特許第5776943号(P5776943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5776943-加熱調理容器 図000002
  • 特許5776943-加熱調理容器 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776943
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】加熱調理容器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/21 20060101AFI20150820BHJP
   A47J 37/10 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   A47J27/21 102B
   A47J37/10
【請求項の数】3
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2012-147779(P2012-147779)
(22)【出願日】2012年6月13日
(65)【公開番号】特開2013-255769(P2013-255769A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2014年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】512171397
【氏名又は名称】天野 和俊
(72)【発明者】
【氏名】天野 和俊
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05564589(US,A)
【文献】 特開2010−099140(JP,A)
【文献】 特開2009−072525(JP,A)
【文献】 特開2002−219056(JP,A)
【文献】 特開2011−078715(JP,A)
【文献】 特開平05−269044(JP,A)
【文献】 特開2010−071449(JP,A)
【文献】 実開昭63−121016(JP,U)
【文献】 実開昭61−035624(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/21
A47J 37/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面外側には放射状に、側面外側には垂直方向に並列状に多数のフィン3が一体成形されている鍋本体1の周囲に取り外し可能なカバー2を設けたことを特徴とする鍋、ヤカン、フライパン等の加熱調理容器に対して、鍋本体1下部にフィン3を設けない空間、熱気だまり4を設け、排気口の開口面積を狭める排気口絞り5を設けた加熱調理容器。
【請求項2】
カバー2を中空構造にし、断熱効果を持たせた請求項1に記載の加熱調理容器。
【請求項3】
中空構造のカバー2の中空部分を真空にし、断熱効果を高めた、請求項1に記載の加熱調理容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鍋、やかん、フライパン等の加熱調理容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の鍋、やかん、フライパン(以下、鍋)で鍋の側面や底面に燃焼ガスから熱を吸収させるための多数のフィンを設け、表面積を増大させることにより熱効率の改善を図ったものがあるが、さらに効率を向上させるには限界があった。
【0003】
また、鍋側面にフィンとカバーをロウ付けにより固定するものがあったが、カバーが破損したときにその交換修理が難しく、またフィンの清掃が難しかった。
【先行技術文献】
【0004】
【特許文献1】 特開2010−099140
【特許文献2】 特開2011−078715
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鍋をガスコンロ等で加熱するとき、ガスコンロで発生した高温燃焼ガス(以下、高温ガス)は鍋の底に当たり、外周へ広がり、鍋の側面を上昇する。この高温ガスの層の厚みは、鍋の底が平坦な場合、中央付近がもっとも厚く、鍋の底の外周へ行くほど薄くなる。また、燃焼させるガスの量を増やす(火力を増す)ほど、高温ガスの層の厚みは全体的に増大する。
【0006】
特許文献1による発明では、この高温ガスの層の厚みの変化に対応できない。たとえば、ある一定量のガスを燃焼させたときにできる高温ガスの厚みと同じ高さにフィンの高さ(または深さ)を設定したとすると、ガスの量を増やしたときは、高温ガスの厚みが増えるが、フィンの高さ以上の高温ガス層の熱は吸収ができない。また、ガスの量を減らした場合、高温ガス層の厚みが減り、フィンの一部が高温ガス層からはみ出てしまう。このはみ出た部分は外気にさらされ冷却されてしまうため効率が低下する。
【0007】
