特許第5776909号(P5776909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776909
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】電動車両の充電制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20060101AFI20150820BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20150820BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20150820BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20150820BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   H02J7/02 B
   H02J7/00 P
   H02J7/00 X
   B60L11/18 C
   H01M10/48 P
   H01M10/44 Q
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-544174(P2012-544174)
(86)(22)【出願日】2011年11月2日
(86)【国際出願番号】JP2011075278
(87)【国際公開番号】WO2012066934
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2014年5月12日
(31)【優先権主張番号】特願2010-255351(P2010-255351)
(32)【優先日】2010年11月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 潤
【審査官】 赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−073903(JP,A)
【文献】 特開2008−083022(JP,A)
【文献】 特開2000−023383(JP,A)
【文献】 特開2009−077558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00−3/12,
B60L7/00−13/00,
B60L15/00−15/42,
H01M10/42−10/48,
H02J7/00−7/12,
H02J7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源から充電器を介して供給される電力によって車両に搭載された走行用バッテリの充電を行う電動車両の充電制御装置であって、
前記走行用バッテリの充電効率を演算する充電効率演算手段と、
前記走行用バッテリの充電率を演算する充電率演算手段と、
前記充電効率に基づいて前記充電器を制御して前記走行用バッテリを充電する第1の充電モードと、前記充電率に基づいて前記充電器を制御して前記走行用バッテリを充電する第2の充電モードとを、前記車両のユーザの要求に応じて切り替える切り替え手段と、
前記外部電源から前記充電器へ供給される電力を演算する充電器供給電力演算手段と、
前記充電器から前記走行用バッテリへ供給される電力を演算するバッテリ供給電力演算手段と、を備え、
前記充電効率演算手段は、前記充電器供給電力演算手段及び前記バッテリ供給電力演算手段の演算結果に基づいて充電効率を演算する
ことを特徴とする電動車両の充電制御装置。
【請求項2】
前記充電効率演算手段によって演算された前記走行用バッテリの充電効率が所定値よりも低いか否かを判定する第1の判定手段を更に備え、
前記切り替え手段により前記第1の充電モードが選択され、かつ、前記第1の判定手段によって前記充電効率が所定値よりも低いと判定された際に、前記充電器を制御して前記走行用バッテリの充電を停止させることを特徴とする請求項1に記載の電動車両の充電制御装置。
【請求項3】
前記充電効率演算手段は、前記充電器から前記走行用バッテリへ供給される電力を前記外部電源から前記充電器へ供給される電力で除した値を前記充電効率と定めることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動車両の充電制御装置。
【請求項4】
