特許第5777301号(P5777301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777301
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】石油残渣の燃料供給装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   F23K 1/02 20060101AFI20150820BHJP
   C10L 1/00 20060101ALI20150820BHJP
   F23K 1/04 20060101ALI20150820BHJP
   F23K 3/00 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   F23K1/02
   C10L1/00
   F23K1/04
   F23K3/00 303
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-161772(P2010-161772)
(22)【出願日】2010年7月16日
(65)【公開番号】特開2012-21750(P2012-21750A)
(43)【公開日】2012年2月2日
【審査請求日】2013年2月6日
【審判番号】不服2014-22405(P2014-22405/J1)
【審判請求日】2014年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】橋口 和明
(72)【発明者】
【氏名】藤村 皓太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤井 宏
【合議体】
【審判長】 中村 達之
【審判官】 伊藤 元人
【審判官】 金澤 俊郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−63856(JP,A)
【文献】 特開昭59−49423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 1/02
F23K 1/04
F23K 3/00
C10L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形化した石油残渣と重油とを供給して混合する混合タンクと、
該混合タンク内で固形化した石油残渣を加熱して溶融させる加熱装置と、
前記混合タンクにより混合して流体化した混合油を火炉に搬送する搬送装置と、
を備えることを特徴とする石油残渣の燃料供給装置。
【請求項2】
石油残渣を粉砕する粉砕装置を設けることを特徴とする請求項1に記載の石油残渣の燃料供給装置。
【請求項3】
記粉砕装置により粉砕された石油残渣を前記混合タンクに供給することを特徴とする請求項2に記載の石油残渣の燃料供給装置。
【請求項4】
石油精製設備から取り出されて固形化した石油残渣と重油とを混合タンクに供給して混合する工程と、
前記混合タンク内で石油残渣を加熱して溶融させる工程と、
石油残渣と重油が混合して流体化した混合油を火炉に搬送する工程と、
を有することを特徴とする石油残渣の燃料供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原油を精製して燃料油や石油化学製品などを製造した後、取り出される石油残渣を火炉などの燃料として供給可能とする石油残渣の燃料供給装置及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原油を石油精製設備により精製することで、燃料油や石油化学製品などを製造した後、この設備からは石油残渣が取り出される。この石油残渣は、常温で固化してしまうことから、エネルギとして利用する場合には、石油精製設備で高温状態にある石油残渣を蒸気などにより加温したままで配管を用いて火炉まで移送し、燃焼可能な温度まで加熱してから火炉内に供給している。
【0003】
近年、石油残渣の重質化が進み、石油残渣は、350℃を超える温度域まで加熱してから火炉内に供給する必要があり、石油精製設備でのハンドリング温度を上回ることから、移送する配管でのコーキング付着の問題が発生するおそれがある。そのため、石油精製設備から取り出された高温流体である石油残渣に軽油を混合し、終始、流体として移送するようしているが、コストの面で不利となっている。
【0004】
このような問題を解決するものとして、例えば、下記特許文献1、2に記載されたものがある。特許文献1に記載された溶剤脱れき残渣水スラリーの製造方法では、溶剤脱れき残渣を水及び分散剤と共に粉砕してスラリーを形成し、続いて、撹拌を続けてスラリーを安定化するにあたり、増粘剤として水溶性高分子物質や無機物微粉末を適量加えている。また、特許文献2に記載された石油残渣の燃料供給方法及び装置では、石油残渣液化天然ガスを接触させ、液化天然ガスが気化して気化天然ガスとなる気化冷熱を用いて石油残渣を冷却・固化することで固形燃料を得て、この固形燃料を微粉砕して火炉に供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−077487号公報
