(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記嵌合凸部の突出先端には、上下方向で突出基端側から突出先端側に向かうにしたがって漸次、断面視で柱の中心線側に向けて傾斜する差し込み端部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の柱梁鉄骨構造。
前記複数の梁連結部は、上下方向に配置され、それぞれの前記嵌合凸部又は前記嵌合凹部の位置が平面視で梁軸方向にずれた位置であり、下側の前記梁連結部が上側の前記梁連結部よりも前記本体部から離れた位置にあることを特徴とする請求項1に記載の柱梁鉄骨構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で開示されているようなボルト締めによって鉄骨部材同士を接合する柱梁接合構造では、ボルトを締める作業環境が苛酷となる条件下では、長時間にわたっての作業が困難であり、作業効率が低下することから、その点で改良の余地があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、嵌め合わせのみの柱梁鉄骨の接合構造とすることで接合作業の無人化が可能となり、過酷な作業環境であっても作業効率を低下させることなく施工することができる柱梁鉄骨構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る柱梁鉄骨構造では、柱と梁を備えた鉄骨部材のうち一方の第1部材に上下方向に向けて突出する嵌合凸部が設けられ、第1部材に接合する他方の第2部材に嵌合凸部を嵌合させる嵌合凹部が設けられ、嵌合凸部と嵌合凹部とが嵌合した状態で、第1部材と第2部材との水平方向への相対移動が規制され
、柱同士を上下方向に連結する接合部材が設けられ、柱の材軸方向の両端には、それぞれ嵌合凸部又は嵌合凹部が設けられた第1接合端部を有し、接合部材の上下方向の両端には、それぞれ第1接合端部に対応して嵌合する嵌合凸部又は嵌合凹部が設けられた第2接合端部を有し、梁の材軸方向の両端には、それぞれ嵌合凸部又は嵌合凹部が設けられた第3接合端部を有し、接合部材には、第3接合端部に対応して嵌合する嵌合凸部又は嵌合凹部が設けられた第4接合端部を有し、第4接合端部は、柱と同径の本体部における複数箇所から水平方向に張り出した梁連結部を有し、梁連結部のそれぞれに嵌合凸部又は嵌合凹部が設けられた構成をなし、これら梁連結部が梁の端部と接合することを特徴としている。
【0007】
本発明では、第1部材の嵌合凸部と第2部材の嵌合凹部とを上下方向に嵌合させることで、第1部材と第2部材との水平方向への相対移動が規制された状態で接合することができる。この場合、嵌め合いによる接合方法となり、従来のようなボルトの締め付けによる接合方法ではないので、クレーンによる吊り下ろしのみの作業が可能となる。
したがって、ボルトを締める作業が困難な環境であっても、クレーンの操作のみで接合作業を行うことができることから、鉄骨部材の接合箇所に人が入らずに済み、無人で柱や梁などの鉄骨部材を建て込むことができる。
【0008】
そして、接合された第1部材と第2部材とは、互いに水平方向への相対移動が規制され、さらに上側の部材の自重により上下方向への移動も規制されることから、構造性能も十分に発揮することができる。
【0010】
また、本発明では、接合部材と柱とがそれぞれの嵌合凸部と嵌合凹部とを嵌合させることで、柱同士を接合部材を介して上下方向に接合することができる。例えば、接合部材の軸方向の両端を嵌合凹部とすることで、柱の上下端とも嵌合凸部とすることができ、柱の構造を簡単にすることができるうえ、柱を上下逆向きにしても使用することができる。
また、本発明では、接合部材と梁とがそれぞれの嵌合凸部と嵌合凹部とを上下方向に嵌合させることで、接合部材と梁との水平方向への相対移動が規制された状態で、柱と梁とを接合部材を介して接合することができる。
