(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光透過領域を有し、前記光透過領域に偏光又は位相変調作用を備えた光学機能部を備えた第一の中綴じ基材を、前記第一の中綴じ基材の対向する面の前記光学機能部に対応する位置に光学機能部を作用させることにより顕現する潜像が設けられた第二の中綴じ基材の上に中綴じし、
前記第一の中綴じ基材は、その中心線を中心に二つ折りして貼り合わせることを特徴とする冊子の製造方法。
【背景技術】
【0002】
パスポートや通帳等の媒体は、
図11に示すように、複数の紙面81、82を重ね合わせ、中央部分を針金や糸83で綴じて(中綴じ)、冊子状にしている。特にパスポートのように、偽造防止のための高いセキュリティが要求される冊子類では、蛍光染料で処理し、紫外線光源で発光する綴じ糸83(偽造防止綴じ糸)を用いることで、偽造防止を図っている(特許文献1)。
【0003】
一方、近年では個人情報等をデジタルデータとして記憶するICチップを、リーダ/ライタで読み書きできるように、埋め込んだ冊子が開発されている。特に電子パスポートの分野では、そのような冊子が各国で採用されるようになってきている。冊子にICチップを埋め込む形態としては、冊子カバーに添付した形態や、ページの間にICチップを含むインレットを挟み込み、両ページ同士を接着した形態が提案されている(特許文献2)。
【0004】
ページの間にICチップを含むインレットを挟み込む形態では、特に中綴じの場合、中綴じ糸が露出する最内面の紙面を中綴じ糸を中心に中折りしてインレットを挟み込む。このような形態は、両ページに均一な負荷が掛かるために製造工程及び強度の面から好ましく、日本を含む幾つかの国のパスポートで採用されている(非特許文献1)。
【0005】
電子パスポートの仕様を定めている国際民間航空機関(ICAO)の規格に拠れば、ICチップには個人の顔画像の情報を記録することが必須とされている。さらに、ICチップに記録されている顔画像の情報と、パスポートの紙面に写真等の形で記録された顔画像とを照らし合わせることで、電子情報と視認情報の相互確認により、偽造防止・セキュリティ性を向上させる。
【0006】
しかしながら、ICチップに記録された情報の書き換えや、ICチップ自体の取替えが行われる可能性がある。さらに、パスポートの紙面に載っている顔写真を張替えることにより、パスポートを偽造するおそれがある。このため、ICチップの書き換えを防止する等のセキュリティ性の向上と、視認情報の偽造を防止する技術の向上が望まれている。
【0007】
視認情報の偽造を防止する技術として、特許文献3には、顔画像等の視認情報を潜像として紙面に埋め込み、偏光フィルムを用いて目視することにより、顔画像等の視認情報を検証するパスポートが開示されている。特許文献3の方法によれば、顔写真と比較して、潜像による顔画像の偽造は困難であるために、セキュリティ性が向上する。しかしながら、特許文献3の方法では、別途偏光フィルム等からなる検証器具が必要となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る冊子を示す模式図である。
【
図2】同実施形態に係る冊子を示す断面模式図である。
【
図3A】本発明の他の実施形態に係る冊子を示す模式図である。
【
図3B】本発明の他の実施形態に係る冊子を示す模式図である。
【
図4A】本発明の実施形態に係る光学機能部の構成例を示す模式図である。
【
図4B】本発明の他の実施形態に係る光学機能部の構成例を示す模式図である。
【
図4C】本発明の他の実施形態に係る光学機能部の構成例を示す模式図である。
【
図4D】本発明の他の実施形態に係る光学機能部の構成例を示す模式図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る冊子を示す模式図である。
【
図6A】本発明の実施形態に係る光学機能部と潜像との構成例を示す模式図である。
【
図6B】本発明の実施形態に係る光学機能部と潜像との他の構成例を示す模式図である。
【
図7A】本発明の実施形態に係る第二の中綴じ基材上の潜像の配置を示す模式図である。
【
図7B】本発明の実施形態に係る第二の中綴じ基材上の潜像の他の配置を示す模式図である。
【
図8A】本発明の実施形態に係るインレットの構成例を示す模式図である。
【
図8B】本発明の実施形態に係るインレットの構成例を示す模式図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るインレットの構成例を示す模式図である
【
図10A】隠蔽層を設けた本発明の一実施形態に係るIC付き冊子の構成例を示す模式図である。