【特許文献2】特開2009−300054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の石油残渣の燃料供給装置にあっては、石油残渣をスラリー化したり、固化した後に粉砕して燃料として使用している。しかし、このような設備では、複雑な装置構成が必要となり、製造コストが増加してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、装置の大型化や複雑化を招くことなく石油残渣を効率的に燃料として使用可能な石油残渣の燃料供給装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の石油残渣の燃料供給装置は、固形化した石油残渣と重油とを混合する混合装置と、該混合装置により混合して流体化した混合油を火炉に搬送する搬送装置と、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
従って、混合装置により固形化した石油残渣を重油と混合することで、この石油残渣を溶融して流体化し、搬送装置により混合油を火炉に搬送することができ、装置の大型化や複雑化を招くことなく石油残渣を効率的に燃料として使用可能とすることができる。
【0010】
本発明の石油残渣の燃料供給装置では、石油残渣を加熱する加熱装置を設けることを特徴としている。
【0011】
従って、固形化した石油残渣を重油と混合すると共に、加熱装置により加熱することで、この石油残渣を容易に溶融して流体化することができる。
【0012】
本発明の石油残渣の燃料供給装置では、石油残渣を粉砕する粉砕装置を設けることを特徴としている。
【0013】
従って、固形化した石油残渣を粉砕装置により粉砕してから重油と混合することで、この石油残渣を容易に溶融して流体化することができる。
【0014】
本発明の石油残渣の燃料供給装置では、前記混合装置は、混合タンクを有し、前記粉砕装置により粉砕された石油残渣を前記混合タンクに供給することを特徴としている。
【0015】
従って、粉砕装置により粉砕された石油残渣と重油とを混合タンクで混合することで、この石油残渣を容易に溶融して流体化することができる。
【0016】
本発明の石油残渣の燃料供給装置では、前記混合装置は、混合配管を有し、前記粉砕装置により粉砕された石油残渣を前記混合配管に供給することを特徴としている。
【0017】
従って、粉砕装置により粉砕された石油残渣を搬送配管に供給して重油と混合することで、この石油残渣を容易に溶融して流体化することができると共に、混合装置の簡素化を可能とすることができる。
【0018】
また、本発明の石油残渣の燃料供給方法は、石油精製設備から取り出されて固形化した石油残渣を加熱する工程と、溶融した石油残渣を重油と混合する工程と、石油残渣と重油が混合して流体化した混合油を火炉に搬送する工程と、を有することを特徴とするものである。
【0019】
従って、加熱した石油残渣を重油と混合することで、この石油残渣を溶融して流体化し、混合油として火炉に搬送することができ、装置の大型化や複雑化を招くことなく石油残渣を効率的に燃料として使用可能とすることができる。
【0020】
また、本発明の石油残渣の燃料供給方法は、石油精製設備から取り出されて固形化した石油残渣を粉砕する工程と、粉砕した石油残渣を重油と混合する工程と、石油残渣と重油が混合して流体化した混合油を火炉に搬送する工程と、を有することを特徴とするものである。
【0021】
従って、粉砕した石油残渣を重油と混合することで、この石油残渣を溶融して流体化し、混合油として火炉に搬送することができ、装置の大型化や複雑化を招くことなく石油残渣を効率的に燃料として使用可能とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の石油残渣の燃料供給装置及び方法によれば、固形化した石油残渣を重油と混合することで溶融して流体化し、混合油として火炉に搬送することができ、装置の大型化や複雑化を招くことなく石油残渣を効率的に燃料として使用可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の実施例1に係る石油残渣の燃料供給装置を表す概略構成図である。
図2図2は、石油の移送粘度範囲及び燃焼粘度範囲を表すグラフである。
図3図3は、本発明の実施例2に係る石油残渣の燃料供給装置を表す概略構成図である。
図4図4は、石油残渣粒径に対する混合時間を表すグラフである。
