(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0009】
本発明の実施形態に係る機能表示腕時計は、時刻の表示のほかに、日付、曜日、月齢を表示するデイモードと、月、閏秒からの経年を表示するカレンダーモードと、現在時刻の時間帯と第二時間帯と第三時間帯のいずれかを24時間目盛りによって表示するGMTモードと、現在時刻を音により示すミニッツリピーターモードとを有する機能表示時計である。
【0010】
なお、本発明の実施形態で示すモードは、一例である。モードの種類、数等は任意である。また、上記4モードの機能詳細については、本発明の本質ではないので、その説明は省略する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る機能表示腕時計100を示す平面図である。同図には、腕時計100の外装である胴1、胴1内に配置された文字板2と時刻を示す指針である時針3、分針4、秒針5が示されている。また胴1の3時側の側面にはユーザーが種々の操作を行うためのりゅうず8、プッシュボタン9が配置されている。さらに、文字板2における4.5時と10.5時、9時位置付近にはそれぞれ機能窓2a、2b、2cが開設されており、この機能窓2a、2b、2cから表示板10の表面の一部が露呈されている(
図4参照)。機能窓2a、2bにはそれぞれ選択されたモードに応じた機能の内容が表示され、機能窓2cには選択されたモードの略語が表示されている。また、胴1内の4.5時と10.5時位置には、機能窓2a、2bから表示された機能状態を示す指針である小針6、7がそれぞれ示されている。
【0012】
なお、同図に示した機能表示腕時計100のデザインは一例である。ここで示した以外にも、例えば、りゅうず8やプッシュボタン9の有無、数、配置は任意であり、文字板2に開設される機能窓2a、2b、2cの配置位置、数も任意である。
【0013】
また、機能表示腕時計100では、文字板2を覆うようにガラス等の透明材料により形成された不図示の風防が胴1に取り付けられている。また、風防の反対側においては不図示の裏蓋が胴1に取り付けられている。本明細書では、以降、機能表示腕時計100の風防が配置される方向(
図1における紙面手前方向)を上面側、裏蓋が配置される方向(
図1における紙面奥方向)を下面側と呼ぶ。
機能表示腕時計100は、りゅうず8を一段引いた状態で回転させることで、複数の輪列を介して表示板10を回転させ(
図2参照)、デイモード、カレンダーモード、GMTモード、ミニッツリピーターモードのいずれかを選択することができる。
なお、本発明の実施形態で示すモードの切替方法は一例であり、モーターによる自動切替
であってもよい。
【0014】
図2、
図3を用いて、機能表示腕時計100の中央部に配置された輪列について説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る機能表示腕時計100の表示機構を示す平面図であり、
図3は
図2のA−A線における断面図である。
図2において、胴1、文字板2を取り外し、表示板10の駆動機構が見える状態で図示した機能表示腕時計100が示されている。
【0015】
機能表示腕時計100の胴1には第二地板11が収容されており、第二地板11は機能表示腕時計100の各種機構を支持する地板12を保持している。地板12の中央部には、四番車13、二番車14、筒車15が支持され、それぞれ秒針5、分針4、時針3が嵌合固定される。さらに地板12の中央部には、表示車18(
図5参照)が支持されている。また、機能表示腕時計100の4.5時と10.5時位置には、機能車6a、7aが支持されており、それぞれ小針6、7が嵌合固定される。本実施例の表示車18は、表示板10を固定するための表示星車16と、表示板10を回転駆動するための表示星車16より大きな径の表示歯車17で構成されており、表示星車16の下面側に、表示歯車17を嵌合固定することで、一体に構成される。これは、後述の押さえ構造の関係で、表示歯車17の径を表示星車16より大きく作る必要があるため、表示星車16と表示歯車17を別体で構成し、嵌合固定で一体化した方が製造しやすいからである。製造上の問題が無ければ、表示星車16と表示歯車17を一体として表示車18を製造しても良い。
