(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について説明するが、本発明は以下に示す形態に限定されるものではない。
【0054】
〔スズアルコキシドからアルコールを回収する方法〕
本実施形態のスズアルコキシドからアルコールを回収する方法においては、
スズ原子に水よりも高沸点のアルコールに由来するアルコキシ基が少なくとも1つ結合したスズアルコキシドと、酸とを反応させて、前記アルコキシ基と前記酸に由来する基とを交換し、アルコールを副生させ、この副生アルコールを蒸留によって分離回収する。
【0055】
(スズアルコキシド)
本実施形態において用いるスズアルコキシドとは、当該スズアルコキシド中のスズ原子に、水より沸点が高いアルコールに由来するアルコキシ基が少なくとも1つ結合したスズアルコキシドである。
具体的には、分子内に少なくとも1つの4価のスズ原子を含有し、このスズ原子への結合は、スズ−アルキル結合、スズ−アルコキシ結合、スズ−酸素−スズ結合によって価数が占められており、分子内にスズ−アルコキシ結合を少なくとも1つ有するものとする。
なお、分子外からスズ原子への他分子の配位は、本発明の目的に影響を与えなければ差し支えない。このような分子外からの配位としては、アルコール類、アルキルスズアルコキシド同士の供与配位による会合、二酸化炭素の配位等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
前記スズアルコキシドとしては、下記(i)〜(v)からなる群から選ばれるいずれかが好適な例として挙げられる。
(i)1つのスズ原子を有し、スズ原子に3個のアルキル基と1個のアルコキシ基が結合したトリアルキルスズアルコキシド。
(ii)1つのスズ原子を有し、スズ原子に2個のアルキル基と2個のアルコキシ基が結合したジアルキルスズアルコキシド。
(iii)2つのスズ原子を有し、各々1つのスズ原子に、2個のアルキル基と1個のアルコキシ基が結合し、2つのスズ原子が、スズ−酸素−スズ結合を形成した、テトラアルキルジアルコキシジスタンオキサン。
(iv)少なくとも1つのスズ原子を有し、各々1つのスズ原子に、1個のアルキル基と、1〜3個のアルコキシ基が結合したモノアルキルスズアルコキシド。
(v)1つのスズ原子を有し、スズ原子に4個のアルコキシ基が結合したテトラアルコキシスズ。
【0057】
前記スズアルコキシドとしては、トリアルキルスズアルコキシド、ジアルキルスズアルコキシド、テトラアルキルジアルコキシジスタンオキサン、モノアルキルスズアルコキシドからなる群から選ばれる少なくとも1つのスズアルコキシドが、特に好ましい。
【0058】
スズアルコキシドにおいて、スズ−アルキル結合を有している場合のアルキル基は、脂肪族アルキル基、アラルキル基(アルキル基のH原子がアリール基で置換された基)のいずれも含む。
例えば、メチル、エチル、プロピル(各異性体)、ブチル(各異性体)、ペンチル(各異性体)、ヘキシル(各異性体)、ヘプチル(各異性体)、オクチル(各異性体)、ノニル(各異性体)、デシル(各異性体)、ウンデシル(各異性体)、ドデシル(各異性体)、2−ブテニル、シクロブテニル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル等の炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基であるアルキル基、炭素数5〜12の脂環式炭化水素基であるシクロアルキル基、ベンジル、フェニルエチル等の炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられる、
また、スズアルコキシドを構成するアルキル基は、エーテル結合を含んでいてもよく、ノナフルオロブチル、ヘプタフルオロブチル(各異性体)等のように、炭化水素基の水素の全部又は一部がハロゲン原子に置換したハロゲン化炭化水素基であってもよい。好ましくは、アルキル基である。
スズ原子に結合するアルキル基が複数ある場合、それらは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上述したアルキル基のうち、工業的生産時の入手の容易さを考慮すれば、n−ブチル基又はn−オクチル基がより好ましい。
【0059】
本実施形態において用いるスズアルコキシドのスズ−アルコキシ結合を形成しているアルコキシ基(酸素−アルキル結合からなる基)のアルキル基は、脂肪族アルキル基、アラルキル基のいずれも含む。
例えば、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜14の脂肪族アルキル基、炭素数5〜14のシクロアルキル基、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール基、ベンジル、フェニルエチル等の炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられ、ノナフルオロブチル、ヘプタフルオロブチル(各異性体)等のように、炭化水素基の水素の全部あるいは一部がハロゲン原子に置換したハロゲン化炭化水素基であってもよい。
好ましくは炭素数1〜12のアルキル基であり、より好ましくは、炭素数4〜12のアルキル基で、かつ、酸素に隣接する炭素原子がメチレン構造であるアルキル基である。
スズ原子に結合するアルコキシ基が複数ある場合、それらは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0060】
本実施形態において用いるスズアルコキシドのスズ−アルコキシ結合を形成しているアルコキシ基は、標準沸点が100℃以上の1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、及び炭素数5〜12のアルキルアルコールからなら群から選ばれるアルコールに由来するアルコキシ基であることが好ましい。
なお、標準沸点とは、化学大辞典(共立出版株式会社、2003年10月1日発行)に記載されているように、1気圧における沸点を指す。
このようなアルコキシ基の具体例としては、1−ブトキシ基、2−メチル−1−プロポキシ基、ペンチルオキシ基(各異性体)、ヘキシルオキシ基(各異性体)、ヘプチルオキシ基(各異性体)、オクチルオキシ基(各異性体)、ノニルオキシ基(各異性体)、デシルオキシ基(各異性体)等の、直鎖状もしくは分岐鎖状の飽和アルキル基と酸素原子から構成されるアルコキシ基が挙げられる。
【0061】
スズ原子に結合するアルコキシ基が複数である場合、それらは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記アルコキシ基のうち、1−ブトキシ基、2−メチル−1−プロポキシ基、ペンチルオキシ基(各異性体)、ヘキシルオキシ基(各異性体)の中から選ばれるものが好ましく、中でも3−メチル−ブトキシ基がより好ましい。
スズ−アルコキシ結合以外のスズ−酸素結合は、本発明の効果に影響を与えない結合であれば、どのような結合であってもよい。好ましい結合としては、スズ−酸素−スズ結合を形成するスズ−酸素結合である。
【0062】
本実施形態において用いるスズアルコキシドについて、さらに具体例を挙げて説明する。
スズアルコキシドとしては、下記式(1)に示すトリアルキルスズアルコキシドを用いることができる。
下記式(1)は単量体の構造式を示すが、スズアルコキシドは、単量体、会合体、多量体、重合体のいずれでもよい。
【0064】
前記式(1)中、R
1、R
2、R
3は、各々独立して、脂肪族基又はアラルキル基であり、R
4は、脂肪族基又はアラルキル基であり、a、b、cは、それぞれ0〜3の整数であり、a+b+cは3である。
【0065】
前記式(1)のトリアルキルスズアルコキシドの、R
1、R
2、R
3としては、例えば、メチル、エチル、プロピル(各異性体)、ブチル(各異性体)、ペンチル(各異性体)、ヘキシル(各異性体)、ヘプチル(各異性体)、オクチル(各異性体)、ノニル(各異性体)、デシル(各異性体)、ウンデシル(各異性体)、ドデシル(各異性体)、2−ブテニル、シクロブテニル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル等の炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基であるアルキル基、炭素数5〜12の脂環式炭化水素基であるシクロアルキル基、ベンジル、フェニルエチル等の炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられる。
また、エーテル結合を含んでいてもよいし、ノナフルオロブチル、ヘプタフルオロブチル(各異性体)等のように、炭化水素基の水素の全部又は一部がハロゲン原子に置換したハロゲン化炭化水素基であってもよい。
R
1、R
2、R
3としてはアルキル基が好ましく、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基がより好ましい。
前記式(1)のR
1、R
2、R
3は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
R
4としては、例えば、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜14の脂肪族基、炭素数5〜14のシクロアルキル基、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール基、ベンジル、フェニルエチル等の炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられ、ノナフルオロブチル、ヘプタフルオロブチル(各異性体)等のように、炭化水素基の水素の全部又は一部がハロゲン原子に置換したハロゲン化炭化水素基であってもよい。R
4は、アルキル基であることが好ましい。
【0066】
上述したトリアルキルスズアルコキシドの具体例としては、トリブチル−メトキシ−スズ、トリブチル−エトキシ−スズ、トリブチル−プロポキシ−スズ(各異性体)、トリブチル−ブトキシ−スズ(各異性体)、トリブチル−ペンチルオキシ−スズ(各異性体)、トリブチル−ヘキシルオキシ−スズ(各異性体)、トリブチル−ヘプチルオキシ−スズ、トリブチル−ベンジルオキシ−スズ、トリオクチル−メトキシ−スズ、トリオクチル−エトキシ−スズ、トリオクチル−プロポキシ−スズ(各異性体)、トリオクチル−ブトキシ−スズ(各異性体)、トリオクチル−ペンチルオキシ−スズ(各異性体)、トリオクチル−ヘキシルオキシ−スズ(各異性体)、トリオクチル−ヘプチルオキシ−スズ(各異性体)、トリオクチル−ベンジルオキシ−スズ等のトリアルキル−アルコキシ−スズやトリアルキル−アラルキルオキシ−スズ等が挙げられる。
【0067】
前記式(1)で示されるトリアルキルスズアルコキシドは、R
1基、R
2基、R
3基がn−ブチル基、n−オクチル基からなるものが好ましく、R
4基が炭素数1〜6のアルキル基であるものがより好ましく、さらには、R
4基が炭素数4〜6のアルキル基で、かつ酸素に隣接する炭素原子がメチレン構造であるアルキル基であるものがより好ましい。
前記式(1)で示されるトリアルキルスズアルコキシドのうち、より好ましいものの例としては、トトリ−(n−ブチル)−(n−ブトキシ)−スズ、トリ−(n−ブチル)−(n−ペンチルオキシ)−スズ、トリ−(n−ブチル)−(3−メチルブトキシ)−スズ、トリ−(n−ブチル)−(n−ヘキシルオキシ)−スズ、トリ−(n−ブチル)−(2−エチルブトキシ)−スズ、トリ−(n−オクチル)−(n−ブトキシ)−スズ、トリ−(n−オクチル)−(n−ペンチルオキシ)−スズ、トリ−(n−オクチル)−(n−ヘキシルオキシ)−スズ、トリ−(n−オクチル)−(3−メチルブトキシ)−スズ、トリ−(n−オクチル)−(2−エチルブトキシ)−スズが挙げられる。
上記化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
【0068】
本実施形態において使用するスズアルコキシドとしては、下記式(2)に示すジアルキルスズジアルコキシドを用いることができる。
なお、下記式(2)においては、単量体の構造式を示すが、単量体、会合体、多量体、重合体のいずれでもよい。
【0070】
上記式(2)中、R
5、R
6は、各々独立して、脂肪族基、アラルキル基であり、R
7、R
8は、各々独立して、脂肪族基、アラルキル基であり、d及びeは0から2の整数であって、d+eは2であり、f及びgは0〜2の整数であって、f+gは2である。
【0071】
上記式(2)に示すジアルキルスズジアルコキシドのR
5、R
6の例としては、メチル、エチル、プロピル(各異性体)、ブチル(各異性体)、ペンチル(各異性体)、ヘキシル(各異性体)、ヘプチル(各異性体)、オクチル(各異性体)、ノニル(各異性体)、デシル(各異性体)、ウンデシル(各異性体)、ドデシル(各異性体)、2−ブテニル、シクロブテニル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル等の炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基であるアルキル基や炭素数5〜12の脂環式炭化水素基であるシクロアルキル基、ベンジル、フェニルエチル等の炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられる。また、エーテル結合を含んでいてもよいし、ノナフルオロブチル、ヘプタフルオロブチル(各異性体)等のように炭化水素基の水素の全部あるいは一部がハロゲン原子に置換したハロゲン化炭化水素基であってもよいが、これらに限定されない。好ましくは、アルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。
上記式(2)のR
5、R
6は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0072】
R
7、R
8としては、例えば、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12の脂肪族基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール基、ベンジル、フェニルエチル等の炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられ、ノナフルオロブチル、ヘプタフルオロブチル(各異性体)等のように、炭化水素基の水素の全部あるいは一部がハロゲン原子に置換したハロゲン化炭化水素基であってもよい。好ましくは、アルキル基である。式(2)のR
7とR
8は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0073】
上述したジアルキルスズジアルコキシドとしては、例えば、ジブチル−ジメトキシ−スズ、ジブチル−ジエトキシ−スズ、ジブチル−ジプロポキシ−スズ(各異性体)、ジブチル−ジブトキシ−スズ(各異性体)、ジブチル−ジペンチルオキシ−スズ(各異性体)、ジブチル−ジヘキシルオキシ−スズ(各異性体)、ジブチル−ジヘプチルオキシ−スズ、ジブチル−ジベンジルオキシ−スズ、ジオクチル−ジメトキシ−スズ、ジオクチル−ジエトキシ−スズ、ジオクチル−ジプロポキシ−スズ(各異性体)、ジオクチル−ジブトキシ−スズ(各異性体)、ジオクチル−ジペンチルオキシ−スズ(各異性体)、ジオクチル−ジヘキシルオキシ−スズ(各異性体)、ジオクチル−ジヘプチルオキシ−スズ(各異性体)、ジオクチル−ジベンジルオキシ−スズ等のジアルキル−ジアルコキシ−スズやジアルキル−ジアラルキルオキシ−スズ等が挙げられる。
【0074】
上記式(2)に示すジアルキルスズジアルコキシドのうち、R
5基、R
6基が、n−ブチル基、n−オクチル基から選ばれるものが好ましく、R
7基、R
8基が炭素数1〜6のアルキル基であるものがより好ましく、R
7基、R
8基が炭素数4〜6のアルキル基で、かつ酸素に隣接する炭素原子がメチレン構造であるアルキル基であるものがさらに好ましい。
具体的には、ジ−(n−ブチル)−ジ−(n−ブトキシ)−スズ、ジ−(n−ブチル)−ジ−(n−ペンチルオキシ)−スズ、ジ−(n−ブチル)−ビス−(3−メチルブトキシ)−スズ、ジ−(n−ブチル)−ジ−(n−ヘキシルオキシ)−スズ、ジ−(n−ブチル)−ビス−(2−エチルブトキシ)−スズ、ジ−(n−オクチル)−ジ−(n−ブトキシ)−スズ、ジ−(n−オクチル)−ジ−(n−ペンチルオキシ)−スズ、ジ−(n−オクチル)−ジ−(n−ヘキシルオキシ)−スズ、ジ−(n−オクチル)−ビス−(3−メチルブトキシ)−スズ、ジ−(n−オクチル)−ビス−(2−エチルブトキシ)−スズが好ましい例として挙げられる。
