特許第5776877号(P5776877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776877
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】はんだ用フラックスおよびはんだ組成物
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   B23K35/363 C
   B23K35/363 E
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-52377(P2011-52377)
(22)【出願日】2011年3月10日
(65)【公開番号】特開2011-224652(P2011-224652A)
(43)【公開日】2011年11月10日
【審査請求日】2013年10月9日
(31)【優先権主張番号】特願2010-77618(P2010-77618)
(32)【優先日】2010年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】吉本 哲也
【審査官】 鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−145668(JP,A)
【文献】 特開平06−279734(JP,A)
【文献】 特開平10−219227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/363
C09F 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線吸光光度法による254nm以上の領域での最大吸光度A(測定条件:試料濃度1g/dm3、セル長1cm)が0.15以下であり、メチル化処理物のガスクロマトグラフ質量分析により測定された分子量320の成分の含有量が分子量314〜320の成分の合計量の95%以上であり、昇温速度5℃/分の熱重量測定における99%重量損失温度が500℃以下のロジン誘導体であるロジン類(A)を含有することを特徴とするはんだ用フラックス。
【請求項2】
ロジン類(A)の色調が300ハーゼン以下であることを特徴とする請求項1に記載のはんだ用フラックス。
【請求項3】
はんだ粉末および請求項1又は2記載のはんだ用フラックスを含有するはんだ組成物。
【請求項4】
はんだ粉末が鉛フリーはんだ粉末である請求項に記載のはんだ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ用フラックスおよびはんだ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ロジン類は、はんだ粉末の表面の酸化皮膜を除去する作用(清浄化作用)、はんだ粉末の再酸化を防止する作用(ベース樹脂作用)を有することから、はんだ用フラックスにひろく使用されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、通常、ロジン類には、分子内に共役二重結合を有するアビエタン系の樹脂酸(アビエチン酸、レボピマル酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸等)が含まれている。アビエタン系の樹脂酸は、非常に酸化されやすいため、変色や品質劣化を生じるなど熱安定性が悪いという問題があった。
【0004】
そこで、ロジン類の安定化等を目的としてロジンの水素化物(水添ロジン)、不均化物(不均化ロジン)等を使用することが提案されている(たとえば、特許文献2参照)。水添ロジンや不均化ロジンを用いた場合には、変色や品質劣化をある程度改善できるものの、さらなる改善が求められていた。なお、本願人は、リフロー後の残渣の色調が良好な水素化重合ロジンを含有するはんだフラックスを提案していた(特許文献3参照)が、よりフラックス残渣の色調が良好なはんだフラックスが求められていた。
【0005】
【特許文献1】特開平9−10988号公報
【特許文献2】特開2002−144077号公報
【特許文献3】特開2009−285715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、はんだ付け性が良好で、フラックス残渣の色調に優れ、残渣が目立たず、かつ、フラックス残渣を低減するはんだ組成物およびそのようなはんだ組成物を提供できるフラックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討した結果、特定の成分を含有するロジン類を用いることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】

