(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態に係る画像表示装置について、図面を参照して具体的に説明する。
【0037】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態に係る画像表示装置及び画像表示装置に搭載される表示パネル、及びその駆動方法について説明する。
【0038】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る画像表示装置1は、電気光学素子として液晶分子を利用した表示パネル2とレンチキュラレンズ3とを具備した立体表示用の画像表示装置である。レンチキュラレンズ3は、表示パネル2の表示面側、すなわち使用者側に配置されている。
【0039】
表示パネル2は、第1視点用の画像を表示する画素及び第2視点用の画像を表示する画素を備えた視点数2からなる立体表示用の表示パネルである。本実形態においては、第1視点用の画素が左眼用画素4Lであり、第2視点用の画素が右眼用画素4Rである。すなわち、表示パネル2は、各1個の左眼用画素4Lと右眼用画素4Rからなる「表示単位」としての画素対がマトリクス状に設けられた表示パネルである。なお、本実施形態においては、左眼用画素4L及び右眼用画素4Rを総称して画素4と呼称する。
【0040】
図2に示すように、レンチキュラレンズ3は多数のシリンドリカルレンズ3aが一次元配列したレンズアレイである。シリンドリカルレンズ3aはかまぼこ状の凸部を有する一次元レンズである。その延伸方向、すなわち長手方向は、表示面内において配列方向と直交する方向となっている。シリンドリカルレンズ3aは延伸方向にはレンズ効果を持たず、その直交方向である配列方向にのみレンズ効果を有する。これにより、レンチキュラレンズ3はシリンドリカルレンズ3aの配列方向にのみレンズ効果を有する一次元レンズアレイとなっている。そして、シリンドリカルレンズ3aの配列方向は、左眼用画素4L及び右眼用画素4Rが繰り返し配列される方向に設定されている。なおシリンドリカルレンズ3aは、前述の表示単位と対応して配置されている。なお、本実施形態において、表示単位を構成する1つの画素について注目する場合は画素を「サブ画素」とも称する。
【0041】
シリンドリカルレンズ3aは、前述のようにその延伸方向と直交する方向にのみレンズ効果を有する。そして、本実施形態においては、このレンズ効果を有する方向が、左眼用画素4L及び右眼用画素4Rが繰り返し配列される方向と一致している。この結果、シリンドリカルレンズ3aは、左眼用画素4Lの光と右眼用画素4Rの光を異なる方向に分離可能な光線分離手段として作用する。これにより、レンチキュラレンズ3は、各表示単位の左眼用画素4Lが表示する画像と、各表示単位の右眼用画素4Rが表示する画像を、異なる方向に分離することができる。すなわち、レンチキュラレンズ3は、画像分離手段、画像振分手段として作用する光学部材である。なお、シリンドリカルレンズ3aの焦点距離は、シリンドリカルレンズ3aの主点、すなわちレンズの頂点と、画素面、すなわち左眼用画素4L又は右眼用画素4Rが配置された面との間の距離に設定されている。
【0042】
なお、本明細書においては、以下のようにXYZ直交座標系を設定する。左眼用画素4L及び右眼用画素4Rが繰り返し配列される方向において、1つの表示単位内の右眼用画素4Rから左眼用画素4Lに向かう方向を+X方向とし、その反対方向を−X方向とする。+X方向及び−X方向を総称してX軸方向という。また、シリンドリカルレンズ3aの長手方向をY軸方向とする。更に、X軸方向及びY軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向とし、このZ軸方向のうち、左眼用画素4L又は右眼用画素4Rが配置された面からレンチキュラレンズ3に向かう方向を+Z方向とし、その反対方向を−Z方向とする。+Z方向は前方、すなわち、使用者に向かう方向であり、使用者は表示パネル2の+Z側の面を視認することになる。そして、+Y方向は、右手座標系が成立する方向とする。すなわち、人の右手の親指を+X方向、人差指を+Y方向に向けたとき、中指は+Z方向を向くようにする。
上述の如くXYZ直交座標系を設定すると、シリンドリカルレンズ3aの配列方向はX軸方向となり、左眼用の画像と右眼用の画像はX軸方向に沿って分離されることになる。また、左眼用画素4L及び右眼用画素4Rからなる表示単位がY軸方向に一列に配列される。X軸方向における画素対の配列周期はシリンドリカルレンズ3aの配列周期と略等しくなっている。一つのシリンドリカルレンズ3aには、表示単位がY軸方向に配列した列が対応して配置されている。
【0043】
本実施形態では、1ピクセルは3つの表示単位から構成され、各表示単位は赤(RED)、緑(GREEN)、青(BLUE)に配色されている。カラーフィルタは、赤(RED)、緑(GREEN)、青(BLUE)の各色がX軸方向へ延伸しており、Y軸方向へ赤(RED)、緑(GREEN)、青(BLUE)がストライプ状に繰り返し配列している。カラーフィルタの配色の順序はこれに限定されない。また、配色の種類もこれに限定されることなく、3色以上のM色から構成されたカラーフィルタをストライプ状に繰り返して配列してもよい。本実施形態では、カラーフィルタ及びブラックマトリクスは対向基板2bの液晶層5LC側の面に設けられている。
【0044】
図2に示すように、表示パネル2においては、TFT基板2aと対向基板2bとが微小な間隙を設定して配置されており、この間隙に液晶層5LCが配置されている。液晶層5LCは例えば、透過型のTNモードとなるように構成されている。ただし、この構成に限定されず、他の液晶モードを適用することもできる。TFT基板2aは表示パネル2の−Z方向側に配置され、対向基板2bは+Z方向側に配置されている。すなわち、対向基板2bの更に+Z方向側にレンチキュラレンズ3が配置されている。また、TFT基板2aの+Z側、及び対向基板2bの−Z側には偏光板11が貼合されている。
【0045】
図2に示す表示パネル2は薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)を有するアクティブマトリクス型の表示パネルである。薄膜トランジスタは各画素に表示信号を伝送するためのスイッチとして作用し、このスイッチを操作するのは、各スイッチのゲートに接続されたゲート線Gを流れるゲート信号である。TFT基板2aの液晶層5LC側の面、すなわち+Z方向側の面に、列方向、すなわちY軸方向に延伸するゲート線G1乃至G7が配置されている。なおゲート線G1乃至G7を総称して、以下ゲート線Gと呼称する。更に、TFT基板2aの同じ面には、行方向、すなわちX軸方向に延伸するデータ線D1乃至D5が配置されている。データ線D1乃至D5を総称して、以下データ線Dと呼称する。
【0046】
データ線Dは薄膜トランジスタに表示データ信号を供給する役割を果たす。本実施形態においては、ゲート線Gは屈曲しているものの、複数回の屈曲を経てY軸方向に延伸しており、X軸方向に複数配列している。また、データ線Dは屈曲しているものの、複数回の屈曲を経てX軸方向に延伸おり、Y軸方向に複数配列している。そして、ゲート線Gとデータ線Dの交点近傍に、画素(左眼用画素4L又は右眼用画素4R)が配置されている。
【0047】
図1においては、画素のゲート線G及びデータ線Dとの接続関係を明確にするため、例えばデータ線D3とゲート線G2に接続された画素をP32と表記している。すなわち、Pの次の数字がデータ線のDの後の数字であり、更にその次の数字がゲート線のGの後の数字である。
【0048】
図3及び
図4に拡大して示すように、データ線D及びゲート線Gに囲まれる領域が画素4であり、画素4には画素電極4PIX、画素薄膜トランジスタ4TFT、蓄積容量線CS、蓄積容量電極CS2が配置されている。
なお、
図3は、画素P34,P33,P25,P45の拡大図であり、
図4は、画素P31,P32,P22,P42の拡大図である。
【0049】
画素薄膜トランジスタ4TFTはMOS型の薄膜トランジスタであり、ソース電極又はドレイン電極の一方がコンタクトホール4CONT1を介してデータ線Dに接続され、他方がコンタクトホール4CONT2を介して画素電極4PIXと蓄積容量4CSの一方の電極に接続される。本実施形態においては、画素電極が接続された方の電極をソース電極、データ線Dに接続された方の電極をドレイン電極と呼称するものとする。そして、画素薄膜トランジスタ4TFTのゲート電極は、ゲート線Gに接続される。蓄積容量4CSの他方の電極には、蓄積容量電極CS2が接続されている。更に、対向基板2bの液晶層5LC側には対向電極4COMが形成され、画素電極4PIXとの間で画素容量4CLCが形成される。蓄積容量線CSと蓄積容量電極CS2は同層で形成され、電気的に接続されている。
【0050】
なお、
図3,
図4においては、コンタクトホール4CONT1は灰色塗り、コンタクトホール4CONT2は黒塗りで示し、画素電極4PIXは点線で、またシリコン層4SIは太線で、夫々の形状を示している。なお、各図面におけるハッチングは、前述のような構成要素を区別するためのものであり、切断面等を意味するものではない。
【0051】
なお、
図1においては、各画素のゲート線G及びデータ線Dに対する接続関係を示すため、
図3及び
図4における画素薄膜トランジスタ4TFT及び画素電極4PIXを抽出して示している。また、
図3及び
図4においては、各構成要素の大きさや縮尺は、図の視認性を確保するため、適宜変更して記載してある。
【0052】
本実施形態においては、ゲート線Gとデータ線D及び蓄積容量電極CS2で囲まれた領域を「開口部」と呼ぶ。蓄積容量線CSは開口部を貫くように横断して配置される。特に、蓄積容量線CSは開口部中央において、データ線D、ゲート線Gとは異なる方向へ傾斜して配置される。すなわち、1つのサブ画素内に設けられた蓄積容量線CS、データ線D、ゲート線Gの夫々が延びる方向に着目すると、その関係は夫々異なる方向に延伸して配置される。
【0053】
図2に示すように、表示パネル2では、台形状の開口部からなる右眼用画素4Rの列と左眼用画素4Lの列とが画像分離方向、すなわちX軸方向に交互に配列している。右眼用画素4Rと左眼用画素4Lの開口部は、Y軸方向に互いに重なる領域と重ならずになる開口領域から構成される。
【0054】
1ピクセルは、3行×2列のサブ画素からなる正方形で構成される。1ピクセルのピッチをPu、サブ画素のX軸方向のピッチをPx、サブ画素のY軸方向のピッチをPyとすると、次式の関係式が成り立つ。
Pu=2×Px=3×Py ・・・(1)
【0055】
図5に示すように、対向基板の液晶層5LC側の面に画素の開口部以外を覆う遮光部としてブラックマトリクス60が設けられる。ブラックマトリクス60は画素薄膜トランジスタ4TFT、及びゲート線G、データ線D、蓄積容量電極CS2を覆っており略台形状に開口している。本実施形態においては、「遮光部」という表現を使用するが、これは特にこのブラックマトリクス60に限定するものではなく、光を通さない部分を指すものである。したがって、ブラックマトリクス60は、データ線Dまたはゲート線G上には設けず、画素薄膜トランジスタ4TFTと蓄積容量電極CS2のみを覆った構成であっても良く、その場合、データ線Dまたはゲート線Gが遮光部として機能する。
【0056】
ここで、XY平面上において、「上」または「下」という表現をする場合、「上」または「下」の方向とはY軸方向と平行な方向であり、「上」側が+Y方向、「下」側が−Y方向である。なお、上述のように、サブ画素は、遮光部の形状より実質的に台形状とみなすことができるため、以下の説明では、略台形画素と称して、底辺のうち長い方を下底、短い方を上底とする。なお、開口の形状は台形に限定されず、平行四辺形や多角形、楕円形、半円形にも適用される。
【0057】
図5に示すように、前述の略台形画素の開口部において上底の長さをX1で示す。また、略台形画素の斜辺部における遮光線の中心点から略台形画素の上底との交点までのX軸方向への長さをX2で示す。すると、略台形画素の斜辺領域におけるX軸方向への幅は2×X2である。X軸方向に隣接する画素において略台形画素の開口部が互いに重なる領域のX軸方向への幅をX3で示す。また、前述の略台形画素の開口部のY軸方向の開口幅をY1で示す。略台形画素の上底部における遮光部のY軸方向への幅はY2であり、略台形画素の下底部に配置された遮光線のY軸方向への幅は2×Y3である。これにより、サブ画素のX軸方向のピッチPx、及びY軸方向のピッチPyと、略台形画素の遮光部と開口部の関係から以下の関係式が成り立つ。
Px=X1+2×X2 ・・・(2)
Py=Y1+Y2+2×Y3 ・・・(3)
【0058】
画素薄膜トランジスタ4TFTは、半導体として多結晶シリコンを使用したポリシリコン薄膜トランジスタを使用している。多結晶シリコンは一例では、微量のホウ素を含むP型半導体である。すなわち、画素薄膜トランジスタ4TFTは、ソース電極又はドレイン電極の電位よりもゲート電極の電位の方がローレベルとなった場合に、ソース電極とドレイン電極との間が導通状態となるPMOS型の薄膜トランジスタであるが、これに限定されずNMOS型の薄膜トランジスタも同様に適用可能である。
【0059】
ポリシリコン薄膜トランジスタのポリシリコン層は、例えば、TFT基板2a上に酸化シリコン層を形成し、続いて、アモルファスシリコン層を形成し、このアモルファスシリコン層を多結晶化することにより、形成される。アモルファスシリコン層を多結晶化する手段として、熱アニール法やレーザアニール法が用いられる。特に、エキシマレーザ等のレーザを使用したレーザアニール法は、ガラス基板の温度上昇を最小限に留めた上でシリコン層のみを加熱多結晶化することができる。このため、レーザアニール法を使用すると、融点の低い無アルカリガラス等を使用することができる。これにより、低コスト化が可能となるため、ポリシリコン薄膜トランジスタは、低温ポリシリコンと称して良く用いられている。本実施形態では、ガラス基盤に対するエキシマレーザのスキャン方向をY軸方向としている。なお、このアニール工程を省くことにより、アモルファスシリコン薄膜トランジスタを実現することもできる。
【0060】
次に、ポリシリコン層の上にゲート絶縁層としての酸化シリコン層を形成し、適宜パターニングする。この過程で、シリコン薄膜の半導体層として使用する部分以外の領域にイオンをドーピングして、導体化することが好ましい。パターニングの手法としては、感光性レジストを使用する光パターニングの手法が適用できる。一例では、感光性レジストをスピンコートした後に、ステッパ等の露光機で光を部分照射し、現像工程を経て、パターンを残す部分にのみ感光性レジストの膜を残す。その後、ドライエッチング等により感光性レジストの膜が残存しない領域のシリコン層を除去し、最後に感光性レジストの膜を剥離する。
【0061】
次に、アモルファスシリコン層とタングステンシリサイド層を成膜し、これらをパターニングして、ゲート電極等を形成する。このとき、ゲート電極が接続するゲート線や、蓄積容量電極、蓄積容量線も同様に形成してもよい。次に、酸化シリコン層と窒化シリコン層を形成し、適宜パターニングした後に、アルミニウム層とチタン層を成膜し、ソース電極及びドレイン電極を形成する。このとき、データ線を同時に形成してもよい。
【0062】
次に窒化シリコン層を成膜し、適宜パターニングした後にITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜を成膜し、パターニングすることにより、画素電極を形成する。これにより、薄膜トランジスタを有する画素構造を形成することができる。なお、この薄膜トランジスタを用いて、ゲート線やデータ線、蓄積容量線を駆動する回路を同時に形成することもできる。
【0063】
