【実施例1】
【0016】
以下に、本発明を図示した実施例に基づいて説明する。
本発明は、
図4に示すように、鉛直荷重が比較的
小さい戸建て住宅やコンビニエンスストアなどのような小規模建築物を建築する際に好適に実施される
基礎の補強工法である。したがって、特に小規模建築物
において実施されている直接基礎を補強することを前提に、以下、
本発明による小規模建築物用基礎の補強工法
の実施例を説明する。
但し、直接基礎と
称する布基礎やべた基礎において
も同様
に本発明を実施できる
ことを申し添える(図9を参照)。
本発明の小規模建築物用基礎の補強工法の大きな特長は、効果
の項に記載したように、コルゲートパイプを使用し、その中空部内へ砕石
等を充填する補強工法
の点にある。
【0017】
先ず、
図1Aに示すように、支持力
が不足している軟弱地盤Nの所定位置に掘削装置1をセットする。所定の位置とは、
図5の平面図に示すように、布基礎の補強
が必要であると算出された複数箇所である。図示上では符号3
で示す部分である。
以下、一箇所に実施される地盤補強工法を説明するが、当然、他の箇所
にも同様の工法
が実施される。
上記
の掘削装置1とは、一般的に地盤の掘削に使用されるケーシング10を有する装置であり、特に特許文献1のようなケーシングに特別な構成を具備する高価な装置である必要はない。
【0018】
次に、
図1Bに示すように、上記掘削装置1のケーシング10を回転させながら所定位置の軟弱地盤Nを支持層S
へ到達するまで掘削して、掘削孔2を形成する。掘削孔2の深度Lは、例えば3mである。本実施例では、掘削孔2を形成して実施する工法で説明するが、勿論、中堀をしつつ、以下に記載する工法を同様の技術的思想に基づいて実施することもできる。
上記のように形成された掘削孔2内へ、同掘削孔2の深度よりも若干浅
い高さを有するコルゲートパイプ3が挿入される。そして、掘削孔2とコルゲートパイプ3の外周との隙間に掘削残土をしっかり埋め戻して、外周土からの土圧を期待できるようにコルゲートパイプ3を埋設する。当然、コルゲートパイプ3の下端は支持層Sへ到達する深さで埋設されており、その上端は現段階においては露出する程度に埋設されている。因みに、地盤又は小規模建築物Hの重量によっては、掘削孔2及びコルゲートパイプ3は支持層Sに到達させる必要はない。所謂コルゲートパイプ3を摩擦杭の如くに構成して実施することもできる。
つまり、本実施例ではコルゲートパイプ3を支持層Sに到達する深さに埋設した状態を示したが、小規模建築物においては、その荷重量、基礎形式、地盤の程度によりコルゲートパイプ3が有する摩擦力などで十分に支持力を発揮できる場合には、支持層Sに到達せずとも、軟弱地盤N内であっても上記小規模建築物に対する支持力を充分に発揮する深さに埋設して同様に実施できる。
【0019】
ここで、本発明に
使用されるコルゲートパイプ3
を図2で説明する。コルゲートパイプ3は薄鋼板製で非常に軽量であり、
図2Cの縦断面図が示すように波形形状とされ、鉛直剛性が低く容易に変形する特性を有している。そして、
円周(円弧)を
縦方向に複数に分割したセクション30、30を組み合わせて、両者
の縦辺に沿って直角外向き(但し、直角には限らない。)にフランジ片31を設け、相対峙するフランジ片同士を突き合わせ、ボルト接合して形成している(
図2B)。
本実施例の場合、
図2Bの平面図に示すように、平面視が2つのセクション30を連結して成る半割型であり、両セクション30、30の両端部へ
直角外向きに取り付けられた
各フランジ片31、31
同士をそれぞれ突き合わせ、同フランジ片31に設けられたボルト孔(図示省略)へボルト4を差し込みナット
を締め付けて接合されている。前記フランジ片31、31同士は溶接接合はされずボルト接合であるため、後述する
ようにコルゲートパイプ3の中心から放射方向
外方への力が加
わった際に
は、波形による変形許容量に加えて、
各フランジ片31、31
の間が開き、同
コルゲートパイプ3