これらは単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0075】
本実施形態においては、スズアルコキシドとして、式(3)に示すテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンを用いることができる。
式(3)においては単量体の構造式を示すが、単量体、会合体、多量体、重合体のいずれであってもよい。
【0077】
式(3)中、R
9、R
10、R
11、R
12は、各々独立して、脂肪族基又はアラルキル基であり、R
13、R
14は、各々独立して、脂肪族基又はアラルキル基であり、h、i、j、kは、それぞれ0〜4の整数であり、h+i+j+kは4であり、l+mは、それぞれ0〜2の整数であり、l+mは2である。
【0078】
式(3)に示すテトラアルキル−ジアルコキシ−ジスタンオキサン中の、R
9、R
10、R
11、R
12としては、例えば、メチル、エチル、プロピル(各異性体)、ブチル(各異性体)、ペンチル(各異性体)、ヘキシル(各異性体)、ヘプチル(各異性体)、オクチル(各異性体)、ノニル(各異性体)、デシル(各異性体)、ウンデシル(各異性体)、ドデシル(各異性体)、2−ブテニル、シクロブテニル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル等の炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基であるアルキル基、炭素数5〜12の脂環式炭化水素基であるシクロアルキル基、ベンジル、フェニルエチル等の炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられる。また、これらは、エーテル結合を含んでいてもいいし、ノナフルオロブチル、ヘプタフルオロブチル(各異性体)等のように炭化水素基の水素の全部又は一部がハロゲン原子に置換したハロゲン化炭化水素基であってもよい。R
9、R
10、R
11、R
12は、アルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。
式(3)中のR
9、R
10、R
11、R
12は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0079】
R
13、R
14としては、例えば、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12の脂肪族基、炭素数5〜14のシクロアルキル基、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜14のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール基、ベンジル、フェニルエチル等の炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられ、ノナフルオロブチル、ヘプタフルオロブチル(各異性体)等のように炭化水素基の水素の全部あるいは一部がハロゲン原子に置換したハロゲン化炭化水素基であってもよいが、これらに限定されない。好ましくはアルキル基である。式(3)中のR
13、R
14は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0080】
上述したテトラアルキル−ジアルコキシ−ジスタンオキサンの具体例としては、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジメトキシ−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジエトキシ−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジプロポキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジブトキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジペンチルオキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジヘキシルオキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジヘプチルオキシ−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジベンジルオキシ−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジメトキシ−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジエトキシ−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジプロポキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジブトキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジペンチルオキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジヘキシルオキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジヘプチルオキシ−ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジベンジルオキシ−ジスタンオキサン等のテトラアルキル−ジアルコキシ−ジスタンオキサン、テトラアルキル−ジアラルキルオキシ−ジスタンオキサン等が挙げられる。
【0081】
上記式(3)のテトラアルキル−ジアルコキシ−ジスタンオキサンにおいては、R
9、R
10、R
11、R
12基は、n−ブチル基又はn−オクチル基であることが好ましく、R
13基、R
14基が炭素数1〜6のアルキル基であるものがより好ましく、R
13基、R
14基が炭素数4〜6のアルキル基で、かつ酸素に隣接する炭素原子がメチレン構造であるアルキル基であるものがさらに好ましい。
具体的には、1,1,3,3−テトラ−(n−ブチル)−1,3−ジ−(n−ブトキシ)−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラ−(n−ブチル)−1,3−ジ−(n−ペンチルオキシ)−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラ−(n−ブチル)−1,3−ビス−(3−メチルブトキシ)−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラ−(n−ブチル)−1,3−ジ−(n−ヘキシルオキシ)−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラ−(n−ブチル)−1,3−ビス−(2−エチルブトキシ)−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラ−(n−オクチル)−1,3−ジ−(n−ブトキシ)−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラ−(n−オクチル)−1,3−ジ−(n−ペンチルオキシ)−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラ−(n−オクチル)−1,3−ビス−(3−メチルブトキシ)−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラ−(n−オクチル)−1,3−ジ−(n−ヘキシルオキシ)−ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラ−(n−オクチル)−1,3−ビス−(2−エチルブトキシ)−ジスタンオキサンが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0082】
本実施形態において用いるスズアルコキシドとしては、モノアルキルスズアルコキシドを使用できる。
モノアルキルスズアルコキシドは、少なくとも1つのスズ原子を有し、各々1つのスズ原子に1個のアルキル基と、1〜3個のアルコキシ基が結合した化合物であって、様々な構造となり得る。
具体的には、重クロロホルム溶液中で
119Sn−NMRにより分析した際に、テトラメチルスズ基準で、−220〜−610ppmに化学シフトを示すスズ原子が検出されるものであることが好ましい。
具体的には、下記式(4)及び/又は(5)に示すモノアルキルスズアルコキシドが挙げられる。式(4)、(5)は、単量体を示すが、会合体、多量体、重合体であってもよい。
【0085】
式(4)、(5)中、R
15、R
19は、脂肪族基又はアラルキル基であり、R
16、R
17、R
18、R
20は、各々独立して、脂肪族基又はアラルキル基であり、n、o、pは、それぞれ0〜3の整数であり、n+o+pは3であり、xは0以上の整数である。
【0086】
上記式(4)中のR
15としては、例えば、メチル、エチル、プロピル(各異性体)、ブチル(各異性体)、ペンチル(各異性体)、ヘキシル(各異性体)、ヘプチル(各異性体)、オクチル(各異性体)、ノニル(各異性体)、デシル(各異性体)、ウンデシル(各異性体)、ドデシル(各異性体)、2−ブテニル、シクロブテニル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル等の炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基であるアルキル基や、炭素数5〜12の脂環式炭化水素基であるシクロアルキル基、ベンジル、フェニルエチル等の炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられる。また、これらはエーテル結合を含んでいてもよく、ノナフルオロブチル、ヘプタフルオロブチル(各異性体)等のように、炭化水素基の水素の全部又は一部がハロゲン原子に置換したハロゲン化炭化水素基であってもよい。
R
15は、これらに限定されるものではなく、アルキル基が好ましく、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基がより好ましい。
【0087】
上記式(4)中のR
16、R
17、R
18としては、例えば、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜14の脂肪族基、炭素数5〜14のシクロアルキル基、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール基、ベンジル、フェニルエチル等の炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられ、ノナフルオロブチル、ヘプタフルオロブチル(各異性体)等のように炭化水素基の水素の全部あるいは一部がハロゲン原子に置換したハロゲン化炭化水素基であってもよいが、これらに限定されない。アルキル基が好ましい。
【0088】
上述した本実施形態において用いることができるモノアルキルスズアルコキシドとしては、例えば、ブチル−トリメトキシ−スズ、ブチル−トリ−エトキシ−スズ、ブチル−トリプロポキシ−スズ(各異性体)、ブチル−トリ−ブトキシ−スズ(各異性体)、ブチル−トリ−ペンチルオキシ−スズ(各異性体)、ブチル−トリ−ヘキシルオキシ−スズ(各異性体)、ブチル−トリ−ヘプチルオキシ−スズ(各異性体)、ブチル−トリ−ベンジルオキシ−スズ、オクチル−トリ−メトキシ−スズ、オクチル−トリ−エトキシ−スズ、オクチル−トリ−プロポキシ−スズ(各異性体)、オクチル−トリ−ブトキシ−スズ(各異性体)、オクチル−トリ−ペンチルオキシ−スズ(各異性体)、オクチル−トリ−ヘキシルオキシ−スズ(各異性体)、オクチル−トリ−ヘプチルオキシ−スズ(各異性体)、オクチル−トリ−ベンジルオキシ−スズ等のアルキル−トリ−アルコキシ−スズ、アルキル−トリ−アラルキルオキシ−スズ等が挙げられる。
【0089】
上記式(4)に示すモノアルキルスズアルコキシドにおいては、
R
15基がn−ブチル基又はn−オクチル基であるものが好ましく、R
16基、R
17基、R
18基が炭素数1〜6のアルキル基であるものがより好ましく、R
16基、R
17基、R
18基が炭素数4〜6のアルキル基で、かつ酸素に隣接する炭素原子がメチレン構造であるアルキル基であるものがさらに好ましい。
具体的には、(n−ブチル)−トリ−(n−ブトキシ)−スズ、(n−ブチル)−トリ−(n−ペンチルオキシ)−スズ、(n−ブチル)−トリス−(3−メチルブトキシ)−スズ、(n−ブチル)−トリ−(n−ヘキシルオキシ)−スズ、(n−ブチル)−トリス−(2−エチルブトキシ)−スズ、(n−オクチル)−トリ−(n−ブトキシ)−スズ、(n−オクチル)−トリ−(n−ペンチルオキシ)−スズ、(n−オクチル)−トリ−(n−ヘキシルオキシ)−スズ、(n−オクチル)−トリス−(3−メチルブトキシ)−スズ、(n−オクチル)−トリス−(2−エチルブトキシ)−スズが好ましい。これらは単独で使用してもよく二種以上を併用してもよい。
【0090】
上記式(5)に示すモノアルキルスズアルコキシドのR
19としては、例えば、メチル、エチル、プロピル(各異性体)、ブチル(各異性体)、ペンチル(各異性体)、ヘキシル(各異性体)、ヘプチル(各異性体)、オクチル(各異性体)、ノニル(各異性体)、デシル(各異性体)、ウンデシル(各異性体)、ドデシル(各異性体)、2−ブテニル、シクロブテニル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル等の炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基であるアルキル基、炭素数5〜12の脂環式炭化水素基であるシクロアルキル基、ベンジル、フェニルエチル等の炭素数7から20のアラルキル基が挙げられる。また、これらはエーテル結合を含んでいてもよく、ノナフルオロブチル、ヘプタフルオロブチル(各異性体)等のように、炭化水素基の水素の全部又は一部がハロゲン原子に置換したハロゲン化炭化水素基であってもよいが、これらに限定されない。R
19は、アルキル基が好ましく、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基がより好ましい。
【0091】
上記式(5)中のR
20としては、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜14の脂肪族基、炭素数5〜14のシクロアルキル基、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール基、ベンジル、フェニルエチル等の炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられ、ノナフルオロブチル、ヘプタフルオロブチル(各異性体)等のように炭化水素基の水素の全部又は一部がハロゲン原子に置換したハロゲン化炭化水素基であってもよいが、これらに限定されない。特にアルキル基が好ましい。
【0092】
上述したようなモノアルキルスズアルコキシドの具体例としては、ブチル−メトキシ−スズオキシド、ブチル−エトキシ−スズオキシド、ブチル−プロポキシ−スズオキシド(各異性体)、ブチル−ブトキシ−スズオキシド(各異性体)、ブチル−ペンチルオキシ−スズオキシド(各異性体)、ブチル−ヘキシルオキシ−スズオキシド(各異性体)、ブチル−ヘプチルオキシ−スズオキシド(各異性体)、ブチル−ベンジルオキシ−スズオキシド、オクチル−メトキシ−スズオキシド、オクチル−エトキシ−スズオキシド、オクチル−プロポキシ−スズオキシド(各異性体)、オクチル−ブトキシ−スズオキシド(各異性体)、オクチル−ペンチルオキシ−スズオキシド(各異性体)、オクチル−ヘキシルオキシ−スズオキシド(各異性体)、オクチル−ヘプチルオキシ−スズオキシド(各異性体)、オクチル−ベンジルオキシ−スズオキシド等のアルキル−アルコキシ−スズオキシド、アルキル−アラルキルオキシ−スズオキシド等が挙げられる。
【0093】
上記式(5)に示すモノアルキルスズアルコキシドにおいては、R
19基がn−ブチル基、n−オクチル基から選ばれるものが好ましく、R
20基が炭素数1〜6のアルキル基であるものがより好ましく、R
20基が炭素数4〜6のアルキル基で、かつ酸素に隣接する炭素原子がメチレン構造であるアルキル基であるものがさらに好ましい。