図6に示すように表示パネル2には、TFT基板2aの短辺側に映像信号を制御するための駆動IC7が実装されている。駆動IC7の出力ピンは、夫々、表示部6のデータ線Dに接続されている。一般に、駆動IC7の出力ピンのピッチは、データ線Dのピッチより狭い。このため、駆動IC7の出力ピンから各データ線Dへ伸びる配線は広がりをもつことになる。このため、駆動IC7は、表示部(画像を表示する部分)6からある程度の距離をとる必要がある。表示部6から駆動IC7までの距離は、出力ピンのピッチが同じであれば、データ線Dの数が少ないほど短くできる。
図6に示すように表示部6がランドスケープ(横長)の場合には、データ線Dを水平方向、すなわちX軸方向に配置する方が、垂直方向(Y軸方向)に配置するより、データ線Dの本数を少なくできる。したがって、データ線Dを水平方向に配置することにより、液晶表示パネル2の額縁を小さくすることができる。
【0064】
また、本実施形態では、ゲート線Gを順次走査するためのゲートドライバ回路はTFT基板2a上に画素薄膜トランジスタ4TFTと同時に形成される。これにより、表示パネル2の長辺側の額縁幅を小さくすることができる。短辺側に駆動IC7を配置し、かつ、長辺側にゲートドライバ回路を集積することにより、表示パネル2の各辺の額縁を小さくすることができる。さらに、狭額縁化により表示パネル2のサイズを小さくすることができる。このため、1枚のマザー基板から得られる表示パネル2の数を増やすことができ、表示パネル2を低コスト化することができる。さらに、画素とゲートドライバ回路をTFT基板2a上へ一体形成することによりドライバ回路の部品数を削減することができるため、低コスト化、及び、低消費電力化することができる。
【0065】
図3と
図4は、本実施形態における画素を4個分示したものである。本実施形態においては、ゲート線G及び蓄積容量線CS、蓄積容量電極CS2は画素薄膜トランジスタ4TFTのゲート電極と同層で形成されている。また、シリコン層4SIと蓄積容量電極CS2との間で、蓄積容量4CSが形成されている。前述のように、シリコン層4SIはコンタクトホール4CONT1を介してデータ線Dに接続されるが、画素4において画素電極4PIX側に設けられたもう一つのコンタクトホール4CONT2は、蓄積容量4CSにおけるシリコン層4SIと画素電極4PIXを電気的に接続するためのものである。
【0066】
そして、以下の説明においては「隣接画素対」という表現を使用するが、これは特に、データ線Dを挟み配置された二つの画素が、この画素間に配置されたデータ線Dに接続された状態において使用するものとする。すなわち、隣接画素対を構成する画素は、この画素間に配置されたデータ線Dにより、映像信号のデータ電位が供給される。
図3、
図4に示すように、左側のY軸方向へ並ぶ二つの画素P34、P33が、隣接画素対4PAIRを構成し、P31、P32が、隣接画素対4PAIR2を構成する。
【0067】
更に、隣接画素対4PAIR、4PAIR2を構成する各画素は、夫々異なるゲート線Gによりスイッチング動作が制御される。
図3の左側の隣接画素対4PAIRにおいては、−Y方向側の画素4は−X方向側に配置されたゲート線Gによって制御され、+Y方向側の画素4は+X方向側に配置されたゲート線Gによって制御される。
【0068】
そして、データ線Dの延伸方向、すなわちX軸方向に隣り合う隣接画素対4PAIRは、共通のデータ線Dに接続されず、異なるデータ線Dに接続されている。これは、隣接画素対4PAIRが、X軸方向においては、Y軸方向に画素一つ分だけずれた状態で隣り合っているからである。このように配置することにより、必要な配線数を最小限に抑えることができるため、開口率の向上が可能となる。
【0069】
図1を参照して、画素の配置関係を確認する。まず、画素P31と画素P32から構成される隣接画素対に着目する。説明の都合上、この隣接画素対の表記を(P31、P32)とすることにする。すると、隣接画素対(P31、P32)に対し、+X方向には、隣接画素対(P23、P22)、および(P42、P43)が隣り合っている。隣接画素対(P22、P23)はデータ線D2を共通のデータ線としている。ここで、「共通のデータ線」という表現は、隣接画素対を構成する各画素が、この画素間に配置された共通のデータ線に接続されており、この共通のデータ線を通じて供給されるデータ電位が所定のタイミングでそれぞれ書き込まれることを意味する。隣接画素対(P31、P32)はデータ線D3を共通のデータ線とするので、隣接画素対(P31、P32)と隣接画素対(P22、P23)は、夫々異なるデータ線を共通のデータ線としていると表現することができる。なお、夫々の共通データ線は隣接の関係にある。
【0070】
また、隣接画素対(P31、P32)に対し、+X方向には、もう1つの隣接画素対(P42、P43)も隣り合って配置されている。両者の隣接画素対においても同様に、夫々異なるデータ線を共通のデータ線Dとしている。
【0071】
更に、隣接画素対(P23、P22)又は隣接画素対(P42、P43)に対し、+X方向には、隣接画素対(P34、P33)が配置されている。この隣接画素対(P34、P33)がデータ線D3を共通のデータ線としている点は、隣接画素対(P31、P32)と同様である。すなわち、画素1列毎に、同じデータ線を共通データ線とする隣接画素対が配置されていることになる。これは換言すれば、右眼用画素4Rを構成する隣接画素対に接続されたデータ線は、左眼用画素4Lを構成する隣接画素対には接続されないことになる。
【0072】
画素P22及び画素23から構成される隣接画素対(P22、P23)においては、共通のデータ線D2より−Y方向に位置する画素P22は−X方向に位置するゲート線G2によって制御され、データ線D2より+Y方向に位置する画素P23は+X方向に位置するゲート線G3によって制御される。すなわち、この隣接画素対は、各画素が共通のデータ線を挟み上下に配置されるとき、上側の画素が右側のゲート線に接続されていることになる。
【0073】
一方で、画素P31及び画素P32から構成される隣接画素対(P31、P32)においては、共通のデータ線D3より−Y方向に位置する画素P32は+X方向に位置するゲート線G2によって制御され、データ線D3より+Y方向に位置する画素P31は−X方向に位置するゲート線G1によって制御される。すなわち、この隣接画素対は、各画素が共通のデータ線を挟み上下に配置されるとき、上側の画素が左側のゲート線に接続されていることになる。上側の画素が左側のゲート線によって制御される隣接画素対は、+X方向に隣接する画素列においては、−Y方向に隣接するデータ線に対して配置されている。この結果、同種の隣接画素対は斜め方向に配置されていることになる。また、見方を変えれば、本実施形態における表示パネル2は、上側の画素が左側のゲート線に接続された隣接画素対と、上側の画素が右側のゲート線に接続された隣接画素対との2つの隣接画素対から構成される。
【0074】
図3に示す画素のレイアウトは、前述のように、
図1では隣接画素対(P34、P33)とその+X方向へ隣接したサブ画素P25、P45の関係に相当する。また、
図4に示す画素のレイアウトは、例えば、
図1では隣接画素対(P31、P32)と、サブ画素P22、P42の関係に相当する。本実施形態の表示パネル2におけるTFT基板2aの画素アレイは、
図3及び
図4に示す画素をそれぞれX方向とY方向へ交互に敷き詰めることにより構成されている。
【0075】
また、各画素における表示領域、すなわち表示に使用される領域は、略台形状となっている。これに伴い、画素電極4PIXの形状も、略台形状となっている。また、隣接画素対は、略台形状の表示領域を有する二つの画素が、上底側を向かい合わせて配置されたものと表現することもできる。そして画素薄膜トランジスタ4TFTは、略台形画素の表示領域の上底側に配置され、隣接画素対4PAIR、4PAIR2を構成する各画素の上底間に配置されている。
【0076】
また、蓄積容量線CSは、ゲート線Gの延伸方向、すなわちY軸方向に隣接するサブ画素毎に設けられた蓄積容量電極CS2を電気的に接続するように配置されている。なお、蓄積容量電極CS2は画素薄膜トランジスタ4TFTと同様、各サブ画素において、略台形状を有する表示領域の上底側に配置されている。また、蓄積容量電極CS2は、サブ画素の中心線である仮想線B−B’線に沿って配置され、B−B’線に対して線対称な形状で構成される。これにより、隣接画素対4PAIR、4PAIR2を構成する各サブ画素の上底間に蓄積容量4CSを形成する領域を効率的に配置し、開口率の更なる向上が可能となる。
【0077】
隣接画素対4PAIR、4PAIR2に設けられた画素薄膜トランジスタ4TFTは、コの字型のダブルゲート構造であり、コの字の開いた方が互いに向かい合うように配置されている。そして、向かい合うように配置されたコの字型の画素薄膜トランジスタ4TFTの間には蓄積容量電極CS2が配置されており、この蓄積容量電極CS2と各サブ画素に設けられたシリコン層4SIとの間で蓄積容量4CSが形成される。
【0078】
隣接画素対4PAIR、4PAIR2における画素薄膜トランジスタ4TFTのチャネル部は、画像分離方向、すなわちX軸方向と平行に配置される。データ線Dは、画素薄膜トランジスタ4TFTの上層で屈曲し、チャネル領域の上層で画像分離方向、すなわちX軸方向と異なる方向へ傾斜して配置している。また、データ線Dは、蓄積容量電極CS2上で画像分離方向と異なる方向へ傾斜して配置している。このように、データ線Dは、台形上底部に配置された画素薄膜トランジスタ4TFT及び蓄積容量電極CS2の上層で複数回の屈曲を経てX軸方向に延伸している。データ線Dは、台形上底部で屈曲することにより効率よく配置されるため、開口率を向上することができる。また、画素薄膜トランジスタ4TFTのチャネル部をX軸方向に平行に配置しているため、ポリシリコン層を結晶化するためのレーザアニールのスキャン方向をY軸方向とすることにより、隣接画素対のトランジスタ性を均一化することができる。
【0079】
蓄積容量線CSは蓄積容量電極CS2と電気的に接続している。このため、隣接画素対4PAIR、4PAIR2を構成する各画素において蓄積容量電極CS2の電位は共通である。前記略台形画素は隣接画素対4PAIR、4PAIR2において、台形部の上底が互いに向かい合うように接しているため、共通の蓄積容量電極CS2を設けることで蓄積容量4CSを形成する面積を効率よく確保することができる。そのため、従来よりも開口率を大きくすることができ、高透過率化を図ることができる。
【0080】
図7、
図8に示すように、本実施形態に係る端末装置は携帯電話9である。この携帯電話9には、前述の画像表示装置1が搭載されている。
図7に示すように、画像表示装置1のX軸方向が携帯電話9の画面の縦方向となり、画像表示装置1のY軸方向が携帯電話9の画面の横方向となっている。そして、
図8に示すように、携帯電話9の画面部分は回転軸をもったヒンジを備えており、自由に可動することができる。これにより、画像分離方向(X軸方向)を、視認者の両眼を結ぶ線分と略平行にして使用することができる。また、表示パネル2は狭額縁であるため携帯機器に求められる機能性やデザイン性を制限することなく好適に携帯機器へ適用することができる。
【0081】
次に、本実施形態における画素構造とその効果について説明する。
複数視点用表示装置において、高開口率化と高画質化を達成するためには、画素の縦開口率を横方向の位置によらず概ね一定にしつつ、縦開口率を最大にする必要がある。ここで、Y軸方向の開口率、すなわち、縦開口率を以下のように定義する。縦開口率とは、画像分離手段の画像分離方向(本実施形態ではX軸方向)と直交する方向(すなわちY軸方向)に延伸する線分を用いて、画素を切断した際のY軸方向の開口の総幅を、Y軸方向の画素ピッチで除した値である。複数視点用表示装置において、高開口率化と高画質化を達成するためには、この縦開口率を、画像分離方向に依存せず略一定にした上で、縦開口率を最大にする必要がある。
【0082】
まず、ゲート線G及びデータ線Dの配置について考察すると、各画素の周囲にゲート線G及びデータ線Dが配置されている方が好ましい。これにより、配線間のデッドスペースを削減して開口率の向上が可能となる。換言すれば、ゲート線G同士又はデータ線D同士が、間に画素を配置することなく隣接するのは避けた方がよい。これは、同種の配線同士が隣接してしまうと、ショートを防止するため配線間に間隔を設ける必要が発生し、この間隔がデッドスペースとなって開口率が低下するからである。
【0083】
なお、特に立体画像表示装置の場合には、少なくとも画像分離方向が表示装置の横方向となるように配置される。
【0084】
蓄積容量線CSは、縦開口率を画像分離方向の位置によらず一定にするため、蓄積容量線CSの配列方向から屈曲させて、画像分離方向と異なる方向へ傾斜配置される。蓄積容量線CSの傾斜角度は開口の割合が略一定となる角度で構成される。
【0085】
蓄積容量線CSは、1つのサブ画素内に1本配置されており、サブ画素の中央を通る仮想線B−B’線を横切るように配置される。仮想線B−B’線は、Y軸方向と平行であり、かつ、サブ画素のX軸方向へ、サブ画素を2等分に分割する線である。サブ画素の外形は、Y軸に線対称な軸を有する略台形であるため、仮想線B−B’線はサブ画素外形の線対称軸であり、またサブ画素の重心を通る線である。
【0086】
ここで、各配線の傾斜角度は、+X方向を0度の軸として反時計回りの方向を正として定義する。
図3、
図4、
図5に示すように、ゲート線Gは、各サブ画素において画像分離方向と異なる方向へ傾斜しており、隣接画素対4PAIR、4PAIR2の上底側が+Y方向を向いた画素においては−X側のゲート線Gの傾斜角度がφ1であり、+X軸側のゲート線Gの傾斜角度がφ2=−φ1となっている。また、上底側が−Y方向へ向いた画素においては、−X方向側のゲート線Gの傾斜角度がφ’1=−φ1であり、+X方向側のゲート線Gの傾斜角度がφ´2=φ1となっている。
【0087】
また、蓄積容量線CSは、各サブ画素において画像分離方向と異なる方向へ傾斜しており、隣接画素対4PAIR、4PAIR2の上底側が+Y方向を向いた画素においては、傾斜角度がθ1となっており、上底側が−Y方向を向いた画素においては、傾斜角度がθ’1=−θ1となっている。すなわち、θ=|θ1|=|θ’1|の関係が成り立つ。
【0088】
更に、ゲート線Gは、縦開口率を画像分離方向の位置によらず一定にするため、ゲート線Gの配列方向から屈曲させる必要がある。そして、縦開口率を限定する要因として、この屈曲した斜辺部の構造と、台形状開口における下底間の構造、及び上底間の構造が挙げられる。より具体的には、
図3のA−A’線に示すように、斜辺部を切断する縦線においては、ゲート線Gの斜辺部のY軸方向の幅と台形下底部のY軸方向の幅が縦開口率に影響する。また、B−B’線に示すようにTFT部を切断する縦線においては、上底と下底のY軸方向の幅、蓄積容量線CSの斜辺部のY軸方向の幅が縦開口率に影響する。
【0089】
図5に示すように、A−A’線、B−B’線のどちらにも共通するのは、略台形画素の下底部におけるY軸方向の遮光幅である。そこでまず、この下底部のY軸方向の遮光幅を最小にするための構造を検討する。下底部に位置する遮光部には少なくともデータ線Dを1本は配置する必要がある。そして下底部のY軸方向の遮光幅を最小にするためには、構造物はこのデータ線D1本に留めるのが好ましい。例えば下底部に薄膜トランジスタを配置すると、その分だけ下底部のY軸方向の幅が増大してしまうので好ましくない。特にA−A’線においては、下底部が重複して配置されているため、下底部のY軸方向の幅が増大した際の影響が非常に大きい。このため、略台形画素の下底部への構造物の配置は極力避けるべきである。これにより、下底部のY軸方向の幅を削減しつつ、かつ省プロセス化が実現できる。
【0090】
