特許第5777511号(P5777511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5777511リチウムメディエータを有する鉄−空気蓄電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777511
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】リチウムメディエータを有する鉄−空気蓄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 12/08 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   H01M12/08 K
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-508979(P2011-508979)
(86)(22)【出願日】2009年5月11日
(65)【公表番号】特表2011-521408(P2011-521408A)
(43)【公表日】2011年7月21日
(86)【国際出願番号】FR2009050857
(87)【国際公開番号】WO2009147339
(87)【国際公開日】20091210
【審査請求日】2012年4月2日
(31)【優先権主張番号】0853066
(32)【優先日】2008年5月13日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】504462489
【氏名又は名称】エレクトリシテ・ドゥ・フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ステファーヌ・ラスコー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・スティーヴンス
【審査官】 太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−537963(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0259234(US,A1)
【文献】 特表2009−530794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 12/08
H01M 4/74
H01M 4/52
H01M 4/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半電池であって、
(a)元素周期表の第4族から第12族の一つ以上の遷移金属を含有する金属電流コレクター、及び
1nmと1000nmの間の平均直径を有しているナノ粒子を含有しているナノ構造化フィルムの形態で、前記電流コレクターの表面上に存在する電気化学的活物質、
からなり、前記電気化学的活物質は前記電流コレクターに存在する前記遷移金属の少なくとも一つの化合物または前記遷移金属を含有している電極と、
(b)リチウムイオン導電性固体電解質から構成された連続フィルム、またはリチウムイオン導電性固体電解質の領域及び前記電極の体積変化を吸収することのできる疎水性ポリマーの領域から構成された連続フィルムのいずれかであって、水及び空気不浸透性であり、及び前記電極(a)の前記電気化学的活物質の表面上に、全体的に被覆して直接堆積され、1μmと50μmの間の厚さを有している連続フィルムと、
を備えている半電池。
【請求項2】
前記電流コレクターは、金属ワイヤから形成された金属グリッドであることを特徴とする請求項1に記載の半電池。
【請求項3】
前記金属グリッドは、織物構造であることを特徴とする請求項2に記載の半電池。
【請求項4】
前記金属グリッドを形成し、前記電気化学的活物質で被覆された前記金属ワイヤの断面の直径は、3μmと1mmの間であることを特徴とする請求項2または3に記載の半電池。
【請求項5】
前記リチウムイオン導電性固体電解質はセラミックであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の半電池。
【請求項6】
前記連続フィルムは、1μmと50μmの間の厚さを有していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の半電池。
【請求項7】
