特許第5777401号(P5777401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777401
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】コンベヤスケール
(51)【国際特許分類】
   G01G 23/01 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   G01G23/01 Z
【請求項の数】15
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2011-113259(P2011-113259)
(22)【出願日】2011年5月20日
(65)【公開番号】特開2012-242264(P2012-242264A)
(43)【公開日】2012年12月10日
【審査請求日】2014年4月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208444
【氏名又は名称】大和製衡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097755
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 勉
(72)【発明者】
【氏名】孝橋 徹
(72)【発明者】
【氏名】松尾 孝徳
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−51704(JP,A)
【文献】 特開2001−208625(JP,A)
【文献】 特開平11−337393(JP,A)
【文献】 特開平9−280939(JP,A)
【文献】 特開平5−172661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G23/01
G01G 3/14− 3/147
G01G11/00−11/20
G01L 1/00− 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベヤを両側から支持する2個のロードセルの出力する荷重信号に基づいて、前記コンベヤ上を搬送される被計量物の輸送量を算出するコンベヤスケールにおいて、
前記ロードセルの起歪部に貼付した少なくとも4個のストレインゲージで構成されるホイートストーンブリッジ回路における2個の端子からの出力信号に基づいて生成される2個のハーフブリッジ荷重信号が、前記ロードセルへの同一の負荷荷重に対して略同じ大きさの荷重信号となるように調整して出力するハーフブリッジ荷重信号出力手段を備えることを特徴とするコンベヤスケール。
【請求項2】
前記ハーフブリッジ荷重信号出力手段から出力される2個のハーフブリッジ荷重信号の零点を個別に調整する個別零点調整手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のコンベヤスケール。
【請求項3】
前記個別零点調整手段によって零点変動分を相殺できるように生成される少なくとも1個のハーフブリッジ荷重信号を表示するハーフブリッジ荷重信号表示手段を備えることを特徴とする請求項2に記載のコンベヤスケール。
【請求項4】
前記ハーフブリッジ荷重信号出力手段から出力される2個のハーフブリッジ荷重信号を比較することによって前記ロードセルのうちで出力変動の異常なロードセルを検出する出力異常検出手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のコンベヤスケール。
【請求項5】
前記出力異常検出手段によって検出された出力変動の異常なロードセルにおける前記2個のハーフブリッジのうちで荷重信号出力が異常なハーフブリッジを自動的に特定する出力異常ハーフブリッジ特定手段を備えることを特徴とする請求項4に記載のコンベヤスケール。
【請求項6】
前記出力異常ハーフブリッジ特定手段は、前記荷重信号出力が異常であると特定されたロードセルにおいて前記ハーフブリッジ荷重信号出力手段から出力される2個のハーフブリッジ荷重信号を比較することにより出力変化を検出する出力変化検出手段と、前記荷重信号出力が異常であると特定されたロードセルにおいて前記ハーフブリッジ荷重信号出力手段から出力される2個のハーフブリッジ荷重信号のそれぞれの出力信号と、前記荷重信号出力が異常であると特定されたロードセル以外のロードセルからの出力信号とを比較する相対比較手段とを備え、前記出力変化検出手段による比較結果と前記相対比較手段による比較結果とに基づいて荷重信号出力が異常なハーフブリッジを特定することを特徴とする請求項5に記載のコンベヤスケール。
【請求項7】
前記相対比較手段による比較結果のバラツキの大きさに基づいて前記出力異常ハーフブリッジ特定手段における前記荷重信号出力が異常であるハーフブリッジを特定するための許容値を設定することを特徴とする請求項6に記載のコンベヤスケール。
【請求項8】
前記出力変化検出手段は、該出力変化検出手段による比較結果の変化の大きさが0の近傍である時点において前記相対比較手段の比較結果を集計するとともに、前記出力変化検出手段による比較結果の変化の大きさが許容値の近傍である時点において前記相対比較手段の比較結果を集計することによって、ロードセルが正常である状態からの出力変化の大きさを算出することにより出力変化を検出することを特徴とする請求項6に記載のコンベヤスケール。
【請求項9】
前記出力変化検出手段における2個のハーフブリッジ荷重信号の比較は、前記荷重信号出力が異常であると特定されたロードセルにおいて前記ハーフブリッジ荷重信号出力手段から出力される2個のハーフブリッジ荷重信号に基づく前記コンベヤが所定距離だけ移動したときの輸送量の比較であることを特徴とする請求項6に記載のコンベヤスケール。
【請求項10】
前記相対比較手段による比較に際して、前記荷重信号出力が異常であると特定されたロードセルにおいて前記ハーフブリッジ荷重信号出力手段から出力される2個のハーフブリッジ荷重信号に基づく前記コンベヤが所定距離だけ移動したときの輸送量に基づき前記輸送量のバラツキを減衰させるバラツキ減衰手段を備えることを特徴とする請求項6に記載のコンベヤスケール。
【請求項11】
前記出力異常ハーフブリッジ特定手段は、前記出力変化検出手段による比較結果に基づいて、前記異常であると特定されたハーフブリッジについてのハーフブリッジ荷重信号のスパンを補正するスパン補正手段を備えることを特徴とする請求項6に記載のコンベヤスケール。
【請求項12】
前記出力異常ハーフブリッジ特定手段は、前記出力変化検出手段による比較結果に基づいて、前記異常であると特定されたハーフブリッジについてのハーフブリッジ荷重信号を、異常であると特定されない方のハーフブリッジについてのハーフブリッジ荷重信号で代替させるハーフブリッジ信号代替手段を備えることを特徴とする請求項6に記載のコンベヤスケール。
【請求項13】
前記出力異常ハーフブリッジ特定手段は、前記出力変化検出手段による比較結果と前記相対比較手段による比較結果とに基づいて、前記荷重信号出力が異常であるロードセルを特定した時点で、前記特定したロードセルにおける異常であるハーフブリッジを特定することを特徴とする請求項6に記載のコンベヤスケール。
【請求項14】
前記2個のロードセルに対して、基準重量物品の荷重が一定の比率に配分されるように前記基準重量物品を積載する積載機構と、前記2個のロードセルに一定比率配分された基準重量物品の荷重に基づく、前記2個のロードセルから出力される前記2個のハーフブリッジ荷重信号のそれぞれを基準重量参照値として記憶する基準重量参照値記憶手段とを備える請求項1に記載のコンベヤスケール。
【請求項15】
前記積載機構に前記基準重量物品を積載することによって前記2個のロードセルに一定比率配分された基準重量物品の荷重信号と、前記2個のロードセルから出力される2個のハーフブリッジ毎の基準重量参照値とに基づいて、前記ロードセルのスパン補正操作が実施される請求項14に記載のコンベヤスケール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計量ローラの両端を支持するロードセルのうち、いずれのロードセルの出力が異常であるかを判定し、運転を継続する中で正常な計量に復帰させるようにしたコンベヤスケールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
計量装置の中核部品であるロードセル(荷重センサ)が故障した場合に、その故障状態を計量装置の使用中に容易にかつ精確に判定し、容易に正常な状態に復帰させるという機能は、重要な機能であるといえる。このため、ロードセルの異常判定はできるだけ早期に行うことが求められる。また、どのロードセルに異常があるかを検出した際には、その異常なロードセルを新たなロードセルと交換するまでの間、異常なロードセルの出力を補正して正常な計量を継続できるようにすることが求められる。
【0003】
ここで、ロードセルの出力が正常値から変動する要因としては、零点変動量が異常に大きくなることと、スパンの変動量が異常に大きくなることとがある。これら零点変動量及びスパン変動量の異常については、通常の計量作業中に特別な操作を必要とせずに判定することができ、異常があれば警報を発するようにすることが求められる。また、運転を停止させずに、異常判定されたロードセルの出力を容易に補正し、ロードセルを交換するまでの間計量装置を使用できるようにすることが求められる。
【0004】
従来、ロードセルの異常検出による故障診断装置として、特許文献1〜3に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−172661号公報
【特許文献2】特開平5−264375号公報
【特許文献3】特開平9−280939号公報
【0006】
上記特許文献1に開示された故障診断方法は、ロードセルのフルブリッジ回路を構成する2つのハーフブリッジ回路のそれぞれの出力を予め定めた許容値と比較し、いずれかのハーフブリッジ回路の出力が許容値を超えていれば故障であると判定するように構成されたものである。
【0007】
また、上記特許文献2,3に開示された故障診断方法は、1台の計量部を支持する3個以上のロードセルの出力を比較し、計量部の負荷荷重が各ロードセルにほぼ均等に配分されるものとして、各ロードセルの出力を所定の基準値と比較したとき、又は相互の出力同士を比較したとき、差の大きいものが1個あれば当該ロードセルが異常であると判定するように構成されたものである。
【0008】
ところで、コンベヤスケールにおいては、コンベヤ上を搬送される被計量物の輸送量(輸送重量)を測定するため、コンベヤを支持する計量ローラの両端に2個のストレインゲージ式ロードセルが設けられるが、計量ローラに任意の負荷荷重がかかっている状態で、すなわち稼働運転中に、1個のロードセルの中で2個のハーフブリッジ出力のいずれかが異常であることを精確に検出するには、まずハーフブリッジが正常な状態のときにそれぞれのハーフブリッジが個別に零点調整可能であって、個別に零点調整がなされ、設定された零点からの互いの零点の変化量の差を判定しなければならない。
【0009】