前記充電率演算手段によって演算された前記走行用バッテリの充電率が所定値に達したか否かを判定する第2の判定手段を更に備え、
前記切り替え手段により前記第2の充電モードが選択され、かつ、前記第2の判定手段によって前記充電率が所定値に達したと判定された際に、前記充電器を制御して前記走行用バッテリの充電を停止させることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の電動車両の充電制御装置。
【請求項5】
前記車両に備えられた表示部に前記走行用バッテリの充電状態を表示させる充電状態表示手段を、さらに備え、
該充電状態表示手段が、前記充電状態として少なくとも前記充電効率を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の電動車両の充電制御装置。
【請求項6】
前記充電状態表示手段は、前記充電状態として前記充電効率と共に前記充電率を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項5に記載の電動車両の充電制御装置。
【請求項7】
前記充電状態表示手段は、前記充電効率の高さをセグメントの高さとして前記表示部に表示させることを特徴とする請求項5又は6に記載の電動車両の充電制御装置。
【請求項8】
前記充電状態表示手段は、前記充電効率の変化をセグメントの色の変化として前記表示部に表示させることを特徴とする請求項5又は6に記載の電動車両の充電制御装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両に搭載された走行用バッテリ(二次電池)の充電を制御する電動車両の充電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車(BEV)やプラグインハイブリッド自動車(PHV)等の電動車両が多数実用化されている。このような電動車両に搭載されている走行用バッテリは、例えば、車体の充電口に接続された充電用ケーブルを介して家庭用電源等の商用電源から供給される電力によって充電される。
【0003】
充電の制御方法としては、例えば、一定の電流で走行用バッテリを充電する定電流充電、一定の電圧で充電する定電圧充電、一定の電力で充電する定電力充電等があり、またこれらを組み合わせた充電の制御方法が様々提案されている。具体的には、充電の初期段階では、電力量を一定とする定電力充電を実施し、走行用バッテリの充電率(SOC)が上昇して電圧が所定値に達すると、定電力充電を終了して一定の電圧で充電する定電圧充電を実施する方法が一般的に多く採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−284685号公報(図5等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような制御方法によって充電を行うことで、走行用バッテリの過充電を防止しつつ、充電時間(走行用バッテリが満充電になるまでの時間)の短縮を図ることができる。
【0006】
しかしながら定電圧充電では、走行用バッテリの電圧を一定に保つために入力が絞られる。このため同じ電力量を充電しようとすると、定電力充電時よりも長い時間がかかってしまう。また充電のための電力の一部は、電動車両に搭載されている各種補機等によって常に消費されている。したがって、消費電力の割合は、定電力充電時よりも定電圧充電時の方が高くなり、結果として定電圧充電時の充電効率は定電力充電時に比べて低くなってしまう。
【0007】
なお上述した充電の制御方法に拘わらず、走行用バッテリの過充電を防止するためには入力を絞る必要がある。すなわち走行用バッテリを満充電とするためには、何れの充電の制御方法を採用したとしても、充電期間中には相対的に充電効率の低い期間が生じてしまう。
【0008】
また通常、電動車両に搭載されている走行用バッテリの充電は、走行用バッテリが満充電になるまで行われている。これにより電動車両の航続距離を最大限長くすることができるが、ユーザによっては必ずしも長い航続距離を要さないこともある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ユーザの要求に応じて走行用バッテリに対する経済性の高い充電を実現することができる電動車両の充電制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、外部電源から充電器を介して供給される電力によって車両に搭載された走行用バッテリの充電を行う電動車両の充電制御装置であって、
