(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の第一実施形態における水栓の模式斜視図である。
図1に示すように本発明の第一実施形態における水栓10は、吐水温度、吐止水ならびに吐水量の調整を単一の操作レバー102で操作するいわゆるシングルレバー混合栓であって、その構成は、主としてシングルレバー混合栓を構成する水栓本体101と、前記水栓本体より上方に起立するとともに斜め上方に傾斜したスパウト103と、スパウト103に接続された吐水部104で構成されている。
【0013】
水栓本体101は、給水給湯設備に接続され、シングルバルブを内蔵している。
【0014】
スパウト103は水栓本体101に回転自在に取付けられ、水栓本体101より上方に起立するとともに斜め上方に傾斜している。スパウト103の内部は空洞状になっており、内部は通水可能となっている。
【0015】
吐水部104はスパウト103と同軸に、傾斜角度を保った状態で取付けられており、内部は通水可能となっている。
【0016】
図2は、本発明の第一実施形態による水栓のシステムキッチンへの設置状態を例示した模式斜視図である。システムキッチン30は、シンク301と、カウンター302を備えている。また、システムキッチン30には、カウンター302の左側方および右側方の少なくともいずれかに延在する調理台(図示せず)を備えていてもよい。
【0017】
水栓10は、使用者から見てシンク301の奥側、すなわちシステムキッチン30の後方で、かつカウンター上面303に設置されている。水栓10の水栓本体101、すなわちカウンター302に取り付けられている近傍の部分は、カウンター上面303に対して垂直になるように設けられている。そして、所定の寸法よりも上方に位置するスパウト103は、カウンター上面303に対して傾斜して設けられている。この場合、傾斜角度θは、例えば、カウンター上面303に対して40°程度とすることができる。傾斜したスパウト103に吐水部104が同軸に、傾斜角度を保った状態で接続されており、吐水部には、シンク301に向かってシャワー吐水口105が設けられている。すなわち、シャワー吐水口105はカウンター上面303に対して40度程度傾斜し、かつシンクに向かって設けられている。そのため、シャワー吐水口105からシンク301にカウンター上面303に対して傾斜した方向に吐水流を放出する。また、シャワー吐水口105の下方には、水伝い防止突起106が、シンク301の上方に位置するよう設けられている。そのため、シャワー吐水口105から少量を吐水させたときに吐水部104の表面を流れ落ちる水流(水伝い)を水伝い防止突起106からシンク301に伝い落とすことができ、水栓本体101に水伝いが起こることを防止することができる。
【0018】
図3は、本発明の第一実施形態による水栓の吐水部を例示するための模式図、
図4は本発明の第一実施形態による水栓の吐水部の側断面図である。
吐水部104は孔径の小さい複数の散水孔110が形成されたシャワー吐水口105と、シャワー吐水口105の下方に、水伝い防止突起106、シャワー吐水口105と水伝い防止突起106の間の吐水部104の表面には水膜形成防止部107を備えている。吐水部104の内部は空洞状になっており、スパウト103から供給された水をシャワー吐水口105に導く通水路108を構成している。
【0019】
図1乃至4に示す水栓10においては、シャワー吐水口105の下部に、吐水部104の表面に対して略垂直方向に突出した水伝い防止突起106を設けている。水伝い防止突起106は、吐水部と一体で設けられている。水伝い防止突起の下面106aはシャワーの吐水方向に突出して延びており、吐水部104をスパウト103に接続した状態では、水平面に対して、水伝い防止突起の先端106bが重力方向側を向くように傾斜している。このため、少量の水を吐水させたとき吐水部表面を伝っていく水は先端106bから流れ落ち、先端106bより下方の水伝いが防止できる。
【0020】
図1乃至4に示す水栓10においては、シャワー吐水口105と水伝い防止突起106の間に水膜形成防止部107を設けている。本発明の第一実施形態による水栓の水膜形成防止部107は、吐水部104の表面の一部を凸状に盛り上げた突出部107aであり、突出部107aの突出高さH107aは前記水伝い防止突起106の突出高さH106よりも低い。
【0021】
図5(a)乃至(d)は水栓10において吐水を開始した際や流量調整などで少量の水が吐水されているときから、吐水量が増加し、水流900が散水孔106から正しく吐水されたときの方向に変位するまでの吐水状態を示す模式図である。
図5(a)は、水栓10において吐水を開始した際や流量調整などで少量の水が吐水されている状態、
図5(d)は吐水量が増加し水流900が散水孔106から正しく吐水された状態、
図5(b)、
図5(c)はその変位過程を示し、吐水量は
図5(a)<
図5(b)<
図5(c)<
図5(d)である。水栓10において、吐水を開始した際や流量調整などで少量の水が吐水されているとき、水流900は水膜形成防止部107の表面をなぞるように通過し水伝い防止突起106から伝い落ちる状態となる(
図5(a))。そこから吐水量を増加させていくと、吐水部表面を伝い落ちる水流900の流量が増すとともに、水流900が水膜形成防止部107を乗り越える際に、水膜形成防止部107の突出部107aの下流には吐水部表面から離れる向きの流れ901が発生する(
