特許第5776665号(P5776665)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776665
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】シールドコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/648 20060101AFI20150820BHJP
   H01R 13/639 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   H01R13/648
   H01R13/639 Z
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-231676(P2012-231676)
(22)【出願日】2012年10月19日
(65)【公開番号】特開2014-86150(P2014-86150A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2014年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇野 雅文
(72)【発明者】
【氏名】高田 憲作
(72)【発明者】
【氏名】辻井 芳朋
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/124801(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/016272(WO,A1)
【文献】 特開2003−115357(JP,A)
【文献】 特開2012−038450(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/067973(WO,A1)
【文献】 特開2012−104398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/648 − 13/6599
H01R 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器に設けられた機器側コネクタに嵌合されるシールドコネクタであって、
一端側が前記機器側コネクタに設けられた機器側ハウジングに嵌合され、他端側から電線が嵌合方向と交差する方向に導入されるハウジングと、
前記電線と接続状態とされ、前記機器側ハウジングに収容された機器側端子と接続される端子と、
板状の取付片を有して前記ハウジングを覆うシールドシェルとを備え、
前記取付片は、前記ハウジングの一端側に配されて前記機器のシールドケースに固定されるようになっており、
前記シールドシェルおよび前記ハウジングは、前記ハウジングの他端側に配されて、前記シールドシェルおよび前記ハウジングを前記電線の導入方向と交差する方向に貫通して前記シールドケースに締結される締結部材によって固定されているシールドコネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングには、幅方向に並んだ一対の前記電線が導入されており、
一対の前記電線の端末には、伸縮性を有して前記機器側コネクタ側に延びる一対の導電部材が一対の中継端子を介して接続されており、
前記中継端子には、一端に前記導電部材と接続状態となる導電部材側接続部が設けられ、他端に前記電線と接続状態となる電線側接続部が設けられており、
一対の前記中継端子は、両電線側接続部の間の長さが両導電部材側接続部の間の長さよりも大きくなるように幅方向に向かってそれぞれ屈曲されており、
前記締結部材は、一対の前記電線の間に配されている請求項1記載のシールドコネクタ。
【請求項3】
前記取付片は、幅方向に横長に形成されており、
前記取付片の幅方向両側には、ボルトによって締結されるボルト締結部が設けられている請求項1または請求項2記載のシールドコネクタ。
【請求項4】
前記シールドシェルは、前記ハウジングの上部を覆うアッパーシェルと、前記ハウジングの下部を覆うロアシェルとを組み合わせて構成されており、
前記アッパーシェルと前記ロアシェルとは、前記締結部材によって共締めされることで一体に組み合わされている請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のシールドコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドシェルを備えたシールドコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシールドコネクタの一例として、特許文献1に記載のものが知られている。このシールドコネクタは、電線の端末に接続された電線側端子と、この電線側端子を収容して機器に設けられた機器側コネクタに嵌合されるハウジングと、ハウジングを覆うシールドシェルとを備えて構成されている。