次に、A−A’線を跨ぐように配置された斜辺部のY軸方向の幅について検討する。この斜辺部においては、配線を屈曲して配置しているため、屈曲した分だけY軸方向の幅が大きくなる。例えば、X軸に対する傾斜角をφ=|φ1|=|φ’1|=|φ2|=|φ’2|とし、斜辺部の幅をW1とすると、斜辺部のY軸方向の幅は、W1/cosφとなる。例えば、φが60度の場合だと、斜辺部のY軸方向の幅は斜辺部の幅の2倍となる。このように、斜辺部のY軸方向の幅は斜辺部の幅W1の1/cosφ倍の影響を受けるので、斜辺部の幅を小さくするのは非常に重要である。
【0091】
斜辺部の幅を小さくするには、斜辺部に構造物を極力配置しないのが好ましい。例えば斜辺部に薄膜トランジスタを配置すると、その分だけ幅が増大し、1/cosφ倍でY軸方向の幅が増大してしまうので好ましくない。しかし前述のように、サブ画素では少なくとも最低限1本のゲート線Gを配置する必要がある。
【0092】
最後に、B−B’線における上底部のY軸方向の幅について検討する。前述のように、下底部及び斜辺部には薄膜トランジスタを配置できなかったため、薄膜トランジスタを上底部に配置する必要がある。そして、上底部のY軸方向の幅を低減するような配置が重要となる。
図3、
図4を参照すると明らかであるが、上底部において最もY軸方向の幅を有する構造物は画素薄膜トランジスタ4TFTである。そこで、この画素薄膜トランジスタ4TFTのY軸方向の幅、すなわちY軸方向の長さを低減するのが重要になる。
【0093】
図5に示すようにA−A’線における縦開口率A、及びB−B’線における縦開口率Bは以下の数式(4)、(5)で示される。
A=(Y1+Y2−W1/cosφ)/(Y1+Y2+2×Y3) ・・・(4)
B=(Y1−W2/cosθ)/(Y1+Y2+2×Y3) ・・・(5)
【0094】
蓄積容量線CSの傾斜角度は表示単位内で同じ角度で構成され、隣接画素対内では異なる角度で構成される。また、蓄積容量線CSは、Y軸方向へ並ぶ1サブ画素毎に異なる方向へ屈曲しており、Y軸方向に対して傾斜角度が分散配置した構成である。また、X軸方向へは平行に並んでいる。
【0095】
ゲート線Gと蓄積容量線CSの傾斜角度が異なることにより、レンズの配列周期と配線の配列周期とに起因して発生するモアレ縞の周期を各方向へ分散させ、モアレ縞を視認し難くすることができ、表示品質を向上することができる。
【0096】
また、蓄積容量線CSの傾斜部はY軸方向へ隣接する画素、すなわち、隣接画素対4PAIR、4PAIR2において反平行であり、X軸方向へ隣接する画素、すなわち、表示単位の画素においては平行に配列している。蓄積容量線CSは、Y軸方向へ分散した配置構成となっている。
【0097】
図3、
図4に示すようにゲート線GはX軸方向に隣接する画素間の境界に配線されており、ゲート線Gの斜辺部の近傍では、隣接する画素間の画素電極端が近接している。そのため、ゲート線Gの斜辺部の近傍では画素電極4PIXとゲート線Gによって発生する電界の影響により液晶分子の配向が乱れてディスクリネーションが発生しやすく、バックライトからの光り漏れによってコントラスト低下するおそれがある。特に、画像分離手段を備えた立体表示素子においては、画素内の局所的な光り漏れが拡大され、輝度ムラとして視認されることにより表示品質が低下するおそれがある。したがって、ゲート線Gの斜辺部の近傍には光り漏れを低減するための遮光層を設けることが望ましい。本実施形態では、ゲート線Gの上層を対向基板2b上に設けたブラックマトリクス60で覆って遮光している。ブラックマトリクス60は、TFT基板2aと対向基板2bの重ね合わせずれマージンを見込む分だけ幅広に設けることが望ましい。
【0098】
なお、ブラックマトリクス60の代わりにTFT基板2a側に設けられる配線材料を適用して遮光してもよい。TFT基板2a側に遮光部を設ける場合は基板上に高精度にパターン形成できるため、遮光層の線幅を小さくすることができ、開口率を向上することができる。特に、遮光層の線幅を小さくすることにより、左右分離画像の境界に発生する3Dモアレを低減することができ、立体画像の表示品質を向上することができる。
【0099】
また、ゲート線Gの斜辺部はブラックマトリクス60で覆われているため、縦開口率はTFT基板2aと対向基板2bとの重ね合わせ精度の影響を受けて変動する可能性がある。重ね合わせ精度に起因して発生する縦開口率の変動は10%以内におさまるように設計することが望ましい。
【0100】
本実形態では、開口部に配置された蓄積容量線CSは画素電極4PIXで覆われている。これにより蓄積容量線CSから発生する電界が完全に遮蔽されるため、液晶層5LCへの電界の侵入を防ぐことができる。そのため、蓄積容量線CSの上層では液晶配向の乱れによる光り漏れは発生せず、ブラックマトリクス60を設ける必要がなく、開口率を向上することができる。
【0101】
表示パネル2内に入射した外光が蓄積容量線CSによって反射され画質が低下するのを防ぐため、開口部を横切る蓄積容量線CSの面積をできるだけ小さくすることが望ましい。また、蓄積容量線CSの表面は低反射であることが望ましい。蓄積容量線CS上に低反射膜を形成してもよい。したがって、
図5に示すように蓄積容量線CSの線の幅W2は傾斜したゲート線の遮光部幅W1より小さくすることが望ましく、以下の関係が成り立つ。
W1>W2 ・・・(6)
【0102】
また、所望の画素において開口率を大きくするためには略台形画素の上底の遮光部幅Y2を台形開口のY軸方向の幅Y1より小さくすることが望ましく、以下の関係が成り立つ。
Y1>Y2 ・・・(7)
【0103】
図3に示すように、本実施形態においては、ゲート線Gの傾斜角度と蓄積容量線CSの傾斜角度が異なる。隣接画素対4PAIR、4PAIR2の上底側が+Y方向を向いた画素に注目すると、画素開口部を通る蓄積容量線の傾斜角度θ1はゲート線Gの傾斜角度φ1より小さく設定されている。ゲート線Gは表示単位の中央部に配置されており、左右画像の分離性能に大きく係わる。特に、ゲート線Gの傾斜角度が大きくなると左右画素の画像が混じりあう領域X3が大きくなり、3Dクロストークが大きくなるため、ゲート線Gの傾斜角度を大きくできない。特に、
図5に示すように、左右の画像が交じり合う領域の幅X3であり、この幅X3の領域に含まれる開口領域は画素開口面積の10%以下となっていることが望ましい。一方、蓄積容量線CSの傾斜角度θ1は3Dクロストークへの影響が小さく、ゲート線Gの傾斜角度φ1より小さくすることができる。縦開口率のX軸方向への変動をできるたけ緩やかに変化させるためには蓄積容量線CSの傾斜角度を小さくすることが望ましい。したがって、以下の関係が成り立つ。
θ1<φ1 ・・・(8)
【0104】
蓄積容量線CSの傾斜角度を小さくすることにより、蓄積容量線CSとゲート線Gは遮光部の端部で交差し、X軸方向へ連続的に屈曲した遮光配線部とみなすことができる。これにより画像分離手段の拡大効果よって発生する輝度ムラを低減することができる。
【0105】
また、3Dクロストークを低減するためには、略台形画素の開口部における上底の長さX1が略台形画素の斜辺の中心点から上底との交点までのX軸方向への長さX2より大きくすることが望ましく、その場合、下記の関係が成り立つ。
X1>X2 ・・・(9)
【0106】
更に、3Dクロストークを小さくし、かつ開口率を大きくするためには、略台形画素の開口部における上底の長さX1を、略台形画素の斜辺領域におけるX軸方向への幅2×X2より大きくすることが望ましい。また、X軸方向に隣接する画素において略台形画素の開口部が互いに重なる領域のX軸方向への幅X3より大きくすることが望ましい。したがって、以下の関係式が成り立つようにすることが望ましい。
X1>(2×X2)>X3 ・・・(10)
【0107】
一般的に蓄積容量CSは薄膜トランジスタの近傍に配置するのが、蓄積容量4CSを形成する上で最も効率が高い。これは、蓄積容量4CSが、画素薄膜トランジスタ4TFTのドレイン電極に接続された電極と、蓄積容量線CSに接続された電極との間で形成されるからである。特に、本実施形態では、隣接画素対4PAIRの各サブ画素を制御する画素薄膜トランジスタ4TFTの間に蓄積容量電極CS2を設けており、また、隣接画素対4PAIR、4PAIR2において共通の蓄積容量電極CS2を適用することによって蓄積容量4CSを形成するための領域を効率的に配置し、開口率向上を図っている。
【0108】
また、本実施形態では、隣接画素対の各画素を制御するための画素薄膜トランジスタ4TFTはダブルゲート構造であり、画素薄膜トランジスタ4TFTのチャネル部はX軸方向と平行に配置されている。各画素薄膜トランジスタ4TFTのソース電極は、+Y側の画素と−Y側の画素をそれぞれ制御するようにコンタクトホール4CONT2を介して各画素電極と電気的に接続されている。コンタクトホール4CONT2はそれぞれ制御する画素電極側に設けられ、効率的に配置されている。このような構造の場合、データ線Dと接続される各ドレイン電極がX軸方向と平行にならないため、データ線Dを屈曲させて接続しなければならない。
図3、
図4に示すように、本実施形態では蓄積容量電極CS2上層のデータ線Dを画像分離方向と異なる方向へ傾斜して配置し、隣接画素対に設けられた画素薄膜トランジスタ4TFTにおける各ドレイン電極間を最短経路で電気的に接続している。ドレイン電極とデータ線Dの接続部は、どの隣接画素対においても同様にデータ線を傾斜した配線レイアウト構成を適用することができるため、各画素への書込み条件の均一性を保つことができる。本実施形態では、ダブルゲートのレイアウトについて説明したが、これに限定されることなく、画素薄膜トランジスタ4TFTは、シングルゲート構造、トリプルゲート構造であってもよい。ダブルゲート構造やトリプルゲート構造などのマルチゲート構造を適用することにより、薄膜トランジスタがオフ時の光リーク電流を低減し、バックライトや画像表示装置の外部から照射された光によるTFT特性の劣化を抑制することができる。これにより、フリッカやノイズ、クロストークを低減することができ、高品質な画像表示装置を提供することができる。特に、ポリシリコンを用いた薄膜トランジスタは、アモルファスシリコンを用いた薄膜トランジスタに比べてソース−ドレイン間の抵抗が小さいため、上述のマルチゲート構造にすることが非常に効果的である。また、高精細画素において、バックライトの輝度を高めて明るさを得る場合に効果的である。
【0109】
略台形画素の上底部における画素薄膜トランジスタ4TFTはY軸方向で隣接する画素の+Y側の画素と、−Y側の画素をそれぞれ制御するため、蓄積容量電極CS2とデータ線Dとの交差部分においては、前記データ線Dが画像分離方向と異なる方向へ傾斜して配置されている。蓄積容量電極CS2の上層において傾斜したデータ線Dは、
図3では、画像分離方向とのなす角度θD2で配置され、
図4では、画像分離方向とのなす角度θD4で配置され、隣接画素対に設けられた各画素を駆動するための画素薄膜トランジスタ4TFTを接続している。蓄積容量電極CS2の上層に配置されたデータ線Dは画像分離方向と異なる方向へ傾斜配置することにより、無駄なスペースを削減した上で、蓄積容量4CSなどのスペースとして活用することができる。
【0110】
また、画素薄膜トランジスタ4TFTのシリコン薄膜部はデータ線Dと積層して配置される。シリコン薄膜部の上層でデータ線Dは画像分離方向と異なる方向へ傾斜して配置される。例えば、
図3では、シリコン薄膜部の上層におけるデータ線DとX軸方向とのなす角度は、θD1となり、
図4では、シリコン薄膜部の上層におけるデータ線DとX軸方向とのなす角度は、θD3となる。
【0111】
台形の上底部において、画素薄膜トランジスタ4TFT、データ線D、及びコンタクトホール4CONT1、4CONT2に注目すると、その関係は、蓄積容量電極CS2上に設けられたデータ線Dの中心部の点を中心に、点対称の配置となっている。このようなトランジスタ、データ線Dの配置によりレイアウト面積を最小限にして画素の高開口率化を図っている。
【0112】
TFT基板2a側に遮光層、及びカラーフィルタを配置してもよい。これにより、重ね合わせ精度を向上できるため、遮光層の幅を小さくでき、開口効率を大きくすることができる。また、ゲート線を覆う遮光層の幅を小さくすることにより3Dモアレを低減することができ、表示品質を向上することができる。
【0113】
次に、上述の如く構成された本実施形態に係る画像表示装置1の駆動方法、すなわち表示動作について説明する。
図9は、本実施形態に係る画像表示装置1において、各画素の極性を示す平面図である。本実施形態においては、画像表示装置1はドット反転駆動を用いて駆動される。ドット反転駆動は、
図10に示すようにデータ線1本毎に各々伝送される表示データの極性が基準電位に対して反転され、かつゲート線1本毎に各々データ線を伝送される表示データの極性が反転され、かつフレーム毎に極性が反転される駆動方法である。ドット反転駆動は1H1V反転駆動とも称される。これは、水平方向(H方向)に配列するデータ線1本毎、また垂直方向(V方向)に配列するゲート線1本毎に極性が反転しているからである。
【0114】
図9を参照して具体的に説明するが、これはあるフレームにおいて、ドット反転駆動の結果実現される各画素の極性を示したものである。まず、ゲート線G1が選択されると、データ線D1には正極性の表示データが伝送され、画素P11には正極性の電圧が書き込まれる。またデータ線D2には負極性の表示データが伝送される。同様に、データ線D3、D5、D7、D9、D11、D12には正極性の表示データが伝送され、データ線D4、D6、D8、D10、D12には負極性の表示データが伝送される。次にゲート線G2が選択された場合には、データ線の極性が全て反転される。すなわち、データ線D1、D3、D5、D7には負極性の表示データが伝送され、データ線D2、D4、D6には正極性の表示データが伝送される。以降、ゲート線G3、G5、G7の選択時は、ゲート線G1の選択時と同様であり、ゲート線G4の選択時は、ゲート線G2の選択時と同様である。そして、このフレームが終了すると、次のフレームにおいては、更に極性反転が実行される。すなわち、ゲート線G1、G3、G5、D9、D11、D13選択時においては、データ線D1、D3、D5、D7に負極性の表示データが伝送され、データ線D2、D4、D6、D8、D10、D12に正極性の表示データが伝送される。また、ゲート線G2、G4、G6選択時においては、データ線D1、D3、D5、D7、D9、D11、D12に正極性の表示データが伝送され、データ線D2、D4、D6、D8、D10、D12に負極性の表示データが伝送される。
【0115】
図9に示すように、右眼用画素4Rから構成される画素群は、2ラインドット反転(2H1Vドット反転)効果が得られる極性分布となっている。そして、左眼用画素4Lから構成される画素群も同様である。これにより、片眼で視認される画像の極性分布は、水平方向(H方向)に配列するデータ線2本毎、また垂直方向(V方向)に配列するゲート線1本毎に極性が反転しているように見える。
なお、本実施形態における極性分布の基本セットは、X軸方向4画素、Y軸方向4画素の合計16画素である。
【0116】
本実施形態においては、各画素への表示データの書き込み時に、蓄積容量線CSの電位変動を抑制することができる。これは、隣接画素対4PAIR、4PAIR2で共通の蓄積容量電極CS2には、連続した2つのゲート選択期間において、正極性の表示データが書き込みされる画素だけでなく、負極性の表示データが書き込まれる画素が接続されているからである。これにより、蓄積容量線CSの電位が片側の極性に向かって変動するのを抑制することができ、蓄積容量線CSが延伸する方向へ発生するクロストークなどを低減して、高品質な表示を実現することができる。本実施形態における構成は、一般的なドット反転駆動を使用した上で、2ラインドット反転効果、各蓄積容量線CSの電位変動抑制効果を実現でき、かつ台形開口の底辺部が隣接する画素の極性を同じにできる。これにより、低コストに高画質表示を実現することができる。
【0117】
