特許第5777518号(P5777518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特許5777518薬物送達デバイス及び薬物送達デバイスの製造方法
<>
  • 特許5777518-薬物送達デバイス及び薬物送達デバイスの製造方法 図000002
  • 特許5777518-薬物送達デバイス及び薬物送達デバイスの製造方法 図000003
  • 特許5777518-薬物送達デバイス及び薬物送達デバイスの製造方法 図000004
  • 特許5777518-薬物送達デバイス及び薬物送達デバイスの製造方法 図000005
  • 特許5777518-薬物送達デバイス及び薬物送達デバイスの製造方法 図000006
  • 特許5777518-薬物送達デバイス及び薬物送達デバイスの製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777518
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】薬物送達デバイス及び薬物送達デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/24 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   A61M5/24 500
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-530486(P2011-530486)
(86)(22)【出願日】2009年10月8日
(65)【公表番号】特表2012-504992(P2012-504992A)
(43)【公表日】2012年3月1日
(86)【国際出願番号】EP2009063075
(87)【国際公開番号】WO2010043533
(87)【国際公開日】20100422
【審査請求日】2012年10月2日
(31)【優先権主張番号】08017889.0
(32)【優先日】2008年10月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ハルムス
(72)【発明者】
【氏名】シュテッフェン・ラープ
【審査官】 大町 真義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−329423(JP,A)
【文献】 特表2005−536273(JP,A)
【文献】 特表平09−510880(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0267422(US,A1)
【文献】 英国特許出願公開第00743839(GB,A)
【文献】 米国特許第05226895(US,A)
【文献】 特表平11−514242(JP,A)
【文献】 実開平06−007741(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/178−5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端及び遠位端を有するハウジング(10)、
薬物を収容するように適合されたカートリッジ(15)、
カートリッジ(15)を保持するように適合されたカートリッジ保持部材(45)、ここでカートリッジ保持部材(45)がハウジング(10)に固定される、
を含む薬物送達デバイス(5)において、
ばねワッシャー(50)が、カートリッジ(15)上に力を働かせ、そしてカートリッジ保持部材(45)に対する動きに抗してカートリッジ(15)を固定するように、ハウジング(10)内に配置され、ハウジング(10)の近位端に面するカートリッジ(15)の側上でカートリッジ(15)に隣接するように配置されることを特徴とする、薬物送達デバイス。
【請求項2】
遠位方向にカートリッジ上で力を働かせるように、ばねワッシャー(50)が偏らせられる、請求項1に記載の薬物送達デバイス(5)。
【請求項3】
ばねワッシャー(50)が、ハウジング(10)に対する軸方向の動きに抗して固定される、請求項1又は2に記載の薬物送達デバイス(5)。
【請求項4】
ピストン棒(30)が遠位方向に駆動されるときに、薬物送達デバイス(5)が、デバイス(5)から薬物の用量を投薬するためのピストン棒(30)を含み、そしてばねワッシャー(50)が開口部(55)を含み、ピストン棒(30)が開口部(55)を通過できるように、開口部(55)が配置されている、請求項1〜3の何れか1項に記載の薬物送達デバイス(5)。
【請求項5】
ばねワッシャー(50)が、軸方向及び/又は半径方向に曲がっている、請求項1〜4の何れか1項に記載の薬物送達デバイス(5)。
【請求項6】
ばねワッシャー(50)が、皿型のばねワッシャーである、請求項1〜5の何れか1項に記載の薬物送達デバイス(5)。