【0011】
また、本発明に係る柱梁鉄骨構造では、嵌合凸部には、上下方向で突出基端側から突出先端側に向かうにしたがって漸次先細りとなる凸部側テーパ面が設けられ、嵌合凹部には、嵌合凸部と嵌合した状態で凸部側テーパ面と一致する凹部側テーパ面が形成されていることが好ましい。
【0012】
この場合、嵌合凸部と嵌合凹部とが嵌合した状態で、凸部側テーパ面と凹部側テーパ面とが隙間無く接触することとなり、双方の部材同士のガタツキが抑えられるとともに、双方の部材間での応力の伝達がより確実になる利点がある。
【0013】
また、本発明に係る柱梁鉄骨構造では、嵌合凸部の突出先端には、上下方向で突出基端側から突出先端側に向かうにしたがって漸次、断面視で柱の中心線側に向けて傾斜する差し込み端部が設けられていることがより好ましい。
【0014】
本発明では、差し込み端部を嵌合凹部内に挿入させることで、第1部材と第2部材との接合位置がずれていても、嵌合凸部を嵌合凹部に挿入させながら容易に所定位置で嵌合させることができるため、嵌合凸部を嵌合凹部に差し込む際の誤差を吸収することができる。そのため、接合時に精度の高い位置決め作業が不要となり、クレーンによる作業を確実に行うことができる。
【0018】
また、本発明に係る柱梁鉄骨構造では、複数の梁連結部は、上下方向に配置され、それぞれの嵌合凸部又は嵌合凹部の位置が平面視で重なる位置であってもよい。
【0019】
この場合、接合部材における上下方向の梁連結部に設けられる嵌合凸部又は嵌合凹部が、平面視で重なる位置に設けられているので、梁を横方向(水平方向)にスライドさせ、梁連結部に設けられる嵌合凸部又は嵌合凹部と、梁に設けられる嵌合凸部又は嵌合凹部とが上下方向に重なった位置とした後、梁を上下方向に移動させて接合部材と梁を嵌合凸部及び嵌合凹部の嵌合により接合することができる。
そして、本発明では、梁連結部の張り出し長さ寸法を短くすることができ、部材コストを低減できる利点がある。
【0020】
また、本発明に係る柱梁鉄骨構造では、複数の梁連結部は、上下方向に配置され、それぞれの嵌合凸部又は嵌合凹部の位置が平面視で梁軸方向にずれた位置であり、下側の梁連結部が上側の梁連結部よりも本体部から離れた位置にあることが好ましい。
【0021】
本発明では、下側の梁連結部の嵌合凸部又は嵌合凹部の上方に、上側の梁連結部の嵌合凸部又は嵌合凹部が重なっていないので、梁を梁連結部の上方から降下させるだけで、双方の部材の嵌合凸部と嵌合凹部とを嵌合させることができる。そのため、その嵌合の際に梁を横方向(水平方向)へスライドさせる必要がなく、クレーンで吊った梁を効率よく接合部材に対して接合することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の柱梁鉄骨構造によれば、嵌め合わせのみの柱梁鉄骨の接合構造とすることで接合作業の無人化が可能となり、過酷な作業条件下でも作業効率を低下させることなく施工することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態による柱梁鉄骨構造について、図面に基づいて説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、本第1の実施の形態による柱梁鉄骨構造1は、柱2と梁3からなり、例えば既設建物Pの周囲を囲うようにして設置されるものであり、地面Gに設置される移動式等のクレーンKを使用して無人で組み立てられる構造となっている。
ここで、既設建物Pは、平面視で四角形状をなし、複数階建て(例えば4〜5階建て)の建物を対象としている。
【0026】
具体的に柱梁鉄骨構造1は、既設建物Pの外壁から所定の間隔をあけて配置されており、既設建物Pの角部付近に柱2(2A、2B、2C、2D)がそれぞれ地面Gに自立した状態で立設され、柱2、2同士間には4段の梁3(3A、3B、3C、3D)が所定の高さに設けられた構造となっている。
