特許第5776961号(P5776961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フェストアルピネ シュタール ゲーエムベーハーの特許一覧

特許5776961スチールのコーティングされ硬化されたコンポーネントを製造する方法と、この方法のためのコーティングされ硬化されたスチール・ストリップ
<>
  • 特許5776961-スチールのコーティングされ硬化されたコンポーネントを製造する方法と、この方法のためのコーティングされ硬化されたスチール・ストリップ 図000002
  • 特許5776961-スチールのコーティングされ硬化されたコンポーネントを製造する方法と、この方法のためのコーティングされ硬化されたスチール・ストリップ 図000003
  • 特許5776961-スチールのコーティングされ硬化されたコンポーネントを製造する方法と、この方法のためのコーティングされ硬化されたスチール・ストリップ 図000004
  • 特許5776961-スチールのコーティングされ硬化されたコンポーネントを製造する方法と、この方法のためのコーティングされ硬化されたスチール・ストリップ 図000005
  • 特許5776961-スチールのコーティングされ硬化されたコンポーネントを製造する方法と、この方法のためのコーティングされ硬化されたスチール・ストリップ 図000006
  • 特許5776961-スチールのコーティングされ硬化されたコンポーネントを製造する方法と、この方法のためのコーティングされ硬化されたスチール・ストリップ 図000007
  • 特許5776961-スチールのコーティングされ硬化されたコンポーネントを製造する方法と、この方法のためのコーティングされ硬化されたスチール・ストリップ 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5776961
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】スチールのコーティングされ硬化されたコンポーネントを製造する方法と、この方法のためのコーティングされ硬化されたスチール・ストリップ
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/02 20060101AFI20150820BHJP
   C23C 2/28 20060101ALI20150820BHJP
   C23C 2/06 20060101ALI20150820BHJP
   C23C 2/12 20060101ALI20150820BHJP
   C21D 1/70 20060101ALI20150820BHJP
   C21D 1/76 20060101ALI20150820BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   C23C2/02
   C23C2/28
   C23C2/06
   C23C2/12
   C21D1/70 F
   C21D1/76 G
   C21D9/46 J
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-538467(P2010-538467)
(86)(22)【出願日】2008年12月18日
(65)【公表番号】特表2011-508824(P2011-508824A)
(43)【公表日】2011年3月17日
(86)【国際出願番号】EP2008010850
(87)【国際公開番号】WO2009080292
(87)【国際公開日】20090702
【審査請求日】2011年7月7日
(31)【優先権主張番号】102007061489.8
(32)【優先日】2007年12月20日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506029255
【氏名又は名称】フェストアルピネ シュタール ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】VOESTALPINE STAHL GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(72)【発明者】
【氏名】ブラントシュテッター,ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】コルンベルガー,ジークフリート
(72)【発明者】
【氏名】クルツ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ペルッツィ,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】シュトルッツェンベルガー,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】マンツェンライター,トーマス
【審査官】 山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−291498(JP,A)
