特許第5777035号(P5777035)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5777035二重環縫いミシンの糸切り装置及び糸切り方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777035
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】二重環縫いミシンの糸切り装置及び糸切り方法
(51)【国際特許分類】
   D05B 65/02 20060101AFI20150820BHJP
   D05B 65/06 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   D05B65/02 E
   D05B65/06 B
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-174987(P2013-174987)
(22)【出願日】2013年8月8日
(65)【公開番号】特開2015-33564(P2015-33564A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2014年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114868
【氏名又は名称】ヤマトミシン製造株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林田 高幸
【審査官】 笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−106457(JP,A)
【文献】 特開2010−188106(JP,A)
【文献】 特開2006−75552(JP,A)
【文献】 特開2013−6009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 1/00 〜 97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針糸を保持して上下に往復運動する針と、ルーパ糸を保持して前記針の上下往複運動経路に略直交する方向に進退動作可能で、進出動作時に前記針が針板下に形成する針糸ループを捕捉するルーパと、前記針板における針落ち位置の一側寄り外部位置と前記針落ち位置の前記一側寄り外部位置とは反対の他側寄り外部位置との間に亘って往復駆動移動可能で、前記針糸ループを前記ルーパが保持するルーパ糸でルーピングして縫製生地に二重環縫い縫目を形成する所定の縫製動作終了後に前記縫製生地の裏面側に突出する針糸部及びルーパ糸部を切断する糸切断用の可動メスと、を備えている二重環縫いミシンの糸切り装置であって、
前記可動メスには、該可動メスが前記針落ち位置の一側寄り外部位置から前記他側寄り外部位置に向けて往行駆動移動される時に、前記縫製生地の裏面側に突出する針糸部を前記針落ち位置又は針落ち位置付近において押し切り切断する刃部が形成されていると共に、
該可動メスが前記針落ち位置の他側寄り外部位置から前記一側寄り外部位置に向けて復行駆動移動される時に、前記縫製生地の裏面側に突出するルーパ糸部を引掛けて捕捉するルーパ糸捕捉部が形成されており、
前記ルーパ糸捕捉部に捕捉された前記ルーパ糸部を前記針落ち位置の一側寄り外部位置よりも他側寄り位置において該ルーパ糸捕捉部との摺接により切断する固定メス及び前記可動メスの下部に配置され、前記ルーパ糸捕捉部と前記固定メスとの摺接により切断されたルーパ糸の端部を前記可動メスとの間に弾性的に挟み保持するルーパ糸挟み部材とを備え、
前記固定メス及びルーパ糸挟み部材は、それらの先端部が前記針の上下往複運動経路内に入らない範囲で前記針落ち位置に最も接近して位置するように構成されていることを特徴とする二重環縫いミシンの糸切り装置。
【請求項2】
前記可動メスの針糸切断用刃部は、該刃部の先端縁が可動メスの板厚方向の上面側に位置するように形成されている請求項1に記載の二重環縫いミシンの糸切り装置。
【請求項3】
前記可動メスによる前記針糸部の押し切り切断時に、前記針板の上方部において針糸を押さえ保持する針糸押え装置を更に備えている請求項1又は2に記載の二重環縫いミシンの糸切り装置。
【請求項4】
所定の縫製動作終了前の少なくとも1針分の縫製動作時における前記縫製生地の送り量を、それよりも前の縫製動作時における前記縫製生地の送り量よりも小さくする縫製生地送り量制御部を更に備えている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の二重環縫いミシンの糸切り装置。
【請求項5】
前記針は、縫製進行方向に直交する方向に沿って複数本が並設されており、前記固定メスは、複数本の針のうち、前記針落ち位置の一側寄り外部位置に最も近い針に接近した前記他側寄り位置に配置されている請求項1に記載の二重環縫いミシンの糸切り装置。
【請求項6】
針糸を保持して上下に往復運動する針と、ルーパ糸を保持して前記針の上下往複運動経路に略直交する方向に進退動作可能で、進出動作時に前記針が針板下に形成する針糸ループを捕捉するルーパと、前記針板における針落ち位置の一側寄り外部位置と前記針落ち位置の前記一側寄り外部位置とは反対の他側寄り外部位置との間に亘って往復駆動移動可能な可動メスと、を備えている二重環縫いミシンの糸切り方法であって、
