【実施例】
【0012】
図1(A)は、本実施例に係る静電容量型のタッチパネルが含む基板の概略構成を示す断面図である。タッチパネル10は、ガラス、プラスチック、またはその他の材の透明な基板12と、基板12の全面に形成されたITO(Indium Tin Oxide) 、またはその他の材の透明な導電膜14とを含んで構成される。また、導電膜14は、薄いシート状の透明な絶縁保護膜16、例えばポリエステルシートなどによって覆われていてもよい。典型的に、タッチパネル10は、表示ディスプレイ(例えば、液晶パネル、有機エレクトロルミネッセンス(Organic Electro-Luminescence) パネル、電子ボード)とモジュール化または一体化され、入力機能を有する表示装置を構成する。例えば、基板12は、液晶パネルなどで生成された画像情報を透過するように構成される。尚、本明細書において「タッチパネル」とは、物体がパネルに接触する(タッチング)ことに限られず、物体とパネルが所定の距離を介する非接触も含まれる。非接触の例えとして、物体(例えば指)がパネル上空をホバリングしながらムービングする場合も含まれる。更に、基板12はリジットであってもフレキシブルであってもよい。つまり、タッチパネル10は、表示ディスプレイの組成特性に対応してリジットであってもフレキシブルであってもよい。更に、タッチパネル10が表示ディスプレイと一体化される場合、タッチパネル10としての基板12を省略できる場合がある。
【0013】
図1(B)は、タッチパネル10の全体の概略構成を示す図である。導電膜14上のX軸およびY軸の各コーナーには、ノードA、B、C、Dが形成され、各ノードA〜Dは、抵抗R0を介して基準電位発生回路20の共通ノードNに接続される。基準電位発生回路20は、好ましくは一定の周波数、例えば1MHzの基準パルス信号を生成するものであり、さらに基準パルス信号に一定の直流バイアスを付加するものであってもよい。これにより、各ノードA、B、C、Dには、抵抗R0を介して同時に、同相、同電位の基準クロック信号が供給される。
【0014】
静電容量型のタッチパネルにおいて、指が導電膜14に接触され、あるいは保護膜16を介して導電膜14に接近されると(以下、このような接近を含めて接触という)、その接触位置P(
図1(B)を参照)に静電容量Csが形成され、各ノードA〜Dから接触位置Pには微弱な電流が流れる。ノードAから接触位置Pまでの距離、ノードBから接触位置Pまでの距離に応じた抵抗Ra、Rbが形成されるため、各ノードA〜Dには、抵抗と静電容量の時定数で決まる電圧波形の電流が流れることになる。
【0015】
各ノードA、B、C、Dに流れる信号は、位置情報抽出部30へ提供され、位置情報抽出部30は、後述するように、X軸のノードA、B間の差動電圧を抽出し、かつY軸のノードA、D間の差動電圧を抽出するような処理を行う。位置情報抽出部30によって抽出された情報は、位置検出部40へ提供され、抽出された位置情報に基づき接触位置Pを特定するための位置検出が行われる。位置情報検出部30および位置検出部40は、どのような形態によって構成されてもよく、ハードウエア、ソフトウエア、あるいはハードウエアとソフトウエアの双方を用いて構成することができる。好ましい態様では、位置情報検出部30は、アナログ信号を処理する回路等によって構成され、位置検出部40は、ディジタル信号を処理する回路やソフトウエアによって構成される。位置検出部40の出力は、表示装置、または表示装置を制御するシステムに提供される。
【0016】
次に、本実施例に係るタッチパネルの位置検出原理について説明する。本実施例では、
図1(B)に示すように、静電容量型のタッチパネルにおいて、X軸上の2点のノードA、B、Y軸上の2点のノードA、Dの差動信号を利用して接触位置を検出する。
【0017】
図2(A)に示すように、タッチパネル上の位置Pが接触されたとき、X軸のノードA、Bには、
図2(B)に示すように、抵抗Ra、Rb、静電容量Cxyによる時定数で決まる電圧信号Va、Vbが生じる。V
A−V
Bは、電圧信号Va、Vbの差分であり、図の例では、電圧信号Va、Vbの差分のピーク値が例示されている。ここには示していないが、Y軸のノードA、Dにも同様に、抵抗Ra、Rdによる時定数で決まる電圧信号Va、Vdが生じ、この電圧Va、Vdの差動電圧が抽出される。