すなわち、本発明は、紫外線吸光光度法による254nm以上の領域での最大吸光度A(測定条件:試料濃度1g/dm3、セル長1cm)が0.15以下であり、メチル化処理物のガスクロマトグラフ質量分析により測定された分子量320の成分の含有量が分子量314〜320の成分の合計量の95%以上であり、昇温速度5℃/分の熱重量測定における99%重量損失温度が500℃以下のロジン誘導体であるロジン類(A)を含有するはんだ用フラックス;粉末はんだおよび当該はんだ用フラックスを含有するはんだ組成物に関する
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、はんだ付け性が良好で、フラックス残渣の色調に優れ、残渣が目立たず、かつ、フラックス残渣を低減するはんだ用フラックスを提供することができる。また、本発明のはんだ用フラックスは、耐熱性に優れ、色調が良好なはんだ組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のはんだ用フラックスは、紫外線吸光光度法による254nm以上の領域での最大吸光度A(測定条件:試料濃度1g/dm、セル長1cm)が0.15以下であり、メチル化処理物のガスクロマトグラフ質量分析により測定された分子量320の成分の含有量が分子量314〜320の成分の合計量の95%以上であるロジン類(A)(以下、成分(A)という)を含有することを特徴とする。
【0011】
(A)成分の紫外線吸光光度法による254nm以上の領域での最大吸光度A(測定条件:試料濃度1g/dm、セル長1cm)が0.15を超える場合や、メチル化処理物のガスクロマトグラフ質量分析により測定された分子量320の成分の含有量が分子量314〜320の成分の合計量の95%未満となる場合は、分子中に反応性の高い共役2重結合や、各種の不純物を含有するため、はんだ組成物とした場合のはんだ付け時の耐熱安定性が悪化する。なお、成分(A)において、紫外線吸光光度法による254nm以上の領域での吸光度は主に、炭素−炭素不飽和結合に関するピークであり、当該値が大きくなることは分子中に不飽和結合が多くなることを意味する。また、着色性の不純物が多ければ、当該値が大きくなると考えられる。炭素−炭素不飽和結合は、反応性に富むため、酸素やはんだ組成物中の様々な成分と反応を起こしやすく、着色の原因となったり、不要な化合物の生成に繋がったりする。また、メチル化処理物の分子量が320の成分とは、成分(A)の樹脂酸成分のカルボキシル基がメチル化され、カルボン酸エステルとなったもののうち、分子内の炭素−炭素不飽和結合がすべて水素化されたものに相当する。分子量が314の成分とは、分子内に炭素−炭素不飽和結合を3つ有するものに相当する。そのため、分子量320の成分の含有量が分子量314〜320の成分の合計量の95%以上であるということは、当該成分(A)中に含まれる炭素−炭素不飽和結合を有する成分が極めて少ないことを意味する。
【0012】
成分(A)は、通常、ウッドロジン、トール油ロジン、ガムロジン等の天然ロジン類および不均化ロジン、水添ロジン等のロジン誘導体(a)(以下、成分(a)という)を水素化することにより、テトラヒドロアビエチン酸およびテトラヒドロピマル酸等のメチル化処理物のガスクロマトグラフ質量分析により測定された分子量320の成分の含有量が分子量314〜320の成分を含む成分の合計量の95%以上となるようにすることで得られる。なお、成分(a)は精製しておくことで、色調の向上や不純物の削減が出来るため好ましい。精製方法としては特に限定されないが、具体的には、例えば、蒸留、再結晶、抽出等が挙げられる。蒸留の場合は、例えば、未精製の成分(a)を通常は温度200〜300℃程度、圧力130〜1300Pa程度の範囲の蒸留条件で行う。蒸留時間は蒸留条件に応じて決定すればよい。再結晶の場合は、例えば、未精製の成分(a)を良溶媒に溶解し、ついで溶媒を留去して濃厚な溶液とし、この溶液に貧溶媒を添加することにより行なうことができる。良溶媒としてはベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、炭素数1〜3の低級アルコール、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等の酢酸エステル類等が挙げられる。貧溶媒としてはn−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、イソオクタン等が挙げられる。更に上記精製は未精製の成分(a)を、アルカリ水を用いてアルカリ水溶液となし、生じた不溶性の不ケン化物を有機溶媒により抽出した後、水層を中和してもよい。