前記針糸ループを前記ルーパが保持するルーパ糸でルーピングして縫製生地に二重環縫い縫目を形成する所定の縫製動作終了後に、前記可動メスが前記針落ち位置の一側寄り外部位置から前記他側寄り外部位置に向けて往行駆動移動される時に、前記可動メスに形成されている刃縁部を前記縫製生地の裏面側に突出する針糸部に押し当てて該針糸部を針落ち位置又は針落ち位置付近で押し切り切断するとともに、
前記可動メスが前記針落ち位置の他側寄り外部位置から前記一側寄り外部位置に向けて復行駆動移動される時に、前記縫製生地の裏面側に突出するルーパ糸部を前記可動メスに形成されたルーパ糸捕捉部により引掛け捕捉し、この捕捉したルーパ糸部を前記可動メスが前記一側寄り外部位置へ復行駆動移動される時に、前記一側寄り外部位置よりも他側寄り位置で先端部が前記針の上下往複運動経路内に入らない範囲で前記針落ち位置に最も接近して位置するように構成されている固定メスと前記ルーパ糸捕捉部との摺接により切断し、
かつ、切断されたルーパ糸の端部は前記可動メスと該可動メスの下部に配置されたルーパ糸挟み部材との間に弾性的に挟み保持されることを特徴とする二重環縫いミシンの糸切り方法。
【請求項7】
前記可動メスによる前記針糸部の押し切り切断時に、前記針板の上方部において針糸部を針糸押えにより押さえ保持する請求項6に記載の二重環縫いミシンの糸切り方法。
【請求項8】
所定の縫製動作終了前の少なくとも1針分の縫製動作時における前記縫製生地の送り量は、それよりも前の縫製動作時における前記縫製生地の送り量よりも小さく制御する請求項6に記載の二重環縫いミシンの糸切り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば偏平縫いミシン等の二重環縫いミンンによる所定の縫製動作終了後に縫製生地の裏面側に突出している針糸部及びルーパ糸部を切断する二重環縫いミシンの糸切り装置及び糸切り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、二本針二重環縫いミシンを例にとって説明すると、該二本針二重環縫いミシンは、図11(A),(B)及び図12に示すように、左右の針糸NTa,NTbを保持して針板2に対して上下に往復運動する左右の針1a,1bと、ルーパ糸LTを保持して前記針1a,1bの上下往複運動経路に略直交する方向に進退動作可能で、進出動作時に前記針1a,1bが針板2下に形成する針糸ループNTa’,NTb’を捕捉するルーパ3と、前記針板2及びルーパ3に対して近接した左前方への進出位置P1と該進出位置P1よりも右後方の退避位置P2との間に亘って往復駆動移動可能で、所定の縫製動作終了後、つまり、縫い終わり時に前記退避位置P2から前記進出位置P1に移動される糸切り装置4と、を備えており、前記針糸ループNTa’,NTb’を前記ルーパ3が保持するルーパ糸LTでルーピングすることにより、図13に示すように、縫製生地Wに所定長さの二重環縫い縫目Mを形成する。
【0003】
前記糸切り装置4は、縫製生地Wに所定長さの二重環縫い縫目Mを形成した縫い終わり時において、図13に示すように、縫製生地Wの裏面側に突出する針糸部NTa1,NTb1及びルーパ糸部LT1を切断するものであって、該糸切り装置4は、可動メス5と、固定メス6と、前記可動メス5の下部に配置されて切断されたルーパ糸部LTの端部を前記可動メス5との間に弾性的に挟み保持する板バネ製のルーパ糸挟み部材7と、該ルーパ糸挟み部材7の挟み保持力調整用の糸挟み補助バネ8と、を有している。そして、前記可動メス5、固定メス6、ルーパ糸挟み部材7及び糸挟み補助バネ8からなる糸切り装置4を前記退避位置P2と前記進出位置P1との間に亘って往復駆動移動させると共に、糸切り装置4が前記進出位置P1にまで移動された後は可動メス5のみを針落ち位置の一側寄り外部位置(進出位置)と針落ち位置の他側寄り外部位置との間に亘って往復駆動移動させる往復駆動移動機構9が具備されている。
なお、前記往復駆動移動機構9は、後述する本発明の実施の形態における往復駆動移動機構と同じ構成であるため、対応する構成部材には本発明の実施の形態における往復駆動移動機構と同一の符号を付している。
【0004】
上記のような基本的構成を有する二重環縫いミシンの糸切り装置4として、従来は、図11(A),(B)及び図12に示すように、可動メス5先端の側縁部に該可動メス5が前記針落ち位置の他側寄り外部位置から一側寄り外部位置に向けて復行駆動移動される時に、前記縫製生地Wの裏面側に突出するルーパ糸部LT1を引掛けて捕捉するルーパ糸捕捉部10が形成されていると共に、該ルーパ糸捕捉部10よりも前記可動メス5の基端寄りの側縁部に該可動メス5が前記針落ち位置の他側寄り外部位置から一側寄り外部位置に向けて復行駆動移動される時に、前記縫製生地Wの裏面側に突出する左右の針糸部NTa1,NTb1を順次引掛けて捕捉する針糸捕捉部11が形成されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
次に、上記した従来の二重環縫いミシンの糸切り装置4による糸切り動作について説明する。
