(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5777230
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】オフセット平版印刷用インキ
(51)【国際特許分類】
C09D 11/103 20140101AFI20150820BHJP
C09D 11/033 20140101ALI20150820BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20150820BHJP
【FI】
C09D11/103
C09D11/033
C09D11/037
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-142975(P2014-142975)
(22)【出願日】2014年7月11日
【審査請求日】2015年2月16日
(31)【優先権主張番号】特願2014-127206(P2014-127206)
(32)【優先日】2014年6月20日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】三品 彰義
(72)【発明者】
【氏名】今井 清信
(72)【発明者】
【氏名】村上 倫康
(72)【発明者】
【氏名】細田 英敏
(72)【発明者】
【氏名】奥田 竜志
【審査官】
中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−139551(JP,A)
【文献】
特開2006−183044(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/119529(WO,A1)
【文献】
特開2014−55260(JP,A)
【文献】
特開2014−111682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジン変性フェノール樹脂ワニス、植物油、炭酸カルシウム、及び有機溶剤を含有するヒートセット印刷用インキであって、
(1)ロジン変性フェノール樹脂ワニスのトレランス値が5〜50(mL/3g)、
(2)植物油の含有量が15〜30質量%、
(3)炭酸カルシウムの含有量が8〜25質量%、
(4)有機溶剤の含有量が15〜40質量%、
であることを特徴とするオフセット平版印刷用インキ。
【請求項2】
炭酸カルシウムの一次粒子径が、30〜150nmである請求項1に記載のヒートセット印刷用インキ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のヒートセット印刷用インキを用いて印刷された印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のロジン変性フェノール樹脂ワニス、植物油、炭酸カルシウム、及び有機溶剤を特定の比率で含有するオフセット平版印刷用インキに関する。
【背景技術】
【0002】
平版オフセット印刷は、水と油が反発しあうことを利用し、版へのインキの供給と同時に湿し水を供給することにより画線部と非画線部へのインキの着肉性に差を設け、インキ画像を形成している。ところが、印刷機ローラー間の剪断力を受けると、水は容易にインキ中に入り込み、インキは乳化状態になる。このため、インキと水の供給量の間には極めて微妙なバランスが必要となり、このバランスが崩れると汚れやローラーストリッピングを生ずる原因となるため、優れた乳化適性を持つインキが必要である。また近年の高速印刷化において、より優れた乳化適性や機上安定性を有するインキが要望されている。
【0003】
炭酸カルシウムは、粒子径が小さくなると表面積が大きくなるため、インキ中に取り込まれた際、表面処理しきれていない部分は特に乳化し易くなる。またインキ中の炭酸カルシウム量を増やすと、樹脂成分が減るため、ヒートセット性は上がる一方、機上で締まり易くなり機上安定性が低下する。
また、植物油中に脂肪酸成分が含まれていると乳化抑制助剤として効果がある。
一方、溶剤を植物油に置換すると、インキが機上で締まり難くなるため、機上安定性が高まる一方、ヒートセット性は低下する。従って、従来のヒートセットインキでは、インキ中に7〜15質量%の植物油が配合されている。
【0004】
さらに、ロジン変性フェノール樹脂のトレランスを変えると極性基の数が変わるため、乳化調整効果がある。即ち、トレランスが高いと乳化し難くなり、トレランスが低いと乳化し易くなる。トレランスを高めるには、樹脂合成段階での粘度を調整することや、植物油成分とのエステル交換反応を行うことで樹脂の分子量を小さくすることが一般的であり、分子量が小さくなると機上安定性は低下する。