【0013】
成分(a)の水素化は、公知の方法により行うことができる。具体的には、例えば、水素化触媒の存在下、通常1〜25MPa程度、好ましくは5〜20MPaの水素加圧下で0.5〜7時間程度、好ましくは1〜5時間、成分(a)を加熱することにより行なう。水素化触媒としては、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、白金およびニッケル等の金属をアルミナ、シリカ、珪藻土、カーボン、チタニア等の担体に担持した担持触媒、ニッケル、白金等の金属粉末、ヨウ素、ヨウ化鉄等のヨウ化物等、各種公知のものを使用することができる。これらのなかでは、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたは白金系触媒が水素化効率(水素化率が良い、水素化時間が短い)の点で好ましい。該触媒の使用量は、成分(a)100重量部に対して、通常0.01〜10重量部程度、好ましくは0.01〜5重量部である。また、水素化温度は100〜300℃程度、好ましくは150〜290℃である。また、水素化は、必要に応じて、ロジンを溶剤に溶解した状態で行ってもよい。使用する溶剤は特に限定されないが、反応に不活性で原料や生成物が溶解しやすい溶剤が好ましい。たとえば、シクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、デカリン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を1種または2種以上を組み合わせて使用できる。溶剤の使用量は特に制限されないが、通常、原料樹脂に対して固形分が10重量%程度以上となるように用いる。好ましくは10〜70重量%の範囲である。なお、一般的な水素化条件で水素化した水添ロジンの場合には、メチル化処理物のガスクロマトグラフ質量分析により測定された分子量320の成分の含有量は、分子量314〜320の成分の合計量の20重量%程度までしか増加しない。そのため、成分(A)を得るためには、成分(a)の水素化を繰り返す、触媒使用量を増やす、水素化温度を高める、水素圧を高める、反応時間を延ばす等、水素化条件を厳しくしたり触媒種を選定したりする必要がある。
【0014】
このようにして得られた成分(A)の軟化点(環球法)は、特に限定されないが、通常、60℃程度以上とすることが好ましい。軟化点が60℃未満の成分(A)は脱炭酸等による低分子成分が増加しており、酸価の低下に伴う活性の低下等に繋がる。成分(A)の酸価は、特に限定されないが、通常、150mgKOH/g程度以上とすることが好ましい。酸価が150mgKOH/g未満の成分(A)は脱炭酸等による低分子成分が増加しており、酸価の低下に伴う活性の低下等に繋がる。成分(A)の色調を300ハーゼン(JIS K 0071−1)以下の無色透明とすることで、フラックス残渣の色調が良好となるため好ましい。また、成分(A)を、昇温速度5℃/分の熱重量測定における99%重量損失温度が500℃以下であるロジン誘導体とすることで、フラックス残渣が少なくなるため好ましい。
【0015】
本発明のはんだ用フラックスは、フローソルダリングに用いるポストフラックス、リフローソルダリングに用いられるクリームはんだ等のフラックス、マニュアルソルダリングに用いられるヤニ入りはんだ等のフラックスに使用できる。
【0016】
本発明のはんだ用フラックスは、成分(A)を含有することを特徴とするものであるが、さらに、公知の成分(A)以外のフラックスベース樹脂、チキソ剤、活性剤、これら以外の添加剤等を含有してもよい。
【0017】
フラックスベース樹脂としては、成分(A)と異なるものであれば、特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、ガムロジン、重合ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、その他各種ロジン誘導体や、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、テルペン樹脂、ポリアミド樹脂等の合成樹脂などが挙げられる。