【0018】
図3は、差動電圧の測定原理を説明する図である。ノードA、B、C、Dに対して、図に示すように接触位置PがノードAに近く、ノードBから離れているとすると、接触位置PとノードA間の抵抗が小さいため、ノードAには接触位置Pの影響が強く現れ(電圧の低下が大きく)、反対に、ノードBには接触位置PとノードB間の抵抗が大きいため接触位置Pの影響が弱く現れる(電圧低下が小さい)。このため、ノードAからノードBの電圧変化を見ると、正の電圧変化を観測することができる。つまり、ノードA、B間の電圧は、ノードA、Bから見た接触位置Pまでの距離aと距離bの差を電圧差として見ていることになる。また、2点間の電圧差を見るので、GNDのふらつきとコモンモードのノイズは除去され、接触位置Pまでの距離が等しい点、すなわち中心線上は、差電圧が0Vになる。
【0019】
次に、クロック信号を抵抗R0を介してタッチパネルの4つのノードA、B、C、Dに同時に印加したときの2つのノード間の差動電圧測定モデルについて検討する。
図4に示すように、Pを接触位置、a、b、c、dを接触位置Pから各ノードまでの距離とする。この時、各端子に現れる電圧をV(A)、V(B)、V(C)、V(D)とする。
【0020】
ここで測定可能な差動電圧を次のように定義する。
V
BA=V(B)−V(A)、V
AB=V(A)−V(B)、
V
CA=V(C)−V(A)、V
AC=V(A)−V(C)、
V
DA=V(D)−V(A)、V
AD=V(A)−V(D)、
V
CB=V(C)−V(B)、V
BC=V(B)−V(C)、
V
DB=V(D)−V(B)、V
BD=V(B)−V(D)、
V
DC=V(D)−V(C)、V
CD=V(C)−V(D)
【0021】
また、これらの間には、次のような関係が成り立つ。
V
BA=−V
AB、V
CA=−V
AC、V
DA=−V
AD、
V
CB=−V
BC、V
DB=−V
BD、V
DC=−V
CD
また、
V
CB=V
CA−V
BA、V
DB=V
DA−V
BA、V
DC=V
DA−V
CAとなるから、測定可能な差動電圧の中で、他の差動電圧から求めることのできない差動電圧は、V
BA、V
DAの2つに集約できる。すなわち、この2つの差動電圧が分かれば、他の差動電圧は、演算操作により求めることができることを示している。
【0022】
図5に、ノードA−B、ノードA−Dからみた差動電圧のシミュレーションの波形を示す。タッチパネルのX、Y座標が(0,0)〜(32,32)であるとき、ノードDから(2,30)までの距離と、ノードBから(30,2)までの距離は等しい。しかし、電圧差が生じるのは、ノードAまでの距離がそれぞれ異なるためである。ノードAまでの距離が大きい方が、ノードAの影響が小さくなり、信号量が大きくなる。
【0023】
本実施例による差動測定を利用した位置検出アルゴリズムを整理すると次のようになる。
4つのノードA〜Dに同時に基準パルス信号を入力し、そのうち、X軸、Y軸の2つのノード間の差動出力を測定する。
差動電圧を測定するため、2つのノード間において引かれる抵抗と引く抵抗との大小関係で最大値が出る。
差電圧の最大値のストローブ時間は、それぞれで異なり、検出感度のよいのは最大値であり、これを抽出する。
しかし、最大値に重畳するノイズの影響を避けるため、X軸のノードA、BとノードC、Dの2点測定値、Y軸のノードA、DとノードB、Cの2点測定値からノイズキャンセルを図ることが望ましい。
サンプリング間隔を0.01sレベルで行い、2点測定と時間軸の2点測定からノイズキャンセルする。なおこのサンプリング動作ではサンプリング毎に例えば1MHzの基準クロック信号に合わせてX軸のノードA、BとノードC、Dの2点測定、Y軸のノードA、DとノードB、Cの2点測定を1つの単位としてノイズキャンセルを図るに必要な回数繰り返すことになる。
【0024】
次に、差動電圧V
BA、V
DAを測定すると、
図6(A)、(B)に示すような其々の測定モードに特有の信号量の正負境界線(0V線)が現れる。すなわち、X軸のノードA、B間差動電圧V
BAを測定した場合には、X軸と垂直方向の中心Oを通る線上は0Vであり、この0Vを境界に左側のノードAに近い領域では、差動電圧V
BAの符号は、正(+)となり、右側のノードBに近い領域では、差動電圧V
BAの符号は、負(−)となる。Y軸のノードA、D間の差動電圧V