ここで、柱2は、
図1において、手前に見える柱を符号2Aとし、左側の柱を符号2Bとし、右側の柱を符号2Cとし、
図1で奥寄りに見える柱を符号2Dとする。
また、梁3において、下から順に1段目、2段目、…とする。
【0027】
図2に示すように、本柱梁鉄骨構造1は、4段目(最上段)の梁3Dには屋根材4が架設されるとともに、地面Gに立設される各柱2が柱支持部材5を介して支持されている。さらに、柱梁鉄骨構造1の外周側には、3段目及び4段目の梁3C、3Dと柱2とによって囲われた架構を塞ぐパネル材6と、3段目の梁3Cより下方部分を覆う膜材7とが設けられている。そして、1段目と2段目の梁3A、3Bの外側には、これら梁3A、3Bの外側面との間に膜材7を挟持するための膜材押さえ梁8が設けられている。
【0028】
パネル材6は、例えばユニット化された板状の外壁材であり、3段目と4段目の梁3C、3Dや柱2に適宜な固定手段により固定されている。
【0029】
膜材7は、例えばその上端を下から3段目の梁3Cに固定し、下端を地面Gあるいは最下段の梁3Aに固定することで取り付けられている。なお、本実施の形態では、1段目と2段目の梁3A、3Bの外側には、これら梁3A、3Bに沿って平行となるように膜材押さえ梁8が配置され、この膜材押さえ梁8と梁3A(3B)とで膜材7を挟持することで膜材7のバタつきを防止している。
【0030】
柱2は、
図3(a)、(b)及び
図4に示すように、断面視で正方形をなし、その四隅のそれぞれにH形鋼からなる主軸材21、21、…が柱材軸方向Y(上下方向)に沿って平行に配され、柱2の側面に相当する部分には角形鋼管からなるラチス材22が配置されたラチス構造となっている。
【0031】
梁3は、
図4及び
図5に示すように、柱2と同様に断面視で四角形であり、その四隅のそれぞれにH形鋼からなる主軸材31、31、…が水平方向の梁材軸方向Xに沿って平行に配され、梁3の側面に相当する部分には角形鋼管からなるラチス材32が配置されたラチス構造となっている。
【0032】
次に、上下方向に連結される柱2、2同士の接合構造について、図面に基づいて説明する。
図3に示すように、柱2は、接合部T(T1、T2)を介して上下方向に連結可能となっている。接合部Tとしては、柱2、2同士のみを接合する第1接合部T1と、柱2、2同士及び梁3を接合させるための接合部材10を使用した第2接合部T2と、の2タイプが設けられている。なお、
図3(a)は
図1の符号2A、2Bの柱を示しており、
図3(b)は
図1の符号2C、2Dの柱を示している。
【0033】
図3(a)に示す柱2は、柱材軸方向Yの下端(又は上端)に第1接合部T1を構成する接合構造を備え、上端(又は下端)に第2接合部T2を構成する接合部材10を固定させた構成の柱と、柱材軸方向Yの両端(上端、下端)に第1接合部T1を構成する接合構造を備え、柱材軸方向Yの中央部に第2接合部T2を構成する接合部材10を介装させた構成の柱と、がある。また、
図3(b)に示す柱2は、柱材軸方向Yの両端(上端、下端)に第2接合部T2を構成する接合部材10に連結される接合構造を備えている。なお、上下一端に接合部材10を固定させた柱2は、現地で組み立てる前に例えば工場や所定の組立ヤード等で接合部材10を柱端部に予め固定させたものが使用される。
前記柱2の接合構造は、上端及び下端から柱材軸方向Yの外側に突出する第1嵌合突出部23(嵌合凸部、第1接合端部)と、第1嵌合突出部23を嵌合可能な第1嵌合中空部24(嵌合凹部)と、のいずれか一方を備えたものである。
【0034】
図6乃至
図8は、第1接合部T1において、柱2の下端に設けられる第1嵌合突出部23、及び柱2の上端に設けられる第1嵌合中空部24の接合構造を示している。