【文献】 特開2003−193213(JP,A)
【文献】 特開昭62−004860(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/106999(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00−2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
22MnB5タイプの硬化性スチールから硬化コンポーネントを製造する方法であって、スチール・ストリップが熱上昇を受け、そのプロセスにおいて、表面酸化物層が形成されるように炉内で酸化処理が行われ、次に、金属又は金属合金でのコーティングが行われ、そして、少なくとも部分的に硬化したコンポーネントを作り出すために、前記ストリップが加熱され、少なくとも部分的にオーステナイト化され、その後、冷却されそれによって硬化される方法において、硬化反応後におけるスチール・ストリップ基材とコーティングとの間に位置する表面延性層(7)を作り出すために、前記金属又は金属合金でのコーティングの前に、前記表面の酸化物が部分的に還元され、それによって非常に薄い還元層(4)が形成され、この層(4)が、残留酸化物層(3)上に位置し、前記ストリップ中の前記酸化物層(3)の下方に内部酸化の領域(3a)が位置し、そこにおいて、前記スチール合金要素が部分的に酸化された状態で存在することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記酸化を表面的に逆転するべく前記表面酸化物層(3)の形成後に還元処理を行い、この層(3)の上に還元層(4)が形成され、その後、金属又は金属合金でのコーティングが行われ、但し、ここで、前記酸化と表面還元とは、前記表面還元と前記コーティングとの後に、前記コーティングと前記スチール・ストリップとの間に酸化物層(3)が残るように行われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属コーティングは、溶融金属又は溶融金属合金での溶融めっきコーティングとして、或いは、前記ストリップ上の単数又は複数種の金属の電着、或いは、PVDおよび/又はCVD法、によって、形成される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸化処理は、酸化炉チャンバ雰囲気、および/又は、水蒸気含有炉チャンバ雰囲気によって行われる請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記酸化の度合いと前記酸化物層の厚みは、前記処理雰囲気中の酸化剤の含有量および/又は前記処理の継続時間および/又は温度レベルおよび/又は前記炉チャンバ内の水蒸気濃度によって調節される請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記コーティングは、アルミニウム又は実質的にアルミニウムを含む合金又はアルミニウムと亜鉛との合金および/又は実質的に亜鉛を含む別の亜鉛合金および/又は亜鉛および/又はその他のコーティング金属で行われる請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記酸化および/又は還元が行われる前記炉チャンバは、直接的又は間接的に加熱される請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記酸化および/又は還元が行われる前記炉チャンバは、ガスおよび/又はオイルバーナーによって、および/又は、対流によって、又は、前記スチール・ストリップが誘導加熱されることによって、加熱される請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化は、300nm以上の酸化物層厚みが酸化の最後に形成されるように行われ、その後の前記還元は、前記酸化物層が前記表面から部分的に還元されるように行われる請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法により、且つ
硬化性スチールからなり、スチール基材(1)とその上に付与された金属コーティング又は層(5)とを有し、前記スチール基材(1)の酸化物層(3)が、前記金属コーティング(5)が前記スチール基材(1)上に形成されている境界領域に存在するスチール・ストリップから、作られる硬化コンポーネントであって、
表面延性層(7)は、前記スチール基材の硬度よりも低い硬度を有することを特徴とする硬化コンポーネント。
【請求項11】
