特許第5777088号(P5777088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5777088溶融ガラスの自由表面上の雰囲気を制御する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777088
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】溶融ガラスの自由表面上の雰囲気を制御する装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/225 20060101AFI20150820BHJP
   C03B 5/18 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   C03B5/225
   C03B5/18
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2010-266495(P2010-266495)
(22)【出願日】2010年11月30日
(65)【公開番号】特開2011-116640(P2011-116640A)
(43)【公開日】2011年6月16日
【審査請求日】2013年11月28日
(31)【優先権主張番号】61/264,973
(32)【優先日】2009年11月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(74)【復代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
(74)【復代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ジルベール ドゥ アンジェリ
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン スコット リーゲル
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0217708(US,A1)
【文献】 米国特許第02730338(US,A)
【文献】 米国特許第02780890(US,A)
【文献】 米国特許第05319669(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0042318(US,A1)
【文献】 米国特許第03539117(US,A)
【文献】 特表2011−513175(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/108320(WO,A1)
【文献】 特表2008−511538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 1/00−5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスを保持する装置であって、
前記溶融ガラスを保持するチャンバと、
前記チャンバの上端部に一端が結合されたベローズと、
前記ベローズの他端に結合された封止リングであって、雰囲気注入/排出管、電気リード、差圧センサ、熱電対、酸素センサおよび予備ポートのうちの1つ以上を備え、内径を有する上部開口部をさらに備え、雰囲気注入/排出管、電気リード、差圧センサ、熱電対、酸素センサおよび予備ポートのうちの前記1つ以上が、前記上部開口部と前記チャンバとの間に配置される封止リングと、
前記封止リングに取外し可能に結合され、前記封止リング上部開口部内径の上に延在するカバーであって、前記封止リングが前記カバーと前記チャンバとの間に配置されるカバーと、
を含むことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記封止リングが前記ベローズにより前記チャンバに結合され、前記ベローズが前記封止リングによって前記カバーに結合され、かつ前記チャンバ内に延在する撹拌棒をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
溶融ガラスを保持する装置であって、
前記溶融ガラスを保持するチャンバと、
前記チャンバの上端部に結合された封止リングであって、雰囲気注入/排出管、電気リード、差圧センサ、熱電対、酸素センサおよび予備ポートのうちの1つ以上を備え、内径を有する上部開口部をさらに備え、雰囲気注入/排出管、電気リード、差圧センサ、熱電対、酸素センサおよび予備ポートのうちの前記1つ以上が、前記上部開口部と前記チャンバとの間に配置される封止リングと、
前記封止リングに取外し可能に一端が結合されたベローズと、
前記ベローズの他端に結合され、前記封止リング上部開口部内径の上に延在するカバーであって、前記封止リングが前記カバーと前記チャンバとの間に配置されるカバーと、
を含むことを特徴とする装置。
【請求項4】
前記カバーが前記ベローズにより前記封止リングに結合され、前記ベローズが前記封止リングによって前記チャンバに結合され、かつ前記封止リングと前記チャンバとの間に結合された管および圧力リングをさらに含むことを特徴とする、請求項に記載の装置。
【請求項5】
前記チャンバがスタンドパイプであり、
前記スタントパイプから前記封止リングを通り、前記ベローズを通り、前記カバーを通って延在するプローブ棒であって、前記カバーの、前記封止リングが配置される側と反対の側に配置される上部を有するプローブ棒と、
前記プローブ棒の前記上部に連結された支持アームであって、トラスを含む支持アームと、
をさらに含むことを特徴とする、請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記支持アームに固定して結合されかつ長手方向軸を有するラックと、
前記ラックをその長手方向軸に沿って移動させるように、前記ラックに結合された駆動モータと、
前記ラックを前記駆動モータによって移動させるように前記ラックに結合された第1拘束部および第2拘束部であって、前記長手方向軸に沿った方向において互いから位置がずれている、第1拘束部および第2拘束部と、
をさらに含むことを特徴とする、請求項に記載の装置。
【請求項7】