まず、図12(a)に示すように、縫い終わり時に糸切り装置4が針落ち位置の一側寄り外部位置である前記進出位置P1にまで移動された後、図12(b)に示すように、可動メス5のみが前記進出位置P1から針落ち位置の他側寄り外部位置に向けて矢印x方向に往行駆動移動される。この往行駆動移動により、図12(c)に示すように、可動メス5先端側のルーパ糸捕捉部10がルーパ3の先端近くと縫製生地Wの裏面側との間に掛け渡されているルーパ糸部LT1を越えた直後に可動メス5の移動方向が反転されて前記ルーパ糸捕捉部10にルーパ糸部LT1が引掛けられ捕捉される。続いて、図12(d)に示すように、可動メス5が前記針落ち位置の他側寄り外部位置から前記進出位置P1に向けて矢印y方向に復行駆動移動され、この復行駆動移動時に針糸捕捉部11に縫製生地Wの裏面側に突出する左右の針糸部NTa1,NTb1が引掛けられて捕捉される。そして、可動メス5が更に矢印y方向に復行駆動移動されることによって、図12(e)に示すように、前記針糸捕捉部11に捕捉された針糸部NTa1、NTb1及びルーパ糸捕捉部10に捕捉されたルーパ糸部LT1が各捕捉部11,10と固定メス6との摺接により切断される。その後、図12(f)に示すように、針1a,1bは針板2の上方へ移動すると共に、ルーパ3に保持されているルーパ糸LTの端部が可動メス5とルーパ糸挟み部材7との間に弾性的に挟み保持されて次の縫製に備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 実公平6−32072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような構成を有し、上記のような糸切り動作を行う特許文献1に開示の従来の二重環縫いミシンの糸切り装置においては、縫い終わり時において縫製生地Wの裏面側に突出している針糸部NTa1,NTb1及びルーパ糸部LT1を可動メス5と固定メス6との摺接により自動的に切断することが可能であるとともに、それら各糸残り長さにばらつきがないように、ほぼ平均化した長さに切断することが可能である。
【0008】
しかしながら、従来の糸切り装置4の場合は、針糸部NTa1、NTb1及びルーパ糸部LT1の切断位置が、針1a,1bの上下往複運動経路内に入らないように針落ち位置から離れた位置であって、右針1bよりも更に右側外部位置となるために、図13に示すように、切断後において縫製生地Wの裏面側における左右の針糸部NTa1,NTb1及びルーパ糸部LT1の縫い終わり部からの糸残り長さが長くなる。
【0009】
また、上記した従来の糸切り装置において、針糸部NTa1、NTb1及びルーパ糸部LT1の切断後の糸残り長さを短くするために、可動メス5と固定メス6との摺接による切断位置を可能な限り針落ち位置に近付けることが考えられる。しかし、この場合でも、針糸部NTa1、NTb1を引掛け捕捉して固定メス6が位置する切断位置にまで移動させて切断するものであるために、針糸部NTa1,NTb1の糸残り長さの短縮化には自ずと限界がある。特に、左側の針糸部NTa1の糸残り長さは、右側の針糸部NTb1の糸残り長さに比べて左右の針1a,1bのピッチ分だけより長くなる。そこで、従来では、切断位置を可能な限り針落ち位置に近付けるのではなく、図5(B)に示すように、固定メス6の先端刃縁部と右針1bの上下運動経路との間に十分な距離d1を隔てた位置を切断位置に設定することで、各糸を後述する手挟み等による切断に適した糸残り長さになるようにしているのが実状である。
【0010】
このようにすると、縫い終わり時に縫製生地Wの裏面側に針糸部NTa1、NTb1及びルーパ糸部LT1が長く残ることになり、縫い上がり縫製物の見栄えが良くない。そのため、縫い終わり後に、例えば手挟み等を用いて縫製生地Wの裏面側の各糸部を糸残り長さが短くなるように切断する手作業を行なっているが、この場合は、一つの縫製物の縫い終わりの度に糸切断のための面倒な手作業を要して縫製作業効率の低下を招くだけでなく、手挟み等によって縫製生地Wを傷つける可能性が高いといった問題があった。
【0011】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、縫い終わり時に縫製生地の裏面側の針糸部及びルーパ糸部を自動的に且つ平均化した長さに切断することができるのはもとより、作業効率の低下を招く面倒な手作業を行わなくても、糸残り長さを短くして縫い上がり縫製物の見栄えを向上することができる二重環縫いミシンの糸切り装置及び糸切り方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る二重環縫いミシンの糸切り装置は、針糸を保持して上下に往復運動する針と、ルーパ糸を保持して前記針の上下往複運動経路に略直交する方向に進退動作可能で、進出動作時に前記針が針板下に形成する針糸ループを捕捉するルーパと、前記針板における針落ち位置の一側寄り外部位置と前記針落ち位置の前記一側寄り外部位置とは反対の他側寄り外部位置との間に亘って往復駆動移動可能で、前記針糸ループを前記ルーパが保持するルーパ糸でルーピングして縫製生地に二重環縫い縫目を形成する所定の縫製動作終了後に前記縫製生地の裏面側に突出する針糸部及びルーパ糸を切断する糸切断用の可動メスと、を備えている二重環縫いミシンの糸切り装置であって、前記可動メスには、該可動メスが前記針落ち位置の一側寄り外部位置から前記他側寄り外部位置に向けて往行駆動移動される時に、前記縫製生地の裏面側に突出する針糸部を前記針落ち位置又は針落ち位置付近において押し切り切断する刃部が形成されていると共に、該可動メスが前記針落ち位置の他側寄り外部位置から前記一側寄り外部位置に向けて復行駆動移動される時に、前記縫製生地の裏面側に突出するルーパ糸部を引掛けて捕捉するルーパ糸捕捉部が形成されており、前記ルーパ糸捕捉部に捕捉された前記ルーパ糸部を前記針落ち位置の一側寄り外部位置よりも他側寄り位置において該ルーパ糸捕捉部との摺接により切断する固定メス及び前記可動メスの下部に配置され、前記ルーパ糸捕捉部と前記固定メスとの摺接により切断されたルーパ糸の端部を前記可動メスとの間に弾性的に挟み保持するルーパ糸挟み部材とを備え、前記固定メス及びルーパ糸挟み部材は、それらの先端部が前記針の上下往複運動経路内に入らない範囲で前記針落ち位置に最も接近して位置するように構成されていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明に係る二重環縫いミシンの糸切り方法は、針糸を保持して上下に往復運動する針と、ルーパ糸を保持して前記針の上下往複運動経路に略直交する方向に進退動作可能で、進出動作時に前記針が針板下に形成する針糸ループを捕捉するルーパと、前記針板における針落ち位置の一側寄り外部位置と前記針落ち位置の前記一側寄り外部位置とは反対の他側寄り外部位置との間に亘って往復駆動移動可能な可動メスと、を備えている二重環縫いミシンの糸切り方法であって、前記針糸ループを前記ルーパが保持するルーパ糸でルーピングして縫製生地に二重環縫い縫目を形成する所定の縫製動作終了後に、前記可動メスが前記針落ち位置の一側寄り外部位置から前記他側寄り外部位置に向けて往行駆動移動される時に、前記可動メスに形成されている刃部を前記縫製生地の裏面側に突出する針糸部に押し当てて該針糸部を針落ち位置又は針落ち位置付近で押し切り切断するとともに、前記可動メスが前記針落ち位置の他側寄り外部位置から前記一側寄り外部位置に向けて復行駆動移動される時に、前記縫製生地の裏面側に突出するルーパ糸部を前記可動メスに形成されたルーパ糸捕捉部により引掛け捕捉し、この捕捉したルーパ糸部を前記可動メスが前記一側寄り外部位置へ復行駆動移動される時に、前記一側寄り外部位置よりも他側寄り位置で先端部が前記針の上下往複運動経路内に入らない範囲で前記針落ち位置に最も接近して位置するように構成されている固定メスと前記ルーパ糸捕捉部との摺接により切断し、かつ、切断されたルーパ糸の端部は前記可動メスと該可動メスの下部に配置されたルーパ糸挟み部材との間に弾性的に挟み保持されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
上記のごとき特徴を有する本発明に係る二重環縫いミシンの糸切り装置及び糸切り方法によれば、所定の縫製動作後(縫い終わり後)に固定メスを針落ち位置の一側寄り外部位置よりも他側寄り位置に配置固定した状態で、可動メスを針落ち位置の一側寄り外部位置から前記他側寄り外部位置に向けて往行駆動移動させることにより、該可動メスの刃部を縫製生地の裏面側に突出する針糸部に押し当てて該針糸部を針落ち位置又は針落ち位置付近で押し切り切断することが可能であり、針糸部は縫製生地の裏面から可動メスの刃部の通過位置までの長さとなり、縫製生地の裏面における針糸部の残り長さを短くすることができる。
【0015】
一方、縫製生地の裏面側に突出するルーパ糸部は、可動メスが針落ち位置の他側寄り外部位置から一側寄り外部位置に向けて復行駆動移動される時にルーパ糸捕捉部に引掛け捕捉された後、前記一側寄り外部位置よりも他側寄り位置で先端部(刃部の先端縁)が針の上下往複運動経路内に入らない範囲で針落ち位置に最も接近して位置するように構成されている固定メスとルーパ糸捕捉部との摺接により切断することが可能であり、ルーパ糸部は縫製生地の裏面から固定メスとルーパ糸捕捉部との摺接切断位置までの長さとなり、縫製生地の裏面におけるルーパ糸部の残り長さも可及的に短くすることができる。
【0016】
したがって、縫い終わり時に、例えば手挟み等を用いて縫製生地の裏面側の各糸部を糸残り長さが短くなるように切断するといった面倒な手作業が不要となり、それだけ縫製作業効率の向上を図ることができるばかりでなく、手挟み等によって縫製生地を傷つける憂いもなく、縫い上がり縫製物の見栄えを向上することができるといった効果を奏する。
【0017】
本発明に係る二重環縫いミシンの糸切り装置において、前記可動メスの針糸切断用刃部は、該刃部の先端縁が可動メスの板厚方向の上面側に位置するように形成されていることが好ましい。この場合は、刃部の先端縁が可動メスの板厚方向の下面側に位置するように形成されている場合に比べて、可動メスの刃部により押し切り切断される針糸部の糸残り長さを、可動メスの略板厚分だけ一層短くすることができる。
【0018】
また、本発明に係る二重環縫いミシンの糸切り装置及び糸切り方法において、前記可動メスによる針糸部の押し切り切断時に、針板の上方部において針糸を針糸押え装置により押え保持することが好ましい。この場合は、針糸部を可動メスの刃部に押し当てて押し切り切断する際、針糸に一定の張力を付与し維持することができるために、針糸部を針落ち位置又は針落ち位置付近で確実かつシャープに切断することができる。
【0019】
