(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載されている薄板ガラスは、
図7に示されている通り、断面視矩形状の薄板ガラスである。斯様な断面視矩形状の薄板ガラスにおいては、大きな曲率(小径のボビン等での巻き取り等)で曲げられる際、断面視4隅の角部に応力集中が発生し、薄板ガラスが破断してしまうという問題がある。また、上記の断面視矩形状の薄板ガラスにおいては、取り扱い等によって4隅の角部に欠けやクラックが発生し易く、これらの欠陥によって上記破断の問題がより顕著となる。
【0006】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、端面への応力集中を回避しつつ、大きな曲率(小径のボビン等での巻き取り等)で曲げることを可能とするガラスリボンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、厚みが100μm以下で、側面に凸曲面部を有することを特徴とするガラスリボンに関する。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記側面が、前記凸曲面部で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のガラスリボンに関する。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記凸曲面部は、火造り面であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスリボンに関する。
【0010】
請求項4に係る発明は、偏肉が厚みの20%以内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラスリボンに関する。
【0011】
請求項5に係る発明は、厚みに対する幅のアスペクト比が25〜2000であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガラスリボンに関する。
【0012】
請求項6に係る発明は、ガラス材質が結晶化ガラスであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガラスリボンに関する。
【0013】
請求項7に係る発明は、フランジを有するボビンに巻き取られたことを特徴とする請求項1〜6に記載のガラスリボンに関する。
【0014】
請求項8に係る発明は、梱包緩衝シートに重ねて巻き取られることを特徴とする請求項7に記載のガラスリボンに関する。
【0015】
請求項9に係る発明は、厚み2mm以下の母材ガラスを加熱して、厚み100μm以下の厚さに延伸成形することを特徴とするガラスリボンの製造方法に関する。
【0016】
請求項10に係る発明は、延伸成形時の前記母材ガラスの粘度が、
106.0〜109.0dPa・sであることを特徴とする請求項9 に記載のガラスリボンの製造方法に関する。
【0017】
請求項11に係る発明は、前記ガラスリボンをドラムに巻き取ることによって、前記延伸成形することを特徴とする請求項9又は10に記載のガラスリボンの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により得られたガラスリボンは、側面に凸曲面部を有する
ため、ガラスリボンを曲げた場合に断面視4隅の角部への応力集中を防止できる。また、隅部での欠けやクラックの発生を抑えることができる。従って、大きな曲率(小径のボビン等での巻き取り等)で曲げることを可能とするガラスリボンを得ることができる。本発明において、ガラスリボンの側面に凸曲面部を形成するには、母材ガラスを加熱し、それをリボン状に延伸成形する方法が好適であり、母材ガラスの大きさや材質、延伸成形時の温度条件、引っ張り速度等を適宜調整することによって所望の凸曲面部を形成することができる。
【0019】
本発明により得られたガラスリボンは、側面が、凸曲面部で構成されていることから、側面全体が凸曲面を呈しているため、ガラスリボンを曲げた時に側面に応力が集中するのをより確実に防止することができる。これにより、より大きな曲率(小径のボビン等での巻き取り等)で曲げることができる。
【0020】
本発明により得られたガラスリボンは、凸曲面部は、火造り面
となることから、凸曲面部表面に割れ、欠け、クラック等が存在せず、側面からガラスリボンが破断するのを効果的に防止することができ、さらに大きな曲率(小径のボビン等での巻き取り等)でガラスリボンを曲げることができる。