ガラス板を製造する方法であって、
ガラス融液を形成するステップと、
前記ガラス融液を、請求項1からのいずれか一項に記載の装置に流すステップと、
前記ガラス融液をリボンに成形するステップと、
前記リボンから板を分離するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶融ガラスの自由表面におけるかつその上方の雰囲気を制御する装置、特に白金族材料からなるチャンバ内に存在する溶融ガラスの自由表面におけるかつその上方の雰囲気に関する。
【背景技術】
【0002】
板ガラスは、フロート法、およびフュージョン法としても知られるオーバーフローダウンドロー法等のダウンドロー法を含む、当該技術分野において既知である様々な技法によって製造される。これら方法のすべてにおいて、流動する溶融ガラスは連続したガラスリボンに成形され、ガラスリボンが個々のガラス板に分離される。
【0003】
溶融温度の高いガラス、たとえばLCDまたは他のディスプレイ基板を製造するために使用されるガラスの場合、溶融、清澄、撹拌、調整、搬送および成形機器のうちの少なくともいくつかは、最も一般的に使用されている材料である、白金および白金合金、たとえば白金−ロジウム合金を備えた、白金族金属を含む材料から作製される。本明細書で使用する白金族金属には、白金、ロジウム、パラジウム、イリジウム、レニウム、ルテニウムおよびオスミウムが含まれる。
【0004】
白金族金属を使用することによる白金含有欠陥の存在は、LCDガラス基板の製造において長年にわたる問題である。本願と同一の譲受人に譲渡された特許文献1では、白金族金属欠陥、すなわち、製造工程においてガラスの自由表面がある場所での白金族金属、たとえば白金の凝縮物の形成の、1つの原因が論じられている。特許文献1ではまた、溶融ガラスの自由表面においてかつその上方に実質的に隔離され/制御され、容積が限定された気体充填空間(以下、単に「限定容積制御雰囲気」と呼ぶ)を形成することを含む(凝縮物による白金族欠陥の数を低減する)手法についても論じられている。しかしながら、内部に溶融ガラスの自由表面が存在するチャンバもまた、カプセルに収容される可能性があり、カプセルは、水素が白金含有壁を浸透する結果としてガラス板に気体包有物が発生するのを低減するために、それ自体の制御環境を有している。白金欠陥を低減する環境の特性は、水素浸透を低減する環境の特性と同じでない可能性がある。したがって、限定容積制御雰囲気は、カプセル雰囲気から分離され、かつそれとは異なる組成を含む。特許文献1ではまた、限定容積制御雰囲気を形成する装置、すなわち限定容積制御雰囲気をカプセル雰囲気から分離する装置について論じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0217708号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願は、特許文献1の装置に基づいている。すなわち、本出願の装置もまた、限定容積制御雰囲気をカプセル雰囲気から分離するが、一方で、内部に溶融ガラスの自由表面が存在するチャンバおよび/または限定容積制御雰囲気を形成する装置自体の保守および/または修理を容易にする構造および機能を有する。さらに、本出願の装置は、上述した保守および/または修理を容易にすると同時に、全体的な工場環境、すなわちカプセルの外側であるが、自由表面を有する溶融ガラスを保持しているカプセルおよび/またはチャンバが収容されている施設に存在する環境からの、限定容積制御雰囲気への妨害を最小限にする。装置の様々な態様またはそれら態様の組合せにより、上述した利点および他の利点をもたらすことができる。態様によっては、たとえば、チャンバに関連する機器に対する装置の設計、寸法および比率と、装置自体の分割されている特質と、自由表面を有する溶融ガラスを保持する装置および/またはチャンバに対する様々なサービス接続を保持する構造と、熱的に(または他の方法で)チャンバの寸法変化が引き起こされる場面においてさえも、チャンバが、限定容積制御雰囲気を依然として収容しながらその機能を維持することができるようにする、ベローズとが含まれる。
【0007】
さらなる特徴および利点を、以下の詳細な説明に示し、それらは、部分的には、当業者には説明から容易に明らかとなるか、または書かれている説明および添付図面で例示されているように本発明を実施することによって理解されるであろう。上述した概略的な説明と以下の詳細な説明とはともに本発明を単に例示するものであり、請求項に記載されているような本発明の特質および特徴を理解するための概説または枠組みを提供するように意図されていることが理解されるべきである。
【0008】
添付図面は、本発明の原理がさらに理解されるように含まれており、この明細書の一部に組み込まれかつそれを構成している。図面は、1つ以上の実施形態を例示し、説明とともに、本発明の原理および動作を例として説明する役割を果たす。本明細書および図面に開示されている本発明の様々な態様を、あらゆる組合せで使用することができることが理解されるべきである。非限定的な例として、本発明の様々な態様を以下のように互いに組み合わせることができる。
【0009】
第1態様によれば、溶融ガラスを保持する装置であって、
溶融ガラスを保持するチャンバと、
チャンバに結合されたベローズと、
ベローズに結合された封止リングであって、雰囲気供給管、電気リード、差圧センサ、熱電対、酸素センサおよび予備ポートのうちの1つ以上を備え、内径を有する上部開口部をさらに備え、雰囲気供給/排出管、電気リード、差圧センサ、熱電対、酸素センサおよび予備ポートのうちの1つ以上が、上部開口部とチャンバとの間に配置される封止リングと、
封止リングに取外し可能に結合され、封止リング上部開口部内径の上に延在するカバーであって、封止リングがカバーとチャンバとの間に配置されるカバーと、
を有する装置が提供される。
【0010】
第2態様によれば、封止リングがベローズによりチャンバに結合され、ベローズが封止リングによってカバーに結合され、チャンバ内に延在する撹拌棒をさらに備える態様1の装置が提供される。
【0011】
第3態様によれば、カバーがベローズにより封止リングに結合され、ベローズが封止リングによってチャンバに結合され、封止リングとチャンバとの間に結合された管および圧力リングをさらに備える態様1の装置が提供される。