【請求項7】
ばねワッシャー(50)が、ハウジングのねじ付きのスリーブ部材(60)に固定されている、請求項1〜6の何れか1項に記載の薬物送達デバイス(5)。
【請求項8】
ばねワッシャー(50)が、ハウジングに固定されたスリーブ部材(60)に固定されている、請求項1〜7の何れか1項に記載の薬物送達デバイス(5)。
【請求項9】
更なるワッシャー(70)を含み、ここで更なるワッシャー(70)が、ばねワッシャー(50)の近位側上に配置されている、請求項1〜の何れか1項に記載の薬物送達デバイス(5)。
【請求項10】
更なるワッシャー(70)が、ディスクワッシャー、又は、ばねワッシャー(50)に比べてより強い力を有する更なるばねワッシャーである、請求項に記載の薬物送達デバイス(5)。
【請求項11】
更なるワッシャー(70)が、ばねワッシャー(50)の負荷距離を制限するように配置されている、請求項又は10に記載の薬物送達デバイス(5)。
【請求項12】
更なるワッシャー(70)が、ばねワッシャー(50)の変形を弾性変形に制限するように配置されている、請求項11の何れか1項に記載の薬物送達デバイス(5)。
【請求項13】
ばねワッシャー(50)の曲率に対応するよう、更なるワッシャー(70)が軸方向及び/又は半径方向に曲がっている、請求項12の何れか1項に記載の薬物送達デバイス(5)。
【請求項14】
薬物送達デバイス(5)のカートリッジ保持部材(45)中に薬物を含有するカートリッジ(15)を、カートリッジ保持部材(45)に対する移動に抗して固定するためであって、薬物送達デバイス(5)のハウジング(10)の近位端に面するカートリッジ(15)の側上でカートリッジ(15)に隣接するように配置されるばねワッシャー(50)の使用。
【請求項15】
近位端及び遠位端を有するハウジング(10)を供し、
薬物を収容するように適合されたカートリッジ(15)を供し、
カートリッジ(15)を保持するように適合されたカートリッジ保持部材(45)を供し、
ばねワッシャー(50)をハウジング(10)内に配置することを含む薬物送達デバイスの製造方法において、
カートリッジ保持部材(45)をハウジング(10)に固定し、そのことによってカートリッジ(15)上で力を働かせるように、そしてカートリッジ保持部材(45)に対する移動に抗してカートリッジ(15)を固定するように、ばねワッシャー(50)に負荷をかけ、ここでばねワッシャー(50)をハウジング(10)の近位端に面するカートリッジ(15)の側上でカートリッジ(15)に隣接するように配置することを特徴とする、薬物送達デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物送達デバイス及び薬物送達デバイスの製造方法に関する。薬物送達デバイスは、薬、例えば、インスリン、ヘパリン又は成長ホルモンを投与するために使用される。幾つかのデバイスは複数の用量を送達するために構成されている。加えるに、幾つかのデバイスは、送達されるべき異なる用量サイズの設定を可能ならしめるように構成されている。ここで用量のサイズが正確に設定することができ、そして設定された用量が信頼して送達することができることが重要である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハウジング挿入物及び駆動エレメントの間に配置されるばねを有するシリンジが示されている。このばねは、注射デバイス中の医療用容器を支えるために、縦方向の許容差に対する補正として働く。
【0003】
特許文献2には、カップばねとして構築された圧力部材を有するシリンジが示されている。圧力部材は、その自由端を有する液体容器の上方端を圧迫する弾性突起を含む。
【0004】
更なる薬物送達デバイスが特許文献3及び特許文献4から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願第2007/0021718A1号明細書
【特許文献2】米国特許第3,742,948号明細書
【特許文献3】国際特許出願WO第2005/032449号明細書
【特許文献4】ドイツ特許出願第10 2004 053529A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、改善された薬物送達デバイスを供することである。特に、用量制御に関する改善された操作性及び/又は異なるカートリッジに関連する用量の改善された再現性を可能ならしめる薬物送達デバイスが供されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のために、薬物送達デバイスは以下を含む:近位端及び遠位端を有するハウジング;薬物を収容するように適合されたカートリッジ;カートリッジを保持するように適合されたカートリッジ保持部材、ここでカートリッジ保持部材がハウジングに固定されている;及びカートリッジ上に力を働かせ、そしてカートリッジ保持部材に対する動きに抗して、好ましくは、ハウジングに対する動きに抗してカートリッジを固定するように、ハウジング内に配置されているばねワッシャー。