【0021】
本発明により得られたガラスリボンは、偏肉が厚みの20%以内
となることから、より大きな曲率で巻き取ることができ、かつ、ずれを生じさせることなく綺麗に巻き取ることができる。
【0022】
本発明により得られたガラスリボンは、厚みに対する幅のアスペクト比が25〜2000
となることから、超薄板のガラスリボンとすることができる。
【0023】
本発明により得られたガラスリボンは、ガラス材質が結晶化ガラス
からなる場合、より高い耐熱性、機械強度、誘電特性をもったガラスリボンとすることができる。
【0024】
本発明により得られたガラスリボンは、フランジを有するボビンに巻き取られていることから、ガラスリボンの保存、輸送、取り扱い等を容易にすることができる。この場合、ガラスリボンの側面に曲面部が存在することと相俟って、ボビンのフランジ部に、ガラスリボン側面の曲面部が沿うようにして巻き取られることにより、ボビンの巻取りを容易にすることができる。また、ボビンからガラスリボンを引き出す際にも円滑な引き出し、巻き戻しが可能となる。
【0025】
本発明により得られたガラスリボンは、梱包緩衝シートに重ねて巻き取られる
場合、ガラスリボン同士が擦れることによる表面の面精度の悪化を防止することができる。
【0026】
請求項
1に係る発明によれば、厚み2mm以下の母材ガラスを加熱して、厚み100μm以下の厚さに延伸成形することから、ガラスリボンの側面に研削や研磨等の特別な加工を行うことなく、凸曲面部を得ることができる。延伸成形後は、その表面が火造り面となることから、通常の研磨方法では得られない高い表面品位を有するガラスリボンを効率よく製造することができる。従って、表面未加工で高い表面品位の凸曲面部を側面に有するガラスリボンを得ることができる。
【0027】
また、延伸成形時の母材ガラスの粘度が、10
6.0〜10
9.0dPa・sであることから、ガラスリボン幅方向における反りや両端部での折れ曲がり、偏肉等もなく均一の厚みを有する平坦なガラスリボンを得ることができる。
【0028】
請求項
2に係る発明によれば、ドラムに巻き取ることによって延伸成形することから、ガラスリボンの厚み方向での表裏面を一対のローラで挟み込む構成の引き取りローラや、千鳥に配置された複数のローラにガラスリボンをS字状(ジグザグ)にくぐらせることによりガラスリボンにテンションを付与する構成のテンションローラを使用することなく延伸成形を行うことができる。上述したローラを使用しないことから、ガラスリボンが延伸成形中に引き取りローラによって潰され破断することや、テンションローラと接触することによってガラスリボンの表面精度が悪化することを効果的に防止することが可能となり、より精度よくガラスリボンを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係るガラスリボンの好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0031】
本発明に係るガラスリボン(1)は、
図1に示す通り、平面(2)と側面(3)とを含み、側面(3)に凸曲面部(4)を有することを特徴とする。
【0032】
ガラスリボン(1)材質には、主にケイ酸塩ガラスが用いられ、ソーダガラス、ホウ珪酸ガラス、アルミ珪酸ガラス、シリカガラス等、延伸成形可能なガラスであれば、いずれの材質も使用可能である。
【0033】
また、ガラスリボン(1)材質として、延伸成形可能な結晶化ガラスを用いることもできる。結晶化ガラスは耐熱性に優れるため、ガラスリボン(1)材料として結晶化ガラスを使用することにより、固体酸化物形燃料電池等の隔壁や誘電体等の高温の動作温度を必要とする部品として好適に使用することができる。
【0034】
ガラスリボン(1)に可撓性を付与させるため、本発明に係るガラスリボン(1)の厚みは、100μm以下であり、50μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましく、10μm以下であることが最も好ましい。また、ガラスリボン(1)の強度を保つため、ガラスリボン(1)の厚みは、0.5μm以上が好ましく、1μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることが最も好ましい。
【0035】