また、スパンの変動に関して、同じ負荷荷重に対して両方のハーフブリッジ出力が同じ大きさに変化するようにスパンが設定されていなければ、任意の荷重が負荷される使用中に双方のハーフブリッジ出力を比較しても意味がない。しかし、上記特許文献1に開示された方法では、これらの問題への対策が明らかでなく、具体的な対処が施されていない。
【0010】
一方、上記特許文献2,3に開示された方法は、基本的に使用されるロードセルが2個の場合には適用できない。また、負荷荷重が均等でない場合には適用できないか、あるいは不均等分を見込んで大きい許容値を設定せざるを得ない。負荷荷重の変動が大きい場合にも適用できないか、あるいはバラツキを見込んで概略の大きい許容値を設定せざるを得ない。そして、許容値が見込みによる概略の大きい値に設定されると、異常判定の時期が遅れ、異常判定が行われた時点ですぐにロードセルを交換しなければならない事態となる。
【0011】
また、上記特許文献2,3に開示された方法では、故障したロードセルを正常なロードセルの出力で代替させているが、計量器の使用状態が各ロードセルに不均等な負荷が加わるものでは、特定の1個のロードセルの負荷荷重を他のロードセルの負荷荷重で精度良く代替させることができず精度の高い計量ができないという問題点がある。
【0012】
さらに、ロードセル出力の正常な時点でも、周囲温度変化や計量部への付着物などによって各ロードセルは個別に零点が移動する。したがって、各ロードセルを個別に零点調整した後、使用中に出力を基準値と比較したり相互比較したりしなければならないが、特許文献3の段落〔0014〕に各ロードセルの個別表示は記載されているものの、ロードセルを計量器本体に装着した状態で、各ロードセルを個別に零点調整する、すなわち零点重量を設定する手段が明らかでなく、使用時に精確に各ロードセル相互の出力信号の比較が行えないという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、計量ローラの両端を支持する2個のロードセルについて、ホイートストーンブリッジ回路を構成する2つのハーフブリッジ出力のいずれかに零点又はスパンの異常が生じたことを稼働運転中に容易にかつ精確に判定し、稼働運転中でも出力を補正して運転を継続させることのできるコンベヤスケールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明によるコンベヤスケールは、
コンベヤを両側から支持する2個のロードセルの出力する荷重信号に基づいて、前記コンベヤ上を搬送される被計量物の輸送量を算出するコンベヤスケールにおいて、
前記ロードセルの起歪部に貼付した少なくとも4個のストレインゲージで構成されるホイートストーンブリッジ回路における2個の端子からの出力信号に基づいて生成される2個のハーフブリッジ荷重信号が、前記ロードセルへの同一の負荷荷重に対して略同じ大きさの荷重信号となるように調整して出力するハーフブリッジ荷重信号出力手段を備えることを特徴とするものである(第1発明)。
【0015】
本発明において、前記ハーフブリッジ荷重信号出力手段から出力される2個のハーフブリッジ荷重信号の零点を個別に調整する個別零点調整手段を備えるのが好ましい(第2発明)。
【0016】
この場合、前記個別零点調整手段によって零点変動分を相殺できるように生成される少なくとも1個のハーフブリッジ荷重信号を表示するハーフブリッジ荷重信号表示手段を備えるのが好ましい(第3発明)。
【0017】
また、本発明において、前記ハーフブリッジ荷重信号出力手段から出力される2個のハーフブリッジ荷重信号を比較することによって前記ロードセルのうちで出力変動の異常なロードセルを検出する出力異常検出手段を備えるのが好ましい(第4発明)。
【0018】
ここで、前記出力異常検出手段によって検出された出力変動の異常なロードセルにおける前記2個のハーフブリッジのうちで荷重信号出力が異常なハーフブリッジを自動的に特定する出力異常ハーフブリッジ特定手段を備えるのが好ましい(第5発明)。
【0019】
また、前記出力異常ハーフブリッジ特定手段は、前記荷重信号出力が異常であると特定されたロードセルにおいて前記ハーフブリッジ荷重信号出力手段から出力される2個のハーフブリッジ荷重信号を比較することにより出力変化を検出する出力変化検出手段と、前記荷重信号出力が異常であると特定されたロードセルにおいて前記ハーフブリッジ荷重信号出力手段から出力される2個のハーフブリッジ荷重信号のそれぞれの出力信号と、前記荷重信号出力が異常であると特定されたロードセル以外のロードセルからの出力信号とを比較する相対比較手段とを備え、前記出力変化検出手段による比較結果と前記相対比較手段による比較結果とに基づいて荷重信号出力が異常なハーフブリッジを特定するのが好ましい(第6発明)。
【0020】
この場合、前記相対比較手段による比較結果のバラツキの大きさに基づいて前記出力異常ハーフブリッジ特定手段における前記荷重信号出力が異常であるハーフブリッジを特定するための許容値を設定するのが良い(第7発明)。
【0021】
また、前記出力変化検出手段は、該出力変化検出手段による比較結果の変化の大きさが0の近傍である時点において前記相対比較手段の比較結果を集計するとともに、前記出力変化検出手段による比較結果の変化の大きさが許容値の近傍である時点において前記相対比較手段の比較結果を集計することによって、ロードセルが正常である状態からの出力変化の大きさを算出することにより出力変化を検出するのが良い(第8発明)。
【0022】
また、前記出力変化検出手段における2個のハーフブリッジ荷重信号の比較は、前記荷重信号出力が異常であると特定されたロードセルにおいて前記ハーフブリッジ荷重信号出力手段から出力される2個のハーフブリッジ荷重信号に基づく前記コンベヤが所定距離だけ移動したときの輸送量の比較であるのが好ましい(第9発明)。
【0023】
また、前記相対比較手段による比較に際して、前記荷重信号出力が異常であると特定されたロードセルにおいて前記ハーフブリッジ荷重信号出力手段から出力される2個のハーフブリッジ荷重信号に基づく前記コンベヤが所定距離だけ移動したときの輸送量に基づき前記輸送量のバラツキを減衰させるバラツキ減衰手段を備えるのが好ましい(第10発明)。
【0024】
また、前記出力異常ハーフブリッジ特定手段は、前記出力変化検出手段による比較結果に基づいて、前記異常であると特定されたハーフブリッジについてのハーフブリッジ荷重信号のスパンを補正するスパン補正手段を備えるのが好ましい(第11発明)。
【0025】
また、前記出力異常ハーフブリッジ特定手段は、前記出力変化検出手段による比較結果に基づいて、前記異常であると特定されたハーフブリッジについてのハーフブリッジ荷重信号を、異常であると特定されない方のハーフブリッジについてのハーフブリッジ荷重信号で代替させるハーフブリッジ信号代替手段を備えるのが好ましい(第12発明)。
【0026】
また、前記出力異常ハーフブリッジ特定手段は、前記出力変化検出手段による比較結果と前記相対比較手段による比較結果とに基づいて、前記荷重信号出力が異常であるロードセルを特定した時点で、前記特定したロードセルにおける異常であるハーフブリッジを特定するのが好ましい(第13発明)。
【0027】
本発明において、前記2個のロードセルに対して、基準重量物品の荷重が一定の比率に配分されるように前記基準重量物品を積載する積載機構と、前記2個のロードセルに一定比率配分された基準重量物品の荷重に基づく、前記2個のロードセルから出力される前記2個のハーフブリッジ荷重信号のそれぞれを基準重量参照値として記憶する基準重量参照値記憶手段とを備えるのが好ましい(第14発明)。
【0028】
ここで、前記積載機構に前記基準重量物品を積載することによって前記2個のロードセルに一定比率配分された基準重量物品の荷重信号と、前記2個のロードセルから出力される2個のハーフブリッジ毎の基準重量参照値とに基づいて、前記ロードセルのスパン補正操作が実施されるのが良い(第15発明)。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、コンベヤ上の物品重量の分布に拘わらず、1個のロードセルにおいていずれかの側のハーフブリッジの零点やスパン係数が変動した場合に極めて精確に検出することができ、スパン異常又は零点異常の判定を精確に行うことができる。また、稼働運転中でも出力を補正して運転を継続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係るコンベヤスケールの構造を説明する斜視図
図2】本実施形態のコンベヤスケールにおいて、基準重量ローラを積載した状態を示す正面図(a)、側面図(b)及び(a)の部分拡大図(c)
図3】本実施形態のコンベヤスケールに用いられるロードセルの斜視図
図4】本実施形態のロードセルの回路構成を示すブロック図
図5】本実施形態のコンベヤスケールにおける故障診断回路図
図6】本実施形態のコンベヤスケールの全体システム構成図
図7】ロードセル出力比較比率の変化量のバラツキの説明図
図8】他の実施形態に係るロードセルの回路構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明によるコンベヤスケールの具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
<コンベヤスケールの概略説明>
図1には、本発明の一実施形態に係るコンベヤスケールの構造を説明する斜視図が示されている。図示のように、コンベヤスケール本体1は、コンベヤベルト(以下、「コンベヤ」という。)2を支持する複数個の搬送ローラ3,4,5を備え、これら搬送ローラ3,4,5のうち1個の搬送ローラ4が計量ローラ(以下、「計量ローラ4」という。)にて構成されたものである。計量ローラ4は、両端a点,b点がそれぞれロードセル6,7にて支持され、これらロードセル6,7によりコンベヤ2上を搬送される被計量物の搬送重量(以下、「輸送量」という。)を測定するようにされている。本実施形態においては、ロードセル6,7として、金属弾性体に設けた伸縮起歪部にストレインゲージを貼り付けてなるロバーバルロードセル(2本梁に2箇所起歪部が設けられた平行四辺形型ロードセル)が用いられた例を示す。
【0033】
搬送ローラ3,4,5は相互に間隔L(m)を置いて設置されている。コンベヤ2上の被計量物の重量は、計量ローラ4のa点、b点を中心に左右にL/2の距離の範囲p点〜q点に分布するものが計量ローラ4のロードセル6,7にて検出される(p〜qの範囲は働長と称される。)。また、搬送ローラ3には連結機構(図示せず)を介してパルス発信器8が連結され、コンベヤ2の移動距離、すなわち被計量物の搬送距離に比例したパルス数を発信するようにされている。
【0034】
図2には、ロードセル6,7の出力点検用の基準重量ローラ11を積載した状態が示されている。ロードセル6,7によってL字形状の基準重量支持金具9,10がそれぞれ支持され、この基準重量支持金具9,10の水平部に基準重量ローラ(基準重量物品)11の両端部が支持される。ここで、基準重量支持金具9,10と基準重量ローラ11との係合部には、基準重量支持金具9,10側の突部12aと基準重量ローラ11側の切欠き12bとよりなる位置決め機構12が設けられている。また、基準重量ローラ11は既知の重量を有しており、ロードセルの異常が検出されたときなどに故障ロードセルの特定と出力補正に使用される。
