(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載のPCa部材を用いて壁を形成するとともに、前記PCa部材と幅寸法が同等とされて梁を兼用可能なハーフPCa版を用いて屋根または床としてのスラブを形成するためのPCa工法であって、
前記ハーフPCa版の垂直断面形状は、中央部が矩形断面形状の梁部とされているとともにその下部両側には底型枠部が側方に延出する断面略逆T字状に構成されており、
前記PCa部材を間隔をおいて対向配置する工程、
前記各PCa部材の頂部相互間に前記ハーフPCa版を架設した門形架構を構築する工程、
前記門形架構に対して同様の門形架構を連続せしめた状態で構築する工程、
各門形架構間における前記PCa部材間の中空部および前記ハーフPCa版の前記底型枠部どうしを突き合わせて設置することで形成される凹部内にコンクリートを充填して一連の壁およびスラブを形成する工程
を有することを特徴とするPCa工法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明のPCa工法により施工する建物の基本形態を模式的に示すものであり、(a)は平面図、(b)は梁間方向の断面図である。
【0012】
図示例の建物は平面形状が矩形の単層(平屋建て)の建物であって、本実施形態ではその規模はたとえば梁間方向(短辺方向)の長さが15m程度、桁行方向(長辺方向)の長さが40m程度、階高が10m程度を想定している。
また、この建物は原子力関連施設における建屋として使用されるものであって、壁面および屋根面は放射線に対する遮蔽性能が必要とされることから通常のRC造ラーメン構造による場合に比べて壁厚および屋根厚を十分に大きく(厚く)する必要があり、図示例の場合における壁厚および屋根厚はいずれもたとえば0.8〜1m程度とすることを想定している。
そのため、この建物の構造形式は、通常のラーメン構造における柱が省略されて壁全体が柱としても機能する壁構造の範疇に属するものとされ、かつ、屋根面自体が梁の機能を有して通常の梁も省略されたものとなっており、それら壁面全体と屋根面全体とで実質的に門形のラーメン架構が構成されているものである。
【0013】
そして、上記の建物はコーナー部を除いて壁の全体が本発明の実施形態であるPCa部材10により形成されている。すなわち、
図1に示す建物では(a)に示すように各コーナー部に断面形状が略正方形の中実のPCa部材1が配置されているが、それらのPCa部材1の間に梁間方向では9台、桁行方向では22台のPCa部材10が並設されていて、それらの全体で両方向の壁が形成されている。
【0014】
また、上記建物の屋根面はハーフPCa版20を主体として形成されている。すなわち、図示例の建物では、(b)に示すように屋根面を形成するためのハーフPCa版20が梁間方向に沿って架設されてその両端部が上記のPCa部材10の上端部に接合されて支持され、ハーフPCa版20上にコンクリートが打設されてそれ自体が梁として機能する大版厚の屋根面が形成されている。
【0015】
図2に壁用のPCa部材10の詳細を示す。
これは上述したように梁間方向および桁行方向の双方の壁を形成するためのもので、階高相当分の高さ寸法を有するとともに柱を兼用し得る厚さ寸法と幅寸法を有する長尺のプレキャストコンクリートからなる本体部11を主体として、その本体部に壁および柱として機能するうえで必要となる所要本数の縦筋12と横筋13とを所定位置に所定間隔で配筋したことを基本とするものである。
【0016】
具体的には、本体部11は
図2(c)、(d)に示すように内外二層の壁面部すなわち内部側の壁面部11aと外部側の壁面部11bを有するとともに、双方の壁面部11a、11bの幅方向中央が連結部11cにより一体に連結されることで水平断面形状が略エ字状ないし略H字状をなすものとされている。
各壁面部11a、11bにはそれぞれ幅方向に所定間隔をおいて複数本(図示例では各8本)の縦筋12が高さ方向に沿って配筋され、各縦筋12の下端部にはモルタル充填型のスリーブ継手12aが装着されている。
また、連結部11cには多数の横筋13が上下方向に間隔をおいて多段(図示例では50段)に配筋されている。各段の横筋13は中央部が連結部11cを水平方向に貫通して両端部が本体部11の側方に大きく突出する状態で壁厚方向に間隔をおいて2本ずつ配筋されている。
【0017】
