特許第5776903号(P5776903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5776903画像処理装置及び画像処理方法並びにプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776903
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】画像処理装置及び画像処理方法並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20060101AFI20150820BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20150820BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20150820BHJP
   G03B 15/00 20060101ALI20150820BHJP
   G03B 17/38 20060101ALI20150820BHJP
   G06K 1/12 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   G06T7/00 T
   H04N5/225 F
   H04N5/232 Z
   G03B15/00 Q
   G03B17/38 B
   G06K1/12 E
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-46743(P2012-46743)
(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公開番号】特開2013-182483(P2013-182483A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(72)【発明者】
【氏名】橋本 章吾
(72)【発明者】
【氏名】浜田 玲
(72)【発明者】
【氏名】手島 義裕
【審査官】 佐田 宏史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−293141(JP,A)
【文献】 吉永 崇、外3名,“在宅における遠隔超音波診断のための3次元空間共有ARインターフェースの開発”,日本バーチャルリアリティ学会論文誌,日本,特定非営利活動法人日本バーチャルリアリティ学会,2009年 9月30日,Vol.14, No.3,pp.413-420
【文献】 山田 一葉、外6名,“Be−code:ロゴ画像への情報埋め込み”,Visual Computing/グラフィクスとCAD合同シンポジウム2011 予稿集,日本,一般社団法人画像電子学会、(社)情報処理学会、(社)映像情報メディア学会,2011年 6月24日,pp.1-6
【文献】 西坂 信哉、外3名,“内装模様を利用した位置計測のロバスト性の向上に関する研究”,ヒューマンインタフェース学会研究報告集,日本,特定非営利活動法人ヒューマンインタフェース学会,2009年 6月 8日,Vol.11, No.3,pp.43-48
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00,5/00,7/00−7/60
H04N 5/225,5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子を備える撮像手段と、
前記撮像素子に映っている実画像を適応二値化法に従って二値化する処理を行う第1の二値化手段と、
前記第1の二値化手段により二値化された二値化画像の中から拡張現実マーカを検出する第1の検出手段と、
前記検出手段により検出された拡張現実マーカを基に二値化閾値を決定する閾値決定手段と、
前記閾値決定手段により二値化閾値が決定された後、前記撮像素子に映っている実画像をその二値化閾値を用い固定閾値二値化法に従って二値化する処理を行う第2の二値化手段と、
前記第2の二値化手段により二値化された二値化画像を基に前記拡張現実マーカを検出する第2の検出手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記実画像内の前記拡張現実マーカをフレーム毎に継続して検出する場合に前記第1の検出手段によって拡張現実マーカが検出された後の次回フレーム以降からは前記第2の検出手段によって前記拡張現実マーカを検出する、
ようにしたことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記閾値決定手段は、前記検出手段により検出された前記拡張現実マーカの領域内において、クラス内分散及びクラス間分散を基準としてクラス内分散が最小となり、クラス間分散が最大となる閾値を二値化閾値として決定する、
ようにしたことを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記閾値決定手段は、前記撮像素子に映っている実画像の全体を複数の小領域に分割し、領域毎に求めた閾値の拡張現実マーカ内の平均値を前記二値化閾値として決定する、
ようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記撮像手段による撮影時にその撮影状況に基づいて撮影パラメータを調整しながら撮影を行う撮影パラメータ調整手段を更に備え、
前記撮影パラメータ調整手段は、前記第1の検出手段によって拡張現実マーカが検出された際に、その検出時の前記撮影パラメータを維持することによって固定する、
ようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第2の検出手段により拡張現実マーカを検出することができなかった場合に、前記第1の二値化手段は、適応二値化法に従った二値化処理を再開し、前記撮影パラメータ調整手段は、前記撮影パラメータの固定を解除する、
ようにしたことを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記撮影パラメータ調整手段は、少なくともホワイトバランス、露出、フォーカスのいずれかを調整する、
ようにしたことを特徴とする請求項5あるいは請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記撮像手段により撮影された実画像内において、前記第2の検出手段により検出された拡張現実マーカの位置に所定の仮想画像を合成して表示する合成表示手段と、
前記合成表示手段が前記実画像内の拡張現実マーカの位置に仮想画像をフレーム毎に合成して表示動作中において、前記第2の検出手段が前記拡張現実マーカを検出することができなくなった時点で前記合成表示手段による表示動作を中断させると共に、前記第1の二値化手段による二値化処理を再開させる制御手段と、
を更に備える、
ようにしたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項9】
撮像素子に映っている実画像を適応二値化法に従って二値化する処理を行う第1の二値化ステップと、
前記適応二値化法に従って二値化された二値化画像の中から拡張現実マーカを検出する検出ステップと、
前記検出された拡張現実マーカを基に二値化閾値を決定する閾値決定ステップと、
前記二値化閾値が決定された後、前記撮像素子に映っている実画像をその二値化閾値を用い固定閾値二値化法に従って二値化する処理を行う第2の二値化ステップと、
前記固定閾値二値化法に従って二値化された二値化画像を基に前記拡張現実マーカを検出するする第2の検出ステップと、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
コンピュータに対して、
撮像素子に映っている実画像を適応二値化法に従って二値化する処理を行う第1の二値化機能と、
前記適応二値化法に従って二値化された二値化画像の中から拡張現実マーカを検出する検出機能と、
前記検出された拡張現実マーカを基に二値化閾値を決定する閾値決定機能と、
前記二値化閾値が決定された後、前記撮像素子に映っている実画像をその二値化閾値を用い固定閾値二値化法に従って二値化する処理を行う第2の二値化機能と、
前記固定閾値二値化法に従って二値化された二値化画像を基に前記拡張現実マーカを検出する第2の検出機能と、
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影された画像の中から拡張現実マーカを認識する画像処理装置及び画像処理方法並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スマートフォンなどの携帯端末装置にあっては、その多機能化が進み、カメラ機能(撮像機能)のほかに、AR(Augmented Reality:拡張現実)という画像処理機能が搭載されており、撮影された画像内の所定の位置に仮想画像(例えば、キャラクタ画像など)を合成して表示するようにしている。すなわち、被写体の位置又はその付近に印刷物としての拡張現実マーカ(ARマーカ:正方形の黒枠内に白パターンを描いたマーカ)が配置されている状態において、その被写体が撮像機能によって撮影されると、携帯端末装置は、その撮影画像を解析することによりその中に含まれているARマーカを認識し、このARマーカの位置に仮想画像を合成して表示するようにしている。その際、ARマーカを認識するために、撮影された画像を例えば、グレースケール化し、そのグレースケール画像を適応型二値化法を用いて二値化するようにしている。このように適応型二値化法を用いて画像を二値化する技術としては、例えば、特許文献1などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−57080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、適応型二値化法を用いて画像を二値化する技術にあっては、撮影された画像をフレーム毎に二値化処理するようにしているが、スマートフォンなどの携帯端末装置のCPU性能では処理が重くなり過ぎてしまい、処理速度が遅くなり、ARマーカをスムーズに認識することができないという問題があった。
