
図3及び
図2において、各導電部材110は半径方向に4重となるように略同心円状に配置されている。なお、各導電部材110は、詳細を後述するが、この例では、例えば単一の線材である被覆平角線を渦巻状に成型した後、例えば所定の箇所を分断し欠損させることによって、形成されている(欠損により形成された端部114を参照)。また、実際には被覆平角線の分断時に絶縁部材120についても欠損部が生じているが、
図3及び
図2では煩雑防止のため図示を省略している。
【0018】
最も内周側に配置された6つの導電部材110a〜110fは、渡り線用の導電部材であり、同心円R1の円周方向に沿って略等間隔に配置されている。導電部材110a〜110fの外周側に配置された2つの導電部材110n,110nは、中性点用の導電部材であり、同心円R2の円周方向に沿って配置されている。導電部材110n,110nのさらに外周側に配置された導電部材110u,110vは、それぞれU相用及びV相用の導電部材であり、同心円R3の円周方向に概略沿うように配置されている。最も外周側に配置された導電部材110wは、W相用の導電部材であり、同心円R4の円周方向に沿って配置されている。以下適宜、上述の各導電部材を、「渡り線用導電部材110a〜110f」、「中性点用導電部材110n」、「U相用導電部材110u」、「V相用導電部材110v」、「W相用導電部材110w」と呼称する。またそれらを区別しないときは、以下適宜、単に「導電部材110」と総称する。
【0019】
U相用導電部材110uは、その大部分が同心円R3に沿って配置されているが、一部が同心円R4に沿って配置されている。すなわち、U相用導電部材110uは、同心円R3に沿った内周部110uiと、同心円R4に沿った外周部110uoと、内周部110uiの接線X方向に直線状に延びる直線部110ucと、を有している。直線部110ucは、上記同心円状に配置され互いに曲率半径の異なる2つの円弧状の内周部110uiと外周部110uoとの間に、一体的に設けられている。
【0020】
同様に、V相用導電部材110vは、その大部分が同心円R3に沿って配置されているが、一部が同心円R2に沿って配置されている。すなわち、V相用導電部材110vは、同心円R2に沿った内周部110viと、同心円R3に沿った外周部110voと、内周部110viの接線Y方向に直線状に延びる直線部110vcと、を有している。直線部110vcは、上記同心円状に配置され互いに曲率半径の異なる2つの円弧状の内周部110viと外周部110voとの間に、一体的に設けられている。
【0021】
このとき、導電部材110は、
図4に示すように、この例では断面形状が略四角形となっており、導電材111と、これを被覆する被覆材112と、を有している。
図4(
図3における後述の半田Hも参照)に示すように、各導電部材110の長手方向両端部における幅方向略中心位置には、巻線端部7aを回転軸方向に貫通させる貫通孔113が設けられている。この貫通孔113を貫通した巻線端部7aは、導電部材110の上記反負荷側の表面に、半田Hによって固定されている(半田付け部に相当)。すなわち、導電部材110における貫通孔113の周囲は被覆材112が剥離されており、当該剥離部分に半田Hが設けられている。
【0022】
<絶縁部材>
絶縁部材120は、例えば樹脂材料によるインサート成型によって形成された円環状の部材である。この絶縁部材120は、各導電部材110を回転軸方向に略垂直である同一平面上となるように所定の位置に固定しつつ、各導電部材110間の絶縁を確保する。
【0023】
また、絶縁部材120は、
図5及び上記
図4に示すように、導電部材110の上記貫通孔113に対応する位置にテーパ孔121を有している。このテーパ孔121は、絶縁部材120の上記負荷側の表面122に設けられている。またテーパ孔は、この表面122から導電部材110の貫通孔113に向けて、孔径が徐々に小さくなるように形成されている。固定子5の上記巻線端部7aは、このテーパ孔121を介して導電部材110の貫通孔113に固定子5側から挿入される。
【0024】
<突起部>
そして、本実施形態の特徴として、絶縁部材120には、上記
図2〜
図4に示すように、周方向の複数個所(この例では6か所)に、軸方向一方側(反負荷側)の樹脂モールド部15に突出する樹脂固定用の突起部124が備えられている。上記複数箇所の突起部124のうち、少なくとも1つの突起部(この例では径方向に対向する1組の突起部124,124)は、バインド部125を一体に備えている。バインド部125は、径方向に並んだ複数の導電部材110を束ねるように、絶縁部材120の内周側から外周側までにわたって径方向に設けられている。言い替えれば、絶縁部材120は、突起部124及びバインド部125の部分では、導電部材110の上記反負荷側の表面を被覆するが、突起部124及びバインド部125以外の部分では、導電部材110の上記反負荷側の表面を露出させている。なお、