図5図5は、本発明の実施例3に係る石油残渣の燃料供給装置を表す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る石油残渣の燃料供給装置の好適な実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、この実施例に限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の実施例1に係る石油残渣の燃料供給装置を表す概略構成図、図2は、石油の移送粘度範囲及び燃焼粘度範囲を表すグラフである。
【0026】
近年、燃料油の白油化指向に伴って粘度の高い重質油が増加してきている。このような重質油を燃料とする重質油燃焼ボイラにおいては、高粘度の重質油を昇温させたり、粘度調整剤を混合したりして低粘度化する必要がある。また、石油精製設備による精製作業では、最終的に高い重質性の石油残渣が取り出されることとなるが、ここでも、近年、石油残渣の重質化が進んでいる。
【0027】
石油の精製過程では、図2に示すように、軽油Aや重油Bが精製されて一般的な石油残渣Cが取り出されるが、近年は、この石油残渣Cもアスファルトなどとして精製され、高重質性の石油残渣Dが取り出される。このような軽油A、重油B、石油残渣C、高重質性の石油残渣Dを一般的な重質油燃焼ボイラで使用する場合、燃料タンクからボイラまで移送するとき、所定の移送粘度範囲(300〜700mm/sec)まで低下させ、更に、ボイラで燃焼するとき、所定の燃焼粘度範囲(15〜100mm/sec程度)まで低下させる必要がある。
【0028】
この場合、石油精製設備から取り出されたときの高重質性の石油残渣Dは、高温状態にあることから流体化しているが、常温になると固形化してしまう。高温状態にあって流体化している石油残渣Dを重質油燃焼ボイラまで搬送するには、搬送配管を蒸気などにより加熱する必要があるものの、その加熱温度は300℃程度になってしまう。本実施例では、石油残渣Dを常温で固形化した状態で重質油燃焼ボイラの近傍まで搬送し、固形化した石油残渣Dを溶融してボイラに供給するようにしている。
【0029】
実施例1の石油残渣の燃料供給装置は、図1に示すように、混合タンク(混合装置)11と、輸送配管(搬送装置)12と、輸送ポンプ(搬送装置)13と、油加熱器14とを有し、重質油燃焼ボイラ(火炉)15に燃料油を供給可能となっている。
【0030】
混合タンク11は、固形化した石油残渣と重油とが投入可能であり、攪拌翼21と加熱ヒータ(加熱装置)22とを有している。輸送配管12は、混合タンク11から重質油燃焼ボイラ15まで延設された配管であり、輸送ポンプ13により混合タンク11内の燃料油を重質油燃焼ボイラ15まで輸送可能となっている。油加熱器14は、輸送配管12内を流れる燃料油を所定の燃焼粘度範囲まで加熱するものである。重質油燃焼ボイラ15は、複数のバーナ23を有し、輸送配管12により輸送され、且つ、油加熱器14により燃焼粘度範囲まで加熱された燃料油をボイラ内部に供給するものである。
【0031】
実施例1では、固形化した石油残渣と重油とを混合タンク11内で混合すると共に、加熱ヒータ22により加熱することで、石油残渣を溶融している。この場合、重油は、石油残渣を溶融するための粘度調整剤として利用するが、この粘度調整剤は、固形化した石油残渣より軽質であり、超重質油と親和性の高い重油が最適である。この場合、超重質油に対する重油の混合割合に対して混合後の燃料油の粘度が比例して変化するが、石油残渣に対する重油の混合割合は、JISK2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」を用いて設定すればよい。また、加熱ヒータ22により混合タンク11を加熱するが、固形化した石油残渣が溶融を開始する50℃以上に加熱することが望ましい。
【0032】
従って、固形化した石油残渣と重油とが混合タンク11に投入されると、加熱ヒータ22により混合タンク11が加熱されると共に、攪拌翼21が作動する。すると、混合タンク11内で石油残渣が加熱されると共に重油と混合されることで溶融し、燃料油(混合油)が生成される。そして、輸送ポンプ13が作動すると、混合タンク11内の燃料油が輸送配管12により輸送され、途中で油加熱器14により燃焼粘度範囲まで加熱された後、重質油燃焼ボイラ15の各バーナ23まで輸送され、このバーナ23からボイラ内部に供給される。
【0033】
なお、加熱ヒータ22により固形化した石油残渣を加熱する場合、混合タンク11内で重油と混合してから両者を加熱してもよいし、混合タンク11内で石油残渣だけを加熱した後に重油と混合してもよい。また、石油残渣を事前に加熱したから混合タンク11に投入してもよい。更に、加熱した重油に石油残渣を投入してもよい。
【0034】
