特許第5777044号(P5777044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777044
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】梁の振動低減機構
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/98 20060101AFI20150820BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20150820BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   E04B1/98 E
   E04H9/02 341A
   F16F15/02 C
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-273741(P2010-273741)
(22)【出願日】2010年12月8日
(65)【公開番号】特開2012-122252(P2012-122252A)
(43)【公開日】2012年6月28日
【審査請求日】2013年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(72)【発明者】
【氏名】半澤 徹也
(72)【発明者】
【氏名】磯田 和彦
【審査官】 仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−68210(JP,A)
【文献】 特開2010−38318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/98
E04H 9/02
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動を抑制するべき対象の本体梁に組み付けられて該本体梁の上下方向の振動を抑制するための振動低減機構であって、
前記本体梁が接合されている柱または前記本体梁の端部に対して基端が固定され先端が自由端とされた短スパンの片持ち梁を設けて、該片持ち梁を前記本体梁の側部において該本体梁に対して上下方向に相対振動可能に並設し、
該片持ち梁の先端と前記本体梁との間にそれらの間で生じる相対振動により作動する回転慣性質量ダンパーを介装するとともに、
該回転慣性質量ダンパーと前記片持ち梁とにより構成される付加振動系の固有振動数を調整するための付加ばねが設けられ、
前記付加振動系の減衰性能と前記回転慣性質量ダンパーの慣性質量とを、前記回転慣性質量ダンパーを前記本体梁の中央位置に配置する場合よりも大きくした上で、前記付加振動系の固有振動数を主振動系としての前記本体梁の次固有振動数に同調させてなることを特徴とする梁の振動低減機構。
【請求項2】
請求項1記載の梁の振動低減機構であって、
前記片持ち梁をトラス材により構成してなることを特徴とする梁の振動低減機構。
【請求項3】
請求項1または2記載の梁の振動低減機構であって、
前記回転慣性質量ダンパーと前記本体梁または前記片持ち梁との間に、前記回転慣性質量ダンパーおよび前記片持ち梁に対して直列に接続されて前記片持ち梁とともに前記付加ばねとしての板ばねを介装してなることを特徴とする梁の振動低減機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物における梁の振動を低減させるための機構に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の床はそれを支持する梁の剛性の不足や外乱振動との共振などによって居住者が不快感を覚える振動障害が生じる場合がある。
それに対処する従来技術として、たとえば特許文献1に示されるようなTMD(Tuned Mass Damper)がある。これは床上に付加質量として設置したTMDを床の振動周期に対して同調するように振動させることによって床の振動低減を図るものであるが、この種のTMDは一般に500kg〜1tonもの質量を要するから制振対象の床やそれを支持する梁に大きな負担がかかるという問題がある。
【0003】
そのため、たとえば特許文献2に示されるように付加質量として回転慣性質量を利用することによって小質量であっても従来のTMDと同様以上の制振効果が得られる振動低減機構も提案されている。