前記走行用バッテリの充電効率を演算する充電効率演算手段と、前記走行用バッテリの充電率を演算する充電率演算手段と、前記充電効率に基づいて前記充電器を制御して前記走行用バッテリを充電する第1の充電モードと、前記充電率に基づいて前記充電器を制御して前記走行用バッテリを充電する第2の充電モードとを、前記車両のユーザの要求に応じて切り替える切り替え手段と、前記外部電源から前記充電器へ供給される電力を演算する充電器供給電力演算手段と、前記充電器から前記走行用バッテリへ供給される電力を演算するバッテリ供給電力演算手段と、を備え、前記充電効率演算手段は、前記充電器供給電力演算手段及び前記バッテリ供給電力演算手段の演算結果に基づいて充電効率を演算することを特徴とする電動車両の充電制御装置にある。
【0011】
かかる第1の態様では、走行用バッテリに対する経済性の高い充電を実現することができる。またユーザの要求に応じて、走行用バッテリが満充電になるまで充電することも、経済性を重視して充電効率が高い期間のみで充電することもできる。
【0012】
本発明の第2の態様は、前記充電効率演算手段によって演算された前記走行用バッテリの充電効率が所定値よりも低いか否かを判定する第1の判定手段を更に備え、前記切り替え手段により前記第1の充電モードが選択され、かつ、前記第1の判定手段によって前記充電効率が所定値よりも低いと判定された際に、前記充電器を制御して前記走行用バッテリの充電を停止させることを特徴とする第1の態様の電動車両の充電制御装置にある。
【0013】
かかる第2の態様では、充電効率が正確に判定されるため、充電効率が高い期間のみで確実に充電が実施される。
【0016】
本発明の第の態様は、前記充電効率演算手段は、前記充電器から前記走行用バッテリへ供給される電力を前記外部電源から前記充電器へ供給される電力で除した値を前記充電効率と定めることを特徴とする第1又は2の態様の電動車両の充電制御装置にある。
【0017】
かかる第の態様では、充電効率を確実に算出することが可能となる。
【0018】
本発明の第の態様は、前記充電率演算手段によって演算された前記走行用バッテリの充電率が所定値に達したか否かを判定する第2の判定手段を更に備え、前記切り替え手段により前記第2の充電モードが選択され、かつ、前記第2の判定手段によって前記充電率が所定値に達したと判定された際に、前記充電器を制御して前記走行用バッテリの充電を停止させることを特徴とする第1〜3の何れか一つの態様の電動車両の充電制御装置にある。
【0019】
かかる第の態様では、ユーザの要求に応じて、走行用バッテリを所定の充電率(満充電)とすることができる。
【0020】
本発明の第の態様は、前記車両に備えられた表示部に前記走行用バッテリの充電状態を表示させる充電状態表示手段を、さらに備え、該充電状態表示手段が、前記充電状態として少なくとも前記充電効率を前記表示部に表示させることを特徴とする第1〜4の何れか一つの態様の電動車両の充電制御装置にある。
【0021】
かかる第の態様では、電動車両のユーザが、充電効率を含む充電状態を視覚によって容易に認識することができ、その認識に基づいて、所望のタイミングで充電を停止することができる。
【0022】
本発明の第の態様は、前記充電状態表示手段は、前記充電状態として前記充電効率と共に前記充電率を前記表示部に表示させることを特徴とする第の態様の電動車両の充電制御装置にある。
【0023】
かかる第の態様では、走行用バッテリの充電率を視覚により容易に認識できるため、より好ましいタイミングで充電を停止することができる。
【0024】
本発明の第の態様は、前記充電状態表示手段は、前記充電効率の高さをセグメントの高さとして前記表示部に表示させることを特徴とする第5又は6の態様の電動車両の充電制御装置にある。
【0025】
かかる第の態様では、電動車両のユーザが、充電効率を視覚によって極めて容易に認識することができる。
【0026】
本発明の第の態様は、前記充電状態表示手段は、前記充電効率の変化をセグメントの色の変化として前記表示部に表示させることを特徴とする第5又は6の態様の電動車両の充電制御装置にある。
【0027】
かかる第の態様では、電動車両のユーザが、充電効率を視覚によって極めて容易に認識することができる。
【発明の効果】
【0028】
