(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777034
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】揺動形アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F15B 15/12 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
F15B15/12 J
F15B15/12 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-16078(P2013-16078)
(22)【出願日】2013年1月30日
(65)【公開番号】特開2014-145470(P2014-145470A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2014年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072453
【弁理士】
【氏名又は名称】林 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】石川 慎太郎
【審査官】
北村 一
(56)【参考文献】
【文献】
実開平05−058905(JP,U)
【文献】
実開平03−044209(JP,U)
【文献】
特開平04−039404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/12;15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気の作用でシャフトが軸線を中心に一定の角度範囲揺動回転するように構成されたアクチュエータ本体と、該アクチュエータ本体を負荷装置に固定するための固定プレートとを有し、
前記アクチュエータ本体と固定プレートとは、連結機構により互いの位置を前記シャフトの回転方向に相対的に変更可能なるように連結されていて、互いの位置の変更により前記シャフトの揺動起点位置が変更可能である、
ことを特徴とする揺動形アクチュエータ。
【請求項2】
前記固定プレートは、前記アクチュエータ本体の前記シャフトが突出するプレート取付面に連結され、
前記連結機構は、前記アクチュエータ本体の前記プレート取付面に前記軸線を中心にして円周方向に所定の間隔で配設された複数の螺子孔と、前記固定プレートに前記軸線を中心にして円周方向に所定の間隔で配設された複数の螺子挿通孔と、該螺子挿通孔に挿通されて前記螺子孔に螺着される前記螺子挿通孔と同数の連結螺子とからなっていて、前記螺子孔の数は前記螺子挿通孔及び連結螺子の数の整数倍である、
ことを特徴とする請求項1に記載の揺動形アクチュエータ。
【請求項3】
前記螺子孔は、前記軸線に対して対称位置を占める2つの螺子孔を一対として複数対形成され、前記螺子挿通孔は、前記軸線に対して対称をなす位置に2つ形成され、前記連結螺子の数は2つであることを特徴とする請求項2に記載の揺動形アクチュエータ。
【請求項4】
前記固定プレートは、前記負荷装置に固定するための固定螺子が挿通される複数の固定孔を有し、該固定孔は、前記固定プレートを前記軸線と平行に貫通する縦固定孔と、前記固定プレートを前記軸線と直角に貫通する横固定孔とを有することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の揺動形アクチュエータ。
【請求項5】
2つの前記横固定孔が、前記シャフトと前記2つの螺子挿通孔とを挟む位置に互いに平行をなすように形成されていることを特徴とする請求項4に記載の揺動形アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気の作用でシャフトが軸線を中心に一定の角度範囲揺動回転するように構成された揺動形アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の揺動形アクチュエータとして、例えば特許文献1に開示されているように、ベーン形揺動形アクチュエータが従来より良く知られている。このベーン形揺動形アクチュエータは、円筒形をしたボディの内部に、シャフトに取り付けられたベーンと、該ベーンの揺動角度範囲を決める固定壁とを配設し、ポートから圧縮空気を前記ベーンの両側の圧力室に交互に給排することにより、該ベーンを揺動回転させてその揺動運動を前記シャフトから出力し、該シャフトでロボットハンドや搬送テーブル等の負荷を所定の角度揺動回転させるものである。
【0003】
