(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1−5に開示されているような従来のラインカーは、必ずしも鮮明なラインが引けないことがある。とりわけ、本発明者は、従来のラインカーでは以下の3つの現象が発生することを問題視している。
(1)吐出口への供給量がばらついてラインに濃淡が生じる(濃淡化現象)。
(2)羽根車の周りにラインパウダーが存在しない空洞領域が発生し、ラインパウダーが部分的又は間欠的に吐出される(空洞化現象)。
(3)羽根車が回転する際の抵抗が大きく、ラインパウダーの密集状態によっては車輪の回転がロックされて横滑りする(ロック現象)。
【0007】
本発明は、上述の事情に基づいてなされたものであり、その目的は、濃淡化現象、空洞化現象及びロック現象のいずれに対しても、従来に比べて発生頻度を少なくすることのできる回転供給機構を備えたラインカーを提供することにある。
【0008】
但し、ラインカーは、簡便な構造で手軽にラインを引けることに特徴のある器具である。従って、鮮明なラインを引くことを追及するあまり構造が複雑化するのは望ましくない。従って、本発明の他の目的は、ラインカーの構造を複雑化することなく、ラインの鮮明度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
(1)本発明のラインカーは、粉状のラインパウダーが内部に充填される本体部と、前記本体部を押し引きするための車輪及びハンドルと、前記本体部の底部に形成され、ラインパウダーを地面に向けて吐出する吐出口と、前記ラインパウダーの充填領域に配置され、ラインパウダーを吐出口に向けて供給する回転供給機構と、を備えたラインカーにおいて、前記回転供給機構は、前記吐出口の上方位置に配置される中空円筒状の回転ローラであって、該ローラの幅方向に伸びる
搬送面を前後両面に有する羽根部材の複数が回転軸を中心とした円周上に間隔をあけて配置され
ており、
さらにローラの幅方向にも前記羽根部材が複数配列され、幅方向に隣り合う羽根部材が回転軸を中心として周方向に位相をずらして配置されており、周方向において各羽根部材の間が開口していることを特徴とする。
(
2)ローラの両端側面部分に配置された一対の回転盤と、ローラの幅方向の途中に配置された中空の環状部材と、をさらに備えており、前記羽根部材の複数は、前記一対の回転盤又は環状部材の外周縁に支持され、さらに前記一対の回転盤の表面には、ラインパウダーが通過可能な開口部が形成された構成とすることができる。
(
3)前記本体部の底部には、好ましくはラインパウダーの排出ガイドが設けられており、前記排出ガイドは、四角枠状部材で構成され、吐出口側の開口部の前後幅に比べて地面側の開口部の前後幅が狭くなる絞り形状とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のラインカーによれば、回転供給機構を中空円筒状の回転ローラで構成し、該回転ローラが、ローラの幅方向に伸びる羽根部材の複数が回転軸を中心とした円周上に間隔をあけて配置され、周方向において各羽根部材の間が開口している構造であることにより、ラインパウダーを常に安定して且つ均一に吐出口に向けて供給することが可能となる。その結果、従来の羽根車よりも濃淡化現象の発生が少なく、鮮明なラインを引くことができる。
【0011】
さらに本発明によれば、上記構造の回転ローラを備えたことにより、該回転ローラの周囲におけるラインパウダーの流動性が高いので、周囲に停滞するラインパウダーの量が減少する。その結果、従来の羽根車よりも回転ローラの周囲において空洞化現象が発生しづらく、連続して鮮明なラインを引くことが可能となる。
【0012】
さらに本発明によれば、上記構造の回転ローラを備えたことにより、羽根部材の表面積が小さいので、回転ローラが回転する際にラインパウダーから受ける抵抗が小さい。従って、例えば使用を休止していたときや、湿気が多いときに、ラインパウダーの密集状態が高くなる場合があるが、このような場合にも、従来の羽根車よりもロック現象が発生しづらい。また、回転ローラを回転させる際の抵抗が小さいので、使用者にとっても、ラインカーを押し引きする際の負荷が軽減されるという利点もある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態に従うラインカーについて、添付図面を参照しながら説明する。但し、以下に説明する実施形態によって本発明の技術的範囲は何ら限定解釈されることはない。
