(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、カッターユニットが組み込まれる印刷装置の側では、印字された用紙を単純に切断(一部残しの切断も含む)する動作を求めているに過ぎないにも拘わらず、その切断動作を実現するために、例えば以下に示すカッターの基本動作を設計しなければならない。
(1)イニシャル動作(カッター刃を基準位置にセット)
(2)カット種別(パーシャルカット(一部残し)またはフルカット(切り落とし))に応じたカット動作
(3)異常時のエラー処理
そして、これら基本動作の設計を行うに際しては、カッターユニットの側で提示した仕様に適合した設計を行う必要があるが、その仕様に正確に適合させるのに手間が掛かったり、仕様の見逃し等により正確に適合した設計が行われない場合もある。
【0007】
仕様への正確な適合のための手間は、印刷装置の側の設計に過度の労力を強いるものであり、また、仕様への正確な適合が実現していない場合は、カッターユニットの動作の品質を低下させることになる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、組み込まれる先の印刷装置での制御の設計の労力を低減させるとともに、動作の品質を適切に確保することができる組み込み用のカッターユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るカッターユニットは、他の印刷装置に組み込まれるものであり、カッターユニットの基本動作を制御するカッター制御手段を独立して備えたことにより、他の印刷装置の印刷制御手段から動作指令を受けたカッター制御手段が、その動作指令の動作を実現するための、カッターユニットを構成する個々の要素の動作を制御することで、他の印刷装置からは動作指令だけを与えるだけで必要な動作を得ることができ、組み込まれる先の印刷装置での制御の設計の労力を低減させるとともに、動作の品質を適切に確保したものである。
【0010】
すなわち、本発明に係るカッターユニットは、印刷装置に組み込まれ、その印刷装置の
印刷制御手段からの動作指令を受けて用紙の切断を行うカッターユニットにおいて、カッ
ター刃と、カッター刃が基準位置にあるか否かを検出する位置センサと、カッター刃を駆
動するモーターと、モーターのドライバー回路と、カッター刃を印刷制御手段からの動作
指令に適合して動作させるように、位置センサの検出結果に基づいてドライバー回路を制
御するカッター制御手段とを備
え、前記カッター制御手段は、動作指令の入力を受けると、イニシャル動作として前記カッター刃を基準位置にセットするように前記ドライバー回路による前記モーターの駆動量を制御し、前記動作指令がパーシャルカットのときは、切断動作として前記カッター刃で用紙の一部を切り残した切断となるように前記ドライバー回路による前記モーターの駆動量を制御し、前記動作指令がフルカットのときは、切断動作として前記カッター刃で用紙を完全に切り落とした切断となるように前記ドライバー回路による前記モーターの駆動量を制御し、前記切断動作の後、前記カッター刃を前記切断動作前の位置に戻すように前記ドライバー回路による前記モーターの駆動量を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るカッターユニットによれば、組み込まれる先の印刷装置での制御の設計の労力を低減させるとともに、動作の品質を適切に確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るカッターユニットの具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る一実施形態のカッターユニット100を示す模式図であり、このカッターユニット100は、単独で使用されるものではなく、POSプリンターやキャッシュレジスター、各種発券機など他の印刷装置200に組み込まれ、その印刷装置200によって印字された用紙300を切断するために使用されるものである。
【0015】
そして、このカッターユニット100は、ケース110内に、図示下方(矢印Aの方向)に降下して用紙300(破線で示す)を切断するカッター刃120と、カッター刃120が切断前の所定の基準位置P0にあることを検出するスイッチ130(位置センサ)と、カッター刃120を駆動するモーター140およびモーター140のドライバーIC150(ドライバー回路)と、このカッターユニット100が組み込まれる印刷装置200からの動作指令を受けて、カッター刃120をその動作指令に適合して動作させるように、スイッチ130の検出結果に基づいてドライバーIC150を制御する制御IC160(カッター制御手段)とを備えている。
【0016】
カッター刃120は、用紙300の幅方向の両端部から中央部に向かって、図示上下方向の高さ位置が高くなるように傾斜して形成されていて、その中央部は、その周辺部よりも一層切れ込んだ切欠き121が形成されている。
【0017】
また、カッター刃120には切欠き121に対して左右対称の位置に幅方向に延びた矩形の孔122,123が形成されていて、一方の孔122には後述する第2ウォームホイール143の突起143aが挿入され、他方の孔123には第3ウォームホイール144の突起144aが挿入されている。