前記揺動形アクチュエータは、前記負荷を有する装置(負荷装置)に螺子等によって一定の向きに固定され、前記シャフトを前記負荷に連結した状態で使用されるが、負荷装置によっては、前記揺動形アクチュエータを取り付けたときシャフトの揺動起点位置が負荷の揺動起点位置と合わない場合や、異なる作業工程を行う際に負荷の揺動起点位置を変更しなければならない場合などがあり、このような場合には、前記揺動形アクチュエータのシャフトの揺動起点位置を負荷の揺動起点位置に合わせて調整できるようにしておくことが望ましい。
【0004】
そのためには、例えば、負荷装置に対する揺動形アクチュエータの取付姿勢をシャフトの回転方向に変更できるようにしておけば良いが、その変更を簡単に実現できる技術方案はこれまで提案されていない。しかも、前記負荷装置自体を揺動形アクチュエータの取付姿勢の変更が可能であるように構成するのは、構造の複雑化や高コスト化等を招くことになるため好ましいことではなく、揺動形アクチュエータ側でシャフトの揺動起点位置を変更できるようにすることが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭60−192286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の技術的課題は、シャフトの揺動起点位置を簡単に変更することができる合理的設計構造を備えた揺動形アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明によれば、圧縮空気の作用でシャフトが軸線を中心に一定の角度範囲揺動回転するように構成されたアクチュエータ本体と、該アクチュエータ本体を負荷装置に固定するための固定プレートとを有し、前記アクチュエータ本体と固定プレートとは、連結機構により互いの位置を前記シャフトの回転方向に相対的に変更可能なるように連結されていて、互いの位置の変更により前記シャフトの揺動起点位置が変更可能であることを特徴とする揺動形アクチュエータが提供される。
【0008】
本発明において、前記固定プレートは、前記アクチュエータ本体の前記シャフトが突出するプレート取付面に連結され、前記連結機構は、前記アクチュエータ本体の前記プレート取付面に前記軸線を中心にして円周方向に所定の間隔で配設された複数の螺子孔と、前記固定プレートに前記軸線を中心にして円周方向に所定の間隔で配設された複数の螺子挿通孔と、該螺子挿通孔に挿通されて前記螺子孔に螺着される前記螺子挿通孔と同数の連結螺子とからなっていて、前記螺子孔の数は前記螺子挿通孔及び連結螺子の数の整数倍である。
本発明において好ましくは、前記螺子孔が、前記軸線に対して対称位置を占める2つの螺子孔を一対として複数対形成され、前記螺子挿通孔は、前記軸線に対して対称をなす位置に2つ形成され、前記連結螺子の数は2つである。
【0009】
また、本発明において、前記固定プレートは、前記負荷装置に固定するための固定螺子が挿通される複数の固定孔を有し、該固定孔は、前記固定プレートを前記軸線と平行に貫通する縦固定孔と、前記固定プレートを前記軸線と直角に貫通する横固定孔とを有することが望ましい。
この場合に、2つの前記横固定孔が、前記シャフトと前記2つの螺子挿通孔とを挟む位置に互いに平行をなすように形成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、固定プレートに対するアクチュエータ本体の連結位置をシャフトの回転方向に変更することにより、前記シャフトの揺動起点位置を簡単に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る揺動形アクチュエータの使用状態を示す側面図である。
【
図2】
図1の揺動形アクチュエータの斜視図である。
【
図3】アクチュエータ本体と固定プレートとを分離して示す斜視図である。
【
図4】(a)−(h)は、
図1−3に示す揺動形アクチュエータのシャフトの揺動起点位置を変更した状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明に係る揺動形アクチュエータの使用態様の一例を示す側面図である。この揺動形アクチュエータ1は、
図2及び
図3からも明らかなように、圧縮空気の作用でシャフト4が該シャフト4の軸線Lを中心に一定の角度範囲揺動回転するように構成されたアクチュエータ本体2と、該アクチュエータ本体2を負荷装置30に取り付けるための固定プレート3とを、連結機構5で相互に連結したもので、前記固定プレート3を負荷装置30に固定螺子6で固定し、前記シャフト4にロボットハンドや搬送テーブル等の負荷31を連結し、該負荷31を前記シャフト4で所定の角度揺動回転させるものである。