第1嵌合突出部23は、4本の主軸材21に対して水平方向の内側に配置された状態でそれら主軸材21に固定された断面視で四角形状の突出本体25と、その突出本体25の先端に設けられた差し込み端部26とからなる。突出本体25は、主軸材21に固定される基端から突出端(差し込み端部26)へ向かうにしたがって漸次先細りとなる第1テーパ面25a(凸部側テーパ面)が形成されている。差し込み端部26は、突出本体25の断面視で四隅から下方に向けて突出しており、それぞれ突出する方向(下方)に向かうにしたがって漸次、柱2の中心軸線O側に向けて傾斜するとともに、先端が尖った形状となっている。
【0035】
第1嵌合中空部24は、柱2の中心軸線Oと同軸に貫通する開口部であり、上方から第1嵌合突出部23が差し込まれて嵌合される構成となっている。第1嵌合中空部24の内面には、突出本体25の第1テーパ面25aに対応した第2テーパ面24a(凹部側テーパ面)が形成されている。つまり、第2テーパ面24aは、上端2aから下端2bに向かうにしたがって漸次、柱2の中心軸線O側に向けて傾斜する傾斜面を形成している。これにより、下側の柱2の第1嵌合中空部24に上側の柱2の第1嵌合突出部23が差し込まれると、互いのテーパ面24a、25a同士が隙間無く接触することとなり、ガタツキが抑えられ、双方間で応力の伝達がより確実になる。
【0036】
なお、第1接合部T1では、上下の柱2、2同士が互いに第1嵌合突出部23と第1嵌合中空部24で嵌合した状態で、双方の柱材軸方向Yの端部2a、2b(
図6、
図8参照)同士が当接し、これにより上下の柱2、2間で上下方向の荷重が伝達される構成となっている。
【0037】
図4に示すように、接合部材10は、第2接合部T2において、上下方向に柱2、2同士を連結するとともに梁3の梁材軸方向Xの一端を連結するためのものである。
具体的に接合部材10は、
図9乃至
図12に示すように、柱2と同軸に接合される本体部11と、本体部11より梁3の梁材軸方向Xへ向けて水平方向に張り出した上下一対の梁連結部12A、12B(第4接合端部)とを備えている。本実施の形態では、1箇所の接合部材10に対して2本の梁3、3が接続されるため、本接合部材10には一対の梁連結部12A、12Bからなるものが2セット設けられ、各セットが梁3に対応する位置に配置されている。
【0038】
本体部11は、柱2とほぼ同じ外形の四角形状をなし、その両端(上端11a、11b)にはそれぞれ柱材軸方向Yに貫通する第2嵌合中空部13(嵌合凹部、第2接合端部)が設けられている。この第2嵌合中空部13には、上述した柱2の第1嵌合突出部23が差し込まれて嵌合される。そして、第2嵌合中空部13の内面には、
図12に示すように、第1嵌合突出部23における突出本体25の第1テーパ面25aに対応した第3テーパ面13a(凹部側テーパ面)が形成されている。つまり、第3テーパ面13aは、本体部11の端部(上端11a、下端11b)から柱材軸方向Yの内側に向かうにしたがって漸次、柱2の中心軸線O側に向けて傾斜する傾斜面を形成している。
これにより、
図13及び
図14に示すように、第2嵌合中空部13に柱2の第1嵌合突出部23が差し込まれると、互いのテーパ面13a、25a同士が隙間無く接触することとなり、ガタツキが抑えられ、双方間で応力の伝達がより確実になる。
【0039】
なお、
図12に示すように、第2接合部T2では、柱2と接合部材10同士が互いに第1嵌合突出部23と第2嵌合中空部13で嵌合した状態で、双方の柱材軸方向Yの端部2b、11a(2a、11b)同士が当接し、これにより柱2と接合部材10間で上下方向の荷重が伝達される構成となっている。
【0040】
図9乃至
図12に示すように、梁連結部12A、12Bは、本体部11の上下二箇所のそれぞれから梁3の梁材軸方向Xに平行となる方向に向けて同じ長さで延びる張出し部14が設けられ、さらに各張出し部14には上方に向けて突出するとともに先端側に四角錘状の先端部15aを有する凸状部15A、15B(嵌合凸部)が設けられている。なお、これら一対の梁連結部12A、12Bには、1本の梁3の端部が接合されている。