これは、図6に示すように柱1間に架設された制振対象の本体梁2の長さ方向中央位置に、ボールねじ機構によって小質量の回転錘(フライホイール)を回転させる構成の回転慣性質量ダンパー3を設置するとともに、それを作動させるための斜材5を本体梁2の側部に下に凸の折れ線状をなすように張設したもので、本体梁2やその上部に一体に形成されているスラブ4が上下振動を生じた際に回転慣性質量ダンパー3が作動して制振効果を得るものである。
これによれば、回転錘の実際の質量が慣性質量効果によって数百倍にも拡大されてTMDにおける付加質量として利用し得るので回転錘の実際の質量は小さくて済み、したがって通常のTMDを設置する場合のように梁や床に対して大きな負担になることがない。
【0004】
ところで、TMDは制振対象の主振動系に対して付加振動系として設置されるものであり、梁や床を制振対象とする場合にはTMDとしての固有振動数を制振対象の梁や床の固有振動数に同調させる必要があるから、上記の慣性質量効果を利用する振動低減機構では回転慣性質量ダンパー3に対して付加ばねを直列に接続して付加振動系を構成するとともに、付加ばねの剛性を調節することでTMDとしての固有振動数を本体梁の固有振動数を同調させるようにしている。
そして、図6に示したものでは本体梁2の側部に張設した斜材5を付加ばねとして機能せしめて、基本的にはその斜材5のばね剛性の調節により固有振動数の同調を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−252253号公報
【特許文献2】特開2010−38318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように特許文献2に示される振動低減機構では、本体梁2の側部に付加ばねとしての斜材5を張設することから、図6に示しているように本体梁1に対して梁貫通孔6を設ける場合にはその位置に斜材5が干渉してしまうことがあり、したがって梁貫通孔6の形成位置に制約が生じて実質的に中央部と端部にしか梁貫通孔6を設けることができず、そのため設備配管のためのスペースを確保し難く最適な配管ルートを確保できないという設備計画上の不都合が生じる場合がある。
また、本体梁1にスラブ4を受けるための直交小梁を設ける場合、本体梁1の端部に設置するべき小梁が斜材に干渉してしまって小梁の配置計画に支障を来す場合もある。
【0007】
そのような不都合を回避するために、たとえば図7に示すように斜材5に代えてトラス材7を本体梁1の側方に並設することにより本体梁2のほぼ全長にわたって梁貫通孔6を形成することを可能としたうえで、トラス材7と本体梁2との間に回転慣性質量ダンパー3を介装し、トラス材7を付加ばねとして機能せしめてその剛性の調節により同調を行うことも考えられるが、その場合は本体梁2とトラス材7とによる二重梁構造となってしまうので構造全体が大掛かりとなり、コスト的にも施工性の点でも好ましくない。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は簡略な構成で梁貫通孔や小梁との干渉も回避し得る有効適切な振動低減機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は振動を抑制するべき対象の本体梁に組み付けられて該本体梁の上下方向の振動を抑制するための振動低減機構であって、前記本体梁が接合されている柱または前記本体梁の端部に対して基端が固定され先端が自由端とされた短スパンの片持ち梁を設けて、該片持ち梁を前記本体梁の側部において該本体梁に対して上下方向に相対振動可能に並設し、該片持ち梁の先端と前記本体梁との間にそれらの間で生じる相対振動により作動する回転慣性質量ダンパーを介装するとともに、該回転慣性質量ダンパーと前記片持ち梁とにより構成される付加振動系の固有振動数を調整するための付加ばねが設けられ、前記付加振動系の減衰性能と前記回転慣性質量ダンパーの慣性質量とを、前記回転慣性質量ダンパーを前記本体梁の中央位置に配置する場合よりも大きくした上で、前記付加振動系の固有振動数を主振動系としての前記本体梁の次固有振動数に同調させてなることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、前記片持ち梁をトラス材により構成することが考えられる。