【0035】
なお、上記基準重量ローラ11の代わりに、重量が既知の1つの分銅を用い、左右の基準重量支持金具9,10を連結する支持棒を設け、この支持棒の中心付近の所定位置に位置決め機構を設け、この位置決め機構を介して前記分銅を吊り下げるように構成することもできる。
【0036】
<ロードセルの説明>
図3に示されるように、ロードセル6,7は、取付部13の先端側にロバーバル(平行四辺形)をなす起歪部を有するロバーバルロードセルである。本実施形態では、防水、防塵のため、起歪部を含む起歪体14が金属蛇腹よりなるカバー(図示せず)で覆われたものが使用される。また、起歪体(ロードセル本体部)14には以下に述べる測定回路基板(以下、「測定回路」という。)15が一体的に装着されて、デジタルロードセルの構成をなしている。なお、測定回路15は取付部13の内部に設けられる場合もある。
【0037】
起歪部は2つの梁(ビーム)14a,14bを有し、ビーム14aにはストレインゲージ16,17が、ビーム14bにはストレインゲージ18,19(図3には図示せず)がそれぞれビーム14a,14bの長手方向に沿って貼り付けられている。また、起歪体14の先端側には、計量ローラ4を吊り下げ支持するための荷重支持部(着力部)20が結合されている。こうして、コンベヤ2上に被計量物が載置されると、その被計量物の重量に応じた荷重が起歪部14に作用し、ストレインゲージ17,19は、ゲージ接着面が伸びる方向の曲げ応力を受け、ストレインゲージ16,18は、ゲージ接着面が縮む方向の曲げ応力を受ける。
【0038】
図4に示されるように、ストレインゲージ16,17,18,19は、フルブリッジ回路21を構成するように互いに接続されている。このフルブリッジ回路21において、対向する2つの接続点22,23には、励磁用の直流電圧が印加され、これら接続点22,23と直角に位置する接続点24,25からは力又は荷重の検出電圧が取り出される。
【0039】
上記フルブリッジ回路21に対して、故障診断回路としての増幅・A/D変換回路26及び演算回路27が設けられる。増幅・A/D変換回路26は、2つの電圧参照用の固定抵抗器28,29と、アナログ加算回路30と、2つのアナログ−デジタル変換器(以下、「A/D変換器」と称する。)31,32とを備えている。ここで、固定抵抗器28,29は、互いに直列接続されるとともに、フルブリッジ回路21の接続点22,23にそれぞれ接続されている。また、固定抵抗器28,29とストレインゲージ17,18とにより、ハーフブリッジ回路21aが形成され、固定抵抗器28,29とストレインゲージ16,19とにより、ハーフブリッジ回路21bが形成されている。
【0040】
アナログ加算回路30は、第1演算増幅器33と、第2演算増幅器34と、第3演算増幅器35と、第4演算増幅器36とを備えて構成されている。
第1演算増幅器33において、入力正端子33aはフルブリッジ回路21の接続点24に接続され、入力負端子33bは出力端子33cに接続され、出力端子33cは抵抗器40に接続されている。
第2演算増幅器34において、入力正端子34aは2つの固定抵抗器28,29の接続点41に接続され、入力負端子34bは出力端子34cに接続され、出力端子34cは抵抗器42,43に接続されている。
第3演算増幅器35において、入力正端子35aは回路のアース44に接続され、入力負端子35bは、抵抗器40,42に接続されるとともに、抵抗器45を介して出力端子35cに接続され、出力端子35cはA/D変換器31に接続されている。
第4演算増幅器36において、入力正端子36aはフルブリッジ回路21の接続点25に接続され、入力負端子36bは、抵抗器43に接続されるとともに、抵抗器46を介して出力端子36cに接続され、出力端子36cはA/D変換器32に接続されている。
【0041】
A/D変換器31,32は、アナログ加算回路30からのアナログ荷重信号をデジタル荷重信号に変換するものである。2組のハーフブリッジ回路21a,21bから出力されるアナログ荷重信号eoa,eobは、アナログ加算回路30を経てアナログ荷重信号eoa11,eoa21とされ、これらアナログ荷重信号eoa11,eoa21は、A/D変換器31,32によってデジタル荷重信号Wa11´,Wa21´に変換される。これらデジタル荷重信号Wa11´,Wa21´は、演算回路27に入力されて処理される。
【0042】
図5に示されるように、演算回路27は、入出力回路(I/O)51と、中央演算処理装置(CPU)52と、メモリブロック(MEM)53とを備えて構成されている。こうして、A/D変換器31,32の出力信号は、入出力回路51から中央演算処理装置52を介してメモリブロック53に読み込まれる。ここで、メモリブロック53は、データを入力、出力、演算のために一次記憶するRAMや設定データを継続記憶するEEPROMや所定プログラムを継続記憶するPROMなどの記憶素子(半導体素子)から成るものである。
【0043】
図5に示されるように、本実施形態のロードセル(デジタルロードセル)6,7は、図4に示される増幅・A/D変換回路26と演算回路27による測定回路15と、ロードセル本体部(起歪体)14とが一体的に装備され、シリアルラインcにて後述する表示操作装置60に接続される構成である。なお、ロードセルからハーフブリッジ回路21a,21bのアナログ荷重信号を表示操作装置60の演算回路まで配線によって伝送し、表示操作装置60の演算基板において測定、A/D変換、演算を行わせても良いが、ロードセル単体毎に同一負荷に対して同一の出力変化するスパン調整やロードセルから表示操作装置60への配線本数の削減の観点から、デジタルロードセルの構成とするのがより好適である。
【0044】
ロードセル6,7へは、コンベヤ2が所定の距離移動する毎にパルス発信器8から発信されるパルスが入出力回路51を介して受信することによって、所定のパルス数で定める所定の区間毎の積算重量値を求めて区間輸送量とし、区間毎に輸送量がシリアルラインcに出力される。
【0045】
<コンベヤスケール及び表示操作装置の回路構成の説明>
図6に示されるように、コンベヤスケール本体1の各ロードセル6,7は、表示操作装置60の演算回路とシリアル信号通信用の共通のシリアルラインcを介して接続され、表示操作装置60側がマスターコントローラ、ロードセル6,7側がスレーブコントローラをなし、表示操作装置60側からのポーリングによって双方向にデータが通信される。より具体的には、シリアルラインcは、後述する基本区間の輸送量を表示操作装置60へ出力するとともに、表示操作装置60から零点調整時の零点記憶、初期重量記憶、スパン係数の算出記憶などの操作指令信号(コード)が伝送される。
【0046】
表示操作装置60は、コンベヤスケール本体1のロードセル6,7とシリアルラインcを介して接続される入出力回路(I/O)61と、中央演算処理装置(CPU)62と、メモリブロック(MEM)63と、電源64とを備えている。また、入出力回路61には、表示器(DIS)65やキースイッチ(KEY)66などが接続されており、重量値等は表示器65に表示され、データの設定や零点調整などの操作はキースイッチ66によって行われる。
【0047】
<デジタルロードセルの動的計測、静止計測モードの説明>
表示操作装置60はキースイッチ66によって稼働運転ON又はOFFが設定される。表示操作装置60で稼働運転ONがキースイッチ66によって設定されると、表示操作装置60は動的計測モードになり、動的計測モード指令信号がコンベヤスケール本体1のロードセル6,7へ送られる。また、稼働運転OFFがキースイッチ66によって設定されると、表示操作装置60は静止計測モードになり、静止計測モード指令信号がコンベヤスケール本体1のロードセル6,7へ送られる。
【0048】
図4に示されたデジタル荷重信号Wa11´,Wa21´は、後述するようにパルス発信器8から発信される1パルス周期に比べ十分短い時間間隔Δt(例えばΔt=1msec)でもってアナログ荷重信号eoa11,eoa21をA/Dサンプリングしたデジタル信号であって、演算回路27にてコンベヤ移動による機械的振動などを減衰させるべく平滑フィルタリング処理され、逐次平滑フィルタよりWa11,Wa21となって出力される。以上の演算操作は動的/静止計測いずれのモードでも実施される。
【0049】
表示操作装置60よりロードセル6に静的計測モードが指定されると、パルス発信器8から演算回路27に与えられる1パルスの時間間隔の間に上記平滑フィルタより出力された1個又は複数個のデジタル荷重信号を平均し、稼働運転時において後述するハーフブリッジ信号W11を求める式へのWa11として与え、荷重信号が算出される。ハーフブリッジ信号W21についても、またロードセル7のハーフブリッジ信号W12,W22についても同様である。
【0050】
表示操作装置60よりロードセル6,7に動的計測モードが指定されると、ロードセル6,7は表示操作装置60とともに動的計測モードになる。この動的計測モードにおいては、パルス発信器8からの発信パルスに応じて、発信パルス数が後述する基本区間として定められたパルス数N0に到達する毎に、1パルス毎に算出されるW11,W21,W12,W22に基づいて、パルス数N0間にコンベヤ2上を輸送される被計量物のハーフブリッジ出力1,2に対応する輸送量である基本区間輸送量W11mn,W21mn,W12mn,W22mnとして算出し、この算出した基本区間輸送量の値を基本区間の測定が完了する毎に、シリアルラインcを通して出力する。稼働運転ON時には、動的計測モードを継続してロードセル6,7から出力された基本区間の輸送量に基づいて、表示操作装置60において、後述するようにいずれかのロードセル出力の変動の異常があれば警報を発する。なお、2つのハーフブリッジ出力をそれぞれハーフブリッジ出力1,2と称する。
【0051】
これに対して、表示操作装置60で稼働運転OFFがキースイッチ66によって設定されると、ロードセル6,7は表示操作装置60とともに静止計測モードになる。この静止計測モードにおいては、サンプリング間隔Δt時間毎に出力されたA/D変換器31,32からのデジタル荷重信号は、例えばT1=100・Δt=100msec毎にM個の移動平均又はM個ずつの平均値を算出し、調整、表示用デジタル荷重信号Wa11,Wa21,Wa12,Wa22としてロードセル6,7のハーフブリッジ出力1,2の荷重信号W11,W21,W12,W22を算出するために使用される。なお、この静止計測モードにおけるロードセル出力荷重信号W11,W21,W12,W22はシリアルラインcを通して表示操作装置60へ伝送され、表示される。
【0052】
<ロードセル単体でのハーフブリッジ出力信号のスパン調整についての説明>
ロードセル6,7の異常判定処理に関して、ハーフブリッジ出力1,2の荷重信号W11,W21,W12,W22の処理には、それぞれ独立してスパン係数、零点重量記憶メモリ、初期重量記憶メモリを設ける。
ロードセル6,7単体の調整においては、ロードセル6,7のシリアルラインcが、図6に示されるのと同じ構成のロードセル調整装置のシリアルラインcと接続され、ロードセル6,7への供給電源がロードセル調整装置から供給される。ロードセル6,7は負荷荷重試験装置にセットされる。また、ロードセル調整装置には初期荷重記憶スイッチ、スパン係数設定スイッチ、調整モード計測スイッチが設けられる。
