【実施例】
【0035】
図2は、本実施形態に係る移動通信システムの実施例である。この移動通信システムは、OFDMA方式及びMIMO技術を用いている。
図2において、マクロ基地局101は、従来と同様の構成であり、広域のセル110を提供する。
図2には、マクロ基地局101が1台のみ図示しているが、実際には複数のマクロ基地局101が提供するセル110により連続した移動通信サービスエリアが形成される。マイクロ基地局1−1,1−2は、本実施形態に係る無線基地局装置1から構成されている。マイクロ基地局1−1,1−2とマクロ基地局101とはバックボーン回線(図示せず)を介してデータを送受する。
【0036】
本実施例では、マクロ基地局101が提供するセル110において、多くのユーザ端末が集中して存在するエリア(ホットゾーン)に対し、トラヒックの負荷分散対策として、マイクロ基地局1−1,1−2が設置されている。ホットゾーンとしては、例えば繁華街や駅等が考えられる。マイクロ基地局1−1,1−2の送信電力は、マクロ基地局101の送信電力よりも小さい。従って、マイクロ基地局1−1,1−2が提供するセル211,212は、マクロ基地局101が提供するセル110に包含されている。
【0037】
なお、本実施例では、本実施形態に係る無線基地局装置1をマイクロ基地局に適用してホットゾーンに対し設置しているが、マイクロ基地局よりもさらに送信電力が小さいピコ基地局等の小型基地局に本実施形態に係る無線基地局装置1を適用して、ホットゾーンに対し設置してもよい。
【0038】
マクロ基地局101は、データ送信タイミングの調整における主である基地局(主基地局)として定義される。マイクロ基地局1−1,1−2は、データ送信タイミングの調整における従である基地局(従基地局)として定義される。マクロ基地局101(主基地局)とマイクロ基地局1−1,1−2(従基地局)とは、時間同期が取れている。マクロ基地局101とマイクロ基地局1−1,1−2とは、同一周波数帯を用いて無線通信を行う。基地局連携送信を行う際には、マイクロ基地局1−1,1−2(従基地局)は、データ送信タイミングをマクロ基地局101(主基地局)に合わせる。マイクロ基地局1−1,1−2は、マクロ基地局101が設置されている位置の情報を保持している。
【0039】
図2において、ユーザ端末2−1は、マイクロ基地局1−1が提供するセル211のセル境界に在る。マクロ基地局101とマイクロ基地局1−1は、ユーザ端末2−1に対して、基地局連携送信を行う。ユーザ端末2−2は、マイクロ基地局1−1が提供するセル211のセル境界に在る。マクロ基地局101とマイクロ基地局1−1は、ユーザ端末2−2に対して、基地局連携送信を行う。従って、マクロ基地局101とマイクロ基地局1−1は、ユーザ端末2−1とユーザ端末2−2に対して、同時に基地局連携送信を行う。ユーザ端末2−3は、マイクロ基地局1−2が提供するセル212のセル境界に在る。マクロ基地局101とマイクロ基地局1−2は、ユーザ端末2−3に対して、基地局連携送信を行う。
【0040】
次に、
図3を参照して、本実施例におけるデータ送信タイミング制御処理を説明する。
図3は、本実施例に係るデータ送信タイミング制御処理のシーケンスチャートである。
図3では、
図2に示すマイクロ基地局1−1,1−2を特に区別しないでマイクロ基地局1と称する。同様に、ユーザ端末についても特に区別しないでユーザ端末2と称する。
【0041】
図3において、マクロ基地局101(主基地局)とマイクロ基地局1(従基地局)とはバックボーン回線を介してデータを送受する。ユーザ端末2は、マイクロ基地局1が提供するセルのセル境界に在り、マイクロ基地局1と無線回線を介してデータを送受している。
【0042】
ステップS1:マイクロ基地局1、マクロ基地局101およびユーザ端末2の間で連携通信判断・調整処理を行って、基地局連携送信を用いた通信を行うか否かを判断する。この判断は、定期的に取得される、ユーザ端末2が接続する基地局(マイクロ基地局1)の受信品質及び該マイクロ基地局1の近傍に在る基地局(マクロ基地局101等)の受信品質など、に基づいて行われる。ここでは、マイクロ基地局1とマクロ基地局101は、ユーザ端末2に対して、基地局連携送信を用いた通信を行うと判断したとする。
【0043】
ステップS2:ユーザ端末2は、マクロ基地局101からの受信電力とマイクロ基地局1からの受信電力とを測定する。さらに、ユーザ端末2は、マクロ基地局101からの信号の伝搬遅延時間とマイクロ基地局1からの信号の伝搬遅延時間との差(伝搬遅延時間差)を測定する。
【0044】
ステップS3:ユーザ端末2は、マイクロ基地局1に対して、マクロ基地局101からの受信電力及びマイクロ基地局1からの受信電力を示す情報を格納する受信電力差情報と、伝搬遅延時間差を示す伝搬遅延時間差情報と、自端末の位置を示す端末位置情報とを送信する。ここで、マイクロ基地局1は、同時に基地局連携送信を行うユーザ端末2が複数存在する場合には、複数のユーザ端末2からそれぞれに、受信電力差情報、伝搬遅延時間差情報および端末位置情報を受信する。