かかる本発明の電動車両の充電制御装置によれば、走行用バッテリに対する経済性の高い充電を実現することができる。またユーザの要求に応じて、走行用バッテリを満充電とすることも、経済性を重視して充電効率が高い期間のみで充電することもできる。つまり、様々な状況に応じた最適な走行用バッテリの充電が行えるようになる。
【0029】
また本発明の電動車両の充電制御装置によれば、電動車両のユーザが、充電効率を含む充電状態に応じて、所望のタイミングで充電を停止することができる。したがって、走行用バッテリに対する経済性の高い充電を実現することができるようになり、また様々な状況に応じて最適な走行用バッテリの充電を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】一実施形態に係る電気自動車を示す概略構成図である。
図2】一実施形態に係る充電制御装置の制御部の概略構成を示すブロック図である。
図3】充電時における各種パラメータの変化を示すグラフである。
図4】一実施形態に係る充電制御方法を示すフローチャートである。
図5】一実施形態に係る充電状態表示手段の表示状態の一例を示す図である。
図6】一実施形態に係る充電状態表示手段の表示状態の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0032】
図1に示すように、電動車両の一例である電気自動車1には、二次電池である走行用バッテリ2が搭載されており、この走行用バッテリ2はインバータ3を介して走行用モータ4に電気的に接続されている。走行用モータ4は、図示は省略するが駆動輪に連結されており、電気自動車1はこの走行用モータ4の駆動力によって走行するようになっている。また走行用バッテリ2には、DC/DCコンバータ5を介して補機バッテリ(12Vバッテリ)6が接続されている。補機バッテリ6には、各種補機(図示なし)が接続されており、補機バッテリ6から供給される電力によって各補機が駆動されるようになっている。
【0033】
また電気自動車1には、走行用バッテリ2を充電するための充電器7が搭載されていると共に、この充電器7を制御する充電制御装置としての制御部(ECU)20が搭載されている。充電器7は、電気自動車1に搭載されている走行用バッテリ2と、商用電源である家庭用電源(外部電源)40との間に介装されている。そして走行用バッテリ2を充電する際には、電気自動車1の充電口8に接続された充電ケーブルを介して家庭用電源40と充電器7とが接続され、充電器7には家庭用電源40から100V程度の交流電力が入力される。充電器7では、家庭用電源40から入力された入力電力を350V程度の直流電力に変換・昇圧することで、走行用バッテリ2の充電に適した充電用電力とする。この充電用電力を走行用バッテリ2に入力することで、走行用バッテリ2が充電される。
【0034】
また電気自動車1には、走行用バッテリ2の充電時の充電状態を表示する表示部50が備えられている。表示部50は、例えば、メータや、モニタ等で構成され、後述する充電状態表示手段からの信号に基づいて充電中に変化する充電状態が適宜表示されるようになっている。
【0035】
ここで、上記「充電状態」には、少なくとも充電時に変化する充電効率が含まれる。本実施形態では、「充電状態」には、走行用バッテリ2の充電時の充電効率及び充電率が含まれる。つまり表示部50には、走行用バッテリ2の充電時の充電効率と共に充電率が適宜表示されるようになっている。
【0036】
制御部20は、図2のブロック図に示すように、充電効率演算手段21と、充電率演算手段22と、第1の充電制御部23と、第2の充電制御部24と、切り替え手段25とを備える。さらに制御部20は、充電状態表示手段51を備えている。
【0037】
充電効率演算手段21は、走行用バッテリ2の充電効率Ecを演算する。本実施形態では、充電効率演算手段21は、充電器供給電力演算手段26と、バッテリ供給電力演算手段27と、充電効率計算手段28と、で構成されている。充電器供給電力演算手段26は、家庭用電源40から充電器7に入力される充電器入力電力Pcを演算する。この充電器入力電力Pcは、家庭用電源40から充電器7に入力される入力電流Icと入力電圧Vcとから演算され、下記式(1)で表される。
Pc=Ic×Vc (1)
【0038】
バッテリ供給電力演算手段27は、充電器7から走行用バッテリ2へ供給される電力、すなわち充電時に走行用バッテリ2へ入力されるバッテリ入力電力Pbを演算する。このバッテリ入力電力Pbは、走行用バッテリ2へ入力される入力電流Ibと入力電圧Vbとから演算され、下記式(2)で表される。