また、本発明に係る二重環縫いミシンの糸切り装置及び糸切り方法において、所定の縫製動作終了前の少なくとも1針分の縫製動作時における縫製生地の送り量を、それよりも前の縫製動作時における縫製生地の送り量よりも小さく制御することが好ましい。この場合は、縫製生地の裏面に繋がって針板の下面に突出している最後の縫目の針糸部の位置が、針の上下運動経路から生地送り方向への離間距離が通常の送り量の場合の離間距離よりも小さくなるので、可動メスの刃部の長さを長くしなくとも、短い刃部であっても該刃部を針糸部に確実に押し当てて押し切りすることができる。
【0020】
更に、本発明に係る二重環縫いミシンの糸切り装置において、前記針は、縫製進行方向に直交する方向に沿って複数本が並設されており、前記固定メスは、複数本の針のうち、前記針落ち位置の一側寄り外部位置に最も近い針に最大限に接近した位置に配置されていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態に係る二重環縫いミシン全体の外観斜視図である。
図2】同上二重環縫いミシンの糸切り装置における往復駆動移動機構の構成を説明する分解斜視図である。
図3】同上往復駆動移動機構により糸切り装置が退避位置に後退された状態を示し、(A)は要部の平面図であり、(B)は図2(A)のA−A線に沿った縦断面図である。
図4】同上往復駆動移動機構により糸切り装置が進出位置に進出され、可動メスが最も左方にまで往行駆動移動された状態を示し、(A)は要部の平面図であり、(B)は図3(A)のB−B線に沿った縦断面図である。
図5】本実施の形態の場合と従来の場合の糸切り装置における固定刃及びルーパ糸挟み部材の先端と右針の上下運動経路との位置関係の詳細を説明する比較図であり、(A)は本実施の形態の場合であり、(B)は従来の場合である。
図6】糸切り装置における可動メスの拡大平面図である。
図7】(a)〜(f)は糸切り装置の糸切り動作を順番に説明する要部の斜視図である。
図8】縫い上がり及び糸切断後の縫目構造を縫製生地の裏面側から見た図である。
図9】他の実施の形態に係る二重環縫いミシンによる縫目構造を縫製生地の裏面側から見た図である。
図10図9のような縫目構造の場合に適用される糸切り装置における可動メスの拡大平面図である。
図11】従来の二重環縫いミシンの糸切り装置全体が進出位置に進出した状態を示し、(A)は要部の平面図であり、(B)は図11(A)のC−C線に沿った縦断面図である。
図12】(a)〜(f)は従来の糸切り装置の糸切り動作を順番に説明する要部の斜視図である。
図13】従来の二重環縫いミシンの糸切り装置による縫い上がり及び糸切断後の縫目構造を縫製生地の裏面側から見た図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。なお、本実施の形態において従来の二重環縫いミシンと同一の構成要素には同一の符号を付して説明する。
図1は本発明に係る二本針二重環縫いミシン全体の外観斜視図である。同二本針二重環縫いミシンは、ミシン本体20の上部及び下部から左側方に向けてミシンアーム部21とミシンベッド部22とが互いに略平行に延設されている。ミシンアーム部21の内部には、ミシン主軸、左右の針1a,1bを上下に往復運動させる針駆動機構、布押え23を上下に往復運動させる押え駆動機構やそれら各駆動機構への動力伝達機構等が組み込まれているが、それら駆動機構や動力伝達機構は周知のため、説明を省略する。
【0023】
ミシンベッド部22の上面部には、針落ち位置を形成する針落ち溝部を有する針板2が固定されており、この針板2の下方部のミシンベッド部22内には、ルーパ糸LTを保持して前記針1a,1bの上下往複運動経路に略直交する左右方向に進退動作するルーパ3、糸切り装置4及び該糸切り装置4の固定メス6の刃縁部6eが、図4(A),(B)に示すように、前記針板2及びルーパ3に対して近接する位置で後述するストッパー部材33に後述する当たり部材34が当接する左前方への進出位置P1と、図3(A),(B)に示すように、前記進出位置P1よりも右後方の退避位置P2との間に亘って往復駆動移動させると共に、糸切り装置4が前記進出位置P1に移動された状態において後述する可動メス5のみを針落ち位置の一側(右側)寄り外部位置と他側(左側)寄り外部位置との間に亘ってx−y方向に直線的に往復駆動移動させる往復駆動移動機構9等が組み込まれている。
【0024】
上記構成の二本針二重環縫いミシンは、前記針1a,1bが針板2下に形成する針糸ループNTa’,NTb’を前記ルーパ3が保持するルーパ糸LTでルーピングすることにより、図7に示すように、縫製生地Wに所定長さの二重環縫い縫目Mを形成する。
【0025】
前記糸切り装置4は、該糸切り装置4が前記往復駆動移動機構9を介して前記針板2及びルーパ3に対して近接した前記進出位置P1と該進出位置P1よりも右後方の退避位置P2との間に亘って往復駆動移動可能に構成されている。そして、糸切り装置4は、所定の縫製動作終了後、つまり、縫い終わり時に前記縫製生地Wの裏面側に突出する左右の針糸部NTa1,NTb1及びルーパ糸部LT1を切断する糸切断用の可動メス5と、前記進出位置P1において前記左右の針1a,1bのうち右針1bの上下往複運動経路内に入らない範囲で針落ち位置に最も接近する位置に刃部6eが配置される固定メス6と、前記可動メス5の下部に配置されて切断されたルーパ糸部LTの端部を前記可動メス5との間に弾性的に挟み保持する板バネ製のルーパ糸挟み部材7と、該ルーパ糸挟み部材7の挟み保持力調整用の糸挟み補助バネ8と、を有している。
【0026】