このPCa部材10は、壁を形成するべき位置において(c)、(d)に示すように同一形状、同一寸法のものが横方向に並設されて双方のPCa部材10の内外二層の壁面部11a、11bの先端縁どうしが突き合わせられることにより、隣接配置された双方のPCa部材10の間に双方の壁面部11a、11bと双方の連結部11cとによる中空部11dが実質的に閉鎖空間として区画形成されるようになっている。そして、その際には中空部11d内において双方のPCa部材10における横筋13の先端部どうしがおのずと互いにラップし、したがって後段においてその中空部11d内にコンクリートを充填することにより双方のPCa部材10が横筋13どうしの重ね継手ないしあき重ね継手により構造的に接合され、これにより一連の壁が形成されるようになっている。
なお、上記のように横筋13どうしを重ね継手ないしあき重ねにより接合することから、隣接配置する双方のPCa部材10の双方の横筋13の位置を互いに干渉しない範囲で、かつ適切な重ね継手ないしあき重ね継手を構成するうえで支障のない範囲内で、上下方向あるいは左右方向にずらしておく必要がある。
【0018】
さらに、このPCa部材10の頂部は上記のハーフPCa版20の端部が接合される仕口部となることから、(b)に示すように内部側の壁面部11aは外部側の壁面部11bの上端よりも低い位置に留められてそこにはハーフPCa版20を支持するための顎部14が形成されているとともに、外部側の壁面部11bの頂部は仕口部に対してコンクリートを充填する際の型枠として機能するものとなっており、内部側の壁面部11aに配筋されている縦筋12の上端部は仕口部に突出する状態で立ち上げられている。
また、このPCa部材10は施工時にはPC鋼材(PC鋼棒あるいはPC鋼線)を緊張することで自立可能とされており、そのため、PC鋼材を本体部11の底部から頂部まで上下方向に貫通する状態で通すためのシース管15が所定位置に所定本数(図示例では内外の壁面部11a、11と連結部11cとの連結部にそれぞれ2本ずつ計4本)設けられている。
【0019】
本実施形態におけるPCa部材10の寸法、質量としては、上記のように高さ寸法を階高相当分の10m程度、厚さ寸法を壁厚相当分の0.8〜1m程度とする場合には、幅寸法をたとえば1.6m程度として、その質量を最大でも一般的なクレーンで揚重可能な範囲(たとえば20ton程度)とすることが好ましい。
【0020】
図3に屋根用のハーフPCa版20の詳細を示す。
これは、梁間方向のスパンに相当する長さ(本実施形態では15m程度)と、屋根厚に相当する高さ寸法(同、0.8〜1m程度)を有するとともに、上記の壁用のPCa部材10と同等の幅寸法(同、1.6m程度)を有する長尺のプレキャストコンクリートからなる本体部21を主体として、それに主筋22およびせん断補強筋23が配筋されているものである。なお、本実施形態のハーフPCa版20の質量もPCa部材10と同様に最大で20ton程度とすることが好ましい。
【0021】
具体的には、本体部21は(c)に示すように断面形状が略逆T状とされていて、その中央部が矩形断面形状の梁部21aとされているとともにその下部両側には底型枠部21bが側方に延出する状態で一体に形成されている。
梁部21aにはその長さ方向に複数本(図示例では上筋および下筋ともに各4本)の主筋22が配筋され、主筋22の周囲に所定間隔で巻回されているせん断補強筋23が梁部21aの両側部(底型枠部22bの上部)にループ状態で露出して配筋されている。
【0022】
主筋22の先端部は本体部21の両端よりも突出していて、(a)に示すようにこのハーフPCa版20の両端部を上記のPCa部材10の顎部14に支持した状態で両側のPCa部材10間に架設した際には、ハーフPCa版20の主筋22の先端部とPCa部材10の壁面部11aの縦筋12の上端部とが仕口部において自ずと交差状態で配筋され、したがって仕口部にコンクリートが充填されることによりそれら主筋22および縦筋12がそれぞれ仕口部に対して定着され、それにより壁用のPCa部材10と屋根用のハーフPCa版20とが仕口部において剛接合されて実質的にラーメン架構を構成するようにされている。
【0023】
これらハーフPCa版20は、後述(
図12参照)するように同一形状、同一寸法のものが横方向に並設されて双方のハーフPCa版20の底型枠部21bどうしが突き合わせられて設置されるものであり、その際には隣接配置された双方のハーフPCa版20の梁部21aの間に形成される凹部において双方のせん断補強筋23が対向状態で配筋されることになるから、別途製作した鉄筋ユニット24(
図10参照)を双方のせん断補強筋23にラップするようにその凹部に配置したうえで底型枠部21b上に所定厚さのコンクリートを充填することにより、大版厚の屋根スラブが形成されるようになっている。