前記連続フィルムの厚さは、前記金属グリッドのワイヤ(a)により形成された電極内の開口が閉ざされない程度に十分に小さいことを特徴とする請求項2ないし6のいずれか一項に記載の半電池。
【請求項8】
前記電流コレクターは鉄を含んでおり、及び前記電気化学的活物質は酸化鉄を含有していることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の半電池。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の少なくとも一つの半電池を含んでいる電気化学的電池。
【請求項10】
LiOHを含有している水溶性電解質溶液と
LiOHを含有している前記水溶性電解質溶液と接触している空気電極と
LiOHを含有している前記水溶性電解質溶液と接触している酸素発生電極と
をさらに備えていることを特徴とする請求項9に記載の電気化学電池。
【請求項11】
LiOHを含有している前記水溶性電解質溶液はLiOHの水溶液であることを特徴とする請求項10に記載の電気化学的電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ構造化活物質で作られた負極及び前記電極の前記活物質を被覆するリチウムイオン導電性固体電解質を備えている電気化学的発電機の新しいタイプに関連しており、前記発電機は同様に、(リチウムイオンを含んでいる)水溶性電解質、空気電極及び酸素発生電極を備えている。
【背景技術】
【0002】
電池の(Wh/kgで示される)特定のエネルギー密度は、携帯用電子機器または電気自動車のような携帯用機器での利用を制限する主な要因である。これらの電池の制限されたエネルギーは、それらが作られる材料の性能と関連する大部分にある。現在利用可能な電極材料は一般的に、300Ah/kgから350Ah/kgの固有容量を有している。正極材料に対して、この値は約100Ah/kgから150Ah/kgだけである。
【0003】
正極として空気電極を用いることは、この上限値が延長され、及びそのようにして前記電池の単位質量当たりの容量が増大されることを可能にしている。
【0004】
本出願人による特許文献1は、電流コレクターを形成する金属の化合物、例えば酸化物で形成されたナノ粒子を含有している、電流コレクターの表面上で、ナノ構造化電気化学的活物質のフィルムを特徴とするリチウムイオンまたはリチウム金属に対する電極を示している。前記電気化学的活物質の特定の構造は、単位質量当たりの出力及びエネルギー密度に関する性能を向上させる。
【0005】
同様に本出願人による特許文献2は、特許文献1で示された電極の改善に関連している。この改善は前記電極の織物構造に属しており、それを含む電池の単位質量当たりのエネルギー密度の大きな改善を導く。前記織物構造、好ましくは織物構造の各ワイヤは、金属の中心部(電流コレクター)分及びナノ構造の表面転換フィルム(電気化学的活物質)から形成される。
【0006】
本出願人は、特許文献1及び特許文献2の負極として示した前記ナノ構造化電極を正極の空気電極と結びつけようと試みたとき、負極の不安定な性質の問題に直面した。これは、空気電極の利用が水溶性電解質の存在を前提とするからであった。負極が前記水溶性電解質の水と接触する場合、前記水は水素に還元され、及び前記負極は不可逆的に腐食される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2870639号明細書
【特許文献2】仏国特許出願公開第2901641号明細書
【特許文献3】国際公開第2000/036676号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.Fu, Solid State Icons,96,(1997),pages 195−200
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それ故、特許文献1及び特許文献2で示されたこれらの種類の負極を、正の空気電極の操作に対して不可欠のリチウムを含有する水溶性電解質から効果的に分離する手段を考案する必要性が検証された。
【0010】
この分離は、ナノ構造化アノードの表面上に、薄膜の形態で堆積された、リチウムイオン導電性固体電解質を用いることにより可能とされた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の主題は結果として、