【
図10B】隠蔽層を設けた本発明の他の実施形態に係るIC付き冊子の構成例を示す模式図である。
【
図10C】隠蔽層を設けた本発明の他の実施形態に係るIC付き冊子の構成例を示す模式図である。
【
図10D】隠蔽層を設けた本発明の他の実施形態に係るIC付き冊子の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る冊子を示す模式図である。
図2は、
図1に記載の冊子の第一の中綴じ基材(光透過性基材)11の主面と直交する断面(S−S’)を示す断面模式図である。
図1及び
図2に係る冊子100では、少なくともシート状の第一の中綴じ基材11が、第二の中綴じ基材12上に綴じ部材13(綴じ手段)で中綴じされている。この第一の中綴じ基材11は、綴じ部材13で綴じられた中心線(のど)を中心に二つ折りして貼り合わせられている。
第一の中綴じ基材11の所定の箇所に、偏光機能、位相変調機能、又は偏光及び位相変調機能を備えた光学機能部31が設けられている。第一の中綴じ基材11は、少なくとも光学機能部31が設けられた一部で光透過性を有する。
貼り合わされた第一の中綴じ基材11と隣り合って中綴じされた第二の中綴じ基材12には、光学機能部31と対向する位置に、潜像32が設けられている。この潜像32は、光学機能部31を作用させることにより顕現される。
この光学機能部31及び潜像32により、第二の中綴じ基材12の見開きの潜像32が形成された側に第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)を重ね合わせた際に、潜像領域で画像パターンが現れるという偽造防止機能(偽造防止手段)を有する。
さらに、第一の中綴じ基材11には、その見開きにインレット14を挟み込むことができる。インレット14は、ICチップ141及びICチップ141に対して非接触で通信するアンテナ142を備えている。
【0015】
本発明の各実施形態に係る中綴じとは、シート状の基材の略中心線部分が綴じ手段により別の基材と接合されていることを意味する。従って、第一の中綴じ基材11を貼り合わせる前の段階では、綴じられた部分を結ぶ線分(綴じ部11a)により第一の中綴じ基材が見開きを構成する。
本発明の実施形態に係る構成によれば、冊子体として第一の中綴じ基材11を中綴じして貼り合わせた状態でも、偽造防止手段(潜像32)に対応する領域で、第一の中綴じ基材11が光透過性を有するため、視認により偽造防止手段を検証することが可能である。本発明の実施形態に係る冊子体は単独で、あるいはカバー等の一般的な冊子類構成要素と組み合わせて、本発明の実施形態に係る冊子を構成することができる。
【0016】
本発明の実施形態では、少なくとも光学機能部31を有するシート状の第一の中綴じ基材11と、第一の中綴じ基材11と隣り合い且つ潜像32を備えた第二の中綴じ基材12とを備えていれば、複数の冊子体から構成された冊子としても良い。
図3A及び
図3Bに示すように、第二の冊子体21の潜像32を設けた見開きに、光学機能部31を有するシート状の中綴じ基材11を中綴じした冊子としても良い。例えば、
図3Aに示す構成では、光学機能部31を有するシート状の第一の中綴じ基材11が第二の冊子体21の潜像32を設けた見開きに中綴じされており、第一の中綴じ基材11と隣接する第二の冊子体21の見開きページが第二の中綴じ基材に相当する。
図3Bに示す構成では、光学機能部31を有する第一の中綴じ基材11と潜像32を設けた第二の中綴じ基材12とを、第二の冊子体21に中綴じした。
なお、
図1では、第一の中綴じ基材11として光透過性フィルムが用いられている冊子100を示している。
図1において、第一の中綴じ基材11が光透過性を有するため、第一の中綴じ基材11に挟まれている中綴じ部材13及びインレット14が見えるように描かれている。
図3A及び3Bでも同様である。
以下の説明では、一つの中綴じされた冊子体で構成された冊子を例として説明するが、これに限られるものではなく、各実施形態で上記のような冊子の構成を適用することができる。
【0017】
本発明に係る各実施形態では、綴じ手段を用いて、第一の中綴じ基材11を中綴じしている。綴じ手段は、中綴じ糸、ステープラ用つづり針等の一般的な綴じ部材を用いることができる。
なお、綴じ手段として、偽造防止手段を備えるものを使用することができる。その具体例としては、紫外線の照射により蛍光を発光する材料を含有させ、紫外線の光源を照射することにより検証することが可能な綴じ糸や、糸にマイクロ文字を印字し、糸の拡大視認により検証することが可能なものが挙げられる。