【0015】
(第1実施形態)
本実施形態では、二輪型のラインカー1を一例に挙げて説明する。
図1は、二輪型のラインカー1の斜視図であり、
図2は、底部側の内部構造を示す図である。
図1に示すように、ラインカー1は、粉剤であるラインパウダーPを充填する容器であって、ラインカー1の胴体をなす本体部10を備えている。本体部10の上部には、ラインパウダーを充填/補充する際に開く開閉蓋11が設けられている。ラインパウダーPは、例えば白色を呈した炭酸カルシウム等が代表的に用いられるが、材料や色が限定されることはない。ラインパウダーPは、開閉蓋11を開いて、スコップ等の道具を使って充填してもよく、市販のパウダー袋を本体部内に直接挿入して充填するようにしてもよい。なお、
図1には、略長方形状に形成した本体部10を例示しているが、円筒形状や流線形など、本体部10の形状も変更可能である。さらに、本体部10の底部10aの部分を脱着可能な構成にしてもよい。このように構成すれば、以下に説明する内部機構のメンテナンス等の作業性が良くなるという利点がある。
【0016】
本体部10の底部側には、左右両側に位置するように一対の車輪12(12a,12b)が配置されており、水平方向に延びる一本の車軸13(
図2参照)によって車輪同士(12a,12b)が連結されている。車軸13は、本体部10を水平方向に貫通するように配置されている。一例として、本体部10の側面に円形の貫通穴10b(
図2参照)を形成し、この貫通穴10bに車軸13を通すことで、車軸13を回転自在に軸支することができる。或いは、ベアリング等の軸受機構を設けて車軸13を軸支するようにしてもよい。なお、符号14は、例えばラインカー1を使用していないときにラインカー1を起立姿勢で立たせておくためのスタンドである。
【0017】
本体部10の上部には、使用者がラインカー1を使用する際に持つハンドル15が設けられている。ラインカー1の使用形態としては、使用者自身の正面にラインカー1がくるようにハンドル15の水平部分又は左右の縦に伸びる部分を両手で持ち、ラインカー1を押しながらラインを引いていくのが一般的である。しかし、他の使用形態として、ハンドル15の水平部分を片手で後ろ手に持ち、ラインカー1を引きながらラインを引いていく場合もある。すなわち、使用者は、ラインカー1を押し引き(“押す”又は“引く”の意である)してラインを引くことができる。
【0018】
続いて、ラインパウダーPを吐出する機構について説明する。特に
図2に示されるように、本体部10の底部10aには、ラインパウダーPを地面に向けて吐出するための開口部をなす吐出口16が形成されている。運動競技等に使われる一般的なライン幅は30mm、50mm、76mm又は100mmであり、ラインカー1の仕様(型番)によって形成可能なライン幅が決めている。そのため吐出口16は、ライン幅の仕様に合う形状(幅及び長さ)に設計されている。なお、吐出口16は、
図2に一例を示すように、ラインパウダーPの自然流出を抑えるために複数の開口穴の集合体で構成するのが好ましいが、単一の開口部で構成してもよい。更に、複数の開口部の集合体とする場合、スリット状やドット状など種々の形状の開口穴を形成することができ、或いはそれらの組み合わせにしてもよい。
【0019】
さらに、底部10aの外側面には、吐出口16から排出されたラインパウダーPを地面に向けて案内する排出ガイド16aが設けられている。排出ガイド16aは、例えば平面視において長方形状の内部空間を形成する四角枠状部材である。左右の側面部材は、ライン幅に対応する間隔に配置されている。これにより、吐出口16から排出されたラインパウダーPは、排出ガイド16aによって流れが規制されながら地面近くに排出され、所望のライン幅を描くことができる。好ましくは、
図2及び