(a)元素周期表の第4族から第12族の一つ以上の遷移金属を含有している電流コレクター、及び1nmと1000nmの間の平均直径を有するナノ粒子を含有しているナノ構造化転換フィルムの形態で前記電流コレクターの表面上に存在する電気化学的活物質をなす電極であって、前記電気化学的活物質は、前記電流コレクターに存在する少なくとも一つの遷移金属の化合物を含有している電極と、
(b)前記電極(a)の前記ナノ構造化活物質の前記表面上に、全体的に被覆し、直接堆積され、水及び空気不浸透性であるリチウムイオン導電性固体電解質の連続フィルムであって、前記固体電解質の連続フィルムは1μmと50μmの間の厚さを有している連続フィルムと、
を備えている半電池である。
【0012】
本発明の別の主題は、負極として少なくとも一つの半電池を含んでいる電気化学的発電機である。
【発明の効果】
【0013】
特許文献1で説明されたように、前記電流コレクターに存在する、少なくとも一つの遷移金属の化合物のナノ粒子を含んでいるナノ構造化フィルムは、転換フィルムであり、すなわち、前記電流コレクターを形成する金属材料の表面の化学的または電気化学的な転換により得られたフィルムである。そのような転換フィルムの周知の利点は、形成された前記表面フィルムの良好な粘着性と、そのようなフィルムが開始金属のシンプルな処理により製造されうる容易性である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は四つの半電池1を含む本願発明の電気化学的発電機を示している。
図2図2は本願発明による電気化学的発電機の別の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願発明の好ましい実施形態において、前記電極(a)は、前記電極の活物質を形成している、ナノ構造化表面転換フィルムの金属ワイヤから形成された織物構造を有している。
【0016】
前記電極の薄い織物構造に関連した特別な利点が、転換フィルムの周知の利点に加えられる。特に、電気化学的活物質の形成の間に、前記電極の織物構造は保護され、すなわち、前記織物内の開口または隙間は、活物質の前記堆積により閉塞される危険にない。そのような閉塞は、そのような織物構造の固有の利点を減縮するという事実がある。前記織物内の開口を閉塞するこの危険性は、前記開口が小さいのでより一層増大する。転換フィルムを形成することにより前記活物質を準備することは、金属または他の材料が外側から供給されないので、前記織物内の開口を閉塞する危険を制限し、及び前記電極(電流コレクター+活物質)の微視的寸法(直径及びワイヤ空間)は、そのようにして利用される最初の金属織物のものと実質的に同一である。
【0017】
本発明による前記電極を形成するために利用された前記金属ワイヤ織物は織布、非織布、または編織物であってもよい。好ましくは織布織物である。
【0018】
本願発明の前記電極を形成するために利用された前記金属織物は、好ましくは、非常に薄いワイヤから形成され、互いに相対的に近接して分離されている。これは、前記ワイヤが薄くなればなるほど、及び単位面積あたりのそれらの数が大きくなればなるほど、前記電極のBET(ブルナウアー−エメット−テラー)特定表面領域がより大きくなる。
【0019】
一般的に、前記最初の織物を形成する前記金属ワイヤまたは繊維、または活物質転換フィルムで被覆された前記織物電極のワイヤの断面の等価直径は、3μmと1mmの間であり、好ましくは7μmと100μmの間であり、特に10μmと50μmの間である。「等価直径」との表現は、前記ワイヤの断面と同一の面積を有している円の直径を意味していると理解される。
【0020】
本願発明の電極を形成する前記ワイヤの小さな等価直径は、それを電池で利用するという観点において、その質量が制限されることを有利的に可能にしている。そのようにして、転換フィルムで被覆された電流コレクターから形成された本発明による電極は、幾何学的面積で1000g/mより小さく、好ましくは幾何学的面積で10g/mと500g/mの間の単位面積あたりの質量を有利的に有しており、前記幾何学的面積は、前記微視的スケール上での金属織物の面積である。この幾何学的面積はそれ故、前記織物の薄い構造から独立している。
【0021】