【0018】
モーター140は、ドライバーIC150によって駆動されるステッピングモーターであるが、本発明においてはステッピングモーターに限定されず、DCモーター等を適用することもできる。
【0019】
モーター140の回転軸にはウォーム141が結合され、ケース110には、ウォーム141と噛み合う第1ウォームホイール142と、第1ウォームホイール142に噛み合う第2ウォームホイール143と、第2ウォームホイール143に噛み合う第3ウォームホイール144とが回転可能に支持されている。なお、図面では、ウォームホイールを簡略化して平歯車状に記載している。
【0020】
第2ウォームホイール143と第3ウォームホイール144とは直径および歯数が同一で、かつ回転方向が互いに反対向きに設定されていて、それぞれの回転方向に沿った所定の位相位置に円柱状の突起143a,144aが形成されている。
【0021】
この第2ウォームホイール143の突起143aと、第3ウォームホイール144の突起144aは、これら2つのウォームホイール143,144が噛み合った位置から互いに反対向きの回転方向に沿って同一の位相位置に形成されている。
【0022】
第2ウォームホイール143および第3ウォームホイール144の回転に伴って両ウォームホイール143,144にそれぞれ形成された両突起143a,144aは、両ウォームホイール143,144が噛み合った位置に対して左右対称に、同期して移動する。
【0023】
そして、各突起143a,144aは、それぞれ挿入されたカッター刃120の各孔122,123の内部で幅方向に変位しつつ上下方向に変位することで、カッター刃120を下降または上昇させる。
【0024】
ここで、第2ウォームホイール143の突起143aと第3ウォームホイール144の突起144aとは、左右対称に同期して変位するため、カッター刃120は幅方向に対して傾くことなく、上下方向に真っ直ぐ下降または上昇する。
【0025】
カッター刃120が下降する以前の基準位置P0に在るときは、第3ウォームホイール144の一部に形成された爪144bがスイッチ130を機械的に押圧するように配置されていて、カッター刃120が基準位置P0よりも低い位置に移動した状態では、爪144bはスイッチ130から離れて押圧しない状態となる。
【0026】
そして、このスイッチ130は、ケース110の所定の位置に設置されていて、機械的に押圧されたときは変位してオンの電気信号を出力し、押圧されていないときはオフの電気信号を出力し、その出力は制御IC160に入力される。
【0027】
このように、カッター刃120が基準位置P0に在るときはオンの電気信号が出力され、カッター刃120が基準位置P0に無いときはオフの電気信号が出力されるため、制御IC160はスイッチ130から入力された電気信号に基づいて、カッター刃120が基準位置P0に在るか否かを判定することが可能となる。
【0028】
なお、スイッチ130は、爪144bに押圧されているときのみ電気信号を出力し、爪144bに押圧されていないときは何も電気信号を出力しないものであってもよく、このようなスイッチ130によっても、カッター刃120が基準位置P0に在るときと無いときとを、その電気信号の出力の有無で区別することができる。
【0029】
また、スイッチ130としては、爪144bによる押圧の有無を機械的に検出する本実施形態のものに限定されず、爪144bによる遮光の有無を光学的に検出するフォトインターラプターなどを適用することもできる。
【0030】
カッター刃120の下降位置として設定されている位置のうち第2位置P2は、カッター刃120が、その切欠き121を含めて、用紙300の位置よりも下方まで降下した位置であり、カッター刃120がこの第2位置P2まで下降すると、用紙300はカッター刃120によって完全に切り落とされる切断(フルカット)となる。
【0031】
一方、カッター刃120の下降位置として設定されている位置のうち第2位置P2よりも高い第1位置P1は、カッター刃120のうち切欠き121を除いて、用紙300の位置よりも下方まで降下した位置であり、カッター刃120がこの第1位置P1まで下降すると、用紙300は切欠き121に対応した部分だけが切断されずに残った切断(パーシャルカット)となる。
【0032】
制御IC160は、電気コネクター170を介して印刷装置200に接続されていて、印刷装置200による用紙300への印字が終わったタイミングで、その印刷装置200から、フルカットまたはパーシャルカットの動作指令を表す電気信号が制御IC160に入力される。
【0033】
制御IC160は、入力された動作指令を表す電気信号を受けて、カッター刃120をその動作指令に適合したカット動作をさせるように、スイッチ130からの入力信号(カッター刃120が基準位置P0に在るか否かの検出結果)に基づいてドライバーIC150を制御する。
【0034】
すなわち、
図2,3のフローチャートに示すように、制御IC160は、動作指令がパーシャルカットのときはフラグに0をセットし(S1→S3)、一方、動作指令がフルカットのときはフラグを1にセットする(S1→S2)。