【0011】
また、前記回転慣性質量ダンパーと前記本体梁または前記片持ち梁との間に、前記回転慣性質量ダンパーおよび前記片持ち梁に対して直列に接続されて該片持ち梁とともに前記付加ばねとしての板ばねを介装することも考えられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の振動低減機構は回転慣性質量ダンパーを短スパンの片持ち梁を介して本体梁の端部に配置するので、回転慣性質量ダンパーを本体梁の中央部に設ける場合に比べてTMDとしての構成の簡略化と合理化を実現できるし、梁貫通孔の形成位置や小梁配置に大きな制約が生じることもなく、優れた制振効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の振動低減機構の実施形態を示す図である。
図2】同、回転慣性質量ダンパーを示す拡大図である。
図3】同、効果を実証するための解析ケースを示す図である。
図4】同、解析結果を示す図である。
図5】同、解析結果を示す図である。
図6】従来の振動低減機構の一例を示す図である。
図7】従来の振動低減機構の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の振動低減機構の実施形態を図1図2に示す。
これは柱1間に架設された本体梁2(図示例ではH形鋼からなる鉄骨梁)を制振対象として、その本体梁2およびその上部に一体に形成されているスラブ4の上下方向の振動を低減するためのものである。
本実施形態の振動低減機構は、基本的には特許文献2に示されているものと同様に、回転慣性質量ダンパー3を利用してTMDとして機能することにより制振効果を得るものであるが、本実施形態では回転慣性質量ダンパー3を図6図7に示したもののように本体梁2の中央部に設置することに代えて、全4台の回転慣性質量ダンパー3を本体梁2の両端部においてその両面側にそれぞれ片持ち梁8を介して設置したことを主眼とする。
【0015】
すなわち、本実施形態では本体梁2の端部にたとえば溝形鋼からなる短スパンの梁材を配置して、その梁材の基端のみを本体梁2の側部に対してスチフナ9およびリブ10を介して固定して先端を自由端とした片持ち梁8の形態で設置するとともに、その片持ち梁8には床荷重が直接的にかからないようにしており、したがって本体梁2が床荷重を受けて上下方向に振動した際にも片持ち梁8は本体梁2とは同期して振動することなく、それらの間で上下方向の相対振動が生じるものとされている。
そして、そのうえで図2に示すように片持ち梁8の先端に回転慣性質量ダンパー3を下向きに固定し、回転慣性質量ダンパー3の下端には板ばね11の中央部を連結し、板ばね11の両端部を本体梁2の下フランジに対して連結具12を介して固定しており、これにより本体梁2が上下振動(片持ち梁8に対する相対振動)を生じた際には回転慣性質量ダンパー3が作動するようになっている。
【0016】
本実施形態の振動低減機構は、回転慣性質量ダンパー3と片持ち梁8と板ばねと11が直列に接続されることにより、制振対象の主振動系としての本体梁2に対する付加振動系としてのTMDを構成するものであって、上記の片持ち梁8および板ばね11はこのTMDの固有振動数を本体梁2の固有振動数に同調させるための付加ばねとして機能するものであり、それらのばね剛性を適切に調整し、かつ回転慣性質量ダンパー3による慣性質量を適切に設定することにより、本体梁2に対してTMDとして有効に機能して優れた制振効果が得られるものである。
【0017】
なお、特許文献2に示されているように、回転慣性質量ダンパー3の設置位置は本体梁2の振動が最も卓越する点(一端的には梁の中央位置)に設定することが制振効果を得るうえでは最も効率的であるが、それ以外の点に設置する場合においても慣性質量と減衰性能を適切に設定することにより所望の制振効果を支障なく得ることが可能である(この点については後述の解析により実証する)。
いずれにしても、本実施形態のように回転慣性質量ダンパー3を梁端部に設置する場合には中央位置に設置する場合に比べて慣性質量と減衰性能をより大きく設定する必要があるが、慣性質量は回転錘(フライホイール)の慣性質量モーメントに比例し、慣性質量モーメントは回転錘の厚さが同じであれば直径の4乗に比例するから、回転錘の直径を僅かに大きくするだけで慣性質量モーメントを十分に大きくすることができるし、回転錘の質量や径方向の質量分布の調整により直径が同じであっても回転慣性を大きくできるから、回転慣性質量ダンパー3全体をさして大形化することなく所望の回転慣性を容易に得ることができる。