なお、ドット反転駆動における基準電位としては、画素電極4PIXに対向する共通電極の電位を挙げることができる。しかし厳密には、共通電極電位は薄膜トランジスタのフィードスルーの影響を低減するために、DCオフセットを印加することが多く、基準電位とは異なるものである。
【0118】
ここで、レンチキュラレンズ3が画像振分手段として作用するための条件について詳述する。本実施形態においては、画像振分手段は、左眼用画素4Lと右眼用画素4Rが配列する第1の方向、すなわちX軸方向に沿って、各画素から出射した光を相互に異なる方向に振り分けなければならない。そこでまず、画像振分効果を最大限に発揮する場合について、
図11を使用して説明する。
【0119】
レンチキュラレンズ3の主点、すなわち頂点と画素との間の距離をHとし、レンチキュラレンズ3の屈折率をnとし、レンズピッチをLとする。すなわち、本実施形態では、左眼用画素4L又は右眼用画素4Rの各1個のX軸方向へのピッチPxがPとなる。各1個の左眼用画素4L及び右眼用画素4Rからなる表示単位の画像分離方向への配列ピッチPuは2Pとなる。
【0120】
また、レンチキュラレンズ3と観察者との間の距離を最適観察距離ODとし、この距離ODにおける画素の拡大投影像の周期、すなわち、レンズから距離ODだけ離れレンズと平行な仮想平面上における左眼用画素4L及び右眼用画素4Rの投影像の幅の周期を夫々eとする。更に、レンチキュラレンズ3の中央に位置するシリンドリカルレンズ3aの中心から、X軸方向におけるレンチキュラレンズ3の端に位置するシリンドリカルレンズ3aの中心までの距離をWLとし、表示パネル2の中心に位置する左眼用画素4Lと右眼用画素4Rからなる表示画素の中心と、X軸方向における表示パネル2の端に位置する表示画素の中心との間の距離をWPとする。更にまた、レンチキュラレンズ3の中央に位置するシリンドリカルレンズ3aにおける光の入射角及び出射角を夫々α及びβとし、X軸方向におけるレンチキュラレンズ3の端に位置するシリンドリカルレンズ3aにおける光の入射角及び出射角を夫々γ及びδとする。更にまた、距離WLと距離WPとの差をCとし、距離WPの領域に含まれるサブ画素数を2m個とする。
【0121】
シリンドリカルレンズ3aの配列ピッチLとサブ画素の配列ピッチPuとは相互に関係しているため、一方に合わせて他方を決めることになるが、通常、表示パネルに合わせてレンチキュラレンズ3を設計することが多いため、画素の配列ピッチPを定数として扱う。また、レンチキュラレンズ3の材料を選択することにより、屈折率nが決定される。これに対して、レンズと観察者との間の観察距離OD、及び観察距離ODにおける画素拡大投影像の周期eは所望の値を設定する。これらの値を使用して、レンズの頂点と画素との間の距離H及びレンズピッチLを決定する。スネルの法則と幾何学的関係より、下記数式が成立する。
【0122】
n×sinα=sinβ ・・・(11)
OD×tanβ=e ・・・(12)
H×tanα=P ・・・(13)
n×sinγ=sinδ ・・・(14)
H×tanγ=C ・・・(15)
OD×tanδ=WL ・・・(16)
WP−WL=C ・・・(17)
WP=Pu×m=2×m×P ・・・(18)
WL=m×L ・・・(19)
【0123】
前述のようにまず画像振分効果を最大限に発揮する場合について考える。これはレンチキュラレンズ3の頂点と画素との間の距離Hを、レンチキュラレンズ3の焦点距離fと等しく設定した場合である。これにより、下記数式(20)が成立する。そして、レンズの曲率半径をrとすると、曲率半径rは下記数式(21)により求まる。
【0124】
f=H ・・・(20)
r=H×(n−1)/n ・・・(21)
上記のパラメータについてまとめると、画素の配列ピッチPは表示パネル2により決定される値であり、観察距離OD及び画素拡大投影像の周期eは画像表示装置1の設定により決定される値である。屈折率nはレンズ等の材質により決定される。そして、これらから導出されるレンズの配列ピッチL、レンズと画素との距離Hは、各画素からの光が観察面に投影される位置を決定するためのパラメータとなる。画像振分効果を変更するパラメータは、レンズの曲率半径rである。すなわち、レンズと画素との距離Hが固定の場合には、レンズの曲率半径を理想状態から変更すると、左右の画素の像がぼやけて、明確に分離しなくなる。すなわち、分離が有効となる曲率半径の範囲を求めれば良い。
【0125】
まず、レンズの分離作用が存在するための、曲率半径範囲の最小値を算出する。
図12に示すように、分離作用が存在するためには、レンズピッチLを底辺とし焦点距離fを高さとする三角形と、サブ画素ピッチPを底辺としH−fを高さとする三角形とにおいて、相似の関係が成立すればよい。これより、下記数式(22)が成立し、焦点距離の最小値fminを求めることができる。
【0126】
fmin=H×L/(L+P) ・・・(22)
次に焦点距離から曲率半径を算出する。数式(21)を使用して、曲率半径の最小値rminは、下記数式(23)のように求めることができる。
rmin=H×L×(n−1)/(L+P)/n ・・・(23)
【0127】
次に、最大値を算出する。
図13に示すように、分離作用が存在するためには、レンズピッチLを底辺とし焦点距離fを高さとする三角形と、サブ画素ピッチPを底辺としf−Hを高さとする三角形とにおいて、相似の関係が成立すればよい。
【0128】
これより、下記数式(24)が成立し、焦点距離の最大値fmaxを求めることができる。
fmax=H×L/(L−P) ・・・(24)
【0129】
次に焦点距離から曲率半径を算出する。数式(21)を使用して、曲率半径の最小値rmaxは、下記数式(25)のように求めることができる。
rmax=H×L×(n−1)/(L−P)/n ・・・(25)
以上まとめると、レンズが画像振分効果を発揮するためには、レンズの曲率半径が数式(23)及び数式(25)により示される下記数式(26)の範囲に存在する必要がある。
H×L×(n−1)/(L+P)/n≦r≦H×L×(n−1)/(L−P)/n
・・・(26)
【0130】
なお上記説明においては、左眼用画素と右眼用画素とを有する2視点の立体画像表示装置について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、N視点方式の画像表示装置に対して同様に適用することができる。すなわち、N視点方式では、表示単位ピッチPuとサブ画素ピッチPは、Pu=N×Pの関係が成り立つ。この場合には、前述の距離WPの定義において、距離WPの領域に含まれる画素数を、2m個からN×m個に変更すればよい。
【0131】
本実施形態の構成において、更なる高画質化を実現するためには、縦開口率を横方向の位置によらず、完全に一定とするのが好ましい。しかしながら、特に台形開口の斜辺部における頂点近傍では、遮光部の加工精度などにより、完全に縦開口率を一定にするのが難しい。そこで、本実施形態においては、
図12及び
図13に示すように、レンズの焦点を画素面からずらして配置することにより、この遮光部の加工精度に起因する影響を低減して、高画質化が可能となる。
【0132】
上述のように、レンズの焦点を画素面からずらして配置することによってぼかす領域を設定し、高画質化を図る技術を以下「デフォーカス効果」と呼称する。また、ぼかすことのできる有効領域、すなわち、デフォーカス幅を「スポット径SP」と称する。本実施例においては、画像分離方向、すなわちX軸方向へ有効にぼかすことのできるデフォーカス幅がスポット径SPとなる。スポット径SPの大きさは、レンズ焦点の位置からの距離に応じて決まるため、レンチキュラレンズシートや、対向基板2bの偏光板11の厚みを調整することにより設定可能である。
【0133】
ここで、台形斜辺のX軸方向における幅をWX1とすると、
図5よりWX1=W1/sinφ1であり、台形開口の斜辺と上底との交点から斜辺と下底との交点までのX軸方向への長さは2×X2である。
【0134】
レンズの焦点を画素面からずらして配置した時の画素面におけるスポット径SPは、WX1以上、2×X2以下の範囲にあることが好ましい。スポット径SPがWX1の場合は、台形開口の斜辺領域を複合してぼかせる限界であり、これより大きく設定することが好ましい。そして、スポット径が2×X2の場合は、ぼかすことができる領域を台形開口の斜辺と上底との交点、及び斜辺と下底の交点まで広げることができる。ただし、これよりぼかす領域が大きくなるとレンズの分離性能が低下していく。したがって、レンズの分離性能を優先して設計する場合は、下記の数式(27)又は数式(28)が成立する範囲にレンズ曲率を設定することが好ましい。
【0135】
H×L×(n−1)/(L+2×X2)/n≦r≦H×L×(n−1)/(L+WX2)/n ・・・(27)
H×L×(n−1)/(L−WX2)/n≦r≦H×L×(n−1)/(L−2×X2)/n ・・・(28)
【0136】
本実施形態においては、傾斜した蓄積容量線CSのX軸方向への幅WX2とすると
図5よりWX2=W2/sinθ1である。蓄積容量線CSと台形斜辺の交点を複合してぼかすのであれば、スポット径SPはWX1以上、2×(WX2+X2)以下の範囲にあることが好ましい。スポット径SPがWX1の場合は、台形開口の斜辺領域を複合してぼかせる限界であり、これより大きく設定することが好ましい。スポット径SPが2×(WX2+X2)の場合は、ぼかす領域を蓄積容量線CSと遮光部が交差する位置まで広げることができる。これにより、蓄積容量線CSの加工精度に起因する影響を低減して高画質化することができる。蓄積容量線CSの加工精度が画質へ及ぼす影響が大きい場合には特に有効である。ただし、これよりぼかし量が大きくなると、3Dクロストーク量が大きくなるので好ましくない。したがって、下記の数式(29)又は数式(30)が成立する範囲にレンズ曲率を設定することが好ましい。
H×L×(n−1)/(L+2×WX2+2×X2)/n≦r≦H×L×(n−1)/(L+WX1)/n ・・・(29)
H×L×(n−1)/(L−WX1)/n≦r≦H×L×(n−1)/(L−2×WX2−2×X2)/n ・・・(30)
【0137】
次に、本実施形態における画素構造とレンズの作用について詳細を説明する。
まず、本明細書における3Dモアレの定義についてグラフをもとに説明する。
図14は本実施形態における画像表示装置1の輝度分布を示すグラフである。横軸の観察位置Xは画像分離方向を示す角度であり、表示面に対して垂直な方向、すなわち+Z軸方向を0としている。縦軸の明るさYは、角度方向における輝度分布において最大値を1とした場合の相対輝度を示している。
【0138】
観察者位置の−X側は右眼側に出力される画像に対応した輝度分布であり、+X側は左眼側に出力される画像に対応した輝度分布である。点線は右眼用画素4Rまたは左眼用画素4Lのうち片側の画素のみに画像を出力した場合の輝度分布を示しており、太線は両方の画素に画像を表示させた場合の輝度分布である。したがって、点線に示す各視点に応じた輝度分布の総和は、太線の輝度分布と等しくなる。
【0139】
本実施形態における画素は、画像分離方向への縦開口率が概ね一定となるように設計されているが、TFT製造プロセスやパネル製造プロセスの工程上の加工精度により完全に縦開口率が一定とならず、観察者位置Xに対して局所的に輝度変動が生じる場合がある。特に、TFT基板2aと対向基板2bの重ね合わせがY軸方向へ大きくずれた場合は、ゲート線G部を遮光しているブラックマトリクス60の影響を受けて輝度変動が生じやすい。
図14に示すように(X0,Y0)付近に発生する輝度変動はゲート線Gの遮光部に起因して発生し、(XR2,YR2)や(XL2,YL2)付近の輝度変動は蓄積容量線CSに起因して発生する。この輝度変動は3Dモアレと呼ばれるものであり、本明細書においては、以下のように定義する。
【0140】
YC=(YL1+YR1)/2 ・・・(31)
△YC=(YC−Y0)/YC ・・・(32)
△YC/△XC=△YC/(XR1−XL1) ・・・(33)
YL=(YL1+YL3)/2 ・・・(34)
△YL=(YL−YL2)/YL ・・・(35)
△YL/△XL=△YR/(XL1−XL3) ・・・(36)
YR=(YR1+YR3)/2 ・・・(37)
△YR=(YR−YR2)/YR ・・・(38)
△YR/△XR=△YR/(XR3−XR1) ・・・(39)
△YS=(△YL+△YR)/2 ・・・(40)
△YS/△Xs=(△YL/△XL+△YR/△XR)/2 ・・・(41)
図14に示すように、右眼の視認範囲eR、及び左眼の視認範囲eLは以下のように定義する。
eR=XR4 ・・・(42)
eL=−XL4 ・・・(43)
【0141】
また、
図5から以下の関係が成り立つ。
(XR3−XR1):(XL1−XR1)=X1:2×X2 ・・・(44)
【0142】
図15は本実施形態に係る画像表示装置1の評価結果を示す表である。
図15に示すように、本発明者は蓄積容量線CSの傾斜角度θ1を30度、45度、60度、90度とした画素を有するサンプルを試作し、各画素における3Dモアレの光学特性を評価した。
図15に示すように所定の輝度変動率の範囲内であれば、観察者に違和感を与えずに立体表示を提供できることを本発明者は実験結果から見出した。以下に詳しく説明する。
【0143】
試作した評価サンプルにおいて、ゲート線Gの傾斜角度φ1、φ’1、及び、ゲート遮光部の幅W1は一定である。蓄積容量線CSはサブ画素の開口部を横切るように配置し、蓄積容量線CSの幅W2は一定のまま、略台形開口部の中心点を通過するように傾斜角度を変化させた。そのため傾斜角度θ1に応じて開口率が変化し、θ1=90度で開口率が最大となる。
【0144】
図16は蓄積容量線CSの角度が大きい場合の画素を模式的に示す平面図である。
図16に示すように蓄積容量線CSと画像分離方向とがなす角度は|θ11|>|θ1|である。θ11がθ1より大きくなると、蓄積容量線CSと遮光部との交点は、略台形画素の傾斜部と上底との交点から離れるため、領域X’1は小さくなり、一方で傾斜した蓄積容量線CSが無い領域X4が形成される。なお、X1=X’1+2×X4である。領域X4では縦開口率は最大となる。また、蓄積容量線CSの幅W2は一定であるため、θ11が大きくなるに従って、縦開口の大きさが大きくなり蓄積容量線CS部の縦開口率が大きく低下する。これによりX4の領域とX’1の領域で縦開口率は一定ではなくなるため、縦開口率の差に応じて輝度分布が変動する。これらの縦開口率の差に起因して発生する輝度変動について主観的な評価を行った。
【0145】
図5と
図16に示す画素レイアウトよりX軸方向への縦開口率の変動を見ると、A−A’線、及びB−B’線において極小値となっている。
図14に示すように、輝度分布において極小値となる変曲点(XL2,YL2)、(XR2,YR4)はA−A’線、及びB−B’線における縦開口率の極小値に対応している。また、
図16に示すように領域X4の開口部のY軸方向の幅はY1が縦開口の大きさの最大値となっており、
図14に示すグラフの輝度が最大となる変曲点はY1の大きさに対応している。したがって、縦開口の大きさが最大となるY1を基準として、A−A’線、及びB−B’線における縦開口の大きさを考察する。
図5よりA−A’線おける縦開口のY1に対する変動率YAは以下の数式で示すことができる。
YA=(Y1+Y2−W1/cosφ)/Y1 (φ=|φ1|=|φ2|)
・・・(45)
【0146】
図5よりB−B’線における縦開口のY1に対する変動率YBは以下の数式で示すことができる。
YB=(Y1−W2/cosθ)/Y1 (θ=|θ1|=|θ2|) ・・・(46)
【0147】
図15よりX軸方向への縦開口率の変動は35%以内、望ましくは25%以内におさまるように設計され、その場合、以下の関係式が成りたつ。
0.75<(Y1+Y2−W1/cosφ)/Y1<1.25 ・・・(47)
0.75<(Y1−W2/cosθ)/Y1<1.25 ・・・(48)
【0148】
図15に示す主観評価より3Dモアレが25%程度であれば、3Dモアレの違和感がなく立体表示を視認することができるため、
