【実施例】
【0011】
図1〜
図8は、この発明の実施例を示すものである。
図1、
図2において、1はハイブリッド車両等の電動車両に搭載されるハイブリッド駆動装置である。
ハイブリッド駆動装置1は、トルクを出力する駆動源であるエンジン2と、このエンジン2に連結される入力軸3と、2個の電動発電機としての第1電動発電機(発電用モータ)(図面上では「MG1」と記する)4及び第2電動発電機(駆動用モータ)(図面上では「MG2」と記する)5と、動力分割装置6と、左右の駆動輪7・7に駆動軸8・8を介して動力を伝達する出力軸9とを備えている。
【0012】
動力分割装置6は、差動回転する4つの回転要素を有するとともに、これら4つの回転要素を共線図上に配置した場合に、各回転要素が直線的に並ぶ遊星歯車機構としての第1遊星歯車機構10及び第2遊星歯車機構11によって構成される。
第1遊星歯車機構10は、第1サンギヤ12と、この第1サンギヤ12に噛み合う第1ピニオンギヤ13と、この第1ピニオンギヤ13に連結する第1キャリヤ14と、第1ピニオンギヤ13に噛み合う第1リングギヤ15とを備えている。
第2遊星歯車機構11は、第2サンギヤ16と、この第2サンギヤ16に噛み合う第2ピニオンギヤ17と、この第2ピニオンギヤ17に連結する第2キャリヤ18と、第2ピニオンギヤ17に噛み合う第2リングギヤ19とを備えている。
第1サンギヤ12が第1の回転要素を構成し、第1キャリヤ14と第2サンギヤ16とが一体に連結されて第2の回転要素を構成し、第1リングギヤ15と第2キャリヤ18とが一体に連結されて第3の回転要素を構成し、第2リングギヤ19が第4の回転要素を構成する。
【0013】
動力分割装置6においては、第1の回転要素と第2の回転要素と第3の回転要素と第4の回転要素とを共線図上に配置した場合、共線図が直線を成すとともに各回転要素が上記した順に共線図上に並ぶ。そして、共線図上の中央部に配置される2つの回転要素の一方に入力軸3を連結し、前記2つの回転要素の他方には出力軸9を連結している。
具体的には、第2の回転要素としての第1キャリヤ14と第2サンギヤ16とが入力軸3に連結されるとともに、第3の回転要素としての第1リングギヤ15と第2キャリヤ18とが出力ギヤ20を介して出力軸9に連結される。
また、動力分割装置6において、共線図上で両端に配置される2つの回転要素には、電動発電機を夫々連結する。
具体的には、第1の回転要素としての第1サンギヤ12には、伝達軸21を介して第1電動発電機4が連結される。第4の回転要素としての第2リングギヤ19には、第2電動発電機5が連結される。
【0014】
また、ハイブリッド駆動装置1において、入力軸3と該入力軸3を支持するケースとしての変速機ケース22との間には、入力軸3がエンジン2の回転方向と逆方向へ回転することを防止する第1ワンウェイクラッチ23が配置される。
入力軸3には、第1ワンウェイクラッチ23よりもエンジン2側で、第1オイルポンプ24が連結される。
【0015】
第1電動発電機4と第2電動発電機5とのうち共線図上で入力軸3の隣に配置される第1電動発電機4には、伝達軸21上で第2オイルポンプ25を連結する。
この場合、第2オイルポンプ25と該第2オイルポンプ25に連結される第1電動発電機4との間の伝達軸21には、第1電動発電機4が入力軸3と逆方向に回転する場合のみ、第2オイルポンプ25ヘ回転を伝達する第2ワンウェイクラッチ26が配置される。
即ち、この実施例では、ハイブリッド駆動装置1はエンジン2の入力軸3とは異なる駆動源(第1電動発電機4)で作動可能な機械式の第2オイルポンプ25を備え、また、この第2オイルポンプ25には、一方向の回転は許容し、逆方向の回転は阻止する働きを持つ第2ワンウェイクラッチ26を備え、エンジン2の入力軸3とは異なる駆動源の回転方向によって、潤滑油の供給可否を切替えることが可能とし、これにより、エンジン2が停止時にのみ、エンジン2の入力軸3とは異なる駆動源で第2オイルポンプ25を駆動可能とした。