【0012】
第4態様によれば、チャンバがスタンドパイプであり、
スタンドパイプから封止リングを通り、ベローズを通り、カバーを通って延在するプローブ棒であって、カバーの、封止リングが配置される側と反対の側に配置される上部を有するプローブ棒と、
プローブ棒の上部に連結された支持アームであって、トラスを含む支持アームと、
をさらに有する態様3の装置が提供される。
【0013】
第5態様によれば、支持アームに固定して結合されかつ長手方向軸を有するラックと、
ラックをその長手方向軸に沿って移動させるように、ラックに結合された駆動モータと、
ラックを駆動モータによって移動させるようにラックに結合された第1拘束部(constraint)および第2拘束部であって、長手方向軸に沿った方向において互いから位置がずれている、第1拘束部および第2拘束部と、
をさらに有する態様4の装置が提供される。
【0014】
第6態様によれば、溶融ガラスを保持する装置であって、
溶融ガラスを保持するチャンバであって、内径を有するチャンバと、
チャンバに取外し可能に結合されかつチャンバ内径の上に配置され/延在する下部カバーであって、上部開口部を有し、上部開口部が直径を有する、下部カバーと、
下部カバーに取外し可能に結合されかつチャンバ内径と上部開口部直径との両方の上に配置され/延在する上部カバーと、
を有する装置が提供される。
【0015】
第7態様によれば、撹拌する装置であって、
通常動作状態中に自由表面を有する溶融ガラスを収容する撹拌チャンバと、
撹拌チャンバに結合されたカバーであって、上部カバーと別個の下部カバーとを備えるカバーと、
撹拌チャンバ内に延在し、かつ通常動作位置に配置される撹拌棒であって、第1軸方向において通常動作位置から変位位置までの第1距離にわたり移動可能である撹拌棒と、
撹拌棒に結合され、かつ撹拌棒が通常動作位置にある時、撹拌チャンバ内のガラスの自由表面から第2距離下に配置される撹拌ブレードであって、撹拌棒の通常動作位置から変位位置に向かう軸方向移動により、ガラスの自由表面に向かって移動する撹拌ブレードと、
撹拌棒に結合された障害物であって、撹拌棒の第1方向における第1距離までの軸方向移動を制限する障害物と、
を有し、
第1距離が第2距離より大きいかまたは等しい装置が提供される。
【0016】
第8態様によれば、撹拌チャンバに結合されたカバーをさらに備え、障害物がカバーと相互作用することにより撹拌棒の軸方向移動を制限する、態様7の装置が提供される。
【0017】
第9態様によれば、カバーが上部カバーと別個の下部カバーとを備える、態様1または8のいずれか一方の装置が提供される。
【0018】
第10態様によれば、上部カバーおよび下部カバーのうちの一方が2つのクラムシェル部分を備える、態様6または9のうちのいずれか一方の装置が提供される。
【0019】
第11態様によれば、上部カバーおよび下部カバーのうちの一方が下部カバーを備え、下部カバーが、2つのクラムシェル部分が取外し可能に結合される中心部分をさらに備える、態様6または9のいずれか一方の装置が提供される。
【0020】
第12態様によれば、中心部分が、互いに結合された2つの別個の取外し可能なカバー部分を備える、態様11の装置が提供される。
【0021】
第13態様によれば、中心部分および2つのクラムシェル部分が結合される保持リングをさらに備える、態様12の装置が提供される。
【0022】
第14態様によれば、下部カバーが最大内径を有し、上部カバーが最大内径を有し、上部カバーの最大内径が下部カバーの最大内径より小さい、態様6または9のいずれか一方の装置が提供される。
【0023】
第15態様によれば、障害物が直径を有し、上部カバーの最大内径が障害物直径より大きい、態様14の装置が提供される。
【0024】
第16態様によれば、撹拌チャンバが内径を有し、下部カバーが最小内径を有し、下部カバーの最小内径が撹拌チャンバ内径より小さい、態様6または9のいずれか一方の装置が提供される。
【0025】
第17態様によれば、下部カバーに結合された封止リングをさらに備える、態様6または9のいずれか一方の装置が提供される。
【0026】
第18態様によれば、封止リングが、雰囲気供給/排出管、電気リード、差圧センサ、熱電対、酸素センサおよび予備ポートのうちの1つ以上を備える、態様17の装置が提供される。
【0027】
第19態様によれば、下部カバーに結合されたベローズをさらに備える、態様6、9または17のいずれか1つの装置が提供される。
【0028】
第20態様によれば、ベローズに結合されたねじ山要素をさらに備える、態様19の装置が提供される。
【0029】
第21態様によれば、カバーが窪みをさらに備える、態様8〜20のいずれか1つの装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】一実施形態による、チャンバ内のガラスの自由表面におけるかつその上方の雰囲気を制御する装置の斜視図である。
図2】撹拌装置および雰囲気制御カプセルと合わせて図1の装置の略側面図である。
図3図2に示す装置の上部の拡大図である。
図4図1に示す装置の斜視図であるが、下部カバーの2つの部分が取り除かれている。
図5】部分的に雰囲気制御カプセル上の適所にある図1の装置の斜視図である。
図6】レベルプローブおよびレベルプローブ移動装置と合わせて、第2実施形態による、チャンバ内のガラスの自由表面におけるかつその上方の雰囲気を制御する装置の側面図である。
図7図6の装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の詳細な説明では、限定ではなく説明の目的で、本発明の様々な原理が完全に理解されるように特定の詳細を開示する実施形態例を示す。しかしながら、本開示の利益を得た当業者には、本発明を、本明細書で開示した特定の詳細から逸脱する他の実施形態で実施してもよいことが明らかとなろう。さらに、本発明の様々な原理の説明を不明瞭にしないように、周知の装置、方法および材料の説明を省略している場合もある。最後に、当てはまる場合はいつでも、同様の参照数字は同様の要素を指す。
【0032】