図16に示す画素のように蓄積容量線CSの傾斜角度を大きくすることにより表示品質を保ったまま開口率を向上することができる。ただし、傾斜角度θが90度の場合は、輝度分布が急峻に変動することにより3Dモアレは視認されやすく、表示品質の低下を招く。したがって、蓄積容量線CSの傾斜角度θ1は、少なくとも90度より小さい角度であることが必要である。
【0149】
また、本実施形態における画素は、加工プロセスの制約や所望の開口率を確保するために、略台形画素の開口形状のY軸方向の幅は、(Y2+2×Y3)>Y1とすることが望ましい。このとき、本実施形態におけるサブ画素の縦横比がPx:Py=3:2となることから構造上の傾斜角度は、18.4度以上が必要となる。したがって、主観評価の結果を加えて考慮すると蓄積容量線CSの傾斜角度は、18.4度以上60度以下であることが望ましい。
【0150】
更に、レイアウト上の縦開口率の変動が20%以上ある場合でもデフォーカス効果により3Dモアレを半分程度に低減することができ、表示品質を向上することができる。したがって、デフォーカス効果により設計上の制約を緩和することができ、デフォーカス効果を考慮すれば画素レイアウト上の縦開口率の変動は40%以内におさまるように設計すればよい。これにより以下の関係式が成り立つ。
【0151】
0.6<(Y1−W2/cosθ)/Y1<1.4 ・・・(49)
0.6<(Y1+Y2−W1/cosφ−W3)/Y1<1.4 ・・・(50)
【0152】
また、最適な視認範囲において立体映像を観察する場合には、右眼の視認範囲eR、及び左眼の視認範囲eLの中央で発生する3Dモアレは、両眼の中心部(X0,Y0)を極小値として発生する3Dモアレほど気にならないため、△Ysは△Ycより小さく設計することが望ましい。
【0153】
また、輝度分布の変動率を緩やかにすることで3Dモアレを目立たなくすることができるため、△Yc/△Xc>△Ys/△Xsとすることが望ましい。
【0154】
[第1実施形態の変形例]
次に、第1実施形態における第1変形例について説明する。
図17は第1実施形態における第1変形例に係る表示パネル2の平面図である。
図17に示すように蓄積容量線CSは画素開口部を横切るように配置されており、ブラックマトリクス60と蓄積容量線CSとが接する部分においてブラックマトリクス60の端部が画像分離方向から傾斜して配置される。領域X12のブラックマトリクス60の傾斜角度は、|θ1|=|ψ1|=|ψ’1|=|ψ2|=|ψ’2|で構成される。これにより、X軸方向への縦開口率は領域X1で一定となり、蓄積容量線CSに起因した3Dモアレを低減することができる。
なお、上記以外の構成及び動作は、前述の第1実施形態と同様である。
【0155】
次に、第1実施形態における第2変形例について説明する。
図18は第1実施形態における第2変形例に係る表示パネル2の平面図である。
図18示すように蓄積容量線CSは画素開口部を横切るように配置されており、開口部において屈曲している。また、C−C’線に沿った蓄積容量線CSの傾斜部のY軸方向の幅と、D−D’線に沿った蓄積容量線CSのY軸方向の幅と、が等しくなっており、縦開口はX軸方向へ略一定となっている。
なお、上記以外の構成及び動作は、前述の第1実施形態と同様である。
【0156】
次に、第1実施形態における第3変形例について説明する。
図19は第1実施形態における第3変形例に係る表示パネル2の平面図である。
【0157】
蓄積容量線CSと画像分離方向のなす角度θ1がX軸方向に対して連続的に変化しながら、画素開口部を横切っている。蓄積容量線CSは、少なくとも一部に曲率をもった領域を有する。また、ブラックマトリクス60の開口部の角は曲率を有し緩やかにカーブしながら変形しており、略台形画素の開口を構成する。縦開口率の変動は曲率に応じて緩やかに変化するため、輝度分布の変動を小さくすることができ、3Dモアレを視認し難くすることができる。
なお、上記以外の構成及び動作は、前述の第1実施形態と同様である。
【0158】
次に、第1実施形態における第4変形例について説明する。
図20は第1実施形態における第4変形例に係る表示パネル2の平面図である。
【0159】
開口部を横切る蓄積容量線CS上の少なくとも一部がブラックマトリクス60で覆われている。ブラックマトリクス60は対向基板2b側に設けられている。これにより、パネル内に入射した光の反射を低減することができ、屋外など明るい場所での視認性を向上することができる。
なお、上記以外の構成及び動作は、前述の第1実施形態と同様である。
【0160】
本実施形態においては、理解を容易にするため、ゲート線Gの本数、データ線Dの本数は、説明に必要な数に限定した。本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の本質には影響を与えない。
【0161】
また、本実施形態においては、画素薄膜トランジスタ4TFTは、ソース電極又はドレイン電極の電位よりもゲート電極の電位の方がローレベルとなった場合に、ソース電極とドレイン電極との間が導通状態となるものとして説明した。逆に、ソース電極又はドレイン電極の電位よりもゲート電極の電位の方がハイレベルとなった場合に導通状態となる所謂NMOS型の薄膜トランジスタを使用することもできる。
【0162】
更にまた、本実施形態においては、画素のコンタクトホール4CONT1、4CONT2が、X軸方向における画素中央から外れて配置されている。この画素中央近傍には、レンズ等の画像分離手段で観察面に拡大投影されると、観察者の視点が配置される可能性が非常に高い。この画素中央近傍にコンタクトホール4CONT1、4CONT2を配置した場合、液晶分子の配向に乱れが発生し、表示に悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、画素中央付近にコンタクトホール4CONT1、4CONT2を配置すると、最も良く視認される位置において、表示画質が低下してしまう危険性が高まる。そこで、本実施形態のように、画素中央近傍からコンタクトホール4CONT1、4CONT2をずらして配置することにより、表示画質の向上が可能となる。更には、隣接画素対を構成する各画素を点対称の関係に配置した場合でも、各コンタクトホール4CONT1、4CONT2のX軸座標が一致するのを防ぐことができる。これにより、観察面の同じ位置に複数のコンタクトホール4CONT1、4CONT2の影響が重複してしまうのを抑制できるため、高画質化が可能となる。
【0163】
本実施形態においては、隣接画素対4PAIR、4PAIR2を構成する各画素は、点対称の関係に配置されているものとして説明した。これはすなわち、隣接画素対4PAIR、4PAIR2のX軸方向における中心線に対して、この隣接画素対4PAIR、4PAIR2を構成する各画素の画素薄膜トランジスタ4TFTのX軸方向における位置が、対称であることを意味する。そして、本実施形態はこれに限定されるものではなく、隣接画素対を構成する各画素の薄膜トランジスタのX軸方向における位置が、非対称となるように配置されていてもよい。これにより、各画素で薄膜トランジスタの位置に変化を持たせることができ、観察面の同位置に複数の薄膜トランジスタの影響が重複して発生するのを抑制できるため、高画質化が可能となる。
【0164】
更にまた、本実施形態においては、対向基板の内側に画素の開口部以外を覆う遮光層が形成されていてもよいものとして説明した。この遮光層は画素の開口部を一部覆っていてもよく、遮光層が形成する開口部と、画素の開口部とが相似の形状であってもよい。また、遮光層が形成する開口部の方が小さくてもよい。これにより、TFT基板と対向基板との位置がずれた場合でも、開口形状の変化を抑制でき、高画質化が可能となる。
【0165】
更にまた、本実施形態におけるゲート線、データ線と画素との接続関係は、次のように表記することもできる。すなわち、複数のデータ線のいずれか二本に挟まれた画素列は、一方のデータ線に画素スイッチを介して接続する画素と他方のデータ線に画素スイッチを介して接続する画素とが交互に配置され、また前記複数のゲート線のいずれか二本に挟まれた画素行は、一方のゲート線に画素スイッチを介して接続する画素と他方のゲート線に画素スイッチを介して接続する画素とが交互に配置されている。なお、このように配置するためには、データ線の本数は、画素列の数よりも1だけ多く配置されている方が好ましい。同様に、ゲート線の本数も、画素行の数よりも1だけ多く配置されている方が好ましい。
【0166】
本実施形態におけるレンチキュラレンズ3は、レンズ面が使用者側の方向である+Z方向の面に配置された場合の構造について説明したが、これに限定されず、レンズ面が表示パネル側の方向である−Z方向の面に配置されていてもよい。この場合、レンズ−画素間距離を小さくすることができるため、高精細化への対応で有利である。
【0167】
更にまた、表示単位は正方形の中に形成されていてもよい。なお、正方形の中に形成するとは、表示単位におけるX軸方向のピッチがY軸方向のピッチと同じであることを意味する。換言すれば、表示単位が繰り返し配列される方向において、そのピッチが、全て同じである。
【0168】
なお、上述の説明は、観察面に複数個の視点を設定し、その設定した各視点に向かって表示面の全ての表示単位から各視点用の画素の光が出射する方式のものである。この方式は、ある定めた視点に向かって、該当する視点の光を集めるため、集光方式とも呼称される。集光方式には、上述の2視点方式の立体表示装置や、更に視点数を増やした多視点方式の立体表示装置が分類される。
図21に集光方式の概念図を示す。集光方式では観察者の眼に入射する光線を再現して表示する点が特徴的である。本実施形態に係る画像表示装置1は、このような集光方式に対して効果的に適用することができる。
【0169】
更に、空間像方式や空間像再生方式、空間像再現方式、空間像形成方式などと呼称される方式が提案されている。
図22に概念図を示す。空間像方式は集光方式と異なり、特定の視点を設置しない。そして、空間の物体が発する光を再現するように表示する点が異なる。このような空間像方式には、インテグラルフォトグラフィ方式やインテグラルビデオグラフィ方式、インテグラルイメージング方式の立体表示装置が分類される。空間像方式においては、任意の場所に位置する観察者は、表示面全体で同一視点用の画素のみを視認することはない。しかしながら、同一視点用の画素が形成する所定の幅の領域が、複数種類存在することになる。この各領域においては、本発明は前述の集光方式と同様の効果を発揮できるため、空間像方式においても本実施形態に係る画像表示装置1を有効に適用することができる。
【0170】
なお、上述の説明においては、「視点」を「使用者が注視する表示領域上のある点(viewing point)」という意味ではなく、「画像表示装置を視認する位置(observation position)」や、「使用者の眼が位置すべき点又は領域」という意味で使用している。
【0171】
また、本実施形態の画像表示装置1に搭載した液晶表示パネル2に偏光板11を貼合せず、偏光板11をレンチキュラレンズ3の外側に設けてもよい。また、偏光板11は、レンチキュラレンズ3に対して観察者側に配置しても良い。偏光板11の配置を変更することによって、簡易的にレンズの頂点と画素との間の距離Hを調整することができる。これにより、設計の自由度を向上することができる。
【0172】
また、本実施形態の画像表示装置1に搭載した画像分離手段は透明領域と不透明領域とが交互に並んだ視差バリアを適用してもよい。視差バリアは、透明領域と不透明領域を液晶分子またはMEMSシャッタによりスイッチング可能な電気光学素子を用いてもよい。また、画像分離手段としては、液晶を用いた電気光学素子としてGRIN(Gradient Index)レンズを用いても本発明の効果を得ることができる。
【0173】
本実形態においては、第1視点用の画素は左眼用画素4L、第2視点用の画素は右眼用画素4Rとして説明したが、これに限ることなく、第1視点用の画素を右眼用画素4R、第2視点用の画素を左眼用画素4Lとしてもよい。これにより表示パネル2を180度回転した状態であっても画像データを並び替えることによって元と同じように立体表示を視認することができる。特に、
図8に示すような携帯機器は表示画面が回転することにより操作性を高めており、機器を手に持ったときの表示パネルの方向によらず情報を提供することが必要である。
【0174】
また、本実施形態の画像表示装置1に搭載した液晶表示パネル2は、TNモードの液晶駆動方式に限られることなく、その他の液晶駆動モードが適用できる。液晶駆動モードの例としては、横電界モードではIPS(インプレイン・スイッチング)方式、FFS(フリンジ・フィールド・スイッチング)方式、AFFS(アドヴァンスト・フリンジ・フィールド・スイッチング)方式等が挙げられる。また、垂直配向モードではマルチドメイン化され視野角依存性が低減されたMVA(マルチドメイン・ヴァーティカル・アライメント)方式、PVA(パターンド・ヴァーティカル・アライメント)方式、ASV(アドヴァンスト・スーパー・ヴイ)方式等が挙げられる。更に、OCB(オプティカリー・コンペンセイティド・ベンド)方式、フィルム補償TNモードの液晶表示パネルも好適に使用することができる。
【0175】
本実施形態における表示パネル2は、電気光学素子として液晶分子を利用した液晶表示パネルであるものとして説明した。液晶表示パネルとしては、透過型液晶表示パネルだけでなく、反射型液晶表示パネル、半透過型液晶表示パネル、反射領域よりも透過領域の比率が大きい微反射型液晶表示パネル、透過領域よりも反射領域の比率が大きい微透過型液晶表示パネル等にも適用することができる。また、表示パネルの駆動方法は、TFT方式に好適に適用できる。TFT方式における薄膜トランジスタは、アモルファスシリコンや低温ポリシリコン、高温ポリシリコン、単結晶シリコンを使用したものだけでなく、ペンタセンなどの有機物や酸化亜鉛などの酸化金属、カーボンナノチューブを使用したものにも好適に適用できる。また、本実施形態に係る画像表示装置1は薄膜トランジスタの構造には依存しない。ボトムゲート型やトップゲート型、スタガ型、逆スタガ型等を好適に使用することができる。更には、液晶方式以外の表示パネル、例えば有機エレクトロルミネッセンス表示パネル、又はPALC(Plasma Address Liquid Crystal:プラズマ・アドレス液晶)に適用することもできる。
【0176】
本実施形態においては、端末装置として携帯電話を例示したが、これに限定されず、PDA、パーソナルTV、ゲーム機、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ及びノート型パーソナルコンピュータ等の各種の携帯端末装置に適用することができる。また、携帯端末装置のみならず、キャッシュディスペンサ、自動販売機、モニタ及びテレビジョン受像機等の各種の固定型の端末装置に適用することもできる。
【0177】
本実形態においては、第1視点用の画素は左眼用画素4L、第2視点用の画素は右眼用画素4Rとして説明したが、これに限ることなく、表示単位内にN個の視点数を有する立体表示パネルに適用してもよい。視点数Nからなる立体表示パネルにおいては視点毎に最適な立体情報を付加して立体画像を表示することができるため、立体画像を良好に視認できる範囲を大きくすることができる。
【0178】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図23、
図24は本実施形態に係る画像表示装置を示す平面図である。前述の第1実施形態と比較して、本実施形態においては、Y軸方向に隣接する画素、すなわち、隣接画素対について注目すると、開口部を貫く蓄積容量線CSの方向が互いに反平行であり、かつ、画像分離方向と異なる方向へ傾斜している。また、X軸方向に隣接する画素、すなわち、表示単位を構成する左右画素について注目すると、開口部を貫く蓄積容量線CSの方向が互いに反平行であり、かつ、画像分離方向と異なる方向へ傾斜している。