【0035】
その後、制御IC160は、スイッチ130からの電気信号の入力に基づいてカッター刃120が基準位置P0に在るか否かを判定し(S4)、カッター刃120が基準位置P0に無いと判定した場合は、カッター刃120を基準位置P0にセットするように、ドライバーIC150の動作(イニシャル動作)を制御する(S5〜S12)。
【0036】
具体的には、制御IC160は、スイッチ130からオンの電気信号が入力されているか否かを判定する(S4)。制御IC160は、オンの電気信号が入力されていると判定したときは、カッター刃120が基準位置P0に在ると判定する(S13)。
【0037】
一方、制御IC160は、オフの電気信号が入力されている(または、オンの信号が入力されていない)と判定したときは、カッター刃120が基準位置P0に無いと判定し(S5)、カッター刃120を上昇させるようにドライバーIC150を制御する(S6)。
【0038】
ドライバーIC150は、制御IC160の制御によって、モーター140を
図1に示した矢印Bとは反対向きに回転させるようにモーター140を駆動し(S7)、このモーター140の回転が、ウォーム141、第1ウォームホイール142、第2ウォームホイール143、第3ウォームホイール144と伝達され、第2ウォームホイール143および第3ウォームホイール144の回転に伴って両ウォームホイール143,144にそれぞれ形成された両突起143a,144aが移動し、これら両突起143a,144aが孔122,123を上方に押し上げ、カッター刃120は上昇する(S8)。
【0039】
このカッター刃120の上昇は、第3ウォームホイール144に形成された爪144bがスイッチ130を押圧するまで継続され(S9)、スイッチ130からオンの電気信号が制御IC160に入力されたとき、制御IC160はカッター刃120が基準位置P0に在ると判定し(S10)、ドライバーIC150を制御して(S11)、モーター140を停止させる(S12)。
【0040】
以上の処理が、制御IC160によるイニシャル動作の制御(S4→S5〜S12、S4→S13)である。
【0041】
イニシャル動作の制御が終わった後、制御IC160は、印刷装置200からの動作指令がフルカットである場合(ステップ2(S2)でフラグに1がセットされている場合)、カッター刃120を基準位置P0から下降させて位置P2で停止させるように、ドライバーIC150を制御する(S14→S15)。
【0042】
ドライバーIC150は、制御IC160の制御にしたがって、基準位置P0から位置P2までの高さに対応したモーター140の回転数を得るのに必要なステップ数X2をモーターに与え、モーター140はその与えられたステップ数X2に対応した回転数だけ矢印Bの向きに回転した後、停止する(S16)。
【0043】
なお、モーター140の回転は、ウォーム141、第1ウォームホイール142、第2ウォームホイール143、第3ウォームホイール144と伝達され、第2ウォームホイール143の突起143aと第3ウォームホイール144の突起144aとがそれぞれカッター刃120の孔122,123を下方に押し下げ、カッター刃120は位置P2まで下降して停止し(S17)、これにより、用紙300はフルカットされる。
【0044】
ここで、モーター140の矢印B方向への回転により、第3ウォームホイール144の爪144bがスイッチ130から離れ、スイッチ130から制御IC160にオフの電気信号が出力される(オンの電気信号の出力が停止する)。
【0045】
その後、制御IC160は、カッター刃120を基準位置P0までに上昇させるようにドライバーIC150を制御する(S18)。
【0046】
ドライバーIC150は、制御IC160の制御にしたがって、位置P2から基準位置P0までの高さに対応したモーター140の回転数を得るのに必要なステップ数X2をモーターに与え、モーター140はその与えられたステップ数X2に対応した回転数だけ矢印Bと反対向きに回転した後、停止し(S19)、カッター刃120は基準位置P0まで上昇して停止し(S20)、印刷装置200からのフルカットの動作指令に対応した処理を終了する。
【0047】
一方、印刷装置200からの動作指令がパーシャルカットである場合(ステップ2(S2)でフラグに0がセットされている場合)、制御IC160は、カッター刃120を基準位置P0から下降させて位置P1で停止させるように、ドライバーIC150を制御する(S14→S21)。
【0048】
ドライバーIC150は、制御IC160の制御にしたがって、基準位置P0から位置P1までの高さに対応したモーター140の回転数を得るのに必要なステップ数X1をモーターに与え、モーター140はその与えられたステップ数X1に対応した回転数だけ矢印Bの向きに回転した後、停止する(S22)。
【0049】
なお、モーター140の回転は、ウォーム141、第1ウォームホイール142、第2ウォームホイール143、第3ウォームホイール144と伝達され、第2ウォームホイール143の突起143aと第3ウォームホイール144の突起144aとがそれぞれカッター刃120の孔122,123を下方に押し下げ、カッター刃120は位置P1まで下降して停止し(S23)、これにより、用紙300はカッター刃120の切欠き121に対応した部分だけ切り残した切断(パーシャルカット)とされる。