【発明の効果】
【0008】
この種の薬物送達デバイスにおいて、ハウジング及び/又はカートリッジ保持部材に対するカートリッジの動きは、カートリッジ上に力を働かせるばねワッシャーのせいで低減され又は避けられさえもする。ばねワッシャーは、カートリッジ及びハウジングの間及び/又はカートリッジ及びカートリッジ保持部材の間の遊びを低減できる。これは、例えば、異なる長さを有するカートリッジが薬物送達デバイスにおいて使用されなければならないときに特に有利である。このようして、薬物送達デバイスは再使用可能なデバイスであり得る。カートリッジの長さにおける製造許容差は、このようにばねワッシャーを用いることによって補正することができる。従って、薬物送達デバイスの操作中に、カートリッジ保持部材中のカートリッジの軸方向の動きが低減され、又は防ぐことさえでき、そして用量の正確性を増大することができる。ばねワッシャーは、カートリッジをカートリッジ保持部材内に、多くのスペースを必要とすることなく固定することを可能なならしめる。従って、非常にコンパクトな薬物送達デバイスを形成することができる。
【0009】
更なる実施態様において、好ましくは、ハウジングの近位端に面するカートリッジの側上でカートリッジに隣接するように、ばねワッシャーが配置される。
【0010】
ばねワッシャーは、好ましくは、ハウジングの近位端に面するカートリッジの側上でカートリッジに隣接することによって、カートリッジをカートリッジ保持部材中に固定された状態に保ち得る。従って、カートリッジ保持部材に対するカートリッジの軸方向の動きが低減され又は防止さえされる。
【0011】
ばねワッシャーは、カートリッジ上に遠位方向に力を働かせ得る。カートリッジ上に力を働かせるように、ばねワッシャーは負荷をかけられ又は偏倚され得る。
【0012】
更なる実施態様において、ばねワッシャーはハウジングに固定される。特に、ばねワッシャーは、その中にばねワッシャーがハウジングに固定されるその領域において、ばねワッシャー及びハウジングの間の相対的な軸方向の動きを防ぐように、ハウジングに固定され得る。
【0013】
この実施態様によれば、ばねワッシャーがカートリッジ上に力を働かせるときの対向力が、その軸位置で把持されているばねワッシャーを有するハウジング上に作用する。
【0014】
一つの実施態様において、薬物送達デバイスは、ピストン棒が遠位方向に駆動されるときに、デバイスから薬物の用量を投薬するためのピストン棒を含み、そしてばねワッシャーは開口部を含み、ここで開口部は、ピストン棒が開口部を通して走ることを可能にするように配置されている。
【0015】
この例において、ばねワッシャーは、ピストン棒などを利用する従来の薬物送達機構と共に容易に実行することができる。従って、著しい設計変更が実施される必要がない故に薬物送達デバイスの製造性が向上される。
【0016】
更なる実施態様によれば、ばねワッシャーは軸方向及び/又は半径方向に曲がっている。この軸は、ハウジングの近位端及び遠位端の間に伸び得る。
【0017】
ばねワッシャーに負荷をかけること及びカートリッジ上に力を働かせることは、このようにばねワッシャーを形づくることによって容易になる。
【0018】
更なる実施態様において、ばねワッシャーは皿型(Belleville type)のばねワッシャーである。
【0019】
この種のばねワッシャーは薬物送達デバイス中に容易に提供することができる。
【0020】
一つの実施態様において、ばねワッシャーはハウジングのスリーブ部材に、好ましくはハウジングのねじ付きのスリーブ部材に固定される。
【0021】
この実施態様によれば、ばねワッシャーは、ハウジング上の著しい設計変更を実行することなく、薬物送達デバイスの従来のハウジング中に提供され得る。(ねじ付き)スリーブ部材は、例えば、内ねじを用いてカートリッジ保持部材をハウジングに固定するために同時に使用され得る。
【0022】
一つの実施態様において、薬物送達デバイスは更なるワッシャーを含み、ここで更なるワッシャーはばねワッシャーの近位側上に配置されている。更なるワッシャーは、好ましくは、ばねワッシャーによって隣接され得るように配置される。
【0023】
一つの実施態様において、更なるワッシャーは、ばねワッシャーの負荷距離を制限するために配置される。
【0024】
カートリッジの挿入中に、例えば、その中でハウジングに保持されているカートリッジを有するカートリッジ保持部材を(開放可能なように)固定するときに、近位方向の力がばねワッシャー上に働かされ得る。ばねワッシャーが永久塑性変形されることを防ぐために、更なるワッシャーをばねワッシャーの近位側上に配置することができる。更なるワッシャーは、ばねワッシャーが変形され得る分の距離を制限し得る。