電線側端子は、シールドシェルの下側開口から挿入されてハウジング内に収容されており、ハウジングが機器側コネクタに嵌合されると、電線側端子と機器側コネクタに設けられた機器側端子とが接続されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−119120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のシールドコネクタでは、例えば、シールドシェルに設けられた取付片を、機器側コネクタが収容されたシールドケースにボルトなどによって固定することにより、シールドシェルがシールドケースに電気的に接続されて固定される。このため、シールドコネクタが車両のボディに固定された電線の端末に装着され、車両の振動に伴って電線が大きく振動すると、この振動が電線の端末に装着されたシールドコネクタにも伝わり、シールドケースに固定された固定片が撓むなどしてシールドコネクタががたついてしまう。そして、このがたつきに起因して端子間で不具合が生じてしまう。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電線の振動等に起因して端子間で生じる不具合を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、機器に設けられた機器側コネクタに嵌合されるシールドコネクタであって、一端側が前記機器側コネクタに設けられた機器側ハウジングに嵌合され、他端側から電線が嵌合方向と交差する方向に導入されるハウジングと、前記電線と接続状態とされ、前記機器側コネクタに設けられた機器側端子と接続される端子と、板状の取付片を有して前記ハウジングを覆うシールドシェルとを備え、前記取付片は、前記ハウジングの一端側に配されて前記機器のシールドケースに固定されるようになっており、前記シールドシェルおよび前記ハウジングは、前記ハウジングの他端側に配されて、前記シールドシェルおよび前記ハウジングを前記電線の導入方向と交差する方向に貫通して前記シールドケースに締結される締結部材によって固定されているところに特徴を有する。
このような構成のシールドコネクタによると、取付片だけでなく、シールドシェルとハウジングとを貫通する締結部材によって両部材を固定しているので、取付片が撓むなどしてシールドコネクタががたつくことを防ぐことができる。また、ハウジングに電線が導入される他端側において電線の導入方向と交差する方向に締結部材が締結されているから、電線の振動がシールドコネクタに伝わる初期の位置で振動を遮断することができる。これにより、電線の振動等に起因して端子間で生じる不具合を抑制することができる。
【0007】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
前記ハウジングには、幅方向に並んだ一対の前記電線が導入されており、一対の前記電線の端末には、伸縮性を有して前記機器側コネクタ側に延びる一対の導電部材が一対の中継端子を介して接続されており、前記中継端子には、一端に前記導電部材と接続状態となる導電部材側接続部が設けられ、他端に前記電線と接続状態となる電線側接続部が設けられており、一対の前記中継端子は、両電線側接続部の間の長さが両導電部材側接続部の間の長さよりも大きくなるように幅方向に向かってそれぞれ屈曲されており、前記締結部材は、一対の前記電線の間に配されている構成としてもよい。
【0008】
このような構成によると、各電線の端末に伸縮性を有する導電部材が接続されているから、電線からの振動を導電部材によって吸収することができる。これにより、電線の振動等に起因して両端子間で生じる不具合を抑制することができる。
また、電線の端末に導電部材が中継端子を介して接続される場合、例えば、導電部材に接続された中継端子を、機器側コネクタ側から電線が導入される方向に屈曲させた後、中継端子と電線に接続された端子とをボルトなどによって締結すると、電線が導入される方向に中継端子が屈曲される部分と、中継端子と端子とが接続される部分とが電線の導入方向に並ぶことになる。このため、電線が導入される方向にハウジングが大きくなってしまい、電線が導入される方向にハウジングを小さくしようとする場合には不利となってしまう。
ところが、上記の構成によると、両電線側接続部の間の長さが両導電部材側接続部の間の長さよりも大きくなるように一対の中継端子が幅方向に向かってそれぞれ屈曲されているから、中継端子と端子とが接続される部分と、中継端子が屈曲される部分とを幅方向に並べて配置することができる。これにより、中継端子と端子とが接続される部分と中継端子が屈曲される部分とが電線の導入方向に並ぶ場合に比べて、電線が導入される方向にハウジングを大きくなることを防ぐことができる。
また、電線側接続部が互いに離れるように中継端子を幅方向に屈曲させることにより、一対の電線間にデッドスペースが生じることになるが、このデッドスペースを利用してハウジングに締結部材を貫通させることができるので、締結部材を貫通させる部分をハウジングに別途設ける必要がなく、ハウジングがさらに大型化することを防ぐことができる。
