特許第5776895号(P5776895)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5776895-可搬式給油装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776895
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】可搬式給油装置
(51)【国際特許分類】
   B67D 7/60 20100101AFI20150820BHJP
   B67D 7/84 20100101ALI20150820BHJP
【FI】
   B67D7/60
   B67D7/84 D
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-160614(P2011-160614)
(22)【出願日】2011年7月22日
(65)【公開番号】特開2013-23261(P2013-23261A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2013年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】大関 剛
【審査官】 関 義彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭51−95610(JP,A)
【文献】 実公昭37−15(JP,Y1)
【文献】 特開昭62−196524(JP,A)
【文献】 特開昭55−97395(JP,A)
【文献】 特開昭61−178896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 7
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
握り部を有し、ドラム缶に着脱自在に配設される架台と、
該架台に設けられ、前記ドラム缶内の燃料油を車輌に給油する給油機構とを備え
前記給油機構は、
前記ドラム缶内の燃料油を汲み上げる自動又は手動のポンプと、
該ポンプで汲み上げられた燃料油が収容され、計量値を視認可能な計量升と、
該計量升から溢れた燃料油を前記ドラム缶へ戻す戻り部とを有することを特徴とする可搬式給油装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬式給油装置に関し、特に、ドラム缶から直接車輌に燃料油を供給する可搬式給油装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃料油を供給する給油所では、複数の地下タンクが埋設され、これらの地下タンク内にガソリン、軽油、灯油等の燃料油を貯留している。地下タンクには給油管が設けられ、上端のマンホールピットで横引き配管に接続され、この横引き配管がマンホールピットより導出して給油所の各給油装置に接続される。また、ハウジング本体内に配設される配管途中に設けられた給油機構を介し、先端に設けた給油ノズルによって車輌へ燃料油が供給される。
【0003】
しかし、地震等の災害が生じた場合には、前記給油管や横引き配管に大きな力が作用して亀裂が生じて給油に支障を来したり、さらに、停電時には給油装置による給油が不可能となる。
【0004】
そこで、特許文献1には、軽油等を自家用として給油するためのタンクが開示され、このようなタンク等を用い、車輌へ燃料油を給油する場合に、ドラム缶よりホースを挿入して直接車輌へ給油することも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−91493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の給油タンクは、タンク内の燃料油をホースを介して直接車輌に給油することができて地震等の災害時に有効に機能するが、ドラム缶を加工して常設の給油機構を設けるのは、特注となり、給油タンクの製造コストが高くなると共に、ドラム缶が破損したり、ドラム缶内の燃料油が劣化した場合には、給油することができないという問題がある。
【0007】
また、上記給油タンクは、計量機構が存在しないため、緊急車両等へ給油するには問題ないが、一般の車両等への燃料油の販売をすることができないという問題もあった。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来の給油タンク等における問題点に鑑みてなされたものであって、ドラム缶を加工する必要がないため、製造コストを低く抑えることができると共に、ドラム缶が破損したり、ドラム缶内の燃料油が劣化した場合でも容易に対応することができ、一般車両等へ燃料油を販売することも可能な給油装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、可搬式給油装置であって、握り部を有し、ドラム缶に着脱自在に配設される架台と、該架台に設けられ、前記ドラム缶内の燃料油を車輌に給油する給油機構とを備え、前記給油機構は、前記ドラム缶内の燃料油を汲み上げる自動又は手動のポンプと、該ポンプで汲み上げられた燃料油が収容され、計量値を視認可能な計量升と、該計量升から溢れた燃料油を前記ドラム缶へ戻す戻り部とを有することを特徴とする。
【0010】
そして、本発明によれば、握り部を有する架台がドラム缶に着脱自在に配設され、架台に給油機構が設けられるため、ドラム缶を加工する必要がなく、製造コストを低く抑えることができる。また、ドラム缶が破損したり、ドラム缶内の燃料油が劣化した場合でも、別のドラム缶に給油機構を移し換えることで、バイク、自動車等の車輌への給油を継続することができる。
【0011】