Pb=Ib×Vb (2)
【0039】
そして充電効率計算手段28が、これら充電器供給電力演算手段26及びバッテリ供給電力演算手段27の演算結果に基づいて走行用バッテリ2の充電効率Ecを演算する。走行用バッテリ2の充電効率Ecは、充電器供給電力演算手段26によって演算された充電器入力電力Pcと、バッテリ供給電力演算手段27によって演算されたバッテリ入力電力Pbとから演算され、下記式(3)で表される。
Ec=Pb/Pc (3)
【0040】
充電率演算手段22は、走行用バッテリ2の充電率(SOC)を演算する。例えば、走行用バッテリ2には、図示しないが電圧センサ及び電流センサが設けられており、充電率演算手段22は、これらのセンサで検出された検出結果に基づいて走行用バッテリ2の充電率を演算する。
【0041】
第1の充電制御部23は、充電効率演算手段21によって演算された走行用バッテリ2の充電効率Ecに基づいて走行用バッテリ2の充電を制御する。本実施形態では、第1の充電制御部23は、第1の判定手段29と第1の充電制御手段30とを備える。第1の判定手段29は、充電効率演算手段21によって演算された走行用バッテリ2の充電効率Ecが予め設定された所定値よりも低いか否かを判定する。第1の充電制御手段30は、走行用バッテリ2の充電時に充電器7を制御するが、その際、第1の判定手段29の判定結果に応じて充電器7を適宜制御する。具体的には、第1の判定手段29によって充電効率Ecが所定値よりも低いと判定されると、第1の充電制御手段30が充電器7を制御して走行用バッテリ2の充電を停止させる。
【0042】
第2の充電制御部24は、走行用バッテリ2の充電率(SOC)に基づいて走行用バッテリ2の充電を制御する。本実施形態では、第2の充電制御部24は、第2の判定手段31と第2の充電制御手段32とを備える。第2の判定手段31は、充電率演算手段22によって演算された走行用バッテリ2の充電率(SOC)が所定値に達したか否かを判定する。本実施形態では、第2の判定手段31は走行用バッテリ2の充電率が100%になったか否か、つまり走行用バッテリ2が満充電になったか否かを判定する。
【0043】
第2の充電制御手段32は、走行用バッテリ2の充電時に充電器7を制御するが、その際、第2の判定手段31の判定結果に応じて充電器7を適宜制御する。具体的には、第2の判定手段31によって走行用バッテリ2の充電率が所定値に達したと判定されると、第2の充電制御手段32は充電器7を制御して走行用バッテリ2の充電を停止させる。
【0044】
切り替え手段25は、上述の第1の充電制御部23によって充電を制御する第1の充電モードと、第2の充電制御部24によって充電を制御する第2の充電モードとを、電気自動車1のユーザの要求に応じて切り替える。電気自動車1には、ユーザが、これら第1の充電モード(ECO充電モード)と第2の充電モード(通常充電モード)との切り替え操作を行う切り替えスイッチ9が設けられている。そして、切り替え手段25は、ユーザによる切り替えスイッチ9の操作(ON/OFF)に従って、第1の充電モードと第2の充電モードとを適宜切り替える。つまり走行用バッテリ2の充電は、電気自動車1のユーザの要求に応じて第1の充電制御部23又は第2の充電制御部24の何れか一方によって制御されるようになっている。
【0045】
充電状態表示手段51は、走行用バッテリ2の充電効率Ec及び充電率(SOC)を表示部50に表示させる。すなわち充電状態表示手段51は、充電効率演算手段21及び充電率演算手段22の演算結果に応じた信号を送信して、走行用バッテリ2の充電効率Ec及び充電率(SOC)を表示部50に表示させる。表示部50については詳しく後述するが、電気自動車1のユーザは、表示部50の表示から走行用バッテリ2の充電状態を容易に視認することができる。
【0046】