また、減衰性能を大きくするためには適宜の減衰要素を付加すれば良いし、後述するように回転慣性質量ダンパー3自体に減衰機能を持たせることも可能であるから、減衰性能を大きくすることも特に支障はない。
【0018】
本発明の振動低減機構によれば、回転慣性質量ダンパー3を利用したTMDとして機能して優れた制振効果が得られることはもとより、回転慣性質量ダンパー3を本体梁2の端部に配置することにより本体梁2の中央部に対しては自由に梁貫通孔6を設けることができ、したがって図6に示したように本体梁2の側部に全長にわたって斜材5を設けるために梁貫通孔6の位置が制約されてしまうことがなく、設備計画上の不具合を回避することができる。
また、本体梁2にスラブ4を受ける小梁を設ける場合、デッキ床を受けるための小梁スパンは通常3.2m以下であるから、片持ち梁8の先端に設置する回転慣性質量ダンパー3の設置位置をその寸法内に納めれば小梁配置計画に支障を来すこともない。
また、図7に示したように本体梁2の全長にわたってトラス材7を設ける場合に比較すれば、大掛かりな二重梁構造となることもないから構造全体を簡略化でき、コスト的にも施工性の点でも遙かに有利である。
【0019】
なお、上記実施形態では片持ち梁8の基端を本体梁2の端部に対してスチフナ9およびリブ10を介して固定したが、それに代えて片持ち梁8の基端を柱1に対して直接的に固定することでも良い。
また、上記実施形態では片持ち梁8の端部両面側にそれぞれ回転慣性質量ダンパー3を設置したが、回転慣性質量ダンパー3を片持ち梁8の片面側にのみ設置することでも良い。
また、片持ち梁8をトラス材により形成すれば、その片持ち梁8の設置位置に対しても梁貫通孔6を設けることができ、結果的に本体梁2の全長にわたって梁貫通孔6を設けることも可能であるから、梁貫通孔6の位置に対する制約をさらに軽減することができる。
【0020】
また、上記実施形態では回転慣性質量ダンパー3と本体梁2との間に板ばね11を介装したが、板ばね11は回転慣性質量ダンパー3および片持ち梁8に対して直列に接続すれば良く、したがって回転慣性質量ダンパー3を本体梁2に対して固定してその回転慣性質量ダンパー3と片持ち梁8との間に板ばね11を介装しても同様である。
いずれにしても、板ばね11を片持ち梁8とともに付加ばねとして機能させてそのばね剛性の調節によりTMDとしての同調を行えば良いが、その場合においては図2に示すように板ばね11の両端部を本体梁2に対して連結具12を介して支持するようにすると良い。あるいは、上記のように回転慣性質量ダンパー3を本体梁2に対して固定する場合には、板ばね11を連結具12を介して片持ち梁8に対して連結すれば良い。
これにより、板ばね11の素材やその厚み、形状寸法を調節することで板ばね11としてのばね剛性を容易に調節できるばかりでなく、連結具12による板ばね11の支持点間の距離を調節することによってもばね剛性を任意にかつ広範囲に調節可能であるので、TMDとしての同調を行う上で有利である。
但し、必ずしもそうすることはなく、片持ち梁8を単独で加ばねとして機能させてその片持ち梁8のばね剛性の調節のみで同調を行うことが可能であれば(その場合の具体的な同調例については後述する)、板ばね11を省略することも可能である。
【0021】
さらに、回転慣性質量ダンパー3としては特許文献2に示されているようなボールねじ機構を利用するものが現実的であるが、特に限定されることなく、たとえばてこ機構を利用したもの等、任意の形式の回転慣性質量ダンパーを採用可能であるし、特に図2に示すように磁力による減衰機構を備えたものも好適に採用可能である。
これは、ケーシング20内にボールナット21を回転自在に支持してそれにボールねじ軸22を螺着し、ボールナット21に磁性材料からなるフライホイール23を連結するとともにフライホイール23に対して磁石24を近接配置したものであり、この回転慣性質量ダンパー3が作動してフライホイール23が回転した際には磁石24によりフライホイール23に渦電流が発生して運動エネルギーを消費することにより減衰効果を得る構成のものである。
【0022】