図6に示すように排出ガイド16aの前後の側面部材を内側に向かって斜めに配置し、側面視で逆テーパ状となるようにする(すなわち、絞り形状とする)。このように排出ガイド16aを絞り形状とすれば、吐出口16を通じて回転ローラ2から押し出される不均一なラインパウダーPの塊等が、絞り形状によって混ざり合い均一化する。その結果、鮮明なラインを引くことができる。絞り形状の具体例としては、底部10a側の幅を20±5mm、地面側の幅を10±5mmの範囲内に設定する。好ましくは、底部10a側の幅を20mm、地面側の幅を9〜10mmに設定する。変形例として、左右の側面部材も内側に傾斜させて四辺全部で絞り形状を構成してもよく、前後の側面部材に代えて左右の側面部材のみ内側に傾斜させてもよい。なお、四辺の側面部材が各々独立した部材で構成され、互いに連結しておらず隙間があったとしても平面視において長方形状の内部空間を形成しているのであれば本実施形態の四角枠状部材に含まれる。また、ラインパウダーPの傾斜面のすべりをよくするための表面加工を施してもよい。
【0020】
回転供給機構である回転ローラ2は、ラインパウダーPの充填領域において吐出口16の上方に位置するように、且つ、吐出口16の幅方向と回転ローラ2の幅方向とが平行になるように配置されている。回転ローラ2は、その回転中心軸が車軸13の中心に位置するように車軸13に装着されている。よって使用者がラインカー1を押すか又は引いて車輪12が回転すると、車軸13と一体的に回転ローラ2が前転又は後転する。
【0021】
本実施形態の回転ローラ2は、中空円筒状に形成されたローラである。図に特徴的に表れるように、回転ローラ2は、外周縁に配置した羽根部材21を骨格とし、外周縁の殆どが開口した「スケルトン構造」のローラである。このように構成された回転ローラ2の外周縁の開口部及び中空の内部領域は、後述するように、ラインパウダーPが吐出口16に向かって流れる流通路を形成する。
【0022】
回転ローラ2の構造についてさらに詳しく説明すると、左右両側に一対の回転盤である円盤部材22が配置されている。円盤部材22の中央には車軸13が貫通される円形穴22aが形成されており、ボルトやネジ等の固定手段22bを用いて車軸13と回転ローラ2を固定可能になっている。さらに、円盤部材22の表面にはラインパウダーPが通過可能な開口部22cが形成されている。開口部22cは、例えば中央の円形穴22aを中心として放射状に複数形成することができる。図では、一例として8個の開口部22cを形成している。すなわち、中空円筒状の回転ローラ2においては、主としてローラ外周縁の開口部を通じてラインパウダーPが内部領域へ供給され、さらに開口部を通じて吐出口16へ排出されるが、このように円盤部材22に開口部22cを設けたことで左右側面からもラインパウダーPをローラ内部領域へ供給することができる。その結果、ラインパウダーPの流動を促進できる。
【0023】
羽根部材21は、ローラの回転中心軸Q(すなわち、車軸13の回転中心軸)からローラ径方向に沿って放射状に配置されている。図では好ましい一例として、8枚の羽根板である羽根部材21を周方向に沿って45度間隔で均等配置した構成を示している。この周方向に配置した複数枚の羽根部材21を一組の羽根部材群としたとき、複数組の羽根部材群がローラ幅方向に配置され、さらに隣り合う羽根部材群の羽根部材21が周方向に位相がずれるように配置されている。図では好ましい一例として、ローラ幅方向に4組の羽根部材群(A,B,C,D)を配置すると共に、隣り合う羽根部材21の周方向の位相が22.5度ずれるように配置している。従って、回転ローラ2を
図2(b)のように側面から見たとき、16枚の羽根部材21が周方向に沿って22.5度間隔で均等配置された構成となっている。なお、一組の羽根部材群を構成する羽根部材21の枚数、羽根部材群の組数、羽根部材21の周方向の間隔は適宜変更することが可能である。
【0024】