【0050】
ここで、モーター140の矢印B方向への回転により、第3ウォームホイール144の爪144bがスイッチ130から離れ、スイッチ130から制御IC160にオフの電気信号が出力される(オンの電気信号の出力が停止する)。
【0051】
その後、制御IC160は、カッター刃120を基準位置P0までに上昇させるようにドライバーIC150を制御する(S24)。
【0052】
ドライバーIC150は、制御IC160の制御にしたがって、位置P1から基準位置P0までの高さに対応したモーター140の回転数を得るのに必要なステップ数X1をモーターに与え、モーター140はその与えられたステップ数X1に対応した回転数だけ矢印Bと反対向きに回転した後、停止し(S25)、カッター刃120は基準位置P0まで上昇して停止し(S26)、印刷装置200からのパーシャルカットの動作指令に対応した処理を終了する。
【0053】
以上のように構成された本実施形態のカッターユニット100によれば、このカッターユニット100が組み込まれる印刷装置200からの動作指令(フルカットまたはパーシャルカットの指令)を受けた制御IC160は、カッター刃120が基準位置P0にあるか否かを検出するスイッチ130の検出結果に基づいて、カッター刃120が、その入力された動作指令に適合した動作を行うように、ドライバーIC150を制御してモーター140を駆動させるため、その組み込み先の印刷装置200からは、フルカットまたはパーシャルカットの動作指令だけを与えるだけでよく、その印刷装置200の側で、その動作指令に適合するモーター140等の動作を実現するための個別の処理の組み合わせ(例えば、
図2,3に示したフローチャートに対応する処理)を行う設計や組込みを行う必要がなく、印刷装置200の側での制御の設計等の労力を低減させるとともに、カッターユニット100の側で制御の設計、組込みを行うため、カッターユニット100の仕様に適した制御を行うことができ、カッターユニット100の動作の品質を適切に確保することができる。
【0054】
また、制御IC160は、印刷装置200からパーシャルカットまたはフルカットの動作指令の入力を受けただけで、カッター刃120を基準位置P0にセットするようにドライバーIC150の動作を制御し、カッター刃120を基準位置P0にセットする動作の後、動作指令として入力されたのがパーシャルカットのときは、カッター刃120で切断の対象となる用紙300の一部を切り残した切断(パーシャルカット)となるようにドライバーIC150によるモーター140の駆動量を制御(モーター140に与えるステップ数をX1とするように制御)し、動作指令として入力されたのがフルカットのときは、用紙300を完全に切り落とした切断(フルカット)となるようにドライバーIC150によるモーター140の駆動量を制御(モーター140に与えるステップ数をX2とするように制御)し、ドライバーIC150に対する制御による用紙300の切断動作の後、カッター刃120を切断動作前の基準位置P0に戻すように、ドライバーIC150によるモーター140の駆動量を制御するため、カッターユニット100の機構や特性(モーターの回転制御の特性やスイッチのチャタリングによる誤動作の防止策等)を熟知していなくても、印刷装置200の側からは動作指令の信号だけを電気コネクター170を介して入力するだけで、上述したイニシャル動作(カッター刃120を基準位置P0にセット)やカット種別(パーシャルカット(一部残し)またはフルカット(切り落とし))に応じたカット動作の各制御を得ることができ、印刷装置200の側では、このカッターユニット100を印刷装置200に組み込んで容易に使用することができる。
【0055】
なお、上述したイニシャル動作やカット種別に応じたカット動作の制御の他に、制御IC160には、カッターユニット100の動作が不安定になったり、正常な動作が行われなかった場合など異常時におけるエラー処理(モーター140の強制停止や、カッター刃120の基準位置P0への強制移動等)の制御も組み込まれていてもよい。
【0056】
このように、制御IC160にエラー処理の制御が組み込まれたものでは、印刷装置200からエラー処理の実行指令の入力を受けて、制御IC160が、その組み込まれているエラー処理の制御を実効するため、印刷装置200の側で、複雑なエラー処理の制御を設計したり、組み込む必要がない。
【0057】
また、制御IC160としては、マイクロコンピューターやFPGA(製造後に購入者や設計者が構成を設定できる集積回路:Field-Programmable Gate Array)、専用ICチップまたはASIC(特定の用途向けに複数機能の回路を1つにまとめた集積回路:Application Specific Integrated Circuit)などを適用することができる。
【0058】
以上、本実施形態ではギロチン方式のカッターユニットを例にして説明を行ったが、カッターユニットの方式はこれに限定されるわけではなく、鋏式のカッターユニットやピザカッター方式のカッターユニットにも同様に適用できることは言うまでもない。