【0009】
前記取付片は、幅方向に横長に形成されており、前記取付片の幅方向両側には、ボルトによって締結されるボルト締結部が設けられている構成としてもよい。
このような構成によると、ハウジングの一端側における幅方向両側の2箇所とハウジングの他端側における幅方向略中央部の1箇所の合計3箇所においてシールドシェルをバランスよくシールドケースに固定しているので、シールドシェルががたつくことを確実に防ぐことができる。
【0010】
前記シールドシェルは、前記ハウジングの上部を覆うアッパーシェルと、前記ハウジングの下部を覆うロアシェルとを組み合わせて構成されており、前記アッパーシェルと前記ロアシェルとは、前記締結部材によって共締めされることで一体に組み合わされている構成としてもよい。
このような構成によると、シールドシェルをシールドケースに固定する締結部材によって、アッパーシェルとロアシェルとを一体に組み合わせて固定することができるので、例えば、アッパーシェルとロアシェルとを互いに固定する固定機構を別途設ける必要がなく、シールドシェルの構造を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電線の振動等に起因して端子間で生じる不具合を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】機器のシールドケースにシールドコネクタを固定した状態を斜め前方から見た斜視図
図2】同平面図
図3】同正面図
図4】同側面図
図5】同背面図
図6】同底面図
図7】シールドコネクタの分解斜視図
図8】アッパーシェルおよびカバーを取り外した状態のシールドコネクタの背面図
図9図3のA−A線断面図
図10図3のB−B線断面図
図11図3のC−C線断面図
図12図4のD−D線断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
本発明の実施形態について図1乃至図12を参照して説明する。
【0014】
本実施形態は、機器(例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両のインバータやモータ等)のシールドケース100に固定されるシールドコネクタ10を例示している。シールドケース100の内部には、図11に示すように、シールドコネクタ10と嵌合可能な機器側コネクタ110がシールドコネクタ10と対向して配置されている。なお、以下の説明において、上下方向は、図3の上下方向を基準とする。また、前後方向については、図4の左右方向を基準とし、左方(機器側コネクタ110との嵌合方向)を前方とし、右方を後方として説明する。
【0015】
機器は、導電性材料からなるシールドケース100の内部(図1におけるシールドケース100の左手前側がシールドケース100の内部側となる)に機器本体(図示せず)を収容したものであり、シールドケース100は、その内外を貫通する形態で開口してなる取付孔101を有している。なお、機器については、シールドケース100の一部と機器側コネクタ110のみを図示し、他の部分は図面上省略している。
シールドケース100における取付孔101の上方には、図7に示すように、幅方向に並ぶ一対の上側締結孔102が形成されている。一対の上側締結孔102は、取付孔101の上方に形成された水平面103において、上方に開口して形成されており、図4および図10に示すように、ボルトBTが締結されるようになっている。
【0016】
機器側コネクタ110は、図11に示すように、合成樹脂製の機器側ハウジング111と、この機器側ハウジング111から突出して設けられたタブ状の機器側端子112とを備えて構成されている。
【0017】
シールドコネクタ10は、図7に示すように、合成樹脂製のハウジング20と、ハウジング20内に収容される一対の導電部材40と、ハウジング20内に導入される一対の電線50と、ハウジング20を覆うシールドシェル60とを備えて構成されている。
【0018】
各導電部材40は、少なくとも軸方向に伸縮可能に形成された導電性の伸縮性導体41と、伸縮性導体41の前端に接続された雌型端子(「端子」の一例)42とを備えて構成されている。
雌型端子42は、機器側コネクタ110の機器側端子112に対して接続される角筒状の端子接続部44と、この端子接続部44の後方に連なって伸縮性導体41に圧着されるバレル部45とを備えて構成されている。
伸縮性導体41は、柔軟な導体であって、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金製の金属細線がメッシュ状に編み込まれた編組線が用いられている。なお、アルミニウム等以外にも銅又は銅合金の金属細線や、他の可撓性を有する金属を用いることが可能であり、また、編組線以外にも、電線の導体(撚り線等)や、銅箔等の可撓性を有する種々の導電部材を使用することができる。