各羽根部材21は、その先端部分が円盤部材22の外周縁よりも外方に突出するように配置されている。羽根部材21の表面は、ローラ回転時にラインパウダーPを吐出口16に向けて搬送する搬送面として機能する。そのため、羽根部材21の断面形状は、回転ローラ2が前転及び後転したときのいずれにも対応できるように、前後対称構造となっている。好ましくは、底部から頂部に向かって僅かに厚みが薄くなる翼状,台形状或いは三角形状に形成されている。
【0025】
さらにローラ幅方向には、各羽根部材群(A,B,C,D)同士の間に位置するように中空の環状部材23が配置されている。各羽根部材群(A,B,C,D)の羽根部材21は、この中空の環状部材23に固定支持されている。中空の環状部材23は、羽根部材21を支持する部材であると共に、ローラの強度を補充する骨格部材としても機能する。
【0026】
上記した回転ローラ2は、例えば
図3に示すように、各羽根部材群(A、B、C、D)単位で羽根部材21と環状部材23が一体となった分割構造とすることができる。そして、これら各羽根部材群を構成する部材と円盤部材を組み立てて回転ローラ2を完成させる。この場合、各部材に接合部としての凹凸を形成しておき、これら凹凸を互いに係合することで正しく部材を位置決めできるようにする。組み立てた回転ローラ2は、接着剤や固定手段で各部材同士を固定するようにしてもよい。このような分割構造とすれば、各羽根部材群(A、B、C、D)を構成する部材を、共通の形状とすることができ、量産し易いという利点がある。
【0027】
回転ローラ2の大きさは、例えば本体部10の内部容積や吐出口16の大きさに適合するように適宜設計される。回転ローラ2の各部材の材質は、樹脂が好ましい。但し、材質が限定されることはなく、ゴムや金属等の他の材料を用いて製作してもよい。なお、樹脂製の回転ローラ2にすれば、他の材料に比べて質量が軽いことから、ラインカー1を軽量化できる利点がある。また、金属には及ばないが、ゴムに比べて耐久性に優れており、経時劣化を抑えることが期待できる。
【0028】
中空円筒状の回転ローラ2の変形例として、
図4及び
図5に挙げる構成とすることもできる。すなわち、各羽根部材群(A、B、C、D)の周方向の位相のずれをなくし、羽根部材21がローラ幅方向に一列に並んだ構成としてもよい。この場合、回転ローラ2を
図4(b)のように側面から見たとき、8枚の羽根部材21が周方向に沿って45度間隔で均等配置された構成となっている。さらに、
図4に示す回転ローラ2においても、
図5に一例を示すように、分割構造とすることができる。なお、
図4では、変形例として円盤部材22の開口部22cを形成した構成を例示しているが、勿論、ラインパウダーPの左右側面からの流動を促進させるために開口部22cを設けるようにしてもよい。
【0029】
説明を
図1に戻すと、ラインカー1の本体部10の底部の外面側には、吐出口16を覆った状態(閉の状態)と露出した状態(開の状態)とに切り替え可能なスライド式のシャッター17が設けられている(
図1参照)。シャッター17の開閉動作は、レバー18で 操作できるようになっている。すなわち、車軸13を支点にして回動可能な構成になっている。吐出口16の開閉機能を備えれば、ラインを引く場所までラインパウダーPを落とすことなく、ラインカー1を運搬することが可能となる。さらに、シャッター17を利用してライン幅を変える機能を付加することも可能である。一例として、シャッター17に異なる幅(例えば、50mmと76mm)の開口部を形成しておき、レバー18の操作でいずれかの開口部が吐出口16と重なるように設定可能なようにする。或いは、底部に異なる幅の吐出口を2個形成しておき、レバー18の操作でいずれか一方をシャッター17で閉じ、他方を開いた状態にできるようにする。
【0030】
続いて、中空円筒状の回転ローラ2を備えたラインカー1の作用について、
図6を参照しながら説明する。
図6は、本実施形態に従うラインカー1のラインパウダーPの流れを模式的に示したものであり、比較として従来の羽根車のラインカーの場合を併記している。ラインカー1の使用方法については、本実施形態のラインカー1も従来のラインカーと同様である。すなわち、本体部10内にラインパウダーPを充填しておき、描こうとする仮想ラインに沿ってラインカー1を押し引きし、吐出口16から吐出されるラインパウダーPによって所望のラインを引いていく。