【0179】
本実施形態の画素マトリクスは、
図23及び
図24の画素をX方向、Y方向へ並べて構成される。
図23、
図24に示すように、蓄積容量線CSの傾斜方向は2方向から成り、夫々、画像分離方向と異なる方向へ傾斜している。そして、蓄積容量線CSの傾斜は表示単位内で異なる角度であり、隣接画素対内で異なる角度に設定される。本実施形態における蓄積容量線CSは、X軸方向、Y軸方向へ分散配置した構成である。
本実施形態における上記以外の構成及び動作は、前述の第1実施形態と同様である。
【0180】
これにより、蓄積容量線CSとレンチキュラレンズ3に起因して発生するモアレ縞の方向を異なる方向へ分散して、モアレ縞を視認し難くすることができる。
【0181】
ところで、3Dモアレには視野依存性がある。特に、立体視認領域から外れた斜め方向の場所から見たときには、台形の上底と下底で挟まれる開口領域のうち、開口が一定とならない領域が存在するため、この領域から見た場合、表示パネル2には輝度ムラが大きく発生し、視認者に違和感を与える。
【0182】
本実施形態においては、画像分離方向と異なる方向へ傾斜したゲート線Gと、画像分離方向と異なる方向へ傾斜した蓄積容量線CSとがX軸方向へ略連続的に配置しているため、立体視認領域外から見た場合の3Dモアレの視野角依存性を低減できる。
【0183】
また、蓄積容量線CSの膜厚に応じた段差に起因して発生する基板界面の液晶分子のプレチルト方向を分散することができるため、斜め方向から見た場合のリタデーション変化による色付を低減できる。
【0184】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図25、
図26は本実施形態に係る画像表示装置の画素構造を示す平面図であり、
図27は第3実施形態に係る表示パネル2を示す平面図である。
【0185】
前述の第1実施形態と比較して、本実施形態においては、画素形状が略台形状から略8角形形状へ変形している。
【0186】
画素は、略台形画素における上底と下底と結ぶ仮想の切断線で切断して2つの直角台形に分割し、その2つの直角台形の各々に対して+Y方向と−Y方向とへそれぞれ所定の大きさをシフトさせ、切断部を結ぶことにより構成される略8角形状画素から成る。
図27より、領域X1は、X1=X’1+2×X4となるように3つの領域に分割され、蓄積容量線CSは中央の領域X’1を斜めに横切るように配置されている。
【0187】
蓄積容量線CSは略8角形状画素の切断線を横切るように配置され、隣接画素対に設けられた画素薄膜トランジスタ4TFTのチャネル部は画像分離方向と平行に配置されておらず、斜め方向にずれた配置となっている。また、蓄積容量線CSの幅はゲート線Gの幅より小さくなっている。
略台形画素の上底の遮光部についてX軸方向への形状変化に注目すると、遮光部のY軸方向の幅を略一定にしつつ、Y軸方向へ変動している。また、縦開口率はX軸方向に対して略一定になっている。
【0188】
本実施形態における画素の電気的な接続関係は第1実施形態と同様である。したがって、
図25及び
図26に示す画素がX軸方向及びY軸方向に交互に並べられて画素マトリクスが構成される。
【0189】
図25に示すように、薄膜トランジスタのシリコン薄膜部とデータ線Dは互いに交差しており、シリコン薄膜部の上層でデータ線Dは画像分離方向と異なる方向へ傾斜して配置される。シリコン薄膜部の上層におけるデータ線DとX軸方向とのなす角度はθD1となる。また、蓄積容量電極CS2の上層において傾斜したデータ線Dは、画像分離方向とのなす角度θD2で配置され、隣接画素対4PAIRの画素を駆動するための画素薄膜トランジスタ4TFT間を電気的に接続している。
【0190】
図25は、隣接画素対4PAIR及び+X側に隣接するサブ画素を示している。略台形画素の上底部における画素薄膜トランジスタ4TFTはY軸方向で隣接する画素の+Y側の画素と、−Y側の画素をそれぞれ制御するため、蓄積容量電極CS2とデータ線Dとの交差部分においては、データ線Dが画像分離方向と異なる方向へ傾斜して配置されている。隣接画素対4PAIRの画素薄膜トランジスタ4TFTは+Y方向と−Y方向とへそれぞれ所定の大きさをシフトしているため、画像分離方向とデータ線Dのなす角度は大きくなる。これにより隣接画素対4PAIRにおいては以下の関係が成り立つ。
|θD2|>|θD1| ・・・(51)
【0191】
図26は、隣接画素対4PAIR2、及び+X側に隣接するサブ画素を示している。隣接画素対4PAIR2の画素薄膜トランジスタ4TFTは+Y方向と−Y方向とへそれぞれ所定の大きさをシフトしており、画像分離方向とデータ線Dのなす角度は小さくなる。これにより隣接画素対4PAIR2においては以下の関係が成り立つ。
【0192】
|θD4|<|θD3| ・・・(52)
【0193】
なお、本実施形態における上記以外の構成及び動作は、前述の第1実施形態と同様である。
【0194】
略台形画素の上底部のY軸方向の幅は画素薄膜トランジスタ4TFTの面積に依存しておりプロセスルールの変更なしには小さくすることができないため、ピッチの小さい画素では開口領域のY軸方向の幅に対して略台形画素の上底部を覆う遮光部のY軸方向の幅が相対的に大きくなってしまう。画像分離手段によって、この略台形画素の上程部を覆う遮光部の像が拡大されると、視認者には表示部における粒状や縞状の明暗として視認されるため表示品質が低下するおそれがある。
【0195】
本実施形態の画素は、第1実施形態と比較して、台形上底の遮光部がY軸方向の幅をX軸方向によらず一定にしたままY軸方向へシフト変形した構成である。また同時に、開口領域は、Y軸方向の幅がX方向によらず一定にしたままサブ画素内で変形しており、縦開口率はX軸方向によらず略一定となっている。前述の通りシフト変形した画素がX軸方向へ周期的に配置されるため、サブ画素の開口領域は従来よりもY軸方向へ分散配置された構成である。また、遮光部がY軸方向へ変動する周期TはピクセルピッチPuと同じであり、表示パネル2の解像度以下で変動しているため粒状や縞状の明暗は視認され難い。したがって、第1実施形態で述べた画素と比較して、画像分離手段と台形上底の遮光部に起因して発生する粒状や縞状の明暗を低減することができる。
【0196】
また、本実施形態における画素の中央部では、切断前の台形の上底部分と下底部分が近づくため、開口部を貫く蓄積容量線CSの距離を小さくできる。これにより、配線抵抗を小さくできる。また、所定の配線抵抗を確保しつつ、蓄積容量線CSの幅を小さくできるため、開口率を向上することができる。
【0197】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図28は本実施形態に係る画像表示装置を示す平面図である。前述の第1実施形態と比較して、本実施形態においては、画素開口領域を貫くように配置された蓄積容量線CSが2本配置される。各々の蓄積容量線CSは画像分離方向への開口が略一定となるように、X軸方向と異なる方向へ傾斜している。各々の蓄積容量線CSの幅、及び傾斜角度は同じに設定されている。2本の蓄積容量線CSによって、開口部は3つの領域に分断される。
【0198】
また、蓄積容量線CSは、サブ画素内に2本配置されており、Y軸方向と平行であり、かつ、サブ画素のX軸方向へサブ画素を3等分に分割する仮想線の横切るように配置されている。
【0199】
ここで、傾斜配線の角度は、+X方向を0度の軸として時計回りの方向を正として定義する。ゲート線Gは画像分離方向と異なる方向へ傾斜しており、上底側が+Y方向を向いた画素においては−X側のゲート線傾斜角度がφ1であり、+X軸側のゲート線傾斜角度がφ’1=−φ1となっている。また、上底側が−Y方向へ向いた画素においては、−X方向側のゲート線傾斜角度が−φ1であり、+X方向側のゲート線傾斜角度がφ1となっている。
【0200】
上底側が+Y方向を向いた画素において、蓄積容量線CSの傾斜角度θ1とゲート線Gの傾斜角度φ1が同じ角度で構成される。また、夫々の蓄積容量線CSの傾斜角度を比べると、θ1=θ2である。すなわち、本実施形態においてサブ画素内の蓄積容量線CSの傾斜角度は、サブ画素を構成する片側のゲート線Gと同じ角度で構成される。
なお、本実施形態における上記以外の構成及び動作は、前述の第1実施形態と同様である。
【0201】
本実施形態では、蓄積容量線CSを2本配置することにより、蓄積容量線CSの断線による歩留り低下を抑制することができる。特に、蓄積容量線CSを細線化したプロセスで形成し、配線面積を小さくする場合に有効である。
【0202】
また、各々の蓄積容量線CSは画素開口部の中央を通る必要がなく、画素中央部の開口領域に構造物を配置する必要がなくなるため、輝度分布のピークの中心における加工精度に起因した輝度変動を低減することができる。また、X軸方向に配置される構造物の周期を小さくすることができるため、レンズ拡大効果によって発生するX軸方向への明暗のムラを低減することができる。
【0203】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
図29は本実施形態に係る画像表示装置を示す平面図である。
【0204】
本実施形態においては、画素開口領域を貫くように配置された蓄積容量線CSがサブ画素内に2本配置される。サブ画素内の各々の蓄積容量線CSは反平行であり、画像分離方向への開口が略一定となるように、画像分離方向と異なる方向へ傾斜している。また、また、画像分離方向と異なる方向へ傾斜したゲート線Gと、画像分離方向と異なる方向へ傾斜した蓄積容量線CSとが遮光部端の近傍で交差し、X軸方向へ略連続的に配置している。
【0205】
蓄積容量線CSによって分断された領域は略三角形から構成される。略三角形からなる領域は、夫々、同じ面積であることが望ましく、特に対称性の高い正三角形で構成されることが望ましい。
なお、本実施形態における上記以外の構成及び動作は、前述の第1実施形態と同様である。
【0206】
本実施形態では、蓄積容量線CSは反平行であり、モアレ縞の方向を分散させることができモアレ縞を視認し難くすることができる。また、蓄積容量線CSは画像分離方向と異なる方向へ傾斜しており、画像分離方向への開口が略一定となることから、レンズ拡大効果によって発生する明暗のムラを低減することができる。
【0207】
本実施形態の画素には、液晶分子の初期配向を基板垂直方向になるように設定した垂直配向モード(VA)を好適に適用することができる。三角形の中心に液晶分子の配向方向を制御するための構造物をTFT基板2a側に設けてもよい。蓄積容量線CSによって分断された領域は対称性の高い三角形から構成されるため、三角形の中心を基点にして液晶分子72の配向方向をマルチドメイン化することができ、高画質化することができる。
【0208】
また、配向方向を制御するための構造物は対向基板2b側に設けてもよい。対向基板側2bの構造物は、対向電極にスリットを設けて形成してもよく、プロセス数を増やすことなく低コストに構造物を形成することができる。
【0209】
また蓄積容量線CSの上層には画素電極4PIXを設けず、蓄積容量線CSからの電界を液晶層5LCへ印加できる構成であってもよい。これにより、液晶分子72を安定して配向制御することができる。
【0210】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態について説明する。
図30は本実施形態に係る画像表示装置を示す平面図である。
【0211】
本実施形態においては、蓄積容量線CSは開口部に2本配置されており、画素開口部の中央で互いに交差している。また、それぞれの蓄積容量線CSは画像分離方向への開口が略一定となるように、X軸方向と異なる方向へ傾斜している。2本の蓄積容量線CSによって、開口部は4つの領域に分断される。
なお、本実施形態における上記以外の構成及び動作は、前述の第1実施形態と同様である。
【0212】
本実施形態では、蓄積容量線CSは反平行であり、モアレ縞の方向を分散させることができモアレ縞を視認し難くすることができる。また、蓄積容量線CSは画像分離方向と異なる方向へ傾斜しており、画像分離方向への開口が略一定となることから、レンズ拡大効果によって発生する明暗のムラを低減することができる。
【0213】
[第7実施形態]
次に、本発明の第7実施形態について説明する。
図31は本実施形態に係る画像表示装置を示す平面図である。
【0214】
本実施形態においては、蓄積容量線CSは開口部に3本配置されており、少なくとも1本は、他の2本と異なる方向へ傾斜している。また、それぞれの蓄積容量線CSは画像分離方向への開口が略一定となるように、X軸方向と異なる方向へ傾斜している。2本の蓄積容量線CSによって、開口部は3つの領域に分断される。
【0215】
また、蓄積容量線CSは、サブ画素内に3本配置されており、Y軸方向と平行であり、かつ、サブ画素のX軸方向へサブ画素を4等分に分割する線分の横切るように配置される。
【0216】
ここで、夫々の傾斜配線の角度は、+X方向を0度の軸として時計回りの方向を正として定義する。ゲート線Gは画像分離方向と異なる方向へ傾斜しており、上底側が+Y方向を向いた画素においては−X側のゲート線Gの傾斜角度がφ1であり、+X軸側のゲート線Gの傾斜角度がφ’1=−φ1となっている。また、上底側が−Y方向へ向いた画素においては、−X方向側のゲート線Gの傾斜角度が−φ1であり、+X方向側のゲート線Gの傾斜角度がφ1となっている。
【0217】
上底側が+Y方向を向いた画素において、蓄積容量線CSの傾斜角度θ1は、ゲート線Gの傾斜角度φ1より大きくなっており、夫々の蓄積容量線CSの傾斜角度を比べると、θ1=θ2=−θ3である。すなわち、本実施形態において夫々の蓄積容量線CSの傾斜角度は、ゲート線Gの傾斜角度より大きく設定されている。
なお、本実施形態における上記以外の構成及び動作は、前述の第1実施形態と同様である。
【0218】
本実施形態では、ゲート線Gの傾斜角度と蓄積容量線CSの傾斜角度が異なることにより、レンズと配線とに起因したモアレ縞を分散させることができ、画質を向上することができる。また、少なくとも1つの蓄積容量線CSは他の蓄積容量線CSと異なる方向へ配置されているため、さらにモアレの分散効果が大きい。また、蓄積容量線CSのX軸方向への構造周期が小さいため、モアレ縞のピッチを小さくし、モアレ縞を視認し難くできる。
【0219】
[第8実施形態]
次に、本発明の第8実施形態について説明する。
図32は本実施形態に係る画像表示装置を示す平面図である。
【0220】
本実施形態においては、蓄積容量線CSは開口部に3本配置されており、少なくとも1本は、他の2本と異なる方向へ傾斜している。また、それぞれの蓄積容量線CSは画像分離方向への開口が略一定となるように、X軸方向と異なる方向へ傾斜している。2本の蓄積容量線CSによって、開口部は3つの領域に分断される。
【0221】
また、蓄積容量線CSは、サブ画素内に3本配置されており、Y軸方向と平行であり、かつ、サブ画素のX軸方向へサブ画素を4等分に分割する線分の横切るように配置される。
【0222】
図32に示すように、本実施形態に係る画素は、対向電極4COMがTFT基板2a側に設けられ、ゲート線G、及び蓄積容量線CSの上層を覆うように配置される。対向電極4COMはコンタクトホール4CONT3を介して蓄積容量線CSに接続される。
【0223】
画素薄膜トランジスタ4TFTはMOS型の薄膜トランジスタであり、ソース電極又はドレイン電極の一方がコンタクトホール4CONT1を介してデータ線Dに接続され、他方がコンタクトホール4CONT2を介して画素電極4PIXと蓄積容量4CSの一方の電極に接続される。そして、画素薄膜トランジスタ4TFTのゲート電極は、ゲート線Gに接続される。蓄積容量4CSの他方の電極には、蓄積容量電極CS2が接続されている。画素電極4PIXは対向電極4COMの間に間隔をもって配置され、画素電極4PIXと対向電極4COMはX軸方向に交互に並んだ略櫛歯状になっている。