そこで、二値化閾値を固定的に用いる固定閾値二値化法によって撮影画像を二値化するようにすればよいが、撮影された画像全体に対する二値化閾値を算出するようにしているために、ARマーカ内での最適な二値化閾値を算出することが難しくなり、処理速度は速いが、認識率が低いという問題点がある。
【0005】
本発明の課題は、拡張現実マーカの認識率向上と処理速度向上を同時に実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために本発明の画像処理装置は、
撮像素子を備える撮像手段と、
前記撮像素子に映っている実画像を適応二値化法に従って二値化する第1の二値化手段と、
前記第1の二値化手段により二値化された二値化画像の中から拡張現実マーカを検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された拡張現実マーカを基に二値化閾値を決定する閾値決定手段と、
前記閾値決定手段により二値化閾値が決定された後、前記撮像素子に映っている実画像をその二値化閾値を用い固定閾値二値化法に従って二値化する第2の二値化手段と、
前記第2の二値化手段により二値化された二値化画像を基に前記拡張現実マーカを検出する第2の検出手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置である。
【0007】
上述した課題を解決するために本発明の画像処理方法は、
撮像素子に映っている実画像を適応二値化法に従って二値化する第1の二値化ステップと、
前記適応二値化法に従って二値化された二値化画像の中から拡張現実マーカを検出する検出ステップと、
前記検出された拡張現実マーカを基に二値化閾値を決定する閾値決定ステップと、
前記二値化閾値が決定された後、前記撮像素子に映っている実画像をその二値化閾値を用い固定閾値二値化法に従って二値化する第2の二値化ステップと、
前記固定閾値二値化法に従って二値化された二値化画像を基に前記拡張現実マーカを検出する第2の検出ステップと、
を含むことを特徴とする画像処理方法である。
【0008】
上述した課題を解決するために本発明のプログラムは、
コンピュータに対して、
撮像素子に映っている実画像を適応二値化法に従って二値化する第1の二値化機能と、
前記適応二値化法に従って二値化された二値化画像の中から拡張現実マーカを検出する検出機能と、
前記検出された拡張現実マーカを基に二値化閾値を決定する閾値決定機能と、
前記二値化閾値が決定された後、前記撮像素子に映っている実画像をその二値化閾値を用い固定閾値二値化法に従って二値化する第2の二値化機能と、
前記固定閾値二値化法に従って二値化された二値化画像を基に前記拡張現実マーカを検出する第2の検出機能と、
を実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、拡張現実マーカの認識率向上と処理速度向上を同時に実現することができ、実用性に富んだものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】画像処理装置として適用したカメラ機能付き多機能型携帯電話機(スマートフォン)の基本的な構成要素を示したブロック図。
図2】拡張現実処理時に使用される拡張現実マーカ(ARマーカ)を例示した図。
図3】拡張現実撮影モードの切り換えに応じて実行開始される拡張現実処理を説明するためのフローチャート。
図4】ARマーカの領域が検出された場合にそれを特定するための4点座標を示した図。
図5】本実施形態の変形例を示し、適応型二値化処理で得られた閾値の平均値を二値化閾値として算出する場合を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図1図4を参照して説明する。
本実施形態は、画像処理装置としてカメラ機能付き多機能型携帯電話機(スマートフォン)に適用した場合を例示したもので、図1は、このカメラ機能付き多機能型携帯電話機の基本的な構成要素を示したブロック図である。
この多機能型携帯電話機は、通話機能、電子メール機能、インターネット接続機能、カメラ機能の基本機能のほか、カメラ機能によって撮影された画像内に所定の仮想画像(例えば、キャラクタ画像)を合成して表示する拡張現実処理機能などを備えている。
【0012】
CPU1は、二次電池(図示省略)を備えた電源部2からの電力供給によって動作し、記憶部3内の各種のプログラムに応じてこの携帯電話機の全体動作を制御する中央演算処理装置である。記憶部3には、プログラムメモリM1、ワークメモリM2などが設けられている。プログラムメモリM1は、図3に示した動作手順に応じて本実施形態を実現するためのプログラムや各種のアプリケーションなどが格納されているほか、それに必要とする情報などが記憶されている。ワークメモリM2は、携帯電話機が動作するために必要となる各種の情報(例えば、撮影された画像、フラグ、タイマなど)を一時的に記憶するワーク領域である。なお、記憶部3は、例えば、SDカード、ICカードなど、着脱自在な可搬型メモリ(記録メディア)を含む構成であってもよく、また、その一部が図示しない所定の外部サーバの領域を含むものであってもよい。