ここで、走行用バッテリ2の充電制御について、各種パラメータの変化を参照して簡単に説明する。走行用バッテリ2の充電が開始されると、図3に示すように、初期段階では充電器7に一定の入力電力を供給することにより走行用バッテリ2を一定の入力電力で充電する「定電力充電」が実施される。充電器7に供給された一定の入力電力は、走行用バッテリ2及びDC/DCコンバータ等に供給されるが、DC/DCコンバータ等で消費される電力は略一定であるため、走行用バッテリ2に供給される電力も一定となる。その間、充電率(SOC)が上昇すると共に、走行用バッテリ2の電圧Vが徐々に上昇する。走行用バッテリ2の電圧Vが所定電圧V1に達した時点(時間T1)で定電力充電が終了され、その後は「定電圧充電」が実施される。定電圧充電が実施されている期間は、走行用バッテリ2の電圧Vが一定に保たれるように制御される。つまりこの間、充電器7に供給される電力が徐々に減少されると共に走行用バッテリ2の電流値は徐々に減少し、それに伴って走行用バッテリ2へ供給される電力も減少することになる。しかし、DC/DCコンバータ等で消費される電力は一定であるため、充電器7から供給される電力の内、DC/DCコンバータ等で消費される電力の寄与率が大きくなり、充電効率の値が小さくなる。
【0047】
そして、定電圧充電が実施されて走行用バッテリ2の入力電力が減少すると、それに伴って充電効率Ecも低下することになる。充電効率Ecが低下すると、同じ電力量を充電しようとしても充電効率Ecが高い場合に比べて長い充電時間が必要になってしまう。また図3中に点線で示すように、走行用バッテリ2の電力の一部は、電気自動車1に搭載されている各種補機等によって常に消費されている。したがって走行用バッテリ2への入力電力に対する消費電力の割合は、定電力充電時よりも定電圧充電時の方が高くなり、結果として定電圧充電時の充電効率Ecは定電力充電時に比べて低くなってしまう。さらに定電力充電時であっても、何らかの要因で家庭用電源40の出力電力が低下した場合には、同様の理由により充電効率Ecは低下してしまう。
【0048】
そこで本発明では、ユーザの要求に応じて、上述のような充電効率Ecが低下した状態での充電を停止して経済性を重視した充電を可能とした。すなわち本発明では、経済性を重視した第1の充電モード(ECO充電モード)と、航続距離を重視した第2の充電モード(通常充電モード)とが切り替えられるようになっている。第1の充電モードが選択された場合、第1の判定手段29によって充電効率Ecが所定値Ec1よりも小さいか否かが適宜判定され(図3参照)、充電効率Ecが所定値Ec1よりも小さいと判定されると(時間T2)、第1の充電制御手段30が充電器7を制御して走行用バッテリ2の充電を停止するようにした。つまり充電効率Ecが高い期間のみで充電を行うようにした。第1の充電モードでは、走行用バッテリ2が満充電になることはなく、航続距離は多少短くなるものの経済性を高めることができる。一方、第2の充電モードが選択された場合には、充電効率Ecに拘わらず、走行用バッテリ2が満充電になるまで充電が実施される。したがって第2の充電モードでは、経済性は多少低くはなるものの、航続距離を最大限長くすることができる。
【0049】
以下、図4のフローチャートを参照して、本実施形態に係る走行用バッテリの充電制御方法をさらに説明する。
【0050】
走行用バッテリ2の充電が開始されると、走行用バッテリ2の充電率(SOC)及び充電効率Ecが適宜演算される。例えば、本実施形態ではステップS1〜S3で充電効率演算手段21によって充電効率Ecが適宜演算される。具体的には、ステップS1で充電器供給電力演算手段26によって家庭用電源40から充電器7に入力される充電器入力電力Pcが演算される。次いでステップS2でバッテリ供給電力演算手段27によって走行用バッテリ2へ入力されるバッテリ入力電力Pbが演算される。次いでステップS3で充電効率計算手段28によって充電器入力電力Pcとバッテリ入力電力Pbとから走行用バッテリ2の充電効率Ecが演算される。またステップS4で充電率演算手段22によって充電率(SOC)が演算される。
【0051】
次に、ステップS5で切り替え手段25によって切り替えスイッチ(ECOスイッチ)9のON/OFFが判定される。ここで、切り替えスイッチ9がONである場合には(ステップS5:Yes)、切り替え手段25によって第1の充電モードに切り替えられて走行用バッテリ2の充電が継続され、ステップS6に進む。ステップS6では第1の判定手段29によって走行用バッテリ2の充電効率Ecが所定値Ec1よりも低いか否かが判定される。第1の判定手段29によって充電効率Ecが所定値Ec1よりも低いと判定された場合には(ステップS6:Yes)、第1の充電制御手段30によって充電器7が制御されて走行用バッテリ2の充電が停止し(ステップS7)、一連の充電制御が終了する。一方ステップS6で第1の判定手段29によって充電効率Ecが所定値Ec1以上と判定された場合には(ステップS6:No)、ステップS1に戻り走行用バッテリ2の充電が継続される。なお、所定値Ec1は、走行用バッテリ2などの特性を考慮して適宜決定されればよく、特に限定されるものではない。