具体的には、(n−ブチル)−(n−ブトキシ)−スズオキシド、(n−ブチル)(n−ペンチルオキシ)−スズオキシド、(n−ブチル)−(3−メチルブトキシ)−スズオキシド、(n−ブチル)−スズ−(n−ヘキシルオキシ)−スズオキシド、(n−ブチル)−(2−エチルブトキシ)−スズオキシド、(n−オクチル)−(n−ブトキシ)−スズオキシド、(n−オクチル)−(n−ペンチルオキシ)−スズオキシド、(n−オクチル)−(n−ヘキシルオキシ)−スズオキシド、(n−オクチル)−(3−メチルブトキシ)−スズオキシド、(n−オクチル)−(2−エチルブトキシ)−スズオキシドが挙げられる。
これらは単独で用いてもよく二種以上を併用してもよい。
【0094】
本実施形態において、スズアルコキシドとしては、式(6)に示すスズテトラアルコキシドを使用することができる。
なお、下記式(6)は、単量体の構造式を示すが、単量体、会合体、多量体、重合体のいずれでもよい。
【0096】
上記式(6)中、R
21、R
22、R
23、R
24は、各々独立して、脂肪族基又はアラルキル基であり、q、r、s、tは、それぞれ0〜4の整数であり、q+r+s+tは4である。
【0097】
式(6)中のR
21、R
22、R
23、R
24としては、例えば、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜14の脂肪族基、炭素数5〜14のシクロアルキル基、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール基、ベンジル、フェニルエチル等の炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられ、ノナフルオロブチル、ヘプタフルオロブチル(各異性体)等のように炭化水素基の水素の全部あるいは一部がハロゲン原子に置換したハロゲン化炭化水素基であってもよいが、これらに限定されない。特にアルキル基が好ましい。
上記のようなスズテトラアルコキシドとしては、例えば、テトラ−(メトキシ)−スズ、テトラ−(エトキシ)−スズ、テトラ−(プロポキシ)−スズ(各異性体)、テトラ−(ブトキシ)−スズ(各異性体)、テトラ−(ペンチルオキシ)−スズ(各異性体)、テトラ−(ヘキシルオキシ)−スズ(各異性体)、テトラ−(ヘプチルオキシ)−スズ(各異性体)、テトラ−(ベンジルオキシ)−スズなどのテトラ−(アルコキシ)−スズ、テトラ−(アラルキルオキシ)−スズ等が挙げられる。
【0098】
上記式(6)に示すスズテトラアルコキシドのうち、R
21、R
22、R
23、R
24基は、炭素数1〜6のアルキル基から選ばれるものが好ましく、R
21、R
22、R
23、R
24が炭素数4〜6のアルキル基で、かつ酸素に隣接する炭素原子がメチレン構造であるアルキル基であるものがより好ましい。
具体的には、テトラ−(n−ブトキシ)−スズ、テトラ−(n−ペンチルオキシ)−スズ、テトラ−(3−メチルブトキシ)−スズ、テトラ−(n−ヘキシルオキシ)−スズ、テトラ−(2−エチルブトキシ)−スズが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0099】
(スズアルコキシドの製造方法)
本実施形態において用いるスズアルコキシドの製造方法について説明する。
下記においては、先ず、上述した式(2)に示すジアルキルスズジアルコキシド、及び/又は式(3)に示すテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンの製造方法を説明する。
これらの製造方法については、特に限定されないが、既に開示されているジアルキルスズジアルコキシドの製造方法(WO2005/111049等)が好ましく利用できる。これは、ジアルキル酸化スズとアルコールとから、ジアルキルスズジアルコキシド、さらには中間過程でテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンを製造する技術である。
なお、スズアルコキシドは、後述する不均化反応を利用することにより、種々の構造のものを製造できる。
【0100】
以下、この製造方法について説明する。
アルコールとしては、目的とするジアルキルスズジアルコキシド、テトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンのアルコキシ基に相当するアルコールを使用するものとし、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール(各異性体)、ブタノール(各異性体)、ペンタノール(各異性体)、ヘキサノール(各異性体)、ヘプタノール(各異性体)、オクタノール(各異性体)、ノナノール(各異性体)、デカノール(各異性体)等のアルコールであって、アルコールを構成する炭素原子の数が1〜12の整数から選ばれる数であるアルコールが好ましく使用される。さらに好ましくは、エタノール、プロパノール(各異性体)、ブタノール(各異性体)、ペンタノール(各異性体)、ヘキサノール(各異性体)、ヘプタノール(各異性体)、オクタノール(各異性体)等の、アルコールを構成する炭素原子の数が2〜8の整数から選ばれる数であるアルコールが使用できる。
【0101】
ジアルキルスズジアルコキシドの製造で使用するジアルキル酸化スズとしては、下記式(7)で示すジアルキル酸化スズを用いる。
【0103】
上記式(7)中、Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を表す。
Rとしては、例えば、メチル、エチル、プロピル(各異性体)、ブチル(各異性体)、ペンチル(各異性体)、ヘキシル(各異性体)、ヘプチル(各異性体)、オクチル(各異性体)、ノニル(各異性体)、デシル(各異性体)、ウンデシル(各異性体)、ドデシル(各異性体)等の炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基であるアルキル基が挙げられ、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状の飽和アルキル基が好ましく、n−ブチル基、n−オクチル基がより好ましい。
【0104】
上記アルコールと上記ジアルキル酸化スズとを脱水反応させ、生成する水を系外に除去しながらテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサン及び/又はジアルキルスズジアルコキシドを得る。
この反応が実施される温度は、例えば80〜180℃の範囲で、生成する水を系外に蒸留除去するために、反応圧力にもよるが、100℃〜180℃が好ましく、反応速度を高めるためには反応温度は高温が好ましいが、一方で、高温では分解等の好ましくない反応も起こる場合もあり、収率が低下することもあるので、100℃〜160℃の範囲がより好ましい。
反応の圧力は、生成する水が系外に除去できる圧力であり、反応温度にもよるが、20〜1×10
6Paで行われる。
脱水反応の反応時間には制限はなく通常0.001〜50時間、好ましくは0.01〜10時間、より好ましくは0.1〜2時間である。
ジアルキルスズジアルコキシドを所望量含有する組成物が得られれば反応を終了してよい。反応の進行は、系外へ抜き出される水の量を測定することによっても求められるし、反応液をサンプリングして、
119Sn−NMRによる方法でも求めることができる。
【0105】
上記ジアルキルスズジアルコキシドを含有する組成物は、主に、ジアルキルスズジアルコキシドとテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンとを含有している。
この組成物に含有されるテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンとジアルキルスズジアルコキシドとのモル比率が、両者を併せたモル%で表して、0:100〜80:20の範囲である組成物、より好ましくは、10:90〜70:30の範囲となった組成物を得たことを確認して反応を終了する。
【0106】
使用したアルコールは、そのまま組成物と共存させた状態で使用してもよいし、場合によってはアルコールを蒸留除去して使用してもよい。
他の工程の反応器を小さくできる利点があるので、できるだけアルコールを除去しておくことが好ましい。
アルコールを除去する方法は、公知の蒸留による除去が好ましく、また蒸留に使用する蒸留器は公知の蒸留設備が使用できる。
蒸留装置としては、短時間で除去できることから薄膜蒸留装置が好ましい。
脱水反応の反応器の形式には特に制限はなく、公知の槽状、塔状の反応器が使用できる。
【0107】
水を含む低沸点反応混合物は、ガス状で蒸留によって反応器から抜き出し、製造されるジアルキルスズジアルコキシドを含む高沸点反応混合物を反応器下部から液状で抜き出せればよい。
このような反応器としては、例えば、攪拌槽、多段攪拌槽、蒸留塔、多段蒸留塔、多管式反応器、連続多段蒸留塔、充填塔、薄膜蒸発器、内部に支持体を備えた反応器、強制循環反応器、落膜蒸発器、落滴蒸発器、細流相反応器、気泡塔のいずれかを含む反応器を用いる方式、及びこれらを組み合わせた方式等、公知の種々の方法が用いられる。
平衡を生成系側に効率的にずらすという観点からは、塔状の反応器を用いる方法が好ましく、また形成される水を気相にすみやかに移動させられる気−液接触面積の大きな構造が好ましい。
多管式反応器、多段蒸留塔、充填剤を充填した充填塔を用いた連続法も使用できるが、本工程で使用する式(7)に示すジアルキル酸化スズが通常固体状であるため、まず、槽状反応器で実施し、次いで塔型反応器でジアルキルスズジアルコキシドの含有量を上げる方法が好ましい。
反応器及びラインの材質は、悪影響を及ぼさなければ、公知のどのようなものであってもよいが、SUS304やSUS316,SUS316L等が安価でもあり、好ましく使用できる。
必要に応じて、流量計、温度計などの計装機器、リボイラー、ポンプ、コンデンサーなどの公知のプロセス装置を付加してよく、加熱はスチーム、ヒーター等の公知の方法でよく、冷却も自然冷却、冷却水、ブライン等公知の方法が使用できる。
【0108】
(スズアルコキシドの製造方法)
上記したスズアルコキシドとしては、ジアルキルスズジアルコキシドと二酸化炭素との反応によって炭酸エステルを製造する工程において生成するスズアルコキシドを使用することができる。
具体的には、下記工程(a)〜工程(c)を順次行い、炭酸エステルを製造する過程においてスズアルコキシドが生成する。なお、生成されるスズアルコキシドには、上述した(i)〜(v)からなる群から選ばれる少なくとも1つのスズアルコキシドが含有される。
工程(a):上記式(2)で表されるジアルキルスズジアルコキシドと二酸化炭素とを反応させて、炭酸エステルと上記式(3)で表されるテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサン及び/又はテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンと二酸化炭素との結合体を含む反応液を得る工程。
工程(b):前記反応液から蒸留によって炭酸エステルを分離し、テトラアルキルジアルコキシジスタンオキサン及び/又はテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンと二酸化炭素との結合体を含む残留液を得る工程。
工程(c):前記残留液とアルコールとを反応させて、副生する水を蒸留によって除去してジアルキルスズジアルコキシドを再生し、このジアルキルスズジアルコキシドを上記工程(a)のジアルキルスズジアルコキシドとして使用する工程。
【0109】
<工程(a)>
先ず、工程(a)について説明する。
工程(a)は、上記式(2)で表されるジアルキルスズジアルコキシドと二酸化炭素とを反応させて、炭酸エステルと、上記式(3)で表されるテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサン及び/又はテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンと二酸化炭素との結合体を含む反応液を得る工程である。
この工程で使用するジアルキルスズジアルコキシドは、上述のジアルキル酸化スズとアルコールとの反応によって製造されたジアルキルスズジアルコキシドの場合と、連続製造時に、後述する工程(c)において再生されるジアルキルスズジアルコキシドの場合とがある。
本工程については、開示されている炭酸エステルの製造方法(WO03/055840、WO04/014840等)が好ましく使用される。
【0110】
工程(a)では、まず、上記したジアルキルスズジアルコキシドにガス状の二酸化炭素を吸収させ、化学反応させてジアルキルスズジアルコキシドの二酸化炭素結合体を含む混合物を得る。
前記化学反応させる際には、ジアルキルスズジアルコキシドを液状又は溶媒等によって液状とした状態で反応させる。
ジアルキルスズジアルコキシドを液状とするには、加熱によって液状とする方法が好ましく使用でき、また、溶媒等によって液状としてもよい。
反応を行う圧力は、反応させる温度にもよるが、常圧〜1MPaの範囲が好ましく、常圧〜0.6MPaの範囲がより好ましい。
反応させる温度は、反応させる圧力にもよるが、−40℃〜80℃の範囲が好ましく、移送の際の流動性を考慮すると、0℃〜80℃がより好ましく、常温(例えば、20℃)〜80℃がさらに好ましい。
反応時間は数秒〜100時間の範囲で実施してよく、生産性等を考慮すれば、数分〜10時間が好ましい。
反応器としては、公知の槽型反応器、塔型反応器が使用できる。また複数の反応器を組み合わせて使用してもよい。
【0111】
反応は二酸化炭素ガス(気体)とジアルキルスズジアルコキシドとを含有する組成物(液体)の反応であるため、効率よく反応させるためには、気液界面を大きくしてガスと液の接触面積を大きくすることが好ましい。このような気液界面を大きくして反応させる方法は公知の方法が利用できる。例えば、槽型反応器では、攪拌速度を上げたり、液中に気泡を発生させるような方法が好ましく、塔型反応器では、充填塔を利用したり、棚段塔を利用する方法が好ましい。このような塔型反応器の例としては、例えば泡鍾トレイ、多孔板トレイ、バルブトレイ、向流トレイ等のトレイを使用した棚段塔方式のものや、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、ヘリパック、スルザーパッキング、メラパック等の各種充填物を充填した充填塔方式のもの等が挙げられる。
反応器及びラインの材質については、公知のものが利用できるが、SUS304やSUS316,SUS316L等が安価でもあり好ましい。必要に応じて、流量計、温度計などの計装機器、リボイラー、ポンプ、コンデンサー等の公知のプロセス装置を付加してよく、加熱はスチーム、ヒーターなどの公知の方法でよく、冷却も自然冷却、冷却水、ブライン等公知の方法が使用できる。
反応は通常発熱反応であるから、冷却してもよいし、反応器の放熱によって冷却してもよい。あるいは炭酸エステル化反応を併発させる目的であれば加熱してもよい。
反応器の冷却、加熱はジャケットによる方法、内部コイルによる方法等、公知の方法が使用できる。
反応器に供給する二酸化炭素ガスとジアルキルスズジアルコキシドとを含有する組成物は、それぞれ別々に反応器に供給してもよいし、反応器に供給する前に混合しておいてもよい。反応器の複数箇所から供給してもよい。
反応終了は、例えば、
119Sn−NMR分析によって決定することができる。
【0112】
次に、上記により得られたジアルキルスズジアルコキシドの二酸化炭素結合体から、以下の方法により、炭酸エステルを含む反応液を得る。
反応条件は、110℃〜200℃の範囲とする。反応速度を高めるためには反応温度は高温とすることが好ましいが、一方で、高温では分解等の好ましくない反応も起こるおそれがあり、収率が低下する場合があるため、好ましくは120℃〜180℃の範囲とし、反応時間は0.1時間〜10時間の範囲、反応圧力は1.5MPa〜20MPa、好ましくは2.0MPa〜10MPaの範囲である。
反応は所望の炭酸エステルが反応器中に生成してから終了すればよい。
反応の進行は、反応器内の反応液をサンプリングし、
1H−NMRやガスクロマトグラフィー等の方法で生成した炭酸エステルを分析する方法等により確認できる。例えば、ジアルキルスズジアルコキシド及び/又はジアルキルスズジアルコキシドの二酸化炭素結合体中に含まれていたジアルキルスズジアルコキシド及び/又はジアルキルスズジアルコキシドの二酸化炭素結合体のモル数に対して、10%以上生成していることを確認して反応を終了してもよく、炭酸エステルの収量を多くしたい場合には、90%以上になるまで反応を続けてから終了する。
反応器としては公知の反応器が使用でき、塔型反応器、槽型反応器共に好ましく使用できる。