【0013】
前記アクチュエータ本体2は、ベーン形揺動形アクチュエータとしての構成を有するもので、円筒形をしたボディ7の内部に、前記シャフト4に取り付けられたベーン(不図示)と、該ベーンの揺動角度範囲を決める固定壁(不図示)とを配設し、前記ベーンの両側の圧力室にポート8a,8bを通じて圧縮空気を交互に給排することにより、該ベーンを揺動回転させてその揺動運動を前記シャフト4から出力するものである。
【0014】
図示したアクチュエータ本体2は、
図4に示すように、前記シャフト4が90度の角度範囲を揺動回転するように構成されており、該角度範囲の一端側が揺動起点位置A、他端側が揺動終点位置Bであり、前記シャフト4の側面に形成された平坦面4aが前記揺動起点位置Aを向いている。従って、この平坦面4aによって前記揺動起点位置Aの向きを知ることができる。しかし、前記シャフト4の揺動角度範囲は90度以上であっても90度以下であっても良い。
【0015】
なお、前記ベーン形揺動形アクチュエータの内部構造は既に公知であって、本実施形態のアクチュエータ本体2も公知の内部構造を備えており、しかもこの内部構造自体は本発明の要旨と直接関係がないので、該アクチュエータ本体2の内部構造に関するこれ以上の具体的な説明は省略する。
【0016】
前記アクチュエータ本体2のボディ7の側面には、平らな接続ポート面10aを有するポート形成部10が設けられ、該ポート形成部10の接続ポート面10aに前記ポート8a,8bが開口している。また、前記ボディ7の軸線L方向の一端面は、前記固定プレート3を取り付けるための円形のプレート取付面11であり、該プレート取付面11の中央から前記シャフト4が外部に突出している。
【0017】
一方、前記固定プレート3は、平面視正方形状をした部材であって、1辺の長さが前記アクチュエータ本体2の直径と同等以上に形成され、該固定プレート3の中央にはシャフト導出孔12が形成され、該シャフト導出孔12から前記シャフト4が外部に導出されている。
【0018】
前記アクチュエータ本体2と固定プレート3とを連結する前記連結機構5は、前記アクチュエータ本体2のプレート取付面11に形成された複数対の螺子孔13a,13bと、前記固定プレート3に形成された2つの螺子挿通孔14a,14bと、該螺子挿通孔14a,14bに挿通されて前記複数対の螺子孔13a,13bのうちの何れか一対の螺子孔に選択的に螺着可能な2つの連結螺子15a,15bとで構成されている。
【0019】
前記プレート取付面11に形成された前記複数対の螺子孔13a,13bは、前記シャフト4の軸線Lに対して対称位置を占める2つの螺子孔を一対とするもので、図では4対の螺子孔13a1,13b1/13a2,13b2/13a3,13b3/13a4,13b4が、前記シャフト4の回転方向の異なる位置に所定の角度間隔を保って配置されている。
【0020】
一方、前記固定プレート3に形成された前記2つの螺子挿通孔14a,14bは、該固定プレート3の相対する1対の側辺の中央部に、前記シャフト4の軸線Lに対して対称位置を占めるように配置され、該螺子挿通孔14a,14bの位置には、前記連結螺子15a,15bの頭部が全体として嵌合する深さの座繰り部16が形成されている。
【0021】
そして、前記螺子挿通孔14a,14bに連結螺子15a,15bを挿通し、該連結螺子15a,15bの先端を前記複数対の螺子孔13a,13bの中の何れか一対の螺子孔13a1,13b1/13a2,13b2/13a3,13b3/13a4,13b4に螺着することにより、前記固定プレート3が前記アクチュエータ本体2のプレート取付面11に連結されている。
【0022】
また、前記固定プレート3には、該固定プレート3を前記負荷装置30に螺子で固定するための複数の固定孔が形成されている。該固定孔は、前記固定プレート3を前記軸線Lと平行に貫通する4つの縦固定孔18a,18b/19a,19bと、前記固定プレート3を前記軸線Lと直角に貫通する2つの横固定孔20a,20bとを有し、前記縦固定孔18a,18b/19a,19bは、前記固定プレート3の各コーナー部に該固定プレート3の上下面に開口するように形成され、前記横固定孔20a,20bは、前記シャフト4と2つの前記螺子挿通孔14a,14bとを挟む位置に、該固定プレート3の左右両側面に開口するように互いに平行に形成されている。図示の例では、前記横固定孔20a,20bに挿通した前記固定螺子6によって該固定プレート3が前記負荷装置30に固定されている。
【0023】