DAを測定した場合にも同様の特性が生じる。
【0025】
次に、本実施例のタッチパネルの好ましい構成について説明する。
図7は、位置情報抽出部の好ましい構成を示すブロック図である。位置情報抽出部30は、4つのノードA〜Dの出力信号を入力し、その中から2つの出力信号を選択するセレクター100と、セレクター100によって選択された2つのノードの出力信号を入力する差動増幅器102と、差動増幅器102から出力された差動信号のノイズを除去するフィルター104と、ノイズが除去された差動信号のピーク値を抽出するピーク値ホールド回路106と、ピークホールド回路106の出力信号をアナログ/ディジタル変換するA/Dコンバータ108と、各ノードに電流が流れたことに応答して指の接触があったことを検出する第3の回路(検出回路)110と、第3の回路(検出回路)110により接触が検出されるとセレクター100による選択の切替を行うフリップフロップ回路112と、基準電位発生回路20からの基準クロック信号を受け取り、信号バスBUSを介して種々のクロック信号を各部を供給するコントローラ114とを含んで構成される。
【0026】
第3の回路(検出回路)110は、コントローラ114から供給されるクロック信号の立ち上がりに同期するタイミングで指の接触の有無を検出する。指の接触が検出された場合には、第3の回路(検出回路)110は、フリップフロップ回路112にイネーブル信号を供給し、フリップフロップ回路112を動作可能な状態にする。コントローラ114は、フリップフロップ回路112に信号バスBUSを介して一定周波数のクロック信号を供給し、フリップフロップ回路112はクロック信号に応答して第3の回路(検出回路)の検出状態を保持する信号をセレクター100に出力する。コントローラ114はまた、クロック信号に応答して選択状態に対応した切替クロック信号をセレクター100に出力する。セレクター100は、選択状態に応じて1対のノードの出力信号を選択する。例えば、最初の選択状態のとき、X軸上のノードA、Bの出力信号を選択し、次の状態のとき、Y軸上のノードA、Dの出力信号を選択し、というように順次必要な出力信号を選択しこれらの組み合わせが繰り返される。この選択の周期は、コントローラ114からのクロック信号の周波数により適宜選択されるが、好ましくは、指の接触時間は、典型的に0.1秒程度であるので、その間にセレクター100が少なくとも100回程度のノードのサンプリングができるようにする。
【0027】
差動増幅器102は、セレクター100によって選択された2つのノード(AとB、またはAとD)の出力信号の差電圧信号を抽出する。フィルター104は、好ましくはローパスフィルターを用いて構成され、差電圧信号に重畳される高周波成分のノイズを除去する。ピーク値ホールド回路106は、コントローラ114からのクロック信号に応答して、クロックの立ち上がりから立下りまでの期間中の差電圧信号のピーク値を保持する。A/Dコンバータ108は、ピーク値ホールド回路106で保持された差電圧のピーク値を受け取り、これを所定のビット数のディジタル値に変換し、位置検出部40へ提供する。位置検出部40は、後述するように受け取ったディジタル信号を処理することで、接触位置を検出する。
【0028】
図8は、
図1(B)に示す位置情報抽出部30の具体的な回路構成を示している。位置情報抽出部30は、差動アンプ120、ノイズフィルター130、絶対値アンプ140、ピーク値ホールド回路150とを含んで構成される。なお、ここにはA/Dコンバータは示されていない。
【0029】
差動アンプ回路120は、セレクター100によって選択された2つのノードからの出力信号を受け取り、その差分電圧を示し差分信号を出力する。差動アンプ回路120は、例えばアナログデバイス社製のAD620を用いて構成される。ノイズフィルター130は、差動アンプ120からの差分信号を受け取り、そこに重畳される高周波成分のノイズを除去する。ノイズフィルター130は、例えばリニアテクノロジー社製のLTC1063のローパスフィルターを用いて構成される。
【0030】
絶対値アンプ140は、公知のように、入力信号の極性に応じて正転アンプまたは反転アンプとして機能する2つのオペアンプ140A、140Bを含んで構成される。ノイズフィルター140からの出力信号VOUTの入力電圧が正の場合には、2つのオペアンプは、入力信号を増幅する正転アンプとして機能し、入力電圧が負の場合には、2つのオペアンプは、入力信号を反転する反転アンプとして機能する。