図2、
図3、及び
図5では図示を省略しているが、実際には、これら突起部124は、後述の端部124aを除き、
図1に示した樹脂モールド部15によって覆われている(
図4参照)。また、
図4及び
図2に示すように、実際には各導電部材110は絶縁部材120によって径方向に所定の隙間を有するように配置されているが、
図3では煩雑防止のためにこの隙間の図示を省略している。
【0025】
また、突起部124は、側面視が略等脚台形となるような、頂部に平坦面のある略円錐形状を備えている(
図4参照)。前述のように突起部124は大部分が上記樹脂モールド部15によって覆われているが、突起部124の頂部の平坦面である、反負荷側の端部124aだけは、樹脂モールド部15に被覆されず、当該樹脂モールド部15の上記反負荷側の端部15a(
図4参照)から露出している。そして、少なくとも1つの適宜の突起部124(この例ではバインド部125を備えた突起部124)の上記端部124aには、
図3中の拡大図に示すように、識別表記(この例では文字「F1」)が施されている(識別表記部に相当)。この識別表記は、例えば、結線基板100の結線態様(詳細は後述)、回転電機1の種類、生産ロット、製造時に使用した金型(詳細は後述)の種類、等のうち少なくとも1つを表すのに使用することができる。
【0026】
<結線パターン>
次に、
図6及び
図7を用いて上記結線基板100による結線パターンについて説明する。なお、
図6及び
図7に図示する各巻線の符号はそれぞれ対応関係にあり、ここでの説明では例えばU1に対応する固定子巻線7については巻線U1と呼称する。
【0027】
図6及び
図7に示すように、結線基板100は、三相各相をその一端の中性点で接続するスター結線を2系統有する結線パターンで、固定子2の巻線端部7aを結線する。具体的には、U相の一方側の系統である巻線U1及び巻線U2の一方側の端部7a同士が上記渡り線用導電部材110cにより接続され、U相の他方側の系統である巻線U3及び巻線U4の一方側の端部7a同士が上記渡り線用導電部材110fにより接続されている。同様に、V相の一方側の系統である巻線V1及び巻線V2の一方側の端部7a同士が上記渡り線用導電部材110eにより接続され、V相の他方側の系統である巻線V3及び巻線V4の一方側の端部7a同士が上記渡り線用導電部材110bにより接続されている。また同様に、W相の一方側の系統である巻線W1及び巻線W2の一方側の端部7a同士が上記渡り線用導電部材110dにより接続され、W相の他方側の系統である巻線W3及び巻線W4の一方側の端部7a同士が上記渡り線用導電部材110aにより接続されている。
【0028】
また、巻線U2,V2,W2の他方側の端部7a同士が上記中性点用導電部材110nにより接続されており、同様に巻線U4,V4,W4の他方側の端部7a同士が中性点用導電部材110nにより接続されている。また、巻線U1の他方側の端部7aと巻線U3の他方側の端部7aとが上記U相用導電部材110uを介してU相に接続されており、巻線V1の他方側の端部7aと巻線V3の他方側の端部7aとが上記V相用導電部材110vを介してV相に接続されており、巻線W1の他方側の端部7aと巻線W3の他方側の端部7aとが上記W相用導電部材110wを介してW相に接続されている。
【0029】
次に、上記回転電機1の製造手順について説明する。
【0030】
<結線基板の製造>
まず、単一の線材である被覆平角線を、渦巻形状に成型する。次に、渦巻状に成型した被覆平角線を金型に固定して絶縁材の樹脂材料をインサート成型し、突起部124及びバインド部125の部分で被覆平角線を絶縁材で被覆するとともに、それ以外の部分では被覆平角線の少なくとも一方側(上記の反負荷側に対応)表面が露出されるようにして被覆する。これにより、渦巻状の被覆平角線を被覆した未分断の絶縁部材120が形成される。
【0031】
次に、絶縁部材120で被覆した被覆平角線を、この例ではパンチプレスを用いたプレス加工により、所定の円周方向位置で分断する。このとき同時に、上記パンチプレスによるプレス加工によって、巻線端部7aを回転軸方向に貫通させる貫通孔113を、各導電部材110の長手方向両端部における幅方向略中心に設ける。
【0032】
上記により、被覆平角線及び絶縁部材120が部分的に欠損し、かつ各導電部材110の長手方向両端部に巻線端部7aとの結線位置が位置するように、各導電部材110が形成される。なおこのとき、被覆平角線は各導電部材110同士の絶縁が確保できる程度に分断されていればよい。また、欠損部は形状や長さを限定する必要はなく、例えば単なる丸孔状あるいは四角孔状の長さの短い欠損部としてもよい。また、パンチプレス以外のドリル等の工具を用いて分断してもよい。
【0033】
その後、各導電部材110における上記貫通孔113の周囲の被覆材112をサンドペーパーやナイフ等を用いて剥離する。また、絶縁部材120の反結線側の表面122における貫通孔113に対応する位置に、ドリル等を用いてテーパ孔121を設ける。以上の工程により、結線基板100が完成する。
【0034】
<結線基板と固定子巻線との結線>
次に、固定子2に装着したボビン6の各固定子巻線7の巻き始めと巻き終わりに対応する2つの端部7aを、それぞれ上記軸心kの方向に沿って反負荷側に引き出す。そして、引き出した各巻線端部7aを、絶縁部材120に設けた上記テーパ孔121を介して、対応する導電部材110の貫通孔113にそれぞれ貫通させる。その後、結線基板100を固定子2のボビン6に固定し、巻線端部7aが各導電部材110の結線側表面より若干突出する程度の長さとなるように、その不要な部分を切断する。そして、半田付けを行って各巻線端部7aを半田Hにより各導電部材110にそれぞれ固定する。以上のようにして、結線基板100と固定子2の複数の固定子巻線7との結線が終了し、結線基板100と固定子2との組み立て体20が構築される(
図2及び後述の
図8参照)。
【0035】
<樹脂モールドによる固定子結合体の形成>
その後、
図8に示すように、上記組み立て体20を、例えば、上記反負荷側(すなわち結線基板100の側)を上方に、上記負荷側を下方にした状態とし、上記略円環状に配置された上記12個の積層鉄心体5の径方向内周側に、例えば略円筒形状の金型130を(当該金型130の径方向外周部が接するように)据え付ける。また、上記金型130及び上記固定子2のフレーム4の上部に、上型130Aを据え付ける。これにより、金型130と、上型130Aと、フレーム4との内側には、キャビティー132が形成される。
【0036】
このとき、結線基板100の絶縁部材120に設けられた上記突起部124は、上記端部124aと上型130Aの壁面130aとの間に、微小間隙δ(例えばδ=0.5mm)が介在するような、位置関係となっている。その後、反負荷側(
図8中下方)から、金型130、上型130A、フレーム4で囲まれる上記キャビティー132内に、成型用の樹脂135を流入させ、キャビティー132内に樹脂135を満たす。このとき、下方から充填されていく樹脂135によって絶縁部材120が上方側へ持ち上げられる場合があるが、持ち上げられていく絶縁部材120は、上記突起124の端部124aがその上方側に位置する上型130Aの上記壁面130aに当接することで、それ以降の上記持ち上がりが防止される。なお、微小間隙δ分の変位は、弾性体である固定子巻線7が変形することによって吸収する。
【0037】
以上のようにしてキャビティー132内に樹脂135が注入されることで、結線基板100及び固定子巻線7の周囲すべてに樹脂135が充填され、その樹脂135が固化することで上記樹脂モールド部15(
図1参照)が形成される。この結果、結線基板100の上記突起部124の端部124aが露出部分として残存した状態で、結線基板100と固定子巻線7とが樹脂モールド部15で一体的に被覆される。このようにして樹脂モールド部15によって被覆された上記組み立て体20(固定子2、結線基板100、及び樹脂モールド部15から構成される)によって、固定子結合体が構築される。
【0038】
なお、上記工程のうち少なくとも一部(例えば上記結線基板と固定子巻線との結線工程や樹脂モールドによる固定子結合体の形成工程等)は、例えばロボットにより自動化することも可能である。
【0039】
<回転電機の完成>
その後、上記固定子結合体に対し、負荷側ブラケット11及び反負荷側ブラケット13を取り付け、さらに負荷側ブラケット11に設けた負荷側軸受12と反負荷側ブラケット13に設けた反負荷側軸受14とに対し、回転子3を取り付けた回転軸10を取り付けることにより、回転電機1が完成する。
【0040】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の回転電機1の製造時においては、結線基板100と複数の固定子巻線7との組み立て体20が据え付けられた状態で、キャビティー内に成型用の樹脂135が注入され、上記結線基板100及び固定子巻線7の周囲に樹脂135が充填されて、上記樹脂モールド部15が形成される。この樹脂135の充填により、複数の導電部材110及び絶縁部材120の周囲にも樹脂135が充填され、樹脂モールド部15が形成される。このとき、本実施形態においては、上記結線基板100の絶縁部材120が、樹脂固定用の突起部124を少なくとも1つ備えている。突起部124は、反負荷側の樹脂モールド部15に突出していることから、絶縁部材120の他の部位よりも反負荷側に突出している。言い替えれば、絶縁部材120は、上記突起部124と上記他の部位とによって、上記軸心kの方向への凹凸形状を構成していることになる。これにより、絶縁部材120が、上記のような凹凸形状のない平板形状である場合に比べ、絶縁部材120とその周囲の上記樹脂モールド部15との接触面積が増大する。この結果、樹脂モールド部15と絶縁部材120との結合度(いわゆる食いつき)が向上するので、樹脂135が固化した後に樹脂モールド部15が結線基板100を覆い封止するときの信頼性を向上することができる。