凸状部15A、15Bには、基端となる張出し部14の上面から先端部15a側へ向かうにしたがって漸次断面が小さくなる第5テーパ面15b(凸部側テーパ面)が形成されている。
【0041】
上下一対の梁連結部12A、12Bに設けられる凸状部15A、15Bは、平面視でほぼ重なった位置に配置されている。そして、下側の梁連結部12Bの先端部15aと、上側の梁連結部12Aの張出し部14の下面との間には間隔を有しており、その離間は後述する梁3の下部プレート33Bの厚さ寸法よりも大きい寸法である。なお、上側の凸状部15Aは、下側の凸状部15Bよりも大きい形状となっている。
【0042】
また、梁3の梁材軸方向Xの両端部には、それぞれ接合部材10の梁連結部12A、12Bに係合可能な接合端部33(第3接合端部)が設けられている(
図5参照)。この接合端部33は、
図11(a)及び(b)に示すように、梁3の上側に位置する一対の主軸材31A、31Bに連結する上部プレート33Aと、同じく梁3の下側に位置する一対の主軸材31C、31Dに連結する下部プレート33Bと、上部プレート33Aと下部プレート33Bとを一体的に接合する連結体33C(
図9及び
図12)とからなる。
【0043】
上部プレート33A及び下部プレート33Bには、それぞれ凸状部15A、15Bを差し込ませて嵌合させる開口穴34A、34B(嵌合凹部)が設けられている。これら開口穴34A、34Bは、それぞれ凸状部15A、15Bの位置に対応し、互いに平面視で重なる位置に配置されている。そして、これら開口穴34A、34Bには、それぞれ下面側から上面側へ向かうにしたがって漸次、開口断面積が小さくなる第4テーパ面34a(凹部側テーパ面)が形成されている。
これにより、
図15及び
図16に示すように、接合部材10の凸状部15A、15Bに梁3の接合端部33の開口穴34A、34Bを嵌合させると、互いのテーパ面15b、34a同士が隙間無く接触することとなり、ガタツキが抑えられ、双方間で応力の伝達がより確実になる。
【0044】
また、
図17乃至
図19に示すように、接合部材10には、膜材押さえ梁8を下方から支持する一対の支持材16(16A、16B)が設けられている。
ここで、膜材押さえ梁8は、梁3と同様に断面視で四角形であり、その四隅のそれぞれにH形鋼からなる主軸材81、81、…が梁材軸方向Xに沿って平行に配され、その膜材押さえ梁8の側面に相当する部分には角形鋼管からなるラチス材82が配置されたラチス構造となっている(
図1参照)。
【0045】
接合部材10に設けられる支持材16A、16Bは、それぞれ略L型の部材で本体部11より外側に突出され、膜材押さえ梁8の材軸方向の端部における上側と下側の2箇所を支持するようにして設けられている。つまり、上側支持材16Aは、膜材押さえ梁8の上側で柱2側に位置する主軸材81を支持している。下側支持材16Bは、上側支持材16Aよりもさらに外側に張り出しており、膜材押さえ梁8の下側の2本の主軸材81を支持している。これにより、接合部材10によって支持された膜材押さえ梁8は、
図1及び
図2に示すように、1段目と2段目の梁3A、3Bに沿って設けられ、これら梁3A、3Bと膜材押さえ梁8との間に膜材7を挟み込んで配置することで、膜材7のバタツキを防止している。
【0046】
図1に示すように、最上段(4段目)の梁3Dには、屋根材4(
図2参照)が設けられるとともに、4本の梁3D、3D、…によって四角形に配置される各角部に火打ち梁35が設けられている。
図20及び
図21に示すように、火打ち梁35は、上下に平行に配置される一対の軸材35a、35aと、これら一対の軸材35a、35a同士の間に配置されるラチス材35bと、上下一対の軸材35aのそれぞれの材軸方向の両端の下面から下方に向けて突出する突起部35cとを備えている。この突起部35cは、後述する連結ブラケット36の係合穴36bに対応する係合部35dと、係合部35dから下方に向けて漸次、先細りとなる傾斜面35eとが形成されている。