【0053】
ロードセル調整装置において調整用静止計測モードが指定されると、調整モード計測スイッチを押すことにより調整用静止計測モード指令コードがシリアルラインcを通じてロードセル6,7に伝送され、ロードセル6,7は静止計測モードの一つである調整用静止計測モードに指定される。
上述したように静止計測モードではWa11がT1時間毎に生成される。ハーフブリッジ出力1の荷重信号W11は、次式にて算出される。
W11=K11・(Wa11−Wi11´)
【0054】
調整開始時点では、ロードセル6の演算回路27内でスパン係数はK11=1に設定され、初期荷重記憶メモリWi11´にはロードセル6の無負荷時の出力値が記憶される。W11の値はWa11の内容が更新される毎(T1毎)にM個の移動平均値又はM個単位毎の平均値が算出され、表示値としてコード付きでロードセル調整装置へ送られ、該ロードセル調整装置に表示される。
【0055】
作業者がロードセル6を無負荷にし、上記表示値を観測しながら初期零点記憶キーを押すと、初期零点記憶操作指定信号がロードセル6の演算回路27に送られる。このときW11はロードセル6の無負荷時における零点移動である。また、W11の表示値が初期零点量としてロードセル6のメモリブロック53内の荷重記憶メモリWi11´に記憶される。ここで、Wi11´=Wa11になるから、上記式においてW11はW11=0に変わる。
【0056】
既知の荷重値Msは予めロードセル調整装置に設定される。Msの値が設定され、基準値記憶キーが押されると、基準重量Msを意味するコード付きでロードセル6へ送られる。
次に、既知の荷重値Msを持つ基準荷重をロードセル6に掛ける。すると、W11は基準荷重だけ増加変化し、表示値もそれだけ増加する。W11の表示値を観測しながら、作業者がロードセル調整装置にてスパン記憶スイッチを操作すると、スパン係数記憶指令コードがロードセル6へ伝送され、ロードセル6の演算回路27にてK11=Ms/(Wa11−Wi11´)と演算され、K11の値がスパン係数として演算される。この算出されたスパン係数K11は当該ロードセルのスパン係数としてロードセル6内のメモリブロック53に登録される。こうして、W11の表示値は、スパン係数が1よりK11に置き換えられ、Msの値となる。
これ以降、ロードセルが調整用静止計測モードに指定されていれば、スパン係数K11の値の定まったW11=K11・(Wa11−Wi11´)の値がロードセルよりWa11の内容が更新され、W11が更新される毎に出力される。
【0057】
ハーフブリッジ出力2の荷重信号W21も、ロードセル6の演算回路27内でハーフブリッジ出力1の処理に続いて、初期零点記憶操作についても、スパン係数K21の算出についても、全く同様に実施される。こうして、W21もW11と共にロードセル調整装置へ順次シリアルに送られ、ロードセル調整装置では2つのハーフブリッジ出力が同時に並列表示される。
【0058】
ロードセル7についてのハーフブリッジ出力1,2の調整も同様に行われる。荷重信号W12、W22については、同じ基準荷重Msが使用され、この基準荷重Msに対してロードセル6の両方のハーフブリッジ出力1,2と同じ大きさに出力変化するように、ロードセル7のハーフブリッジ出力1,2の荷重信号のスパン係数K12、K22が設定される。こうして、2つのロードセル6,7の2つのハーフブリッジ出力1,2は同じ負荷荷重に対して全て同じ大きさに出力変化するように、中央演算処理装置52の中のハーフブリッジ荷重信号出力部(本発明における「ハーフブリッジ荷重信号出力手段」に対応する。)において調整され、出力される。
【0059】
<ロードセル装着後の調整についての説明>
次に、上述のように単体で調整されたデジタルロードセルをコンベヤスケールの計量ローラ4の両端に装着し、図6に示されるように、ロードセル6,7のシリアルラインcを表示操作装置60のシリアルラインcと接続し、ロードセル6,7への供給電源も表示操作装置60の電源64から与える。なお、調整時点でロードセル6,7は正常な出力であるとする。
【0060】
表示操作装置60に接続されると電源ONの立ち上がりで稼働運転OFFとなり、この稼働運転OFFに対応してロードセル6,7へ静止計測モード指令が伝送される。静止計測モード指令を受けると、ロードセル6の演算回路においてハーフブリッジ出力1,2の荷重信号W11,W21と、ロードセル7の演算回路においてハーフブリッジ出力1,2の荷重信号W12,W22は、上記式に零点記憶メモリWz11,Wz21,Wz12,Wz22と新たな初期荷重メモリWi11,Wi21,Wi12,Wi22の内容によって下記式(1)が設定される。
ロードセル6のハーフブリッジ出力1,2の荷重信号:
W11=K11・(Wa11−Wi11)−Wz11
W21=K21・(Wa21−Wi21)−Wz21
ロードセル7のハーフブリッジ出力1,2の荷重信号:
W12=K12・(Wa12−Wi12)−Wz12
W22=K22・(Wa22−Wi22)−Wz22 ・・・(1)
【0061】
次に、コンベヤスケールとしての初期荷重値を記憶させる作業を実施する。その際、コンベヤ2を計量ローラ4から離脱させることを作業基準とする。
以下、ロードセル6について述べる。まず、静止計測モードに指定されたロードセルにおいて、上述のようにWa11,Wa21がT1時間毎に生成されて表示操作装置60へ伝送され、表示操作装置60の中央演算処理装置62でWa11,Wa21の複数個の平均値が算出されて上記式(1)に入れられ、W11,W21の値として、M個の移動平均値又はM個単位毎の平均値が算出され、表示操作装置60へ伝送され、表示器65に表示される。
【0062】
次いで、表示操作装置60において初期荷重記憶モードONを設定する。初期荷重記憶モードONが指令されると、式(1)のW11,W21において零点記憶メモリWz11,Wz21と初期荷重メモリWi11,Wi21に0がセットされる。なお、初期荷重記憶モード時に、K11,K21としては1の値が使用される。こうして、コンベヤ2を計量ローラ4から離脱させた状態で表示操作装置60の初期荷重記憶スイッチを押すと、表示操作装置60の中でスイッチが操作された時点のW11,W21のM個の平均値でもってそれぞれロードセル本体の初期荷重Wi11,Wi21として決定され、ロードセル6の演算回路27におけるメモリブロック53の初期荷重メモリに登録される。
【0063】
次に、表示操作装置60にて初期荷重記憶モードをOFFに設定する。そして、上記式(1)のK11,K21として、ロードセル単体調整時点でメモリブロック53に登録されている値を呼び出し、1の値から置き換える。さらに、零点記憶メモリWz11,Wz21からデータを呼び出し、W11,W21を求める式(1)に代入する操作を行う。
【0064】
本体の初期荷重Wi11,Wi21を記憶させた後に、計量ローラ4への異物付着や周囲温度の大きい変化などによってコンベヤ2を計量ローラ4から離脱させた状態で表示操作装置60の表示器65のW11,W21に0でない数値が現れる場合は零点変動とみなし、表示操作装置60の零点調整スイッチを押すと、零点調整指令が表示操作装置60からシリアルラインcを通じてロードセル6へ伝送される。ロードセル6の演算回路27が零点調整指令信号コードを受け取ると、式(1)において、現在のW11,W21の値をそれぞれWz11,Wz21に加算することによって、ロードセル6が個別に零点調整される(本発明における「個別零点調整手段」に対応する。)。なお、上記零点調整スイッチの操作は稼働運転OFFのときのみ有効である。
ロードセル7についてもロードセル6と同様に実施される。
【0065】
ロードセル6,7がそれぞれハーフブリッジ出力1,2を個別に零点調整できる構成は重である。稼働運転に入る前にロードセル6,7の各ハーフブリッジが個別に零点調整され、稼働運転中に出力変動の異常が検出され、運転を停止してその原因を調べるとき、全てのハーフブリッジ出力を無負荷状態で表示させれば(本発明における「ハーフブリッジ荷重信号表示手段」に対応する。)、無負荷荷重の表示量が稼働運転中のハーフブリッジ別の零点変動量を表すことになるので、いずれのハーフブリッジ出力が稼働運転中にどれだけ零点移動したかを識別することができる。また、個別に零点調整が行えることによって、ハーフブリッジ別にスパン変動を調べることも可能になる。
【0066】
次に、ロードセル6,7へ基準重量ローラ11を負荷してそれぞれのロードセルの出力のスパン変化を調べるための操作を行う。図2に示されるように、基準重量ローラ11を所定位置に所定の積載方向に積載する。このときできるだけ厳密な位置決め機構12を有することが望ましい。しかし、そのようにしても基準重量ローラ11の分布荷重、積載位置によってロードセル6,7に等しい荷重が負荷されるとは限らない。
【0067】
基準重量ローラ11を負荷することによるロードセル6,7の出力値を基準重量参照値として記憶させるため、ロードセル6,7の演算回路のメモリブロック内に基準重量参照値記憶メモリ(本発明における「基準重量参照値記憶手段」に対応する。)を用意する。このメモリをそれぞれハーフブリッジ出力1,2別に、Ws11,Ws21;Ws12,Ws22とする。ロードセル6,7のハーフブリッジ出力W11,W21;W12,W22の値として、M個の平均値ws11,ws21;ws12,ws22が表示器65に表示される。
【0068】
作業者がその表示を確認して表示操作装置60の基準重量登録スイッチを押すと、ロードセル6,7のスパンが正常な時の登録値としてそれらの値が各ロードセルの基準重量参照値記憶メモリWs11,Ws21;Ws12,Ws22に登録される。この登録された値は、表示操作装置60の基準重量参照値呼び出しスイッチを押すと、基準重量参照値呼び出し指令がロードセル6,7の演算回路へ出力され、指令を受けた演算回路から基準重量参照値記憶メモリWs11,Ws21;Ws12,Ws22に登録された値が呼び出され、表示操作装置60へ伝送され、表示器65に表示される。なお、基準重量ローラ11の重量を記憶させるときも、零点調整と同様、コンベヤ2を計量ローラ4から離脱させることを作業基準とする。また、基準重量参照値の登録が完了するとコンベヤ2を計量ローラ4に接触させる。
【0069】
<稼働運転時の出力についての説明>
パルス発信器8はコンベヤ2がΔL(m)進む毎に1パルスを出力するものとし、働長をL(m)とし、これら1パルス当たりのコンベヤ移動距離ΔLと、働長Lとを表示操作装置60に設定する。コンベヤ重量などを初期荷重として差し引くものとし、L(m)のコンベヤ働長部にW(kg)の負荷が積載されているとき、1本の計量ローラ4を支持するロードセル6の被計量物の負荷荷重による出力をW1、ロードセル7の出力をW2とすると、コンベヤ2の単位長さ当たりのロードセル6,7への負荷荷重はそれぞれW1/L,W2/L(kg/m)である。
【0070】