前記金属コーティング(5)は、アルミニウム又は実質的にアルミニウム、アルミニウム合金、アルミニウム−亜鉛合金、実質的に亜鉛を含む亜鉛合金、亜鉛−鉄合金、又は実質的に亜鉛、から成る、請求項10に記載の硬化コンポーネント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性スチールから硬化コンポーネントを製造する方法と、この方法用の硬化性スチール・ストリップとに関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性スチールからコンポーネント、特に、硬化コンポーネントを製造することは知られている。以後、硬化性スチールとは、基材の相転移が加熱中に生じるスチール、そして、その出発材料よりも有意に硬いか、又は高い引っ張り強度を有する材料が、その後の冷却、所謂、焼き入れ、によって前の構造変化から形成され、更に、好適には、焼き入れ中に更なる構造変化を起こすスチールのことをいう。
【0003】
例えば、所謂プレス硬化の方法はDE 24 52 486 C2から知られており、ここでは、硬化性スチール材のプレートが所謂オーステナイト化温度以上に加熱され、この加熱状態において、成形工具に挿入されて、同時にこの成形工具中で冷却され、一方では所望のコンポーネントの最終形状(ジオメトリ)が形成されるとともに、他方において、所望の硬度又は強度が得られる。この方法は広く使用されている。
【0004】
又、EP 1 651 789 A1から知られている方法では、硬化コンポーネントが、陰極腐食耐性を有する硬化性スチールシートから製造されるが、ここで、コンポーネントは、最終硬化コンポーネントの公称寸法よりも0.5%〜2%小さくなるようにあらかじめ金属コーティングされた状態で冷間成形される。その後、コンポーネントは加熱され所望のコンポーネントの最終寸法に正確に対応する工具に挿入される。このコーティングされたコンポーネントは、熱膨張によってこの最終寸法にまで既に正確に膨張されており、所謂成形工具にその全ての面で保持され、そこで冷却され、それによって硬化が起こる。
【0005】
更に、EP−A 0 971 044から知られている方法では、硬化性スチールから成るとともに金属コーティングを備えた金属シートがオーステナイト化温度以上にまで加熱され、その後、熱成形工具内に移されて、そこで、加熱金属シートが形成され、冷却処理によって同時に冷却され硬化される。
【0006】
上述した種々の熱間成形のための方法の欠点は、スチール基材上の金属コーティングの有無に関わらず、スチール基材中に、特に熱間成形中、更に、成形処理がまだ完了していない冷間予備成形コンポーネントにおいても、微小亀裂が生じることにある。
【0007】
これらの微小亀裂は、特に成形中の領域、とりわけ、高度の成形中の領域に生じる。これら微小亀裂は、表面上および/又は金属コーティング中に位置し、その一部は比較的遠く基材内へと延出する可能性がある。この場合、もしもコンポーネントが応力を受けた場合にそのような亀裂が発達し続け、それらが応力による不具合を導く可能性のあるコンポーネントに対する損傷となることは問題である。
【0008】
スチールに対する金属コーティングは、アルミニウム、アルミニウム合金コーティング、特に、アルミニウム亜鉛合金コーティング、亜鉛コーティング、亜鉛合金コーティングの形式として、古くから知られている。
【0009】
これらのコーティングは、スチール材を腐食から保護することを目的とする。アルミニウムコーティングの場合、これは、アルミニウムによって腐食性媒体の侵入に対するバリアが形成される、所謂、バリア保護によって行われる。
【0010】
亜鉛コーティングの場合、保護は、亜鉛の所謂陰極作用によって行われる。
【0011】
これまで、そのようなコーティングは、通常の強度のスチール合金、特に、自動車構造、建築産業用、更に、家庭用品産業用に、使用されてきた。
【0012】
それらは、溶融めっき、PCD又はCVD法、又は電着、によってスチール材に付与可能である。
【0013】
高強度スチール性を使用して、後者をそのような溶融めっきによってコーティングする試みも行われた。
【0014】
例えば、DE 10 2004 059 566 B3から、高強度スチールのストリップを溶融めっきする方法が知られているが、ここでは、ストリップは、まず、連続炉内で還元雰囲気中で約650℃の温度にまで加熱される。この温度において、前記高強度スチール中の合金構成成分が僅かな量だけストリップの表面へと拡散するものと考えられる。この場合、主として純鉄から成る表面が、前記連続炉に内蔵されている還元チャンバ内において最高750℃までの更に高い温度での非常に短い熱処理によって酸化鉄層に変換される。この酸化鉄層がその後の、還元雰囲気中の更に高い温度でのアニール処理においてストリップの表面への前記合金構成成分の拡散を防止するものと考えられる。前記還元雰囲気中において、前記酸化鉄層はより純度の高い鉄の層に変換され、この上に、亜鉛および/又はアルミニウムが、最適に付着するように溶融めっき浴中で付与される。この方法によって付与された酸化物層は、最大で300nmの厚みを持つものとされる。実際には、その層の厚みは、最大で、約150nmに設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】独国特許発明第2452486号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1651789号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0971044号明細書