【0025】
一つの実施態様において、更なるワッシャーはディスクワッシャー、又はばねワッシャーである。もし、更なるワッシャーがばねワッシャーであれば、それは、好ましくは、カートリッジ上に力を働かせるばねワッシャーと比べてより強い力を有する。もし、ばねワッシャーに所与の力によって負荷がかけられると、例えば、塑性変形の領域において、ばねワッシャーに過剰な負荷をかけるリスクが、より強いばね力を有する更なるばねワッシャーを供することによって低減することができる。
【0026】
一つの実施態様において、更なるワッシャーは、ばねワッシャーの変形を弾性変形に制限するように配置されている。この例において、塑性、つまり、非弾性、変形が生じる故に、ばねワッシャーのばね特性を保存することができる。
【0027】
更なる実施態様によれば、更なるワッシャーは、軸方向及び/又は半径方向に曲がっている。好ましくは、更なるワッシャーの曲率は、ばねワッシャーの曲率に対応するか又は類似している。
【0028】
この例において、更なるワッシャーの曲率は、軸方向に沿って見たとき、更なるワッシャー及びばねワッシャーが重なるその領域におけるばねワッシャーの曲率に適合され得る。これによって、ばねワッシャー及び更なるワッシャーの円滑な隣接が可能になる。
【0029】
上記目的のために、薬物送達デバイスの製造方法は以下の工程を含む:近位端及び遠位端を有するハウジングを供すること;薬物を収容するように適合されたカートリッジを供すること;カートリッジを保持するように適合されたカートリッジ保持部材を供すること;ばねワッシャーをハウジング内に配置すること;及びカートリッジ保持部材をハウジングに固定し、そのことによってカートリッジ上で力を働かせるように、そしてカートリッジ保持部材に対する移動に抗して、特に、軸方向の移動に抗して、カートリッジを固定するように、ばねワッシャーに負荷をかけること。
【0030】
上記目的のために、ばねワッシャーは、薬物送達デバイスのカートリッジ保持部材中に薬物を含有するカートリッジを、カートリッジ保持部材に対する移動に抗して、好ましくは、軸方向の移動に抗して固定するために使用される。
【0031】
他の特徴は、添付図面と関連付けて考慮されたとき、以下の詳細な記述から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施態様に記載の薬物送達デバイスの簡略化された断面側面図を模式的に示す。
図2】実施態様に記載の薬物送達デバイスの展開斜視図を模式的に示す。
図3】実施態様に記載の薬物送達デバイスの一部の詳細な断面側面図を模式的に示す。
図4】実施態様に記載の薬物送達デバイスの一部の詳細な断面側面図を模式的に示す。
図5】実施態様に記載のばねワッシャーの側面図を模式的に示す。
図6】実施態様に記載の更なるワッシャーの側面図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1において、液体薬物用の注射器である薬物送達デバイス5の実施態様が示されている。薬物送達デバイスは複数の、好ましくは、使用者が設定できる薬物の用量を送達するために構成され得る。薬物送達デバイスはペン型デバイスであり得る。薬物送達デバイス5は、ハウジング10を含み、ここで医薬製品(薬物)を含有するカートリッジ15が位置している。ニードルユニット20は薬物送達デバイス5の遠位端25に位置している。ニードルユニット20はハウジングに対する動きに抗して固定され得る。ニードルユニット20を通して医薬製品を患者内に注射することができる。
【0034】
なお、図1において示される通り、薬物送達デバイス5の記述は一例に過ぎない。
【0035】
図1において示される通りの薬物送達デバイスは更に、ハウジング10に(開放可能なように)固定されているカートリッジ保持部材45を含む。カートリッジ保持部材45は、薬物送達デバイス5内にカートリッジ15を保持するように適合されている。カートリッジ保持部材45は、カートリッジ15が、それが空になってしまった後、使用者によって交換することができるように構成することができる。
【0036】
医薬製品の送達は、カートリッジ15に対して遠位方向内に動かすことができるピストン棒30などを用いて実行することができる。カートリッジ中に保持され、そしてカートリッジを近位端側上で密閉する(はっきりとは示されていない)ピストンは、カートリッジに対して遠位方向にピストン棒によって動かされ得る。動いているピストンのせいで、医薬製品の用量がカートリッジから送達され得る。ピストン棒30は(リードねじ)ナット35にねじで係合され得る。デバイスの操作中に、ナット35は、ナット35と係合し得るロックナット36(図2及び4を参照)によってハウジング10に対する回転運動に抗して固定される。従って、ピストン棒は、遠位方向に駆動されるときに、ハウジング10に対して回転及び移動し得る。ロックナット36及びナット35は、カートリッジ保持部材45がハウジング10に固定される間、係合状態に把握され得る。カートリッジ保持部材がハウジング10から開放されるとき、ナット35及びロックナット36はそれによって係合を解き得て、ハウジング10に対してナット35の回転が可能になる。例えば、新しくかつ未使用のカートリッジをハウジングに固定する前に、デバイスをリセットするために、次いでピストン棒30はナット35及びロックナット36の係合のせいで、そのような動きが防がれることなく、その最初の位置内にねじ戻すことができる。こうして、デバイスのリセットが容易にされる。