【0224】
画素電極4PIXとの間で画素容量4CLCが形成される。蓄積容量線CSと蓄積容量電極CS2は同層で形成され、電気的に接続されている。
【0225】
また、TFT基板側ラビング方向70、及び対向基板側ラビング方向71は、Y軸方向、すなわち画像分離方向に垂直な方向と平行である。また、偏光板11の偏向軸は、クロスニコルで配置し、表示モードはノーマリブラックモードとなる。表示モードがノーマリブラックモードであるため、液晶分子を電界制御する必要のない開口部以外の領域でブラックマトリクス60を設ける領域を削減できる。したがって、データ線Dまたはゲート線Gをブラックマトリクス60で覆うことなく、広開口化することができる。また、ブラックマトリクス60を完全になくすことにより省プロセス化することもできる。
【0226】
液晶分子はY軸方向に初期配向しており、画素電極4PIXと対向電極4COMの間に発生する面内方向を主成分とする電界によって制御される。
なお、本実施形態における上記以外の構成及び動作は、前述の第1実施形態と同様である。
【0227】
本実施形態では、横電界によって液晶分子が配向制御されるため、電圧を印加しても液晶分子は基板に対して斜め方向に傾くことがないため、広い視野角を得ることができる。
【0228】
また、本実施形態に係る画素は、非常に優れた視野角特性を有するため、フィルム補償TNモード及び、マルチドメイン垂直配向モードのような補償フィルムを貼合する必要がなく、表示パネル2の厚みを小さくすることができる。表示パネル2の厚みが小さくなることにより、シリンドリカルレンズ3aの頂点と画素の距離を小さくすることができ、設計の自由度を向上することができる。
【0229】
本実施形態では、サブ画素において、ゲート線G、及び蓄積容量線CSの傾斜角度は2種類であり、液晶分子72は2方向のドメインに分割される。2つのドメイン領域の面積は1つのサブ画素内では不均一であるが、X軸方向に隣接するサブ画素間で互いに補償し合って均一化することができる。これにより、斜め方向から見た場合の色付を低減することができる。特に、2次元の画像を表示する場合には、表示単位を構成する各サブ画素は同じ画像を表示するため、2次元表示においては表示単位毎で光学的に補償することができる。
【0230】
また、対向電極4COMは、TFT基板側2aに設けられるため、対向基板2b側の対向電極4COMを省くことができる。さらに、画素電極4PIXと対向電極4COMは、TFT基板2a側に同層の材料を用いて形成することができる。これにより、省プロセス化、低コスト化することができる。また、画素電極4PIXと対向電極4COMは、TFT基板2a側に絶縁膜を介して形成されてもよい、絶縁膜を介すことにより、ショートを防ぐことができ歩留りを向上することができる。
【0231】
[第9実施形態]
次に、本発明の第9実施形態について説明する。
図33は本実施形態に係る画素の電気的な接続関係と極性分布を模式的に示した図であり、
図34は、本実施形態に係る画像表示装置においてデータ線Dに入力する駆動極性を示す表であり、
図35、及び
図36は本実施形態に係る画像表示装置の画素構造を示す平面図である。
【0232】
本実施形態に係る画像表示装置は、
図35及び
図36に記載の画素が
図33に記載の接続関係に従ってマトリクス上に並べられて構成される。
【0233】
本実施形態に係る画像表示装置1の駆動方法は、
図35に示すようにデータ線2本毎に各々伝送される表示データの極性が基準電位に対して反転され、かつゲート線1本毎に各々データ線を伝送される表示データの極性が反転され、かつフレーム毎に極性が反転される駆動方法である。このドット反転駆動は2H1V反転駆動とも称される。これは、水平方向(H方向)に配列するデータ線2本毎、また垂直方向(V方向)に配列するゲート線1本毎に極性が反転しているからである。
【0234】
図33を参照して具体的に説明するが、これはあるフレームにおいて、前述の2H1V反転駆動の結果実現される各画素の極性を示したものである。まず、ゲート線G1が選択されると、データ線D1には正極性の表示データが伝送され、画素P11には正極性の電圧が書き込まれる。またデータ線D2、D3、D6、D7、D10、D11には負極性の表示データが伝送され、データ線D4、D5、D8、D9、D11、D12には正極性の表示データが伝送される。次にゲート線G2が選択された場合には、データ線の極性が全て反転される。すなわち、データ線D1,D4、D5、D8、D9、D11、D12には負極性の表示データが伝送され、データ線D2、D3、D6、D7、D10、D11には正極性の表示データが伝送される。以降、ゲート線G3、G5、の選択時は、ゲートG7線G1の選択時と同様であり、ゲート線G4、G6の選択時は、ゲート線G2の選択時と同様である。そして、このフレームが終了すると、次のフレームにおいては、更に極性反転が実行される。すなわち、ゲート線G1、G3、G5、G7選択時においては、データ線D1,D4、D5、D8、D9、D11、D12に負極性の表示データが伝送され、データ線D2、D3、D6、D7、D10、D11に正極性の表示データが伝送される。また、ゲート線G2、G4、G6選択時においては、データ線D1,D4、D5、D8、D9、D11、D12に正極性の表示データが伝送され、データ線D2、D3、D6、D7、D10、D11に負極性の表示データが伝送される。
【0235】
蓄積容量線CSを介して電気的に接続される蓄積容量電極CS2は、画素P11、P32、P31、P52、P51、P72、P71、P92、P91、P112、P111、P132である。
この画素群に注目すると、ゲート線G1が選択されたときに書き込まれる画素は、P11、P31、P51、P71、P91、P111であり、この選択された画素の中であるフレームにおいては、正極性の表示データが書き込まれる画素はP11、P51、P91であり、負極性の表示データが書き込まれる画素は、P31、P71、P111である。以降、次フレーム期間では、ゲート線G1によって選択される画素は極性が反転する。したがって、あるゲート線の選択期間における各画素への表示データの書きこみに着目すると、共通の蓄積容量電極CS2は正極性の表示データが書き込みされる画素だけでなく、負極性の表示データが書き込まれる画素が接続されており、正極性の表示データと負極性の表示データは、偏ること無く均等に書き込まれている。
【0236】
図33に示すように、各画素の極性は同じ極性が斜め方向にそろったストライプ状の配列である。本実施形態においては、TFT基板側のラビング処理方向を同極性の画素が斜めに並ぶ方向と略平行な方向とした。液晶駆動方式はTNモードを適用し、TFT基板側ラビング方向70と対向基板側ラビング方向71は略直交している。基板界面の液晶分子は同極性の画素がX軸方向へ隣接して並ぶ略台形画素の斜辺に対して略直交して横切るように配向処理される。
【0237】
なお、本実施形態における上記以外の構成は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0238】
本実施形態においては、1走査期間における各画素への表示データの書き込み時に、蓄積容量線CSの電位変動を抑制することができる。これは、各蓄積容量線CSには、正極性の表示データが書き込みされる画素だけでなく、負極性の表示データが書き込まれる画素が接続されているからである。 これにより、蓄積容量線CSの電位が片側の極性に向かって変動するのを抑制することができ、蓄積容量線CSが延伸する方向へ発生するクロストークなどを低減して、高品質な表示を実現することができる。本実施形態における構成は、一般的な反転駆動を使用した上で、2ラインドット反転効果、各蓄積容量線CSの電位変動抑制効果を実現でき、かつ台形開口の底辺部が隣接する画素の極性を同じにできる。これにより、低コストに高画質表示を実現することができる。
【0239】
本実施形態では、同極性の画素が並ぶ方向とTFT基板側ラビング方向70が略平行であり、ラビング処理により基板界面にアンカリングされた液晶分子は同極性の画素間の台形斜辺を跨いで配向している。本実施形態では、同極性の画素の台形斜辺を跨いで配向処理されるため、異極性の画素間の斜辺を跨いで配向する場合と比較してエネルギー的に安定である。これにより、略台形画素の斜辺に沿って発生するディスクリネーションや配向不良を低減することができ、安定した液晶配向状態を実現することができる。ディスクリネーションを低減することにより台形斜辺の遮光部幅を削減できるため、3Dクロストークを低減することができる。また、液晶配向状態を安定化されるため信頼性を向上することができる。
【0240】
[第10実施形態]
次に、本発明の第10実施形態について説明する。
図37は本実施形態に係る画像表示装置のTFT基板2a側の一部の画素の構造を示す平面図である。
図38は本実施形態に係る表示パネル2の画素を示す平面図である。
図39は
図38に示す平面図の線分C−C’部の断面図であり、
図40は本実施形態における光学モデルを示す断面図である。
【0241】
図37、
図39に示すように、表示パネル2は右眼用画素4Rと左眼用画素4Lが画像分離方向、すなわちX軸方向に交互に配列している視点数2からなる表示パネル2である。サブ画素の開口部は略台形状であり、X方向に並ぶサブ画素においてサブ画素の開口部がY軸方向に互いに重なる開口領域と、Y軸方向に互いに重ならずになる開口領域から構成される。
【0242】
画像分離方向へ隣接するサブ画素間の境界を示す線は仮想線79であり、この線分を基準にして、サブ画素を画像分離方向へ2等分する仮想線80、サブ画素を画像分離方向へ3等分する仮想線81を図示している。
【0243】
ゲート線Gは仮想線79を跨ぐように画像分離方向と異なる方向へ傾斜して配置される。また蓄積容量電極CS2は仮想線80上に沿って配置され、仮想線80に対して線対称である。隣接画素対を構成する各サブ画素の蓄積容量線CSは、仮想線80を境界とする相互に異なる領域で蓄積容量電極CS2と電気的に接続する。
【0244】
蓄積容量線CSは各サブ画素の開口部に1本配置され、画像分離方向と異なる方向に傾斜している。また、蓄積容量線CSはY軸方向へ隣接する2つのサブ画素に渡って、サブ画素をX方向へ2等分する仮想線80を跨るように配置される。
【0245】
蓄積容量線CSはY軸方向に隣接する2つのサブ画素の各開口部において、サブ画素をX軸方向へ3等分する仮想線81のうち少なくとも1本を選択的に跨って配置される。Y軸方向へ隣接するサブ画素において、各サブ画素の開口部に配置された蓄積容量線CSは、サブ画素をX方向へ3等分する2本の仮想線81のうち、それぞれ異なる仮想線81を跨って配置された構成である。
【0246】
台形底辺部を共通とするサブ画素間の境界部において、蓄積容量線CSは台形の底辺部に配置されたデータ線Dと交差し、Y軸方向へ隣接する隣接画素対間を電気的に接続する。蓄積容量線CSは、台形の底辺部においてサブ画素を画像分離方向へ2等分する仮想線80を跨って配置され、台形底辺部のデータ線Dを境界としてサブ画素を画像分離方向へ2等分した領域のうち片方の領域からもう一方の領域に渡って配線される。また、蓄積容量線CSはY軸方向に並ぶ2つのサブ画素における縦開口率が画像分離方向へ略一定となるように連続的に配置される。
【0247】
蓄積容量線CSは台形状の開口部における上底と斜辺との交差部から下底と仮想線80との交差部に向けて伸びている。さらに、台形の底辺部において、蓄積容量線CSはX軸方向に延伸するデータ線Dと互いに略直線的に交差している。
【0248】
サブ画素の開口部において蓄積容量線CSの伸びる方向と、X軸方向とのなす角度はθ1に設定される。蓄積容量線CSの傾斜方向は、表示単位を構成するサブ画素間において同じ方向であり、また、隣接画素対を構成するサブ画素間において同じ方向である。すなわち、蓄積容量線CSは、X軸方向、及びY軸方向に配列した各サブ画素において画像分離方向とのなす角度が全て同じ角度で構成される。
【0249】
隣接画素対を構成する2つのサブ画素において、各サブ画素に配置された蓄積容量線CSは、画像分離方向とのなす角度が夫々同じ角度で構成され、サブ画素を画像分離方向へ3分割する2本の仮想線81のうち、夫々異なる仮想線81を跨いで配置される。
【0250】
隣接画素対は、画素薄膜トランジスタ4TFTの接続関係から2種類存在し、夫々の隣接画素対がZ軸回りの180度の回転に対して等価な回転対称軸を有する。
【0251】
表示単位を構成する右眼用画素4R、及び左眼用画素4Lに配置された蓄積容量線CSは、サブ画素をX軸方向へ3等分に分割する2本の仮想線81のうち、それぞれ異なる仮想線81を跨ぐように配置される。すなわち、表示単位を構成するサブ画素において、各サブ画素に配置された蓄積容量線CSは、夫々同じ方向に傾斜し、夫々サブ画素内で相対的に異なる仮想線81を跨いで配置される。
【0252】
Y軸方向へ隣接して並ぶ2つの画素に配置される蓄積容量線CSは、サブ画素をX軸方向へ3等分に分割する2本の仮想線81のうち、それぞれ異なる仮想線を交互に跨ぐように配置される。共通の仮想線81を跨ぐ蓄積容量線CSはY軸方向へ2サブ画素毎に繰り返し配置される。
【0253】
X軸方向へ配列する画素は、サブ画素をX軸方向へ3等分に分割する2本の仮想線81のうち、サブ画素内で相対的に異なる位置の仮想線81を交互に跨ぐように配置される。蓄積容量線CSがサブ画素内で相対的に同じ位置の仮想線81を跨ぐサブ画素は、X軸方向へ2サブ画素毎に繰り返し配置される。
【0254】
図38に示すように、カラーフィルタは、赤(RED)、緑(GREEN)、青(BLUE)の各色がX軸方向へ延伸しており、Y軸方向へ赤(RED)、緑(GREEN)、青(BLUE)がストライプ状に繰り返し配列している。
【0255】
ブラックマトリクス60のパターンの周期と蓄積容量線CSのパターンの周期は2サブ画素毎に繰り返した周期構造である。また、カラーフィルタ配列はRGBのカラーストライプが3サブ画素毎の周期で並んでいる。したがって、Y軸方向へ並ぶサブ画素は、蓄積容量線CSとブラックマトリクス60が同じ構造周期を有し、カラーフィルタは蓄積容量線CS、及びブラックマトリクス60とは異なる周期構造を有する。
【0256】
図39に示すように、TFT基板2aに着目すると、ゲート線Gと蓄積容量線CSは第1の絶縁膜91上に設けられた同層の金属材料から構成される。また、画素電極4PIXは第3の絶縁膜93上に設けられた透明導電性材料から構成される。第2の絶縁膜はゲート線Gとデータ線Dを電気的に絶縁するための絶縁膜であり、第3の絶縁膜は平坦化効果を有する。
【0257】
対向基板2bに着目すると、対向基板2bの液晶層5LC側にブラックマトリクス60が設けられ、ブラックマトリクス60よりさらに液晶層5LC側にカラーフィルタ層が設けられる。カラーフィルタ層より液晶層5LC側にはオーバーコートOCが設けられ、オーバーコートOCより液晶層5LC側に対向電極4COMが設けられる。
【0258】
観察者側から見ると、ゲート線Gはブラックマトリクス60によって覆われる。略台形画素の斜辺部はブラックマトリクス60によって遮光され、その近傍から出射された光が観察される。また、開口部は蓄積容量線CSによって遮光され、その近傍から出射された光りが観察される。したがって、開口部に配置された蓄積容量線CSと台形斜辺部のブラックマトリクス60は異なる遮光層レイアとして機能する。
【0259】
なお、ゲート線Gとブラックマトリクス60の被り量δは、TFT基板2aと対向基板2bの重ね合せ精度に応じて設定する。
【0260】
図40に示すようにレンズ3aの焦点は蓄積容量線CSで構成された遮光部より観察者側に対して奥側に配置される。ブラックマトリクス60の近傍ではスポット径SP1でデフォーカスされ、蓄積容量線CSの近傍ではスポット径SP2でデフォーカスされる。スポット径SP1はスポット径SP2より大きく設定される。
【0261】