【特許文献4】独国特許発明第102004059566号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、その成形作用、又特にその熱間成形作用も改善された、硬化性スチールから硬化コンポーネントを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のこの課題は、請求項1の特徴を有する方法によって達成される。その有利な発展構成は従属項に特長付けられている。
【0018】
もう1つの課題は、成形性、特に、熱間成形性、が改善されたスチール・ストリップを提供することにある。
【0019】
本発明のこの課題は、硬化性スチールからなり、スチール基材(1)とその上に付与された金属コーティング又は層(5)とを有し、前記スチール基材(1)の酸化物層(3)が、前記金属コーティング(5)が前記スチール基材(1)上に形成されている境界領域に存在する特徴を有するスチール・ストリップによって達成される。
【0020】
その有利な発展構成は従属項に特長付けられている。
【0021】
本発明は、熱間又は冷間圧延スチール・ストリップを表面的に酸化し、その後、金属コーティングを行い、そして、必要とあれば、前記コンポーネントの製造のために対応のコーティングされた金属シートから前記プレートを切り取り、その後のプレートの成形及び冷却中に、少なくとも部分的に硬化した構造又は部分的に硬化したコンポーネントが形成されるような加熱によって、それを少なくとも部分的にオーステナイト化するために前記プレートを加熱する。驚くべきことに、恐らく前記オーステナイト化のための加熱および/又は成形及び冷却中に、前記ストリップの表面酸化によって前記硬化性スチールから表面的に微小亀裂がもはや生じないほど良好に張力を分散させることが可能な延性層が形成される。前記処理において、前記金属コーティングは、表面脱炭に対して保護作用を奏し、この金属コーティングは、勿論、腐食保護などのその他の働きも奏することができる。
【0022】
オーステナイト化のための加熱中に、金属コーティングの代わりに、保護ガス雰囲気を作り出すことも可能である。具体的には、酸化雰囲気中において、例えば最高で約700℃での表面酸化を行うことができ、更に、それ以上の酸化および/又は脱炭が起こらないように不活性ガス雰囲気中で追加の加熱を行うことができる。
【0023】
必要であれば、反応性表面を得るために、前記金属コーティングを付与するためのスチール・ストリップの酸化を表面的に減少させることができる。
【0024】
但し、前記酸化物層は、いずれの場合においても従来の予備酸化におけるような亜鉛メッキのために大幅に除去されることはない。更に、本発明による前記酸化は、従来技術による予備酸化よりも遥かに大幅に行われるものである。従来技術の予備酸化は、最大で300nmの厚みまで行われるのに対して、本発明の酸化はそれよりもはるかに大幅に行われ、それによりたとえ還元が行われた後においても、まだ、好ましくは少なくとも300nmの厚みの酸化層が残る。
【0025】
恐らく、本発明の酸化によって、合金要素の酸化物を当然に含有する酸化鉄層が表面に形成されるだけでなく、この層の下方においてもこれらの合金要素が部分的に酸化されるものと思われる。
【0026】
硬化後、本発明によって製造されたコンポーネントは、その表面上に、スチール基材とコーティングとの間に薄い層を示すが、これは図4の微小断面において白っぽい層として現れている。この延性層が形成されることの現状において最も可能性の高い原因は、硬化中において表面酸化領域における相転移に使用されなかった、或いは、この転移を遅延又は阻害した、酸化合金要素である。しかしながら、その正確なメカニズムは説明出来なかった。
【0027】
驚くべきことに、コーティング金属による実際のコーティングのためには不要である酸化によって、金属コーティング後においても表面領域に延性が増大した硬化基材が形成されることが見出された。驚くべきことに、層厚>300nmの酸化鉄層を形成する酸化を使用して、熱間成形の場合においても、そして、例えば、850℃以上又は各オーステナイト化温度以上の、タイプ22MnB5の好適なスチールのための硬化のための熱処理中でも、微小亀裂無く形成することが可能な金属シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明による処理流れを非常に簡略的に図示している。
図2】従来技術との比較での本発明における曲げ角度の改善を示す図である。
図3】硬化後における従来技術との比較での本発明による層構造を非常に簡略的に図示している。
図4】本発明によるスチール・ストリップの表面の顕微鏡微小断面画像を図示している。
図5】本発明によるものではない比較例の顕微鏡微小断面画像を図示している。
図6】本発明による比較例の走査電子顕微鏡画像を図示している。