これらの因子を複合的に組み合わせることで、機上安定性、乳化適性、及びヒートセット性のバランスがとれ、各特性が従来品と同等以上になるインキはこれまでに報告がない。
【0005】
例えば、特許文献1には、顔料、炭酸カルシウム、バインダー樹脂、石油系溶剤、植物油を含有する平版印刷インキ組成物において、炭酸カルシウムの一次粒子径が0.02〜0.10μm、表面処理剤としてロジン酸および/または脂肪酸を使用し、バインダー樹脂の重量平均分子量が20000〜100000、ノルマルパラフィン白濁温度40〜110℃であることを特徴とする平版印刷インキ組成物が記載されており、当該炭酸カルシウムが、全インキ組成物中0.1〜8重量%であることが特徴である。
本文献の発明の課題は、印刷品質の向上と印刷作業環境の改善に関するものであり、更には、着肉性、光沢に優れ、ミスチングを低減できるインキの提供である。
【0006】
また、特許文献2には、非晶質シリカ、バインダー樹脂、植物油類、石油系溶剤および顔料を含有する酸化重合型オフセット印刷インキ組成物であって、非晶質シリカの平均二次粒子径が0.05〜0.10μm、BET比表面積が20〜400m
2/gであり、かつ、インキ全重量に対して、0.1〜10重量%含有されていることを特徴とする酸化重合型オフセットインキ組成物が記載されており、本文献の発明の課題は、インキの流動性および経時安定性ならびに印刷時の乳化安定性に優れたオフセットインキ組成物およびそれを用いた印刷物を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−139551号公報
【特許文献2】特開2013−216735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の技術において、炭酸カルシウムを8%以上配合したインキでは、機上安定性が低下してしまうという欠点がある。
また、従来の技術では、インキの機上安定性、乳化適性、ヒートセット性のバランスのとれたオフセット平版印刷用インキを提供できるものはなかった。そこで、本発明の課題は、従来のインキ配合では困難であった、インキの機上安定性、乳化適性、ヒートセット性のバランスがとれ、更に各特性が従来品と同等以上のオフセット平版印刷用インキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、特定のトレランス値を有するロジン変性フェノール樹脂ワニス、植物油、炭酸カルシウム、及び有機溶剤を特定の比率で含有するオフセット平版印刷用インキを提供することにより上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、植物油を多量に配合し、かつロジン変性フェノール樹脂ワニスn−ヘプタントレランス値を高めることで、従来技術の欠点を解決するものである。また、炭酸カルシウムの一次粒子径と表面処理剤の量や植物油の量をコントロールすることで、乳化適性の調整が可能になるため、特定の配合物、及びその比率を調整することで機上安定性、乳化適性、ヒートセット性のコントロールを可能にした。
即ち、本発明により、インキの機上安定性、乳化適性、ヒートセット性のバランスがとれ、更に各特性が従来品と同等以上のオフセット平版印刷用インキの提供が可能となる。
また、炭酸カルシウムや植物油を増量することで、相対的にインキ中の溶剤量VOC量)が大幅減量となる。そのため、VOC量削減による環境対応インキとしての効果もある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
即ち、本発明は以下の項目から構成されるものである。
1.ロジン変性フェノール樹脂ワニス、植物油、炭酸カルシウム、及び有機溶剤を含有するオフセット平版印刷用インキであって、
(1)ロジン変性フェノール樹脂ワニスのトレランス値が5〜50(mL/3g)、
(2)植物油の含有量が15〜30質量%、
(3)炭酸カルシウムの含有量が8〜25質量%、
(4)有機溶剤の含有量が15〜40質量%である、
ことを特徴とするオフセット平版印刷用インキ、
2.炭酸カルシウムの一次粒子径が、30〜150nmである1.に記載のオフセット平版印刷用インキ、
3.オフセット平版印刷が、ヒートセット印刷である1.又は2.に記載のオフセット平版印刷用インキ、
4.1.〜3.の何れかに記載のオフセット平版印刷用インキを用いて印刷された印刷物。
【0012】