【0019】
電線50は、図7および図12に示すように、何れも複数の金属素線からなる芯線51を絶縁被覆によって覆った形態とされており、この電線50の端末において露出した芯線51には、LA端子52が接続されている。LA端子52は、ボルトBTが挿通される丸型接続部53と、丸型接続部53の下方に連なって電線50の芯線51に圧着される電線固着部54とを備えて構成されている。
【0020】
ハウジング20は、図7および図10に示すように、側面視略L字状をなしており、ハウジング20の前端部が機器側コネクタ110に嵌合可能とされ、ハウジング20の下端部から一対の電線50が導入されている。また、ハウジング20は、機器側ハウジング111に嵌合可能な一対のハウジング嵌合部21と、シールドケース100の取付孔101に嵌合可能なケース嵌合部22と、二本の電線50が下方から幅方向に横並びに導入される電線導入部23と、ケース嵌合部22と電線導入部23とをL字状に連結する連結部24とを備えて構成されている。
また、ハウジング20内には、ハウジング嵌合部21からケース嵌合部22および連結部24を経て電線導入部23にまで亘る一対のキャビティ25が形成されており、ケース嵌合部22から電線導入部23の範囲における一対のキャビティ25は、ケース嵌合部22と連結部24と電線導入部23とに共通して形成された隔壁26によって幅方向に横並びとなるように仕切られている。
【0021】
一対のハウジング嵌合部21は幅方向に横並びに設けられている。ハウジング嵌合部21のキャビティ25内には、図9に示すように、導電部材40の雌型端子42がそれぞれ収容されており、雌型端子42は、キャビティ25内に設けられたランス21Aによって抜け止めされた状態に保持されている。そして、一対のハウジング嵌合部21と機器側ハウジング111とが嵌合されると、図11に示すように、雌型端子42の端子接続部44内に機器側端子112が進入し、雌型端子42と機器側端子112とが電気的に接続される。
また、ハウジング嵌合部21のキャビティ25からは伸縮性導体41が後方にそれぞれ引き出されており、一対の伸縮性導体41は、ケース嵌合部22のキャビティ25内を前後方向に挿通されて連結部24のキャビティ25内まで延びている。
【0022】
ケース嵌合部22は、図3に示すように、幅方向に横長な円筒形状をなしており、ケース嵌合部22の外周面には、図7に示すように、シールリング27が外嵌されている。シールリング27は、ケース嵌合部22をシールドケース100の取付孔101に嵌合させた際に、図9乃至図11に示すように、取付孔101の内周面とケース嵌合部22の外周面との間をシールするようになっている。
【0023】
電線導入部23は、図12に示すように、幅方向に横長で上下方向に延びる形態をなしており、電線導入部23内の幅方向両側に上下方向に延びるキャビティ25が形成されている。また、電線導入部23における一対のキャビティ25間の隔壁26は、ケース嵌合部22や連結部24の隔壁26に比べて、幅広に形成されている。
【0024】
電線導入部23の各キャビティ25内には、図11および図12に示すように、環状のゴム栓Gおよび環状のゴム栓押さえG1が外嵌された電線50が下方からそれぞれ導入されている。ゴム栓Gは、電線50の外周面とキャビティ25の内周面とに全周に亘って密着することにより、電線導入部23からキャビティ25内に水などが浸入しないように保護しつつ、ゴム栓押さえG1によって抜け止めされている。また、電線導入部23内に下方から導入された電線50は、連結部24まで延びており、電線50のLA端子52が連結部24のキャビティ25内に導入された状態となっている。
【0025】
連結部24のキャビティ25内には、図9および図12に示すように、幅方向横並びする一対の端子固定部28設けられている。各端子固定部28には、固定ナット29が後方からそれぞれ圧入されており、固定ナット29の後面には、伸縮性導体41の後端部に接続された中継端子43と、電線50のLA端子52とがそれぞれ配されている。
各中継端子43は、一端に伸縮性導体41の後端部に圧着接続される導電部材側接続部47が設けられ、他端に固定ナット29に載置されてボルトBTが挿通される電線側接続部46が設けられている。また、両中継端子43は、導電部材側接続部47から後方に延びて、電線側接続部46が互いに離れた配置となるように電線側接続部46と導電部材側接続部47との間を幅方向外側に略直角に折り曲げた形態とされており、両電線側接続部46間の幅方向の長さは両導電部材側接続部47間の幅方向の長さよりも大きくなっている。
【0026】