図6(A)、(B)で説明したように、差分信号(差動電圧)は、接触位置Pに応じて正または負の感度特性を有するが、差分信号は、絶対値アンプ140を通過することで、全て正の電圧の信号に変換される。
【0031】
ピーク値ホールド回路150は、絶対値アンプ140からの出力信号とオペアンプ150Bの負帰還された基準電圧とを入力するコンパレータ150A、コンパレータ150Aの出力に接続されたダイオードD、コンデンサC、コンデンサに充電された電荷を放電するリセット回路を含んで構成される。コンパレータ150Aは、絶対値アンプ140からの出力信号が基準電圧よりも高いとき、電源電位を供給するため、ダイオードD1を介してコンデンサが充電される。他方、出力信号が基準電位よりも小さくなると、コンパレータ150Aは、負の電源電位を供給するため、ダイオードDにより電流が遮断され、こうして、ピーク時の電圧がコンデンサCにより保持される。また、リセット回路は、トランジスタTrと、FETとを含み、トランジスタTrのベースにはリセットパルス信号が印加される。例えば、リセットパルス信号のパルス幅は、10μSよりも小さい。リセットパルス信号がローアクティブになるとトランジスタTrがオンし、FETがオンすることでコンデンサCの電荷が放電される。こうして、ピーク値ホールド回路150で保持されたピーク値は、A/D変換器へ提供される。なお、
図8に示す回路は一例であって、これ以外の構成であってもよい。
【0032】
次に、本実施例の位置検出部について説明する。
図1(B)に示す位置検出部40は、位置情報抽出部30により抽出されたデータに基づき、1点接触(シングルタッチ)、複数点接触(マルチタッチ)の判定を行い、その判定結果に基づき検出した接触位置に該当する座標情報を出力する。
【0033】
図9は、位置検出部40の好ましい構成例を示している。位置検出部40は、位置情報抽出部30で抽出された位置情報を受け取ったり、あるいは検出された接触位置の座標情報を出力する入出力部(I/O)200と、位置検出を行うための種々のプログラムを格納したプログラムメモリ210と、位置検出のためのルックアップテーブル等の種々のデータを格納するデータメモリ220と、プログラムを実行することで種々の演算処理などを行う中央処理部230とを含んで構成される。
【0034】
1点接触(シングルタッチ)の位置検出方法について説明する。
1点接触において、最も粗い座標領域の特定方法は、符号判定である。
図6の感度特性において説明したように、ノードA−B間、C−D間、A−D間、C−B間の差動電圧の測定を行うと、接触位置に応じて差動電圧の符号の極性が異なる。但し、ここでのA−B間とは、ノードAを基準にした差動電圧である。この性質を利用すると、A−B間、A−D間の2つの測定データから、
図10に示すように、接触位置が1象限、2象限、3象限、4象限のどの領域にあるかを判別することができる。各象限は、タッチパネルのX軸およびY軸の中心線を境界にした領域である。図に示すように、1象限では、差動電圧V
BA、V
DAの符号がともに正であり、2象限では、差動電圧V
BAが負、V
DAが正となり、3象限では、差動電圧V
BA、V
DAの符号がともに負であり、4象限では、差動電圧V
BAが正、V
DAが負となる。位置検出部40は、検出精度が粗くてもよい場合には、2つの差動電圧V
BA、V
DAから得られた差動信号に基づき接触位置が1象限ないし4象限のいずれに属するからを検出する。
【0035】
次に、位置検出部40が、ルックアップテーブルを参照して、より精度の高い接触位置を検出する方法について説明する。
図10に示すように、1象限に接触点がある場合は、信号量の符号が全て正の値になり、信号量も最大値を示す。基板の対称性から、接触位置がある領域に基準を移せば、常に信号量は正の値になり、かつ信号量も最大になる。また、この性質を利用することで、準備するプロファイル(ルックアップテーブルLUTの容量)は、タッチパネル全体の面積の1/4、つまり1つの象限で用意すればよい。
【0036】