(ロジン変性フェノール樹脂ワニス)
本発明に使用されるロジン変性フェノール樹脂ワニスは、n−ヘプタントレランス値が、5〜50(mL/3g)であることに特徴を有する。
トレランス値の測定方法は、通常公知の方法で測定することができ、例えば、ワニス3gを25℃に保ちながら、n−ヘプタンを滴下し、完全に白濁した時のn−へプタンの添加量(mL)がn−ヘプタントレランスである(単位はmL/3g)。
【0013】
本発明で使用できるロジン変性フェノール樹脂ワニスは、公知の合成方法によって得られる。即ちその合成方法とは、例えば公知のロジン変性フェノール樹脂に植物油成分、有機溶剤を添加して溶解、植物油成分とのエステル交換反応、アルミキレートを用いたキレーション反応を行う方法である。この際、分子量の異なるロジン変性フェノール樹脂を選定することや、その他のバインダー樹脂として、石油樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、石油樹脂変性アルキッド樹脂、ロジンエステル等を一緒に炊き込む手法、植物油成分を変更する手法、エステル交換の温度を変更する手法などを駆使することで、どのロジン変性フェノール樹脂を用いても所定のトレランス値への調整が可能になる。
【0014】
また本発明で用いられる溶剤は、沸点範囲が230〜290℃であり、典型的な溶剤の例として、JX日鉱日石エネルギー製AFソルベント4号、7号および/またはISUケミカルCo.LTD製DSOL240、260SP、260Cを用いることができる。オフ輪印刷で求められる乾燥性を低下させない範囲でAFソルベント5号、6号を併用する事も可能である。
【0015】
本発明においては、n−ヘプタントレランス値を5〜50(mL/3g)とすることにより、炭酸カルシウムを増量することにより低下する機上安定性と乳化適性を補うことが可能となる。5より小さなトレランス値のロジン変性フェノール樹脂ワニスを用いると、単独で使用しても機上安定性が低下することはないが、炭酸カルシウムを増量した場合に、結果的に機上安定性に劣る印刷インキとなる。また、多くの極性基が残っているため、乳化適性も悪くなり、好ましくない。
一方、50より大きなトレランス値のワニスを用いると、機上安定性は向上するが、乾燥性が低下するため好ましくない。
【0016】
(植物油)
本発明に使用される植物油は、本発明のオフセット平版印刷用インキ中に含有量が15〜30質量%であることに特徴を有する。
15質量%未満であると、機上安定性が低下し易く、30質量%より多いとヒートセット性が低下するため、好ましくない。
【0017】
本発明で使用される植物油成分としては、大豆油、亜麻仁油、米油、キリ油、ひまし油、脱水ひまし油、コーン油、サフラワー油、南洋油桐油、カノール油等の油類及びこれらの熱重合油、酸化重合油がある。また、植物油脂肪酸エステルとして、アマニ油脂肪酸メチルエステル、アマニ油脂肪酸エチルエステル、アマニ油脂肪酸プロピルエステル、アマニ油脂肪酸ブチルエステル、大豆油脂肪酸メチルエステル、大豆油脂肪酸エチルエステル、大豆油脂肪酸プロピルエステル、大豆油脂肪酸ブチルエステル、パーム油脂肪酸メチルエステル、パーム油脂肪酸エチルエステル、パーム油脂肪酸プロピルエステル、パーム油脂肪酸ブチルエステル、ひまし油脂肪酸メチルエステル、ひまし油脂肪酸エチルエステル、ひまし油脂肪酸プロピルエステル、ひまし油脂肪酸ブチルエステル、南洋油桐油のエステル等も同様に用いることができる。また、植物油を原料とするエーテルとして、ジ−n−オクチルエーテル、ジ−ノニルエーテル、ジヘキシルエーテル、ノニルヘキシルエーテル、ノニルブチルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジデシルエーテル、ノニルオクリルエーテル等も同様に用いることができる等を挙げることができる。また、当該植物油成分は、再生植物油であっても使用することができる。再生植物油とは、回収、再生処理された植物油のことである。再生植物油としては、含水率を0.3質量%以下、ヨウ素価を90以上、酸価を3以下として再生処理した油が好ましく、より好ましくはヨウ素価100以上である。含水率を0.3質量%以下にすることにより水分に含まれる塩分等のインキの乳化挙動に影響を与える不純物を除去することが可能となり、ヨウ素価を90以上として再生することにより、乾燥性、すなわち酸化重合性の良いものとすることが可能となり、さらに酸価が3以下の植物油を選別して再生することにより、インキの過乳化を抑制することが可能となる。回収植物油の再生処理方法としては、濾過、静置による沈殿物の除去、および活性白土等による脱色といった方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