方向を示す用語、たとえば右、左、正面、前方、背面、後方、上へ、下へ、頂部、底部は、図示する図面に関連して使用するものであって、絶対的な向きを意味するようには意図されていない。
【0033】
本明細書で使用する単数形は、文脈が特に明記しない限り複数の指示物を含む。したがって、たとえば「構成要素」という言及には、文脈が特に明記しない限り2つ以上のこうした構成要素を有する態様が含まれる。
【0034】
本開示は、ガラス製造工程の様々な構成要素に見られるように、溶融ガラスの自由表面においてかつその上方で実質的に隔離され/制御され、容積が限定された気体充填空間(以下、単に「限定容積制御雰囲気」と呼ぶ)を形成する装置を示し、上記構成要素では、凝縮物欠陥の原因として機能する可能性がある白金族金属を含む1つ以上の構造が、自由表面にまたはその上方にある。本開示は、ガラス板を製造するためにフュージョンドロー法またはダウンドロー法について言及する可能性があるが、本明細書に開示する様々な概念は、いかなるタイプのガラス製造方法にも、たとえばアップドロー、スロットドローおよびフロートにも、より広く適用可能であることが理解されるべきである。本装置を使用して、たとえば液晶および他のタイプのディスプレイの製造において基板として使用されるように製造されたガラスの白金族欠陥を低減するように、特許文献1に記載されているように限定容積制御雰囲気を管理することができる。所定の例示的なガラス収容チャンバ(たとえば、撹拌機およびレベルプローブ)を示すが、本明細書に記載する装置を、自由表面を有する溶融ガラスを保持する白金族金属を含むいかなるチャンバでも使用することができる。そうしたチャンバでは、チャンバと連通しまたはチャンバ内に保持され、後にガラス物品、たとえば表示装置用の基板に成形されるガラスにおける白金族欠陥を低減するために、自由表面におけるかつその上方の雰囲気を制御することが望まれる。
【0035】
限定容積制御雰囲気を管理する装置の一実施形態を、撹拌機に関連して説明する。限定容積制御雰囲気を管理する装置は、限定容積制御雰囲気および/または装置自体に対する妨害を最小限にするとともに、撹拌機の保守および/または修理を可能にする特徴を有する。それら特徴には、撹拌機に対するカバー構造の設計、サイズおよび比率と、カバー構造自体の分割されている特質とがある。本明細書に記載する、または当業者には明らかであるこれらおよび他の特徴を、あらゆる組合せで使用することができる。
【0036】
ここで、図1図5を参照して、溶融ガラスの自由表面上の限定容積制御雰囲気を管理する装置の第1実施形態の一例について説明する。これら図面は、撹拌機100内の限定容積制御雰囲気を形成する装置2の一実施形態を示す。
【0037】
図1に示すように、装置2は、ベローズ4、封止リング10、下部カバー30および上部カバー50を有している。これらの要素を、各々が提供する任意の所望の特徴を提供するために、説明するように合わせて使用することができ、個々にまたはあらゆる組合せで使用することができる。
【0038】
図2において、装置2を、撹拌機100に取り付けられているように概略的に示す。撹拌機100は、その通常動作状態にある時に自由表面またはガラスレベル114(以下、単に文脈に応じて「自由表面」または「ガラスレベル」と呼ぶ)を有する溶融ガラス113を保持する撹拌チャンバ101を含む。撹拌チャンバ101は、内径102と、上端部のフランジ103とを有している。フランジ103は、撹拌チャンバ101を加熱するために使用される電極であってもよく、または単に撹拌チャンバ101の(撹拌チャンバ101と一体的に/一体構造で形成されるかまたはそれに取り付けられる)外側拡張部であってもよい。撹拌チャンバ101内に撹拌棒104が延在しており、その上に撹拌ブレード106が配置されている。撹拌ブレード106は、溶融ガラス113内に配置され、撹拌棒104が回転する時に溶融ガラス113を均質化する。溶融ガラス113内の最上撹拌ブレード106は、ガラスレベル114から距離118だけ下方に配置されている。撹拌棒104のさらに上方に、障害物または突出物を配置することができる。図3に示すように、突出物は、たとえば、撹拌棒104の部分間の継手108であってもよく、または直径111を有する粒子捕捉リング109であってもよい。撹拌棒104のさらに上方には、撹拌棒104の回転を容易にするように上部カバー50によって保持されるブッシュ110が配置されている。
【0039】
撹拌機100は、撹拌チャンバ101の頂部に結合されたカバーブロック112を有することができる。カバーブロックは、存在しなくてもよいが、存在する場合、さらなる断熱機能、加熱機能および監視機能を提供することができる。すなわち、カバーブロック112は、概して断熱材からなり、撹拌棒104が内部に延在する環状体の近くに加熱器を有し、熱電対または他の状態監視機器を取り付けることができる。
【0040】
図2では、撹拌機100を、その通常動作状態で示している。すなわち、撹拌チャンバ101には、ガラスレベル114まで溶融ガラス113が充填されており、撹拌棒104が、撹拌ブレード106が溶融ガラス内にある垂直位置に配置されている。
【0041】
図2では、撹拌機100を、主雰囲気制御チャンバ80内に配置されているように示す。チャンバ80は、ガラス製造装置の様々な構成要素(たとえば、清澄器(ファイナー)、撹拌チャンバ、ボウルおよび接続導管)の周囲に制御雰囲気を提供するカプセルの一部であり得る。カプセルは、これら構成要素の白金含有壁を通る水素の浸透の結果として、ガラス製造装置によって製造されたガラス板における気体包有物の発生を低減するように設計されている。米国特許出願公開第2006/0242996号明細書を参照されたい。主雰囲気制御チャンバ80は、装置2が結合される頂部82を有している。
【0042】
また、図2に概略的に示すように、チャンバ80の上方に、撹拌棒104を操作する機構90が配置されている。機構90は、撹拌棒104を回転させる駆動装置とともに、撹拌棒104を第1方向120に上方にかつ第2方向122に下方に移動させる駆動装置を有することができる。
【0043】