【0031】
中空円筒状の回転ローラ2の場合、
図6に矢印で模式的に示すように、吐出口16に向かうラインパウダーPの流れが多岐にわたって形成されることにより、回転ローラによる供給動作(作用)が安定的に行われ、結果的に、吐出口16に常に均一にラインパウダーPを供給することができる。一方、従来の羽根車の場合、羽根車自体がラインパウダーの流れを制限する障害となってしまい、羽根と羽根との間の凹んだ領域S内に流れ込むラインパウダーの量が必ずしも一定でなく、結果的に、吐出口に供給されるラインパウダーの量にもばらつきが生じてしまう。
【0032】
図7は、
図4に示した回転ローラ2を用いて実際に連続的にラインを引き、濃淡化現象、空洞化現象及びロック現象の発生の有無を評価した試験の結果を示す。
図7の試験結果を見れば分かるように、中空円筒状の回転ローラ2を用いた場合、濃淡が殆ど無い上に、ラインが鮮明である。しかも、試験中、空洞化現象及びロック現象が発生しづらかった。一方、従来の羽根車を用いた場合、長さ方向においてラインパウダーが多いところと少ないところが定期的に表れ、ラインの濃淡が生じている。特にラインパウダーの少ないところはラインが不鮮明になっている。しかも、従来の羽根車は、本実施形態の回転ローラ2よりも空洞化現象及びロック現象が発生しやすかった。
図7には、連続的にラインを引いて空洞化現象が発生し、中央付近にラインパウダーが吐出されていないラインが形成された様子を示している。
【0033】
図4に示した回転ローラ2の評価試験の結果は上記のとおりであり、その有利な効果を確認することができた。一方で、本発明者は、非常にゆっくりとラインカー1を押し引きした際の吐出量不足を効果的に防止するには、各羽根部材群(A、B、C、D)の周方向の位相をずらすことが好ましく、羽根部材21の先端が本体部底面に接触して一時的に羽根部材21が湾曲するように回転ローラ2を配置するのがより好ましいことも評価試験によって確認した。その結果を踏まえて、
図2に示す回転ローラ2を具現化するに至ったのである。
【0034】
以上、本実施形態のラインカー1によれば、中空円筒状の回転ローラ2を用いたことにより、ラインパウダーPを常に安定して且つ均一に吐出口16に供給することが可能となる。その結果、従来の羽根車よりも濃淡化現象の発生が少なく、鮮明なラインを引くことができる。さらに、回転ローラ2の周囲におけるラインパウダーPの流動性が高いので、周囲に停滞するラインパウダーPの量が減少する。その結果、従来の羽根車よりも回転ローラ2の周囲において空洞化現象が発生しづらく、連続して鮮明なラインを引くことが可能となる。さらに、羽根部材21の表面積が小さいので、回転ローラ2が回転する際にラインパウダーPから受ける抵抗が小さい。従って、例えば使用を休止していたときや、湿気が多いときに、ラインパウダーPの密集状態が高くなる場合があるが、このような場合にも、従来の羽根車よりもロック現象が発生しづらい。また、回転ローラ2を回転させる際の抵抗が小さいので、使用者にとっても、ラインカー1を押し引きする際の負荷が軽減されるという利点もある。
【0035】
図8には、回転ローラ2の更なる変形例の一例を示している。すなわち、回転ローラ2においては、必ずしも円盤部材22を備えていなくともよく、
図8(a)に示すように、回転軸から半径方向に伸びる例えば棒状又は線状の部材24に代えるようにしてもよい。このように構成することで、側面側からの流通性を向上させることが可能となる。また、羽根部材21は、羽根板でなくともよく、
図8(b)に示すように、ブラシ25であってもよい。なお、
図8の変形例では、ローラ幅方向の位相を揃えた構成を示しているが、
図2に示した回転ローラ2のように、羽根部材群の周方向の位相をずらすようにしてもよい。
【0036】
(第二実施形態)
続いて、第二実施形態について、
図9を参照しながら説明する。本実施形態のラインカーは、第1実施形態のラインカー1よりもデザイン性を向上させ、且つ、新たな機能を追加したラインカー3である。ラインパウダーPを吐出するための構成(すなわち、
図2及び