指によるタッチを想定した場合、指のタッチ面積により、座標指定領域の分解能に制約があり、パネルのサイズに合わせて座標点の数を決める必要がある。そこで、ここでは相当大きいパネルを考慮しても対応できる65×65の座表を有するタッチパネルを想定する。この場合、座標領域の特定に必要な座標プロファイルの大きさは、上記したように1/4の領域で済むので、
図11に示すように、33×33の座標領域になる。
【0037】
座標領域として扱うのは、8座標間隔とし、符号判定法と同じように、(1)座標(00,16)の座標値と抽出位置データ(位置情報抽出部により抽出されたもの)との大小関係を比較し、次いで、(2)座標(16,00)の座標値と抽出位置データとの大小関係を比較する。ルックアップテーブルには、所定の座標における座標値が格納されるが、座標値は、当該座標における差動電圧の信号量に対応した値である。仮に、上記の判定(1)、(2)の両方とも抽出位置データが大きかった場合には、
図11に示す丸で示された領域が求められたことになる。
【0038】
接触位置の検出の精度をさらに向上させる場合には、
図11に示す粗い座標領域を特定した後、その領域に対応する倍精度のルックアップテーブルを用いて、さらに座標領域を詳細に特定し、この領域が特定できたところで、さらに倍精度のルックアップテーブルを用いてさらに座標領域を特定する。このような判定を繰り返すことで、最終的な座標を求めることができる。
図11の例では、最終的に座標値(21,29)が算出された例を示している。
【0039】
次に、座標判定を行うためにルックアップテーブルに用意される必要なデータについて説明する。
図12(A)に示すように、9×9の格子点で表すことのできる8×8の領域について考える。比較に必要な格子を黒丸と白丸で表す。黒丸は、Y方向の比較に使用するデータであり、白丸は、X方向の比較に使用するデータである。これを全部1つにまとめると
図12(B)に示すようになり、これらのデータ数で8×8で表現できる。
【0040】
次に、ルックアップテーブルの構成について説明する。65×65の1/4の33×33の格子点で表される領域比較に必要なデータは、32×32の格子点が表現できればよく、2
5×2
5の10ビットのアドレス空間が必要となる。アドレスビットの構成は、
図13(A)に示すように、Xアドレスが5ビット、Yアドレスが5ビットとなる。なお、1象限ないし4象限の4つの領域の区別は、レジスタを用いて管理する。
【0041】
8×8の粗い座標領域を特定する時のアドレス設定は、
図13(B)のようになる。ここで、xxxは、任意の数値である。詳細座標領域の設定は、XYアドレスの0の部分の左からxに設定する操作になる。
【0042】
ルックアップテーブルのビット構成は、差動方式を用いるので、信号変化の値は、−2V〜2Vの範囲になる。分解能を1mV、精度を2mV程度に設定すると、4Kの分解能が必要となり、A/D変換器のビット数は12ビットになる。
【0043】
次に、複数点接触(マルチタッチ)の位置検出方法について説明する。
複数点接触の位置検出は、1点接触の重ね合わせから求めることができる。
図14に示すように、接触点T2が接触店T1と重なったときを考える。ただし、信号量はノードA−Bから見た値とする。この場合、接触による静電容量がほぼ2倍になるため、信号量が増加する。但し、信号量の大きさは2倍にはならず、1点接触のときの1.3〜1.8程度である。接触点T2が接触点T1から離れてゆくと、図の例では、b2の抵抗変化は少ないが、a2の抵抗が大きく変化する。接触点T1の距離a1がノードAの近傍にあり、b1はノードBから離れているため、信号電圧はほとんどa1で決まる。接触点T2が接触点T1から離れると、距離a2が大きくなり、a2による信号量が低下し、接触点T2の移動により信号量が小さくなる。a2がよりノードAに近づくと、逆に信号量が大きくなる。この信号量の変化は、2点間の移動距離に対応した値になる。これが、2点接触の検出原理である。2点接触では、接触により静電容量が増加することにより信号量も増加するので、比較的感度が高い。他方、X軸のノードA−Bの感度が低下しても、Y軸のノードA−Dがそれを補完するため、検出することが可能である。
【0044】
次に、複数点接触の代表的な2点の測定結果を
図15、
図16に示す。
図15は、X軸方向の3つの位置、すなわち、66−12間タッチ、68−14間タッチ、70−16間タッチしたときの差動電圧波形を示している。