ベローズ4は、溶融ガラス表面114上の雰囲気を、撹拌機100を包囲する主雰囲気制御チャンバ80内の雰囲気から隔離する。図2に示すように、ベローズ4は、概してフランジ103により撹拌チャンバ101に結合されている。より詳細には、ベローズ4の一端はフランジ103の上にあり、他端は、ねじ接続を介してチャンバ80の頂部82に結合されている。ベローズ4の端部にねじリング6が結合されており、それは、頂部82の相補的なねじ山84と嵌合する。そして、リング6を回転させて、ベローズ4を、初期位置において、フランジ103と接触するようにかつ所望の圧縮レベルであるように設定することにより、ベローズ4とフランジ103との間に好適な封止を形成することができる。ねじ接続により、ベローズの位置を、撹拌チャンバ101、より詳細にはフランジ103の様々な初期垂直位置に適合するように調整する方法が提供される。撹拌チャンバ101が(熱または他の要因で誘発される寸法変化により)膨張および/または収縮する際、ベローズ4は寸法の変化を吸収する。ベローズ4は、たとえば、溶融ガラス撹拌チャンバの上方に存在する温度に耐えることができる金属、たとえば白金族または他の金属からなる。ベローズ4は金属要素であってもよいが、適切に配置された絶縁ガスケットまたは材料によって主雰囲気制御チャンバ80および/または撹拌機100から絶縁される。ベローズ4を、図面では折目またはプリーツを有するように示すが、この用語はそのように限定されず、より一般的に、すべての種類の可撓性かつ膨張可能/収縮可能筐体/容器を含むように意図されている。
【0044】
封止リング10は、撹拌機100の動作中に使用される様々な機器および接続に対して容易な取付場所を提供する。たとえば、封止リング10は、電気リード12用の開口部/取付具、雰囲気注入/排出管14、圧力検知ポート16、予備ポート18、露点センサおよび/または酸素センサを含むことができる。電気リード12は、カバーブロック112上の加熱器および/または監視機器用のものであってもよい。リード12の周囲にブッシュが設けられることにより液密封止が確立される。予備ポート18を用いて、携帯型監視機器、たとえば圧力センサ、酸素センサ、露点センサおよび/または熱電対のためのアクセスを提供することができる。封止リング10はベローズ4に結合され、それとともにユニットとして使用され得る。図5に示すように、たとえば、下部カバー30および上部カバー50が撹拌機100またはその一部の保守、修理および/または交換のために取り除かれる時に、封止リング10およびベローズ4をチャンバ80の頂部82の適所に残すことができる。封止リング10およびベローズ4を適所に残すことにより、保守/修理のために撹拌チャンバ101を移動させることが不要である場合、撹拌装置100内にガラスの自由表面114が、チャンバ80内の雰囲気から隔離されたままである。さらに、撹拌機100の動作中に使用される様々な機器および接続を、保守/修理/交換自体、保守/修理中の連続した撹拌機動作、および/または保守/修理/交換の後の通常の撹拌機動作への戻りを容易にするように、適所に残すことができる。図5は、下部カバー30および上部カバー50がともに取り除かれ、封止リング10およびベローズ4がチャンバ80の頂部82の適所に残っている装置2を示す。封止リング10は、金属要素であってもよいが、ベローズ4と同様に、適切に配置された絶縁ガスケットまたは材料により他の構成要素から適切に絶縁され得る。図2図3および図5に示すように、封止リング10は、内径22を有する上部開口部21を有している。
【0045】
下部カバー30は、図1を参照すると、第1下部クラムシェル部分32、第2下部クラムシェル部分34、第1中心カバー部分35および第2中心カバー部分37を有しており、第1中心カバー部分35および第2中心カバー部分37は合わせて下部カバー30の中心部分を形成する。4つの部分を含むように示すが、厳密にこれが必要なのではなく、いかなる好適な数の取外し可能部分を使用してもよい。クラムシェル部分32、34の縁部および中心カバー部分35、37の縁部は、たとえば、液密関係を維持するためにガスケット70(図3および図4)が間に配置された、さねはぎ、切欠きまたはチャネル溝機構を介して、互いに結合される。より詳細には、ガスケットは、定期的な保守の間に熱および物理的損傷からガスケットを保護するために、継手機構の凹部に配置される。すると、たとえばクラムシェル部分32、34の縁部は、溝、切欠きまたはチャネル溝内のガスケットに突き当たる。保持リング41(図2および図3参照)が、部分32、34、35、37の各々の縁部の一部に当接し、部分32、34、35、37を互いに固定して保持して下部カバー30を形成するように、クランプ42が配置されている。たとえば、さねはぎ、切欠き、またはチャネル溝機構を、間にガスケット70を配置して部分32、34、35、37の各々と保持リング41との間で使用することができる。上述したように、保持リング41を、部分32、34、35、37の各々とは別個の要素として形成し、下部カバー30の組立中にそれに結合してもよい。別法として、保持リング41を半体で形成し、各々を部分32、34、35、37のうちの1つと一体的にまたは一体構造で形成してもよく、そこでは、保持リング41の両半体は、合わせて、たとえばさねはぎ、切欠き、チャネル溝または同様の機構と嵌合する。同様に、半体の代りに、保持リング41を、任意の好適な数の部品で形成してもよく、その場合、部品の各々は、部分32、34、35、37のうちの1つと一体的にまたは一体構造で形成される。別法として、部分32、34、35、37より多くの保持リング41の部品があってもよい。さらに、保持リング41を、部分32、34、35、37のうちの1つと一体的にまたは一体構造で形成された連続した環状帯として形成することができ、それは、たとえばさねはぎ、切欠きまたはチャネル溝機構によって、残りの部分32、34、35、37と嵌合する。保持リング41およびクランプ42は、下部カバー30の組立/分解を容易にするとともに、限定容積制御雰囲気を収容する空間にアクセスするために部分32、34、35、37のうちの1つ以上を取り除いた時に、下部カバー30に対して安定性を提供する。下部カバー30に対する分割構造により、雰囲気および装置2の両方に対する妨害を最小限にして、限定容積制御雰囲気を収容する空間にアクセスすることができる。すなわち、部分32、34、35、37のうちの任意の1つ以上を、他の部分を適所に残したまま取り外すことができ、これによってまた保守/修理/交換が容易になる。