図4に示した構成)に関しては第1実施形態と同様の構成である。その他、第1実施形態のラインカー1と同様の構成については、同じ符号を付すことによって詳しい説明は割愛する。
【0037】
本実施形態のラインカー3は、本体部10が流線形に形成されており、視覚的にも優れたデザイン性を有している。そして、前面側底部に、スタンド14を兼ねた流線形の部分が形成されており、新たな機能として照準ガイド31が設けられている。この照準ガイド31は、ライン幅に対応する幅に配置された2枚の板状部材31a,31bで構成されており、使用者は、描こうとする仮想ラインにこの照準ガイド31を重ねることで、精度よくラインを引くことができる。さらに、既述のようにライン幅を切り替え可能な構成(例えば、50mmと76mm)とした場合は、照準ガイド31もライン幅に対応して切り替え可能な構成とする。板状部材31a,31bは、
図7に示す三角形状が好ましいが、この形状に限定されることはなく、四角形又は多角形をなす矩形状、或いは半円形又は半楕円形をなす円弧状など、種々の形状にすることができる。さらに、
図7には、好適な照準ガイド31の構成として、2枚の板状部材31a,31bを用いた例を示しているが、他の構成に代えてもよい。変形例として、例えば板に代えてピンにしてもよい。若しくは本体部10の前面側底部を、直径がライン幅に対応した半円形又は楕円形に凹んだ形状としてもよい。
【0038】
さらに、本体部10の左右側面には、車輪12を覆うオーバーフェンダー32が形成されている。このようにラインカー3にオーバーフェンダー32を追加した構成にすれば、雨露や砂が車軸13の軸受部分や車輪12の表面に付着することが防止でき、ラインパウダーPを吐出動作に悪影響を及ぼすのを抑制できる。
【0039】
さらに、本実施形態では、ハンドル15にも新たな機能が付加されている。すなわち、図に示すように、上方に向かうにつれて幅が拡大し、さらに途中で前方に3段の階段状になるようにハンドル15を形成している。かかる形状にすれば、身長の低い使用者は、下段の部分を左右の手で握ってラインカーを押すことができる。このように、使用者にとって握り易く、且つ、使用者の身長に依存しないハンドルを、本明細書では「ユニバーサルハンドル」と称する。
【0040】
このように構成した第2実施形態のラインカー3においても、回転ローラ2を備えたことによって第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、第2実施形態のラインカー3は、デザイン性に優れ、且つ、新規な機能が付加されているという利点がある。
【0041】
なお、上述の第1及び第2実施形態は、共に二輪型のラインカーに回転ローラ2を適用した例である。勿論、二輪型に制限されることはなく、四輪型のラインカーに回転ローラ2を適用しても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0042】
以上、本発明を具体的な実施形態に則して詳細に説明したが、形式や細部についての種々の置換、変形、変更等が、特許請求の範囲の記載により規定されるような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われることが可能であることは、当該技術分野における通常の知識を有する者には明らかである。従って、本発明の範囲は、前述の実施形態及び添付図面に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載及びこれと均等なものに基づいて定められるべきである。
【解決手段】粉状のラインパウダーが内部に充填される本体部と、前記本体部を押し引きするための車輪及びハンドルと、前記本体部の底部に形成され、ラインパウダーを地面に向けて吐出する吐出口と、前記ラインパウダーの充填領域に配置され、ラインパウダーを吐出口に向けて供給する回転供給機構と、を備えたラインカーにおいて、前記回転供給機構は、前記吐出口の上方位置に配置される中空円筒状の回転ローラであって、該ローラの幅方向に伸びる羽根部材の複数が回転軸を中心とした円周上に間隔をあけて配置され、周方向において各羽根部材の間が開口している構成とする。