ガラスリボン(1)を曲げた場合に外周側の表面(2)に局所的に引っ張り応力が集中することを防止し、均等に引っ張り応力がかかるようにするため、ガラスリボン(1)は、偏肉が少ないことが好ましい。具体的には、偏肉が厚みの20%以内であることが好ましく、10%以内であることがより好ましい。尚、偏肉は、幅方向において表面(2)を有する部分を幅方向に等間隔に5点測定し、測定された最大値と最小値との差を平均値で割った値とする。
【0036】
ガラスリボン(1)を曲げた場合に外周側の平面(2)に局所的に引っ張り応力が集中することを防止し、均等に引っ張り応力がかかるようにするため、平面(2)は、可能な限り平坦であることが好ましい。具体的には、平面(2)の表面粗さがRa値で0.5nm以下の高い表面品位であることが好ましく、0.3nm以下であることがより好ましく0.2nm以下であることが最も好ましい。
【0037】
ガラスリボン(1)は、厚みに対する幅のアスペクト比が25〜2000であることが好ましい。これにより、超薄板のガラスリボンとすることができる。25以下であればリボンとしての用途から逸脱し、ロッドやファイバとして用いられ、2000以上であればガラスフィルムとして用いられることとなる。
【0038】
側面(3)には、
図1に示す通り、凸曲面部(4)を有する。これにより、ガラスリボン(1)を曲げた時に、断面視4隅の角部に応力が集中することを防止することができる。また、欠けやクラックの発生を防止することができる。従って、大きな曲率(小径のボビン等での巻き取り等)で曲げることを可能とするガラスリボン(1)を得ることができる。
【0039】
凸曲面部(4)は、火造り面であることが好ましい。成形された後に研削、研磨工程等の面取り工程を経ていないため、凸曲面部(4)表面に割れ、欠け、クラック等が存在せず、側面からガラスリボン(1)が破断するのを効果的に防止することができる。従って、さらに大きな曲率(小径のボビン等での巻き取り等)で曲げることを可能とするガラスリボン(1)を得ることができる。
【0040】
ガラスリボン(1)を曲げた時に断面視4隅の角部に引っ張り応力が集中するのを防止するため、
図2に示す断面視略矩形状のガラスリボン(1)の4隅の中で、ガラスリボン(1)を曲げた時に、少なくとも外周側に位置する2つの隅部に凸曲面部(4)が形成されていればよい。一方、内周側に位置する2つの隅部には引っ張り応力がかからないため、凸曲面部(4)を形成する必要はなく、角部(5)の状態でもよい。しかし、ガラスリボン(1)の表面と裏面とを区別せずに使用することを可能にするために、
図1(a)に示す通り、断面視略矩形状のガラスリボン(1)の4隅すべてに凸曲面部(4)を形成することが好ましい。
【0041】
凸曲面部(4)は、
図1、
図2では、ガラスリボン(1)の断面視真円の円弧状であるが、この形状には限定されず、該扇形状は楕円の円弧状でもよい。ガラスリボン(1)を曲げた場合に、凸曲面部(4)に均等に引っ張り応力がかかるようにするため、前記円弧状は、真円の円弧状であることが好ましい。
図1(b)に示す通り、凸曲面部(4)の断面視が真円の円弧状の場合は、真円の半径rは、ガラスリボン(1)の厚みtの1/2以下であることが好ましい。これにより、凸曲面部(4)の曲率を大きくすることが可能であるため、凸曲面部(4)にかかる引っ張り応力をより広く分散させることが可能となる。また、半径rは、ガラスリボン(1)の厚みtの1/50以上であることが好ましい。半径rがガラスリボン(1)の厚みtの1/50よりも小さいと、凸曲面部(4)の曲率が小さすぎることにより、大きな曲率でガラスリボン(1)を曲げた場合に応力集中が発生し破断するおそれがある。また凸曲面部(4)に欠けやクラックが発生しやすくなるおそれもある。
【0042】
ガラスリボン(1)の断面視において、凸曲面部(4)と平面(2)及び凸曲面部(4)と側面(3)の平面部(31)とは、滑らかに繋がっていることが好ましく、具体的には、平面から側面にいたる曲面において、平面から漸次曲率が大きくなり、極大値を経て、側面に向かうにつれ、漸次曲率が小さくなり、側面に滑らかにつながる。曲率極大値となった場合において、その曲率は、ガラスリボン(1)の厚みtの1/2以下の半径rであることが好ましい。これにより、引っ張り応力の角部での集中を防ぎ、より大きな曲率でガラスリボン(1)を曲げることが可能となる。また、曲率極大値となった場合において、その曲率は、ガラスリボン(1)の厚みtの1/50以上であることが好ましい。半径rがガラスリボン(1)の厚みtの1/50よりも小さいと、凸曲面部(4)の曲率が小さすぎることにより、大きな曲率でガラスリボン(1)を曲げた場合に応力集中が発生し破断するおそれがある。また凸曲面部(4)に欠けやクラックが発生しやすくなるおそれもある。凸曲面部(4)と平面(2)、及び凸曲面部(4)と側面(3)の平面部(31)とが角部を有するように形成されていると、ガラスリボン(1)を曲げた場合に当該角部に引っ張り応力が集中するおそれがある。