【0052】
本実施形態では、所定値Ec1はあらかじめ、正常時に定電力充電した場合の効率として0.8(80%)が設定されている。例えば、充電器7への入力が1.5kWであり充電器効率が90%であるとすると、充電器7の出力電力は1.35kWとなる。また補機の消費電力を0.15kWとすると走行用バッテリ2への入力電力は1.2kWとなる。よって、このときの充電効率Ecは0.8(=1.2/1.5)となり、走行用バッテリ2の充電が継続される。一方、例えば、定電力充電から定電圧充電へ移行した際に、充電器7への入力電力が1.4kWとなり、充電器7の効率と補機の消費電力は変わらないとすると、走行用バッテリ2への入力電力は1.11kWとなる。よって、このときの充電効率Ecは0.79になり、走行用バッテリ2の充電が停止される。
【0053】
またステップS5で切り替えスイッチ9がOFFであった場合には(ステップS5:No)、切り替え手段25によって第2の充電モードに切り替えられて走行用バッテリ2の充電が継続され、ステップS8に進む。ステップS8では、第2の判定手段31が、走行用バッテリ2の充電率(SOC)が100%となったか否か、つまり走行用バッテリ2が満充電となったか否かを判定する。第2の判定手段31によって走行用バッテリ2が満充電となっていると判定された場合には(ステップS8:Yes)、第2の充電制御手段32によって充電器7が制御されて走行用バッテリ2の充電が停止し(ステップS7)、一連の充電制御が終了する。なおステップS8で第2の判定手段31によって走行用バッテリ2が満充電になっていないと判定された場合には(ステップS8:No)、ステップS1に戻り走行用バッテリ2の充電が継続される。
【0054】
以上説明したように本発明によれば、走行用バッテリ2を満充電まで充電することができることは勿論、ユーザの要求によっては、充電効率Ecが高い期間のみで充電を実施して経済性を高めることもできる。そしてユーザの要求に応じて第1の充電モードと第2の充電モードとを切り替えるようにすることで、様々な状況に応じた最適な充電を行うことができる。また本発明は、電気自動車だけでなくプラグインハイブリッド車等の他の電動車両に用いることもできる。
【0055】
なお上述の実施形態では、ユーザによって第1の充電モード(ECO充電モード)が選択された場合に、走行用バッテリ2の充電効率Ecのみに基づいて充電を停止させているが、例えば、充電効率Ecと充電率(SOC)との両方に基づいて充電を停止させるようにしてもよい。
【0056】
すなわち第1の充電制御部23が、充電効率演算手段21によって演算された走行用バッテリ2の充電効率Ecと共に、充電率演算手段22によって演算された走行用バッテリ2の充電率(SOC)に基づいて走行用バッテリ2の充電を制御するようにしてもよい。この例では、第1の判定手段29が、充電効率Ecが所定値Ec1よりも低いか否かを判定すると共に、充電率(SOC)が所定値、例えば90%以上であるか否かを判定する。そして第1の判定手段29によって充電効率Ecが所定値Ec1よりも低く且つ充電率(SOC)が90%以上であると判定された場合に、第1の充電制御手段30が充電器7を制御して走行用バッテリ2の充電を停止させる。
【0057】
これにより第1の充電モードが選択されている場合、つまり経済性の高い充電が実施されている場合であっても、走行用バッテリ2に対して充分な電力量を充電することができる。
【0058】
ところで上述のように電気自動車1には表示部50が備えられており、走行用バッテリ2の充電中には、充電効率Ec及び充電率(SOC)が表示部50に表示されるようになっている。すなわち充電状態表示手段51が、充電効率演算手段21で演算された充電効率Ecと、充電率演算手段22によって演算された充電率(SOC)とに応じた信号を表示部50に送信することで、表示部50における充電効率Ec及び充電率(SOC)の表示が適宜変更されるようになっている。
【0059】
表示部50には、図5に示すように、矩形のセグメント52が縦方向(図中上下方向)に複数(本実施形態では10個)配されている。各セグメント52は独立して点灯可能に構成されており、走行用バッテリ2の充電率(SOC)及び充電効率Ecに応じてセグメント52の点灯範囲が変化する。本実施形態では、点灯しているセグメント52の数によって充電率(SOC)が表され、充電効率Ecの高さが、各セグメントの横方向(図中左右方向)の長さで表されている。