これらの構成は、冊子状に綴じる前に前記のような偽造防止処理した材料を用いても良いし、特許文献1に記載されているように、綴じた後に偽造防止処理を施しても良い。あるいは、一度綴じた後に、分解して綴じなおしすることが困難な綴じ方を用いた綴じ手段を用いても良い。
綴じ糸を用いた中綴じ方法の例としては、工業用のミシンを用いて公知の一般の縫い方で中綴じする方法が挙げられる。基材の端まで縫いきるチェーン方式、及び、基材の端まで縫わず、基材の途中で縫い止めするインターロック方式のいずれを採用しても良い。チェーン方式よりもインターロック方式の方が、綴じ糸はほつれにくい。しかしながら、チェーン方式でも、接着層や第一の中綴じ基材との融着により綴じ糸の端部が固定されるので、チェーン方式を採用しても問題はない。
また、中綴じする前に第一の中綴じ基材上に接着層を形成しておくと、縫う際に中綴じ基材の破損を抑制する基材保護層として、この接着層が機能する。
上記のように偽造防止手段が、視覚情報により真贋判定を行うものである場合、第一の中綴じ基材11の綴じ部11a(
図1では綴じ部材13に重なる領域)を視認できるように、綴じ部11aを光透過性とすることが好ましい。
【0018】
潜像を顕現し、視認検証するための光学機能部31を備えた第一の中綴じ基材の構成例を
図4A〜
図4Dに示す。
図4Aに示す構成では、第一の中綴じ基材11の全体が、潜像を顕現する光学機能を備えた光学機能フィルム311となっている。この構成によれば、別途光学機能部を設ける必要がなく、第一の中綴じ基材11のみで視認検証するための光学機能を実現することができる。
図4Bに示す構成では、第一の中綴じ基材11を構成する光透過性フィルム111の間に光学機能フィルム311が挟まれている。この構成によれば、光学機能フィルム311の領域を任意に設定することができる。また、
図5のように、非接触ICのインレット14を設ける場合、光学機能フィルム311を挟み込むことにより同じ工程で光学機能部31を設けることが可能である。
図4Cに示す構成では、光学機能フィルム311が光透過性フィルム111の外側に設けられている。この構成において、潜像を光学機能フィルム311と対向する側の紙面に設けるようにすれば、潜像と光学機能フィルム311との間に光透過性フィルム111が介在しない。従って、光透過性フィルム111が光学異方性を持つ材料であっても、潜像の視認に影響を受けることがない。これによって、光透過性フィルム111として一般的な延伸フィルムを用いた場合でも、潜像の視認性が高い。
図4Dに示す構成では、光透過性フィルム111と光学機能フィルム311とがお互い対向するように、光透過性フィルム111の端部に光学機能フィルム311を取り付けられている。このように、第一の中綴じ基材11の一部が光学機能部で構成されることで、少なくとも第一の中綴じ基材11の潜像検証領域では、光学機能フィルム311に光透過性フィルム111が積層されていない構成とすることができる。このような構成によれば、潜像と光学機能部31との間に光透過性フィルム111が介在しないので、光透過性フィルム111が光学異方性を持つ材料であっても、潜像の検証に影響を受けることがない。
【0019】
潜像32として、偏光潜像を用いることができる。この場合、背景部と潜像部とで異なる偏光方向を有する偏光層により形成することができる。また、偏光方向の揃った偏光層上に、背景部と潜像部とで位相差の異なる位相差層を形成してもよい。偏光潜像は公知の手法を用いて形成することができる。例えば、潜像形成領域に配向層を設け、配向層の配向パターンにより潜像を形成する。配向層には光配向硬化型の液晶等を用いることができる。あるいはコレステリック液晶等を用いた位相差パターンで潜像を形成しても良い。光配向硬化型液晶の層において、配向のパターンを形成することで潜像を形成する。あるいは偏光又は配向を生ずるように、光配向硬化型液晶の層に回折格子を設けても良い。ここで、光配向硬化型液晶とは、光配向性を有する光硬化型液晶である。
【0020】
上記偏光潜像を顕像化するための検証フィルタである光学機能部31として、偏光フィルタ(偏光フィルム)を用いることができる。この場合、背景部及び潜像部からの光が異なる偏光方向を有するため、偏光フィルタを通すと、背景部及び潜像部のうちの一方からの光が遮断され、他方からの光が透過する。このように、偏光フィルタを通すと、背景部と潜像部との間でコントラスト差ができるため、潜像画像を認識することができる。このような偏光フィルタとしては、一般的な樹脂偏光板や、1mmあたり1千本以上のストライプパターンを形成したワイヤーグリッド偏光子を用いることができる。ストライプパターンの本数は、対象とする光の周波数などで任意に設定できるが、可視光域の偏光光を選択的に透過させるのであれば、1mmあたり5千本〜1万本程度とすればよい。また、光学機能層32には、円偏光にするためのλ/4位相差板や、透過波長を制御するバンドパスフィルター等を設けても良い。