しかし、前記固定プレート3は、負荷装置30の構造や形態等に応じ、前記縦固定孔18a,18b/19a,19bを用いて該負荷装置30に固定することもできる。この場合、固定プレート3の対角方向に位置する2対の縦固定孔18a,18b/19a,19bのうち何れか1対の縦固定孔18a,18b又は19a,19bが使用されるが、2対の縦固定孔18a,18b/19a,19bを使用しても良い。
【0024】
なお、図示した例において、前記4つの縦固定孔18a,18b/19a,19bのうち、一方の対角位置にある一対の縦固定孔18a,18b同士、及び他方の対角位置にある一対の縦固定孔19a,19b同士は、互いに同じ大きさに形成され、前記縦固定孔18a,18bと縦固定孔19a,19bとは互いに異なる大きさに形成されているが、4つの縦固定孔18a,18b/19a,19bを全て同じ大きさに形成しても良い。
【0025】
前記構成を有する揺動形アクチュエータ1において、前記負荷31即ちシャフト4の揺動起点位置Aを変更する必要があるときは、前記アクチュエータ本体2と固定プレート3との連結位置をシャフト4の回転方向に相対的に変更することにより、前記揺動起点位置Aを変更することができる。その変更作業は、前記2つの連結螺子15a,15bを螺子孔13a,13bから外し、前記固定プレート3に対してアクチュエータ本体2を軸線Lを中心に必要な方向に必要な角度回転させ、前記連結螺子15a,15bを他の一対の螺子孔13a,13bに螺着することにより行う。これによって前記揺動起点位置Aが、選択された螺子孔13a,13bに対応する位置に変更される。
【0026】
前記変更作業は、前記揺動形アクチュエータ1を負荷装置30に取り付けたまま行っても、負荷装置30から取り外して行っても良く、あるいは、前記揺動形アクチュエータ1を最初に負荷装置30に取り付ける前に行うこともできる。
【0027】
図示の実施形態では、4対の螺子孔13a1,13b1/13a2,13b2/13a3,13b3/13a4,13b4が形成されているため、
図4(a)−(h)に示すように、前記2つの連結螺子15a,15bを前記4対の螺子孔13a1,13b1/13a2,13b2/13a3,13b3/13a4,13b4に螺着するときの組み合わせは全部で8通りあり、従って、前記揺動起点位置Aを8通りに変更することができる。
【0028】
しかし、前記螺子孔13a,13bは3対以下であっても5対以上であっても良く、要するに、前記螺子挿通孔14a,14b及び連結螺子15a,15bの数の整数倍の数の螺子孔13a,13bが形成されていれば良いことになる。その場合、前記揺動起点位置Aを変更できる数は、前記螺子孔13a,13bの対数に応じて異なることになる。
また、前記螺子孔13a,13bを複数対設ける場合、該複数対の螺子孔を、前記軸線Lを中心にして円周方向に全て等間隔で配設することもできる。
【0029】
前記螺子孔13a,13bは、必ずしも図示した実施例のように軸線Lに対して対称位置を占めるものを一対として複数対設ける必要はなく、複数の螺子孔を、前記アクチュエータ本体2のプレート取付面11上の前記軸線Lに対して非対称となる位置に、該軸線Lを中心にして円周方向に所定の間隔を保って設けても良い。例えば、3つの螺子孔を、前記軸線Lを中心にして円周方向に120度間隔で設けても良く、あるいは、該3つの螺子孔を一組とする複数組の螺子孔を、前記軸線Lを中心にして円周方向の異なる位置に配設しても良い。この場合、前記固定プレート3には、3つの螺子挿通孔が、軸線Lを中心にして円周方向に120度間隔で設けられ、連結螺子の数も3つということになる。
【0030】
なお、図示した例では、前記アクチュエータ本体2のボディ7が円筒形をしているが、該ボディ7は四角形やその他の角柱状をしていても良い。
また、前記固定プレートの平面視形状は、長方形であっても、矩形以外の多角形(例えば三角形、五角形、六角形等)であっても良く、あるいは円形であっても構わない。
【0031】
更に、前記アクチュエータ本体2はベーン形揺動形アクチュエータとして構成されているが、該アクチュエータ本体2は、ラックピニオン形揺動形アクチュエータであっても良い。このラックピニオン形揺動形アクチュエータは、ボディの内部にピストンとラック・ピニオン機構とを収容し、前記ピストンで得られた直線推力を前記ラック・ピニオン機構で回転トルクに変換し、前記ボディから突出するシャフトを通じて出力するもので、その構造自体は公知である。
【符号の説明】
【0032】
1 揺動形アクチュエータ
2 アクチュエータ本体
3 固定プレート
4 シャフト
5 連結機構
6 固定螺子
11 プレート取付面
13a,13b 螺子孔
14a,14b 螺子挿通孔
15a,15b 連結螺子
18a,18b,19a,19b 縦固定孔
20a,20b 横固定孔
L 軸線
A 揺動起点位置