また、鍋側面を上昇する高温ガスは、外気と混合し温度が低下、上昇力が弱まりわずかな横風でも鍋から離れてしまうため鍋側面のフィンは外気にさらされやすい。
【0008】
ガスコンロの五徳は通常、放射状のアームにより鍋を一定の高さに支持しているが、鍋底面に放射状のフィンを設けると、五徳のアームがフィンにはまり込み、五徳のアームの上面より下にフィンが突き出てしまう。この場合、まだ燃焼が完全には終わっていない高温ガスまでもが冷やされるため不完全燃焼を誘発し、一酸化炭素を発生してしまう危険性がある。
【0009】
特許文献2は鍋の側面とフィンおよびカバーをロウ付けで一体化しているため、カバーの取り外しが容易ではない。そのため、鍋をぶつけたり、落としたりしてカバーが変形した場合にカバーの交換修理が難しい。また、鍋の吹きこぼれ等により、フィンが汚れてしまった場合もカバーが取り外せないためフィンの清掃が難しい。
カバーの外側は、外気にさらされているため、その部分からの熱の損失が発生する。
【0010】
本発明は、以上のような欠点を改善するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
表面積を増大させるために底面と側面にフィンを多数設けた本体周囲に、高温ガスを外気から隔離、保温するための取り外しが可能な中空のカバーを設け、カバー内側下部または本体下部には高温ガスを一時的にためる空間(以下、熱気だまり)を設け、フィン上部の高温ガス排気口に開口面積を狭めるための絞り(以下、排気口絞り)を設ける。本発明は、以上の構成による鍋である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、本体周囲を囲むカバーにてコンロで発生した高温ガスを外気から隔離し、保温しフィンに誘導する。カバーで囲われているためフィンの高さを高くしてもフィンは外気に接触しない。そのため充分な表面積の鍋を作ることができ効率を向上できる。また、側面上部のフィンとカバーに囲まれた排気通路を高温ガスが通過するとき、高温ガスは熱を奪われ体積が減少することにより重くなり上昇力が低下するが、熱気だまりにたまった高温ガス層の上昇力により、排気口へ吹き上げられる。
【0013】
ただし、この上昇力が強すぎると、開放されているカバー下部から過剰な外気を吸い込み高温ガスの温度を低下させてしまう。そのため排気口絞りを設け排気の量を制限することで過剰な外気の吸い込みを減少させる。
【0014】
ガスの火力が弱いときは、排気口絞りの抵抗のため排気は少ししかされない。そうすると、熱気だまりの上部から高温ガスがたまり、高温ガス層を形成する。その厚みが増加すると上昇力が増加し、排気口絞りの抵抗に打ち勝って排気口から冷却済み高温ガスが排気される。排気がされると、熱気だまりの高温ガス層の厚みが減り、上昇力が弱まり、排気量は減る。これにより、ガスの火力に応じた適度な排気量に調整される。
【0015】
ガスの火力が強いときは、弱いときより高い温度の高温ガスが熱気だまりに厚くたまり、より強い上昇力を発生し、排気口から大量に排気されるため、開放されているカバー下部から周囲に漏れ出す高温ガスの量を適度に抑えることができる。
【0016】
カバーの下端から下にフィンがはみ出ないようにフィンの高さを制限することで、鍋をコンロの五徳の上に置いたとき、カバーが五徳のアームに支持され、フィンが五徳のアームにはまり込むことを防ぐことができる。
【0017】
カバーは中空構造にすることで、高温ガスに触れるカバー内側と、外気に触れるカバー外側を分離し、カバー外面から外気への熱の放出を減らすことができる。また、この中空部分を真空にすることで保温効果をさらに高めることができる。
【0018】
本体とカバーは、ネジで固定されているため、必要に応じてネジをはずし本体とカバーを分離でき、フィンの清掃やカバーの交換修理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の鍋の側面図(左半分は断面図、右半分は外観図)である。
図2】本発明の鍋の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の鍋の側面図で左半分は断面図、右半分は外観図である。図2は、本発明の鍋の底面図である。それぞれの図は本体1にカバー2をネジ6により装着した状態を示している。
【0021】
本体1の底面および側面には多数のフィン3が一体成形されている。
【0022】
カバー2は中空構造である。この中空部分を真空にすることで保温効果をより高めることができる。
【0023】
図1に示すように、本体1の外側下部、またはカバー2の内側下部にはフィン3がない空間を設ける。この空間は高温ガスを一時的にためる熱気だまり4として機能する。
【0024】
カバーの下部から過剰な外気を吸い込まないようにするため排気口絞り5を設ける。
【0025】
本発明は以上のような構造である。
【符号の説明】
【0026】
1 本体
2 カバー
3 フィン
4 熱気だまり
5 排気口絞り
6 ネジ
図1
図2