【0021】
図6A及び
図6Bは、光学機能部31と潜像32との構成例を示す模式図である。
図6Aに示す構成では、光学機能部31が偏光層312からなる例である。
図6Bに示す構成は、光学機能部31が偏光層312と位相差層313との積層体からなる例である。
潜像32は、反射層323上に一又は複数の配向パターンを形成したものであり、
図6A及び
図6Bでは、配向方向が異なる第一の配向パターン321及び第二の配向パターン322が設けられている。
図6Bの例では、光学機能部31に位相差層313が設けられているので、配向パターンの代りに位相差パターンを用いても良い。
【0022】
第一の中綴じ基材11に用いる光透過性フィルム111を構成する材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系基材、ポリイミド基材、アクリル系基材、塩化ビニル系基材等の一般的なプラスチックフィルムを用いることができる。また、印字性、接着性の向上や、帯電防止のための機能層を積層した多層構造のフィルムを用いても良い。また、ポリカーボネート等のエンジニアリングプラスチックを用いた硬質基材を用いることもできる。特にレーザ照射により印字が可能な発色性の樹脂材料を第一の中綴じ基材11として用いると、ユニークID等の印字を第一の中綴じ基材11に施すことができる。発色性の樹脂材料の例としては、ポリカーボネート、PET等の樹脂に発泡剤や顔料などの添加剤を加えたものが挙げられる。
本発明の実施形態における「光透過性」とは、必ずしも可視光域の光波長の全てについて高透過率である必要はなく、着色していても良い。少なくとも光学機能部31によって顕現された潜像が視認可能である程度の透過率を所定の光波長で備えていれば良い。しかしながら、後述のように、特に潜像及び光機能層を設ける場合には、潜像の表現に影響を与えないために、可視光の波長域(約400〜800nm)で90%以上の光透過率であることが好ましい。また、綴じ部材13に紫外線を照射して検証を行う場合には、紫外線を透過する光透過性フィルムを用いる。この場合、照射する紫外線に対する透過率が50%以上であることが好ましい。
【0023】
図7A及び
図7Bは、第一の中綴じ基材11からなる頁に隣り合う第二の中綴じ基材12上の潜像32の配置を示す模式図である。第二の中綴じ基材12上の点線で囲まれた領域33は、第一の中綴じ基材11からなる頁を第二の中綴じ基材の見開きの片側に重ねた際のインレット14の位置に対応する領域を示している。潜像32は、第二の中綴じ基材12の見開きの片側の頁に、形成しても良いし、両側に形成しても良い。特に、
図5に示したように、インレット14の対応領域33の外に光学機能層31を設けるため、潜像32は、
図7Aのように、第二の中綴じ基材12の周辺部に設けることができる。あるいは、
図7Bのように、潜像32を、第二の中綴じ基材12の中央部に設けてもよい。特に、
図7Bのように、第二の中綴じ基材12の中央部に潜像32を設ける場合には、二つ折りの折り線、すなわち中綴じ部を跨いで連続的に形成することができる。これにより、光学機能部31を潜像32の片側に重ねた構成に比べて、その効果が明確に視認できる。
【0024】
第二の中綴じ基材12としては、綴じ部材13で中綴じできる強度を有する基材を、適宜採用することができる。一般的なパルプ紙や合成紙等の繊維性基材や、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル系基材、ポリイミド基材、アクリル系基材、塩化ビニル系基材等の各種のプラスチックフィルムを用いることができる。また、ポリカーボネート等のエンジニアリングプラスチックを用いた硬質基材を用いることもできる。また、レーザ照射により印字が可能な発色性の樹脂材料を第二の中綴じ基材12として用いると、ユニークID等の印字を第二の中綴じ基材12に施すことができる。発色性の樹脂材料の例としては、ポリカーボネート、PET等の樹脂に発泡剤や顔料などの添加剤を加えたものが挙げられる。
中綴じ基材は同一又は複数種の材料を各重ね合わせる基材に用いることができる。例えば、背側の中綴じ基材には強度を向上させるために、内側の中綴じ基材よりも膜厚の大きい材料や、剛性の高い材料を採用することができる。また、前述のように、第二の中綴じ基材12として、別の冊子体を用いることもできる。
【0025】