ここで、本実施の形態の場合の前記進出位置P1における前記固定メス6及びルーパ糸挟み部材7の位置と、従来の場合の前記進出位置P1における固定メス6及びルーパ糸挟み部材7の位置との関係を、図5(A),(B)の比較図を参照しながら具体的に説明する。
図5(A)は、本実施の形態の場合の固定メス6及びルーパ糸挟み部材7の位置を示し、図5(B)は、従来の場合のそれらの位置を示す。本実施の形態の場合は、図5(A)に示すように、固定メス6の刃縁部6eの先端及びルーパ糸挟み部材7の先端部7eと右針1bの上下運動経路との間の離間距離dが可及的にゼロに近く従来の離間距離d1に比べて小さく(d<d1)なるように、すなわち、右針1bの上下運動経路に最大限に接近して位置するように、固定メス6及びルーパ糸挟み部材7を、図5(B)に示す従来の場合に比べて左方へ向けて長く延ばして形成している。
【0027】
前記可動メス5は、図6に示すように、左右方向に長い帯状板材から構成され、この長い帯状板材からなる可動メス5の先端寄り位置には、該可動メス5が前記進出位置P1である針落ち位置の一側(右側)寄り外部位置から他側(左側)寄り外部位置に向けて往行駆動移動される時に、前記針板3上の縫製生地Wの裏面側に突出する右左の針糸部NTb1、NTa1を針落ち位置又は針落ち位置付近において順次押し切り切断する刃部5eが、該刃部5eの先端縁が前記帯状板材の板厚方向の下面側に位置するように形成されている。
【0028】
また、前記長い帯状板材からなる可動メス5の先端部には、該可動メス5が前記針落ち位置の他側(左側)寄り外部位置から一側(右側)寄り外部位置に向けて復行駆動移動される時に、前記針板3上の縫製生地Wの裏面側に突出するルーパ糸部LT1を引掛けて捕捉するルーパ糸捕捉部10が形成されており、このルーパ糸捕捉部10で捕捉されたルーパ糸部LT1を前記針落ち位置の一側(右側)寄り外部位置よりも他側(右側)寄り位置にまで移動させて前記ルーパ糸捕捉部10と前記固定刃6の刃縁部6eとの摺接により切断するように構成されている。
【0029】
前記糸切り装置4を、前記進出位置P1と前記退避位置P2との間に亘って往復駆動移動させると共に、糸切り装置4が前記進出位置P1に移動された状態において前記可動メス5のみを針落ち位置の一側(右側)寄り外部位置と他側(左側)寄り外部位置との間に亘ってx−y方向に直線的に往復駆動移動させる往復駆動移動機構9は、図2図3(A),(B)及び図4(A),(B)に示すように構成されている。
即ち、前記可動メス5は、その右端部下面を、ネジ23を介して可動メス台24に固定されている。この可動メス台24の長手方向(左右方向)の略中央部にはU字状の切欠部25が形成されていると共に、この切欠部25を挟んだ左右位置には可動メス台24の長手方向に沿って長い左右一対のスリット26a,26bが形成されている。
【0030】
前記固定メス6は、前記可動メス5の上面に配置されており、該固定メス6の右端部下面には、メス台ガイド27及び前記ルーパ糸挟み部材7の右端部が重合配置されており、これら固定メス6、メス台ガイド27及びルーパ糸挟み部材7がネジ28を介して固定メス台29の左端部に固定されている。前記可動メス台24は、前記固定メス台29の裏面(下面)に挿通される頭付きボルト48と左右一対のリンク40a,40bの一端部にその上面側から挿入されるツバ付き円柱状ナット31a,31bとにより、前記ツバ付き円柱状ナット31a,31bが前記左右一対のリンク40a,40bの一端部の回動を許容する状態で、かつ、前記可動メス台24における左右一対のスリット26a,26bの長さ範囲内で摺動移動可能な状態に挟持されている。
【0031】
前記左右一対のリンク40a,40bの他端部は、その上面側から挿入されて左右一対のリンク40a,40bの他端部内での回動を許容するツバ付きスリーブ41a,41bを皿ネジ42a,42bを介して装置取付台30にネジ止めされており、これによって、前記可動メス台24及び固定メス台29は、左右一対のリンク40a,40bの揺動運動に伴い、左右方向に往復移動可能な状態で装置取付台30に支持されている。
なお、ツバ付きスリーブ41a,41bのうち、右側のツバ付きスリーブ41bは、右側のリンク40bの両端穴のピッチを変更することで、左側のリンク40aのツバ付きスリーブ41aを支点として糸切り装置4の前記進出位置P1における可動メス5の針落ち部及びルーパ3に対する生地送り方向での進出移動起点の位置を微調整可能とするべくエキセンカム状に形成されている。
【0032】
前記固定メス台29には、左右一対のリンク40a,40bのうち左側のリンク40aの下方位置において前記装置取付台30にネジ止めされたストッパー部材33に当接する当たり部材34が形成されている。
【0033】
また、前記固定メス台29の長手方向中央部の後部には、前記可動メス台24の左端より少し右寄り位置から後方に突出された突起35に当接離間する係合突起36が形成されており、この係合突起36が前記突起35に当接することにより、可動メス台24が単独でそれ以上右方向へ移動できないように構成されている。更に、前記可動メス台24は、前記装置取付台30にネジ止めされ、かつ、一端部が前記当たり部材34の右端面に弾接されたバネ37を介して常に左方向へ移動するように弾性的に付勢されている。
【0034】