図5(b))。吐水量が増えるにしたがって、水流900は散水孔110から正しく吐水されたときの方向に徐々に変位する。一方で吐水部表面から離れる向きの流れ901も強くなり、その働きが吐水部表面104aの表面張力よりも大きくなると水流900は吐水口表面104aから引き剥がされ(
図5(c))、さらに流量が増加すると水流900は散水孔110から正しく吐水されたときの方向に完全に変位する(
図5(d))。ここでは水膜形成防止部107を設けない場合に、吐水を開始した際や流量調整などで吐水量を増加させた際に発生する、散水孔と、水伝い防止突起の根元と、水伝い防止突起の先端と、を頂点とした略三角形状の水膜が形成されず、つまり水膜の形成を防止でき、散水孔からの吐水が水伝い防止突起の方に引っ張られて、水栓本体側に向けて意図しない吐水が起こり、水栓本体やその周囲を濡らしてしまうことを防止することができる。
【0022】
図5(e)は、
図5(c)の状態から
図5(d)の状態に変位する過程で、水伝い防止突起で起こる現象と同様に散水孔からの吐水が水膜形成防止部である突起に引っ張られた状態の模式図である。この場合、散水孔110から水伝い防止突起106の先端に向かう仮想線よりも、水膜形成防止部である突出部107aの突出高さH107aの方が低いため、水膜形成防止部107に引っ張られた吐水は水伝い防止突起106に衝突し、水伝い防止突起106から伝い落ちる状態となる。これにより、水伝い防止突起で起こる現象と同様に散水孔からの吐水が水膜形成防止部である突起に引っ張られた場合でも、水栓本体やその周囲を濡らしてしまうことを防ぐことができる。
【0023】
図6は、本発明の第二実施形態による水栓の吐水部を例示するための模式図、
図7は本発明の第二実施形態による水栓の吐水部の側断面図である。
図6、
図7に示すように本発明の第二実施形態における水栓20は、第一実施形態と異なり、水膜形成防止部をシャワー吐水口105と水伝い防止突起106の間の表面の一部を凹状にへこませた陥没部107bとしている。
【0024】
図8(a)乃至(d)は水栓20において吐水を開始した際や流量調整などで少量の水が吐水されているときから、吐水量が増加し、水流900が散水孔110から正しく吐水されたときの方向に変位するまでの状態を示す模式図である。
図8(a)は、水栓20において吐水を開始した際や流量調整などで少量の水が吐水されている状態、
図8(d)は吐水量が増加し水流900が散水孔110から正しく吐水された状態、
図8(b)、
図8(c)はその変位過程を示し、吐水量は
図8(a)<
図8(b)<
図8(c)<
図8(d)である。水栓20において、吐水を開始した際や流量調整などで少量の水が吐水されているとき、水流900は水膜形成防止部である陥没部107bの表面をなぞるように通過し水伝い防止突起106から伝い落ちる状態となる(
図8(a))。そこから吐水量を増加させていき、吐水部表面を伝い落ちる水流900の流量が増し、水流900の厚みが増して行くと、水膜形成防止部である陥没部107bを経由せず、通過する流れ902が生じる。水流902は陥没部107bの表面に対して離れる方向となる。(
図8(b))。吐水量が増えるにしたがって、陥没部107bを通過する流れ902も強くなり、その働きが陥没部107bの表面張力よりも大きくなると水流900は陥没部107bから引き剥がされ(
図8(c))、さらに流量が増加すると水流900は散水孔110から正しく吐水されたときの方向に変位する(
図8(d))。この場合にも、水膜形成防止部107を設けない場合に、吐水を開始した際や流量調整などで吐水量を増加させた際に発生する、散水孔と、水伝い防止突起の根元と、水伝い防止突起の先端と、を頂点とした略三角形状の水膜が形成されず、つまり水膜の形成を防止でき、散水孔からの吐水が水伝い防止突起の方に引っ張られて、水栓本体側に向けて意図しない吐水が起こり、水栓本体やその周囲を濡らしてしまうことを防止することができる。
また、水栓20においては、水膜形成防止部が陥没部であるため、散水孔からの吐水が水膜形成防止部に引っ張られることがない。
【0025】
図9は、シャワー吐水口、水だれ防止突起、水膜形成防止部を別体で構成した場合の吐水口の模式図である。このように、シャワー吐水口405、水だれ防止突起406、水膜形成防止部407を別体で構成しても良いが、この場合、それぞれの部品間の隙間に汚れが溜まるなど不衛生となる可能性がある。一方、
図1乃至8に示す水栓10および水栓20ではシャワー吐水口、水だれ防止突起、水膜形成防止部を一体で構成しているため、部品点数が少なくなり、水膜形成防止部、水伝い防止突起を安価で形成でき、また、別体で構成した場合に生じる部品間の隙間等をなくすことができ、衛生的にこれらを構成することができる。
【0026】
なお、水栓の形状は例示したものに限定されるわけではなく、少なくともシャワー吐水口がカウンター上面(シンクの底面)に対して傾斜した形状であればよい。散水孔の配列や数も適宜変更することができる。水伝い防止突起の形状も例示したような吐水部表面に対して略垂直方向に突出した形状に限らず、すくなくとも散水板から突出した形状であれば別の形状でもよく、例えば
図10のように吐水部に対して斜め下方に突出した形状でもよい。また、シャワー吐水口も
図1乃至8に示すように吐水部と一体としても、
図11に示すようにシャワー吐水口を吐水部と別体に構成しても良い。