【0043】
図3に示す通り、側面(3)が、凸曲面部(4)で形成されていることが好ましい。
図1に示す通り、側面(3)に断面視略矩形状の平面部(31)を有する形態の場合、ガラスリボン(1)を曲げた場合に、該平面部(31)に引っ張り応力が集中するおそれがあるが、側面(3)に前記平面部(31)を有さず、側面(3)が凸曲面部(4)のみで構成されている場合、ガラスリボン(1)を曲げた時に側面(平面部)に応力が集中するのをより確実に防止し、応力を分散させることができる。これにより、さらに大きな曲率(小径のボビン等での巻き取り等)で曲げることができる。
【0044】
凸曲面部(4)は、長軸が平面(2)と平行の楕円形状が好ましく、真円形状が最も好ましい。前述と同様、平面(2)と凸曲面部(4)とは滑らかに繋がっていることが好ましく、具体的には、表面から裏面にいたる曲面において、平面から漸次曲率が大きくなり、極大値を経て、裏面に向かうにつれ、漸次曲率が小さくなり、裏面に滑らかにつながる。曲率極大値となった場合において、その曲率は、ガラスリボン(1)の厚みtの1/2以下の半径rであることが好ましい。また、曲率極大値となった場合において、その曲率は、ガラスリボン(1)の厚みtの1/50以上であることが好ましい。
【0045】
本発明に係るガラスリボン(1)は、
図4(a)に示す通り、両端部にフランジ(61)を有するボビン(6)に巻き取られていることが好ましい。これにより、ガラスリボン(1)を直接載置しても、ガラスリボン(1)が直接載置面に接触することがなく、ガラスリボン(1)の保存、輸送、取り扱い等を容易にすることができる。
【0046】
本発明に係るガラスリボン(1)は、側面(3)に凸曲面部(4)を有することから、ガラスリボン(1)をボビン(6)に巻き取る際に、
図4(b)に示す通り、ボビン(6)のフランジ(61)にガラスリボン(1)の側端部が当接した後(
図4(b)のガラスリボンが破線の状態後)、ガラスリボン(1)の側面(3)に存在する凸曲面部(4)がフランジ(61)に沿って案内され、ボビン(6)に巻き取られるため、ボビン(6)への巻き取りが容易となる。また、凸曲面部(4)がフランジ(61)に沿うため、ボビン(6)へのガラスリボン(1)の巻き取りや巻き戻しをスムーズに行うことができる。
【0047】
本発明に係るガラスリボン(1)は、梱包緩衝シートに重ねて巻き取られていることが好ましい。これにより、ガラスリボン同士が擦れることによる表面の面精度の悪化を防止することができる。梱包緩衝シートとしては、発泡樹脂製シート、樹脂フィルム、合紙、不織布等を使用することができる。梱包緩衝シートは、ガラスリボン(1)の側面(3)を保護するためにガラスリボン(1)よりも幅広であることが好ましい。また、梱包緩衝シートは、ボビン(6)のフランジ(61)間の幅寸法と実質的に同一であることが好ましい。これにより、梱包緩衝シートがボビン(6)のフランジ(61)間でずれるのを防止することができるため、ガラスリボン(1)の平面(2)や側面(3)の表面精度が悪化するのをより確実に防止することができる。
【0048】
図5は、ガラスリボン(1)を側面(3)側から見た模式図である。本発明に係るガラスリボン(1)は、下記の製造方法によって製造することができる。
【0049】
厚み2mm以下に調整されたホウ珪酸ガラスからなる母材ガラス(7)を準備する。母材ガラス(7)は、ロール成形法、フロート成形法、アップ・ドロー成形法、スロットダウンドロー成形法等の公知の成形方法により、図示しないガラス溶融炉から供給される溶融ガラスを所定寸法の略矩形状に成形して得られる。特に、オーバーフローダウンドロー法によって成形されていることが好ましい。母材ガラス(7)の表面に傷の発生がなく、高い表面品位を有する母材ガラス(7)を得ることができるからである。母材ガラス(7)の表面品位が高ければ、後述する延伸成形後のガラスリボン(1)の表面品位も高くすることが可能となり、より大きな曲率で巻き取ることが可能なガラスリボン(1)を製造することができる。
【0050】
母材ガラス(7)の側面は、未加工でもよいが、側面の4隅をいわゆるC面取りやR面取り等を行うことにより、後述する延伸成形後のガラスリボン(1)の側面(3)に形成される凸曲面部(4)が所望の形状になるように、適宜調整してもよい。
【0051】
次に、母材ガラス(7)を