中綴じされた第一の中綴じ基材11の見開きの間に挟み込むインレット14は、少なくともICチップ141と、アンテナ142とを含む。このインレット14は、ICチップに非接触で情報を書き込む又は読み取ることが可能なICとして機能する。
図8A及び
図8Bは、インレット14の一構成例を示す模式図である。
図8Aはアンテナパターンの形成面(第1面)であり、
図8Bはその裏面(第2面)である。
図8A及び
図8Bに示す例では、インレット基材143上にアンテナパターン142を形成し、パターンの交差部で裏面にジャンパー線144を設けて、アンテナパターン142の両端の接続部145間を接続し、アンテナを形成している。
【0026】
インレット基材143としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルフィルム基材、ポリイミド基材、アクリル系基材、塩化ビニル系基材を用いることができる。また、ポリカーボネート等のエンジニアリングプラスチックを用いた硬質基材を用いることもできる。またレーザ照射により印字が可能な発色性の樹脂材料をインレット基材143として用いると、ユニークID等の印字をインレット基材143に施すことができる。発色性の樹脂材料の例としては、ポリカーボネート、PET等の樹脂に発泡剤や顔料などの添加剤を加えたものが挙げられる。
また、インレット基材143として、紙基材を用いてもよい。紙基材としては、特に限定するものではないが、例えば圧縮固着紙を用いた硬質紙基材を用いることができる。具体的には、天然素材のセルロースを原料とするバルカナイズドファイバーを複数積層したものなどがあげられる。
【0027】
アンテナ142のパターンは、エッチング法、メッキ法、印刷法またはパターン蒸着法により形成することができる。
エッチング法では、アンテナ基材上にアルミ、銅などの金属箔を貼り合せ、またはアルミ、銅などの金属薄膜を蒸着法、スパッタリング法などによりアンテナ基材上に形成し、得られた金属箔・金属薄膜上にマスクパターンを形成し、エッチングによりアンテナ形状のパターンを得ることができる。
印刷法では、導電性インキを印刷する。印刷法としては、微細パターニングできる方法であれば、特に限定するものではないが、スクリーン印刷法を好適に用いることができる。アンテナ基材として紙基材を用いる場合、アンテナの形成法としては印刷法を好適に用いることができる。
メッキ法では、触媒層をパターニング形成し、その後電解または無電解メッキにより、アンテナを形成する。
パターン蒸着法では、開口部を有するマスクを用い、パターン状に蒸着法又はスパッタリング等を行うことにより、アンテナのパターンを形成する。裏面にジャンパー線を設ける代りに、アンテナパターンの交差する部分に絶縁基材と導電部材とからなる配線を貼り合せ、この配線の両端をアンテナと導通させても良い。
また、別のアンテナ形成方法としては、金属線をコイル状に固着配置してアンテナを形成しても良い。アンテナの巻き数、形状などは、通信周波数、その他の特性に応じて適宜設定することができる。この構成は特に片面にアンテナ及び配線を形成した場合に用いることができる。
【0028】
ICチップ141とアンテナ142とはアンテナ142の終端とICチップ141に接続するバンプまたは接続パッドとを溶接や接着剤で貼り合せることにより接続できる。接着剤としては導電性の接着剤を好適に用いることができる。
【0029】
またインレット14は、
図9の構成例に示すように、インレット基材143を設けずに、第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)上に直接に形成しても良い。
図9において、インレット141と第一の中綴じ基材11の断面模式図のみを記し、その他の部分は省略している。また、ICチップ141の保護や、ICチップ141の形成部とアンテナ142及びアンテナ形成面との膜厚差解消のために、保護層を設けても良い。例えば、封止機能を有する保護層や、ICチップに対応する領域に開口部を設けた保護層をICチップの実装前あるいは後に、アンテナ形成面に積層することができる。
【0030】
ICチップ141を露出させないために、インレット14の少なくとも一部を覆う隠蔽層を設けても良い。この場合、ICチップ141を隠蔽するように設けることがセキュリティ上好ましい。
隠蔽層の構成例を、
図10A〜
図10Dに示す。
図10A〜
図10Dでは、インレット14と第一の中綴じ基材11の断面模式図のみを記し、その他の部分は省略している。
図10Aでは、第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)の露出面(外側)に隠蔽層16を設けている。
図10Bでは、第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)の内側に隠蔽層16を設けている。