【0024】
以上で説明した壁用のPCa部材10と屋根用のハーフPCa版20を用いて上記の建物を構築するための施工手順を
図4〜
図12を参照して説明する。
【0025】
まず、上記建物の基礎を施工するが、基礎としてはマットスラブとすることが好ましく、その施工に際しては
図4、
図5に示すように簡易な擁壁の形態のPCa型枠31を用いることが好ましい。
具体的には、底版部と側壁部からなる断面形状略L状のPCa型枠31を予め製作し、それをマットスラブ30を形成するべき位置の外周部に配置して底版部を地表部に浅く埋設し、それを捨て型枠としてその内側にコンクリートを充填して基礎としての所要厚さのマットスラブ30を形成すれば良い。
【0026】
その際、マットスラブ30の外周部(壁を立ち上げるべき位置)には上記のPCa部材10を建て込むためのアンカー筋32を予め埋設状態で配筋する必要があるので、そのためには
図5に示すように各アンカー筋32を各縦筋12の配列に対応させて配列してアングル材により一体に組み立てた鉄筋ユニット33をPCa型枠31の内側に配置し、必要に応じてPCa型枠31に対して適宜の連結筋34により連結したうえで、鉄筋ユニット33をその上端部を残して埋設する状態でマットスラブ30を形成することにより、各アンカー筋32の上端部をPCa部材10の下端部に埋設されているスリーブ継手12aに挿入可能な位置に立ち上げておけば良い。
また、後段においてシース管15(
図2参照)内に挿通されるPC鋼材をマットスラブ30に対して連結するためのPC鋼材継手35(
図6参照)を、シース管15に対応する位置に予め設けておく。
【0027】
以上のようにして基礎としてのマットスラブ30を施工してその上面にアンカー筋32およびPC鋼材継手35を立ち上げた状態から、そこに壁となるPCa部材10を建て込むに際しては、
図6に示すようにそれに先だってマットスラブ30とPCa部材10との間に介装する台座40を設置することが好ましい。
台座40はその上面がPCa部材10の底面に密着し得るように十分に平滑に仕上げた平板状のプレキャストコンクリート部材であって、各アンカー筋32およびPC鋼材継手35に対応する位置に予め貫通孔を設けておき、これをマットスラブ30上に設置してその底面とマットスラブ30上面との間にグラウトを注入してマットスラブ30に対して一体化せしめることで、その台座40上にPCa部材10を安定に支持して建て込むことが可能となる。
【0028】
しかる後に、
図7に示すようにPCa部材10を台座40上に吊り降ろしていって、各アンカー筋32をスリーブ継手12aに挿入するとともにPC鋼材継手35をシース管15に挿入した状態でPCa部材10を台座40上に配置し、この段階では適宜仮支持する。
そして、PCa部材10の上部からPC鋼材をシース管15に通してその下端部をPC鋼材継手35に連結し、PC鋼材を緊張してその上端部をPCa部材10の頂部に対して定着せしめることにより、その緊結力によってPCa部材10を安定に自立させる。
しかる後に、スリーブ継手12aにモルタルを注入して各アンカー筋32をスリーブ継手12aを介して各縦筋12に対して接合することにより、各縦筋12をスリーブ継手12a、アンカー筋32を介してマットスラブ30に対して定着し、これにより1台のPCa部材10の建て込み作業が完了となる。
【0029】
本実施形態のPCa工法では、以上の手順によるPCa部材10の建て込み作業により、まず
図8に示すように2台のPCa部材10を一対としてそれらを梁間方向に間隔をおいて対向配置し、それらPCa部材10の頂部相互間にハーフPCa版20を架設することにより、それら2台のPCa部材10と1台のハーフPCa版20とによって
図9に示すような1ユニットの門形架構を自立状態で構築する。
そして、
図10に示すようにその門形架構に対して同様にして他の門形架構を連続せしめた状態で組み立て、それら門形架構の間およびハーフPCa版20上にコンクリートを充填して
図11に示すように2ユニット分の門形ラーメン架構を構築する。
【0030】
その際、
図12に示すように隣接配置した2ユニットの門形架構における双方のPCa部材10の間には実質的に閉鎖空間としての中空部11dが形成されて双方の横筋13の先端部どうしがその中空部11d内において自ずとラップする。また、双方のハーフPCa版20の間は凹部となってそこには双方のハーフPCa版20のせん断補強筋23が配筋されるから、その凹部に鉄筋ユニット24を落とし込み、必要に応じて他の屋根筋を配筋する。