図5に示すように延伸成形装置(8)にセットし、厚み100μm以下になるように、引き出すことによって、側面(3)に火造り面の凸曲面部(4)を有するガラスリボン(1)が得られる。
【0052】
母材ガラス(7)として厚み2mm以下の薄板ガラスを使用し、厚み100μm以下となるように引き出すことによって、側面に凸曲面部(4)を有するガラスリボンを製造することができる。母材ガラスの厚みが2mmを超える場合や、ガラスリボン(1)の厚みが100μmを超える場合は、形成されるガラスリボン(1)に角部が形成されたり、耳部が形成されたりするおそれがある。母材ガラス(7)は、厚み0.5mm以下であることが好ましく、0.1mm以下であることが、より好ましい。また、母材ガラス(7)の厚みに対する幅のアスペクト比が25〜2000であることが好ましい。
【0053】
延伸成形は、母材ガラス(7)の粘度が
106.0〜109.0dPa・sとなる温度で行うことが好ましい。これにより、ガラスリボン幅方向における反りや両端部での折れ曲がり、偏肉等もなく均一の厚みを有する平坦なガラスリボンを得ることができる。一方、母材ガラス(7)の粘度が
106.0dPa・sを下回る温度(より高い温度)で延伸成形を行った場合は、アスペクト比が大きく変化するおそれがあるため、好ましくない。また、母材ガラス(7)の粘度が、
109.0dPa・sを上回る温度(より低い温度)では、粘度が高すぎることにより延伸成形を行い難くなるため、好ましくない。側面に凸曲面部(4)を有するガラスリボンを製造するためには、母材ガラス(7)の粘度が
106.0〜107.5dPa・sとなる温度で行うことが、より好ましい。特に、母材ガラス(7)の厚みが0.5mm以下であり、且つ、延伸成形後のガラスリボン(1)の厚みが25μm以下で、粘度が
106.0〜107.0dPa・sとなるように引き出しを行った場合は、側面が火造り面の凸曲面部となり、側面(3)に平面部(31)を有しなくなるため、最も好ましい。一方で、アスペクト比の変化を避けるならば、側面の凸曲面は小さくなる傾向であるが、母材ガラス(7)の粘度が
107.5〜109.0dPa・sとなる温度で行うことが、より好ましい。特に、粘度が
108.0〜109.0dPa・sとなる温度で引き出しを行った場合は、アスペクト比の変化が実質起こらない。
【0054】
延伸成形は、巻き取りドラム(9)を使用して行う。公知の延伸成形では、1対のローラでガラスを挟持することによって、引っ張り力を付与するが、本発明に係るガラスリボン(1)を1対のローラで挟持することによって引っ張り力を付与しようとすると、ガラスリボン(1)が薄すぎることにより、1対のローラによる圧力によってガラスリボン(1)が破断してしまう。また、テンションローラを千鳥に配置し、ガラスリボン(1)をジグザグ状(S字状)に引っ張ることによって、テンションを付与することも考えられるが、ガラスリボン(1)の両面がローラと接触することとなり、表面品位が悪化するおそれがある。そこで、本製造方法では、延伸後のガラスリボン(1)を、直接巻き取りドラム(9)によって巻き取ることによって、延伸成形の際の引っ張り力を付与している。引っ張り力の調整(延伸速度の調整)は、巻き取りドラム(9)の巻き取り速度で調節する。これにより、表面品位の高いガラスリボン(1)を得ることができる。
図5では、フランジを有する巻き取りドラム(9)を使用しているが、フランジなしの形態でもよい。
【0055】
巻き取りドラム(9)によって巻き取られたガラスリボン(1)は、所定長毎(所定重量毎)に切断される。巻き取りドラム(9)の交換がされたあと、ガラスリボン(1)の巻き取りを再度開始する。巻き取りドラム(9)によって巻き取られたガラスリボン(1)を、そのままの形態で梱包、出荷してもよいが、ボビン(6)に巻きなおしを行うことによって、小分けにして出荷してもよい。また、巻き取りドラム(9)を使用する代わりに、直接ボビン(6)に巻き取りを行ってもよい。
【0056】
上述の製造方法によって得られた本発明に係るガラスリボン(1)は、
図6に示す通り、人間の指に巻きつけても破断せず、大きな曲率(小径のボビン等)に巻き取ることが可能である。
【実施例】
【0057】
以下、本発明のガラスリボンを実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)母材ガラスとして、日本電気硝子株式会社製BDA(軟化点740℃)の成形体(幅50mm、厚み0.3mm)を準備した。
【0059】
母材ガラスを、延伸成形装置にセットし、温度785℃(母材ガラスの粘度