コンベヤスケールの稼働運転時は、パルス発信器8から1パルス発信される度にロードセル6,7の出力W1,W2を測定する。コンベヤ2は1パルス当たりΔL(m)進むので、1パルス当たりの輸送量はロードセル6の負担分がW1・(ΔL/L)(kg)、ロードセル7の負担分がW2・(ΔL/L)(kg)となり、パルス数とコンベヤ移動距離は比例する。すなわち、所定のパルス数でもって輸送量を求めることは、コンベヤ2の所定の移動距離における輸送量を求めることを意味する。
【0071】
表示操作装置60において予め比較的短い距離の輸送量を規定するため、基本区間をパルス数N0の値として設定し、またコンベヤ2の無負荷輸送量(コンベヤ2に被計量物を積載していない状態での輸送量)を算出するためのコンベヤ移動距離をパルス数Nz(Nz>N0)として設定する。これらN0,Nzの値は表示操作装置60のメモリブロック63に登録されるとともに、ロードセル6,7の演算回路27に伝送され、それぞれの演算回路27のメモリブロック53に登録される。
【0072】
表示操作装置60において稼働運転スイッチをONにし、表示操作装置60を動的計測モードにするとともに、ロードセル6,7へ動的計測モード指令を送ると、ロードセル6,7の演算回路27は動的計測モード指令を受けて動的計測モードに切り替わる。この動的計測モードにおいても、ロードセル6,7のアナログ荷重信号はA/D変換され、フィルタを通してΔt=1msecの時間間隔で連続的にデジタル荷重信号Wa11,Wa21,Wa12,Wa22が生成されている。なお、パルス発信器8の1パルスの時間間隔は、最も短くてもΔt=1msecを超える長さ、すなわち1kHzより遅い周期であるような仕様にされる。
【0073】
この動的計測モードにおいては、パルス発信器8から受ける1パルス毎に、1パルスの間に検出したWa11,Wa21;Wa12,Wa22を加算して平均値が算出され、その結果が式(1)のWa11,Wa21;Wa12,Wa22に代入される。こうして、1パルス毎のW11,W21;W12,W22の値を求める処理が連続的に実施される。なお、動的計測モードであっても極めてコンベヤ速度が遅く、1パルスの時間間隔が極めて長くなる場合もあるので、加算回数はカウンタで計数されるとともに、予めロードセル6,7の演算回路27には加算飽和回数が設定されている。
【0074】
稼働運転における基本区間輸送量として、ロードセル6のハーフブリッジ出力1が演算回路27にて上述のように1パルス毎にWa11が求まる度にW11がW111,W112,W113,・・・と算出され、パルス数q=N0個である基本区間輸送量Q110´は、次式(2)にて求められる。
【数1】
同様に、ロードセル6のハーフブリッジ出力2について、次式(3)にて求められる。なお、ロードセル7のハーフブリッジ出力1,2についても同様に求められる。
【数2】
ここで、走行時のコンベヤ無負荷による基本区間輸送量(=コンベヤ無負荷輸送量)を記憶させるメモリを、ロードセル6のハーフブリッジ出力1においてW11dz、ハーフブリッジ出力2においてW21dz(W11dz,W21dzについては後述する。)とすると、基本区間におけるコンベヤ2上を輸送される被計量物のロードセル6,7についてのハーフブリッジ出力1,2毎の輸送量Q110,Q210;Q120,Q220は、次式(4)にて求められる。
Q110=Q110´−W11dz
Q210=Q210´−W21dz
Q120=Q120´−W12dz
Q220=Q220´−W22dz ・・・・・(4)
これらQ110,Q210の値はパルス数N0毎にロードセル6から、またQ120,Q220の値はパルス数N0毎にロードセル7から表示操作装置60へ伝送される。一方、コンベヤ2としての基本区間輸送量Qt0は、表示操作装置60内の演算回路で次式(5)にて演算され、Q110,Q210,Q120,Q220の値が表示器65に表示される。なお、ハーフブリッジ出力1,2に基づく輸送量の和を2で割るのは、ロードセル6,7への負荷荷重に相当する信号をハーフブリッジ出力1,2がそれぞれ単独で出力するように調整しているためである。
Qt0=(Q110+Q210+Q120+Q220)/2・・・・・(5)
【0075】
最初はW11dz,W21dz,W12dz,W22dzが、コンベヤ走行時のコンベヤ2の荷重による輸送量がQ110,Q210,Q120,Q220及びQt0として表示される。表示操作装置60において無負荷輸送量記憶モードスイッチを押すと、ロードセル6の演算回路にて、ハーフブリッジ出力1によるパルス数q=Nz個である基本区間の輸送量Q110´´が、また、ハーフブリッジ出力2によるパルス数q=Nz個である基本区間の輸送量Q210´´がそれぞれ次式(6)によって求められる。
【数3】
引き続き、ロードセル6のハーフブリッジ出力1について基本区間のコンベヤ無負荷輸送量W11dzが、また、ハーフブリッジ出力2について基本区間のコンベヤ無負荷輸送量がそれぞれ次式(7)にて算出され、メモリW11dz,W21dzの内容がそれら算出値に置き換えられる。
【数4】
また、稼働運転時のロードセル6,7のハーフブリッジ出力1,2による基本区間輸送量は式(4)に応じて出力される。
【0076】
この操作によって、基本区間輸送量Q110,Q210,Q120,Q220及びQt0は、コンベヤ2上が無負荷であれば、ほぼ零の値を連続的に表示するようになる。また、コンベヤ2上の物品重量に応じた基本区間輸送量を連続的に表示するようになる。
【0077】
<ロードセルの出力異常検出についての説明>
次に、稼働運転中に行われるロードセルの出力異常を検出するための演算処理について説明する。この演算処理は表示操作装置60の演算回路における中央演算処理装置62の中の出力異常検出部(本発明における「出力異常検出手段」に対応する。)において実行される。表示操作装置60へロードセル6,7についての基本区間輸送量Q110,Q210,Q120,Q220が伝送される毎に、ロードセル6についてハーフブリッジ出力1,2の基本区間輸送量比率R1と、ロードセル7についてハーフブリッジ出力1,2の基本区間輸送量比率R2とを次式(8)により算出し、式(9)に示されるように、予め設定された許容値Rhと比較する(出力変化検出手段)。
R1=(Q110/Q210)−1
R2=(Q120/Q220)−1 ・・・・・(8)
|R1|又は|R2|>Rh ・・・・・(9)
式(9)のいずれかが成立すれば、成立した方のロードセルが異常であると特定される。なお、R1,R2は出力比較比率と称する。この出力比較比率について、ロードセルへの負荷荷重の増減による出力変動については相殺される。出力比較比率の変動は1つのロードセルの中でいずれかのハーフブリッジ出力のスパン又は零点の変動を意味する。
【0078】
稼働運転に入る前にロードセル6,7はハーフブリッジ別に無負荷状態で零点調整する。ロードセル6,7のハーフブリッジ出力1,2の零点、又はスパンが稼働運転中に変動すれば、基本区間輸送量はハーフブリッジ出力1,2に基づく積算値であるから比例しており、ハーフブリッジ出力1,2の変動率と同じ変動率がR1又はR2の値に現れる。同じロードセルにおけるハーフブリッジ出力の比較であるから、ロードセルの負荷荷重が変動しても比較結果はほとんど影響を受けない上に複数個の出力信号の積算値である輸送量をもって比較しているので、電気ノイズや機械振動ノイズの影響も減衰しているので精確な比較を行うことができる。
【0079】
ただし、この段階ではいずれのハーフブリッジが異常であるかは特定できない。異常なハーフブリッジの特定は稼働運転を停止し手動判定する方法と、稼働運転を継続しながら自動判定する方法がある。これらについては後述する。
【0080】
<自動による異常なハーフブリッジの特定についての説明>
異常なハーフブリッジを自動的に特定するための演算処理は、表示操作装置60の演算回路における中央演算処理装置62の中の出力異常ハーフブリッジ特定部(本発明における「出力異常ハーフブリッジ特定手段」に対応する。)において実行される。特定のロードセルのいずれかのハーフブリッジ出力のスパン又は零点変動が異常な大きさであると判定された場合、稼働運転を停止させることなく、自動的に、いずれのハーフブリッジ出力のスパン又は零点が増加方向又は減少方向に変動したかについては、特定ロードセルのハーフブリッジ出力による基本区間輸送量と、残りのロードセルに出力による基本区間輸送量との関係を以下のように定義して行う。
【0081】
すなわち、判定の基本は、異常と特定されたロードセルのハーフブリッジ出力1,2のそれぞれによる基本区間輸送量と他の正常なロードセルのハーフブリッジ又はフルブリッジ出力による基本区間輸送量とを比較し(相対比較手段)、この比較結果の変化の状況により判定する。ここでは、正常なロードセルのフルブリッジ出力による基本区間輸送量と比較することとする。
【0082】
上述のロードセル6,7のハーフブリッジ出力1,2についての基本区間輸送量Q110,Q210,Q120,Q220において、ロードセル6,7のフルブリッジ出力W1,W2はそれぞれ
W1=(1/2)・(W11+W21)
W2=(1/2)・(W12+W22)
であるから、ロードセル6,7におけるフルブリッジ出力W1,W2による基本区間輸送量Q10,Q20は、次式(10)となる。
Q10=(1/2)・(Q110+Q210)
Q20=(1/2)・(Q120+Q220) ・・・・・(10)
これらの値は各ロードセル6,7から表示操作装置60へ伝送されたQ110,Q210,Q120,Q220を用いて表示操作装置60にて算出される。また、これ以降の演算、判定についても表示操作装置60にて行われる。
【0083】
特定のロードセルのハーフブリッジ出力と、他のロードセルのフルブリッジ出力の基本区間輸送量において、次式(11)を相対比率として定義する。
ロードセル6について
r11=(Q110/Q20)−1
r21=(Q210/Q20)−1
ロードセル7について
r12=(Q120/Q10)−1
r22=(Q220/Q10)−1 ・・・・・(11)
ハーフブリッジ出力の比較(出力比較比率)によって出力の異常なロードセルが特定されたとき、いずれのハーフブリッジ出力が異常で、かつその出力が増加また減少しているかの判定は上記の相対比率の増減の判定によって行う。
【0084】
ロードセル6の異常が特定された場合については次の論理によって判定を実施する。
ロードセルを単体で調整する時点で基準の負荷荷重に対する各ロードセルのフルブリッジ出力変化と2つのハーフブリッジ出力変化は等しくなるようにそれぞれのスパンが調整・設定され、かつ零点も調整されているので、全てのロードセルのハーフブリッジ出力が正常で、コンベヤ2上の物品の負荷荷重がロードセル6,7に均等に配分されるのであれば、任意の荷重負荷に対して、ほぼ、r11=r21=r12=r22=0である。
【0085】
ここで、例えばハーフブリッジW11の出力が変化率eだけW2に比べて変化すると、相対比率r11も変化率eだけ変化する。ロードセル6のいずれかのハーフブリッジ出力が異常である場合に、いずれのハーフブリッジが異常であるかについての自動判定の判定論理は以下のとおりである。
〔判定論理1〕
式(9)において、R1>Rhによる異常検出があるときには、W2の出力と比べて
1)W11の出力がeを超えて増加、W21の出力は正常
2)W11の出力は正常、W21の出力がeを超えて減少
のいずれかであるから、r11の値が増加変化していれば1)による故障であり、r21の値が減少変化していれば2)による故障である。