【0018】
溶剤としては、特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール類、ブチルカルビトール、ヘキシルカルビトール等のグリコールエーテル類、酢酸イソプロピル、プロピオン酸エチル、安息香酸ブチル、アジピン酸ジエチル等のエステル類、n−ヘキサン、ドデカン、テトラデセン等の炭化水素類等が挙げられる。
【0019】
チキソ剤としては、特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、硬化ひまし油、蜜ロウ、カルナバワックス、ステアリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸エチレンビスアミド等を使用することができる。
【0020】
活性剤としては、特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、アミンのハロゲン化水素酸塩、有機酸類や有機アミン類等が挙げられる。
【0021】
添加剤としては、通常フラックスの調製に用いることができるものであれば特に限定されず公知のものを用いることができる。酸化防止剤、防黴剤、艶消し剤等の添加剤を含有することができる。
【0022】
本発明のはんだ組成物は、はんだ粉末および上記はんだ用フラックスを含有するものである。
【0023】
本発明で用いられるはんだ粉末の合金組成は特に限定されず、各種公知のものを使用できる。たとえば、はんだ粉末の合金組成としては、従来公知の錫−鉛合金や、鉛フリーはんだとして開発されている錫−銀合金、錫−亜鉛系合金等;さらには上記はんだ合金に、銅、ビスマス、インジウム、アンチモン等を添加したもの等を使用できる。クリームはんだの各成分の使用量は特に限定されないが、通常、はんだ粉末80〜95重量部程度に対してはんだ用フラックスが5〜20重量部程度である。
【0024】
本発明のはんだ組成物には、はんだ粉末、はんだ用フラックスの他に、通常、はんだ組成物の調製に用いられる溶剤等の公知の添加物を用いてもよい。
【実施例】
【0025】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また実施例中、「%」および「部」は特に断りのない限り「重量%」、「重量部」を意味する。
【0026】
製造例1
中国産水添ロジン(広西梧州日成林産化工有限公司製)600gを1リットルのフラスコに仕込み、400Paの減圧下で蒸留し、195〜250℃で留出された成分を得た。195〜250℃で留出された成分200gと5%パラジウムアルミナ3.0g、シクロヘキサン200gを1リットルのオートクレーブに仕込み、系内を水素ガスで十分置換した後、反応初期水素圧力を6MPaとし、200℃まで昇温した後、水素圧力を10MPaとし、適宜圧力減少分を補給しながら4時間反応させた。触媒をろ別し、減圧蒸留にてシクロヘキサンを留去し、ロジン類1を得た。メチル化処理物のガスクロマトグラフ質量分析により測定された分子量320の成分の含有量は分子量314〜320の成分の合計量の100%であり、色調は200H、酸価174、軟化点84.5℃であった。
【0027】
製造例2
中国産水添ロジン(広西梧州日成林産化工有限公司製)600gを1リットルのフラスコに仕込み、400Paの減圧下で蒸留し、195〜250℃で留出された成分を得た。195〜250℃で留出された成分200gと5%パラジウムカーボン(含水率50%)3.0g、シクロヘキサン200gを1リットルのオートクレーブに仕込み、系内を水素ガスで十分置換した後、反応初期水素圧力を6MPaとし、200℃まで昇温した後、水素圧力を10MPaとし、適宜圧力減少分を補給しながら4時間反応させた。触媒をろ別し、減圧蒸留にてシクロヘキサンを留去し、ロジン類2を得た。メチル化処理物のガスクロマトグラフ質量分析により測定された分子量320の成分の含有量は分子量314〜320の成分の合計量の96%であり、色調は200H、酸価176mgKOH/g、軟化点84.5℃であった。
【0028】
製造例3