そして、中継端子43の電線側接続部46とLA端子52の丸型接続部53とを固定ナット29の後面に重ねて配置し、電線側接続部46と丸型接続部53にボルトBTを後方から挿通させて固定ナット29にボルトBTを締め付けることにより、中継端子43とLA端子52とが端子固定部28に固定されて電気的に接続されている。つまり、中継端子43とLA端子52とが接続された部分の形状は、図8および図9に示すように、中継端子43が幅方向外側に屈曲された部分43Aから幅方向に僅かに延びて、電線側接続部46と丸型接続部53とが接続された位置において下方に向けて略直交に曲がった形態となっている。
【0027】
ところで、電線の端末に導電部材が中継端子を介して接続される場合、例えば、導電部材に接続された中継端子を電線が導入される下方に屈曲させた後、中継端子と電線に接続されたLA端子とをボルトよって締結する方法も考えられるが、このような方法では、中継端子とLA端子とを接続する部分と中継端子が下方に屈曲される部分とが上下方向に並ぶことになるから、ハウジングが上下方向に大きくなってしまい、ハウジングを低背化する上で不利となってしまう。
ところが、本実施形態によると、電線側接続部46が互いに離れるように一対の中継端子43が幅方向外側に屈曲されているから、中継端子43とLA端子52とを接続する部分と中継端子43が屈曲される部分43Aとを幅方向に並んだ配置とすることができる。つまり、中継端子とLA端子とを接続する部分と中継端子を下方に屈曲させた部分とを上下方向に並べる場合に比べて、ハウジング20の低背化を図ることができる。
【0028】
また、連結部24における端子固定部28の後方には、図8乃至図11に示すように、カバー70が装着される作業孔30が形成されている。作業孔30は、端子固定部28にボルトBTを締め付けるための工具が外部から挿入される孔とされている。
カバー70は、作業孔30の内周面に密着してハウジング20の内部をシールするシールリング71を有しており、ボルトBTの締結作業後にカバー70が作業孔30に装着されることで、作業孔30からハウジング20内に水などが浸入しないように保護している。
【0029】
シールドシェル60は、アルミニウムやアルミニウム合金等の導電性を有する金属板材からなり、図5図10および図12に示すように、アッパーシェル61とロアシェル62とを互いに組み付けることによって構成されている。
【0030】
アッパーシェル61は、ハウジング20の連結部24を後方から覆う箱形状をなしており、アッパーシェル61の上側前縁には、図1乃至図4に示すように、シールドケース100の水平面103に載置される平板状の取付片63が前側に突出して設けられている。取付片63の幅方向両側には、水平面103の上側締結孔102に対応する一対のボルト締結部64が設けられており、このボルト締結部64にボルトBTを上方から挿通させて上側締結孔102にボルトBTを締め付けることにより、図3および図9に示すように、取付片63がシールドケース100に固定されると共に、シールドシェル60がシールドケース100に電気的に接続されるようになっている。
【0031】
ロアシェル62は、図5図6および図10に示すように、幅方向に横長な略円筒状に形成されており、上下方向に開口した形態とされている。また、ロアシェル62内には、電線導入部23が上方から収容可能とされており、ロアシェル62内に電線導入部23が収容されると、電線導入部23の外周面をロアシェル62が全周に亘って覆った状態となる。また、電線導入部23にロアシェル62を組み付けた後、連結部24に対してアッパーシェル61を後方から組み付けることにより、シールドシェル60が構成されるようになっている。
ロアシェル62の外周面には、図示しない編組線が接続され、電線導入部23に導入される一対の電線50が一括してシールドされるようになっている。
【0032】
さて、ハウジング20の電線導入部23には、締結ボルト(「締結部材」の一例)32が挿通されるボルト挿通孔31が形成されている。このボルト挿通孔31は、電線導入部23の幅方向略中央部を前後方向に貫通して形成されている。言い換えると、ボルト挿通孔31は、電線導入部23において、電線50が挿通される一対のキャビティ25間を仕切る幅広の隔壁26を利用して形成されている。
締結ボルト32は、その長さ寸法が、電線導入部23の前後方向の長さ寸法とアッパーシェル61の板厚寸法とロアシェル62の板厚寸法とを全て合わせた長さ寸法よりも大きく設定されており、シールドケース100の後面において取付孔101の下方に設けられた下側締結孔104に締結可能とされている。
【0033】
電線導入部23の前面におけるボルト挿通孔31の開口縁には、前方に張り出した形態の取付座33が形成されている。この取付座33は、ハウジング20のケース嵌合部22をシールドケース100の取付孔101に嵌合させた際に、シールドケース100の後面に密着して、シールドケース100と電線導入部23との間の隙間を埋める役割を果たしている。
【0034】
一方、ロアシェル62の後面における幅方向略中央部には、電線導入部23のボルト挿通孔31に対応して設けられたロア側挿通孔62Aが形成されており、ロアシェル62が電線導入部23に組み付けられると、電線導入部23のボルト挿通孔31の後方にロア側挿通孔62Aが重なるようになっている。