〔判定論理2〕
式(9)において、R1<―Rh=−eによる異常検出があるときには、W2の出力と比べて
1)W11の出力がeを超えて減少、W21の出力は正常
2)W11の出力は正常、W21の出力がeを超えて増加
のいずれかであるから、r11の値が減少変化していれば1)による故障であり、r21の値が増加変化していれば2)による故障である。
なお、他のロードセル7のハーフブリッジ出力W12,W22については、ロードセル6のフルブリッジ出力W1に基づく基本区間輸送量と比較され、同様に判定される。
【0086】
ところで、コンベヤスケールにおいて、1)コンベヤ2上の物品がたとえ一様に分布し、均一な密度分布であったとしても、物品の負荷荷重がロードセル6,7に1:1に配分されるとは限らない。コンベヤ位置のロードセルに対する固定的な偏り、コンベヤ上を搬送される物品位置のロードセルに対する固定的な偏りが存在する場合がある、2)一般にコンベヤ上を搬送される物品は一様でなく、密度も均一でない、ので、これら1)2)の状況を考慮に入れた上で異常判定を行う必要がある。
【0087】
上記1)に関して、ロードセルのハーフブリッジ出力又はフルブリッジ出力に基づく輸送量に1:1でない固定的な比率が存在するものとして、各ロードセルが正常な時点の相対比率を求め、稼働運転継続中の相対比率との差を求めることによって固定的な偏差を相殺するようにする。上記r11において固定比率がr11=(r21=)k1/k2であるとし、ロードセル6のハーフブリッジ出力1がeだけ変化するとすれば、次式が成り立つ。
r11=(k1/k2)・(1+e)=(k1/k2)+(k1/k2)・e
・・・・・(12)
【0088】
式(12)において、k1/k2の値は不明であるから、スパンや零点変動による出力の変化率eが0の場合に、r11=k1/k2を基準値1と比較したとき、その値が1と異なっていてもロードセルの出力変動によってそうなったのか、搬送物品の偏りによってそうなったのかどうかは不明である。したがって、コンベヤによる物品の搬送状態を特徴づける値としてロードセルが正常な状態におけるr11=r11iを求め、稼働運転時のr11=r11vを求めてその間の変化量を次式
D11=r11v−r11i=(k1/k2)・e ・・・・・(13)
として変化量(k1/k2)・eを評価するようにすれば、k1/k2≠1であるから、この変化量はeではないが、十分大きい基本輸送量を見込めばk1/k2は約1であるのでほぼeに近い変化量を評価することができる。
【0089】
なお、異常判定の精度を要求しない場合にはr11vのみの1からの変化量、又は上述の基準重量ローラ11の測定を実施したときの荷重ws1,ws2を基準重量参照値記憶メモリWs1,Ws2から呼び出してk1/k2=ws1/ws2=kwsを導き、このkwsからの変化量を判定するようにしても良い。
【0090】
上記2)に関して、基本区間輸送量には大きいバラツキが存在する。基本区間輸送量もコンベヤ2が所定距離だけ移動したときの積算輸送量であるからその間のバラツキ分をある程度減衰させることができるが、バラツキの大きさを十分減衰させるため、より長い移動距離による積算輸送量をもって判定を行う。また、バラツキの大きさは定量評価し、異常判定の許容値を実ラインのバラツキの大きさに基づいて厳密な値に設定することによって、おおよその大きさの許容値設定による異常判定タイミングの遅れを回避できるようにする。
【0091】
判定のための評価区間として十分に長い移動距離を設定すれば、その間で分布状態や密度が平均化されバラツキが減衰されることになるが、移動距離を長くするとそれだけ測定値を求めるのに時間がかかってしまい、異常判定のタイミングが遅れるという問題がある。また、移動距離を長くしても、最終的にバラツキを0にすることができないことから、異常判定のための境界値を決めるには、実際に生じているバラツキ量に基づいて行う必要がある。
【0092】
そこで、以下の処理を実行する。すなわち、上述したように、ロードセルの出力が正常であることを点検した状態の直後から稼働運転を開始し、ロードセル6,7のハーフブリッジ出力1,2についての基本区間の輸送量である、発信パルス数N0個のデータの加算値である基本区間輸送量Q110,Q210,Q120,Q220が得られると、これらの値を表示操作装置60へ伝送する。表示操作装置60にはv個のデータがストアできるシフトレジスタを用意しておき、伝送された基本区間輸送量Q110,Q210,Q120,Q220を受け取る度に、式(8)に示された出力比較比率R1,R2と、式(11)に示された相対比率r11、r21;r12、r22とを算出し、以下の分類集計演算を行う。この分類集計演算が必要な理由は、出力比較比率に対応させ、ハーフブリッジ出力とフルブリッジ出力に基づく長い移動距離の輸送量の相対比率を求めることによって、相対比率とのバラツキ成分を減衰させた上で、出力のスパン異常又は零点異常を精確に評価するためである。
【0093】
〔分類集計演算〕
ロードセル出力が正常に近い状態(下記1)及び3))における相対比率と、ロードセル出力が異常に近い状態(下記2)及び4))における相対比率を、出力比較比率(出力変化率)の範囲によって分類して統計データを求めるために集計する。ここで、ハーフブリッジ出力1,2のスパン異常又は零点異常を判定する出力比較比率の許容値をRh(=e)とする(Rhの値は予め設定される。)。
【0094】
以下、ロードセル6のハーフブリッジ出力のデータ処理について述べる。なお、ロードセル7のハーフブリッジ出力のデータ処理についてもそれぞれレジスタを設けて同様に並列に実行される。
式(8)の出力比較比率R1と、式(11)の相対比率r11、r21とを算出して、
1)0<R1≦(Rh/4)の範囲
レジスタR11aにr11をストア、レジスタR11a´にr11をストア、レジスタR21aにr21をストア、レジスタR21a´にr21をストアして、回数カウンタCA1aをインクリメントする。
この1)の範囲では、R1ができるだけ0に近い時点の値のr11,r21の値、すなわちr11,r21の変化ができるだけ小さい時点の値を扱う方が下記2)の範囲の集計値との差(下記D11,D21)が大きくなって判定が精確になるので、R1が0に近い間にr11,r21を集める。
シフトレジスタにv個集めた時点でストアを停止させ、下記の正常時の平均値r11ai,r21aiと正常時の標準偏差σ11ai,σ21aiを算出する。一方、ロードセルが異常になる変化が早く、R1が初めてR1>(Rh/4)になった時点で集計回数がv個に至らなかった場合には、自己復帰不可能の旨を警報すると同時にロードセル6の出力異常も警報・サイン表示する。
【0095】
2)R1>(3/4)・Rhの範囲
レジスタR11bにr11をストア、レジスタR11b´にr11をストア、レジスタR21bにr21をストア、レジスタR21b´にr21をストアして、回数カウンタCA1bをインクリメントする。
この2)の範囲では、R1ができるだけRhに接近した時点の値のr11,r21の値、すなわちr11,r21の変化ができるだけ小さい時点の値を扱う方が上記1)の範囲の集計値との差(下記D11,D21)が大きくなって判定が精確になるので、v個のメモリからなるシフトレジスタを用意し、r11,r21とr11,r21のv個分のストアが完了すると、最も古い集計値を捨てて新たな集計値をシフトレジスタにストアし、シフトレジスタには常に最新のv個のデータが保存されるようにし、R1>Rhになった時点で下記の異常時の平均値r11av,r21avをシフトレジスタの内容を用いて求める。また、異常時の標準偏差σ11av,σ21avもシフトレジスタの内容に基づいて算出する。
【0096】
3)−(Rh/4)<R1≦0の範囲
レジスタR11cにr11をストア、レジスタR11c´にr11をストア、レジスタR21cにr21をストア、レジスタR21c´にr21をストアして、回数カウンタCA1cをインクリメントする。
この3)の範囲での集計は上記1)の範囲での集計と同様に実施する。
【0097】
4)R1<−(3/4)・Rhの範囲
レジスタR11cにr11をストア、レジスタR11d´にr11をストア、レジスタR21dにr21をストア、レジスタR21d´にr21をストアして、回数カウンタCA1dをインクリメントする。
この4)の範囲での集計は上記2)の範囲での集計と同様に実施する。
【0098】
R1の値が、R1>Rh又はR1<−Rhになったとき、ロードセル6の異常を検出するとともに、いずれのハーフブリッジのスパンが異常かについて、上記集計データを用いて判定するものとする。すなわち、基本区間の輸送量を読み込んでレジスタへ集計する中で、
i)R1>Rhが成立したとすると、上記1)2)の集計結果を持って比較判定する。
また、
ii)R1<−Rhが成立したとすると、上記3)4)の集計結果を持って比較判定する。
【0099】
i)R1>Rhが成立したときには、
・上記1)の0<R1≦(Rh/4)の範囲の集計レジスタのデータを使用してr11の平均値r11aiと標準偏差σ11ai及びr21の平均値r21aiと標準偏差σ21aiを求める。
・上記2)のR1>(3/4)・Rhの範囲の集計レジスタのデータを使用して異常時のr11の平均値r11avと異常時の標準偏差σ11av及びr21の平均値r21avと標準偏差σ21avを求め、r11,r21の正常時から異常時への変化量D11,D21を、次式(14)にて算出する。
D11=r11av−r11ai
D21=r21av−r21ai ・・・・・(14)
【0100】
K1´=k1/k2と置くと、R1の値が上記1)の0<R1≦(Rh/4)の範囲の場合には、r11としてはほとんどK1´〜K1´・(1+Rh/4)の値が集計される。一方、r21としてはほとんどK1´・(1−Rh/4)〜K1´・(1+Rh/4)の値が集計される。
また、R1の値が上記2)のR1>(3/4)・Rhの範囲の場合には、r11としてはほとんどK1´・(1+(3/4)・Rh)〜K1´・Rhの値が集計される。一方、r21としてはほとんど−K1´・(1−Rh/2)〜K1´・(1+Rh/2)の値が集計される。
【0101】
集計値を平均すると、r11av≒K1´・{1+(7/8)・Rh}となり、またr11aiはR1の値が上記1)の範囲であるから、r11ai≒K1´・{1+81/8}・Rh}となる。一方、r21の方はいずれの平均値もK1´に近い値となる。
【0102】
K1´の値は上述のように正確には1ではないが、通常の構成であれば1に近い値になるので、K1´≒1とすると、異常検出がr11の増加変化によるものであれば、変化量の検出幅は約(7/8)・Rh−(1/8)・Rh=(3/4)・Rhであるから、変化量D11,D21は、次式(15)にて算出される。
D11≒(3/4)・Rh
D21≒0 ・・・・・(15)
また、異常検出がr21の減少変化によるものであれば、変化量D11,D21は、次式(16)にて算出される。
D11≒0
D21≒−(3/4)・Rh ・・・・・(16)
【0103】