反応器及びびラインの材質は公知のものを使用でき、SUS304やSUS316,SUS316L等が安価であり好ましい。必要に応じて、流量計、温度計などの計装機器、リボイラー、ポンプ、コンデンサー等の公知のプロセス装置を付加してよく、加熱はスチーム、ヒーター等の公知の方法でよく、冷却も自然冷却、冷却水、ブライン等公知の方法が使用できる。
【0113】
<工程(b)>
次に、工程(b)について説明する。
この工程(b)は、上記工程(a)で得られた、炭酸エステルを含む反応液から、炭酸エステルを分離し、テトラアルキルジアルコキシジスタンオキサン及び/又はテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンと二酸化炭素との結合体を含む残留液を得る工程である。分離方法は公知の方法や装置が利用できる。好ましい方法は蒸留による方法である。
前記工程(a)から移送された反応液をバッチ、セミバッチ、連続的等の所定の方式により蒸留して炭酸エステルと残留液を得る。
蒸留方法としては、反応液を蒸留器に供給し、炭酸エステルを気相成分として蒸留器上部から系外へ分離し、残留液を液状成分として蒸留器の底部から抜き出す方法が好ましい。
本工程の温度は、炭酸エステルの沸点や圧力にもよるが、常温(例えば、20℃)〜200℃の範囲が好ましい。高温とすると残留液中のスズ化合物の変性が生じる場合や、炭酸エステルが逆反応によって減少してしまう場合もあるので、常温(例えば、20℃)〜150℃の範囲が好ましい。
本工程の圧力は、炭酸エステルの種類や、実施する温度にもよるが、通常、常圧〜減圧条件で行い、生産性を考慮すれば100Pa〜80KPaの範囲が好ましく、100Pa〜50KPaがより好ましい。
本工程の時間は、0.01時間〜10時間の範囲で実施でき、高温で長時間実施すると、反応液に含まれるスズ化合物が変性する場合や、炭酸エステルが逆反応によって減少する場合もあるため、0.01時間〜0.5時間の範囲が好ましく、0.01時間〜0.3時間の範囲がより好ましい。
蒸留器は公知の蒸留器が使用できる。塔型蒸留器、槽型蒸留器も好ましく使用でき、複数組み合わせて使用してもよい。より好ましい蒸留器は、薄膜蒸発器、薄膜蒸留器であり、蒸留塔を備えた薄膜蒸発器、薄膜蒸留器がさらに好ましい。
蒸留器及びラインの材質は、公知の材料を使用でき、SUS304、SUS316、SUS316L等が安価であり好ましい。必要に応じて、流量計、温度計等の計装機器、リボイラー、ポンプ、コンデンサー等の公知のプロセス装置を付加してもよく、加熱はスチーム、ヒーター等の公知の方法を使用でき、冷却も自然冷却、冷却水、ブライン等公知の方法が使用できる。
【0114】
<工程(c)>
次に、工程(c)について説明する。
工程(c)においては、上記工程(b)で得られた残留液とアルコールとを反応させて、副生する水を蒸留によって除去して、ジアルキルスズジアルコキシドを再生し、ジアルキルスズジアルコキシドを、上述した工程(a)のジアルキルスズジアルコキシドとして使用する工程である。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール(各異性体)、ブタノール(各異性体)、ペンタノール(各異性体)、ヘキサノール(各異性体)、ヘプタノール(各異性体)、オクタノール(各異性体)、ノナノール(各異性体)、デカノール(各異性体)等のアルコールであって、このアルコールを構成する炭素原子の数が1〜12の整数から選ばれる数であるアルコールが挙げられる。特に、エタノール、プロパノール(各異性体)、ブタノール(各異性体)、ペンタノール(各異性体)、ヘキサノール(各異性体)、ヘプタノール(各異性体)、オクタノール(各異性体)が好ましく、上記したジアルキルスズジアルコキシドの製造で使用したアルコールと同じアルコールを使用することがより好ましい。
反応で副生する水を蒸留によって除去する条件は、上述したジアルキルスズジアルコキシドの製造における水の蒸留と同様の条件で実施できる。
ジアルキルスズジアルコキシドを所望量含有する組成物が得られれば反応を終了してよい。
反応の進行は、系外へ抜き出される水の量を測定することによっても求められるし、反応液をサンプリングして、
119Sn−NMRによる方法でも求めることができる。
ジアルキルスズジアルコキシドを含有する組成物を、工程(a)で使用するためには、ジアルキルスズジアルコキシドを含有する組成物に含有されるテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンとジアルキルスズジアルコキシドとのモル比率が、両者を併せたモル%で表して、0:100〜80:20の範囲である組成物、より好ましくは、10:90〜70:30の範囲となった組成物を得たことを確認して反応を終了する。
使用したアルコールは、そのまま共存した状態で使用してもよいし、場合によってはアルコールを蒸留除去して使用してもよい。
他の工程の反応器を小さくできる利点があるので、できるだけアルコールを除去しておくことが好ましい。除去する方法は、公知の蒸留による除去が好ましく、また蒸留に使用する蒸留器は公知の蒸留設備が使用できる。好ましい蒸留装置としては、短時間で除去できることから薄膜蒸留装置が好ましく使用できる。
【0115】
上述した工程(a)〜工程(c)を行うことにより炭酸エステルを製造する工程において生成されるスズアルコキシドには、上述した(i)〜(v)からなる群から選ばれる少なくとも1つのスズアルコキシドが含有される。
これらのスズアルコキシドのうち、トリアルキルスズアルコキシド及び/又はモノアルキルスズアルコキシドは、「ジアルキルスズジアルコキシド及び/又はテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンのアルキル基不均化反応」によって生成させることができる。
上記「ジアルキルスズジアルコキシド及び/又はテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンのアルキル基不均化反応」とは、スズに結合した2つのアルキル基の数が、ジアルキルスズジアルコキシド化合物の場合は2分子間で、テトラアルキルジアルコキシジスタンオキサン化合物の場合は分子内及び/又は分子間で不均化し、1個のスズ−アルキル基結合を持つモノアルキルスズアルコキシド化合物と、3個のスズ−アルキル基結合を持つトリアルキルスズアルコキシド化合物に変化する反応である。
【0116】
例えば、テトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンの場合は、下記式(8)に示されるアルキル基不均化反応により、ジアルキルスズジアルコキシドの場合は、下記式(9)に示されるアルキル基不均化反応が起こる。
【0118】
式(8)及び式(9)において、R及びR’は、各々独立に、アルキル基を表す。
アルキル基不均化反応における全ての生成物について、その構造を同定することは、困難であるが、生成物の少なくとも1種は、上記式(1)に示すトリアルキルスズアルコキシドである。
例えば、アルキル基不均化反応において、上記式(1)に示すトリアルキルスズアルコキシドが、ジアルキルスズジアルコキシド及び/又はテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンの減少量に対して、化学量論比でおよそ半分程度生成している場合が多い。
なおここで言うトリアルキルスズアルコキシドは、3個のスズ−アルキル基結合を有し、アルキル基はジアルキルスズジアルコキシド及び/又はテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンに由来するアルキル基である。
【0119】
上述したように、アルキル基不均化反応によってトリアルキルスズアルコキシドが生成することから、アルキル基のバランスを考慮すれば、上記式(8)及び/又は式(9)に示すように、トリアルキルスズアルコキシドと同時に、1個のスズ−アルキル基結合を有するモノアルキルスズアルコキシドが生成するものと考えられる。
【0120】
上述したように、モノアルキルスズアルコキシドについて、その構造を特性することは困難であるが、上述したような、「1個のSn−R1結合をもつ」以外に、
119Sn−NMRにおける化学シフトにより特徴づけることができる。
すなわち、ジアルキルスズジアルコキシド及び/又はテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンのアルキル基不均化反応によって生成する化合物の少なくとも1種は、モノアルキルスズアルコキシドであって、このモノアルキルスズアルコキシドは、重クロロホルム溶液中で
119Sn−NMRにより分析した際に、テトラメチルスズ基準で、−220〜−610ppmに化学シフトを示すスズ原子が検出されるという特徴を有している。
すなわち、アルキル基不均化反応による生成物は、3個のスズ−アルキル基結合を持つトリアルキルスズアルコキシド、及び1個のSn−R1結合を持つモノアルキルスズアルコキシド化合物であって、重クロロホルム溶液中で
119Sn−NMRにより分析した際にテトラメチルスズ基準で、−220〜−610ppmに化学シフトを示すスズ原子を含有するモノアルキルスズアルコキシドである。
【0121】
上記式(2)で表されるジアルキルスズジアルコキシド及び/又は上記式(3)で表されるテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンは、多くの場合、重クロロホルム溶液中で
119Sn−NMRにより分析した際に、テトラメチルスズ基準で、200〜−200ppmに化学シフトを示すスズ原子をもち、ジアルキルスズジアルコキシド及び/又はテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンのアルキル基不均化反応の結果、上記した−220ppm〜−610ppmの範囲に化学シフトを示すスズ原子が検出される。殆どの場合、アルキル基不均化反応による生成物は、−220〜−610ppmの範囲に複数のシグナルをもつことから、アルキル基不均化反応による生成物中には、上記式(4)及び/又は式(5)に示した、モノアルキルアルコキシスズオキシド、モノアルキルスズトリアルコキシスズのみではなく、多くの場合、他の構造も含有していると推察される。
このように、アルキル基不均化反応による生成物は、構造が不明な化合物からなっているが、これらの構造が不明な化合物が、本実施形態において用いるスズアルコキシドに含有されることは何ら問題ない。
ジアルキルスズジアルコキシド及び/又はテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンのアルキル基不均化反応による生成物は、上述した例以外の構造をとることも容易に推定される。さらに、スタノキサン骨核を形成することで、スズに2つのアルキル基が結合したユニットと、スズに2以外の整数でアルキル基が結合したユニットからなる化合物が生成していてもよい。
上述した例と合わせて、アルキル基不均化反応による生成物の推定構造を下記に示す。
【0123】
上記式(10)中、R
1は、ジアルキルスズジアルコキシド及び/又はテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンに由来するアルキル基を表す。
R
2は、ジアルキルスズジアルコキシド及び/又はテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンに由来するアルキル基を表す。
【0124】
(スズアルコキシドと酸との反応)
本実施形態においては、上述したスズアルコキシドと、酸とを反応させることによって、スズ原子に結合したアルコキシ基と酸に由来する基とを交換し、スズ原子に酸に由来する基の結合を有する化合物を生成し、スズアルコキシドのアルコキシ基に由来するアルコールが副生される。
【0125】
本実施形態において使用する酸としては、ブロンステッド酸が好ましく、特にpKaが0以上6.8以下のブロンステッド酸であって、下記式(11)で表される酸が好ましく使用される。
【0127】
上記式(11)中、Yは、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8となるものである。
【0128】
上記ブロンステッド酸としては、有機酸、無機酸のいずれも用いることができるが、有機酸がより好ましい。
有機酸としては、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、フェノール、エノール、チオフェノール、イミド、オキシム、芳香族スルホンアミド等が挙げられる。好ましくはカルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、フェノールが使用され、より好ましくはカルボン酸が使用される。
カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、2−メチルブタン酸、ピバリン酸、ヘキサン酸、イソカプロン酸、2−エチルブタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、ヘプタン酸(各異性体)、オクタン酸(各異性体)、ノナン酸(各異性体)、デカン酸(各異性体)、ウンデカン酸(各異性体)、ドデカン酸(各異性体)、テトラデカン酸(各異性体)、ヘキサデカン酸(各異性体)、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ビニル酢酸、メタクリル酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、アリル酢酸、ウンデセン酸(各異性体)等の飽和又は不飽和脂肪族モノカルボン酸化合物;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸(各異性体)、オクタン二酸(各異性体)、ノナン二酸(各異性体)、デカン二酸(各異性体)、マレイン酸、フマル酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、ペンテン二酸(各異性体)、イタコン酸、アリルマロン酸等の飽和もしくは不飽和脂肪族ジカルボン酸;1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3−プロペントリカルボン酸、2,3−ジメチルブタン−1,2,3−トリカルボン酸等の飽和もしくは不飽和脂肪族トリカルボン酸化合物;安息香酸、メチル安息香酸(各異性体)、エチル安息香酸(各異性体)、プロピル安息香酸(各異性体)、ジメチル安息香酸(各異性体)、トリメチル安息香酸(各異性体)等の芳香族者カルボン酸化合物;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、メチルイソフタル酸(各異性体)等の芳香族ジカルボン酸化合物;ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸等の芳香族トリカルボン酸化合物等が挙げられる。
上記カルボン酸の中でも、炭素数1〜12の脂肪族カルボン酸が好ましく、炭素数2〜12の脂肪族のカルボン酸がより好ましく、飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。
さらにより好ましくは、標準沸点が300℃以下の飽和モノカルボン酸、よりさらに好ましくは標準沸点が250℃以下の飽和モノカルボン酸が使用される。
標準沸点とは、化学大辞典(共立出版株式会社、2003年10月1日発行)に記載されているように、1気圧における沸点を指す。具体的には、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、2−メチルブタン酸、ピバリン酸、ヘキサン酸が好ましく使用される。特に酢酸がより好ましい。
【0129】
上述した酸の使用量は、回収するアルコールの収率を勘案して、スズアルコキシドに含有されるアルコキシ基に対して化学量論比で0.9〜20倍の範囲を使用することが好ましく、反応器の大きさを考慮すれば0.9〜5倍の範囲で使用することがより好ましい。
化学量論比で0.9倍よりも少ない場合は、スズアルコキシドからアルコールを回収する量が減少してしまい、逆に、化学量論比で20倍より多く使用する場合、反応温度にもよるが、例えば、酸としてカルボン酸を使用した場合、カルボン酸とアルコールとの脱水縮合によってカルボン酸エステルが副生して回収するアルコールの収率が減少してしまうおそれがある。
【0130】
スズアルコキシドと酸とを反応させる温度は、好ましくは0℃〜100℃の範囲で実施し、より好ましくは20℃〜90℃の範囲で実施する。
高温下で行うと、分解やカルボン酸とアルコールとの脱水縮合によるエステル化反応が起こる場合があり、回収するアルコールの収率が低下する。20℃〜60℃の範囲で実施することがさらに好ましい。更に好ましくは40〜60℃の範囲で実施する。