(炭酸カルシウム)
本発明に使用される炭酸カルシウムは、本発明のオフセット平版印刷用インキ中に含有量8〜25質量%であることに特徴を有する。
当該炭酸カルシウムは、公知慣用の炭酸カルシウムを用いることができるが、一次粒子径が、30〜150nmであるものが、特に好ましい。
【0019】
(有機溶剤)
本発明に使用される有機溶剤は、インキに用いられる公知慣用のものを挙げることができ、例えば、JX日鉱日石エネルギー製AFソルベント4号、7号およびISUケミカルCo.LTD製DSOL240、260SP、260Cなどである。なお、乾燥性が低下しない程度にAFソルベント5号、6号等を併用することもある。
本発明では、オフセット平版印刷用インキ中に有機溶剤の含有量は、15〜40質量%であることが好ましく、15質量%未満であると、ヒートセット性が低下して好ましくない。
【0020】
(その他の成分)
その他成分としては、主に顔料、ロジン変性フェノール樹脂以外のバインダー樹脂、ワックス、助剤などが挙げられる。
本発明に用いられる顔料としては、任意の無機及び有機顔料が使用できる。無機顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、紺青、硫酸バリウム、カドミウムレッド、酸化チタン、亜鉛華、弁柄、アルミナホワイト、群青、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム粉などがあげられ、有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系などオフセットインキに用いられる顔料が相当する。有機顔料に関しては、例えば、銅フタロシアニン系顔料(C.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、C.I.Pigment Green 7、36)、モノアゾ系顔料(C.I.Pigment Red 3、4、5、23、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、53:1、57:1)、ジスアゾ系顔料(C.I.Pigment Yellow 12、13、14、17、83)、アントラキノン系顔料(C.I.Pigment Red 177)、キナクリドン系顔料(C.I.Pigment Red 122、C.I.PigmentViolet 19)、ジオキサジン系顔料(C.I.PigmentViolet 23)などがあげられるが、これらに限定されるものではない。ロジン変性フェノール樹脂を除くバインダー樹脂としては、石油樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、石油樹脂変性アルキッド樹脂、ロジンエステル等が挙げられる。ワックスとしては、印刷インキに用いられている一般的なものを使用できる。例えば、カルナバワックス、みつろう、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、脂肪酸アマイド、ポリテトラフルオロエチレン等がある。また助剤として、乳化適性を微調整する目的で少量公知の界面活性剤を入れることもある。
これらの成分は、本発明の効果を減じない範囲内での比率で適宜使用することができる。
【0021】
(印刷用インキ)
本発明の印刷インキは、下記に配合を示す原料を公知の方法で練肉分散してインキ中の粗大粒子の粒径が5μm以下になるように調整し、目的とするインキを得ることができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例及び比較例により、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明において、%は「質量%」を表す。
【0023】
印刷インキの製造方法は、公知慣用の方法でよく、以下に具体例で説明する。
(実施例1) ロジン変性フェノール樹脂ハイロスOR−480(星光PMC(株)製)30%、大豆油(日清オイリオ(株)製)24%、石油樹脂(東ソー(株)製)ペトコール120 10%、及びAFソルベント7号(JX日鉱日石エネルギー(株)製)35%を加熱して溶解、エステル交換反応を行い、その後ALCH(アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、川研ファインケミカル(株)製)1%を添加してキレーションを行って予めトレランスが10(mL/3g)になるようなワニスを調整した。