前記装置取付台30には、前記固定メス台29が左右方向に摺動自在に嵌入する溝46が形成されており、周囲に配置した複数個のネジ47を介してミシンベッド部22に固定されている。また、装置取付台30には、エアシリンダ(図示省略)のピストン48の先端部に段付きネジ43を介して枢支連結されて、装置取付台30に軸44を中心として矢印a−b方向に駆動揺動可能な駆動レバー45が取り付けられており、この駆動レバー45の先端の先細円形部45aが前記可動メス台24の略中央部に形成のU字状の切欠部25に係合されている。
【0035】
上記のように構成された往復駆動移動機構9によれば、図3(A),(B)に示すように、ピストン48の伸長により駆動レバー45がb方向に駆動揺動されている時、糸切り装置4はバネ37の弾性付勢力に抗して右方に移動して係合突起36と突起35とが当接した状態となるとともに、左右一対のリンク40,41の円柱状ナット31a,31bは左右一対のスリット26a,26b内の最も左側に寄った状態に移動し、固定メス台29の当たり部材34の左端面はストッパー部材33から離間している。この状態において、糸切り装置4は、退避位置P2にあり、ルーパ3の移動を妨げないような傾斜姿勢で待機している。
【0036】
次に、図4(A),(B)に示すように、前記ピストン48の収縮により駆動レバー45がa方向に駆動揺動されると、固定メス台29の当たり部材34がバネ37の弾性付勢力により左方に移動する。これに伴って、前記係合突起36と突起35とが当接したまま糸切り装置4が左右一対のリンク40,41の揺動により前記傾斜姿勢の傾斜角度を減じながら、固定メス台29の当たり部材34の左端面がストッパー部材33に当接するまで左方へ移動する。これによって、糸切り装置4が、進出位置P1にまで移動し、縫い進行方向に対して略直交した姿勢となる。
【0037】
この状態からピストン48が更に収縮して前記駆動レバー45がa方向に駆動揺動されると、固定メス台29を前記進出位置P1に残したまま、可動メス台24が針板2の針落ち位置を通過して左方向(x方向)に移動する。すなわち、可動メス台24に固定された可動メス5のみが針板3とルーパ3との間を左進(往行移動)する。このとき、前記可動メス台24及び固定メス台29は、左右一対のリンク40a,40bの揺動運動に伴い、左右方向に往復移動可能な状態で装置取付台30に支持されているので、可動メス5は左右一対のリンク40,41により直線的に移動されるように制御される。
【0038】
次いで、ピストン48が伸長されることにより、前記駆動レバー45がb方向に駆動揺動され、これに伴って、可動メス5が最も左進した位置より右方向(y方向)に移動して前記進出位置P1で待機中の固定メス6の下部にまで右退(復行移動)する。この状態から更にピストン48が収縮することにより、糸切り装置4は、図3(A),(B)に示す退避位置P2に後退移動される。
【0039】
以上に説明した構成及び装置の他に、本実施の形態の二重環縫いミシンは、針糸押え装置50、糸締め装置を備えている。
針糸押え装置50は、図1に示すように、針板2の上方部のミシンアーム部21にブラケット51を介して取り付けられている。該針糸押え装置50は、図示は省略するが、前後一対の針糸押え板をエアシリンダ及びバネを介して当接離間させるように構成されており、縫い終わり時に前記糸切り装置4の可動メス5が針糸部NTa1、NTb1を押し切り切断する時に、針板2の上方部において針糸NTa、NTbを一対の針糸押え板の当接により押え保持するものである。
【0040】
また、糸緩め装置は、前記可動メス5の往行駆動移動の開始と同時に、各糸調子皿52、53(図1参照)を浮かせて(緩めて)針糸NTa,NTb及びルーパ糸LTを瞬時に繰出すものである。この糸緩め装置によるルーパ糸LTの緩めによって、可動メス5のルーパ糸捕捉部5cに引掛け捕捉されたルーパ糸LTが固定メス6の刃縁部6eとルーパ糸捕捉部5Cとの摺接による切断位置まで移動されるときの可動メス5の移動を安定化することができる。また、可動メス5による各糸切断後に縫製生地Wを針板2上から取り出すとき、縫製生地Wから針糸NTa,NTbが抜ける抵抗により、各針糸NTa,NTbが少し引き出され、次の縫目形成を安定させることができる。
【0041】
次に、上記のように構成された本実施の形態に係る二本針二重環縫いミシンに糸切り装置4の糸切断動作を、図7に基づいて説明する。
【0042】
まず、図7(a)に示すように、縫い終わり時に糸切り装置4が針落ち位置の一側寄り外部位置である前記進出位置P1にまで移動された後、図7(b)に示すように、可動メス5のみが前記進出位置P1から針落ち位置の他側寄り外部位置に向けて矢印x方向に往行駆動移動(左進)される。この往行駆動移動時に、該可動メス5の刃部5eが縫製生地Wの裏面側に突出する右の針糸部NTb1、左の針糸部NTa1に順次押し当てられて、これら右、左の各針糸部NTb1,NTa1が針落ち位置又は針落ち位置付近で押し切り切断される。この切断により右、左の各針糸部NTb1,NTa1はそれぞれ、図8に示すように、縫製生地Wの裏面から可動メス5の刃部5eの通過位置までの短い糸残り長さとなる。
【0043】