ロードセル6についての出力変化率R1は、R1>Rhが成立すればハーフブリッジ出力1のスパンがRhを超えて増加変化したか、ハーフブリッジ出力2のスパンがRhを超えて減少変化していることが稼働運転中に自動的に確実に判定される。したがって、R1>Rhが成立した場合に、ハーフブリッジ出力1のスパンが増加変化しているとき、D21がバラツキによってD11と同時に増加変化していることがあったり、ハーフブリッジ出力2のスパンが減少変化しているとき、D11がバラツキによってD21と同時に減少変化している場合であっても、D11が確実に増加変化しているものか、又はD21が確実に減少変化しているものかを判定できればよい。
【0104】
相対比率の平均値r11av,r11ai;r21av,r21aiにはバラツキがあるので、バラツキがあってもR1>Rhの成立時点でD11が増加変化しているか、又はD21が減少変化しているかが判定できる大きさの許容値Rhが設定されている必要がある。
【0105】
D11の増加変化を調べるとき、D11が確実に増加していることを識別できる条件は以下のようにして定める。
まず、変化量D11=r11av−r11aiにおけるr11av,r11aiのバラツキ量を調べる。ここで、特別な運転条件の変更がない限り、稼働運転開始後のv個の集計データと稼働運転途中のv個の集計データにおけるバラツキの標準偏差σ11aiとσ11avとはほぼ等しいと考えられるので、稼働運転開始後のv個の集計データによってD11のバラツキσd1を次式(17)にて定め、D21のバラツキσd2についても上述の標準偏差σ11aiと同様に算出して次式(17)にて定める。
σd1=(σ11ai+σ11av1/2≒21/2・σ11ai
σd2=(σ21ai+σ21av1/2≒21/2・σ21ai・・・・(17)
バラツキの大きさを2シグマ(3シグマとしても良い。)で評価するものとすれば、
2・σd1<(3/4)・Rh ・・・・・(18)
であれば、図7に示されるように、D11(D21についても同様)がほぼ確実にスパンが0から増加変動しているものであることを識別することができる。
【0106】
したがって、判定のための許容値Rhを設定することによって、R1>Rhにてロードセル6のスパン異常が判定されたとき、同時にW11とW21のハーフブリッジ出力のうちでいずれが異常であるかをD11,D21によって判定できるためには許容値Rhが次式(19)に設定されている必要がある。
Rh>(8/3)・σd1 ・・・・・(19)
こうして、
D11>0で、かつD11>Rhであれば、r11がスパン増加
D21<0で、かつD21>Rhであれば、r21がスパン減少・・・・(20)
であると判定することができる。
【0107】
なお、バラツキ量として、標準偏差を使用する代わりに、次のように、v個のデータの中で、v個のデータの平均値から最大に離れた値の2倍の値、すなわち、
Max.|(v個の個別データ−v個のデータの平均値|×2
を使用しても良い。
【0108】
<バラツキに合わせた許容値設定手段の説明>
Rhが式(19)のように設定されていなければ異常なハーフブリッジを特定することができないので、バラツキ量については稼働運転中は常に同じ条件であるから、式(17)が成立するものとして許容値を次式(21)を満足するように設定する必要がある。すなわち、式(17)を式(19)に代入して、
Rh>(8/3)・21/2・σ11ai ・・・・・(21)
【0109】
ロードセルの異常判定及び異常なハーフブリッジを特定して自己復帰操作可能状態を判定させるための許容値Rhの設定と警報出力及びサイン表示については次のように行うこととする。
1)まず、稼働運転前に許容値Rhを設定する。
2)稼働運転後は上述の分類集計演算における1)3)に定めたR1,R2の範囲に基づいてレジスタへ集計する。
3)シフトレジスタにv個のデータが集計されると、その時点でr11,r21についてσ11ai,σ21aiを算出する。
1台のコンベヤ2における各ロードセルに対するバラツキ条件はほぼ同じであるから、R2についてもR1と並列に演算され、ほぼ同じ値の標準偏差Rh´が得られる。ここで、r11〜r22についての最大の標準偏差を選択してRh´であるとする。これが仮にr11についての標準偏差であったとすると、次式(22)となる。
Rh´=(8/3)・21/2・σ11ai ・・・・・(22)
4)a.設定値RhがRh>Rh´であれば、
・上記分類集計演算において、R1,R2に関する範囲2)4)のRhをそのまま使用する。
・R1,R2のいずれかがRhを超えると(|Rn|>Rhであると)、ロードセルLCnのスパン異常を警報し、サイン表示する。同時に自己復帰操作可能サインを表示する。
b.設定値RhがRh≦Rh´であれば、
上記分類集計演算において、R1,R2に関する範囲2)4)のRhをRh´に置き換えて実施する。ただし、ロードセルの異常判定は予め設定されたRhに基づいて行う。
・R1,R2のいずれかがRhを超えると(|Rn|>Rhであると)、ロードセルLCnのスパン異常を警報し、サイン表示する。同時に自己復帰操作可能サインを表示する。
・R1,R2のいずれかがRh´を超えると自己復帰操作可能サインを表示する。
【0110】
要するに、稼働運転中にロードセル別のハーフブリッジの比較比率であるR1,R2を求めながら、いずれがRh(又はRh´)を超えるか、―Rh(又はRh´)未満になるかを判定しながら、r11〜r22の値について分類集計演算を並列に実施し、R1,R2のいずれかがRh(又はRh´)を超えるか、―Rh(又はRh´)未満になったことを検出すれば異常なロードセルが特定されるので、特定されたロードセルについて、自己復帰操作可能サイン表示された時点で当該スパン異常が検出されたロードセルと2つのハーフブリッジと他の正常なロードセルの出力との相対比率の集計結果を選択し、いずれのハーフブリッジ出力が異常であるかを特定するとともに、自己復帰操作可能サイン表示があれば、スパンが増加か減少かについても判定し、後述するように、稼働運転を停止させずに補正するか、稼働運転を一旦停止させて補正するかのいずれかを実施する。
【0111】
<バラツキ減衰手段による演算についての説明>
上述の説明では、収容バラツキによるr11〜r22のバラツキを平均値を求めることによって減衰させるようにしたが、他の手段にて行っても良い。例えば基本区間輸送量毎に中央値を求めて代表値とし、v個の代表値による平均値、標準偏差を求める方法、あるいは、基本区間輸送量毎に最小二乗法によって直線式を求め、この直線式から中央の回数である(v/2)回に対応する値を代表値とし、v個の代表値による平均値、標準偏差を求めるなど、種々のバラツキ減衰演算を用いることができる。
【0112】
ロードセルの配置の不均等性やコンベヤ上の物品の偏りがロードセルの出力異常を警報する精度の観点から無視でき、バラツキのみが無視できない場合には、R1の場合であれば、r11,r21について、上記1)の0<R1≦(Rh/4)の範囲及び上記3)の−(Rh/4)<R1≦0の範囲の集計を行い、同様にR2についても並列に実施し、Rh´を、(8/3)・21/2・σ11aiと算出する。
【0113】
これはロードセルが正常な時点ではr11〜r22=0とみなすため、例えばD11,D21について、
D11=r11av
D21=r21av
であり、式(19)は、
σd1=σ11ai=σ11av
σd2=σ21ai=σ21av
となる。したがって、Rh´=σ11aiと算出する。
【0114】
なお、上記2)のR1>(3/4)・Rhの範囲及び上記4)のR1<−(3/4)・Rhの範囲でのRhの置き換え、ロードセルの故障表示及び自己復帰操作可能サインについては上記と同様に実施する。
【0115】
<正常計量への復帰法についての説明>
(1)稼働運転停止できないときの復帰法
まず、自己復帰操作可能サインが表示されたとき、稼働運転を停止せずに補正を実施する方法について述べる。
稼働運転が停止できないときにはロードセルに異常な出力変動があってもそれがスパンの異常によるものか、零点の異常によるものかを識別することができない。コンベヤスケールは長時間連続運転されるので、零点調整する機会がない。しかし、故障の確率からすれば、電気的には絶縁抵抗低下による起歪部に貼付されたストレインゲージのいずれかの等価抵抗値の変化や、機械的衝撃による起歪部のいずれかの歪みによる出力バランス変化による零点変動の方が、起歪部の腐食によるバネ定数の変化やゲージベースの吸湿によるスパン変動より高いので、基本区間の輸送量の変動率だけロードセルの零点が変動したものとして以下のように補正として異常な方のハーフブリッジ出力の零点補正を実施する。
【0116】
また、一般にコンベヤスケールは、例えば台秤のように重い物や軽い物をランダムに測定する使用法を採ることは少なく、ほぼ一定の重量の物品を連続計量するので、仮に異常の要因がスパン変動によるものであっても、変動分だけを当面零点補正することによって、稼働運転を停止させて調査するまで正常な計量へ戻して運転することができる。
【0117】
例えばR1>Rhが成立し、その時点でハーフブリッジ出力W11がRhを超えて増加変動していると判定された場合には、同時に自己復帰操作可能サインが表示された条件の下で、表示操作装置60において作業者が強制零点調整指令スイッチを押すと、ロードセル6から伝送される基本区間輸送量Q110に対して一時零点補正メモリWz11qを設け、次式(23)を算出する。
Wz11q+Q110・Rh→Wz11q ・・・・・(23)
そして、基本区間輸送量Q110に対して、
Q110−Wz11q ・・・・・(24)
と補正し、補正した値を新たな基本区間輸送量とする。
なお、Q110がバラツキの大きな値であることが問題になる場合には、Q110〜Q220についてもそれぞれ最新のv個を記憶するシフトレジスタを用意し、補正時点でシフトレジスタの内容を加算してv個の平均値を求めてQ110〜Q220の代わりに使用するようにすると良い。
【0118】
上記一時零点補正メモリWz11qは初期値が0にセットされる。このWz11qの内容は0でない値が記憶されると、強制零点補正中のサインが表示される。内容を0にリセットする場合には、強制零点補正リセットスイッチを押すか、又はコンベヤの稼働運転停止にて零点調整スイッチを押す
【0119】
スパン調整するものとして、一時スパン補正係数メモリM11qを設け、このM11qの内容を読み出し、次式
(1−Rh)・M11q→M11q
を演算し、Q110を新たに算出したM11qでもって、
M11q・Q110 ・・・・・(25)
と補正し、この補正した値を新たな基本区間輸送量Q110とする。
ここで、M11qの初期値は1にセットされている。M11qの内容を1に戻すには、強制スパン補正リセットスイッチを押すか、又はコンベヤの稼働運転停止にて後述のスパン補正スイッチを押す。
【0120】
以上のように出力が異常なハーフブリッジ荷重信号出力に基づく基本区間輸送量を補正する方法もあるが、出力の正常なハーフブリッジ荷重信号出力に基づく基本区間輸送量で代替させることもできる。例えば、ロードセル6の出力W11が異常であれば、基本区間輸送量Q10=(1/2)・(Q110+Q210)の代わりにQ10=Q210とする。このように置き換えても算出される輸送量はコンベヤ上を輸送される物品の重量分布の不均一に影響されないという特徴がある。このような置き換えは、表示操作装置60において異常ハーフブリッジ代替スイッチを押すことでハーフブリッジ信号代替手段にて行われるようにする。
【0121】
(2)稼働運転を停止して補正できるときの復帰法