また、反応は、常圧、減圧、加圧のいずれの条件においても実施できるが、好ましくは、常圧又は減圧下で実施する。減圧下で実施する場合は、好ましくは10Pa〜1MPaの範囲とし、より好ましくは1kPa〜0.5MPaの範囲とする。
また、アルゴン、ネオン、窒素などの不活性ガス雰囲気で行われることが好ましい。
【0131】
スズアルコキシドと酸とを反応させる反応時間(連続法では滞留時間)は、反応において使用される化合物や反応器、温度や圧力によって異なり、特に制限はないが、好ましくは0.001時間〜1時間の範囲で実施するものとし、より好ましくは10分〜40分の範囲で実施する。
反応を十分に進行させるためには長時間の反応を行うことが好ましいが、一方で、長時間の反応は、例えば、酸としてカルボン酸を使用した場合、カルボン酸とアルコールとの脱水縮合によってカルボン酸エステルが副生する場合があり、収率が低下するおそれがある。
かかる観点から、さらに好ましくは10分〜30分の範囲で実施する。
また、所望量のアルコールの生成を確認したのち、反応を終了することもできる。
反応の進行は、反応器内の反応液をサンプリングし、
1H−NMRやガスクロマトグラフィー等の方法によって、アルコールの生成量を分析する方法等で確認できる。
例えば、アルコールが、スズアルコキシドに含有されるアルコキシ基のモル数に対して、10%以上生成したら反応を終了してもよく、この値を90%以上になるまで反応を続けてから終了してもよい。
【0132】
スズアルコキシドと酸とを反応させる工程において、溶媒の使用は必須ではないが、流動性を向上させる、あるいは反応操作を容易にすることを目的として溶媒を用いることができる。
【0133】
本実施形態におけるスズアルコキシドからアルコールを回収する方法においては、液状の又は液状としたスズアルコキシドと、液状の又は液状とした酸とを液体状態で反応させて、スズアルコキシドのアルコキシ基が酸に由来する基を有するスズ化合物を液体状態で回収し、アルコキシ基に由来するアルコールを回収することが一例として挙げられる。
すなわち、従来公知の加水分解法等によると、酸化スズ等の固形分が生成し、濾過操作や固形分に含まれる溶媒等を除去する工程が必要であったが、本実施形態における技術によると、使用するスズアルコキシドは通常(反応を実施する温度)液体状態であり、液体でない場合であっても溶媒に溶解しやすく、溶液状態で取り扱うことができる。
また、使用する酸も通常液体であり、特にカルボン酸類は液体又は溶媒によって容易に溶液とすることができ、取り扱いが容易である。
また、アルコール回収時に副生する、酸に由来する基を有するスズ化合物も通常(反応を実施する温度)液体であり、液体でない場合も溶媒に溶解しやすく溶液状態で取り扱うことができる。
酸がカルボン酸であり、副生する酸に由来する基を有するスズ化合物が、スズアシルオキシドの場合が好ましい。
なお、本願明細書中において、液状とは、スズアルコキシド及び/又は酸が反応条件温度で液体状ということを意味し、スズアルコキシド及び/又は酸以外の個体成分、ガス成分が共存しても、本実施形態において実施する回収の方法、回収する成分に影響を与えない限りにおいては許容される。
【0134】
上記溶媒としては、例えば、炭素数5〜16の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素;炭素数4〜16の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素からなるエーテル類;炭素数1〜16の直鎖状、分岐状、環状のハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。
具体的には、ペンタン(各異性体)、ヘキサン(各異性体)、ヘプタン(各異性体)、オクタン(各異性体)、ノナン(各異性体)、デカン(各異性体)、ヘキサデカン(各異性体)、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン(各異性体)、エチルベンゼン等の鎖状、環状の炭化水素;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル(各異性体)、ジブチルエーテル(各異性体)、ジヘキシルエーテル(各異性体)、ジオクチルエーテル(各異性体)、ジフェニルエーテル等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼン(異性体)等のハロゲン化炭化水素類を用いることができる。
これらの溶媒は、単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0135】
(アルコールの分離回収)
本実施形態においては、上記のように酸とスズアルコキシドとを反応した後、副生したアルコールを蒸留によって分離回収する。
分離回収する際の温度は、好ましくは0℃〜100℃の範囲が好ましく、より好ましくは20℃〜90℃の範囲である。
高温下で分離回収を行うと、分解や酸とアルコールとの脱水縮合によるエステル化反応が起こる場合があり、回収するアルコールの収率が低下する場合があり、低温では後述するSn−Y結合をもったスズ化合物が固体になり流動性が悪くなる場合があるため、上記温度範囲とすることが好ましく、20℃〜60℃の範囲とすることがさらに好ましい。更に好ましくは40〜60℃の範囲で実施する。
また、アルコールを蒸留によって分離回収する際の圧力は、用いる化合物の種類や反応温度等によって異なるが、好ましくは1Pa〜1MPaの範囲で実施し、より好ましくは10Pa〜101kPaの範囲で実施する。
圧力が高いとアルコールを蒸留分離する時間が長くなり、酸とアルコールとの脱水縮合によるエステル化反応が起こる場合があり、回収するアルコールの収率が低下する場合があるため、上記圧力範囲で行うものとし、10Pa〜1kPaの範囲で実施することがさらに好ましい。
【0136】
アルコールを蒸留によって回収する操作は、酸とスズアルコキシドとの反応操作を完了した後行ってもよいし、酸とスズアルコキシドとの反応と同時に行ってもよい。
酸とスズアルコキシドとの反応及びアルコールの分離回収において使用する反応器については特に制限されるものではなく、公知の反応器が使用できる。例えば攪拌槽、加圧式攪拌槽、減圧式攪拌槽、塔型反応器、蒸留塔、充填塔、薄膜蒸留器等、従来公知の反応器を適宜組み合わせて使用できる。
反応器の材質についても特に制限はなく、公知の材質が使用できる。例えば、ガラス製、ステンレス製、炭素鋼製、ハステロイ製や、基材にグラスライニングを施したものや、テフロン(登録商標)コーティングを行ったものも使用できる。工程や条件によっては、酸による腐食が顕著となる場合もあるので、そのような場合にはガラス製やグラスライニング、テフロン(登録商標)コーティングを施したものや、ハステロイ製反応器を適宜選択できる。
【0137】
上述したように、スズアルコキシドと酸と反応させ、さらに副生したアルコールを回収した後、スズアルコキシドは、スズアルコキシドのアルコキシ基が酸に由来する基に交換されたスズアシルオキシドとして回収される。
【0138】
本実施形態におけるスズアルコキシドと酸との反応と、スズアルコキシドのアルコキシ基と前記酸に由来する基とを交換する反応と、スズ原子に酸に由来する基が結合してスズ化合物形成され、アルコールの回収を行う工程について、以下に例を挙げて説明する。
スズアルコキシドと酸との反応は、主に、1)スズアルコキシドのスズ−アルコキシ結合のアルコキシ基が、酸HY(Yは上で定義した基)に由来する基Yに置換される反応と、2)Sn−O−Snで表されるジスタノキサン結合が開裂してSn−Y結合を生成する反応が組み合わさった反応である場合が多い。
【0139】
以下、スズアルコキシドが、トリアルキルスズアルコキシド、ジアルキルスズジアルコキシド、テトラアルキルジアルコキシジスタンオキサン、モノアルキルスズアルコキシド、スズテトラアルコキシドの場合について、具体的に説明する。
【0140】
本実施形態における、トリアルキルスズアルコキシドと酸との反応を行い、アルコールの回収を行う場合の反応式を、下記式(12)に示す。
反応によって得られる、1つのスズ原子に結合した1つのアルコキシ基と、酸に由来する基とを交換して生成される、1つのSn−Y結合を有するトリアルキルスズ化合物は、下記式(13)に示すトリアルキルスズ化合物である。下記式(13)においては、単量体の構造式を示すが、会合体、多量体、重合体のいずれであってもよい。
【0142】
上記式(12)において、Rは、脂肪族基、アラルキル基であり;HYは、Yに水素原子が付加したYの共役酸であり、pKaが0〜6.8である。
【0144】
上記式(13)において、R
24、R
25、R
26は、トリアルキルスズアルコキシドに由来する基であり、R
24、R
25、R
26は、上記式(1)のR
1、R
2、R
3から選ばれる基であり、Yは、酸HYのYであり、HYのpKaは0〜6.8である。
【0145】
式(13)に示すトリアルキルスズ化合物としては、例えば、トリメチル−アセトキシスズ、トリメチル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、トリメチル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、トリメチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、トリメチル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジメチル−アセトキシスズ(各異性体)、ブチル−ジメチル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジメチル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジメチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジメチル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−メチル−アセトキシスズ(各異性体)、ジブチル−メチル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−メチル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−メチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−メチル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジエチル−アセトキシスズ(各異性体)、ブチル−ジエチル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジエチル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジエチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジエチル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−エチル−アセトキシスズ(各異性体)、ジブチル−エチル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−エチル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−エチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−エチル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジプロピル−アセトキシスズ(各異性体)、ブチル−ジプロピル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジプロピル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジプロピル−バレリルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジプロピル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−プロピル−アセトキシスズ(各異性体)、ジブチル−プロピル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−プロピル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−プロピル−バレリルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−プロピル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)トリブチル−アセトキシスズ(各異性体)、トリブチル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、トリブチル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、トリブチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、トリブチル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジメチル−アセトキシスズ(各異性体)、オクチル−ジメチル−プロピオニルオキシスズ、オクチル−ジメチル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジメチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジメチル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−メチル−アセトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−メチル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−メチル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−メチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−メチル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジエチル−アセトキシスズ、オクチル−ジエチル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジエチル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジエチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジエチル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−エチル−アセトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−エチル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−エチル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−エチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−エチル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジプロピル−アセトキシスズ(各異性体)、オクチル−ジプロピル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジプロピル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジプロピル−バレリルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジプロピル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−プロピル−アセトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−プロピル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−プロピル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−プロピル−バレリルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−プロピル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、トリオクチル−アセトキシスズ(各異性体)、トリオクチル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、トリオクチル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、トリオクチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、トリオクチル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)等のトリアルキル−アシルオキシスズ;トリメチルクロロスズ、トリメチルブロモスズ、ブチル−ジメチルブロモスズ、ブチル−ジメチルブロモスズ(各異性体)、ジブチル−メチルクロロスズ(各異性体)、ジブチル−メチルブロモスズ(各異性体)、ブチルジエチルクロロスズ(各異性体)、ブチルジエチルブロモスズ(各異性体)、ジブチル−エチルクロロスズ(各異性体)、ジブチル−エチルブロモスズ(各異性体)、ブチル−ジプロピルクロロスズ(各異性体)、ブチル−ジプロピルブロモスズ(各異性体)、ジブチル−プロピルクロロスズ(各異性体)、ジブチル−プロピルブロモスズ(各異性体)、トリブチルクロロスズ(各異性体)、トリブチルブロモスズ(各異性体)、オクチル−ジメチルクロロスズ(各異性体)、オクチル−ジメチルブロモスズ(各異性体)、ジオクチル−メチルクロロスズ(各異性体)、ジオクチル−メチルブロモスズ(各異性体)、オクチル−ジエチルクロロスズ(各異性体)、オクチル−ジエチルブロモスズ(各異性体)、ジオクチル−エチルクロロスズ(各異性体)、ジオクチル−エチルブロモスズ(各異性体)、オクチル−ジプロピルクロロスズ(各異性体)、オクチル−ジプロピルブロモスズ(各異性体)、ジオクチル−プロピルクロロスズ(各異性体)、ジオクチル−プロピルブロモスズ(各異性体)、トリオクチルクロロスズ(各異性体)、トリオクチルブロモスズ(各異性体)等のハロゲン化トリアルキルスズ等が挙げられる。