図7図6の走査電子顕微鏡画像からの詳細を、エネルギー分散X線分析(EDX)から得られたライン-亜鉛密度によって図示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。これら図面において、図1は、本発明による処理流れを非常に簡略的に図示している。図2は、従来技術との比較での本発明における曲げ角度の改善を示す図である。図3は、硬化後における従来技術との比較での本発明による層構造を非常に簡略的に図示している。図4は、本発明によるスチール・ストリップの表面の顕微鏡微小断面画像を図示している。図5は、本発明によるものではない比較例の顕微鏡微小断面画像を図示している。図6は、本発明による比較例の走査電子顕微鏡画像を図示している。図7は、図6の走査電子顕微鏡画像からの詳細を、エネルギー分散X線分析(EDX)から得られたライン-亜鉛密度によって図示している。
【0030】
図1において、本発明の方法は、例えば、溶融めっきコーティングされたスチール・ストリップ、具体的には、Z140コーティングを有するタイプ22MnB5の亜鉛めっきスチール・ストリップのための処理流れとして図示されている。
【0031】
図1及び図3に図示されている層厚は、実際のスケールではなく、より良い表示のために互いに対して歪められたスケールで図示されている。
【0032】
ブライト(bright)スチール・ストリップ1は、溶融めっきコーティングの前に、酸化され、それによってストリップ1には酸化物層2が形成される。
【0033】
この酸化は、650℃〜800℃の温度で行われる。溶融亜鉛めっきに必要とされる従来の予備酸化処理の場合は150nmの酸化物層の厚みでまったく十分であるのに対して、本発明の酸化処理は、酸化物層が>300nmとなるように行われる。前記金属溶融めっきコーティング、例えば、溶融亜鉛めっき、又はアルミめっき、を付与するために、つぎの工程において、表面の酸化物の一部還元が行われ、これによって、実質的に純鉄から成る非常に薄い還元層4が形成される。残りの酸化物層3はその下に残っている。
【0034】
前記酸化処理により、恐らく、前記酸化物層3の下方に「内部酸化」の領域3aが残される。この領域3aにおいて、合金要素は、おそらく部分的に酸化された状態、又は酸化状態で部分的に存在している。
【0035】
次に、コーティング金属による溶融めっきが行われ、それによって、このコーティング金属から成る層5が、残りの酸化物層3上に形成される。次に、硬化コンポーネントを得るために、前記ストリップ1をオーステナイト化温度にまで加熱し、少なくとも部分的にオーステナイト化し、これによって、特に、前記金属コーティング5とストリップ1の表面とが互いに合金化する。この処理において、前記酸化物層3は部分的又は完全に消費されるか、或いは、前記ストリップ1と金属コーティング5との間の分散プロセスにより、高温処理中において検出することができない。
【0036】
亜鉛めっきによって付与される金属コーティングの場合は、予備還元無しで、酸化物層上の沈積を行うことが可能ではあるが、これに代えて、還元処理とともに、エッチング処理を行うことも可能である。
【0037】
次に、硬化又は部分硬化コンポーネントを得るために、オーステナイト化の度合いに応じて、ツール内で成形と冷却とが行われ、ここで、前記層6がオプションとして相に関して転移し、そして、相転移はストリップ1内でも起こる。硬化後、微小断面(図4)において、ストリップ1と金属コーティング6との間に淡い延性層7を観察することができるが、これが、恐らく最終製品を微小亀裂の無い硬化コンポーネントとするものである。この延性層7は、恐らくは、硬化のための加熱処理中に既に形成されるものであり、従って、熱成形中には既に存在している。
【0038】
恐らく、この淡い層7が形成される最も考えられる原因は、行われた酸化処理によって、硬化のために必要とされる、マンガンなどの合金要素が、金属コーティングの前に、表面の近傍の領域において既に酸化されて転移のためには使用不能となっているか、もしくは転移を阻害し、それによってスチール・ストリップが表面の近傍の非常に薄い領域においてこの延性層7を形成し、この層が、成形中に亀裂が形成されず、かつ亀裂が伝播しないように表面の近傍において張力を補償するにはおそらく十分なものであるということである。
【0039】
又、前記合金要素の前記「内部酸化」の前記領域3aがこの点に関して重要であるとも考えられる。
【0040】
この方法の利点は硬化の後においても現れ、或いは、本発明によって製造された、又は、硬化された金属シートを、例えば、三点曲げテストにかけた場合に、硬化後においても検出することが可能である。このことは崩壊挙動に対しても有利な影響を与えうる。
【0041】
この三点曲げテストにおいて、直径30mmの二つのベアリングが、シート厚の二倍の距離で載置される。そして硬化シートをその上に載せ、その後、それぞれ、前記両ベアリングから同じ距離で、0.2mmの半径を有する曲げレールで応力を加える。
【0042】
曲げレールのサンプルに対する接触の時間と、距離と、力を測定する。
【0043】
力と距離、又は、距離から計算される曲げ力角度を用いて曲げ力角度カーブを記録する。テストの判定基準は最大力における曲げ角度である。
【0044】