次いで、三本ロールミルにより有機顔料FASTOGENBLUE FA5375(DIC(株)製)を13%、炭酸カルシウム白艶華TDD(白石工業 (株)製、一次粒子径80nm)を12%、上記ワニスを70%、ワックスコンパウンド(DIC(株)製フルオンコンパウンド)を1%、AFソルベント7号(JX日鉱日石エネルギー(株)製)4%を仕込み、インキを作製した。
【0024】
以下、同様にして、表1に記載の配合で実施例2〜3、及び参考例のインキを調整した。
【0025】
(比較例1)
実施例1と同様にして、表2、3記載の配合で比較例1〜8のインキを調整した。
【0026】
上記で調製した実施例及び比較例のインキを下記の評価法により評価を行った。
<インキの評価>
(ヒートセット性)
ヒートセット性の評価は、RIテスターを用いて、インキ量0.125mLをOKトップコート紙に展色した展色物を用いて行った。展色直後に、200℃に保温されたコンベア型乾燥機を5秒間かけて通過させた。その後、指蝕にて展色物のべた付き具合を参考例の従来のインキとの比較で相対評価した。評価は、べた付く→ヒートセット性「劣る」、べた付かない→ヒートセット性「優れる」、或いは「標準並み」とした。
【0027】
(機上安定性の評価)
実施例および比較例の各印刷インキ組成物をインコメーター((株)東洋精機製作所製)を使用し、インキ量0.5cc、室温25℃、ローラー温度32℃、回転数1200rpmの条件下でインキが剥げ始めるまでの時間を測定し、相対評価した。剥げるまでの時間が長いものほど、機上安定性が優れると評価できる。
参考例の従来インキを「標準」とし、それに比べて、「劣る」、「優れる」、或いは「標準並み」で評価した。
【0028】
(乳化適性)
印刷インキの乳化適性試験はリソトロニック乳化試験機(novocontrol社製)を使用し、下記の条件で行った。
インキ量25g、温度40℃、水の添加速度 2mL/分、撹拌速度 1200rpm、水添加開始前のコンディショニング5分、撹拌翼とカップのギャップ1mm。
【0029】
リソトロニック乳化試験機は、一定量のインキを測定用のカップに入れて、同装置の撹拌翼で撹拌しながら、一定速度で水を加えていったときの撹拌翼にかかるトルクを経時的に測定する装置である。カップに入れたインキに水を添加していくと、その後水の添加量が増えるに従ってトルクも上昇していく。トルクが単調に増加して最大値に至り一気に低下する場合と、トルクが極大値をもちその後徐々に低下していく場合があるが、いずれの場合も添加した水がインキに混合されなくなりトルクが低下したり不安定となったりした時点の乳化率を最大乳化率とする。最大乳化率は下式で示される。
【0030】
【数1】
【0031】
最大乳化率は20%以上100%以下が好ましく、30%以上80%以下の範囲がより好ましく、この範囲の中でも、乳化適性に優れることから30%に近い方が特に好ましい。最大乳化率が100%以上だと過乳化状態となり、20%未満では版上に過剰に湿し水が残ったり、汚れが発生することがあり、好ましくない。
【0032】
参考例の従来インキを「標準」とし、それに比べて、「劣る」か「優れる」、或いは「標準並み」で評価した。
以上の結果を、表1〜3に示した。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
*×印:インキとして調整できず、評価不能。
【0037】
以上の実施例、比較例の結果から、本発明を構成する要件から外れたインキでは、発明の課題を解決することはできず、本発明の構成をもって初めて課題解決に至ることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の印刷インキは、オフセット平版印刷用インキとして利用することができる。
【要約】
【課題】 従来のインキ配合では困難であった、インキの機上安定性、乳化適性、ヒートセット性のバランスがとれ、更に各特性が従来品と同等以上のオフセット平版印刷用インキを提供することにある。
【解決手段】ロジン変性フェノール樹脂ワニス、植物油、炭酸カルシウム、及び有機溶剤を含有するオフセット平版印刷用インキであって、
(1)ロジン変性フェノール樹脂ワニスのトレランス値が5〜50(mL/3g)、
(2)植物油の含有量が15〜30質量%、
(3)炭酸カルシウムの含有量が8〜25質量%、
(4)有機溶剤の含有量が15〜40質量%、
ことを特徴とするオフセット平版印刷用インキによる。
【選択図】 なし