【0146】
本実施形態における、ジアルキルスズアルコキシドと酸との反応を行い、アルコールの回収を行う場合の反応式を、下記式(14)に示す。
反応によって得られる、1つのスズ原子に結合した2つのアルコキシ基が、酸に由来する基に交換されて生成する、2つのSn−Y結合を有するジアルキルスズ化合物は、下式(15)に示すジアルキルスズ化合物である。
下記式(15)のジアルキルスズ化合物は、単量体の構造を示すが、会合体、多量体、重合体のいずれでもよい。
【0148】
式(14)中、Rは、脂肪族基、アラルキル基であり;HYは、Yに水素原子が付加したYの共役酸であり、pKaが0〜6.8である。
【0150】
式(15)中、R
27、R
28は、ジアルキルスズアルコキシド又はテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンに由来する基であり、R
27、R
28は、式(2)のジアルキルスズアルコキシドのR
7、R
8又は、式(3)のテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンのR
9、R
10又は、R
11、R
12から選ばれる基であり、Yは、酸HYのYであり、HYのpKaが0〜6.8である。
【0151】
式(15)に示すジアルキルスズ化合物としては、例えば、ジメチル−ジアセトキシスズ、ジメチル−ジプロピオニルオキシスズ(各異性体)、ジメチル−ジブチリルオキシスズ(各異性体)、ジメチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、ジメチル−ジラウロリルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジアセトキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジプロピオニルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジブチリルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジバレリルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジラウロリルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジアセトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジプロピオニルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジブチリルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジラウロリルオキシスズ(各異性体)等のジアルキル−ジアシルオキシスズ;ジメチル−ジクロロスズ、ジメチル−ジブロモスズ、ジブチル−ジクロロスズ(各異性体)、ジブチル−ジブロモスズ(各異性体)、ジオクチル−ジクロロスズ(各異性体)、ジオクチル−ジブロモスズ(各異性体)等のジアルキル−ジハロゲン化スズ等を挙げることができる。
【0152】
本実施形態における、テトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンと酸との反応を行い、アルコールの回収を行う場合の反応式を、下記式(16)〜式(18)に示す。
この反応においては、スズ原子に結合した2つのアルコキシ基のうち、少なくとも1つと酸に由来する基との交換が起こり、また場合によってSn−O−Sn結合が開裂して酸に由来する基が付加するため、下記式(19)で表されるテトラアルキルジスタンオキサン化合物及び/又は上記式(15)で表されるジアルキルスズ化合物が得られる。
なお、下記式(19)及び上記式(15)は、単量体の構造式を示すが、会合体、多量体、重合体であってもよい。
【0153】
また、下記式(16)は、2つのアルコキシ基が、酸に由来する基Yに置換される反応を表しているが、当然のことながら、反応の中間体として、2つのアルコキシ基のうちの1つのアルコキシ基がYに置換された化合物が生成し、これらの化合物も、本実施形態のテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンと酸との反応による生成物に含まれる。
【0154】
下記式(17)及び式(18)における反応中間体(一部又は全部のアルコキシ基が、酸に由来する基Yに置換され、ジスタノキサン結合(Sn−O−Sn結合)が開裂した化合物及び/又は、一部又は全部のアルコキシ基が、酸に由来する基Yに置換され、ジスタノキサン結合(Sn−O−Sn結合)が開裂しなかった化合物)についても、本実施形態のモノアルキルスズアルコキシドと酸との反応による生成物に含まれる。
【0158】
上記式(16)〜(18)中、Rは、脂肪族基、アラルキル基であり、HYは、Yに水素原子が付加したYの共役酸であり、pKaが0〜6.8である。
【0160】
式(19)中、R
29、R
30、R
31、R
32は、テトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンに由来する基であり、R
29、R
30、R
31、R
32は、式(3)のR
9、R
10、R
11、R
12から選ばれる基であり、Yは、酸HYのYであり、HYのpKaが0〜6.8である。
【0161】
上記式(19)で示されるジアルキルスズ化合物としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジアセトキシジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジプロピオニルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジブチリルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジバレリルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジラウロリルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジアセトキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジプロピオニルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジブチリルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジバレリルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウロリルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジアセトキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジプロピオニルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジブチリルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジバレリルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジラウロリルオキシジスタンオキサン(各異性体)、等の1,1,3,3−テトラアルキル−1,3−ジアシルオキシジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジクロロジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジブロモジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジクロロジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジブロモジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジクロロジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジブロモジスタンオキサン(各異性体)等の1,1,3,3−テトラアルキル−1,3−ジハロゲン化ジスタンオキサンが挙げられる。
【0162】
本実施形態における、モノアルキルスズアルコキシドと酸との反応を行い、アルコールの回収を行う反応式を、下記式(20)、式(21)に示す。
スズ原子に結合したアルコキシ基と酸に由来する基との交換が起こり、モノアルキルスズアルコキシドのアルコキシ基に由来するアルコールを副生する。
モノアルキルスズアルコキシドのSn−O−Sn結合は、酸のpKa、酸の量、反応温度等にもよるが、開裂して酸に由来する基が付加して、Sn−Y結合を有する化合物になる場合もあるし、Sn−O−Sn結合を有したままの化合物である場合もある。その構造を特定は困難であるが、重クロロホルム溶液中で
119Sn−NMRにより分析した際にテトラメチルスズ基準で、−220〜−610ppmに化学シフトを示すスズ原子が検出される特徴がある。
【0163】
具体例としては、下記式(23)及び/又は(24)に示すモノアルキルスズ化合物が挙げられる。なお、これらは、単量体、会合体、多量体、重合体のいずれでもよい。
また、下記式(20)は、3つのアルコキシ基が、酸に由来する基Yに置換される反応を表しているが、当然のことながら、反応の中間体として、3つのアルコキシ基のうちの1つのアルコキシ基がYに置換された化合物、3つのアルコキシ基のうち2つのアルコキシ基がYに置換された化合物が生成し、これらの化合物も、本実施の形態のモノアルキルスズアルコキシドと酸との反応による生成物に含まれるものとする。
【0164】
同様に、下記式(21)、式(22)における反応中間体(一部または全部のアルコキシ基が、酸に由来する基Yに置換され、一部または全部のジスタノキサン結合(Sn−O−Sn結合)が開裂し、Sn−Y結合が生成した化合物)についても、本実施形態のモノアルキルスズアルコキシドと酸との反応による生成物に含まれる。
【0168】
上記式(20)〜(22)中、Rは、脂肪族基、アラルキル基であり、HYは、Yに水素原子が付加したYの共役酸であり、pKaが0〜6.8である。
【0171】
式(23)、式(24)中、R
33、R
34は、モノアルキルスズアルコキシドに由来する基であり、R
33は、式(4)、(5)中のR
15又はR
19であり、R
34は、式(5)中のR
19であり、Yは酸HYのYであり、HYのpKaは0〜6.8である。
【0172】
上記式(23)に示すモノアルキルスズ化合物としては、例えば、メチル−トリアセトキシスズ、メチル−トリプロピオニルオキシスズ(各異性体)、メチル−トリブチリルオキシスズ(各異性体)、メチル−トリバレリルオキシスズ(各異性体)、メチル−トリラウロリルオキシスズ(各異性体)、ブチル−トリアセトキシスズ(各異性体)、ブチル−トリプロピオニルオキシスズ(各異性体)、ブチル−トリブチリルオキシスズ(各異性体)、ブチル−トリバレリルオキシスズ(各異性体)、ブチル−トリラウロリルオキシスズ(各異性体)、オクチル−トリアセトキシスズ(各異性体)、オクチル−トリプロピオニルオキシスズ(各異性体)、オクチル−トリブチリルオキシスズ(各異性体)、オクチル−トリバレリルオキシスズ(各異性体)、オクチル−トリラウロリルオキシスズ(各異性体)等のモノアルキル−トリアシルオキシスズ;メチルトリクロロスズ、メチルトリブロモスズ、ブチルトリクロロスズオキシド、ブチルトリブロモスズオキシド、オクチルトリクロロスズオキシド、オクチルトリブロモスズオキシド等のハロゲン化モノアルキルスズ等のモノアルキルスズ化合物等が挙げられる。
【0173】
上記式(24)に示すモノアルキルスズ化合物としては、例えば、メチル−アセトキシスズオキシド、メチル−プロピオニルオキシスズオキシド(各異性体)、メチル−ブチリルオキシスズオキシド(各異性体)、メチル−バレリルオキシスズオキシド(各異性体)、メチル−ラウロリルオキシスズオキシド(各異性体)、ブチル−アセトキシスズオキシド、ブチル−プロピオニルオキシスズオキシド(各異性体)、ブチル−ブチリルオキシスズオキシド(各異性体)、ブチル−バレリルオキシスズオキシド(各異性体)、ブチル−ラウロリルオキシスズオキシド(各異性体)、オクチル−アセトキシスズオキシド(各異性体)、オクチル−プロピオニルオキシスズオキシド(各異性体)、オクチル−ブチリルオキシスズオキシド(各異性体)、オクチル−バレリルオキシスズオキシド(各異性体)、オクチル−ラウロリルオキシスズオキシド(各異性体)等のモノアルキル−アシルオキシスズオキシド;メチルクロロスズオキシド、メチルブロモスズオキシド、ブチルクロロスズオキシド、ブチルブロモスズオキシド、オクチルクロロスズオキシド、オクチルブロモスズオキシド等のハロゲン化モノアルキルスズオキシド等のモノアルキルスズ化合物等が挙げられる。
【0174】
モノアルキルスズ化合物の構造は、上記例以外の構造をとることも容易に推定される。
モノアルキルスズ化合物のSn−O−Sn結合は、酸のpKa、酸の量、反応温度等にもよるが、酸に由来する基に置換されてSn−Y結合を有する化合物になる。
上記例と併せて、下記に推定されるモノアルキルスズ化合物構造を示す。
【0176】
式(25)中、R及びYは、モノアルキルスズ化合物に由来する基であり、Rは、上記式(23)、式(24)中のR
33又はR
34から選ばれ、Yは、酸HYのYであり、HYのpKaは0〜6.8であり、nは1以上の整数を表す。
【0177】
本実施形態における、スズテトラアルコキシドと酸との反応を行い、アルコールの回収を行う反応式を、下記式(26)に示す。
1つのスズ原子に結合したアルコキシ基のうち、少なくとも1つと、酸に由来する基とが交換される。
アルコキシ基が置換されて生成する、4つのSn−Y結合を有するスズ化合物は、下記式(27)に示すスズ化合物である。下記式(27)においては、単量体の構造式を示すが、会合体、多量体、重合体であってもよい。
【0179】
式(26)中、Rは、脂肪族基、アラルキル基であり;HYは、Yに水素原子が付加したYの共役酸であり、pKaは0〜6.8である。
【0181】