コーティングZ140を備えるタイプ22MnB5のスチールの図2から比較をすることができ、ここから、硬化した低温のサンプルにおいて本発明によって形成された前記延性層によって遥かに大きな曲げ角度を得ることができることが明らかである。
【0045】
本発明と従来技術とは図3においても比較されており、ここでは、従来技術では、硬化した基材に対して付着する硬化後の金属コーティングは存在するが、延性層は存在していない。
【0046】
本発明において、前記延性層7は、硬化反応後、硬化基材とコーティングとの間に位置する。
【0047】
この層の平均層厚は、0.3μm以上であり、ここで、この層は連続的なものとすることができるが、本発明の作用効果を奏するためにそれは必ずしも完全に連続したものである必要はない。
【0048】
図6は、本発明の比較例の走査電子顕微鏡画像を図示している。基材マルテンサイトの方向における拡散プロセスによってZn含有率が約40%から5%Zn以下へと急激に減少していることがわかる。
【0049】
前記基材の近傍において、鉄-亜鉛層の粒子は非常に低い亜鉛含有率しか有さず、このFeに富む層、微小断面において白っぽい色で現れる、が、他の層部分間の延性中間層として作用する。
【0050】
図7は、エネルギー分散X線分析(EDX)からのライン−亜鉛密度プロファイルによって図6の詳細を図示している。ここでも、亜鉛含有率が基材の方向において低下していることが明らかである。
【0051】
図4及び5は、それぞれ、本発明(図4)と従来技術(図5)の硬化スチール・ストリップの微細断面画像を示し、この微細断面には、基材1と、その上の転移金属層6と、それらの間の延性層7とがはっきり見える。
【0052】
図5は、従来技術の層構造を図示し、ここでは、亜鉛めっきストリップ101は高強度スチール基材102を有し、その上に、亜鉛-鉄層103が付与されている。延性層は無い。
【0053】
本発明に拠れば、前記金属コーティングは、その目的が単にあらゆる脱炭に対して対抗することにあるので、あらゆる有用な金属コーティングから選択することができる。従って、コーティングは純アルミニウム又はアルミニウム珪素コーティング、更には、アルミニウムと亜鉛とから成る合金(Galvalume)コーティング、亜鉛又は実質的に亜鉛からなるコーティングとすることができる。但し、もしもそれらが短時間、硬化中の高温に耐えうるのであれば、金属又は合金の他のコーティングも適当である。
【0054】
前記コーティングは、例えば、亜鉛めっき又は溶融めっき、或いは、PVDやCVD法、によって付与することができる。
【0055】
この場合、酸化は、前記ストリップを、直接加熱されたプレヒータに通過させることによって従来の方法で行うことができ、ここでは、ガスバーナーが使用されるとともに、ガス-空気混合比を変えることによって、前記ストリップを取り囲む雰囲気において酸化電位の増加を作り出すことができる。酸化電位はこのようにして制御することができ、ストリップの表面上で鉄の酸化をもたらす。この場合、制御は、従来技術における酸化よりも遥かに大きな酸化が起こるように行われる。その後の炉ラインにおいて、従来技術と異なり、形成された酸化鉄層、又は恐らく既に達成されているスチールの内部酸化が、表面的又は部分的にのみ還元される。
【0056】
更に、前記ストリップを、保護ガス雰囲気中で、それ自身は公知のRTFプレヒータ中でアニールすることができ、酸化又は予備酸化も、実際に必要とされるよりも遥かに大幅に行われる。酸化の強度は、この場合、特に、酸化剤の供給によって調節することができる。
【0057】
更に、炉雰囲気の加湿、即ち、水蒸気を非常に豊富に含む(通常よりも豊富)雰囲気、のみによって、又はその他の酸化剤を組み合わせて、所望の効果が達成されることが示された。本発明において重要なことは、オプションとしてその後に行われる還元が、残留酸化が残るようにのみ行われるということである。スチールの内部酸化状態は、水蒸気含有雰囲気のみの熱処理では完全には戻らない。
【0058】
酸化は、前記雰囲気、オプションとして添加される他の酸化剤の酸化剤濃度、処理の時間、炉チャンバ中の温度曲線と水蒸気濃度、を介して制御することが可能である。
【0059】
図3及び図4に図示されているような、このように処理されたストリップは、冷間成形又は加熱圧縮硬化又は後成形することができるが、熱間成形、圧縮硬化でも極めて良好に製造することができ、スチール基材中には微小亀裂は無い。
【0060】
この場合、本発明によって酸化を行うことは、未コーティング状態のスチール材でエッジ脱炭と異なり、達成可能な材料の最終強度に対してなんら悪影響を与えないことが示された。
【0061】
より単純で安全な方法で成形、硬化コンポーネントの質を大幅に改善することを可能にする方法とスチール・ストリップが作り出されることが本発明の利点である。
【符号の説明】
【0062】
参照番号
1 スチール・ストリップ
2 酸化物層
3 残留酸化物層
4 薄還元層
5 金属コーティング
6 金属コーティング
7 淡色延性層
101 亜鉛めっきストリップ
102 スチール基材
103 亜鉛-鉄層
図1
図2
図3
図7
図4
図5
図6