【0046】
第1下部クラムシェル部分32および第2下部クラムシェル部分34の各々は、限定容積制御雰囲気を収容する空間を見ることができるようにする観察窓33と、その部分32、34を容易に移動させるためのハンドル31とを有している。第1中心カバー部分35には酸素センサ36が結合されており、第2中心カバー部分37はウェル38を有し、その中に熱電対39を配置することができる。ウェル38により、限定容積制御雰囲気を妨げることなく熱電対39を取り外し/交換することができる。すなわち、ウェル38は、熱電対39が取り外される時であっても、第2中心カバー部分37内の流体連通を可能にしない封止構造である。中心カバー部分35、37に酸素センサ36および熱電対39が配置されるため、クラムシェル部分32、34が取り外される時であってもそれらを適所に残すことができ、それにより、保守/修理が容易になると同時に、保守/修理中の連続した撹拌機動作が可能になる。酸素センサ36および熱電対39を下部カバー30に結合するように示すが、代りに、これら要素を封止リング10上に配置してもよい。
【0047】
図3を参照すると、下部カバー30は、直径47を有する上部開口部46を有している。さらに、下部カバー30は、最大内径44および最小内径45を有している。この図に示すように、直径44および直径22は同じサイズであるが、これは必ずしも必要ではない。最小内径45が直径22より小さいため、下部カバー30が適所にある時(上部カバー50が適所になくても)、限定容積制御雰囲気の上の開口部がより小さくなり、したがって、その雰囲気への妨げがより少なくなる。
【0048】
上部カバー50は、クランプ42によって互いに保持される第1上部クラムシェル部分52および第2上部クラムシェル部分54を有している。2つのクラムシェル部52、54を示すが、任意の好適な数を用いることができる。下部カバー30の部分32、34、35、37と同様に、部分52および54は、間にガスケット70を配置して、たとえばさねはぎ、切欠きまたはチャネル溝機構を介して、保持リング41に結合されている。部分52、54は、たとえばさねはぎ継ぎを介して互いに結合される。ガスケット材料を部分52、54の嵌合部分の間に配置する必要はないが、望ましい場合は存在してもよい。部分52、54が互いにかつ保持リング41に結合される方法により、下部カバー30の部分32、34、35、37のうちの1つ以上が取り外される時に、それらが適所に残ることができる。たとえば図4を参照されたい。部分52、54の各々は、撹拌棒104の上に配置されるブッシュ110を合わせて保持するブッシュ保持部56を有している。図3を参照すると、上部カバー50は最大内径57を有している。最大内径57は、粒子捕捉リング109の直径111より大きく、それにより、粒子捕捉リング109は上部カバー50内で上下に移動することができる。しかしながら、たとえば位置59における、粒子捕捉リング109の上部カバー50との相互作用により、撹拌棒104の距離116までの上方移動が制限される。最大内径57を、最小内径45および上部開口部46の直径47よりわずかに大きいように示すが、これは必ずしも必要ではない。
【0049】
ここで、様々な撹拌機100の保守、修理および/または交換作業に関連して、装置2の様々な特徴の作用/利点について説明する。概して、保守/修理を容易にするために、上部カバー50および下部カバー30は、限定容積制御雰囲気に対する妨害を最小限にする一方で、使用者に、当面の保守/修理作業に最適な開口部を形成する方法を提供するように、設計され、分割され、かつ互いから分離可能である。すなわち、保守/修理作業に必要な部分のみを取り外すことにより、装置2に形成される開口部のサイズが最小限になり、それにより適所に残される保護の量が最大限になる。たとえば、図4は、依然として限定容積制御雰囲気に対して幾分かの保護を提供しながら撹拌チャンバ100へのアクセスを容易にするように、下部カバー30の部分32および37が取り外されている一方で、上部カバーの部分52、54とともに下部カバー30の部分34および35が適所に残ることができる装置2を示す。この図では、例示的の目的でガスケット70を示すが、部分37が取り外される場合、部分32に関連するガスケットもまた取り外される可能性がある。
【0050】
1つの撹拌機保守作業は撹拌機洗浄である。この作業は、撹拌チャンバ101内のガラスレベル114の近くかつ/または上方の凝縮物および/または堆積物を除去するように設計されている。撹拌機洗浄中、撹拌棒104を、ブレード106がガラスレベル114の近くになるように方向120に上昇させる。撹拌棒104を、この位置で回転させることにより、ガラスに、撹拌機100の通常動作中に発生するものを越える動きをもたらす。ガラスの増大した動きが、撹拌チャンバ101の凝縮物および/または堆積物を洗い落とす。そして、撹拌棒104を、方向122にその通常動作位置(すなわち、図2に示す位置)に戻るように移動させる。したがって、この作業を行うために、ブレード106がガラスレベル114近くに配置されるように、撹拌棒104を方向120におよそ距離118だけ移動させなければならない。
【0051】
一方で、粒子捕捉リング109と上部カバー50との間の距離116が距離118を上回る場合、撹拌機洗浄中、装置2全体を適所に残すことができる。すなわち、装置2においていかなる開口も不要である。したがって、限定容積制御雰囲気に対するいかなる妨害も最小限である。他方、距離116が距離118を下回る場合、限定容積制御雰囲気に対して幾分かの保護を提供しながら、撹拌機洗浄を依然として行うことができる。すなわち、下部カバー30を適所に残したまま、上部カバー50を取り除くことができ、それにより、撹拌棒104を、距離116を上回って上昇させることができる。下部カバー30の上部開口部46の直径47が封止リング10の開口部21の直径22より小さいため、下部カバー30は、上部カバー50を取り除いても、限定容積制御雰囲気に対する妨害を幾分か予防する。
【0052】