【0041】
また、本実施形態では特に、突起部124の端部214aが、樹脂モールド部15の上記端面15aから露出している。そして、当該露出した端部214aが、結線基板100の結線態様、回転電機1の種類、生産ロット、及び、製造時に使用した金型の種類、の少なくとも1つを表す識別表記部として機能している。これには、以下のような意義がある。
【0042】
すなわち、上述のように結線基板100と複数の固定子巻線7とが樹脂モールド部15によって覆われる構造の場合、成形が終了した後は、樹脂モールド部15の内部に封止された上記結線基板100及び固定子巻線7は外からは視認できない。この結果、互いに異なる複数種類の回転電機1において上記のような樹脂モールド構造を共通に採用した場合、互いに異なる種類であることを、外観上識別できない恐れがある。そこで本実施形態では、絶縁部材120に設けた上記突起部124を、樹脂モールド部15の端面15aから露出させる。そして、その突起部124の端部124aに設けた識別表記において、例えば回転電機1の種類を表記する。これにより、上記とは異なり、成型終了後であっても、上記の互いに異なる種類の回転電機1であることをそれぞれ識別することができ、利便性を向上することができる。なお、前述したように、結線基板100の結線態様や、生産ロットや、製造時に使用した金型の種類、等を表記した場合も、上記同様、識別性を向上し、利便性を高めることができる。
【0043】
また、本実施形態では特に、突起部124は、頂部に上記平坦面の端部124aが存在する、側面視が略等脚台形となる略円錐形状を備えている。例えば突起部124を円筒形状とした場合には、突起部124を樹脂モールド部15から離間させる方向に(すなわち上記円筒形状の軸方向に)外力が作用した場合、当該外力に抗して樹脂モールド部15との結合を維持しようとする機能が非常に小さくなる。これに対して、本実施形態では、略円錐形状とすることにより、前述の接触面積増大効果と併せ、上記樹脂モールド部15との結合維持機能を高めることができる。
【0044】
また、回転電機1の製造工程において、上記のように樹脂モールド部15を形成する前に例えば結線基板100が単独で取り扱われる場合、突起部124は他の部位に比べて突出していることから、何らかの周囲物と当該突起部124が干渉することも考えられる。例えば突起部124を円筒形状とした場合には、上記の干渉が生じた場合に円筒形状の外周底部付近に応力集中が生じ、突起部124の折損や破損等が生じる恐れがある。これに対して、本実施形態では、上記のように突起部124を略円錐形状とすることにより、上記干渉が生じたときであっても上記略円錐形状の斜めの縁部に沿って応力を逃がし、上記応力集中を回避することができる。この結果、突起部124の健全性を高めることができる。
【0045】
あるいは、上述したように製造工程の一部をロボットにより自動化する場合、例えばロボットハンド等が上記突起部124を把持し、結線基板100を搬送したり移動させる場合もあり得る。この場合に、例えば突起部124を円筒形状とした場合には、ロボットハンドが上記突起部124を把持するときの互いの位置の位置決めを非常に高精度に行わなければならない。これに対し、本実施形態では、突起部124を斜面を有する上記円錐形状とすることで、位置決めに若干の誤差があったとしても、確実に把持を行うことができる。これにより、結線基板100の取り扱い性が向上する。
【0046】
さらに、前述のように、結線基板100が反負荷側を上方にして据え付けられ、樹脂135が注入されていくとき、下方から充填されていく樹脂135によって絶縁部材120が上方側へ持ち上げられる。本実施形態では、上記持ち上がり時において、突起部124がもっとも先に上記上型130Aの壁面130aに当接することで、それ以降の持ち上がりが防止される。このとき、突起部124の端部124aが平坦面であることにより、上記持ち上がり挙動を、当該平坦面の端部124aにおける面圧として均一に受圧することができる。これにより、上記持ち上がりを確実に防止することができる。
【0047】
また、本実施形態では特に、突起部124が、少なくとも、絶縁部材120の、径方向に対向する2箇所に設けられている。これにより、上記のように製造工程において突起部124を把持して結線基板100を取り扱うときに、2箇所の突起部124によりバランスよく安定的に把持することができ、確実性を向上することができる。特に、ロボットハンドが吸着により把持する場合に効果的である。また、上記の取り扱いや種々の加工(例えば前述のプレス加工等)等を行うときに、径方向に対向する2箇所の突起部124,124を用いることで、位置決め用の原点出しを容易に行うこともできる。