図16は、Y軸方向の3つの位置、すなわち、65−71間タッチ、38−44間タッチ、11−17間タッチしたときの差動信号の波形を示している。この2点タッチ間の距離は、全ての測定に於いて等距離とし、座標軸の数字はその近傍の値を示している。2点タッチによる場合も、1点タッチのときよりも信号レベルは高くなるが、1点タッチと同様の感度特性の信号波形が現れている。この信号波形のピーク位置は例えば66−12間タッチの場合は66と12の点に接触した1点タッチのピーク位置の平均値にタッチ容量がほぼ2倍になった時に増加ずる信号量の比率を乗じたものに等しく、座標位置で示すとほぼ66と12の中心座標になる。このようにA−B間あるいはA−D間に水平な方向に位置する2点タッチは座標で見ると2点のほぼ中心に位置する1点タッチのように見える。
【0045】
次に、2点間の移動座標の検出について説明する。
図17、
図18、
図19は、座標1、2、3において、2点間の距離を変化させたときの検出結果を示している。これらはいずれもA−B間に垂直な方向に移動した場合に現れる現象で、A−Dに垂直に移動する場合も同様な結果が得られる。
座標1では、(28-46)、(19-55)、(10-64)となるように間隔を広げる。
座標2では、(29-47)、(20-56)、(11-65)となるように間隔を広げる。
座標3では、(30-48)、(21-57)、(12-66)となるように間隔を広げる。
これらのグラフから判るように、2点間の移動距離が大きくなるほど、差動信号のレベルが大きくなることがわかる。これはA−B面に垂直な方向にのみ現れる性質で移動距離にたいする差動信号レベルの平均変化率を表している。これはA−B面に垂直な方向の座標変化にたいする差動信号レベルの増加の傾きを示している。差動信号レベルの増加の傾きが座標変化に対し下に凸のときは正の値、上に凸のときは負の値を示す。例では、下に凸であったため正の値となり広がりを示しているが上に凸の場所では負の値になり縮小を示すことになる。これは、場所による差動信号レベルの変化の凹凸を把握すれば測定した差動信号レベルの変化により拡大縮小を検出できることを示している。
【0046】
図20は、コーナー付近での2点間の座標を移動させたときの検出結果を示すものである。ここでは、ノードAのコーナー付近で2点間を、X軸は同一座標としつつ、Y軸上の距離を変化させている(2点間距離は、27、81、135)。この場合のみ、上記と同様に、移動距離が大きくなるほど、差動信号のレベルは大きくなることがわかる。
【0047】
位置検出部40は、差動信号の電圧レベルが第1のしきい値と比較し、第1のしきい値よりも大きい場合には、2点接触であると判定する。第1のしきい値は、1点接触のときに得られるであろう電圧レベルよりも大きな値に予め設定される。また、位置検出部40は、1点接触のときと同様に、ルックアップテーブルを用意し、これを参照することで2つの接触位置と差動信号レベルの凹凸を求めることができる。さらに、位置検出部40は、差動信号のレベルの変化により、2点接触が移動していることを検出することができる。差動信号のレベルの変化は、サンプリングされたピーク値の変化量から判定することができる。
【0048】
次に、3点接触のときの位置検出方法について説明する。3点接触の場合にも、基本的には、2点接触の場合と同様の原理であり、3点接触されたときに静電容量が増加し、差動信号のレベルが大きくなること検出する。3点接触されたとき、
図21に示すように、位置情報抽出部30から抽出された位置情報は、3つの接触点で形成される三角形の重心となる1点接触を表すことになる。3点接触は、1Aと2Aの2点接触が行われ、次いで3Aの1点接触が行われる組合せ(A法)、または1Bと2Bの2点接触が行われ、次いで3Bの1点接触が行われる組合せ(B法)と見ることができる。
【0049】
図22は、
図21に示す3点接触をA法で操作したときの測定結果を示している。3点タッチは、1点タッチ、2点タッチよりも電圧レベルが高くなることがわかる。また、
図23は、3点接触をB法で操作したときの測定結果を示している。この場合にも、3点タッチは、1点タッチ、2点タッチよりも電圧レベルが高くなることがわかる。
【0050】