別の保守/修理作業は、撹拌機100の部品を交換することを含む場合がある。たとえば、カバーブロック112に関連する部品、またはさらにはカバーブロック112自体を交換する必要のある場合がある。こうした状況では、下部カバー30および上部カバー50の最低数の部分を、限定容積制御雰囲気に対する妨害を最小限にするように他の部分を適所に残したまま、適切なアクセスを提供するように取り外すことができる。たとえば、カバーブロック112上に取り付けられた熱電対を交換するために、第1下部クラムシェル部分32または第2下部クラムシェル部分34のうちの一方を取り外すことにより、好適なアクセスを提供することができる。残りの部分34または32および部分35、37、52、54を適所に残すことができる。部分32、34のうちの一方を取り外すことによって提供される開口部のサイズより小さい部品まで、カバーブロック112をその場で分解することができる場合、部分32、34の一方のみを取り外すことが、カバーブロック112全体を交換するのに十分であり得る。別法として、カバーブロック112の複数の部分を取り除くために、または他の修理/交換を行うために必要に応じて、1つ以上の追加の部分34、32、35、37を取り外すことができる。
【0053】
上記作業のいずれにおいても、チャンバ80の雰囲気がガラスの自由表面114の上の限定容積制御雰囲気に悪影響を及ぼさないように、ベローズ4および封止リング10をチャンバ80の頂部82の適所に残すことができる。さらに、封止リング10が適所に残るため、限定容積制御雰囲気に所望のガスを提供しかつそこからガスを除去するために、注入/排出管14は稼働状態のままであり得る。このように、限定容積制御雰囲気に対する妨害を最小限にすることができ、保守/修理作業が完了した後、限定容積制御雰囲気を所望の動作状態に迅速に戻すことができる。さらに、この配置により、上部カバー50および/下部カバー30が取り外される場合であっても、(封止リング10に取り付けられた電気リードおよび/またはセンサが接続されたままであるため)撹拌機100は稼働状態であり続けることができる。
【0054】
撹拌棒104またはその任意の部品を交換する必要がある場合、上部カバー50および下部カバー30を取り外すことができる。ベローズ4および封止リング10を適所に残すことができる。図5を参照されたい。したがって、この場合もまた、チャンバ80の雰囲気がガラスの自由表面114の上の限定容積制御雰囲気に悪影響を与えることが防止され、限定容積制御雰囲気を所望の状態に維持するように、すなわち、カバー30、50が取り外されても可能な限り通常の動作状態に近いように、限定容積制御雰囲気に所望のガスを提供しかつそこからガスを除去するように注入/排出管14が稼働状態のままである。
【0055】
限定容積制御雰囲気を管理する装置の第2実施形態について、溶融および/または搬送システムにおける溶融ガラスのレベルを測定するレベルプローブに関連して説明する。この実施形態による装置は、限定容積制御雰囲気に対する妨害を最小限にしながら、レベルプローブが動作するとともに保守および/または修理されるのを可能にする特徴を有している。特徴には、封止リング、ベローズおよびカバーがある。ベローズにより、レベルプローブ棒が上下に移動してそのガラスレベルを測定する機能を行うことができると同時に、限定容積制御雰囲気を収容することができる。さらに、レベルプローブ自体が、ガラスの自由表面におけるかつその上方の雰囲気を制御する装置の使用を強化するように、拡張機能(たとえば、強化されたプローブ棒支持アーム、補強されたラック拘束部、および/または支持アームとプローブ棒との間のより確実な連結)を有することができる。それら特徴を、あらゆる組合せで使用することができる。
【0056】
(溶融ガラスの自由表面の上の限定容積制御雰囲気を管理する装置の)第2実施形態の一例について、図6および図7を参照して説明する。これらの図は、レベルプローブ機器を備えた、限定容積制御雰囲気を形成する装置200の一実施形態を示す。レベルプローブは、プローブ棒250をスタンドパイプ201内のガラス202の自由表面203に接触させることにより、ガラス製造装置内のガラスレベルを測定するように使用される。スタンドパイプ201を、ガラス製造装置の任意の好適な構造(たとえば、フュージョンダウンドロー法における清澄器、配送管またはボウル)に結合することができ、それにより、溶融ガラスが、それが当該構造内で存在するレベルを示すレベルで保持される。したがって、スタンドパイプ201を、自由表面を有する溶融ガラスを保持するチャンバとみなすことができる。本装置200を適用することができるレベルプローブおよびスタンドパイプ201については、2009年7月27日に出願された米国特許出願第12/509,668号明細書により完全に記載されている。フュージョンダウンドロー法に関連して説明しているが、装置200を、任意のガラス製造方法、たとえばアップドロー、スロットドローまたはフロートで使用することができる。装置200は、封止リング210、ベローズ204およびカバー230を有している。装置200および/またはレベルプローブの意図しない地絡を回避するように、装置200の様々な構成要素とともに適切な絶縁ガスケットまたは他の材料を使用することができる。
【0057】
封止リング210は、撹拌機100に関連して上述した封止リング10と同様である。したがって、封止リング210は、封止リング10に関連して上述した特徴のうちの任意のもの、たとえば雰囲気注入/排出管214、圧力検知ポート216、予備ポート、露点センサおよび/または酸素センサを含むことができる。一端において、封止リング210は、クランプ242によってベローズ204に取外し可能に結合されている。封止リング210は、その他端において、管205および圧力リング207を介してスタンドパイプ201に結合されている。管205は、主雰囲気制御チャンバ(第1実施形態に関連して上述した頂部82を有するチャンバ80に類似している)の頂部に取り付けられたプレート209上の相補的なねじ山と相互作用するねじ山(図示しないが上述したねじリング6に類似する)を有している。したがって、管205を回転させて、圧力リング207の高さ(およびそれにより圧力)を、液密封止を提供するようにスタンドパイプ201に対して調整することができる。したがって、ガラスの自由表面203の上方の限定容積制御雰囲気が、圧力リング207、管205および封止リング210を介して主雰囲気制御チャンバ内の雰囲気から隔離される。限定容積制御雰囲気は、さらに、ベローズ204およびカバー230を介して全体的な工場の雰囲気から隔離される。