このように実施例1の石油残渣の燃料供給装置にあっては、固形化した石油残渣と重油とを混合する混合タンク11と、この混合タンク11により混合して流体化した混合油を重質油燃焼ボイラ15に搬送する輸送配管12及び輸送ポンプ13とを設けている。
【0035】
従って、混合タンク11により、固形化した石油残渣を重油と混合することで、この石油残渣を溶融して流体化し、輸送ポンプ13を作動して輸送配管12により燃料油を重質油燃焼ボイラ15に搬送することができ、装置の大型化や複雑化を招くことなく石油残渣を効率的に燃料として使用可能とすることができる。即ち、石油精製設備から取り出された石油残渣を固形化した状態で搬送し、重質油燃焼ボイラ15の近傍で溶融してからこの重質油燃焼ボイラ15に供給することができ、石油精製設備から重質油燃焼ボイラ15までの搬送配管を不要とし、石油残渣のハンドリングの容易化を可能とすることができる。
【0036】
また、実施例1の石油残渣の燃料供給装置では、石油残渣を加熱する加熱ヒータ22を設けている。従って、固形化した石油残渣を重油と混合すると共に、加熱ヒータ22により加熱することで、この石油残渣を容易に溶融して流体化することができる。
【0037】
また、実施例1の石油残渣の燃料供給方法にあっては、石油精製設備から取り出されて固形化した石油残渣を加熱する工程と、溶融した石油残渣を重油と混合する工程と、石油残渣と重油が混合して流体化した燃料油を重質油燃焼ボイラ15に搬送する工程とを設けている。
【0038】
従って、加熱した石油残渣を重油と混合することで、この石油残渣を溶融して流体化し、燃料油として重質油燃焼ボイラ15に搬送することができ、装置の大型化や複雑化を招くことなく石油残渣を効率的に燃料として使用可能とすることができる。
【実施例2】
【0039】
図3は、本発明の実施例2に係る石油残渣の燃料供給装置を表す概略構成図、図4は、石油残渣粒径に対する混合時間を表すグラフである。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0040】
実施例2の石油残渣の燃料供給装置は、図3に示すように、混合タンク11と、ミル(粉砕装置)31と、輸送配管12と、輸送ポンプ13と、油加熱器14とを有し、重質油燃焼ボイラ15に燃料油を供給可能となっている。
【0041】
ミル31は、固形化した石油残渣を所定の粒径まで粉砕するものであり、石油残渣をこのミル31により粉砕してから混合タンク11に投入する。即ち、実施例2では、固形化した石油残渣をミル31により粉砕し、粉砕後の石油残渣と重油とを混合タンク11内で混合することで、石油残渣を溶融している。この場合、ミル31により石油残渣を10mm粒径以下まで粗粉砕することが望ましい。
【0042】
即ち、図4に示すように、石油残渣の粒径が200mm程度であると、この石油残渣が重油と混合して溶融するまで10時間程度の混合時間が必要となる。しかし、石油残渣の粒径が10mm程度になると、この石油残渣が重油と混合して溶融するまで30分程度の混合時間で十分となる。石油残渣と重油との混合時間が30分程度であると、重質油燃焼ボイラ15に燃料油を供給するタイミングに十分間に合うものである。この場合、石油残渣と重油との混合時間の短縮化が可能になると共に、混合タンク11の小型化が可能になる。
【0043】
従って、固形化した石油残渣をミル31に供給し、この石油残渣を所定粒径まで粉砕してから混合タンク11に投入すると共に、重油を混合タンク11に投入する。この混合タンク11では、攪拌翼21が作動することで、小径の石油残渣が重油と混合されることで溶融し、燃料油(混合油)が生成される。そして、輸送ポンプ13が作動すると、混合タンク11内の燃料油が輸送配管12により輸送され、途中で油加熱器14により燃焼粘度範囲まで加熱された後、重質油燃焼ボイラ15の各バーナ23まで輸送され、このバーナ23からボイラ内部に供給される。
【0044】
このように実施例2の石油残渣の燃料供給装置にあっては、石油残渣を粉砕するミル31と、粉砕した石油残渣と重油とを混合する混合タンク11と、この混合タンク11により混合して流体化した混合油を重質油燃焼ボイラ15に搬送する輸送配管12及び輸送ポンプ13とを設けている。
【0045】
従って、ミル31により、固形化した石油残渣を粉砕した後に混合タンク11に投入し、この混合タンク11により、粉砕した石油残渣を重油と混合することで、この石油残渣を溶融して流体化し、輸送ポンプ13を作動して輸送配管12により燃料油を重質油燃焼ボイラ15に搬送することができ、装置の大型化や複雑化を招くことなく石油残渣を効率的に燃料として使用可能とすることができる。
【0046】
また、実施例2の石油残渣の燃料供給装置では、ミル31により粉砕された石油残渣を重油と共に混合タンク11に供給しており、この混合タンク11内で石油残渣を重油と混合することで、この石油残渣を容易に溶融して流体化することができる。
【0047】