前記電流コレクターの遷移金属は、ニッケル、コバルト、マンガン、銅、クロム及び鉄より形成された群から好ましくは選択される。これらの金属の間で、特に鉄が好ましい。
【0022】
前記活物質を形成する前記転換フィルムの形成の間に、これらの金属は、以下でより詳細に述べられる適切な処理によって、前記遷移金属の化合物に転換される。この化合物は、カルコゲン及びハロゲン、好ましくは、カルコゲン(酸素、硫黄、セレン、及びテルル)から有利的に選択され、特に好ましくは、前記転換フィルムに存在する前記金属化合物は金属酸化物である。
【0023】
本発明の特に好ましい実施形態において、前記金属酸化物は化学式:Mを満足し、ここで、1≦x≦3及び、1≦y≦5好ましくは1≦y≦4、Mは少なくとも一つの遷移金属である。この化合物は、スピネル構造ABにより形成された群から選択され、AはFe、Mn、Cr、Ni、Co、及びCuにより形成された群から選択され、及びBはFe、Cr、及びMnより形成された群、及び/または三二酸化物M’により形成された群から選択された少なくとも一つの金属であり、ここでM’は、Fe、Mn、Cr、Ni、Co、及びCuより形成された群から選択された少なくとも一つの遷移金属である。
【0024】
前記遷移金属化合物は、特にCrであるか、または化学式;Fex’Cry’Mnz’を満足する化合物であり、ここで、0≦x’≦1、0≦z’≦1、及びx’+y’+z’=3である。
【0025】
好ましくは、Mの価数は2または3であり、特に3に等しい。式Fex’Cry’Mnz’の化合物は、例えば、x’が上で示した値を有している式Fex’Cr1−x’Crの化合物、及びx’が上で示した値を有している式Fex’Ni1−x’の化合物を含んでいる。
【0026】
上で示したように、本願発明で利用される前記織物電極の転換フィルムは、1nmと100nmの間、好ましくは10nmと300nmの間の平均直径を有しているナノ粒子を含むナノ構造化フィルムである。そのようなナノ構造化フィルムは、粗く及び多孔性の構造により区別され、及び少なくとも50wt%、好ましくは70w%のナノ粒子を含んでいる。
【0027】
前記織物電極の転換フィルムにおいて、前記ナノ粒子は、好ましくは、互いに再組織化及び凝集され、前記凝集は好ましくは平均1nmと10000nmの間、好ましくは10nmと3000nmの間の平均サイズを有している。前記ナノ粒子の凝集の基本的な多孔性構造は、例えば走査型電子顕微鏡によって明示されうる。
【0028】
前記転換フィルム(電気化学的活物質)は好ましくは電流コレクターの全体表面を被覆し、及び好ましくは30nmと15000nmの間、特に30nmと12000nmの間の厚さを有している。
【0029】
一つの具体的に有利な実施形態によると、前記電極は、オーステナイト鋼の316L鋼のような非常に薄いワイヤに引き込まれていてもよい鉄に基づく合金から形成された編物である。
【0030】
電池の負極として、前述のようなナノ構造化転換フィルムの形成後、利用することのできる遷移金属に基づく金属編物は、技術的に知られており、及び例えば以下の名前:スクウェアメッシュ平織り、スクウェアメッシュ綾織り、横糸リブ平織り、横糸リブ綾織り、縦糸リブ平織り、及び縦糸リブ綾織りの下で商用的に利用可能である。
【0031】
ナノ構造化転換フィルムの形成は、特許文献1で示されている。この文献で利用される処理は、上で述べられた金属織物にさらなる予防または修正無く適用されうる。前記転換処理は例えば、還元性、中性、酸化性雰囲気において高温加熱処理である。これらの処理は、当業者に知られており、及び現在でも利用されている。
【0032】
例えば、前記処理は500℃と1000℃の間、好ましくは600℃と800℃の間、例えば700℃に近い温度で、1時間から16時間の様々な期間、水素内で処理されうる。
【0033】
それは同様に、例えば600℃と1200℃の間、好ましくは800℃と1150℃の間、例えば1000℃に近い温度で、1分から16時間の様々な期間、空気内で加熱処理であってもよい。
【0034】
酸化性または還元性加熱処理からもたらされる前記転換フィルムは、所望の最終的なナノ構造化構造を一般的に有していない。前記電極の最終のナノ構造化、すなわちナノ粒子形成は、前記電池の放電の間に起こるのみである。それはもちろん、リチウム電池に組み込む前に前記織物電極をそのような放電にかけることを可能にしている。この最初の放電は、リチウム塩を含有している有機電解質内でリチウム電極に関連する織物電極を、前記リチウムに対して20mVの最大電位にいたる還元電流密度(電極の幾何学的面積あたり0.05mA/cmから0.5mA/cm)で還元し、及びそれから前記リチウムに対して3000mVの電位にいたる還元電流密度(電極の幾何学的面積あたり0.05mA/cmから0.5mA/cm)で前記織物電極を酸化することにより起こりうる。