そして、図7(c)に示すように、可動メス5先端側のルーパ糸捕捉部10がルーパ3の先端近くと縫製生地Wの裏面側との間に掛け渡されているルーパ糸部LT1を越えた直後に可動メス5の移動方向が反転される。続いて、図7(d)に示すように、可動メス5が前記針落ち位置の他側寄り外部位置から前記進出位置P1に向けて矢印y方向に復行駆動移動(右退)される。この復行駆動移動時に縫製生地Wの裏面側に突出するルーパ糸部LT1がルーパ糸捕捉部10に引掛けられて捕捉される。そして、可動メス5が更に矢印y方向に復行駆動移動されることによって、図7(e)に示すように、前記ルーパ糸捕捉部10に捕捉されたルーパ糸部LT1が該捕捉部10と固定メス6の刃縁部6eとの摺接により切断される。この切断時において、固定メス6の刃縁部6eは、図5(A)に示すように、右針1bの上下運動経路に最も接近して位置しているので、図8に示すように、切断後に縫製生地Wの裏面に残存するルーパ糸部LT1の長さも短くなる。
【0044】
その後、図7(f)に示すように、針1a,1bは針板2の上方へ移動すると共に、ルーパ3に保持されているルーパ糸LTの端部が可動メス5とルーパ糸挟み部材7との間に弾性的に挟み保持され、さらに、糸切り装置4が往復駆動移動機構9を介して、図3(A),(B)に示すような退避位置P2に移動されルーパ3の移動を妨げないような傾斜姿勢で次の縫製を待機することになる。
【0045】
以上のように、本実施の形態に係る二重環縫いミシンの糸切り装置4によれば、所定の縫製動作後(縫い終わり後)に、可動メス5を針落ち位置の一側寄り外部位置から他側寄り外部位置に向けて往行駆動移動させることにより、該可動メス5の刃部5eを縫製生地Wの裏面側に突出する右左の針糸部NTb1,NTa1に押し当ててこれら針糸部NTb1,NTa1を針落ち位置又は針落ち位置付近で押し切り切断することが可能であり、縫製生地Wの裏面における針糸部NTb1,NTa1の残り長さを短くすることができる。
【0046】
また、前記可動メス5を針落ち位置の他側寄り外部位置から一側寄り外部位置に向けて復行駆動移動される時に該可動メス5に形成のルーパ糸捕捉部10に縫製生地Wの裏面側に突出するルーパ糸部LT1を引掛け捕捉した後、前記一側寄り外部位置よりも他側寄り位置で先端の刃縁部6eが右針1bの上下往複運動経路内に入らない範囲で針落ち位置に最も接近して位置されている固定メス6とルーパ糸捕捉部10との摺接により切断することが可能であり、縫製生地Wの裏面におけるルーパ糸部LT1の残り長さも可及的に短くすることができる。
【0047】
それゆえに、縫い終わり時に、例えば手挟み等を用いて縫製生地Wの裏面側の各糸部NTb1,NTa1、LT1を糸残り長さが短くなるように切断するといった面倒な手作業が不要となり、それだけ縫製作業効率の向上を図ることができるばかりでなく、手挟み等によって縫製生地を傷つける憂いもなく、縫い上がり縫製物の見栄えを向上することができる。
【0048】
特に、針板2の上方部に針糸押え装置50を設けることにより、前記可動メス5の刃部5eによる針糸部NTb1,NTa1の押し切り切断時に、針糸NTb,NTaに一定の張力を付与し維持することができるために、針糸部NTb1,NTa1を針落ち位置又は針落ち位置付近で確実かつシャープに切断することができる。
【0049】
なお、上記実施の形態に係る二重環縫いミシンは、縫い始めから縫い終わりまで縫製生地Wを常に一定量ずつ送りながら縫製動作するものについて説明したが、縫い終わり前の1針分の縫製動作時における縫製生地Wの送り量を、それより前の縫製動作時における縫製生地Wの送り量よりも小さくする送り量制御部を備えた二重環縫いミシンであってもよい。このような送り量制御部を備えた二重環縫いミシンによれば、図9に示すように、縫い終わり直前の針糸ピッチP1がそれよりも前の針糸ピッチPよりも小さい二重環縫い縫目M(一般にコンデンスステッチと称呼される)となる。
【0050】
この場合は、縫製生地Wの裏面に繋がって針板2の下面に突出している最後の縫目の針糸部NTb1、NTa1の位置が、針1b,1aの上下運動経路から生地送り方向への離間距離が通常の送り量の場合の離間距離よりも小さくなるため、可動メス5の刃部5eの長さを長くしなくとも、図10に示すような短い刃部5eであっても該刃部5eを各針糸部NTb1、NTa1に確実に押し当てて押し切りすることができる。
【0051】
また、上記実施の形態においては、可動メス5の刃部5eを、該刃部5eの先端縁が可動メス5を構成する帯状板材の板厚方向の下面側に位置するように形成したもので説明したが、刃部5eの先端縁が前記帯状板材の板厚方向の上面側に位置するように形成してもよい。この場合は、可動メス5の刃部6eにより押し切り切断される各針糸部NTb1、NTa1の糸残り長さを、帯状板材(可動メス5)の略板厚分だけ一層短くすることができる。
【0052】
なお、本発明の糸切り装置は、偏平縫いミシン等の二本針二重環縫いミシンにおける糸切り装置として特に有効に適用可能であるが、一本針や三本以上の複数本針二重環縫いミシンやそれ以外の各種形態のミシンにおける糸切り装置に適用してもよいこともちろんである。
【符号の説明】
【0052】
1a,1b 針
2 針板
3 ルーパ
4 糸切り装置
5 可動メス
5e 刃部
6 固定メス
6e 刃縁部
7 ルーパ糸挟み部材
10 ルーパ糸捕捉部
50 針糸押え装置
NTa,NTb 針糸
NTa1,NTb1 突出し切断される針糸部
LT ルーパ糸
LT1 突出し切断されるルーパ糸部
W 縫製生地
M 二重環縫い縫目
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13