【0047】
最上段の梁3Dには、火打ち梁35の材軸方向の一端を接合するための連結ブラケット36が設けられている。この連結ブラケット36は、予め火打ち梁35を固定する梁3Dの所定位置に組み付けられており、既設建物P(
図1参照)側へ突出する張出し部36aが設けられ、その張出し部36aに上下方向に貫通するとともに、火打ち梁35の突起部35c(係合部35d)に係合可能な係合穴36bが設けられている。つまり、角部を構成する2本の梁3D、3Dの連結ブラケット36の係合穴36bに火打ち梁35の突起部35c(係合部35d)を係合させることで、取り付けることができる。
【0048】
なお、
図2に示す屋根材4については、具体的な構成の説明は省略するが、例えばユニット化された複数の屋根ユニットのそれぞれに上述した火打ち梁35と同様の突起部を設けておき、また最上段の梁3Dにも上述した連結ブラケット36と同様のブラケットを前記屋根ユニットの突起部に対応する位置に備えておくことで、この屋根ユニットを容易に固定することができる。
【0049】
図1及び
図2に示すように、地面Gに支持される柱2A、2B、2C、2Dは、それぞれの柱脚部を地面Gに設置させた状態で柱支持部材5によって支持されている。
柱支持部材5は、地面Gから長尺部材によって柱2や梁3を支持する構成であり、柱支持部材5を介して柱2を立設させることで、柱2の立設状態を安定させることができる。
【0050】
次に、上述した構成からなる柱梁鉄骨構造1を既設建物Pの周囲に組み立てる施工手順と、柱梁鉄骨構造1の作用について図面に基づいて詳細に説明する。
先ず、
図22(a)に示すように、クレーンKを使用して既設建物Pの角部付近に柱支持部材5によって支持させた状態で4本の柱2Aを所定の高さまで設置する。ここでは、1段目と2段目の梁3A、3B(
図1参照)に対応する接合部材10を設ける高さまで柱2を設置する。例えば
図3(b)に示す柱2の場合には、地面Gに接合部材10を配置し、その接合部材10の上側の
図12に示す第2嵌合中空部13に柱2の下側の第1嵌合突出部23を嵌合させ、さらにその柱2の上端2aに下から2段目の接合部材10を接合する。
【0051】
ここで、接合部材10と柱2との接合方法において、
図12、
図13、及び
図14に示すように、接合部材10の上端11aに柱2を設置する場合には、クレーンKで吊った柱2を移動させつつ、その下端2bに設けられる第1嵌合突出部23を接合部材10の第2嵌合中空部13に差し込み嵌合させることで、両者が接合される。このとき、柱2の自重により第2嵌合中空部13の第3テーパ面13aと突出本体25の第1テーパ面25aとが接触した状態で互いに同軸上に嵌合され、互いに水平方向への相対移動が規制される。つまり、この場合、嵌め合いによる接合方法となるので、クレーンKによる吊り下ろし作業のみとなり、クレーンKの操作のみで接合を行うことができる。
【0052】
また、柱2の第1嵌合突出部23には挿入端26が設けられているので、第1嵌合突出部23を第2嵌合中空部13に差し込む際の誤差を吸収することができる。つまり、挿入端26の先端部が第2嵌合中空部13内に挿入させることができれば、クレーンKで吊り下ろす前に接合部材10と柱2の中心軸線Oがずれていても、第1嵌合突出部23を第2嵌合中空部13に挿入させながら、クレーンKの吊り下ろしにしたがい中心軸線Oが自ずと合いつつ所定位置で嵌合させることができる。そのため、接合時に精度の高い位置決め作業が不要となり、クレーンKによる作業を確実に行うことができる。
【0053】
次に、
図22(b)に示すように、隣り合う柱2、2同士の間に最下段(1段目)の梁3Aを接合する。
ここで、接合部材10と梁3との接合方法は、
図4に示すように、接合部材10の梁連結部12A、12Bに梁3の接合端部33を係合させることによる。具体的には、
図15及び