【0035】
本願発明で利用される前記負極は、液体電解質と接触する状態となることのできる表面全体にわたって、リチウムイオン導電性固体電解質で被覆される。この固体電解質は、前記電気化学的発電機の利用の状態の下で、水及び空気不浸透性でなければならない。それは前記電極のナノ構造化転換フィルム上に直接堆積される。
【0036】
本願発明の好ましい実施形態において、前記リチウムイオン導電性固体電解質はセラミックである。
【0037】
リチウムイオン導電性固体電解質を形成することのできるセラミックは、それ自体は知られている。それらはLISICON(Lithium super ionic conductor)及びLIC−GCの名前の下でオハラにより売られている。それらは次の組成:Li1+x(M,Al,Ga)(Ge1−yTi2−x(POまたはLi1+xAlTi2−x(POを有している。これらの材料は、例えば、非特許文献1により述べられている。これらの材料の薄膜は、電気泳動またはスパッタリングにより堆積されうる。
【0038】
別の実施形態において、前記リチウムイオン導電性固体電解質は、前記負極上への堆積の後で、非加水分解性リチウム塩を含有している疎水性イオン液体と共に、疎水性摂取ポリマーのフィルム、マイクロ多孔質、または非多孔質により形成される。
【0039】
この疎水性ポリマーのマイクロ多孔質フィルムは、例えば、後に120℃の真空でアセトン及びプロピレンカーボネートを蒸発させる段階が続く、アセトン、ポリカーボネート、及びPVDF−HFPよりなる溶液内で前記負極をディップコーティングすることにより堆積されうる。
【0040】
ポリマーのナノ多孔質フィルムは、例えば、PPGにより供給されるCatolac ED 5000のような、後にクロスリンクされるアミンで修飾されたエポキシ樹脂の電気泳動(2から300秒の間で2V/cmから10V/cmの電場が印加される)を経て(例えば150℃で15分の間)堆積されうる。
【0041】
加水分解性イオン液体の例の目的で、言及は1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンサルフォニル)イミド(EMI TFSI)、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリウフオロメタンサルフォニル)イミド(PMI TFSI)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(ペンタフルオロエタンサルフォニル)イミド(EMI BETI)または1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム ビス(ペンタフルオロエタンサルフォニル)イミド(PMI BETI)、またはこれらの混合物でなされる。加水分解性イオン液体はさらに好ましくは、0.1から1Mの、リチウム ビス(トリフルオロメタンサルフォニル)イミド(LiTFSI)、リチウム ビス(ペンタフルオロエタンサルフォニル)イミド(LiBETI)またはリチウム ビス(フルオロサルフォニル)イミド(LiFSI)のような非加水分解性リチウム塩を含んでいる。
【0042】
前記負極の活物質を被覆しているリチウムイオン導電性固体電解質フィルムは、好ましくは、1μmと50μmの間、特に1.5μmと30μmの間、理想的には2μmと10μmの間の厚さを有している。
【0043】
前記負極が織物電極であるとき、前記電極の前記織物構造が前記固体電解質の堆積の後ではっきり見えたままであることは常に必須ではない。言い換えると、前記固体電解質は前記負極内の穴または開口を部分的または全く完全に満たし、前記半電池はそれから前述の織物電極を含んでいる連続シートの形態を有している。
【0044】
しかしながら、本願発明の前記半電池の特定の実施形態において、前記リチウムイオン導電性固体電解質フィルムの厚さは、前記電極の織物構造内の開口が閉ざされないほど十分に小さく、言い換えると、前記電極の織物構造が前記固体電解質の堆積の後で目に見えるままであり、前記半電池はグリッド、例えば四角形のグリッドの開口を有している。前記半電池のこの開口構造は、複数の半電池の積層を含有している電気化学的発電機において、導電方向が前記積層半電池の平面に垂直であるとき有効である。