そこで、ハーフPCa版20上からの作業によりPCa部材10間の中空部11aにトレミー管を用いてコンクリートを充填するとともに、PCa部材10とハーフPCa版20との仕口部、およびハーフPC版20の底型枠部21b上に所定厚さでコンクリートを充填する。
これにより、
図11に示したようにPCa部材10とハーフPCa版20とが仕口部において剛接合されると同時に2ユニットの門形架構が構造的に一体化し、それらの全体で2ユニット分の門形ラーメン架構が構築される。
【0031】
以降は、以上の手順を繰り返して、構築済みの門形ラーメン架構に対して次の門形架構を継ぎ足してはコンクリートを打設していくことによって門形ラーメン架構を桁行方向に順次延長していくことにより、最終的に一連の壁面全体と一連の屋根面全体を構築して建物全体の躯体を完成させれば良い。
【0032】
なお、仕口部に対するコンクリートの充填の際には要所に型枠を設置してコンクリートの充填範囲を設定する必要があるので、そのための型枠をPCa部材10あるいはハーフPCa版20の要所に予め取り付けておくか一体に形成しておくと良い。
また、上記のように1ユニットの門形架構を組み立てた時点でその都度コンクリートを充填することが現実的であるが、場合によっては複数のユニットを連続的に組み立ててからそれらユニット間に対してまとめてコンクリートを充填することでも良い。
【0033】
以上の手順によれば、予め製作したPCa部材10とハーフPCa版20とを主体としてそれらを順次組み立てることで建物全体を効率的に施工可能である。
特に、上記のように壁面を形成するためのPCa部材10と屋根面を形成するためのハーフPCa版20とを実質的にラーメン架構となる門形架構として自立状態で構築し、それを順次継ぎ足していくという作業を単純に繰り返すことによって、施工途中段階における仮設支保工を最少限とすることができるし、内部に対する仕上げ工事や設備工事その他の関連工事の早期着手も可能である。
また、PCa部材10およびハーフPCa版20を揚重可能な範囲内で最大限に大きくすることによって組み立て対象部材数を必要最少限とすることが可能であるし、現場での配筋作業や型枠作業、コンクリート打設量も可及的に少なくすることが可能であり、それによる施工の効率化、省力化を十分に図ることが可能である。
以上のことから、本実施形態のPCa工法は、特に壁厚や屋根厚を十分に大きくする必要があるような特殊用途の建物、たとえば上記実施形態のように放射線に対する遮蔽機能を必要とする原子力関連施設における建屋の施工に適用して最適であり、その種の用途の建物の施工に際して工期短縮、工費削減に大きく寄与することができる。
【0034】
以上で本発明の基本的な実施形態について説明したが、以下に本発明のPCa工法に適用して好適な補助工法について追記する。
【0035】
2台のPCa部材10を隣接配置して並設する際には双方のPCa部材10の位置決めを精度良く行う必要があり、特にPCa部材10の下端部の位置決めはアンカー筋32により支障なく行うことができるが、頂部を精度良く位置決めするためには鉛直精度を十分に確保する必要があるから、そのためには
図13〜
図14に示す位置決め治具50を用いることが好適である。
【0036】
これは、先行設置したPCa部材10(たとえば
図13(a)、(b)における左側のもの)をガイドとして後行設置するPCa部材10(同、右側のもの)の頂部の位置決めを行うもので、各PCa部材10の頂部において内部側の壁面部11aから上方に突出している縦筋12のうちの端部側に位置している2本の縦筋12をそれぞれ把持する対のグリップ51と、それらグリップ51どうしを離接する方向に平行移動させるためのターンバックル機構52と、各グリップ51をターンバックル機構52に対して離接する方向に移動させるためのネジ機構53からなるものである。
これによれば、高精度で位置決めされた状態で既に設置されている先行のPCa部材10に対して一方のグリップ51を装着するとともに、その側方に配置して鉛直精度を概略的に位置決めした状態で自立させた後行のPCa部材10に対して他方のグリップ51を装着し、その状態で後行のPCa部材10に装着したグリップ51をネジ機構53の調整により面外方向に変位させることで面外方向の位置決めが可能であり、かつその状態でターンバックル機構52を調整することにより面内方向の位置決めが可能であり、それにより後行のPCa部材10の面外方向および面内方向の位置決めを先行のPCa部材10を基準としてそれに合致させるように高精度でしかも容易に行うことが可能である。
【0037】