【0060】
例えば、図5(a)は走行用バッテリ2の充電率(SOC)が30%〜40%であり定電力充電が実施されている状態を示した例であり、10個のセグメント52のうち下側から4個のセグメント52が点灯した状態を表している。このとき、4個のセグメント52のうち最上部のセグメント52aが点滅するようにしてもよい。この場合、充電率が40%に達した時点でセグメント52aを点灯させ、その上の5個目のセグメント52bを点滅させる。
【0061】
またこの時点で定電力充電が正常に実施されていれば充電効率Ecは高い状態が維持されているため(図3参照)、各セグメント52は、その全ての領域が点灯した状態となる。
【0062】
図5(b)は、走行用バッテリ2の充電率(SOC)が80%〜90%まで上昇し定電圧充電が実施されている状態を示した例であり、走行用バッテリ2の充電率の上昇に伴ってセグメント52の点灯数が4個から9個に増加した状態を表している。また上述したように走行用バッテリ2の充電率がある程度上昇すると定電圧充電が実施され、定電圧充電時には充電効率Ecが徐々に低下する(図3参照)。このため定電圧充電時における各セグメント52の点灯領域は、定電力充電時よりも減少している。すなわち充電効率Ecの低下に伴って、各セグメント52の横方向の長さが短くなっている。
【0063】
このように充電状態表示手段51から送信される信号に基づいて、充電効率Ecを少なくとも含む充電状態が表示部50に表示されるようにすることで、電気自動車1のユーザは、走行用バッテリ2の充電中における充電状態の変化を視覚によって容易に認識することができる。上述のように走行用バッテリ2の充電は、基本的には各充電モードでそれぞれ所定のタイミングで自動的に停止されるようになっているが、充電効率Ec等を容易に視認できることで、電気自動車1のユーザは、充電効率Ecが低下した場合等に所望のタイミングで充電を停止することもできる。
【0064】
なお、表示部50における充電効率Ecの表示方法の一例として、充電効率Ecをセグメント52の長さで表したものを例示したが、勿論、充電効率Ecの表示方法はこれに限定されるものではない。例えば、充電中の充電効率Ecの変化をセグメント52の色によって表すようにしてもよい。図6に示す例では、充電率(SOC)及び充電効率Ecを縦方向に長い一つのセグメント52Aによって表している。すなわちこの例では、充電率の増加に伴ってセグメント52Aの縦方向の点灯範囲が広がるようになっている。また充電効率Ecの減少に伴ってセグメント52Aの点灯範囲の色が変化するようになっている。具体的には、充電効率Ecが高い状態ではセグメント52Aが緑色に点灯し、充電効率Ecが低くなるにつれて除々に橙色に変化するようにしている。このように充電効率Ecの変化をセグメント52Aの色によって表すようにしても、ユーザは充電効率Ecの変化を視覚により容易に認識することができる。
【0065】
また充電効率Ecによって変化させる色は、特に限定されるものではなく、例えば、色の濃淡によって充電効率Ecの変化を表すようにしてもよい。
【0066】
また上述の例では、充電効率Ecと充電率(SOC)とを組み合わせて表示するようにしたが、勿論、これら充電効率Ecと充電率(SOC)とを別々に表示するようにしてもよい。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、勿論、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 電気自動車(電動車両)
2 走行用バッテリ
3 インバータ
4 走行用モータ
5 DC/DCコンバータ
6 補機バッテリ
7 充電器
8 充電口
9 切り替えスイッチ
20 制御部(充電制御装置)
21 充電効率演算手段
22 充電率演算手段
23 第1の充電制御部
24 第2の充電制御部
25 切り替え手段
26 充電器供給電力演算手段
27 バッテリ供給電力演算手段
28 充電効率計算手段
29 第1の判定手段
30 第1の充電制御手段
31 第2の判定手段
32 第2の充電制御手段
40 家庭用電源(商用電源)
50 表示部
51 充電状態表示手段
52 セグメント
図1
図2
図3
図4
図5
図6