中国産不均化ロジン(梧州松脂廠製)600gを1リットルのフラスコに仕込み、400Paの減圧下で蒸留し、195〜250℃で留出された成分を得た。195〜250℃で留出された成分200gと5%パラジウムカーボン(含水率50%)0.1gを1リットルのオートクレーブに仕込み、系内を水素ガスで十分置換した後、反応初期水素圧力を6MPaとし、200℃まで昇温した後、水素圧力を10MPaとし、適宜圧力減少分を補給しながら4時間反応させた。触媒をろ別し、減圧蒸留にてシクロヘキサンを留去し、ロジン類3を得た。メチル化処理物のガスクロマトグラフ質量分析により測定された分子量320の成分の含有量は分子量314〜320の成分の合計量の31%であり、色調は90H、酸価167mgKOH/g、軟化点85.5℃であった。
【0029】
製造例4
中国産水添ロジン(広西梧州日成林産化工有限公司製)600gを1リットルのフラスコに仕込み、400Paの減圧下で蒸留し、195〜250℃で留出された成分をロジン類4とした。メチル化処理物のガスクロマトグラフ質量分析により測定された分子量320の成分の含有量は分子量314〜320の成分の合計量の17%であり、色調は250H、酸価176mgKOH/g、軟化点79.0℃であった。
【0030】
製造例5
中国産ガムロジン(広西荒川化学工業有限公司製)600gを1リットルのフラスコに仕込み、400Paの減圧下で蒸留し、195〜250℃で留出された成分を得た。195〜250℃で留出された成分450g、キシレン400g、塩化亜鉛20gおよび硫酸3gを仕込み、窒素雰囲気下100℃で6時間、反応を行った。反応性生物を1N塩酸250gで洗浄し、更に温水250gにて2回洗浄した。洗浄後のキシレン溶液は液温200℃未満、減圧度1,300Paの条件下でキシレンを留去した後、更に液温200〜275℃、減圧度400Paの条件下で分解物及び未反応物約35gを留去して重合ロジンを得た。得られた重合ロジン250gとシクロヘキサン250gと5%パラジウムカーボン(含水率50%)2.5gを1リットルのオートクレーブに仕込み、系内の酸素を除去した後、水素圧力を10MPaとし、適宜圧力減少分を補給しながら4時間反応させた。触媒をろ別し、減圧蒸留にてシクロヘキサンを留去し、ロジン類5を得た。メチル化処理物のガスクロマトグラフ質量分析により測定された分子量320の成分の含有量は分子量314〜320の成分の合計量の53%であり、色調は300H、酸価147mgKOH/g、軟化点142.0℃であった。
【0031】
(メチル化処理物のガスクロマトグラフ質量分析により測定された分子量320の成分の含有量の定量)
以下のガスクロマトグラフ質量分析装置で定量を実施した。
測定には、試料(ロジン類)0.005gをオンカラムメチル化剤(フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキサイド(PTHA)0.2モルメタノール溶液、ジーエルサイエンス(株))0.5gに溶解させ、1μlをガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)に注入し、測定を行った。分子量314〜320の成分の合計ピーク面積に対する分子量320の成分のピーク面積比を測定し、これを分子量320の成分の含有量とした。
使用装置
ガスクロマトグラフ:「Agilent6890」(商品名、Agilent Technologies Inc.製)
質量分析計:「Agilent5973」(商品名、Agilent Technologies Inc.製)
カラム:「Advance−DS」(商品名、信和化工(株)製)
【0032】
(色調)
JIS K 0071−1に準じてハーゼン単位(H)で測定した。比較例4〜6のロジン類については、ガードナー色調をJIS0071―2に準じて測定した。
【0033】
(酸価)
JIS K 0070に準じて中和滴定法で測定した。
【0034】
(軟化点)
JIS K 5902に準じて環球法で測定した。
【0035】
(吸光度)
試料(ロジン類)25.0mgを、25mlメスフラスコに精秤し、シクロヘキサンで溶解した後、25mlの秤線まで定容する。UV分光光度計((株)日立製作所製、HITACHI u−3210 spectrophotometer)にて、セル長1cmの石英セルを用いることにより吸光度を測定する。254nm以上の領域での最大吸光度を読み取った。結果を表1に示す。
【0036】
(熱重量測定における99%重量損失温度の測定)