【0016】
このような構造により、
図3、
図4に示すように、エンジン2を停止し、共線図上で出力軸3の隣に配置される第2電動発電機5を正方向に回転させて車両を前進走行させる(EV走行)場合、第1ワンウェイクラッチ23により、入力軸3がエンジン2の回転方向と逆方向に回転することが防止され、第1オイルポンプ24が逆回転することが防止できる。つまり、EV走行時(エンジン2の停止時)では、駆動力として第2電動発電機5の駆動力を用いて、第2遊星歯車機構11を介して出力軸9へと駆動力が伝達されるときに、第2遊星歯車機構11の第2サンギヤ16が第2キャリヤ18と逆方向へ回転し、入力軸3をエンジン2の回転方向と逆方向へ回転させようとする。しかし、第1ワンウェイクラッチ23の回転方向が負回転方向のため、第1ワンウェイクラッチ23が機械的にロックされ、入力軸3の逆回転を防止する。
また、この際、第2オイルポンプ25に連結された第1電動発電機4がエンジン2の回転方向と逆方向(負方向)へ回転するため、第2ワンウェイクラッチ26がロック動作して第2オイルポンプ25が駆動される。
これにより、第1オイルポンプ24を停止させつつ第2オイルポンプ25を駆動させて、潤滑必要部位ヘ潤滑油を供給できるため、2つのオイルポンプ24、25が同時に駆動されることによって生じる駆動ロスを低減できる。
【0017】
また、
図5、
図6に示すように、エンジン2と共線図上で出力軸9の隣に配置される第2電動発電機5から供給される駆動力で車両を低速で前進走行させる場合に、第2オイルポンプ25に連結される第1電動発電機4は、エンジン2と同方向ヘエンジン2の回転数よりも高い回転数で回転する。この際、入力軸3に連結された第1オイルポンプ24を駆動させる一方、第2ワンウェイクラッチ26の空転により、第2オイルポンプ25を停止させ、2つのオイルポンプ24、25が同時に駆動されることによって生じる駆動ロスを低減できる。つまり、HEVの低速走行時(エンジン2の作動)では、エンジン2の駆動力と第2電動発電機5の駆動力とは、第2遊星歯車機構11を介して出力軸9へと伝達される。このとき、第1電動発電機4は正回転方向に回転しているため、第2ワンウェイクラッチ26は空転状態となり、第2オイルポンプ25の駆動を防止する。
【0018】
また、ハイブリッド駆動装置1では、エンジン2と第2オイルポンプ25に連結される第1電動発電機4とから供給される駆動力で車両を前進走行させる場合に、第2オイルポンプ25と連結される第1電動発電機4の回転方向をエンジン2の回転方向と同―方向に維持するか回転を停止した状態とする。
これにより、
図7、
図8に示すように、エンジン2と、第2オイルポンプ25に連結される第1電動発電機4とから供給される駆動力で車両を高速で前進走行させる場合に、第1電動発電機4は、エンジン2と逆方向に回転するおそれがあるが、第1電動発電機4の回転方向をエンジン2の回転方向と同―方向に維持するか回転を停止した状態とすることで、第1オイルポンプ24を駆動しつつ第2オイルポンプ25を停止でき、2つのオイルポンプ24、25が同時に駆動されることによって生じる駆動ロスを低減することができる。つまり、HEVの高速走行時(エンジン2の作動)では、エシジン2の駆動力と第1電動発電機4の駆動力とは、第1遊星歯車機構10を介して出力軸9へと伝達される。このとき、第1電動発電機4が零(0)回転停止又は正回転方向に回転しているため、低速走行時と同様に、第2オイルポンプ25の駆動を防止する。