図16に示すように、クレーンKで吊った梁3を移動させつつ、接合端部33の上部プレート33Aと下部プレート33Bとの開口穴34A、34Bを、それぞれ接合部材10の梁連結部12A、12Bの凸状部15A、15Bに差し込み嵌合させることで、両者が接合される。
【0054】
この場合、接合部材10側の上下一対の凸状部15A、15Bは、平面視で重なる位置にあるので、梁3を横方向(水平方向、
図15に示す矢印J方向)にスライドさせ、
図16のように梁3の下部プレート33Bが下側の凸状部15Bと上側の張出し部14との間に進入させてから、凸状部15A、15Bに開口穴34A、34Bが挿入されるように梁3を下降させる。
【0055】
このとき、梁連結部12A、12Bの開口穴34A、34B内の第4テーパ面34aと、凸状部15A、15Bの第5テーパ面15bとが接触した状態で互いに同軸に嵌合され、これにより梁3が接合部材10に対して水平方向への移動が規制された状態となる。つまり、この場合、嵌め合いによる接合方法となるので、クレーンKによる吊り下ろし作業のみとなり、クレーンKの操作のみで接合を行うことができる。
【0056】
次に、
図23(a)、(b)、及び
図24(a)に示すように、接合部材10を用いて2段目の梁3Bを接合するとともに、上述したものと同様の手順により柱2と梁3を順次接合する。そして、
図24(a)に示すように、最上段(4段目)の梁3Dを取り付けた後、4箇所の角部のそれぞれに火打ち梁35を設置する。この火打ち梁35を設置した時点で、この柱梁鉄骨構造1は安定した構造となる。
【0057】
次に、
図24(b)に示すように、1段目と2段目の梁3A、3Bの位置において、膜材押さえ梁8を設ける。具体的には、
図17乃至
図19に示すように、クレーンKで吊った膜材押さえ梁8を、接合部材10の上側支持材16Aに膜材押さえ梁8の上側の主軸材81を係止させつつ、下側支持材16Bに下側の主軸材81を載置させるようにして、接合部材10の外側で梁3に沿うようにして取り付ける。
さらに、
図25(a)に示すように、膜材7の上端7aを3段目の梁3Cに固定するとともに、膜材7を膜材押さえ梁8と梁3との間に配し、下端7bは地面Gに適宜な固定手段により固定することで設置する。
【0058】
次いで、
図25(b)に示すように、3段目と最上段(4段目)の梁3C、3D同士の間の開口を塞ぐようにしてパネル材6を設置した後、最上段の梁3Dに屋根材4を取り付けて柱梁鉄骨構造1の設置が完了となる。
【0059】
本実施の形態では、接合部材10は柱材軸方向Yの両端(上端11a、下端11b)ともに第2嵌合中空部13を設けた構成とすることで、柱2の両端を第1嵌合突出部23とすることができ、柱2の構造を簡単にすることができるうえ、柱2を上下逆向きにしても使用することができる。
【0060】
上述のように本第1の実施の形態による柱梁鉄骨構造では、嵌め合わせのみの柱梁鉄骨の接合構造とすることで、ボルト締めの作業をなくすことができ、従来のようなボルトの締め付けによる接合方法ではないので、クレーンKによる吊り下ろしのみの作業が可能となる。これによりボルトを締める作業が困難な環境であっても、クレーンKの操作のみで接合作業を行うことができることから、鉄骨部材の接合箇所に人が入らずに済み、接合作業の無人化が可能となり、過酷な作業条件下でも作業効率を低下させることなく施工することができる。
そして、接合された柱2と柱2同士、或いは柱2と梁3同士は、互いに水平方向への相対移動が規制され、さらに上側の部材の自重により上下方向への移動も規制されることから、構造性能も十分に発揮することができる利点がある。
【0061】
次に、本発明の柱梁鉄骨構造による他の実施の形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成について説明する。
【0062】
(第2の実施の形態)
図26及び