【0045】
前記ナノ構造化負極の表面上の薄膜として堆積された固体電解質は、クラッキング無しでその時折の相当な体積変化に従うべきである。前記固体電解質のクラッキングは、前記負極の早期の劣化を実際に導く。前記固体電解質の前記セラミック特性は、前記電極の体積変化に耐えるための不十分な弾性を有していることを意味しうる。
【0046】
この問題を解決し、及び前記固体電解質をクラッキングから保護するために、前記液体電解質に不溶性の及び不浸透性の材料であとで満たされる、小さなボイドにより分離された複数の相互に隣接する領域内の前記負極のナノ構造化表面上にそれが堆積され、前記材料は塑性的にまたは弾性的に前記固体電解質より変形可能である。そのような材料は、例えば、加水分解性有機ポリマー、好ましくはクロスリンクされた有機ポリマーであってもよい。前記加水分解性ポリマーで満たされる前記ボイドは好ましくは、前記負極の前記ナノ構造化表面の20%未満、より好ましくは10%未満を被覆する。
【0047】
本願発明が「前記電極のナノ構造化活物質の表面を完全に被覆する固体電解質の連続フィルム」を扱う一方で、これは同様に、前記フィルムの特定の領域において、前記固体電解質が前記電極の体積変化を吸収することのできる加水分解性ポリマーで置き換えられるこの実施形態を含有する。このポリマーは好ましくは、前記セラミック、電気泳動多孔質により被覆されないギャップ内に堆積される。当業者は、正確に機能する発電機のために、水溶性液体の電解質が前記負極に接触しないことが必須であり、この接触は、
−リチウムイオン導電性固体電解質の連続フィルム、
−または、リチウムイオン導電性固体電解質、及び前記水溶性電解質に不浸透性の疎水性ポリマーであって、この加水分解性ポリマーは前記リチウムイオン導電性固体電解質の間の空間を満たす疎水性ポリマー、の不連続な堆積により形成された連続性フィルム、
のどちらかにより防がれうることが実際に理解されるだろう。
【0048】
序論でも示したように、本願発明はさらにその主題として、一つ以上の上述した半電池を備えている、電気化学的発電機を有している。
【0049】
そのような電気化学的発電機は、上述したような一つ以上の半電池に加えて、
−前記半電池が浸漬されるLiOHを含有する水溶性電解質と、
−LiOHを含有する前記水溶性電解質と接触する空気電極と、
−さらにLiOHを含有する前記水溶性電解質と接触する酸素発生電極と、
を備えている。
【0050】
前記空気電極は、前記発電機の放電の間に、正の電極の役割を担う(空気中の酸素を水酸化物イオンに還元)。空気電極は周知である。好ましくは、本願発明において、(i)例えば二酸化マンガン、熱分解コバルトポルフィリン(CoTMPP)、白金、または銀、の触媒の細かい粒子が分散されているカーボン粉末と、(ii)例えばポリテトラフルオロエチレンの加水分解性有機バインダと、(iii)前記水溶性電解質の侵食を可能にする、前記空気電極を前記酸素発生電極から電気的に隔離する機能を有するマイクロ多孔質セパレータと、からなる空気電極が利用される。そのようなマイクロ多孔質セパレータの例の目的で、言及は商用的に利用可能である製品Celgard(登録商標)でなされてもよく、マイクロ多孔質材料は、ポリエチレン/ポリプロピレンに基づいている。
【0051】
適切な空気電極が例えば、E−Tek and Electric Fuel Ltd(Arotech Corporation)により売られており、例えば特許文献1において示されている。
【0052】
前記酸素発生電極は、前記発電機の放電の間に前記空気電極に取って代る。それは前記水溶性電解質により侵食されない金属、例えば、316L鋼のようなステンレス鋼から形成される。例えばNiCoのような金属酸化物の触媒は、酸素放出過電圧を減少させるために、例えば電気泳動またはスパッタリングによる熱分解によって、この電極の表面上に堆積されうる。
【0053】
前記半電池、前記空気電極及び前記酸素発生電極が浸漬される前記水溶性電解質は、水酸化リチウム(LiOH)の水溶液である。
【0054】
本発明による電気化学的発電機の前記空気電極の単位面積あたりの容量は、前記酸素がそのままでは蓄えられないが、前記空気から採取されるので、前記発電機の容量を限定しない。