また、実施例2の石油残渣の燃料供給方法にあっては、石油精製設備から取り出されて固形化した石油残渣を粉砕する工程と、粉砕した石油残渣を重油と混合する工程と、石油残渣と重油が混合して流体化した燃料油を重質油燃焼ボイラ15に搬送する工程とを設けている。
【0048】
従って、粉砕した石油残渣を重油と混合することで、この石油残渣を溶融して流体化し、混合油として火炉に搬送することができ、装置の大型化や複雑化を招くことなく石油残渣を効率的に燃料として使用可能とすることができる。
【実施例3】
【0049】
図5は、本発明の実施例3に係る石油残渣の燃料供給装置を表す概略構成図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0050】
実施例3の石油残渣の燃料供給装置は、図5に示すように、燃料タンク11aと、ミル31と、供給配管41と、混合配管(混合装置)42と、輸送配管12と、輸送ポンプ13とを有し、重質油燃焼ボイラ15に燃料油を供給可能となっている。
【0051】
燃料タンク11aは、所定量の重油を貯留可能であり、この燃料タンク11aに混合配管42を介して輸送配管12及び輸送ポンプ13が連結されている。また、ミル31は、固形化した石油残渣を所定の粒径まで粉砕するものであり、供給配管41を介して混合配管42に連結されており、石油残渣をこのミル31により粉砕してから供給配管41を通して混合配管42に供給可能である。即ち、実施例3では、固形化した石油残渣をミル31により粉砕し、粉砕後の石油残渣を混合配管42に供給して重油と混合することで、石油残渣を溶融している。この場合、ミル31により石油残渣を1mm粒径以下まで粉砕することが望ましい。この場合、供給配管41に供給ポンプを設けたり、供給配管41の代わりに供給コンベアなどを設けてもよい。
【0052】
即ち、実施例2で説明した図4に示すように、石油残渣の粒径が200mm程度であると、この石油残渣が重油と混合して溶融するまで10時間程度の混合時間が必要となる。しかし、石油残渣の粒径が1mm程度になると、この石油残渣が重油と混合して溶融するまで30秒程度の混合時間で十分となる。石油残渣と重油との混合時間が30秒程度であると、重質油燃焼ボイラ15に燃料油を供給するタイミングに十分間に合うものである。この場合、石油残渣と重油との混合時間の短縮化が可能になると共に、混合タンク11が不要となる。
【0053】
従って、重油を燃料タンク11aに供給する一方、固形化した石油残渣をミル31に供給し、この石油残渣を所定粒径まで粉砕してから、供給配管41を通して混合配管42に供給する。一方、輸送ポンプ13が作動すると、燃料タンク11a内の重油が混合配管42、輸送配管12により輸送される。このとき、混合配管42では、供給配管41から粉砕された石油残渣が供給されることで、この小径の石油残渣が重油と混合されることで溶融し、燃料油(混合油)が生成される。そし、この燃料油が輸送配管12により輸送され、重質油燃焼ボイラ15の各バーナ23まで輸送され、このバーナ23からボイラ内部に供給される。
【0054】
このように実施例3の石油残渣の燃料供給装置にあっては、燃料タンク11aに連結される混合配管42と、石油残渣を粉砕するミル31と、粉砕した石油残渣を混合配管42に供給する供給配管41と、混合配管42で混合して流体化した混合油を重質油燃焼ボイラ15に搬送する輸送配管12及び輸送ポンプ13とを設けている。
【0055】
従って、ミル31により、固形化した石油残渣を粉砕した後に燃料タンク11aに連結された混合配管42に供給し、この混合配管42により、粉砕した石油残渣を重油に混合することで、この石油残渣を溶融して流体化し、輸送ポンプ13を作動して輸送配管12により燃料油を重質油燃焼ボイラ15に搬送することができ、装置の大型化や複雑化を招くことなく石油残渣を効率的に燃料として使用可能とすることができる。この場合、石油残渣の粒径が1mm程度になるまで粉砕すると、攪拌翼を有する混合タンクが不要となり、単なる配管(混合配管42)でよく、混合装置の簡素化や設備コストの低減を可能とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る石油残渣の燃料供給装置及び方法は、固形化した石油残渣と重油とを混合することで石油残渣を溶融して重油と混合することで、装置の大型化や複雑化を招くことなく石油残渣を効率的に燃料として使用可能とするものであり、いずれの石油残渣の燃料供給装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
11 混合タンク(混合装置)
12 輸送配管(搬送装置)
13 輸送ポンプ(搬送装置)
14 油加熱器
15 重質油燃焼ボイラ(火炉)
21 攪拌翼
22 加熱ヒータ(加熱装置)
23 バーナ
31 ミル(粉砕装置)
41 供給配管
42 混合配管
図1
図2
図3
図4
図5