図10Cでは、第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)の内側に隠蔽層16を設け、隠蔽層16上にICチップ141及びアンテナ142(インレット)を形成している。
図10A〜
図10Cでは、第一の中綴じ基材11(透明フィルム)に隠蔽層16を設けているので、中綴じする前に予め隠蔽層16を設けた第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)を用いることができる。また、前述の綴じ部材13の偽造防止手段により真贋判定を行う場合には、いずれの構成においても、第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)を介して綴じ部材13が確実に視認できるように、第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)上で、二つ折りの折り線(中心線)から少なくとも0.5mm、より好ましくは1mm以上、インレット14及び隠蔽層16を綴じ部材13から離して配置することが好ましい。
図10Dでは、インレット14に隠蔽層16を設けているので、第一の中綴じ基材11が光透過性フィルムであれば、綴じ部材13の偽造防止手段を用いることができる。なお、上記の
図10A〜
図10Dに示す隠蔽層16の配置を組み合わせて用いても良い。
【0031】
遮蔽層16として、文字、絵柄等の遮光性のパターンを、第一の中綴じ基材11やインレット14に直接設けることができる。あるいは、別の基材に上述のようなパターンを設けて遮蔽層16を形成し、これを第一の中綴じ基材11やインレット14に張り合わせることもできる。上述のパターンは、例えば白色や黒色などの有色顔料、染料を有するインキを用いて、印刷法により形成することができる。
【0032】
次に、少なくともインレット14又は光学機能フィルム311を、シート状の第一の中綴じ基材11の見開きの間に配置した後、この第一の中綴じ基材11の見開きの左右頁を貼り合わせることで、本発明の実施形態に係る冊子が作成される。
配置の仕方としては、見開きの一方のページに、少なくともインレット14又は光学機能フィルム311を固定した後に、第一の中綴じ基材11を貼り合わせても良い。あるいは、第一の中綴じ基材11の貼り合わせと同時に、少なくともインレット14又は光学機能フィルム311を挿入しても良い。
第一の中綴じ基材11を貼り合せる接着層15に用いる接着剤としては、例えば、EVA(エチレンビニルアセテート樹脂)系、EAA(エチレンアクリル酸共重合樹脂)系、ポリエステル系、ポリウレンタン系等の公知の接着剤を用いることができる。また、接着剤を塗布する代わりに、上記の接着剤に用いられる樹脂からなる接着シートを、第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)の間に挟んで用いることもできる。また、予め貼り合わせられる面に接着層を形成した第一の中綴じ基材11(光透過性フィルム)を用いても良い。特にホットメルト接着剤を用いれば、熱圧着によって容易に貼り合わせることができ、貼り合わせ後の第一の中綴じ基材11の平坦性も保持することができる。
さらに、第一の中綴じ基材11として熱可塑性を有する基材が用いられている場合、上記のような接着層15を用いずに、熱圧着により貼合せを行うことができる。熱圧着で貼合せを行うと、インレット14と第一の中綴じ基材11とが一体化するため、たとえば、ICチップ141の入れ替えによる偽造がより困難になる。
特に、第一の中綴じ基材11としてポリカーボネートを用い、インレット基材143として記号や文字等が印字された発色ポリカーボネートを用いて、これら第一の中綴じ基材11及びインレット14を熱圧着により一体化すると、印字された記号や文字等を偽造することは困難となる。これにより、冊子100のセキュリティ性をより高めることができる。
なお、インレット14への印字は一体化の前に行っても良い。中綴じ基材11の透明性を生かして中綴じ基材11の貼合せを行った後にインレット14への印字を行っても良い。
なお、以上の図示した実施形態において、潜像32は、第一の中綴じ基材11と隣り合って中綴じされた第二の中綴じ基材12の左側の頁に設けられている。しかしながら、これのみに限定されず、潜像32は、第一の中綴じ基材11と隣り合って中綴じされた第二の中綴じ基材12の右側の頁に設けられても良い。すなわち、潜像32は、第一の中綴じ基材11と隣り合って中綴じされた中綴じ基材の光学機能層と対向する位置に設けられていれば良い。