位置検出部40は、差動信号の電圧レベルが第2のしきい値と比較し、第2のしきい値よりも大きい場合には、2点接触であると判定する。第2のしきい値は、2点接触のときに得られるであろう電圧レベルよりも大きな値に予め設定される。また、位置検出部40は、1点接触のときと同様に、ルックアップテーブルを用意し、これを参照することで3点接触の位置を求めることができる。
【0051】
次に、
図1(B)に示す付加抵抗R0の最適化について説明する。タッチパネルの導電膜14の対角線上の抵抗Rは一定であり、例えば、6〜7kΩである。
図24に示すように、負荷抵抗R0を、1kΩ、3kΩ、5kΩ、10kΩとしたときの差動電圧V
ABの電圧波形を示している。これらのグラフから、基板抵抗と同程度の5kΩの付加抵抗であるとき、インピーダンスマッチングし、最大振幅となっている。このため、測定感度を良くするためには、基板抵抗と同程度の付加抵抗を用いることが望ましい。
【0052】
次に、タッチパネルの校正方法について説明する。
図25は、X座標をパラメータとした、タッチパネルのノードA、Bから見た差動信号電圧の座標値依存性(Y軸方向の距離依存性)である。図から明らかなように、差動信号電圧の距離依存性には次のような特徴がある。
【0053】
(1)タッチ容量が20pFの距離依存性をα倍したものが40pFの依存性に等しくなるというようにタッチ容量に対する容量係数αを求めれば任意の容量に対する依存性を求めることができる。
(2)ノードA、Bから中心までの電圧変化が大きく、中心より先の電圧変化が小さい。
この特徴は、ノードA−D、ノードB−C、ノードC−Dについても成り立つ。そこで、この性質を積極的に利用することでタッチ容量に依存しない正規化信号電圧を求めることができる。
【0054】
ノードA−B面から見た代表点の差動信号電圧の容量依存性を
図26に示す。このような差動信号電圧の容量依存性に対しタッチ容量40pF(αを算出する場合の容量を20pFにしようと60pFにしようと問題ないが、最も出現頻度の大きそうな40pFとし、この容量を標準容量と呼ぶことにする)の時の容量係数αを求めると
図27のようになる。
【0055】
タッチパネルの各辺から見た差動信号電圧の座標値依存性は、タッチ容量係数αを求めれば任意のタッチ容量値に対する座標依存性を算出することができる。しかし、このαを求めるのは容易ではない。そこで、タッチ容量値に依存しない正規化信号電圧を導入する。
【0056】
タッチ位置を求める時、タッチパネルの各辺に対する信号電圧を測定する。この時、例えばノードAB辺とCD辺について見ると、
図28(A)の丸T1、T2で示したように必ず、パネルの中心に対して対称な2点の測定値が得られる。AB辺から見たT1の信号電圧をV1、タッチパネルの中心線に対称な点をT2とし、AB辺から見たT2の信号電圧をV2とすると、パネルの対称性から次の関係が成り立つ。
DC辺から見たT1の信号電圧=V2、
DC辺から見たT2の信号電圧=V1
この2点の測定値の小さい方の値で大きい方の値で割った値を正規化信号電圧と定義すると、
図28(C)の式に示すように、容量係数αが消えタッチ容量に依存しない値となる。
【0057】
タッチパネルのAB辺とAD辺から見た差動信号電圧の座標値依存性から求めた正規化信号電圧の座標依存性は、
(1)直線性が改善され、中心付近でも十分な信号量の変化が確保できる。
(2)パネルの中心から先の信号量の小さい座標算出に使えない領域がなくなる。
図29は、ノードABにおける差動信号電圧の座標依存性を示し、これが、
図30に示すような正規化信号電圧の座標依存性に変換される。
図31は、ノードADの差増信号電圧の座標依存性、
図32は、変換された正規化信号電圧の座標依存性を示している。
【0058】
AB辺から見た正規化信号電圧の容量依存性は、
図33、
図34に示すように極めて小さい。このためタッチ座標の算出には好都合であるが、タッチ容量の算出はできず、タッチ容量の算出には別の方法を用いる必要がある。タッチ容量を算出するには、容量による電圧変化に着目する必要がある。このため、タッチ容量を算出するには、
図35に示す手順が効果的である。
(1)タッチ点の差動信号電圧をノードAB、ノードCD、ノードBC、ノードADの4辺について測定する(S101)。
(2)測定した差動信号電圧から正規化信号電圧を算出する(S102)。
(3)タッチ点の正規化信号電圧と正規化信号電圧のルックアップテーブルを用いてタッチ点の座標を算出する(S103、S104)。