【0058】
ベローズ204は、第1実施形態に関連して上述したベローズ4に類似しており、したがって、ここでは詳細な説明は省略する。この実施形態と第1実施形態との相違の1つの点は、ベローズ204がクランプ242により封止リングに取外し可能に結合されているということである。封止リング210からベローズ204を外すことにより、スタンドパイプ201、プローブ棒250および封止リング210の内部へのアクセスが提供され、それにより保守/修理を容易に行うことができる。同時に、ガラスの自由表面202の上方の限定容積制御雰囲気を、主雰囲気制御チャンバ(上述したチャンバ80に類似する)内の雰囲気から分離されたままにするように、封止リング210、管205および圧力リング207は適所に残る。本実施形態と第1実施形態との差の別の点は、チャンバの動作を可能にする、すなわちこの場合はレベルプローブ棒250が上下に移動するのを可能にしながら、ベローズ204が、限定容積制御雰囲気と工場の雰囲気との間の気密封止を維持するということである。
【0059】
ベローズ204の、封止リング210が結合されている端部と反対の端部に、カバー230が結合されている。カバー230は、ベローズ204と液密封止を形成し、適切なガスケットまたは他の材料によりそこから絶縁され得る。カバー230はまた、レベルプローブアームアダプタ254により、レベルプローブ棒上部252に結合されている。アダプタ254を、たとえばカバー230にねじ込むことができる。レベルプローブアームアダプタ254はまた、アダプタ254を上部252に結合する圧縮取付具も有している。したがって、レベルプローブ棒250、252が上下に移動する際、カバー230との摺動接触がない。この摺動接触は、ガラス202内に落下することが望ましくない粒子をもたらす可能性がある。
【0060】
上述したように、装置200は、レベルプローブのスタンドパイプ201内のガラスの自由表面203上の限定容積制御雰囲気を提供する。したがって、白金族金属の凝縮物および/または堆積物を低減することができ、それにより、レベルプローブが結合されるかまたはレベルプローブが配置される機器を含む装置で最終的に製造されるガラス板における、白金族欠陥のレベルが低減する。しかしながら、装置200は、プローブ棒250の下方移動256および上方移動258に対する抵抗力を増大させる。すなわち、レベルプローブ棒250がカバー230に結合されるため、カバー230およびベローズ204をレベルプローブ棒250とともにあわせて上下に移動させければならない。したがって、本発明者らは、図6および図7に示すように、レベルプローブ移動装置300に対する改良も行った。
【0061】
非常に概略的なレベルで、レベルプローブ移動装置300は、支持アーム310と、支持アーム310を下方向256および上方向258に移動させる駆動アセンブリ320とを有している。
【0062】
支持アーム310は、第1隔離ブロック312および第2隔離ブロック314によりプローブ棒250の上部252に結合されている。第2隔離ブロック314は、アダプタ254を介して上部252に結合されている。支持アーム310とプローブ棒250との間のこの2点結合により、プローブ棒250を上下に移動させるために必要な力の増大を鑑みても、これら要素間の確実な連結が維持される。さらに、以前使用されていた構成では、支持アーム310は片持ち式の単純な梁であった。しかしながら、支持アーム310に対する増大した力の要求を満たすために、本発明者らは、上部梁316が連結梁318を介して下部梁317に連結されるトラス配置を使用することが有益であることを発見した。支持アーム310のトラス配置により、支持アーム310は、装置200が適所にある時にレベルプローブ棒250を上下に移動させることに関連する増大した力に耐えることができる。
【0063】
駆動アセンブリ320は、ラック324を下方向256および上方向258に移動させるようにラック324に結合されている駆動モータ322を有している。そして、アーム310は、ラック324とともに移動するように、ラック324に固定して結合されている。ラック324は、上部拘束部326および下部拘束部328によって案内され、それにより、それが駆動モータ322によって移動する際に垂直面に対するその向きは変化しない。上部拘束部326および下部拘束部328は、各々、たとえばブラケット327およびガイドホイール329を有している。そして、ブラケット327は、ラック324が上下に移動する際に適所に残るように、固定梁または支持体323に取り付けられている。以前使用されていた配置では、ラック324を案内するために1つの拘束部しか使用されていなかった。しかしながら、この場合もまた、支持アーム310を通してラック324まで伝達される、装置200が存在することによる動きに対する増大した抵抗力からの増大した力のために、本発明者らは、ラック324を案内するために上部拘束部326および下部拘束部328をともに使用することが有益であることが分かった。
【0064】
本発明の上述した実施形態、特に任意の「好ましい」実施形態は、単に本発明の様々な原理が明確に理解されるように示された、実施態様の単にあり得る例であることが強調されるべきである。本発明の精神および様々な原理から実質的に逸脱することなく、本発明の上述した実施形態に対して多くの変形および変更を行うことができる。こうした変更および変更はすべて、本明細書においてこの開示および本発明の範囲内に含まれ、かつ以下の特許請求の範囲によって保護されるように意図されている。
【符号の説明】
【0065】
2,200 装置
4,204 ベローズ
10,210 封止リング
30 下部カバー
50 上部カバー
70 ガスケット
80 チャンバ
100 撹拌機
113,202 溶融ガラス
300 レベルプローブ移動装置
310 支持アーム
210 駆動アセンブリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7