【0045】
ステップS4:マイクロ基地局1は、ユーザ端末2から受信した情報を用いて、ユーザ端末選出処理を行う。
【0046】
ここで、
図4を参照して、ステップS4のユーザ端末選出処理を説明する。
図4は、本実施例に係るユーザ端末選出処理のフローチャートである。
ステップS11:ユーザ端末2から受信した受信電力差情報に基づいて、連携基地局の受信電力の差の絶対値が最小であるユーザ端末2を抽出する。あるユーザ端末2から受信した受信電力差情報は、当該ユーザ端末2に対して基地局連携送信するマクロ基地局101とマイクロ基地局1とについて、それぞれの受信電力を示す。このマクロ基地局101の受信電力とマイクロ基地局1の受信電力との差が、当該ユーザ端末2に係る連携基地局の受信電力の差である。
【0047】
ステップS12:ステップS11で抽出されたユーザ端末2が複数あるかを判断する。この結果、複数ある場合にはステップS13に進み、1つしかない場合にはステップS14に進む。
【0048】
ステップS13:ステップS11で抽出された複数のユーザ端末2のそれぞれについて、端末位置情報に基づいてユーザ端末2とマクロ基地局101(主基地局)との間の距離を算出する。そして、該複数のユーザ端末2の中から、該算出した距離が最も短いユーザ端末2を選出する。あるいは、ステップS11で抽出された複数のユーザ端末2のそれぞれについて、マクロ基地局101(主基地局)からの受信電力を調べ、該マクロ基地局101からの受信電力が最も大きい(伝搬ロスが最も小さい)ユーザ端末2を選出する。
【0049】
ステップS14:ステップS11で抽出された唯一のユーザ端末2を選出する。
【0050】
説明を
図3に戻す。
ステップS5:ステップS4で選出されたユーザ端末2の伝搬遅延時間差情報が示す伝搬遅延時間差を、送信タイミング調整量に決定する。これにより、マイクロ基地局1(従基地局)の送信遅延付加部15は、各ユーザ端末2に対して、データを送信する際に、共通して該送信タイミング調整量の時間を遅延させる。このとき、送信遅延付加部15は、マクロ基地局101(主基地局)のデータ送信タイミングを基準にして、送信タイミング調整量の時間を遅延させる。
【0051】
ユーザ端末2とマクロ基地局101間の伝搬遅延時間をτ
マクロ、ユーザ端末2とマイクロ基地局1間の伝搬遅延時間をτ
マイクロとする。このとき、連携基地局間の伝搬遅延時間差Δは、
Δ=τ
マクロ−τ
マイクロ
と表される。
本実施例では、マクロ基地局101のデータ送信タイミングを基準として、マイクロ基地局1のデータ送信タイミングを伝搬遅延時間差Δだけ遅らせる。従って、マクロ基地局101のデータ送信タイミングを基準にすると、マイクロ基地局1からユーザ端末2までの総伝搬遅延時間は、
τ
マイクロ+Δ=τ
マイクロ+τ
マクロ−τ
マイクロ=τ
マクロ
となる。これにより、マクロ基地局101とマイクロ基地局1のデータ送信タイミングを調整することができる。
【0052】
図5は、本実施例に係る、ユーザ端末の位置に応じた、マクロ基地局101とマイクロ基地局1の各受信電力P101,P211と、伝搬遅延時間差D201,D211,D212を示す概念図である。
図5において、伝搬遅延時間差D201はデータ送信タイミング調整前であり、伝搬遅延時間差D211,D212はデータ送信タイミング調整後である。伝搬遅延時間差D211は、マイクロ基地局1(従基地局)のセル211におけるマクロ基地局101(主基地局)に近い側において、連携基地局の受信電力の差の絶対値が最小であるユーザ端末2のデータ送信タイミング調整結果である。伝搬遅延時間差D212は、マイクロ基地局1(従基地局)のセル211におけるマクロ基地局101(主基地局)に遠い側において、連携基地局の受信電力の差の絶対値が最小であるユーザ端末2のデータ送信タイミング調整結果である。なお、マクロ基地局101とマイクロ基地局201の各電波の進行方向が同一である地点では、各基地局101,201からの距離が伸びても、伝搬距離差は変わらない。従って、
図5において、マイクロ基地局1(従基地局)のセル211におけるマクロ基地局101(主基地局)に遠い側において、連携基地局の受信電力の差の絶対値が最小であるユーザ端末2のデータ送信タイミング調整を行う場合には、マイクロ基地局1の地点における伝搬遅延時間差(マクロ基地局101からマイクロ基地局1までの伝搬遅延時間)を送信タイミング調整量としてデータ送信タイミングを調整すればよい。
【0053】
本実施例によれば、マクロ基地局101とマイクロ基地局1とが同時に基地局連携送信を行う対象である複数のユーザ端末2のうち、連携基地局の受信電力の差の絶対値が最小であるユーザ端末2における連携基地局間の伝搬遅延時間差を、該複数のユーザ端末2に対する共通した送信タイミング調整量として使用する。これにより、複数のユーザ端末2に共通したデータ送信タイミングの調整を行うことができるという効果が得られる。
【0054】