上記式(27)中、Yは、酸HYのYであり、HYのpKaが0〜6.8のYである。
上記式(27)に示すスズ化合物としては、例えば、テトラ−アセトキシ−スズ、テトラ−プロピオニルオキシ−スズ、テトラ−ブチリルオキシ−スズ(各異性体)、テトラ−バレリルオキシ−スズ(各異性体)、テトラ−ラウロリルオキシ−スズ(各異性体)等のテトラアシルオキシスズ;テトラ−クロロ−スズ、テトラ−ブロモ−スズ等のハロゲン化スズが挙げられる。
【0182】
次に、本実施形態において回収されるアルコールについて説明する。
回収されるアルコールは、下記式(28)により表される。
【0184】
上記式(28)中、R
35は、スズアルコキシドのアルコキシ基に由来する基である。
式(1)〜式(6)中の、R
4、R
7、R
8、R
13、R
14、R
16〜R
18、R
20、R
21〜R
24から選ばれる基である。
【0185】
上記式(28)において、R
35は、脂肪族、アラルキル基のいずれかである。
例えば、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜14の脂肪族基、炭素数5〜14のシクロアルキル基、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール基、ベンジル、フェニルエチル等の炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられ、ノナフルオロブチル、ヘプタフルオロブチル(各異性体)等のように、炭化水素基の水素の全部あるいは一部がハロゲン原子に置換したハロゲン化炭化水素基であってもよい。好ましくは、アルキル基であり、より好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基であり、アルコキシ基を形成するアルキル基が炭素数4〜12のアルキル基で、かつ酸素に隣接する炭素原子がメチレン構造であるアルキル基であることがより好ましい。スズ原子に結合するアルコキシ基が複数ある場合、それらは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0186】
式(28)で表されるアルコールは、標準沸点が100℃以上の1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、及び炭素数5〜12のアルキルアルコールからなる群から選ばれるアルコールが好ましい。
標準沸点とは、化学大辞典(共立出版株式会社、2003年10月1日発行)に記載されているように、1気圧における沸点を指す。
例えば、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、ペンタノール(各異性体)、ヘキサノール(各異性体)、ヘプタノール(各異性体)、オクタノール(各異性体)、ノナノール(各異性体)、デカノール(各異性体)等の、直鎖状もしくは分岐鎖状の飽和アルキル基と水酸基から構成されるアルコールが挙げられる。
上記アルコールのうち、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、ペンタノール(各異性体)、ヘキサノール(各異性体)の中から選ばれるものが好ましく、中でも3−メチル−ブタノールがより好ましい。
【0187】
上述したように、スズアルコキシドからアルコールの回収方法について説明した。
スズアルコキシドは、エステル交換触媒、炭酸エステル合成触媒等、工業的に広く使用される均一系触媒であり、スズアルコキシドが触媒として使用された後の処理方法は、一般に焼却して酸化スズとして廃棄される等であるため、スズアルコキシドの中には、高価なアルコールがアルコキシ基としてスズアルコキシドを形成している場合もあり、廃棄、焼却すれば、これら高価なアルコールをも失ってしまう。
上記方法によって、触媒として使用されたスズアルコキシドから、スズに結合したアルコキシ基を相当するアルコールとして回収でき、産業上極めて有用である。
【実施例】
【0188】
以下、本発明の実施例と、比較例を挙げて具体的に説明する。
実施例及び比較例に適用した、分析方法について下記に示す。
【0189】
<分析方法>
(I)NMR分析方法
装置:日本国、日本電子(株)社製JNM−A400 FT−NMRシステム
(1)
1H−NMR、
13C−NMR、
119Sn−NMR分析サンプルの調製
スズ化合物を0.5g秤量し、重クロロホルム(アルドリッチ社製、99.8%)を約0.5gと
119Sn−NMRの内部標準としてテトラメチルスズ(和光社製、和光一級)を0.1g加えて均一に混ぜた溶液をNMR分析サンプルとした。
(2)定量分析法
各標準物質の標準サンプルについて分析を実施し、作成した検量線を基に、分析サンプル溶液の定量分析を実施した。
(3)アルキルスズアルコキシドの収率計算方法
アルキルスズアルコキシドの収率は、出発物質ジアルキルスズオキシドのスズ原子のモル数に対して、得られた各アルキルスズアルコキシドのスズ原子モル数の生成モル%で求めた。
【0190】
(II)アルコールのガスクロマトグラフィー分析法
装置:日本国、(株)島津製作所製GC−2010システム
(1)分析サンプル溶液の作成
蒸留液を0.1g計り取り、脱水アセトンを約1.5g加えた。さらに内部標準としてトルエンを約0.03gを加えて、ガスクロマトグラフィー分析サンプル溶液とした。
(2)ガスクロマトグラフィー分析条件
カラム:DB−1(米国、J&W Scientific社製)
液相:100%ジメチルポリシロキサン
長さ:30m
内径:0.25mm
フィルム厚さ:1μm
カラム温度:50℃(10℃/minで昇温)300℃
インジェクション温度:300℃
検出器温度:300℃
検出法:FID
(3)定量分析法
各標準物質の標準サンプルについて分析を実施し作成した検量線を基に、分析サンプル溶液の定量分析を実施した。
【0191】
〔実施例1〕
容量200mLのなす型フラスコに、無色透明液体のトリ−(n−オクチル)−(3−メチルブトキシ)−スズ50g(91.7mmol)、無色透明液体の酢酸(日本国、和光化学社製)5.5g(91.7mmol)、及びスターラーチップを入れた。
均一の透明な前記材料の混合物を入れた前記なす型フラスコを、温度調節器のついたオイルバス(日本国、増田理化工業社製、OBH−24)と真空ポンプ(日本国、ULVAC社製、G−50A)と真空コントローラー(日本国、岡野製作所社製、VC−10S)とを接続した留出液受器に取り付けた。
前記留出液受器の出口は、常圧で流れている窒素ガスのラインと接続した。
オイルバス温度を約50℃に設定し、前記なす型フラスコを、前記オイルバスに浸漬して、前記スターラーで、前記なす型フラスコ内の混合物の撹拌を開始した。
常圧で約20分間撹拌した後、系内を徐々に減圧し、系内の圧力が27〜67Paの状態で、副生した3−メチル−1−ブタノールを蒸留した。
留分が出なくなった後、前記なす型フラスコをオイルバスから上げた。
その後、系内の圧力を窒素ガスのラインによって常圧に戻した。
3−メチル−1−ブタノールの蒸留分は8.1g得られた。
蒸留分は、ガスクロマトグラフィーの分析結果から、3−メチル−1−ブタノールがトリ−(n−オクチル)−(3−メチルブトキシ)−スズに対して収率95%で得られたことが分かった。
前記なす型フラスコには、残留液が47.4gあった。
119Sn,
1H,
13C−NMRの分析結果から、トリ−(n−オクチル)−アセトキシ−スズが、トリ−(n−オクチル)−(3−メチルブトキシ)−スズに対して収率99%で得られたことが分かった。
【0192】
〔実施例2〕
容量200mLのなす型フラスコに、無色透明液体のジ−(n−オクチル)−ビス−(3−メチルブトキシ)−スズ50g(96mmol)、無色透明液体の酢酸(日本国、和光化学社製)11.6g(193mmol)及びスターラーチップを入れた。
均一の透明な前記材料の混合物を入れたなす型フラスコを、温度調節器のついたオイルバス(日本国、増田理化工業社製、OBH−24)と真空ポンプ(日本国、ULVAC社製、G−50A)と真空コントローラー(日本国、岡野製作所社製、VC−10S)とを接続した留出液受器に取り付けた。
前記留出液受器の出口は常圧で流れている窒素ガスのラインと接続した。
前記オイルバス温度を約50℃に設定し、前記なす型フラスコを、前記オイルバスに浸漬して、前記スターラーで前記なす型フラスコ内の混合物の撹拌を開始した。
常圧で約20分間撹拌した後、系内を徐々に減圧し、系内の圧力が27〜67Paの状態で、副生した3−メチル−1−ブタノールを蒸留した。
留分が出なくなった後、前記なす型フラスコをオイルバスから上げた。
その後、系内の圧力を窒素ガスのラインによって常圧に戻した。
3−メチル−1−ブタノールの蒸留分は17.0g得られた。
蒸留分は、ガスクロマトグラフィーの分析結果から、3−メチル−1−ブタノールがジ−(n−オクチル)−ビス−(3−メチルブトキシ)−スズに対して収率95%で得られたことが分かった。
前記フラスコには残留液が44.6g得られた。
119Sn,
1H,
13C−NMRの分析結果から、ジ−(n−オクチル)−ビスアセトキシ−スズが、ジ−(n−オクチル)−ビス−(3−メチルブトキシ)−スズに対して収率99%で得られたことが分かった。
【0193】
〔実施例3〕
容量200mLのなす型フラスコに、無色透明液体の1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサン50g(56.8mmol)、無色透明液体の酢酸(日本国、和光化学社製)13.6g(227mmol)及びスターラーチップを入れた。
均一の透明な前記材料の混合物を入れた前記なす型フラスコを、温度調節器のついたオイルバス(日本国、増田理化工業社製、OBH−24)と真空ポンプ(日本国、ULVAC社製、G−50A)と真空コントローラー(日本国、岡野製作所社製、VC−10S)とを接続した蒸留器具に取り付けた。
蒸留器具の出口は常圧で流れている窒素ガスのラインと接続した。
オイルバス温度を約50℃に設定し、前記なす型フラスコを前記オイルバスに浸漬してスターラーで前記なす型フラスコ内の混合物の撹拌を開始した。
常圧で約20分間撹拌した後、系内を徐々に減圧し、系内の圧力が27〜67Paの状態で、副生した3−メチル−1−ブタノールを蒸留した。
留分が出なくなった後、前記なす型フラスコをオイルバスから上げた。
その後、系内の圧力を窒素ガスのラインによって常圧に戻した。
3−メチル−1−ブタノールの蒸留分は10.0g得られた。
蒸留分は、ガスクロマトグラフィーの分析結果から、3−メチル−1−ブタノールが1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンに対して収率93%で得られたことが分かった。
前記なす型フラスコには、残留液が52.6gあった。
119Sn,
1H,
13C−NMRの分析結果から、ジ−(n−オクチル)−ビスアセトキシ−スズが、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンに対して収率99%で得られたことが分かった。
【0194】
〔実施例4〕
容量200mLのなす型フラスコに、無色透明液体の(n−オクチル)−トリス−(3−メチルブトキシ)−スズ50g(101mmol)、無色透明液体の酢酸(日本国、和光化学社製)18.3g(304mmol)及びスターラーチップを入れた。
均一の透明な前記材料の混合物を入れた前記なす型フラスコを、温度調節器のついたオイルバス(日本国、増田理化工業社製、OBH−24)と真空ポンプ(日本国、ULVAC社製、G−50A)と真空コントローラー(日本国、岡野製作所社製、VC−10S)とを接続した蒸留器具に取り付けた。
蒸留器具の出口は常圧で流れている窒素ガスのラインと接続した。
オイルバス温度を約50℃に設定し、前記なす型フラスコを前記オイルバスに浸漬してスターラーで前記なす型フラスコ内の混合物の撹拌を開始した。
常圧で約20分間撹拌した後、系内を徐々に減圧し、系内の圧力が27〜67Paの状態で副生した3−メチル−1−ブタノールを蒸留した。
留分が出なくなった後、前記なす型フラスコをオイルバスから上げた。
その後、系内の圧力を窒素ガスのラインによって常圧に戻した。
3−メチル−1−ブタノールの蒸留分は、26.8gであった。
蒸留分のガスクロマトグラフィーの分析結果から、3−メチル−1−ブタノールが(n−オクチル)−トリス−(3−メチルブトキシ)−スズに対して収率91%で得られたことが分かった。
前記なす型フラスコには、残留液が41.6gあった。
119Sn,
1H,
13C−NMRの分析結果から、(n−オクチル)−トリアセトキシ−スズが、(n−オクチル)−トリス−(3−メチルブトキシ)−スズに対して収率99%で得られたことが分かった。
【0195】
〔実施例5〕
容量200mLのなす型フラスコに、無色透明液体の(n−オクチル)−(3−メチルブトキシ)−スズオキシド50g(149mmol)、無色透明液体の酢酸(日本国、和光化学社製)8.96g(149mmol)及びスターラーチップを入れた。
均一の透明な前記材料の混合物を入れた前記なす型フラスコを、温度調節器のついたオイルバス(日本国、増田理化工業社製、OBH−24)と真空ポンプ(日本国、ULVAC社製、G−50A)と真空コントローラー(日本国、岡野製作所社製、VC−10S)とを接続した蒸留器具に取り付けた。
蒸留器具の出口は常圧で流れている窒素ガスのラインと接続した。
オイルバス温度を約50℃に設定し、前記なす型フラスコを前記オイルバスに浸漬してスターラーで前記なす型フラスコ内の混合物の撹拌を開始した。
常圧で約20分間撹拌した後、系内を徐々に減圧し、系内の圧力が27〜67Paの状態で副生した3−メチル−1−ブタノールを蒸留した。
留分が出なくなった後、前記なす型フラスコをオイルバスから上げた。
その後、系内の圧力を窒素ガスのラインによって常圧に戻した。
3−メチル−1−ブタノールの蒸留分は、13.2gであった。
蒸留分のガスクロマトグラフィーの分析結果から、3−メチル−1−ブタノールが(n−オクチル)−(3−メチルブトキシ)−スズオキシドに対して収率90%で得られたことが分かった。
前記なす型フラスコには、残留液が45.8gあった。
残留液を、
119Sn−NMR分析したところ、−220〜−610ppmに複数の化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物(スズアシルオキシド)であった。
【0196】
〔実施例6〕
容量200mLのなす型フラスコに、無色透明液体のテトラ−(3−メチルブトキシ)−スズ50g(107mmol)、無色透明液体の酢酸(日本国、和光化学社製)25.7g(428mmol)及びスターラーチップを入れた。
均一の透明な前記材料の混合物を入れたフラスコを、温度調節器のついたオイルバス(日本国、増田理化工業社製、OBH−24)と真空ポンプ(日本国、ULVAC社製、G−50A)と真空コントローラー(日本国、岡野製作所社製、VC−10S)とを接続した蒸留器具に取り付けた。
蒸留器具の出口は常圧で流れている窒素ガスのラインと接続した。
オイルバス温度を約50℃に設定し、前記なす型フラスコを前記オイルバスに浸漬してスターラーで前記なす型フラスコ内の混合物の撹拌を開始した。
常圧で約20分間撹拌した後、系内を徐々に減圧し、系内の圧力が27〜67Paの状態で副生した3−メチル−1−ブタノールを蒸留した。
留分が出なくなった後、前記なす型フラスコをオイルバスから上げた。
その後、系内の圧力を窒素ガスのラインによって常圧に戻した。
3−メチル−1−ブタノールの蒸留分は37.7gであった。
蒸留分のガスクロマトグラフィーの分析結果から、3−メチル−1−ブタノールがテトラ−(3−メチルブトキシ)−スズに対して収率92%で得られたことが分かった。
前記なす型フラスコには、残留物が38.0g得られた。
【0197】
〔実施例7〕
容量200mLのなす型フラスコに、無色透明液体のトリ−(n−オクチル)−(3−メチルブトキシ)−スズ31.0g(56.8mmol)、(n−オクチル)−(3−メチルブトキシ)−スズオキシド19.0g(56.8mmol)、無色透明液体の酢酸(日本国、和光化学社製)6.82g(114mmol)及びスターラーチップを入れた。
均一の透明な前記材料の混合物を入れた前記なす型フラスコを、温度調節器のついたオイルバス(日本国、増田理化工業社製、OBH−24)と真空ポンプ(日本国、ULVAC社製、G−50A)と真空コントローラー(日本国、岡野製作所社製、VC−10S)とを接続した蒸留器具に取り付けた。
蒸留器具の出口は常圧で流れている窒素ガスのラインと接続した。
オイルバス温度を約50℃に設定し、前記なす型フラスコを前記オイルバスに浸漬してスターラーで前記なす型フラスコ内の混合物の撹拌を開始した。
常圧で約20分間撹拌した後、系内を徐々に減圧し、系内の圧力が27〜67Paの状態で副生した3−メチル−1−ブタノールを蒸留した。