が外側へ膨らむ
ちょうちん変形を最大限許容できる構成とされている。
【0020】
上記構成のコルゲートパイプ3を掘削孔2内へ埋設した後、
図1Dに示すように、同コルゲートパイプ3の中空部内へ砕石で成る充填材5を充填する。図示例では土砂ホッパー6を用いて充填しているがこの限りではない。充填される充填材5の粒径は13〜5mmとされる6号であることが好ましい。これは
図3に示すように、
コルゲートパイプ3の波
形の1ピッチが68mm、深さが13mm
である場合において、その波
形部に略均一に充填できる粒径である。勿論、粒径が6号程度の砂利を使用しても良い。
【0021】
そして、
図1Eに示すように、前記充填材5の充填作業は適宜締め固めをしながら行われ、コルゲートパイプ3の上端部に達するまで充填される。そして、その上部へぐり石7を載置することで、充填材5を突き固め強固にすると共に、
図1Fに示すように布基礎8を構築する
均し作業が行える。図示することは省略したが、ぐり石7の上は平滑にするために捨てコンクリート
を打つことが好適
である。
次に、
図1Fに
示す直接基礎8を構築するが、
具体的には図2Aに示すように、スラブ筋80、あばら筋81、主筋82、腹筋83を配筋しコンクリートを打設して構築される。その後、布基礎8の下端が隠れるまで埋め戻しが行われる。上記作業を
図5の符号3の箇所すべてに行
う。しかる後に、
図4に示すように、地盤補強を行った布基礎8の上部へ小規模建築物Hが建設される。したがって、前記小規模建築物Hに必要十分な支持力
を確保でき、且つ液状
化現象が生じても充填材5が流れ出で補強した箇所が損傷する虞が一切無く安定した支持力を恒久的に期待できるのである。
上記コルゲートパイプ3の設置位置は、
図5に示した限りではなく、千鳥配置として実施することも適宜行われる。
【0022】
以下に、コルゲートパイプ3及び充填材5に作用する応力を
図6から説明する。
先ず、
図6の作用図に示すように、上記布基礎8から荷重が作用すると、充填材5は圧縮変形すると同時に水平方向へ
膨張する変形もする。しかし、コルゲートパイプ3の外殻により拘束されて所謂フープ張力が発生する。コルゲートパイプ3は上記したように
断面が波形
構造であり、しかも複数のセクション30の
縦の連結箇所であるフランジ片
31、31間が開いてコルゲートパイプ3の外側への膨らみを許容し、所謂ちょうちん変形を生じさせる。これにより充填材5が剪断破壊(座屈)することを防ぎ、作用した軸力を支持層Sまで確実に伝達することができる。また、上記のようにちょうちん変形することで周辺地盤(軟弱地盤層N)を
外方へ押し付けることにより摩擦力が増加し、支持力を充分に確保して不同沈下を効果的に防止することができるのである。
【実施例2】
【0023】
以上に、本発明を特に直接基礎8を補強する工法として説明したが、勿論この限りではない。即ち、図
7Aに示すべた基礎11を補強する際にも同様の技術的思想に基づいて実施できる。図
7Bはべた基礎11とコルゲートパイプ3の配置の一例を示す平面図である。
以下
には、上記実施例
1との相違点のみ説明する。
コルゲートパイプ3を埋設し、同コルゲートパイプ3の上端にぐり石7を設置すること
までは上記した
実施例1のとおりである。
前記ぐり石7の上面に砕石10
を敷く点が異なる。砕石10としては、例えば割栗石を使用する。その上でスラブ筋11a、あばら筋11b、主筋11c、腹筋11dを配筋し、コンクリートを打設してべた基礎11を構築して実施される。
【0024】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、本発明は、上記実施例の構成に限定されない。
発明の目的と要旨を逸脱しない範囲において、当業者が必要に応じて行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のため言及する。例えば、コルゲートパイプ3としてスパイラル管を使用して同様に実施できることを付言する。