【0055】
一方、前記負極は、それが織物電極であるときでさえ、0.5と5mAh/cmの間、ほとんどの場合1と2mAh/cmの間の単位面積あたりの限られた容量を有している。
【0056】
前記電気化学的発電機の容量を出来る限り増大するために、それ故、複数の半電池(それぞれはナノ構造化転換フィルムを有し、リチウムイオン導電性固体電解質で被覆された電極、特に織物電極から形成される)を利用することが高く推薦される。これらの半電池は好ましくは積層され、及び電気的に並列接続される。そのようにして得られたアセンブリは、LiOHの水溶液から形成された水溶性電解質内に浸漬される。LiOH濃度が最も低いとき、前記水溶性電解質は充電サイクルの終わりで良好なイオン導電性を有していることを補償するために、支持塩、例えばKOHを添加することが可能である。Liカチオンの拡散方向が前記積層された半電池の平面に垂直であるとき、開口構造を有すること、すなわち、前記固体電極は、維持される前記織物電極の前記開口構造のために十分に薄膜となるように堆積されていることが重要である。これは、Li及びOHの自由拡散を保証し、及び前記電池の初期抵抗の増大を引き起こす濃度勾配の形成を避けることが必要である。
【0057】
しかしながら、前記リチウムイオンの拡散経路は、添付の図1におけるように、前記積層半電池の平面に平行であり、水素とリチウムイオンは、これらの半電池と前記半電池を分離するギャップを通る空気電極または酸素発生電極の間で自由に移動できる。
【0058】
本発明は、図1及び図2でそれぞれ示された二つの実施形態を用いてより詳細に説明される。
【0059】
図1は、四つの半電池1を含む本願発明の電気化学的発電機を示している。各半電池は縦糸2aと横糸2bを有する織物電極10により形成される。前記縦及び横糸のそれぞれは、前記電流コレクター3に対応する中心部及び電気化学的活物質4に対応する周辺部よりなる。前記織物電極の横断面は、ここでは二つの隣接する縦糸の間を通り、及び前記電流コレクター3は結果的に前記織物構造の横糸2bの間にだけ目に見える。各織物電極は、四つの半電池1が浸漬されている前記水性液体電解質6からそれを分離するために、前記織物電極を全体的に含んでいる固体電解質5により囲まれている。前記固体電解質5の堆積により、ここでは、前記半電池が満たされた構造を有することになり、及び包囲している前記電極10の織物構造を示した開口されたグリッド型構造は有していない。
【0060】
同様に、前記水性液体電解質6(LiOH)内に浸漬されたものは同様に、織物構造を有する、ナノ構造化電極10(負極)のような、二つの酸素発生電極7である。前記酸素発生電極7は、ステンレス鋼から形成されるが、前記負極とは異なって、ナノ構造化転換フィルムを備えていない。前記電気化学的発電機は同様に、マイクロ多孔質セパレータまたはアニオン性ポリマーでありうるフィルム9により前記水性電解質6から分離された二つの空気電極8を備えている。この実施形態において、導電方向は、前記四つの積層半電池1の平面に一般的に平行であり、及び前記酸素発生電極7の平面に垂直である。Li及びOHイオンは、結果として前記半電池1の間の空間における前記液体電解質内を自由に移動してもよく、及び開口されたグリッド型構造を有さないという事実に悩まされない。前記酸素発生電極7の織物構造は、放電段階の間に前記ナノ構造化電極10と前記空気電極8の間でカチオンとアニオンの自由な流れを保証している。
【0061】
図2は、本願発明による電気化学発電機の別の実施形態を示している。この実施形態と図1の実施形態との間の主な相違は、様々な前記電極の相対配置である。この実施形態において、前記四つの半電池1はここでは、互いに平行に配置されている。それらは同様に、前記酸素発生電極7及び前記空気電極8に平行である。前記LiとOHイオンの拡散の方向はここでは、それ故、前記半電池の平面に垂直であり、及び開口された構造を有していなければならず、すなわち、前記固体電解質の堆積は、前記負極10の前記織物構造における開口が塞がれないほどの十分な薄さでなければならない。
【符号の説明】
【0062】
1 半電池
2a 縦糸
2b 横糸
電流コレクター
4 電気化学的活物質
5 固体電解質
6 水性液体電解質
7 酸素発生電極
8 空気電極
9 フィルム
10 ナノ構造化電極(負極)
図1
図2