【0048】
また、本実施形態では特に、径方向に並んだ上記複数の導電部材110を束ねるように当該径方向にバインド部125が延設される。これにより、複数の導電部材110を相互に強く連結し、それらの一体的な剛性を向上することができる。
【0049】
また、本実施形態では特に、少なくとも1つの突起部124が、上記バインド部125に設けられている。これにより、前述したように例えば製造工程においてロボットハンド等により結線基板100を搬送したり移動させる場合に、高い剛性を備えた上記突起部124を把持することで、安定的かつ確実に搬送等を行うことができる。
【0050】
また、本実施形態では特に、貫通孔121を貫通した固定子巻線7の端部7aが、導電部材110の表面において、半田Hによって固定されている。すなわち、固定子巻線7の端部7aは、導電部材110の貫通孔121を軸方向に貫通した後、反負荷側の表面において半田Hを介して導電部材110に接続される。この結果、従来構造のように、端子部材を別途設けたり、導電部材110を各相ごとに軸方向にずらして配置したりする必要はなくなるので、結線基板100の軸方向寸法を小さくすることができる。この結果、回転電機1を小型化することができる。
【0051】
またこのように半田Hによる固定構造とした場合、前述のように、樹脂成型時の樹脂135の注入で絶縁部材120が持ち上げられる場合、そのままでは上記持ち上がり挙動による力が半田Hに作用し耐久性が低下する恐れがある。本実施形態では、上述したように突起部124がもっとも先に上型130Aの壁面130aに当接して上記持ち上がりが防止されるので、上記半田Hの耐久性の低下を防止し、導電性を確実に良好に維持することができる。
【0052】
また、本実施形態では特に、複数の導電部材110は、パンチプレスを用いたプレス加工により周方向複数箇所の所定の欠損部で分断された導電性の線材を、径方向に多重に配置して構成されている。これにより、複数の導電部材110を形成するために周方向複数箇所で分断を行う場合に、通常の切削加工等に比べ、能率良く迅速に分断を行うことができる。
【0053】
<変形例>
なお、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態ではスター結線を2系統有する結線パターンである場合を一例として説明したが、これに限るものではなく、被覆平角線の巻数や分断位置、結線位置を適宜変更することで、Δ結線やV結線等の種々の結線パターンに対応することができる。
【0055】
また以上では、回転電機1が12個の固定子巻線7を有する三相交流電動機である場合を一例として説明したが、固定子巻線7の個数は適宜変更可能であり、また単相交流電動機や直流電動機等、三相交流以外の電動機にも適用可能である。すなわち、電動機の型は限定されず、固定子巻線7の端部7aを所定の結線パターンで結線処理するものであれば、種々の電動機に適用することができる。
【0056】
また以上では、導電部材110に被覆材112を有する被覆平角線を用いたが、被覆材112を有しない平角線を用いてもよい。また、必ずしも平角線である必要はなく、断面形状が四角形以外の線(丸線等)を用いてもよい。
【0057】
また以上では、回転電機1が、回転子3を固定子2の内側に備えたインナーロータ型である場合を一例として説明したが、回転子3を固定子2の外側に備えたアウターロータ型の回転電機に対しても適用可能である。さらに、回転電機1が電動機である場合を一例として説明したが、回転電機1が発電機である場合にも適用することができる。
【0058】
また以上では、複数の突起部124が略同一形状で略同一高さである場合を一例として説明したが、突起部124とは別に、異なる形状・高さの突起部を設けてもよい。例えば、別途、突起部124より細く高い突起部を2ヶ所設け、突起部124と同様の機能を備えさせることに加え、リードの配線を一定位置に保持する役割を兼ねさせてもよい。
【0059】
なお、金型から固定子結合体を外す際、金型脱離用のイジェクトピンを突起部124の端部124aに接触させてもよい。これにより、イジェクトピンが被覆平角線に接触することによる被覆材112のキズ防止を図ることができる(結線板の絶縁品質の確保)。また、端部124aを押すことで、安定した金型脱離が可能となる。さらに、金型脱離時の結線板100の変形(ソリ)の抑制を図ることもできる。
【0060】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0061】
その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。