【0013】
無線通信部4は、音声通話機能、電子メール機能、インターネット接続機能時に使用される広域通信部であり、通話機能の動作時には音声信号処理部5を介して通話用スピーカSPから音声出力させ、また、通話用マイクMCからの入力音声データを音声信号処理部5から取り込んでアンテナから発信出力させる。タッチ入力表示部6は、表示部6Aとタッチ入力部6Bを有する構成で、高精細な表示部6Aの前面にタッチ入力部6Bを配置することによりソフトウェアキー(タッチキー)を割り当て配置してその機能名を表示したり、指などによるタッチ操作を感知してそのタッチ操作に応じたデータを入力したりするデバイスである。表示部6Aは、縦横比(横4:縦3)の異なる画面を有した高精細液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどであり、カメラ機能の使用時には撮影された画像をライブビュー画像(モニタ画像)として表示するファインダ画面となる。
【0014】
撮像部7は、被写体を高精細に撮影可能なカメラ部を構成するもので、ズームレンズやフォーカスレンズ(図示省略)などを備えたレンズ部7Aと、CCD又はCMOSなどの撮像素子7Bと、照度計などの各種のセンサを備えたセンサ部7Cを有するほか、更に撮像素子7Bで光電変換された画像信号(アナログ値の信号)に対して、色分離やRGBの色成分毎のゲイン調整などを行ってデジタル値のデータに変換するアナログ処理回路7Dと、このアナログ処理回路7Dによりデジタル変換された画像データに対して色補間処理(デモザイク処理)などを施すデジタル信号処理回路7Eを有する構成となっている。
【0015】
また、本実施形態では、例えば、夜景撮影モード、夕焼け撮影モードなどの各種の撮影モードに切り換え可能となっており、この各種の撮影モードの中には拡張現実撮影モードが含まれている。この拡張現実撮影モードは、拡張現実処理機能を使用して撮影を行う撮影モードで、この拡張現実撮影モードに切り換えられると、オートフォーカス(AF)調整機能、自動露出(AE)調整機能、自動ホワイトバランス(AWB)調整機能を動作させるようにしている。なお、AF機能は、コントラストAF方式を採用しているが、位相差AF方式であってもよく、また、AE機能は、周囲の明るさを検出する方式に限らず、画像データを基に輝度を検出する方式であってもよい。
【0016】
図2は、拡張現実処理時に使用される拡張現実マーカ(ARマーカ)を例示した図である。
ARマーカは、例えば、印刷物であり、正方形の黒枠内に任意形状の白領域のパターンを配置した構成で、黒の領域と白の領域とは所定の割合となっている。このような構成のARマーカが撮影目的の被写体自身又はその付近に配置されている状態において、その被写体が撮像部7によって撮影されると、CPU1は、撮像素子7Bに映っている画像(実画像)を解析し、その中のARマーカの黒枠部分に着目して、ARマーカの領域(黒枠の領域)を検出すると共に、ARマーカ内に描かれている白領域のパターンを特定することによりARマーカを検出するようにしている。
【0017】
ここで、本実施形態においては、撮像素子7Bに映っている実画像の中からARマーカを検出するまでは、実画像を解析してフレーム毎に適応型二値化法に従った二値化処理を行う。そして、ARマーカの検出後にあっては、検出したARマーカの領域を基にその二値化閾値を決定し、この二値化閾値を用い固定閾値二値化法に従ってそのARマーカに対する二値化処理を行い、ARマーカを追跡しながら検出するようにしている。これによって認識したARマーカの位置に所定の仮想画像(例えば、キャラクタ画像など)を合成表示させるようにしている。
【0018】
次に、本実施形態における多機能型携帯電話機の動作概念を図3に示すフローチャートを参照して説明する。ここで、このフローチャートに記述されている各機能は、読み取り可能なプログラムコードの形態で格納されており、このプログラムコードにしたがった動作が逐次実行される。また、ネットワークなどの伝送媒体を介して伝送されてきた上述のプログラムコードに従った動作を逐次実行することもできる。なお、図3は、多機能型携帯電話機の全体動作のうち、本実施形態の特徴部分の動作概要を示したフローチャートであり、この図3のフローから抜けた際には、全体動作のメインフロー(図示省略)に戻る。
【0019】
図3は、拡張現実撮影モードの切り換えに応じて実行開始される拡張現実処理を説明するためのフローチャートである。
先ず、CPU1は、ユーザ操作などにより拡張現実撮影モードに切り換えられると、拡張現実撮影アプリケーションを起動(ステップS1)させた後、オートフォーカス(AF)調整機能、自動露出(AE)調整機能、自動ホワイトバランス(AWB)調整機能の動作を開始させる(ステップS2)。この状態において、撮像素子7Bに映っている画像(実画像)を取得し(ステップS3)、この取得した実画像をその明度に応じてグレースケール化(ステップS4)した後、このグレースケールの画像に対して適応型二値化法に従った二値化処理を行う(ステップS5)。そして、二値化した二値化画像を基にARマーカを検出する処理を行う(ステップS6)。この場合、例えば、正方形の黒枠をARマーカの領域として検出するようにしている。