留分が出なくなった後、前記なす型フラスコをオイルバスから上げた。
その後、系内の圧力を窒素ガスのラインによって常圧に戻した。
3−メチル−1−ブタノールの蒸留分は10.0gを得た。
蒸留分のガスクロマトグラフィーの分析結果から、3−メチル−1−ブタノールがトリ−(n−オクチル)−(3−メチルブトキシ)−スズと(n−オクチル)−(3−メチルブトキシ)−スズオキシドに対して収率91%で得られたことが分かった。
前記なす型フラスコには残留液46.8gが得られた。
119Sn,
1H,
13C−NMRの分析結果から、残留液は、トリ−(n−オクチル)−アセトキシ−スズと、
119Sn−NMRにおいて−240〜−605ppmに複数の化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物(モノアルキルスズアシルオキシド)であることが分かった。
トリ−(n−オクチル)−アセトキシ−スズはトリ−(n−オクチル)−(3−メチルブトキシ)−スズに対して収率99%で得られたことが分かった。
【0198】
〔実施例8〕
容量200mLのなす型フラスコに、透明液体混合物(1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサン16.7g(18.9mmol)、トリ−(n−オクチル)−(3−メチルブトキシ)−スズ20.6g(37.9mmol)、(n−オクチル)−(3−メチルブトキシ)−スズオキシド12.7g(37.9mmol))、無色透明液体の酢酸(日本国、和光化学社製)9.09g(151mmol)及びスターラーチップを入れた。
均一の透明な前記材料の混合物を入れた前記なす型フラスコを、温度調節器のついたオイルバス(日本国、増田理化工業社製、OBH−24)と真空ポンプ(日本国、ULVAC社製、G−50A)と真空コントローラー(日本国、岡野製作所社製、VC−10S)とを接続した蒸留器具に取り付けた。
蒸留器具の出口は常圧で流れている窒素ガスのラインと接続した。
オイルバス温度を約50℃に設定し、前記なす型フラスコを前記オイルバスに浸漬してスターラーで前記なす型フラスコ内の混合物の撹拌を開始した。
常圧で約20分間撹拌した後、系内を徐々に減圧し、系内の圧力が27〜67Paの状態で副生した3−メチル−1−ブタノールを蒸留した。
留分が出なくなった後、前記なす型フラスコをオイルバスから上げた。
その後、系内の圧力を窒素ガスのラインによって常圧に戻した。
3−メチル−1−ブタノールの蒸留分は10.0g得られた。
蒸留分のガスクロマトグラフィーの分析結果から、3−メチル−1−ブタノールが1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンとトリ−(n−オクチル)−(3−メチルブトキシ)−スズと(n−オクチル)−(3−メチルブトキシ)−スズオキシドに対して収率95%で得られたことが分かった。
前記なす型フラスコには残留液が48.7gを得られた。
119Sn,
1H,
13C−NMRの分析結果から、残留液はジ−(n−オクチル)−ビスアセトキシ−スズとジ−(n−オクチル)−ビスアセトキシ−スズと
119Sn−NMRにおいて−240〜−605ppmに複数の化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物であることが分かった。
ジ−(n−オクチル)−ビスアセトキシ−スズが1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサン基準に対して99%で得られたことが分かった。
また、トリ−(n−オクチル)−アセトキシ−スズがトリ−(n−オクチル)−(3−メチルブトキシ)−スズに対して収率99%で得られたことが分かった。
【0199】
〔実施例9〕
容量200mLのなす型フラスコに、無色透明液体のジ−(n−オクチル)−ビス−(3−メチルブトキシ)−スズ50g(96mmol)、無色透明液体の酢酸(日本国、和光化学社製)11.6g(193mmol)、及びスターラーチップを入れた。
均一の透明な前記材料の混合物を入れたなす型フラスコを、温度調節器のついたオイルバス(日本国、増田理化工業社製、OBH−24)と真空ポンプ(日本国、ULVAC社製、G−50A)と真空コントローラー(日本国、岡野製作所社製、VC−10S)とを接続した留出液受器に取り付けた。
前記留出液受器の出口は常圧で流れている窒素ガスのラインと接続した。
前記オイルバス温度を約30℃に設定し、前記なす型フラスコを、前記オイルバスに浸漬して、前記スターラーで前記なす型フラスコ内の混合物の撹拌を開始した。
常圧で約20分間撹拌した後、系内を徐々に減圧し、系内の圧力が27〜67Paの状態で、副生した3−メチル−1−ブタノールを蒸留した。
留分が出なくなった後、前記なす型フラスコをオイルバスから上げた。
その後、系内の圧力を窒素ガスのラインによって常圧に戻した。
3−メチル−1−ブタノールの蒸留分は15.3g得られた。
蒸留分は、ガスクロマトグラフィーの分析結果から、3−メチル−1−ブタノールがジ−(n−オクチル)−ビス−(3−メチルブトキシ)−スズに対して収率90%で得られたことが分かった。
前記フラスコには残留液が46.3g得られた。
119Sn,
1H,
13C−NMRの分析結果から、ジ−(n−オクチル)−ビスアセトキシ−スズが、ジ−(n−オクチル)−ビス−(3−メチルブトキシ)−スズに対して収率99%で得られたことが分かった。
【0200】
〔参考例1〕
容量200mLのなす型フラスコに、無色透明液体のジ−(n−オクチル)−ビス−(
3−メチルブトキシ)−スズ50g(96mmol)、無色透明液体の酢酸(日本国、和
光化学社製)11.6g(193mmol)及びスターラーチップを入れた。
均一の透明な前記材料の混合物を入れたなす型フラスコを、温度調節器のついたオイル
バス(日本国、増田理化工業社製、OBH−24)と真空ポンプ(日本国、ULVAC社
製、G−50A)と真空コントローラー(日本国、岡野製作所社製、VC−10S)とを
接続した留出液受器に取り付けた。
前記留出液受器の出口は常圧で流れている窒素ガスのラインと接続した。
前記オイルバス温度を約0℃に設定し、前記なす型フラスコを、前記オイルバスに浸漬
して、前記スターラーで前記なす型フラスコ内の混合物の撹拌を開始した。前記なす型フ
ラスコ内には固体が析出していた。
常圧で約20分間撹拌した後、系内を徐々に減圧し、系内の圧力が27〜67Paの状
態で、副生した3−メチル−1−ブタノールを蒸留した。
留分が出なくなった後、前記なす型フラスコをオイルバスから上げた。
その後、系内の圧力を窒素ガスのラインによって常圧に戻した。
3−メチル−1−ブタノールの蒸留分は10.2g得られた。
蒸留分は、ガスクロマトグラフィーの分析結果から、3−メチル−1−ブタノールがジ
−(n−オクチル)−ビス−(3−メチルブトキシ)−スズに対して収率60%で得られ
たことが分かった。
前記フラスコには残留物が51.4g得られた。
119Sn,
1H,
13C−NMRの分析結果から、ジ−(n−オクチル)−ビスアセトキシ
−スズが、ジ−(n−オクチル)−ビス−(3−メチルブトキシ)−スズに対して収率9
9%で得られたことが分かった。
【0201】
〔実施例11〕
容量200mLのなす型フラスコに、無色透明液体のジ−(n−オクチル)−ビス−(3−メチルブトキシ)−スズ50g(96mmol)、無色透明液体の酢酸(日本国、和光化学社製)11.6g(193mmol)及びスターラーチップを入れた。
均一の透明な前記材料の混合物を入れたなす型フラスコを、温度調節器のついたオイルバス(日本国、増田理化工業社製、OBH−24)と真空ポンプ(日本国、ULVAC社製、G−50A)と真空コントローラー(日本国、岡野製作所社製、VC−10S)とを接続した留出液受器に取り付けた。
前記留出液受器の出口は常圧で流れている窒素ガスのラインと接続した。
前記オイルバス温度を約80℃に設定し、前記なす型フラスコを、前記オイルバスに浸漬して、前記スターラーで前記なす型フラスコ内の混合物の撹拌を開始した。
常圧で約20分間撹拌した後、系内を徐々に減圧し、系内の圧力が27〜67Paの状態で、副生した3−メチル−1−ブタノールを蒸留した。
留分が出なくなった後、前記なす型フラスコをオイルバスから上げた。
その後、系内の圧力を窒素ガスのラインによって常圧に戻した。
3−メチル−1−ブタノールの蒸留分は17.3g得られた。
蒸留分は、ガスクロマトグラフィーの分析結果から、3−メチル−1−ブタノールがジ−(n−オクチル)−ビス−(3−メチルブトキシ)−スズに対して収率85%で得られたことが分かった。酢酸3−メチル−1−ブタノエートがジ−(n−オクチル)−ビス−(3−メチルブトキシ)−スズに対して15%で得られた。
前記フラスコには残留液が44.3g得られた。
119Sn,
1H,
13C−NMRの分析結果から、ジ−(n−オクチル)−ビスアセトキシ−スズが、ジ−(n−オクチル)−ビス−(3−メチルブトキシ)−スズに対して収率85%で得られたことが分かった。
【0202】
〔参考例2〕
容量200mLのなす型フラスコに、無色透明液体のジ−(n−オクチル)−ビス−(
3−メチルブトキシ)−スズ50g(96mmol)、無色透明液体の酢酸(日本国、和
光化学社製)11.6g(193mmol)及びスターラーチップを入れた。
均一の透明な前記材料の混合物を入れたなす型フラスコを、温度調節器のついたオイル
バス(日本国、増田理化工業社製、OBH−24)と真空ポンプ(日本国、ULVAC社
製、G−50A)と真空コントローラー(日本国、岡野製作所社製、VC−10S)とを
接続した留出液受器に取り付けた。
前記留出液受器の出口は常圧で流れている窒素ガスのラインと接続した。
前記オイルバス温度を約100℃に設定し、前記なす型フラスコを、前記オイルバスに
浸漬して、前記スターラーで前記なす型フラスコ内の混合物の撹拌を開始した。
常圧で約20分間撹拌した後、系内を徐々に減圧し、系内の圧力が27〜67Paの状
態で、副生した3−メチル−1−ブタノールを蒸留した。
留分が出なくなった後、前記なす型フラスコをオイルバスから上げた。
その後、系内の圧力を窒素ガスのラインによって常圧に戻した。
3−メチル−1−ブタノールの蒸留分は19.8g得られた。
蒸留分は、ガスクロマトグラフィーの分析結果から、3−メチル−1−ブタノールがジ
−(n−オクチル)−ビス−(3−メチルブトキシ)−スズに対して収率65%で得られ
たことが分かった。酢酸3−メチル−1−ブタノエートがジ−(n−オクチル)−ビス−
(3−メチルブトキシ)−スズに対して35%で得られた。
前記フラスコには残留液が46.3g得られた。
119Sn,
1H,
13C−NMRの分析結果から、ジ−(n−オクチル)−ビスアセトキシ
−スズが、ジ−(n−オクチル)−ビス−(3−メチルブトキシ)−スズに対して収率6
5%で得られたことが分かった。
【0203】
〔比較例1〕
容量200mLのなす型フラスコに、トリ−(n−オクチル)−(3−メチルブトキシ)−スズ50g(91.7mmol)及びスターラーチップを入れた。
均一の透明な前記材料を入れた前記なす型フラスコに水(日本国、和光化学社製)1.7g(91.7mmol)を加えたところ、白色沈殿が生じ、スラリー状となった。
前記なす型フラスコを温度調節器のついたオイルバス(日本国、増田理化工業社製、OBH−24)と真空ポンプ(日本国、ULVAC社製、G−50A)と真空コントローラー(日本国、岡野製作所社製、VC−10S)とを接続した留出液受器に取り付けた。
留出液受器の出口は常圧で流れている窒素ガスのラインと接続した。
オイルバス温度を約50℃に設定し、前記なす型フラスコを前記オイルバスに浸漬してスターラーで前記なす型フラスコ内の混合物の撹拌を開始した。
常圧で約20分間撹拌した後、系内を徐々に減圧し、系内の圧力が27〜67Paの状態で副生した3−メチル−1−ブタノールを蒸留した。
留分が出なくなった後、前記なす型フラスコをオイルバスから上げた。
その後、系内の圧力を窒素ガスのラインによって常圧に戻した。
前記なす型フラスコ内には白色固形分が残っていた。
3−メチル−1−ブタノールの蒸留分は6.5g得られた。
蒸留分は、ガスクロマトグラフィーの分析結果から、3−メチル−1−ブタノールがトリ−(n−オクチル)−(3−メチルブトキシ)−スズに対して収率80%で得られたことが分かった。
比較例1においては、トリ−(n−オクチル)−(3−メチルブトキシ)−スズは、水によってトリアルキルスズオキシドになり、アルコールを副生するが、この反応は逆反応もあり、トリアルキルスズオキシドとアルコールが反応し、水が発生する。蒸留時、3−メチル−1−ブタノールと水では、水の方が沸点が低いため、3−メチル−1−ブタノールより先に蒸留されるため、逆反応が進行し、アルコールの回収率が低下した。
【0204】
〔比較例2〕
容量200mLのなす型フラスコに、ジ−(n−オクチル)−ビス−(3−メチルブトキシ)−スズ50g(96mmol)及びスターラーチップを入れた。
均一の透明な前記材料を入れた前記なす型フラスコに、水(日本国、和光化学社製)3.5g(193mmol)を加えたところ、白色沈殿が生じ、スラリー状となった。
前記なす型フラスコを、温度調節器のついたオイルバス(日本国、増田理化工業社製、OBH−24)と真空ポンプ(日本国、ULVAC社製、G−50A)と真空コントローラー(日本国、岡野製作所社製、VC−10S)とを接続した留出液受器に取り付けた。
留出液受器の出口は常圧で流れている窒素ガスのラインと接続した。
オイルバス温度を約50℃に設定し、前記なす型フラスコを前記オイルバスに浸漬してスターラーで前記なす型フラスコ内の混合物の撹拌を開始した。
常圧で約20分間撹拌した後、系内を徐々に減圧し、系内の圧力が27〜67Paの状態で副生した3−メチル−1−ブタノールを蒸留した。
留分が出なくなった後、前記なす型フラスコをオイルバスから上げた。
その後、系内の圧力を窒素ガスのラインによって常圧に戻した。
前記なす型フラスコ内には白色固形分が残っていた。
3−メチル−1−ブタノールの蒸留分は13.6g得られた。
蒸留分のガスクロマトグラフィーの分析結果から、3−メチル−1−ブタノールがジ−(n−オクチル)−ビス−(3−メチルブトキシ)−スズに対して収率80%で得られたことが分かった。
比較例2においては、ジ−(n−オクチル)−ビス−(3−メチルブトキシ)−スズは、水によってジアルキルスズオキシドになり、アルコールを副生するが、この反応は逆反応もあり、ジアルキルスズオキシドとアルコールが反応し、水が発生する。蒸留時、3−メチル−1−ブタノールと水では、水の方が沸点が低いため、3−メチル−1−ブタノールより先に蒸留されるため、逆反応が進行し、アルコールの回収率が低下した。
【0205】
〔比較例3〕
容量200mLのなす型フラスコに、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサン50g(56.8mmol)及びスターラーチップを入れた。
均一の透明な前記材料を入れた前記なす型フラスコに、水(日本国、和光化学社製)4.1g(227mmol)を加えたところ、白色沈殿が生じ、スラリー状となった。
前記なす型フラスコを温度調節器のついたオイルバス(日本国、増田理化工業社製、OBH−24)と真空ポンプ(日本国、ULVAC社製、G−50A)と真空コントローラー(日本国、岡野製作所社製、VC−10S)とを接続した蒸留器具に取り付けた。
蒸留器具の出口は常圧で流れている窒素ガスのラインと接続した。
オイルバス温度を約50℃に設定し、前記なす型フラスコを前記オイルバスに浸漬してスターラーで前記なす型フラスコ内の混合物の撹拌を開始した。
常圧で約20分間撹拌した後、系内を徐々に減圧し、系内の圧力が27〜67Paの状態で副生した3−メチル−1−ブタノールを蒸留した。
留分が出なくなった後、前記なす型フラスコをオイルバスから上げた。
その後、系内の圧力を窒素ガスのラインによって常圧に戻した。フラスコ内には白色固形分が残っていた。
3−メチル−1−ブタノールの蒸留分は8.0g得られた。
蒸留分のガスクロマトグラフィーの分析結果から、3−メチル−1−ブタノールが1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンに対して収率80%で得られたことが分かった。
比較例3においては、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンは、水によってジアルキルスズオキシドになり、アルコールを副生するが、この反応は逆反応もあり、ジアルキルスズオキシドとアルコールが反応し、水が発生する。
蒸留時、3−メチル−1−ブタノールと水では、水の方が沸点が低いため、3−メチル−1−ブタノールより先に蒸留されるため、逆反応が進行し、アルコールの回収率が低下した。