また、前記給油機構は、前記ドラム缶内の燃料油を汲み上げる自動又は手動のポンプと、該ポンプで汲み上げられた燃料油が収容され、計量値を視認可能な計量升と、該計量升から溢れた燃料油を前記ドラム缶へ戻す戻り部とを有するため、燃料油の計り売りが可能になり、一般車両等へ燃料油を販売することも可能になると共に、予め計量升に燃料油を入れておくことで、次回の給油に関わる時間を短縮することができる。また、ポンプを手動とすることで、電力を使用しないため、災害時でも給油を継続することができる。さらに、計量升から燃料油が溢れた場合でも、溢れた燃料油を戻り部からドラム缶へ戻すことができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、製造コストを低く抑えることができ、ドラム缶が破損したり、ドラム缶内の燃料油が劣化した場合でも容易に対応することも可能で、一般車両等へ燃料油を販売することができ、さらに地震等の災害時には、道路が寸断されたりして給油所へ辿り付けない地域で燃料油の定量供給を行うことも可能な給油装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明にかかる可搬式給油装置の一実施の形態を示す図であって、(a)は可搬式給油装置の使用状態を示す一部断面図、(b)は給油ノズル及びホースを収納した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明にかかる可搬式給油装置の一実施の形態を示し、この可搬式給油装置1は、握り部3(3A、3B)を有し、ドラム缶20に着脱自在な架台2と、この架台2に設けられ、ドラム缶20内に貯留された燃料油Fを車輌30に給油する給油機構4とを備える。
【0016】
架台2は、平面視円形の板状に形成され、上面縁部に一対の握り部3を備える。握り部3は、架台2の上面から上方に突出し、上部で互いに離間する方向に曲折する棒状に形成される。
【0017】
架台2には、一対のロック機構5(5A、5B)が設けられ、ロック機構5を矢印方向に回動させることで、架台2をドラム缶20の上縁部に係止又は係止状態を解除することができる。
【0018】
給油機構4は、ドラム缶20内の燃料油Fを汲み上げるための手動ポンプ7と、手動ポンプ7で汲み上げられた燃料油Fを計量する計量升8と、計量升8で計量された燃料油Fを車輌30に給油するための給油ノズル9等を備える。
【0019】
手動ポンプ7は、下部にホースカップリング10を備え、ホースカップリング10に吸込ホース11が接続され、吸込ホース11の下端がドラム缶20の底面に達する。ホースカップリング10を設けることで、手動ポンプ7に吸込ホース11を容易に接続することができる。
【0020】
手動ポンプ7には、燃料油Fを汲み上げるためのハンドル12が設けられ、ハンドル12を回転させることで、手動ポンプ7の内部の汲上機構(不図示)によって燃料油Fが吸込ホース11、ホースカップリング10及び吐出管13を経由して計量升8に導かれる。
【0021】
計量升8は、架台2の上に固定され、20リットル程度の容量を有する。計量升8は、透明又は半透明の容器として形成され、表面には目盛りが設けられ、計量升8に収容された燃料油Fを計量することができる。計量升8の上部に手動ポンプ7の吐出管13が導入されると共に、計量升8より溢れた燃料油Fをドラム缶20へ戻すため戻り部8aが備えられる。計量升8の下部には、給油ホース14の一端が接続される。給油ホース14の他端は、給油ノズル9に接続され、給油ノズル9のレバー9aを引くと計量升8内の燃料油Fが重力落下にて車輌30へ給油されるように構成される。
【0022】
次に、上記構成を有する可搬式給油装置1の動作について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1(b)に示す給油ホース14及び給油ノズル9の収納状態では、給油ホース14が架台2の周縁部に巻回され、握り部3(3A、3B)に挟持された状態で架台2上に載置され、給油ノズル9は、架台2の上に立設されたピン15によって係止されている。このように、給油をしていない時には、可搬式給油装置1をドラム缶20の上にコンパクトに載置することができる。
【0024】
車輌30に給油を行う際には、給油ノズル9を架台2の上方に持ち上げると共に、握り部3による給油ホース14の挟持を解除し、給油ホース14を引き延ばし、給油ノズル9の吐出パイプ9bを車輌30の給油タンクの給油口に挿入する。
【0025】
次に、手動ポンプ7のハンドル12を回転させ、ドラム缶20内の燃料油Fを汲み上げ、所定の量の燃料油Fを吸込ホース11、ホースカップリング10及び吐出管13を介して計量升8に導入する。この際、計量升8に導入された燃料油Fの量を、計量升8に記載された目盛りにより計測することができる。計量升8より燃料油Fが溢れた場合でも、溢れた燃料油Fを戻り部8aよりドラム缶20へ戻すことができる。
【0026】
次いで、給油ノズル9のレバー9aを引くと計量升8内に計量された所定量の燃料油Fが重力落下にて車輌30へ給油され、給油動作が完了する。
【0027】
ドラム缶20が空になった場合には、別のドラム缶20に可搬式給油装置1全体を移動させる。その際、架台2に握り部3を備えることで、移設の際に、ドラム缶20からの分離及び装着作業を容易に行うことができる。
【0028】
尚、上記実施の形態では、ドラム缶20内の所定量の燃料油Fを計量升8に汲み上げ、そのまま給油ノズル9のレバー9aを引いて車輌30へ給油したが、予め計量升8に燃料油Fを入れておくことで、車輌30への給油の際に手動ポンプ7のハンドル12を回転させずに即座に計量升8から車輌30へ給油することができ、給油に関わる時間を短縮することができる。
【0029】
また、上記実施の形態では、手動ポンプ7を設けることで、電力を使用しないで給油を行うことができ、災害時でも給油を継続することができるが、災害時の使用等を考慮しなければ、手動ポンプ7に代えて自動ポンプを設置することも可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 可搬式給油装置
2 架台
3(3A、3B) 握り部
4 給油機構
5(5A、5B) ロック機構
7 手動ポンプ
8 計量升
8a 戻り部
9 給油ノズル
9a レバー
9b 吐出パイプ
10 ホースカップリング
11 吸込ホース
12 ハンドル
13 吐出管
14 給油ホース
15 ピン
20 ドラム缶
30 車輌
図1