【0020】
その結果、ARマーカを検出することができたかを調べ(ステップS7)、ARマーカ検出することができなかったときには(ステップS7でNO)、上述のステップS3に戻って撮像素子7Bに映っている次のフレームの実画像を取得し、この取得した実画像に対してグレースケール化(ステップS4)、適応型二値化法に従った二値化処理を行う(ステップS5)。以下、ARマーカの領域を検出するまでは撮像素子7Bに映っている実画像を取得しながらフレーム毎に上述の処理を繰り返す。
【0021】
これによってARマーカを検出することができたときには(ステップS7でYES)、その検出したマーカに基づいてARマーカの領域の4点座標を取得する(ステップS8)。図4は、ARマーカが検出された場合にそれを特定するための4点座標を示した図である。ここで、黒枠の正方形の各角部A、B、C、DをARマーカの領域の4点座標として求める。この4点座標A、B、C、Dを基に二値化画像内でのARマーカの領域が特定されると、この特定したARマーカの領域内において、大津の二値化法(大津展之氏の論文、判別および最小2乗基準に基づく自動しきい値選定法」、電子通信学会論文誌、Vol.J63−D、No.4、pp.349−356(1980)を参照。)を使用して、ARマーカの領域内での二値化閾値Tを算出する(ステップS9)。この場合、大津の二値化法ではARマーカの領域内においてクラス内分散及びクラス間分散を基準として、クラス内分散が最小となり、クラス間分散が最大となる閾値を二値化閾値Tとして算出取得する。そして、そのときにオートフォーカス(AF)調整機能、自動露出(AE)調整機能、自動ホワイトバランス(AWB)調整機能によって得られた各撮影パラメータ値(フォーカス、露出、ホワイトバランス)を固定するためにAF・AE・AWB調整機能をロックする(ステップS10)。
【0022】
このようにしてARマーカの領域を検出した後は、撮像素子7Bに映っている実画像を取得し(ステップS11)、この取得した実画像に対して二値化閾値Tを用い固定閾値二値化法に従った二値化処理を行い(ステップS12)、この二値化画像を基にARマーカを認識する処理を行う(ステップS13)。この場合、ARマーカ内に描かれている白領域のパターンを特定することによりARマーカを認識するようにしている。その結果、ARマーカを認識することができなければ(ステップS14でNO)、AF・AE・AWB調整機能のロック、つまり、各撮影パラメータ値(フォーカス、露出、ホワイトバランス)の固定を解除(ステップS15)した後、上述のステップS3に戻って次のフレームの実画像を取得し、フレーム毎に適応型二値化法に従った二値化処理を再開する。
【0023】
一方、ARマーカを正常に認識することができたときには(ステップS14でYES)、画像解析によりそのARマーカの大きさ及び向きを特定すると共に(ステップS15)、認識したARマーカに対応付けられている仮想画像(例えば、キャラクタ画像など)を取得する(ステップS16)。なお、記憶部3には予めARマーカの種類に対応する仮想画像が記憶されている場合には、上述のようにした認識したARマーカの種類に対応付けられている仮想画像を記憶部3から読み出し取得するようにすればよい。
【0024】
そして、ARマーカの大きさ及び向きに応じて撮影距離及び撮影角度(撮影方向)を算出し(ステップS18)、その算出結果(撮影距離及び撮影角度)に応じたサイズ及び向きの仮想画像を生成した後、実画像内のARマーカの位置にその生成画像(仮想画像)を重畳して合成表示させる(ステップS19)。以下、拡張現実処理の終了がユーザ操作により指示されたかを調べ(ステップS20)、終了指示があれば(ステップS20でYES)、図3のフローから抜けるが、拡張現実処理の終了指示がなければ(ステップS20でNO)、上述のステップS11に戻り、以下、撮像素子7Bに映っている実画像を取得して、固定閾値二値化法に従った二値化処理を行いながら(ステップS12)、この二値化画像を基にARマーカを認識(ステップS13)する処理を繰り返す。このような仮想画像の合成表示中において、ARマーカを認識することができなくなって(ステップS14でNO)、ARマーカを見失ったときには、撮影パラメータのロックを解除した後(ステップS15)、上述のステップS3に戻り、適応型二値化処理を再開する。
【0025】
以上のように、本実施形態においてCPU1は、撮像素子7Bに映っている実画像を適応二値化法に従って二値化すると共に、この二値化画像の中からARマーカを検出して、このARマーカを基に二値化閾値を決定した後、撮像素子7Bに映っている実画像をその二値化閾値を用い固定閾値二値化法に従って二値化して、この二値化画像を基にARマーカを検出するようにしたので、適応二値化法と固定閾値二値化法の利点を併せ持つことができ、ARマーカの認識率を維持しながら処理速度を向上させることが可能となり、実用性に富んだものとなる。
