(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777084
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】舗装材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
E01C 15/00 20060101AFI20150820BHJP
E01C 7/08 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
E01C15/00
E01C7/08
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2010-165185(P2010-165185)
(22)【出願日】2010年7月22日
(65)【公開番号】特開2012-26149(P2012-26149A)
(43)【公開日】2012年2月9日
【審査請求日】2013年7月9日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 2010年1月22日 社団法人地盤工学会九州支部主催の「地盤環境および防災における地域資源の活用に関するシンポジウム」において文書をもって発表
(73)【特許権者】
【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
(73)【特許権者】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 研一
(72)【発明者】
【氏名】松木 重夫
【審査官】
越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−040047(JP,A)
【文献】
特開2006−177072(JP,A)
【文献】
特開平11−107205(JP,A)
【文献】
特開2006−077519(JP,A)
【文献】
川原健治他,「石炭灰と竹チップを用いた歩行者系舗装材料の耐久性」,地盤工学研究発表会発表講演集,2008年 6月12日,43rd,p.569-570
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00−17/00
E02D 17/00−17/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹を繊維状に破砕した竹チップであり、含水比30%以上80%以下の竹チップを、含水比10〜30%の土に土の絶乾重量に対する重量比で2〜8%混合する第1工程と、
前記竹チップと前記土との混合物に、固化材として石炭灰またはセメントを混合する第2工程と
を含む舗装材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者系舗装に用いられる土系の舗装材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、歩行者系舗装は、環境保全や地球温暖化、ヒートアイランド現象の緩和・軽減の点からも注目されている。しかしながら、現行の歩行者系舗装の土系材料は、固化収縮時と乾燥に伴うひび割れによる耐久性に大きな問題を抱えている。このひび割れの対策に固化材の添加量を増やすと舗装体が硬くなり、歩道としての歩き心地が悪くなる。また、木材チップのみの歩道では、ミミズ等の発生や木チップの腐食による耐食性がなく、約1年間程度で補修が必要となるし、防草効果も期待できない。
【0003】
そこで、本発明者は、加圧流動床燃焼灰(PFBC灰)と竹廃材を繊維状に破砕したもの(竹チップ)を混入させた歩行者系舗装材料の開発を行っている。例えば、非特許文献1では、まさ土とPFBC灰と竹チップとの配合条件を変えたものと、既に製品として施工実績のある舗装材料(セメント系固化材を使用)との比較試験を行い、加圧流動床灰と竹チップを用いた歩行者系舗装材料の現場適用性について検討した結果を開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】藤川拓朗、佐藤研一、松木重夫,加圧流動床灰と竹チップを用いた歩行者系舗装材料の現場適用性の検討,第28回日本道路会議論文集(CD−ROM),社団法人日本道路協会,2009年10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、本発明者はその後の研究により、同じ配合条件でまさ土とPFBC灰と竹チップとを混合した場合であっても、混合した舗装材料の締固め試験を行うと、舗装材料の密度にばらつきが生じ、うまく締まらないことがあることが分かった。
【0006】
そこで、本発明では、竹チップを混合した舗装材料において所望の締固め特性を得ることが可能な舗装材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の舗装材料の製造方法は、竹を繊維状に破砕した竹チップであり、含水比30%以上の竹チップを、土に混合する第1工程と、竹チップと土との混合物に、固化材を混合する第2工程とを含むことを特徴とする。本発明の舗装材料の製造方法によれば、まず含水比30%以上の竹チップを土に混合するので、土の水分を竹チップが吸収するのを防止することができ、竹チップと土とを均一に混合することができる。また、固化材についても、この混合物に対して後から混合するため、竹チップと土との混合状態に影響を及ぼすことがなく、竹チップと土と固化材とが均一に混合された舗装材料を得ることができる。
【0008】
こうして得られた舗装材料により施工された舗装体は、均一に混合された竹チップにより弾力性を有するので、足に優しい歩行者系舗装(歩道用舗装)として適している。また、竹チップが舗装材料の乾燥収縮と歩行荷重に伴うひび割れを引張り補強材料として効果的に作用し、舗装体の耐久性を格段に向上させる。
【0009】
なお、含水比が30%未満の竹チップでは土の水分を竹チップが吸収するため、竹チップと土とが均一に混合されず、上記竹チップの特性を安定的に得られなくなり、所望の締固め特性を得ることができなくなる。一方、竹チップの含水比は高くても良いが、80%以下、より好ましくは40%以下とすることが望ましい。竹チップの含水比が80%以下の状態で土と混合することで、締固め特性の最も良い舗装材料を得ることができる。特に、含水比が30%以上40%以下の場合には、舗装材料の含水比に与える影響を少なくすることができるとともに、安定した締固め特性を得ることができる。