(4)次に、タッチ容量が標準容量のときの差動信号電圧のルックアップテーブルからタッチ点の差動信号電圧V0を求める(S105、S106)。
(5)差動信号電圧V0を用いて容量係数αを算出する。容量係数αは測定電圧VmをV0で割った値である。
(6)求めた容量係数αからαと容量値を関係付けたルックアップテーブルを用いてタッチ容量を算出する(S107、S108)。
【0059】
次に、本実施例のタッチパネルのタッチ検出アルゴリズムのフローを
図36に示す。このアルゴリズムは、好ましくは、プログラムメモリ210(
図9を参照)に格納されたプログラムシーケンスによって制御される。先ず、位置情報抽出部30や位置検出部40に含まれる全てのパラメータが初期設定された状態におかれている(S201)。次に、タッチパネルへの電源が投入されると、位置情報抽出部30および位置検出部40は、補正データを取得し、これに基づきパラメータの設定を行う(S202)。ここでの補正データとは、校正などに必要なデータであり、予め不揮発性メモリなどに格納されている。
【0060】
次に、タッチ状態が発生すると(S203)、位置情報抽出部30により位置情報が抽出され、この情報は、A/D変換された後、ディジタル信号として位置検出部40へ出力される(S204)。位置検出部40は、データを受け取ると、位置検出に必要な前処理を行う(S205)。前処理は、例えば、測定誤差を少なくするために平均化処理、上記した正規化信号電圧の算出、タッチ容量の算出などを含む。
【0061】
次に、位置検出部40は、タッチ容量が2倍以上であるか否か、言い換えれば、差動電圧のピーク値が第1のしきい値より大きいか否かを判定する(S206)。第1のしきい値未満であれば、1点接触であると判定し、座標を算出する演算処理を行う(S207)。この演算では、上記したように、差動電圧の感度特性による符号判定や、これに加えてルックアップテーブルを参照して詳細な座標算出が行われる。一方、第1のしきい値以上である場合には、位置検出部40は、複数点接触であると判定し、さらに第2のしきい値と比較することで、2点接触か3点接触かを判定するようにしてもよい。位置検出部40は、2点接触または3点接触に対応したルックアップテーブルを参照し、座標位置を算出する(S208)。
【0062】
次に、位置検出部40は、算出された座標情報を出力するとともに、移動フラグを“1”に設定する(S209)。次に、移動検出部40は、接触点の移動の有無を判定する(S2210)。接触点が移動しているか否かは、前回の座標出力と比較すること行われる。また、2点接触の場合、距離が変化すると差動信号のレベルが変化するので、この変化量に基づき判定してもよい。移動がない場合には、移動フラグは“0”に設定され(S211)、タッチ状態発生前の状態に戻る。移動があると判定されたには、再び、ステップS204からの処理が続行される。
【0063】
次に、ホバーリングタッチの測定結果を
図37に示す。本特許のタッチパネルは検出感度が高く、パネルから指を離しても接触点の検出が可能である。動作的には1点タッチの延長線上にあり、容量係数αの小さい1点タッチとして認識される。このため、第3の回路(検出回路)の感度により、測定限界が決まる点を除き、座標の検出等については1点タッチの手法がそのまま適用できる。図の測定ではパネルから5cm程度離しても検出できることが確認できたが第3の回路(検出回路)の感度をより高くすることにより、パネルからの距離をより大きくすることができる。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、位置検出部40(
図9)をメモリ・論理共役システム(MLCS:Memory-Logic Conjugate System)で実現すれば、ダイナミックリコンフィギュレーションが可能なクラスタメモリをルックアップテーブル(データメモリ220)として構成でき、中央処理部230による複数のステップで実現される演算処理の短縮化が実現できる。これは、中央処理部230の高速化の実現と、中央処理部230及びデータメモリ220のサイズ縮小化が実現でき、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やマイクロコントローラ(micro controller)よりもコストパフォーマンスが向上する。