自己復帰操作可能サインが表示される、されないに拘わらず、ロードセルの異常警報が出力されたり、異常サインが表示された際に、コンベヤを停止できる状況の場合には、稼働運転を停止させて異常なロードセルの方の異常なハーフブリッジの零点及びスパンの異常変動を精確に判定し、補正を実施する。
【0122】
異常警報が発せられると、作業者はコンベヤ2の稼働運転を停止させ、図1における少なくとも搬送ローラ3と搬送ローラ5の間に存在する被計量物をコンベヤ2から除去し、各ロードセル6,7のハーフブリッジ出力の表示を見る。この表示値により異常であると特定されたロードセルのいずれのハーフブリッジが異常であるかを判定し、手動によって異常なロードセルを判定し、正常な計量への復帰を実施する。仮にロードセル6に異常があると判定されたとする。この場合、ロードセル6のいずれかのハーフブリッジ出力の零点異常かスパン異常が疑われる。
【0123】
ロードセルが正常な稼働運転前には、予めハーフブリッジ出力W11,W21の零点調整が実施され、零点が決定・記憶されている。ロードセルのスパンを検査するときや、零点調整時には、最初に定めた作業基準通りに計量ローラ4からコンベヤ2を浮かせて(非接触状態にして)その調整を実施する。この非接触状態でハーフブリッジ出力W11,W21の表示を見る。
【0124】
ハーフブリッジ出力W11,W21の零点が、稼働運転開始前に決定した零点より変動していれば表示値に0でない数値が稼働運転中の変動量として現れる。しかし、異物の付着や機構の故障によってロードセルが故障でないにも拘わらず、両方のハーフブリッジ出力に零点変動の生ずる場合があるので、W11とW21との差を見る。この差がRhより大きくなっている場合には、零点において0からの変動量の絶対値の大きい方のハーフブリッジが異常であると判定される。異常と判定されたハーフブリッジをもつロードセルは交換する必要があるが、すぐにロードセルを交換できない事情のある場合には、許容値以上に大きい零点変動であっても零点調整スイッチを操作してW11,W21共に零点調整する。
【0125】
同時に、スパンの異常の発生もあり得るので、零点を調べた後にスパン変動の大小を調べる。スパン点検のために、図2に示されるように、基準重量ローラ11を位置決め機構12に応じるように基準重量支持金具9,10の所定位置に積載し、一定比率に配分された基準重量ローラ11の荷重によるロードセル6の出力W11=ws11´,W21=ws21´を読み取る。
表示操作装置60の基準重量参照値呼び出しスイッチを押すと、基準重量参照値呼び出し指令がロードセル6,7の演算回路へ出力され、指令を受けた演算回路から基準重量参照値記憶メモリWs11,Ws21;Ws12,Ws22に登録された参照用重量値ws11,ws21;ws12,ws22が呼び出され、表示操作装置60へ伝送され、表示器65に表示される。
【0126】
こうして、ロードセル6のW11,W21についての表示値と参照値とを比較する。基準重量ローラ11には所定の位置に積載する機構が設けられているので、双方のロードセル6,7のスパンが正常であれば、ロードセル6について、ws11´=ws11,ws21´=ws21と表示され、ロードセル7について、ws12´=ws12,ws22´=ws22と表示される。
ロードセル6について、現在の基準重量ローラ11の荷重表示値ws11´,ws21´が、ロードセルが正常時に記憶された参照用重量値ws11,ws21と異なっていれば、スパン異常と判定できるので、現在の荷重表示値を参照値と比較することによっていずれのロードセルのいずれのハーフブリッジ出力がスパン異常であるかを判定することができる。
【0127】
スパン異常であるロードセルのハーフブリッジを特定すると、スパン補正したいロードセル番号1又は2とハーフブリッジ番号1又は2のそれぞれいずれかを設定し、スパン補正スイッチを押す。すると、指定されたいずれかのロードセル番号とハーフブリッジ番号についてのスパン補正指令がスパン補正手段から当該ロードセルに伝送される(スパン補正指令は双方のロードセルに伝送されるが、指令コードに付属するロードセル番号、ハーフブリッジ番号によって自身の演算回路で処理すべき指令か否かを判定して処理する。)。
【0128】
例えばスパン変動率は以下のように算出される。すなわち、ロードセル6のハーフブリッジ1,2について、ハーフブリッジ1のスパン変動率S11、及びハーフブリッジ2のスパン変動率S21はそれぞれ次式にて求められる。
S11=(ws11´/ws11)−1
S21=(ws21´/ws21)−1 ・・・・・(26)
ロードセル6のハーフブリッジ1のスパン補正指令であれば、演算回路内でS11の値がスパン変動率メモリMe11に登録されるとともに、この指令を受けて以降はロードセル6の演算回路内ではW11において、スパン係数K11として、次式によって出力が算出される。
W11=K11(1−Me11)・(Wa11−Wi11)−Wz11・・(27)
【0129】
また、ロードセル6のハーフブリッジ1のスパン補正量をリセットしたい場合には、表示操作装置60においてロードセル6、ハーフブリッジ1の番号を設定してスパン補正値リセットスイッチを押すと、ロードセル6、ハーフブリッジ1用スパン補正値リセット指令がロードセル6へ伝送され、Me11の内容がリセットされる。なお、Mellの初期値は0に設定される。
なお、これら基準重量参照値の呼び出しやスパン補正操作は、異常検出の警報の有無に拘わらず、任意の時点でコンベヤ2の稼働運転を停止させて実施しても良い。
【0130】
以上のように、稼働運転を停止させれば、零点及びスパンの異常なロードセルのハーフブリッジが特定でき、零点、スパンのいずれか一方又は両方を精確に補正することができる。また、ロードセルの出力の異常を精確に検出することで、早期に異常が発見できる。それ故、異常なロードセルを交換するまでは補正によってロードセルを使用可能とすることができる。コンベヤ上を輸送される物品の重量分布は一様でないので、計量ローラの両端を支持するロードセルは均等にあるいは所定の比率で負荷荷重がかからないので、一方の側のロードセルが故障したとき他方の側のロードセルに代替させると精確に正常な計量に戻すことができない。
【0131】
<他の実施形態に係るロードセルについて>
前記実施形態におけるロードセルでは、図4に示されるように、ハーフブリッジ毎の荷重信号を得るとともに、フルブリッジ出力は2つのハーフブリッジ出力を加算することにより得るものについて説明したが、このようなシステム構成に代えて、図8に示されているように、フルブリッジ出力をハーフブリッジ出力から独立させて検出するようなシステム構成とすることもできる。なお、本実施形態において、先の実施形態と同一又は共通する部分については図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては先の実施形態と異なる点を中心に説明することとする。
【0132】
本実施形態においては、フルブリッジ回路21に対して設けられる、アナログ加算回路30Aと、A/D変換器70と、演算回路27とを備えている。ここで、フルブリッジ回路21と演算回路27は、先の実施形態で使用されたものと共通のものである。なお、本実施形態では、1つのA/D変換器70が用いられているが、2つのハーフブリッジ出力と1つのフルブリッジ出力のそれぞれに3個のA/D変換器を用いても良い。
また、先の実施形態では、フルブリッジ回路21における接続点22の電位が+Vで接続点23の電位が零の直流電圧が印加されているが、本実施形態では、接続点22の電位が+Vで接続点23の電位が−Vの直流電圧が印加されている。この場合、先の実施形態では必要とされる電圧参照用の固定抵抗28,29によるハーフブリッジ回路21a,21bは不要となる。
【0133】
アナログ加算回路30Aは、第1演算増幅器71と、第2演算増幅器72と、第3演算増幅器73と、第4演算増幅器74と、第5演算増幅器75とを備えて構成されている。
第1演算増幅器71において、入力正端子71aはフルブリッジ回路21の接続点24に接続され、入力負端子71bは出力端子71cに接続され、出力端子71cは抵抗器76,77に接続されている。
第2演算増幅器72において、入力正端子72aはフルブリッジ回路21の接続点25に接続され、入力負端子72bは出力端子72cに接続され、出力端子72cは抵抗器78及び第4演算増幅器74の入力正端子74aにそれぞれ接続されている。
第3演算増幅器73において、入力正端子73aは、抵抗器78に接続されるとともに、抵抗器79を介して回路のアース80に接続され、入力負端子73bは、抵抗器76に接続されるとともに、抵抗器81を介して出力端子73cに接続され、出力端子73cはアナログスイッチ82を介してA/D変換器70に接続されている。
第4演算増幅器74において、入力正端子74aは第2演算増幅器72の出力端子72cに接続され、入力負端子74bは、抵抗器83を介して回路のアース80に接続されるとともに、抵抗器84を介して出力端子84cに接続され、出力端子84cはアナログスイッチ85を介してA/D変換器70に接続されている。
第5演算増幅器75において、入力正端子75aは抵抗器86を介して回路のアース80に接続され、入力負端子75bは、抵抗器77に接続されるとともに、抵抗器87を介して出力端子75cに接続され、出力端子75cはアナログスイッチ88を介してA/D変換器70に接続されている。
【0134】
本実施形態においては、計量器用のアナログ荷重信号は第3演算増幅器73において合成される。接続点24側のハーフブリッジ回路21aの出力荷重信号がeob、接続点25側のハーフブリッジ回路25bの荷重信号がeoaであり、A/D変換器70は全ての信号に兼用して1個のみ設けられ、その入力がアナログスイッチ82,85,88によって切り換えられる。このように適宜A/D変換器の使用個数は選択すれば良い。
【0135】
この回路構成のようにフルブリッジ出力が独立して存在する構成であれば、ロードセル単体調整時点で同じ負荷荷重に対してフルブリッジ出力と2つのハーフブリッジ出力とが同一値となるようにスパン係数が設定され、初期重量記憶メモリ、零点重量記憶メモリが設けられる。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明のコンベヤスケールは、コンベヤ上の物品重量の分布に拘わらず、1個のロードセルにおいていずれかの側のハーフブリッジの零点変動やスパン変動が生じた場合に極めて精確に検出することができるので、その実施効果が大である。
【符号の説明】
【0137】
1 コンベヤスケール本体
2 コンベヤ(ベルト)
4 計量ローラ
6,7 ロードセル(ロードセル)
8 パルス発信器
9,10 基準重量支持金具
11 基準重量ローラ
12 位置決め機構
14 起歪体
145 測定回路
16〜19 ストレインゲージ
20 荷重支持部
21 ホイートストーンブリッジ回路
26,26A 増幅・A/D変換回路
27 演算回路
51 入出力回路
52 中央演算処理装置
53 メモリブロック
60 表示操作装置
61 入出力回路
62 中央演算処理装置
63 メモリブロック
65 表示器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8