106.7dPa・s)に保持された成形炉の供給口から6mm/minの速度で搬入し、巻き取りドラムで巻き取ることによって引き出し口から1350mm/minで引き出し、幅3.0mm、厚み22μm(アスペクト比135)のガラスリボンを得た。
【0060】
このガラスリボン(幅3.0mm)の厚みを、厚み測定装置(株式会社ニコン社製NEXIVを使用し、幅方向等間隔に5点(両端部、右端部と左端部から0.75mmの位置、中央(両端部から1.5mmの位置)の計5点)測定した。測定された厚みは、21.5μm〜22.0μmであり、偏肉は、0.5μm(厚みの約2%)であった。
【0061】
このガラスリボンを幅方向に切断し、その切断面を顕微鏡で確認したところ、側面は凸曲面で構成されていた。
った。
【0062】
このガラスリボンを直径4mmのガラス棒に巻きつけたところ、破断することはなかった。
【0063】
(実施例2)母材ガラスとして、日本電気硝子株式会社製BDA(軟化点740℃)の成形体(幅50mm、厚み0.3mm)を準備した。
【0064】
母材ガラスを、延伸成形装置にセットし、温度785℃(母材ガラスの粘度
106.7dPa・s)に保持された成形炉の供給口から4mm/minの速度で搬入し、巻き取りドラムで巻き取ることによって引き出し口から900mm/minで引き出し、幅3.3mm、厚み20μm(アスペクト比167)のガラスリボンを得た。
【0065】
このガラスリボンを幅方向に切断し、その切断面を顕微鏡で確認したところ、側面は凸曲面で構成されていた。
【0066】
このガラスリボンを直径4mmのガラス棒に巻きつけたところ、破断することはなかった。
【0067】
このガラスリボン(幅3.3mm)の厚みを、実施例1と同様の方法で測定した。測定された厚みは、20.2μm〜21.0μmであり、偏肉は、0.8μm(厚みの約4%)であった。アスペクト比が小さくなる変化を相殺するために、炉内温度分布の補正と延伸速度の補正を実施し延伸整形の過程で横方向へ引き伸ばす効果を与えた。その結果、中央部が薄くなった。
【0068】
(実施例3)母材ガラスとして、日本電気硝子株式会社製BDA(軟化点740℃)の成形体(幅50mm、厚み0.3mm)を準備した後、実施例2と同様の温度条件で延伸成形を行うことにより、幅1mm、厚み6μmのガラスリボンを得た。
【0069】
このガラスリボンを直径1mmのガラス棒に巻きつけたところ、破断することはなかった。
【0070】
(実施例4)母材ガラスとして、日本電気硝子株式会社製BDA(軟化点740℃)の成形体(幅100mm、厚み1.5mm)を準備した後、実施例2と同様の温度条件で延伸成形を行うことにより、幅2mm、厚み30μmのガラスリボンを得た。
【0071】
このガラスリボンを直径8mmのガラス棒に巻きつけたところ、破断することはなかった。
【0072】
(実施例5)母材ガラスとして、日本電気硝子株式会社製BDA(軟化点740℃)の成形体(幅50mm、厚み0.2mm)を準備した。
【0073】
母材ガラスを、延伸成形装置にセットし、温度725℃(母材ガラスの粘度
108.0dPa・s)に保持された成形炉の供給口から8mm/minの速度で搬入し、巻き取りドラムで巻き取ることによって引き出し口から800mm/minで引き出し、幅5.0mm、厚み20μm(アスペクト比250)のガラスリボンを得た。
【0074】
このガラスリボン(幅5.0mm)の厚みを、実施例1と同様の方法で測定した。測定
された厚みは、19.7μm〜20.1μmであり、偏肉は、0.4μm(厚みの約2%)であった。延伸成形粘度を
108.0dPa・sとしたため、アスペクト比の変化が小さく、引き伸ばしの補正が不要であるために、偏肉が小さい。
【0075】
このガラスリボンを幅方向に切断し、その切断面を顕微鏡で確認したところ、凸曲面部で曲率が極大となる部分における曲率半径は2um以下(肉厚の10%以下)であった。
【0076】
このガラスリボンを直径4mmのガラス棒に巻きつけたところ、破断することはなかった。
【0077】
(実施例6)母材ガラスとして、日本電気硝子株式会社製の延伸成形可能な結晶化ガラスKS−108(軟化点1140℃)の(幅50mm、厚み0.5mm)を準備した。
【0078】
母材ガラスを、延伸成形装置にセットし、温度1175℃(母材ガラスの粘度
107.5dPa・s)に保持された成形炉の供給口から4mm/minの速度で搬入し、巻き取りドラムで巻き取ることによって引き出し口から2500mm/minで引き出し、幅2.0mm、厚み20μm(アスペクト比100)の結晶化ガラス製ガラスリボンを得た。