なお、本実施形態における上記以外の構成及び動作は、前述の第1実施形態と同様である。
【0262】
本実施形態では、第1実施形態と比較すると、前述のように蓄積容量線CSと画像分離方向とのなす角度θ1を大きくすることにより配線部の面積を小さくできるため、開口率を向上することができる。また、蓄積容量線CSを大部分の開口部に渡って配置する必要がなく、余分な遮光物の面積を削減できるため、開口率を向上することができる。さらに、蓄積容量電極CS2間を結ぶ配線長を小さくできるため配線抵抗を小さくすることができる。
【0263】
また、本実施形態では、蓄積容量線CSはサブ画素をX方向へ等分割する複数の仮想線のうち、それぞれ異なる仮想線を跨って配置されることにより、Y軸方向に配列する複数のサブ画素間で補償して縦開口率を画像分離方向へ略一定とすることができる。
【0264】
また、本実施形態では、蓄積容量線CSはY軸方向に隣接する2つのサブ画素間で縦開口率を略一定となるように配置されるため、縦開口率の変動を抑制しつつ開口率を向上することができる。さらに、台形底辺部を共通としてY軸方向に並ぶサブ画素間の境界では、画像分離方向と略平行に延伸するデータ線Dと画像分離方向と異なる方向に傾斜した蓄積容量線CSが、夫々略直線的に交差するためパターン精度に起因して発生する縦開口の変動を抑制することができる。さらに、データ線Dと蓄積容量線CSが夫々略直線的に交差するため配線容量を小さくでき、画像データの書込み負荷を低減することができる。
【0265】
図37に示すように右眼用画素4Rの列と右眼用画素4R’の列に着目すると、サブ画素内で相対的に同じ位置に配置された蓄積容量線CSを有するサブ画素がX軸方向に並んでいる。また、左眼用画素4Lの列と左眼用画素4L’の列に着目すると、サブ画素内で相対的に同じ位置に配置された蓄積容量線CSがX軸方向に並んでいる。すなわち、各視点においてX軸方向に並ぶサブ画素は常に同じ蓄積容量線CS形状の繰り返しとなっている。これにより、各視点領域に表示された画像において画像分離方向の画質をより均一化することができる。
【0266】
高精細化した画素では、台形斜辺の幅によって縦開口率を画像分離方向へ略一定とすることが困難となる。高精細化した画素ではブラックマトリクス60のX軸方向の幅WBMxを大きくすることができず、TFT基板2aと対向基板2bとの嵌合が僅かにずれることよってゲート線Gがはみ出し、台形斜辺部の縦開口率を変動させる要因となる。また、ブラックマトリクス60とサブ画素開口部の境界付近では画素電極4PIXとゲート線Gとの間に発生した電界により液晶分子配向を制御できず光漏れが発生しやすく、これがレンズで拡大されると輝度変動として視認され、画質が低下する。したがって、ブラックマトリクス60の近傍では、光漏れや縦開口変動に起因した3Dモアレが発生しやすい。
【0267】
スポット径SP2はスポット径SP1より大きく、画像分離手段によって画像分離方向へ振り避けた光の輝度変動をより均一化することができる。上述のようにブラックマトリクス60近傍では、製造工程に起因した3Dモアレが発生しやすいため、ブラックマトリクス60近傍を効果的にデフォーカスすることにより製造マージンを大きくすることができる。これにより歩留りを向上して低コスト化することができる。上述したように、本実施形態に係る画像表示装置は、高精細化した画素において特に効果的である。
【0268】
[第10実施形態の変形例]
次に、本発明の第10実施形態の第1変形例について説明する。
図41は本変形例に係る画像表示装置のTFT基板2a側の一部の画素の構造を示す平面図である。
図42は本変形例に係る表示パネルの画素を示す平面図である。
図39は
図42に示す画素平面図における線分C−C’部の断面図であり、
図43は本変形例における光学モデルを示す断面図である。
【0269】
蓄積容量線CSは台形上底の中央部から台形下底の中央部意外の領域へ向けて延伸するように配線される。蓄積容量線CSは台形底辺の中央部以外の場所で屈曲し、データ線Dと互いに交差している。蓄積容量電極CS2はサブ画素の中心線である仮想線80線に沿って配置され、仮想線80に対して線対称な長方形から構成される。
【0270】
蓄積容量線CSの傾斜角度は、X軸方向とのなす角度がθ1、θ’1に設定された少なくとも2種類以上の傾斜角度から構成される。Y軸方向に配列したサブ画素の蓄積容量線CSは2画素毎に傾斜方向が異なり、X軸方向に配列したサブ画素の蓄積容量線CSは2画素毎に傾斜方向が異なる。
【0271】
隣接画素対を構成するサブ画素において、各サブ画素に配置された蓄積容量線CSは、夫々同じ方向に傾斜し、夫々異なる仮想線81を跨いで配置される。また、蓄積容量線CSの傾斜方向が異なる隣接画素対は2種類存在し、各々がY軸方向へ交互に配置される。その結果、同じ傾斜方向であり、かつ、共通の仮想線81を跨る蓄積容量線CSを有するサブ画素は、4サブ画素毎に繰り返し配置される。
【0272】
蓄積容量線CSの傾斜方向が互い異なる隣接画素対は、夫々Z軸回りの180度の回転に対して等価な回転対称軸を有し、仮想線80に対して線対称の関係である。
【0273】
表示単位を構成するサブ画素において、各サブ画素に配置された蓄積容量線CSは、サブ画素をX軸方向へ3等分に分割する2本の仮想線81のうち、それぞれ異なる仮想線81を跨ぐように配置される。すなわち、蓄積容量線CSがサブ画素内で相対的に同じ仮想線81を跨ぐサブ画素は、X軸方向へ2サブ画素毎に繰り返し配置される。
【0274】
本変形例においては、
図43に示すようにシリンドリカルレンズ3aの焦点が左眼用画素4L、右眼用画素4Rに対して観察者側になるように構成されている。スポット径SP2はスポット径SP1より大きく設定されている。ブラックマトリクス60の近傍ではスポット径SP1でデフォーカスされ、蓄積容量線CSの近傍ではスポット径SP2でデフォーカスされる。すなわち、ブラックマトリクス60が配置された領域より蓄積容量線CSの配置された領域が大きくぼかされる構成である。
【0275】
なお、本実施形態における上記以外の構成及び動作は、前述の第10実施形態と同様である。
【0276】
本変形例では、蓄積容量線CSは台形上底の略中央部で蓄積容量電極CS2と接続し、上底の略中央部から下底と斜辺との交点の方向に向けて延びている。その結果、隣接画素対を形成する2つの画素薄膜トランジスタ4TFTを囲うように配置されていた蓄積容量線CSの面積を削減することができ、その分の開口率を向上することができる。
【0277】
略台形画素の上底部において、蓄積容量線CSと蓄積容量電極CS2が鋭角に交わる領域は、鋭角部の空間が小さいため配線パターンの加工精度に起因した縦開口率変動が発生し、3Dモアレの要因となりやすい。蓄積容量線CSが配置された領域では、デフォーカス効果が大きく働いて光を振り分ける方向への輝度分布をより均一化することができる。
【0278】
サブ画素中央近傍は、レンズ等の画像分離手段で観察面に拡大投影されると、観察者の視点が配置される可能性が非常に高い領域である。そのため、この領域に対応した輝度分布を効果的にぼかしてより均一化することにより高画質化をはかることができる。
【0279】
スポット径SP2はスポット径SP1より大きく、デフォーカス効果が大きい。そのため蓄積容量線CS部ではデフォーカスが大きく働き、これにより画素分離方向への輝度分布がより均一化される。そのため、蓄積容量線CSの形状に起因した3Dモアレの発生を低減することができる。特に、本変形例に示すような2画素毎に縦開口幅を補償する場合には、サブ画素中央の縦開口が製造プロセスの加工精度に起因して変動しやすいため非常に効果的である。
【0280】
最適観察距離ODで観察すると、蓄積容量線CSは大きくデフォーカスされ、画像分離手段により振り分けられた光の輝度分布は均一化される。一方で、ブラックマトリクス60で遮光された台形斜辺部、すなわち、サブ画素間の境界領域ではデフォーカスが小さく、レンチキュラレンズ3による分離性能が良好である。これにより、視点間のクロストークを低減しつつ、同時に、蓄積容量線CSに起因した輝度変動を効果的に低減し、立体画質を向上することができる。
【0281】
ブラックマトリクス60は、対向基板2bの観察者側に設けてもよい。蓄積容量線CSとブラックマトリクス60の距離を大きくすることにより、ブラックマトリクス60近傍のスポット径SP1と蓄積容量線CS近傍のスポット径SP2との差をより大きくすることができ、デフォーカス量の差を大きくすることができる。
【0282】
サブ画素に配置される蓄積容量線CSは1本に限定されず、サブ画素内に蓄積容量線CSがK本配置された構成でもよい。蓄積容量線CSは画像分離方向と異なる方向に傾斜し、各サブ画素の開口部にK本配置することができる。蓄積容量線CSは画像分離方向と垂直な方向にL個配列したサブ画素の各開口部において、開口部を画像分離方向へ(K+L)等分する仮想線のうち少なくとも1本を選択的に跨って配置される。Y軸方向に配列するK個のサブ画素において各開口部の蓄積容量線CSはそれぞれ異なる仮想線を跨って配置されることにより上述と同様の効果を得られることは明らかである。
【0283】
[第11実施形態]
次に、本発明の第11実施形態について説明する。
図44は本実施形態に係る画像表示装置のTFT基板2a側の一部の画素の構造を示す平面図である。
図45は本実施形態における画像表示装置を示す断面図である。
【0284】
図44に示すように、表示パネル2は、第1視点用の画像を表示する画素、第2視点用の画像を表示する画素、第3視点用の画像を表示する画素、第4視点用の画像を表示する画素を備えた視点数4からなる立体表示用の表示パネルである。
図44に示すように、第1視点用画素V1、第2視点用画素V2、第3視点用画素V3、第4視点用画素V4がX軸方向に配列し、4つのサブ画素が「表示単位」を構成している。
【0285】
図45に示すように、画像分離手段であるレンチキュラレンズ3は、表示単位、すなわち、X軸方向に並ぶ第1視点用画素V1、第2視点用画素V2、第3視点用画素V3、第4視点用画素V4に応じて配置される。画素開口部の形状は上底のX方向の幅が小さくなっており、三角形に近い台形である。
【0286】
蓄積容量電極CS2はサブ画素の中心線である仮想線80線に沿って配置され、仮想線80に対して線対称な長方形から構成される。蓄積容量線CSは台形上底の中央部から台形下底の中央部以外の領域へ延びている。蓄積容量電極CS2と蓄積容量線CSは略台形画素の上底において屈曲して接続される。略台形画素の底辺部、すなわち、X軸方向に伸びるデータ線D近傍では蓄積容量線CSがY軸方向に隣接する画素と屈曲して接続される。
【0287】
隣接画素対の各サブ画素における蓄積容量線CSは、夫々同じ方向に傾斜し、夫々異なる仮想線81を跨いで配置される。また、蓄積容量線CSの傾斜方向の異なる隣接画素対は2種類存在し、各々がY軸方向へ交互に配置される。その結果、X軸方向、及びY軸方向に配列するサブ画素において、同じ傾斜方向であり、かつ、共通の仮想線81を跨る蓄積容量線CSを有するサブ画素は、4サブ画素毎に繰り返し配置される。
【0288】
表示パネル2は、隣接画素対を構成する各サブ画素の蓄積容量線CSは夫々同じ方向に傾斜し、Y軸方向へ隣り合う隣接画素対は夫々異なる傾斜方向の蓄積容量線CSを有する構成である。
【0289】
X軸方向へ配列するサブ画素は、サブ画素をX軸方向へ3等分に分割する2本の仮想線81のうち、サブ画素内で相対的に異なる仮想線81を交互に跨ぐように配置される。蓄積容量線CSがサブ画素内で相対的に同じ仮想線81を跨ぐサブ画素は、X軸方向へ2サブ画素毎に繰り返し配置される。
【0290】
表示単位を構成するサブ画素において、各視点に対応したサブ画素は、蓄積容量線CSの画像分離方向に対する2種類の傾斜方向、または、サブ画素内の2本仮想線81のいずれかを跨った2種類の配置、の組合せにより構成された夫々異なる4種類のパターンから構成される。
【0291】
表示単位を構成するサブ画素、第1視点用画素V1、第2視点用画素V2、第3視点用画素V3、第4視点用画素V4は夫々異なる蓄積容量線CSの配置である。また、Y軸方向へ隣接する表示単位は、蓄積容量線CSのパターンが同じサブ画素がX軸方向へ1サブ画素ずれて配置され、その結果、Y軸方向へ連続して並ぶ4つのサブ画素は夫々異なる蓄積容量線CSの配置パターンで構成される。
【0292】
なお、本実施形態における上記以外の構成及び動作は、前述の第1実施形態と同様である
【0293】
本実施形態では、4視点に対応した視差画像を各視点に表示することで、より臨場感のある画像を表示することができる。また、視点毎に最適な立体情報を付加して立体画像を表示することができるため、前述の2視点からなる画像表示装置と比較して、立体画像を良好に視認できる範囲も大きくすることができる。
【0294】
また、本実施形態では、表示単位を構成する各視点のサブ画素において、蓄積容量線CSの配置は夫々異なるパターンであり、シリンドリカルレンズ3aが並ぶ画像分離方向に対して分散された配置である。そのため、1ピクセル内における蓄積容量線CSの周期性を低減して、画像分離手段の配列周期に起因して発生するモアレ干渉縞を抑制することができる。
【0295】
また、本実施形態では、Y軸方向に連続して並ぶ4つのサブ画素は、蓄積容量線CSの配置が夫々異なるパターンであり、画像分離方向と垂直な方向に対して分散された配置である。これにより、蓄積容量線CSによって散乱されて出射した光を分散させることができ、輝度ムラやモアレ干渉縞を低減することができる。特に、各サブ画素の境界ではレンズ等の画像分離手段で観察面に拡大投影されると、観察者に違和感を与える可能性が非常に高い領域である。そのため、この領域に対応した蓄積容量線CSのパターンを分散配置させることで高画質化をはかることができる。
【0296】
本実施形態のような3以上の視点数を有する多視点方式においては、ある視点の画像が隣接する視点の画像に漏れ込むといった画像間で規定されたクロストークと定義される場合があり、これを「画像間クロストーク」と呼称することとする。第1実施形態で説明したような2視点の場合では、両眼で規定した「3Dクロストーク」と「画像間クロストーク」は同じであり、低い方が望ましい。これに対し、3視点以上の多視点の場合では、「画像間クロストーク」の存在は二重像を招くものの、滑らかな運動視差を付与することができるため、低い方が望ましいとは限らない。
【0297】
表示パネル2は、4視点に限ることなく3視点以上のN視点からなる画像表示装置に適用することができる。N視点に対応した視差画像を各視点に表示することで、より立体感のある画像を表示することができる。さらに、視点数Nからなる立体表示パネルにおいては視点毎に最適な立体情報を付加して立体画像を表示することができるため、立体画像を良好に視認できる範囲を大きくすることができる。
【0298】
N視点の表示単位を構成する各視点のサブ画素において、蓄積容量線CSの配置パターンは、夫々異なるパターンで構成され、その異なるパターンの組合せがY軸方向へ隣接する表示単位において1サブ画素分だけX軸方向にずれて配置される。
【0299】
N視点からなる画像表示装置において、蓄積容量線CSがサブ画素内にK本配置された構成でもよい。また、夫々蓄積容量線CSは画像分離方向と異なる少なくとも2種類以上の傾斜方向からなり、蓄積容量線CSは画像分離方向と垂直な方向にL個配列したサブ画素の各開口部において、開口部を画像分離方向へ(K+L)等分する複数の仮想線のうち少なくとも1本を選択的に跨って配置されてもよい。また、仮想線を選択的に跨る蓄積容量線CSと蓄積容量線CSの傾斜方向との組合せによりN種類の蓄積容量線CSの配置パターンを構成し、表示単位内の各視点に対応するサブ画素が夫々異なる蓄積容量線CSの配置パターンを有した構成も適用することができる。
【0300】
なお、本発明は、本発明の広義の趣旨及び範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。