【0016】
機能表示腕時計100は不図示のモーターを駆動源とし、四番車13、二番車14と不図示の輪列を含めた複数の輪列を介し、筒車15を回転させる。四番車13と二番車14は、地板12と輪列受19との間で縦あがきを含んで挟持されている。さらに筒車15は、輪列のバックラッシの影響を取り除くための針座20を合わせて地板12と裏板21との間で縦あがきを含んで挟持されている。
【0017】
りゅうず8を一段引き回転させると、図示しない複数の輪列を介し、表示歯車17と表示星車16からなる表示車18が回転する。表示車18は、筒車15に遊合され、あおりを低減させるための針座20を合わせて裏板21と表示車押さえ22との間で縦あがきを含んで挟持されている。ここで、表示車押さえ22は表示星車16よりも径大にした表示歯車17の外周部17aを押さえている。さらに、表示板10は、表示板ねじ23によってねじ溝16b(後述
図6参照)が設けられた表示星車16に固定されている。
【0018】
なお、本実施例では、90°の角度で、中心に対して対称に、4箇所でねじ止めされている。
このように押さえることで、表示車18は径大な範囲で適切な縦あがきの量を維持できるため、傾きにくく、あおりを減らすことができる。よって、表示板10のあおりも減らすことができるので、時計の薄型化を図りつつ、見栄えを向上させることができる。
【0019】
なお、外周部17aと表示車押さえ22の接触する範囲が多いほど表示板10のあおりを軽減できるが、その分摺動負荷が増大するので、表示板10のあおりと摺動負荷との兼ね合いで適切に設定する必要がある。
【0020】
次に、
図2と
図4を参照し、表示板10と表示星車16との関係について説明する。
【0021】
機能表示腕時計100は、前述したようにデイモード、カレンダーモード、GMTモード、ミニッツリピーターモードの4種類のモードを保有している。表示板ねじ23によって、表示星車16に固定された表示板10に印刷された各モードの表示が、所定の位置で機能窓2a、2b、2cから覗くように位置決め保持される必要がある。そのため、表示星
車16には各モードの表示に対応するように4つの切欠き16aが設けられ、表示車押さえ22に設けられた側圧ばね22aの剛体部22bが表示星車16の切欠き16aを側圧することで、表示車18を位置決め保持している。
【0022】
表示車押さえ22と側圧ばね22aを1部品で構成することで、部品点数を削減しコストダウンを図ることができる。また、上記2部品を一体とすることで、表示車押さえ22と側圧ばね22aの間での位置決めを行う必要も無くなり、組立の簡素化やコストダウンを図ることができる。
【0023】
なお、表示板10と表示車18の慣性モーメントの値の合計値を小さくすることで、衝撃等による表示板10を含む表示車18の位置ずれを起き難くすることができるため、表示板ねじ23は表示車18の中心に対して対称に配置されることが好ましい。また、表示星車16の形状を小型化あるいは簡易化するために、表示板ねじ23の数量は切欠き16aの数量と同量あるいは半分にすることが好ましい。
【0024】
次に、
図5、
図6を用いて表示板機構の組立について説明する。
図5は、本発明の実施形態に係る機能表示腕時計100の表示板機構の組立斜視図で、すでに裏板21と表示車18のあおりを低減させるための針座20までが組み込まれた状態である。
【0025】
まず、表示歯車17を下面側に向けた表示車18を、裏板21の上面側に針座20を挟むように配置する。このとき表示歯車17と表示回し車24とが噛み合うことで、りゅうず8が一段引きのときにりゅうず8の回転が、図示しない輪列を介して表示車18に伝達される。
【0026】
表示車押さえ22は、前述したように表示歯車17の外周部を押さえるようにして裏板21に固定される。このとき、表示車押さえ22は表示車押さえ22に設けられた側圧ばねを表示星車16の切欠き部に引っ掛けることで、表示車18は回転しないように位置決め保持される。
【0027】
表示板10を組み立てる手順について
図6を用いて説明する。
図6は、本発明の実施形態に係る機能表示腕時計100の表示板10の組立手順を示す、