上記のように位置決めして隣接配置した双方のPCa部材10の間の中空部11dにコンクリートを充填する際には、双方の壁面部11a、11b間の隙間からのコンクリートの漏出を防止するため(いわゆるノロ止め)に、その隙間をシールする必要があるので、そのためには
図15〜
図16に示すようなシール機構60を用いると良い。
これは、双方の壁面部11a、11bの先端部の内面を直角に突き合わせる形状に形成しておいて、そこにアングル材61を密着させて双方の突き合わせ部に跨るように装着し、そのアングル材61をPCa部材10の外側からワッシャ62を介して複数本のボルト63およびナット64により所定間隔で突き合わせ部に対して締結するようにしたものである。PCa部材10の表面に露出するボルト63の頭部はコンクリート硬化後に切断してワッシャ62とともに除去すれば良い。
これによれば、双方のPCa部材10の突き合わせ部の隙間をアングル材61により塞いで確実にノロ止めを行い得るし、仮に
図16に示すように双方のPCa部材10の間に多少の位置ずれが生じた場合であってもその位置ずれを支障なく吸収することが可能である。
図16(a)は面外方向にずれた場合を示し、(b)は双方のPCa部材10間の隙間の基準寸法より面内方向に広がるようにずれた場合、(c)は同じく狭まるようにずれた場合を示す。
【0038】
なお、PCa部材10間の中空部11dにコンクリートを打設する際しては、トレミー管を中空部11d内の底部にまで挿入してそれを引き抜きつつコンクリートを充填することになるが、横筋13の間隔が狭いような場合において通常の断面円形のトレミー管を中空部に挿入できないような場合には、同一断面積を有する偏平な断面形状のトレミー管を用いれば良い。
【0039】
以上で本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態はあくまで好適な一例であって本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、たとえば以下に列挙するような適宜の設計的変更や応用が可能である。
【0040】
上記実施形態は平屋建ての建物への適用例であるので、PCa部材10の頂部相互間に架設したハーフPCa版20によって屋根面を形成するようにしたが、本発明のPCa工法は平屋建てのみならず二層以上の複層建物にも適用可能である。
その場合には、PCa部材の頂部相互間に上階の床面としてのスラブを形成するためのハーフPCa版を架設して床を形成し、さらにその上層階に対して同様にPCa部材およびハーフPCa版による門形架構を積層していけば良い。
【0041】
本発明のPCa部材は断面形状が略エ字状ないし略H字状であって壁厚を十分に大きくすることが可能であることから、そのような建物を施工する場合に適用することが現実的ではあるが、それに限るものでもなく様々な用途、規模、形態の建物に対して広く適用可能であることはいうまでもなく、それに応じて本発明のPCa部材の具体的な構成や本発明のPCa工法の具体的な工程については、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更すれば良い。
特に、本発明のPCa部材は可及的に大型・大質量のものとして形成することが効率的に有利ではあるものの、断面形状を略エ字状ないし略H字状として横筋どうしの重ね継手により互いに接合可能なものとする限りにおいてその形状や寸法は任意であり、施工するべき建物の形態や規模に応じて縦筋や横筋の所要本数やそれらの径寸法、鉄筋間隔等の仕様も設計条件に合致する範囲内で適切に設計すれば良い。
勿論、PCa部材により形成する壁面は上記実施形態のように外壁面として形成するのみならず、建物の内部に内壁面として形成することも可能であり、そのような場合において縦筋や横筋の配筋量を削減可能な場合には、たとえば各段の横筋を1本ずつとする等、必要最少限の配筋を行えば良いことは当然である。
【0042】
なお、本発明のPCa工法は本発明のPCa部材に対して上記実施形態において例示したようなハーフPC版を組み合わせることで壁および屋根ないし床を形成することを要旨とするが、本発明のPCa部材は必ずしもそのようなハーフPC版と組み合わせて用いることを前提とするものではなく、屋根面や床面をフルPCa版等の他の形式のPCa版や他の工法によって施工する場合においても本発明のPCa部材を単独で用いることは可能である。
その場合、上記実施形態のように壁と屋根(ないし床)を同時に施工するのではなく、本発明のPCa部材により壁面全体あるいは壁面の所定範囲を先行施工した後、それに後追いして屋根(ないし床)を適宜の工法により施工することでも良い。