また、アッパーシェル61の後面における幅方向略中央部には、図5および図10に示すように、アッパー側挿通孔65Aを有する延出片65が形成されている。延出片65は、アッパーシェル61の下端部から下方に延出されており、連結部24にアッパーシェル61が組み付けられると、電線導入部23のボルト挿通孔31およびロアシェル62のロア側挿通孔62Aの後方に延出片65が重ねられ、ボルト挿通孔31とロア側挿通孔62Aとアッパー側挿通孔65Aとが連続するようになっている。
そして、アッパー側挿通孔65Aとロア側挿通孔62Aとボルト挿通孔31とに締結ボルト32を連続して挿通させて、シールドケース100の下側締結孔104に締結ボルト32を締め込むことにより、電線導入部23とアッパーシェル61とロアシェル62とが共締めされてシールドケース100に固定される。
【0035】
すなわち、シールドコネクタ10は、アッパーシェル61の取付片63における幅方向両側に設けられた一対のボルト締結部64の位置だけでなく、シールドシェル60および電線導入部23の幅方向略中央部を貫通する締結ボルト32の位置を含んだ合計3箇所の位置においてバランスよく固定されている。
また、下側締結孔104に締結ボルト32が締め込まれることで、アッパーシェル61とロアシェル62とが一体に固定されてシールドシェル60が構成され、ハウジング20全体がシールドシェル60によって覆われるようになっている。
【0036】
本実施形態のシールドコネクタ10は以上のような構成であって、続いて機器のシールドケース100にシールドコネクタ10を固定する方法の一例を簡単に説明し、続けてシールドコネクタ10の作用効果を説明する。
まず、ロアシェル62に一対の電線50を挿通させる共に、ゴム栓Gおよびゴム栓押さえG1に各電線50を挿通させて、各電線50の端末にLA端子52を圧着する。
【0037】
次に、ハウジング20の連結部24における作業孔30から導電部材40を挿入し、導電部材40の雌型端子42がハウジング嵌合部21のキャビティ25において正規の位置まで挿入されると、雌型端子42がハウジング嵌合部21内で抜け止めされた状態に保持される。また、このとき、中継端子43の電線側接続部46が連結部24における端子固定部28後面に載置される。
【0038】
次に、電線導入部23の一対のキャビティ25内に先ほど用意した一対の電線50を下方から挿入し、連結部24の端子固定部28に載置された中継端子43の電線側接続部46の後面に、LA端子52の丸型接続部53を重ねる。そして、端子固定部28の後側に中継端子43の電線側接続部46とLA端子52の丸型接続部53とが重ねられたところで、作業孔30から挿入したボルトBTを電線側接続部46と丸型接続部53とに挿通させ、作業孔30から挿入した工具でボルトBTを端子固定部28の固定ナット29に締め付ける。これにより、図8および図9に示すように、中継端子43およびLA端子52がハウジング20に固定される。この後、作業孔30にカバー70を取り付けて作業孔30を閉じることで、シールリング71によって作業孔30の内周面とカバー70との間がシールされる。
【0039】
ハウジング20内に導電部材40と電線50とが固定されたところで、ケース嵌合部22をシールドケース100の取付孔101に嵌合させると共に、ハウジング嵌合部21をシールドケース100内の機器側コネクタ110に嵌合させる。このとき、ケース嵌合部22に外嵌されたシールリング27によって、取付孔101の内周面とケース嵌合部22の外周面との間がシールされる。また、機器側コネクタ110にハウジング嵌合部21が嵌合されることで、雌型端子42が機器側コネクタ110の機器側端子112に対して電気的に接続される。また、電線導入部23の取付座33がシールドケース100の後面に密着し、シールドケース100と電線導入部23との間の隙間が埋められる。これにより、電線導入部がシールドケースの後面から後方に離れている場合に比べて、電線導入部23が前後方向にがたつくことを抑制することができる。
【0040】
次に、ロアシェル62を下方から電線導入部23に装着し、続けてアッパーシェル61を後方から連結部24に装着することで、シールドシェル60が構成され、ハウジング20全体がシールドシェル60によって覆われる。また、このとき、電線導入部23のボルト挿通孔31の後方にロアシェル62のロア側挿通孔62Aが重ねられると共に、延出片65が重ねられ、ボルト挿通孔31とロア側挿通孔62Aとアッパー側挿通孔65Aとが連続した状態となる。そして、アッパー側挿通孔65Aとロア側挿通孔62Aとボルト挿通孔31とに締結ボルト32を連続して挿通させ、シールドケース100の下側締結孔104に締結ボルト32を締め込むことにより、電線導入部23とアッパーシェル61とロアシェル62の3つの部材が共締めされて、シールドコネクタ10がシールドケース100に固定される。これにより、アッパーシェル61とロアシェル62とが一体に固定されると共に、シールドコネクタ10の幅方向略中央部における下部が締結ボルト32によって固定される。