試料(ロジン類)を用いて示差熱・熱重量同時測定装置(セイコーインスツル(株)製、商品名「TG/DTA220」)により、窒素雰囲気下で5℃/分の昇温速度にて99%重量損失温度を測定した。さらに、熱重量測定後の残渣の状態を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
1:目視で全く残渣が確認されない
2:わずかに残渣が確認されるが外観は良い
3:黒色または褐色の残渣が有り、外観が悪い
【0037】
実施例1〜2、比較例1〜6
ロジン類1〜8を用いて、下記方法により、ロジン類の加熱安定性、クリームはんだ用フラックスとポストフラックスのフラックス残渣評価(外観及び残渣低減率)及びはんだ付け性の評価を行った。
結果を表1に示す。
【0038】
(加熱安定性)
試料(ロジン類)を内径1.5cm、高さ15cmの試験管にサンプル10gをいれ、空気雰囲気下で120℃の循風乾燥機に静置して、経時による色調(ガードナー色調、JIS0071―2に準じて測定。)の変化を観察した。なお、このロジン類の加熱安定性の評価は、ロジン類を含有するはんだ用フラックス及びポストフラックスの耐熱性を推測する指標として用いることが出来る。加熱後の色調が良好なロジン類は、はんだ用フラックス等が必要な加熱安定性を有していると考えられる。
【0039】
(クリームはんだ用フラックスの調製)
試料(ロジン類)を50部、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル45部、12−ヒドロキシステアリン酸エチレンビスアミド5部を、加熱溶解させた後、冷却してフラックス組成物を作成した。
【0040】
(クリームはんだの調製)
はんだ粉末(5〜20μnの平均粒径を持つSn−Ag−Cu合金、96.5重量%/3重量%/0.5重量%)90部および上記方法で調製したフラックス10部を攪拌してクリームはんだを調製した。
【0041】
(クリームはんだのはんだ付け性)
調製したクリームはんだについて、「JIS Z3284付属書10 ぬれ効力およびディウェッティング試験」に準拠し、はんだ付け性(濡れ性)を評価したところ、いずれも良好(○:広がり度合いの区分1または2)であった。
【0042】
(クリームはんだのフラックス残渣評価)
1.残渣低減率
銅基板上に、クリームはんだをスクリーン印刷し、得られた印刷基板を窒素リフロー炉にてはんだ付けを行い(プリヒート条件:180℃で100秒、メインヒート条件:240℃で約10秒)、はんだ付け前後の基板上の残渣(フラックス残渣)重量を測定してフラックス残渣の低減率を以下の式により算出した。
残渣低減率(%)=(印刷したクリームはんだ中のフラックスの固形分量−銅基板上に残ったフラックス残渣量)/(印刷したクリームはんだ中のフラックスの固形分量)×100
固形分量:クリームはんだ中の溶剤(ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル)以外のフラックス成分
2.外観
また、はんだ付け部位を顕微鏡VW−6000((株)キーエンス製:30倍)で観察することによって、フラックス残渣の色調を以下の基準で目視判断した。
1:フラックス残渣が目立たない
2:フラックス残渣が若干目立つ
3:フラックス残渣が著しく目立つ
【0043】
(ポストフラックスの調製)
試料(ロジン類)を25部、イソプロピルアルコール75部を加熱溶解させた後、冷却してポストフラックスを作成した。
【0044】
(ポストフラックス残渣評価)
1.残渣低減率
18mm×60mmの厚さ1mmのガラス板上にポストフラックスを0.1g滴下し、270℃のホットプレート上に10秒間静置し、加熱前後の重量を測定してポストフラックス残渣の低減率を以下の式により算出した。
残渣低減率(%)=(ポストフラックス中の固形分全量−ガラス板に残ったポストフラックス残渣量)/(ポストフラックス中の固形分全量)×100
固形分量:ポストフラックス中の溶剤(イソプロピルアルコール)以外のフラックス成分
2.外観
また、外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。
1:ポストフラックス残渣が目立たない
2:ポストフラックス残渣が若干目立つ
3:ポストフラックス残渣が著しく目立つ
【0045】
(ポストフラックスのはんだ付け性)
「JIS Z3197 はんだ広がり法」に準拠し、はんだ付け性(濡れ性)を評価し、広がり率を計算した。
【0046】
【表1】
*1:ロジン類6:中国産ガムロジン
*2:ロジン類7:中国産不均化ロジン
*3:ロジン類8:中国産水添ロジン