【0026】
ARマーカをフレーム毎に継続して検出する場合において、実画像を適応二値化法に従った二値化によってARマーカを検出した後の次回フレーム以降からは、固定閾値二値化法に従った二値化によってARマーカを検出するようにしたので、フレーム単位で二値化法の切り換えが可能となる。
【0027】
ARマーカを基に二値化閾値を決定する場合に、ARマーカ内において、クラス内分散及びクラス間分散を基準としてクラス内分散が最小となり、クラス間分散が最大となる閾値を二値化閾値として決定するようにしたので、ARマーカにおける最適な二値化閾値を算出することができる。
【0028】
オートフォーカス(AF)調整機能、自動露出(AE)調整機能、自動ホワイトバランス(AWB)調整機能の動作を開始させた状態において、二値化閾値Tを算出した際に、そのときの撮影パラメータ(フォーカス、露出、ホワイトバランス)を維持することによりロック(固定)するようにしたので、ARマーカの領域が鮮明となり、更にマーカ認識率を向上させることができる。
【0029】
固定閾値二値化法でのARマーカの検出中に、それを検出することができなくなったときには、適応二値化法に従った二値化処理を再開すると共に、撮影パラメータの固定を解除するようにしたので、ARマーカを認識できるまで最初からやり直すことができる。
【0030】
実画像内のARマーカの位置に仮想画像をフレーム毎に合成して表示動作中において、ARマーカを検出することができなくなった時点でその表示動作を中断させると共に、適応二値化法に従った二値化処理を再開するようにしたので、一旦、ARマーカを検出した後にARマーカを見失ったときでも最初からやり直すことができる。
【0031】
なお、上述した実施形態においては、大津の二値化法を使用してARマーカの領域内における二値化閾値Tを算出するようにしたが、適応型二値化処理で得られた閾値のARマーカの領域内の平均値を二値化閾値Tとして算出するようにしてもよい。図5は、適応型二値化処理で得られた閾値の平均値を二値化閾値Tとして算出する場合を説明するための図で、撮像素子7Bに映っている実画像の全体を図5に示すような複数の小領域(例えば、正方形領域)に分割し、領域毎の閾値T1、T2、T3、…Tnの拡張現実マーカの領域内の平均値を二値化閾値Tとして算出するようにしてもよい。
【0032】
また、上述した実施形態においては、固定閾値二値化法に従った二値化処理の開始タイミングをARマーカの領域(黒枠領域)の検出時とした場合を例示したが、その開始タイミングはマーカの検出時(マーカ認識時)であってもよい。
【0033】
また、ARマーカの領域内での重み付けによる加重平均(ガウシアンの重み付け)から二値化閾値Tを決定するようにしてもよい。つまり、ARマーカの領域内での最適な二値化閾値Tを算出することができれば、その手法は問わない。
【0034】
また、上述した実施形態においては、二値化閾値Tを算出した際に、そのときの撮影パラメータにロックするようにしたが、ARマーカが検出された際に、そのときの撮影パラメータにロックするようにしてもよい。
【0035】
また、上述した実施形態においては、カメラ機能付き多機能型携帯電話機(スマートフォン)に適用した場合を例示したが、これに限らず、カメラ機能付きパーソナルコンピュータ・PDA(個人向け携帯型情報通信機器)・音楽プレイヤー・電子ゲーム機などであってもよく、勿論、デジタルカメラ自体であってもよい。
【0036】
また、上述した実施形態において示した“装置”や“部”とは、機能別に複数の筐体に分離されていてもよく、単一の筐体に限らない。また、上述したフローチャートに記述した各ステップは、時系列的な処理に限らず、複数のステップを並列的に処理したり、別個独立して処理したりするようにしてもよい。
【0037】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は、これに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下、本願出願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記)
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、
撮像素子を備える撮像手段と、
前記撮像素子に映っている実画像を適応二値化法に従って二値化する処理を行う第1の二値化手段と、
前記第1の二値化手段により二値化された二値化画像の中から拡張現実マーカを検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された拡張現実マーカを基に二値化閾値を決定する閾値決定手段と、
前記閾値決定手段により二値化閾値が決定された後、前記撮像素子に映っている実画像をその二値化閾値を用い固定閾値二値化法に従って二値化する処理を行う第2の二値化手段と、