【0010】
また、固化材は石炭灰であることが望ましい。本発明の舗装材料により施工した舗装体が排水性を有することから、アルカリ性である石炭灰による防草効果を長期に渡って発揮することが可能な舗装材料が得られる。
【発明の効果】
【0011】
(1)竹を繊維状に破砕した竹チップであり、含水比30%以上の竹チップを、土に混合する第1工程と、竹チップと土との混合物に、固化材を混合する第2工程とを含むことにより、竹チップと土と固化材とが均一に混合され、所望の締固め特性を得ることが可能な舗装材料を得ることができる。
【0012】
(2)竹チップの含水比が80%以下の状態で土と混合することで、締固め特性の最も良い舗装材料を得ることができる。特に、含水比が30%以上40%以下の場合には、舗装材料の含水比に与える影響を少なくすることができるとともに、安定した締固め特性を得ることができる。
【0013】
(3)固化材が石炭灰であることにより、アルカリ性である石炭灰による防草効果を長期に渡って発揮することが可能な舗装材料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態における舗装材料の製造方法を示すフロー図である。
【
図2】竹チップの含水比と、竹チップ混入後の含水比および湿潤密度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明の実施の形態における舗装材料の製造方法を示すフロー図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態における舗装材料の製造方法は、竹チップを土に混合する第1混合工程と、この竹チップと土との混合物に固化材を混合する第2混合工程とからなる。第1混合工程における竹チップと土との混合は、バックホウ等を用いることができる。まずバックホウにより土を計量した後、バックホウにより土と竹チップとを混合する。
【0016】
土としては、良質な風化残積土(例えば、まさ土など)、シラス、山砂や良質な建設発生土等を用いることができる。また、竹チップは、竹を長さ10〜30mm、太さ0.5〜3.5mmの繊維状に破砕したものであり、含水比30%以上40%以下のものを用いる。このとき、一般的に竹チップの初期含水比は20%程度であるため、水を加えて含水比を30%以上40%以下に調整する。土の含水比は問わないが、まさ土の場合、一般的に10〜30%である。竹チップの添加率は、土の絶乾重量に対する重量比で2〜8%である。
【0017】
第2混合工程における混合は、自走式土質改良機等を用いることができる。上記第1混合工程において混合した土と竹チップとの混合物を計量枡に入れ、自走式土質改良機を通してキャリブレーションを行った後、自走式土質改良機の土砂ホッパに投入する。そして、固化材を自走式土質改良機の固化材ホッパに投入し、土と竹チップとの混合物と混合する。混合された混合物は、舗装材料として自走式土質改良機のベルトコンベアから排出される。
【0018】
ここで、固化材としてはPFBC灰やセメント等を用いることができる。PFBC灰は自硬性を有する乾燥したパウダー状の石炭灰であり、セメントと同様に舗装材料の固化材として使用することができる。固化材の添加率は、土の絶乾重量に対する重量比で7〜13%である。
【0019】
上記のように本発明の実施の形態における舗装材料の製造方法では、まず第1混合工程において含水比30%以上40%以下の竹チップを土に混合するので、土の水分を竹チップが吸収するのを防止することができ、竹チップと土とを均一に混合することができる。また、固化材についても、第2混合工程において後から混合するため、竹チップと土との混合状態に影響を及ぼすことがなく、竹チップと土と固化材とが均一に混合された舗装材料を得ることができる。
【0020】
また、本発明の実施の形態における舗装材料により施工した舗装体は、土系であるため排水性を有している。そして、固化材として石炭灰を用いた舗装材料では、アルカリ性である石炭灰による防草効果を長期に渡って発揮することが可能である。
【実施例】
【0021】
本発明の舗装材料の締固め特性について試験を行った。
<試験条件>
試験は、まさ土の初期含水比をw=18%、竹チップの添加率を5%と一定にして行った。また、竹チップの添加率は、土の絶乾重量に対する外割り配合で行った。
【0022】
<試験方法>
まず、一度絶乾状態にした竹チップに所定の水を加え、初期の含水比を調整した。また、水が材料に十分馴染むように水を加えた後に1日間静置させた。その後、一定の含水比に調整したまさ土と竹チップを混合し、締固め試験を行った。締固め試験は、重さ2.5kg、落下高さ30cmのランマーを使用し、モールドを3層に分け、各層25回ずつ締固めた。
【0023】
<試験結果および考察>
締固め試験から得られる所定の容器内に締固められた舗装材料の湿潤密度の変化により、竹の初期含水比の影響について検討した。表1および
図2に竹チップの含水比と、竹チップ混入後の含水比および湿潤密度との関係を示す。
【0024】
【表1】
【0025】
湿潤密度は、竹チップの初期の含水比の影響を受け、含水比の変化に伴って密度が異なっていることが分かる。舗装材料の締固め特性(湿潤密度)は、含水比0%から一旦下がり、含水比26%で含水比0%と同じ数値となっている。そして、含水比が30%以上40%以下の範囲では、締固め特性が一般的な竹チップの初期含水比20%程度のものと比較して、明確に密な状態を示している。
【0026】
この結果は、竹チップと土の混合において、竹チップの初期含水比が影響を及ぼすことを意味している。特に、含水比26%以下の竹チップでは、締固められた舗装材料の密度がばらつき、うまく締まっていないことが分かる。これに対し、含水比30%以上の竹チップでは、同一エネルギーの締固めにおいて高い密度でかつ安定した路盤が施工できることを示している。
【0027】
なお、含水比40%超の場合であっても、締固め特性は含水比40%の状態から下がってはいるものの、密な状態を示しており、所望の締固め特性を得るという目的は達成できている。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の舗装材料の製造方法は、歩行者系舗装に用いられる土系の舗装材料の製造方法として有用である。特に、本発明は、竹チップを混合した舗装材料において所望の締固め特性を得ることが可能な舗装材料の製造方法として好適である。