以下、本発明の具体的な構成例を挙げてその効果を解析により検証する。
本体梁2をH-800×300×16×28×18のH形鋼、断面二次モーメントI=309000cm4、せん断断面積Aw=128cm2、自重227kg/mとし、その本体梁2に単位面積重量4750N/m2、奥行き6.4m、スパン18mのスラブ4が一体化した合成梁を想定し、それを解析対象とする。
スラブ4との合成効果により断面二次モーメントは本体梁2単体の場合の2倍とする。主振動系としての減衰は一次固有振動数に対し1%の初期剛性比例型とする。
この主振動系は固有値解析により一次固有振動数は6.22050Hz、刺激係数β=1.31868、有効質量4.253×104kgである。
【0023】
比較例として、図3(a)に示すようにダンパーがない場合をCase1とする。
また、他の比較例として、図3(b)に示すように回転慣性質量ダンパー3を梁中央位置に設置して斜材5により作動させる場合をCase2とする。Case2は基本的には図6に示したものと同様であるが、ここでは斜材5の両端を本体梁2の梁端から1400mm内側の位置に固定して全副15.2mとし、ライズ700mmとしている。
その斜材5としてはφ77mmの鋼棒を用い、斜材5のばね剛性Kd=2.097×106N/mとする。Case2での回転慣性質量ダンパー3の減衰係数Cd=1.479×104N/(m/s)、慣性質量md=1222.9kgとする。
【0024】
本発明の具体例として、図3(c)に示すように、本体梁2の両端部の両側にそれぞれ長さ2.5mの片持ち梁8の基端を固定し、全4台の慣性質量ダンパー3を各片持ち梁8の先端に下向きに設置し、各回転慣性質量ダンパー3の下端を本体梁2に対して板ばね11を介して連結する。
本発明での回転慣性質量ダンパー3の諸元は、減衰係数Cd=6.316×104N/(m/s)、慣性質量md=5221.0kgとする。
本解析では板ばね11のばね剛性を無視して片持ち梁8のばね剛性のみを付加ばねとして評価することとし、付加ばねとしての片持ち梁8をC-450×138×9×14の溝形鋼としてそのばね剛性Kd=8.954×106N/mとする。但し、板ばね11のばね剛性を考慮して片持ち梁8と板ばね11との総合ばね剛性をそのように設定しても同様である。
【0025】
本体梁2の中央を載荷点として3〜9Hzのスウィープ加振(荷重100N)を与え、載荷点での応答加速度を求め、入力波形と出力波形のスペクトル比を算定した結果を図4に示す。
Case1では6.2Hzに非常に大きなピークが存在しているが、Case2ではそれが激減している。
また、本発明のCase3では、TMDの設置位置を本体梁2の端部に変更したにも係わらず、TMDとしての諸元を適切に設定してCase2の場合に比べて慣性質量と減衰性能を大きくしたことにより、Case2と同等の効果が得られることが確認できた。
【0026】
次に、本体梁2の中央に歩行荷重を与えた場合の加速度応答を求め、その1/3オクターブバンド解析を行った結果を図5に示す。歩行波形は共振が生じやすいように固有振動数の倍調波(1/2として3.11Hz)となるように刻み時間を調節して与えた。荷重レベルは二人歩行を想定して原波形の1.5倍とした。
その結果として、Case1では最大8gal程度となって非常に大きい応答となるが、Case2ではそれが激減しており、さらに本発明のCase3でもCase2と同程度の応答レベルが得られることが確認できた。
【0027】
以上のことから、本発明によれば本体梁2の端部に短スパンの片持ち梁8を介して回転慣性質量ダンパー3を設置することによっても、回転慣性質量ダンパー3を本体梁2の中央部に設ける場合と同等の制振効果が得られるものであり、したがってTMDとしての構成の簡略化と合理化を図り、かつ梁貫通孔や小梁の設置位置に対しての制約を軽減しつつ、優れた制振効果が得られる有効適切な振動低減機構を実現することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 柱
2 本体梁
3 回転慣性質量ダンパー
4 スラブ
8 片持ち梁
9 スチフナ
10 リブ
11 板ばね
12 連結具
20 ケーシング
21 ボールナット
22 ボールねじ軸
23 フライホイール
24 磁石
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7