また、基地局連携送信を用いた通信を行うユーザ端末2のうち、連携基地局の受信電力の差の絶対値が最小であるユーザ端末2は、基地局連携送信を行わない場合に、所望基地局(マイクロ基地局1)からの受信電力と干渉基地局(マクロ基地局101)からの受信電力との差の絶対値が最小であるので、受信信号電力対干渉電力比(Signal to Interference Ratio:SIR)が最も悪いユーザ端末である。ここで、基地局連携送信を行うことによって干渉電力(マクロ基地局101からの受信電力)を所望信号電力として活用することができるので、SIRが最悪のユーザ端末2は最も効率がよい。従って、SIRが最悪のユーザ端末2における連携基地局間の伝搬遅延時間差を複数のユーザ端末2に共通した送信タイミング調整量とすることによって、連携基地局間の伝搬遅延時間差による通信品質の劣化を軽減しながら、電波利用効率の向上に寄与することができる。
【0055】
なお、
図3のステップS2において、信号伝搬遅延時間は、例えばLTE(Long Term Evolution)システムの場合には、LTEの仕様に規定されているRSTD(Reference Signal Time Difference)を用いることにより求めることができる。また、以下に示す方法1又は2を用いて信号伝搬遅延時間を求めてもよい。
(方法1)マクロ基地局及びマイクロ基地局からそれぞれに信号伝搬遅延時間の測定用に送信時刻を格納したパケットを送信し、ユーザ端末が当該パケットを受信した時刻を記憶する。そして、パケットに格納された送信時刻と受信時刻から当該パケットの伝搬遅延時間を計算する。
(方法2)マクロ基地局及びマイクロ基地局からそれぞれに信号伝搬遅延時間の測定用に自基地局の位置座標を格納したパケットを送信する。当該パケットを受信したユーザ端末は、当該パケットに格納された基地局の位置座標と、GPS等により求められる自ユーザ端末の位置座標とから当該基地局と自ユーザ端末間の距離を計算し、当該距離を光速で割ることにより伝搬遅延時間を計算する。
【0056】
また、
図3のステップS3において、端末位置情報は、ユーザ端末2が備える位置測定装置(例えばGPS)により取得される。
【0057】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述した実施例では、データ送信タイミングの調整における主である基地局のセルは、従である基地局のセルを包含するようにしたが、これに限定されない。例えば、
図6に示されるように、セルの一部分が重複する2つの基地局のうちいずれか一方を主である基地局とし、もう一方を従である基地局として定義してもよい。
【0058】
また、受信電力差情報として、例えばSIRを用いてもよい。
【0059】
なお、上述した実施例では、基地局連携送信の対象である複数の無線端末の中から、受信電力差情報に基づいて受信電力差が最小である無線端末を選出し、SIRが最悪であるユーザ端末2の通信品質を最も改善するようにデータ送信タイミングを調整しているが、本発明に係る無線端末選出方法はこれに限定されない。例えば、各無線端末における受信電力差の度数分布グラフを作成し、その度数分布グラフにおいて受信電力差の中央値をとる無線端末における伝搬遅延時間差を送信タイミング調整量としてデータ送信タイミングを調整してもよい。この場合には、基地局連携送信を行う対象である全無線端末に対して平均的な送信タイミング調整を行うことができる。
【0060】
あるいは、各無線端末における受信電力差の度数分布グラフにおいて受信電力差の最頻値をとる無線端末における伝搬遅延時間差を送信タイミング調整量としてデータ送信タイミングを調整してもよい。この場合には、基地局連携送信を行う対象である最も多くの無線端末に対して送信タイミングを調整することができる。
【0061】
なお、送信タイミング調整量として用いる伝搬遅延時間差を採用する候補にする無線端末は、基地局連携送信を行う対象である全無線端末であってもよく、又は、基地局連携送信する基地局からの受信電力が所定値を超える無線端末のみであってもよい。該候補として、基地局連携送信する基地局からの受信電力が所定値を超える無線端末のみとする場合には、例えば、基地局連携送信を行うことによって所望のスループットを満たすことができる無線端末のみを、送信タイミング調整量を決定する際に考慮する対象とすることが可能となる。
【0062】
また、上述した実施例では、無線端末からのフィードバック情報(受信電力差情報、伝搬遅延時間差情報)を用いてデータ送信タイミングの調整を行なうが、これに限定されない。例えば、マイクロ基地局の設置後に伝測車等を用いてドライブテストを行い、当該ドライブテストの結果得られる受信電力差(マクロ基地局からの受信電力とマイクロ基地局からの受信電力との差)が最も小さくなる(SIR=0dBとなる)地点における伝搬遅延時間差(マクロ基地局からの伝搬遅延時間とマイクロ基地局からの伝搬遅延時間との差)を送信タイミング調整量としてデータ送信タイミングの調整を行なってもよい。