図27に示すように、第2の実施の形態による柱梁鉄骨構造は、接合部材10と梁3との接合構造を代えた構成である。すなわち、接合部材10Aは、下側の梁連結部12Bの張出し長さを上側の梁連結部12Aよりも長い構成であり、下側の凸状部15Bが上側の凸状部15Aよりも本体部11から離れた位置となるように梁3の梁材軸方向Xに沿ってずらした構成となっている。つまり、下側の凸状部15Bの上方には、上側の梁連結部12Aが重なって位置していない。
そして、梁3は、接合端部33における上部プレート33Aと下部プレート33Bの開口穴34A、34Bの位置を接合部材10Aの凸状部15A、15Bの位置に合わせて梁材軸方向Xにずらした位置に設けられている。つまり、上部プレート33Aは、下部プレート33Bよりも梁材軸方向Xで外側に張り出しており、その上側の開口穴34の下方に下部プレート33Bが位置しないようになっている。
【0063】
この場合、下側の梁連結部12Bの凸状部15Bの上方に、上側の梁連結部12Aの凸状部15Aが重なっていないので、
図26のように梁連結部12A、12Bの上方において、梁3の接合端部33を開口穴34A、34Bの位置を平面視で凸状部15A、15Bの位置に合わせた位置から降下させるだけで、
図27に示すように凸状部15A、15Bに開口穴34A、34Bを嵌合させることができる。そのため、その嵌合の際に、上述した第1の実施の形態のように梁3を横方向(水平方向)へスライドさせる必要がなく、クレーンで吊った梁3を効率よく接合部材10Aに対して接合することができる。
【0064】
以上、本発明による柱梁鉄骨構造の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では柱2側(接合部材10、10A側)に嵌合凸部を設け、梁3側に嵌合凹部を設けた構成としているが、柱2側を嵌合凹部とし、梁3側を嵌合凸部としても良い。例えば、
図28及び
図29に示すように、柱2の上下の所定位置に開口部27A、27B(嵌合凹部)を設け、梁3の上部フランジ33Aと下部フランジ33Bのそれぞれの下面には一対の開口部27A、27Bに対応する突起部37A、37B(嵌合凸部)を下方に向けて突出させた構成とすることができる。
【0065】
また、嵌合凸部と嵌合凹部とによる嵌合形状は本実施の形態に限定されることはなく、適宜な形状に設定することが可能である。例えば、角錐形状の突起だけでなく、円錐形状であってもよい。
さらに、本実施の形態では嵌合凹部と嵌合凸部との嵌合面にテーパを付けた傾斜面(第1テーパ面25a、第2テーパ面24a、第3テーパ面13a、第4テーパ面34a、第5テーパ面15b)とする構成としているが、このような傾斜面を設けない構成であってもかまわない。
【0066】
さらにまた、接合部材の位置、柱2や梁3の本数や形状、柱2の地面Gに対する設置構造などの構成については、既設建物Pの形状、建てる柱梁鉄骨構造の形状などの条件に応じて任意に設定することができる。
また、本実施の形態では屋根材4、パネル材6、膜材7、膜材押さえ梁8を設けているが、これらは他の部材、構成に変更することも可能であり、また省略してもよい。
【0067】
また、本実施の形態の柱梁鉄骨構造1は、既設建物Pを覆うように設ける場合を対象としているが、このような適用形態に制限されることはなく、既設建物Pが無い場所に柱梁鉄骨構造を適用することも勿論可能であり、また、屋外であることに限らず、例えば大空間を有する施設(ドーム型建築物など)内で柱梁鉄骨構造を建てるような場合にも適用することが可能である。
【0068】
また、本実施の形態では接合部材10の本体部11から上下一対の梁連結部12A、12Bを突出させた構成としているが、上下一対であることに限定されることはなく、3つ以上の梁連結部を設ける構成としても良い。例えば、本実施の形態の梁3における4本の主軸材31のそれぞれに対応する4本の梁連結部を設ける構成であってもかまわない。
【0069】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。