前記第2の二値化手段により二値化された二値化画像を基に前記拡張現実マーカを検出する第2の検出手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置である。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像処理装置において、
前記実画像内の前記拡張現実マーカをフレーム毎に継続して検出する場合に前記第1の検出手段によって拡張現実マーカが検出された後の次回フレーム以降からは前記第2の検出手段によって前記拡張現実マーカを検出する、
ようにしたことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
(請求項3) 請求項3に記載の発明は、請求項1あるいは請求項2に記載の画像処理装置において、
前記閾値決定手段は、前記検出手段により検出された前記拡張現実マーカの領域内において、クラス内分散及びクラス間分散を基準としてクラス内分散が最小となり、クラス間分散が最大となる閾値を二値化閾値として決定する、
ようにしたことを特徴とする画像処理装置である。
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の画像処理装置において、
前記閾値決定手段は、前記撮像素子に映っている実画像の全体を複数の小領域に分割し、領域毎に求めた閾値の拡張現実マーカ内の平均値を前記二値化閾値として決定する、
ようにしたことを特徴とする画像処理装置である。
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の画像処理装置において、
前記撮像手段による撮影時にその撮影状況に基づいて撮影パラメータを調整しながら撮影を行う撮影パラメータ調整手段を更に備え、
前記撮影パラメータ調整手段は、前記第1の検出手段によって拡張現実マーカが検出された際に、その検出時の前記撮影パラメータを維持することによって固定する、
ようにしたことを特徴とする画像処理装置である。
(請求項6)
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の画像処理装置において、
前記第2の検出手段により拡張現実マーカを検出することができなかった場合に、前記第1の二値化手段は、適応二値化法に従った二値化処理を再開し、前記撮影パラメータ調整手段は、前記撮影パラメータの固定を解除する、
ようにしたことを特徴とする画像処理装置である。
(請求項7)
請求項7に記載の発明は、請求項5あるいは請求項6に記載の画像処理装置において、
前記撮影パラメータ調整手段は、少なくともホワイトバランス、露出、フォーカスのいずれかを調整する、
ようにしたことを特徴とする画像処理装置である。
(請求項8)
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の画像処理装置において、
前記撮像手段により撮影された実画像内において、前記第2の検出手段により検出された拡張現実マーカの位置に所定の仮想画像を合成して表示する合成表示手段と、
前記合成表示手段が前記実画像内の拡張現実マーカの位置に仮想画像をフレーム毎に合成して表示動作中において、前記第2の検出手段が前記拡張現実マーカを検出することができなくなった時点で前記合成表示手段による表示動作を中断させると共に、前記第1の二値化手段による二値化処理を再開させる制御手段と、
を更に備える、
ようにしたことを特徴とする画像処理装置である。
(請求項9)
請求項9に記載の発明は、
撮像素子に映っている実画像を適応二値化法に従って二値化する処理を行う第1の二値化ステップと、
前記適応二値化法に従って二値化された二値化画像の中から拡張現実マーカを検出する検出ステップと、
前記検出された拡張現実マーカの領域を基に二値化閾値を決定する閾値決定ステップと、
前記二値化閾値が決定された後、前記撮像素子に映っている実画像をその二値化閾値を用い固定閾値二値化法に従って二値化する処理を行う第2の二値化ステップと、
前記固定閾値二値化法に従って二値化された二値化画像を基に前記拡張現実マーカを検出する第2の検出ステップと、
を含むことを特徴とする画像処理方法である。
(請求項10)
請求項10に記載の発明は、
コンピュータに対して、
撮像素子に映っている実画像を適応二値化法に従って二値化する処理を行う第1の二値化機能と、
前記適応二値化法に従って二値化された二値化画像の中から拡張現実マーカを検出する検出機能と、
前記検出された拡張現実マーカを基に二値化閾値を決定する閾値決定機能と、
前記二値化閾値が決定された後、前記撮像素子に映っている実画像をその二値化閾値を用い固定閾値二値化法に従って二値化する処理を行う第2の二値化機能と、
前記固定閾値二値化法に従って二値化された二値化画像を基に前記拡張現実マーカを検出する第2の検出機能と、
を実現させるためのプログラムである。
【符号の説明】
【0038】
1 CPU
3 記憶部
6 タッチ入力表示部
7 撮像部
7A レンズ部
7B 撮像素子
7C センサ部
7D アナログ処理回路
7E デジタル信号処理回路
T 二値化閾値
図1
図2
図3
図4
図5