【0041】
最後に、アッパーシェル61の取付片63における幅方向両側に設けられた一対のボルト締結部64にボルトBTを挿通させて一対の上側締結孔102にボルトBTをそれぞれ締め付けることにより、図3および図9に示すように、シールドコネクタ10の上部において取付片63がシールドケース100に固定されると共に、シールドシェル60がシールドケース100に電気的に接続される。
【0042】
すなわち、本実施形態によると、ハウジング20に電線50が導入される電線導入部23において締結ボルト32が前後方向に締結されているから、車両の振動に伴って電線50が大きく振動したとしても、振動がシールドコネクタ10に伝わる初期の位置で振動を遮断することができる。また、シールドコネクタ10において上側に位置する取付片63の幅方向両側に設けられた一対のボルト締結部64の位置と、シールドコネクタ10において下側に位置する電線導入部23の幅方向略中央部を貫通した締結ボルト32の位置との合計3箇所の位置において、シールドコネクタ10がシールドケース100にバランスよく固定されているから、取付片63が撓むなどしてシールドコネクタ10ががたつくことを確実に防ぐことができる。これにより、電線50の振動等に起因して機器側端子112と雌型端子42間で不具合が生じることを抑制することができる。
また、本実施形態によると、電線50の端末に導電部材40が接続されているから、仮に電線50の振動が導電部材40に伝わることになったとしても、振動が導電部材40の伸縮性導体41によって吸収され、両端子112,42間で不具合が生じることを確実に抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態によると、ハウジング20の低背化を図るために、両電線側接続部46間の幅方向の長さを両導電部材側接続部47間の幅方向の長さよりも大きくするように一対の中継端子43を幅方向外側にそれぞれ屈曲させたことで、電線導入部23における一対の電線50間の隔壁26が幅広となる、いわゆるデッドスペースが電線導入部23内に生じてしまう。しかしながら、このデッドスペース(幅広の隔壁26)を利用して電線導入部23に締結ボルト32を貫通させることができるから、締結ボルト32を貫通させるスペースをハウジング20に別途設ける必要がなく、ハウジング20がさらに大型化することを防ぐことができる。
さらに、本実施形態によると、ハウジング20およびシールドシェル60をシールドケース100に固定する締結ボルト32によって、アッパーシェル61とロアシェル62とを一体に組み合わせて固定することができるので、例えば、アッパーシェル61とロアシェル62とに互いを固定する固定機構を別途設ける必要がなく、シールドシェル60の構造を簡素化することできる。
【0044】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、伸縮性導体41に雌型端子42および中継端子43が圧着され、電線50の芯線51に電線固着部54が圧着された構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、雌型端子、中継端子、電線固着部がろう接(ロウ付けやハンダ付け)や溶接等の種々の公知の接続手段により接続されてもよい。
(2)上記実施形態では、中継端子43が幅方向に屈曲された構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、ハウジングの低背化を図る必要がない場合は、中継端子を下方に向かって屈曲させた構成にしてもよい。
(3)上記実施形態では、電線50の端末に導電部材40を設けた構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、電線の端末に導電部材を設けない構成としてもよい。
(4)上記実施形態では、ハウジング20とシールドシェル60とを一本の締結ボルト32によってシールドケース100に固定した構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、ハウジングとシールドシェルとを2本以上の締結ボルトによって固定する構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10:シールドコネクタ
20::ハウジング
23:電線導入部
32:締結ボルト(締結部材)
40:導電部材
42:雌型端子(端子)
43:中継端子
46:電線側接続部
47:導電部材側接続部
50:電線
60:シールドシェル
61:アッパーシェル
62:ロアシェル
63:取付片
64:ボルト締結部
100:シールドケース
110:機器側コネクタ
111:機器側ハウジング
112:機器側端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図12