図2のA−A線における断面図である。
まず、
図6(a)で示すように、第二地板11に設けられた非貫通穴11aに組立ガイドピン25を差込む。
表示板10は、
図6(b)で示すように、前記組立ガイドピン25と表示車18に設けられた突起16cを位置決め軸として、それぞれ組立ガイドピン25に対しては組立用切欠き10aによって、突起16cに対しては中心穴10bによって、すきまばめで位置決めを行い、表示車18の上面側に配置される。
【0028】
これにより、使用する組立ガイドピン25が1本になるので工程が簡略化できる。また、表示板10の組立用切欠き10aや非貫通穴11aを1つずつしか必要としないため、組み間違いを防止できる。
【0029】
また、表示板10の組立用切欠き10aは、表示板10の印刷時の位置決め用の切欠きをそのまま転用しても良い。そうすれば、表示板10の印刷と文字板2の各窓2a、2b、2cとの位置ずれを小さくすることができる。
表示星車16にはねじ穴16bが設けられており、表示板10は表示板ねじ23によって表示車18と締結される。表示板10が表示車18に締結されたら、
図6(c)で示すように、組立ガイドピン25を第二地板11から取り外し、表示板10を回転可能な状態と
させる。
なお、表示板10と表示車18の締結は、ねじによるものに限らず、圧入嵌合等によるものであっても構わない。また、組立ガイドピン25は、ピン単体として扱わず、例えば組立冶具に取り付けられ、表示板10の組立時に時計ムーブメントの下面側から表示板10を位置決めできる高さまで突出させるような構造であっても構わない。この場合、11aは貫通穴となる。
【0030】
従来技術である特許文献1のような構造は、表示板と表示車が一体化された部品で構成されており、表示星車16の切欠きと表示車18を位置決めさせるための側圧ばね22aの形状のばらつきによっては、表示板10に印刷された表示が所定の位置に定まらず、機能窓2a、2b、2cから位置ずれして表示が露出する可能性があった。
本実施例では、表示星車16の切欠きと前記側圧ばね22aの形状によらず、表示車18の落ち着き位置に対して表示板10を回転方向に微調整可能に締結させるので、機能窓2a、2b、2cから露出する表示板10の表示の位置ずれをし難くすることができる。また、表示星車16の切欠きと前記側圧ばね22aの形状の公差を従来よりも緩めることによって、部品のコストダウンも可能にする。
【0031】
次に、
図7、
図8を用いて本実施例の変形例を説明する。
本変形例は、先の実施例に対して、表示歯車17の外周部17aと表示車押さえ22との摺動負荷の低減を図ったものである。
図7は本実施例の変形例に係る機能表示時計100の表示車押さえ30を示す、
図2のA−A線における断面図であり、
図8は本実施例の変形例に係る機能表示時計100の表示車押さえ30の拡大平面図である。
前述の表示歯車17の外周部17aを表示板押さえ22で押さえる構造は、該2部品が接触する面積が大きいため摺動負荷が大きくなりやすい。モーターによって表示板10を回転させモードを切替える場合には、摺動負荷が大きいと消費電力が大きくなってしまうという問題がある。そこで、
図7、
図8で示す構造では、表示歯車17と表示車押さえ30の接触面積を減らすことで、摺動負荷を低減させている。
【0032】
表示車押さえ30は、表示歯車17の外周部17aを押さえる箇所に、半抜き加工等により形成された押さえ突起30aを有する。なお、
図7で示す押さえ突起30aの形状、数量等は一例であり、これによらない。
表示歯車17と表示車押さえ30は、押さえ突起30aでのみ接触するため、実施例に比べ接触面積が小さくなる。よって、摺動負荷を小さくし、消費電力を小さくすることができる。
また、表示車押さえ30に、半抜きによる押さえ突起30aではなくボールベアリング等を圧入嵌合し、ボールベアリングと表示歯車17を接触させることで摺動負荷の低減を図っても良い。
【0033】
上記実施例、変形例では、いずれも表示車押さえ22、30で、表示板10の駆動に使用する表示歯車17を押える構成とした。これに対し、表示歯車17を歯の無い押さえ専用の板としてもよい。この場合、表示車18の駆動は、表示星車16を何らかの機構で直接駆動するか、駆動用の歯車を別途設置することとなる。