【0037】
更に、ピストン棒30は(はっきりとは示されていない)駆動機構、例えば、機械的な又は電気的な駆動機構に、そして(はっきりとは示されていない)用量設定機構に都合よく結合されている。駆動機構及び用量設定機構は、医薬製品の用量を設定するために、そして薬物送達デバイスの投薬ボタン40が押されるとき、設定された用量がカートリッジから投薬されるように、ピストンを遠位方向に動かすために構築されている。
【0038】
カートリッジ15がカートリッジ保持部材45内に挿入され、そしてカートリッジ保持部材45がハウジングに固定されると、遠位方向へのカートリッジ15の動きがカートリッジ保持部材45によって防がれる。カートリッジ15はカートリッジ保持部材と遠位で隣接し得る。
【0039】
カートリッジ15の近位側上に、ばねワッシャー50が、ハウジング10内に配置されている。ばねワッシャー50は遠位方向にカートリッジ15上に力を働かせ、そしてカートリッジ保持部材45対する動きに抗して、及びハウジング10に対する動きに抗してカートリッジ15を固定する。負荷をかけられたばねワッシャーは、カートリッジ15の遠位端側上に永久隣接してカートリッジ及びカートリッジ保持部材を把握し得る。図1において示される通り、ばねワッシャー50は、ハウジング10の近位端65に面するカートリッジの側上でカートリッジ15に隣接して配置されている。更にばねワッシャー50は、ピストン棒30がばねワッシャー50を通過すること、及びカートリッジ15からの医薬製品の送達を駆動することを可能にするように、開口部55を含む。
【0040】
カートリッジ15上に力を働かせることを可能にするために、ばねワッシャー50はハウジング10に固定されている。薬物送達デバイス5の容易な製造を可能にするために、(ねじが付けられた)スリーブ部材60を供することができる。ばねワッシャーは、スリーブ部材60に、例えば、ばねワッシャーの固定エレメント52によって固定され得る。固定エレメント52は軸方向に伸び得る。ばねワッシャーはスリーブ部材の外表面上でスリーブ部材60に固定され得る。スリーブ部材はハウジングに固定されている。ばねワッシャー50は、例えばスナップフィットによってスリーブ部材60に固定され得る。スリーブ部材60及び/又はばねワッシャー50は、ハウジングに対する回転及び/又は軸方向の動きに抗して都合よく固定される。勿論、ばねワッシャーに負荷をかけるための、又はばねワッシャーを緩める最中のばねワッシャー50の軸方向の動きは許容される。しかしながら、ばねワッシャー50がハウジング10に固定される領域、例えば固定エレメント52は、好ましくは、薬物送達デバイスの操作中に回転せず及び/又は軸方向に動かない。
【0041】
ばねワッシャー50には一つの又は複数の位置合わせエレメントが備わり得る。各々の位置合わせエレメントは、ばねワッシャー50をハウジング10に対する定められた方向に、好ましくは、所定の角度の方向に保つために働き得る。例えば、固定エレメント52は位置合わせエレメントとして働き得る。各置合わせエレメントは、ハウジングと、又はばねワッシャー50を所定の方向に保つために軸方向に及び回転方向にハウジングにロックされたエレメントと協調し得る。
【0042】
位置合わせエレメント/固定エレメントの各々は軸方向に向けられ得る。位置合わせエレメント/固定エレメントの各々は、ばねワッシャーの外周から伸び得る。二つの位置合わせエレメント/固定エレメントは反対方向に配列され得る。例えば、位置合わせエレメント/固定エレメントは、(はっきりとは示されていない)各誘導スロット内に配置され及び/又は軸方向に誘導されて配置され得る。誘導スロットは、ハウジングに軸方向に及び/又は回転方向に固定され得る。誘導スロットは、ばねワッシャー50のハウジング10に対する軸方向の動きが制約され得るように、好ましくは遠位で及び/又は近位で、軸方向に制限され得る。スロット内で走る位置合わせエレメント/固定エレメントと協調状態にある誘導スロットは、ハウジング10に対してばねワッシャー50を回転方向にロックし得る。
【0043】
ハウジングに対して回転方向にロックされるように螺旋圧力ばねを具体化する(embodying)ことは、螺旋圧力ばねが通常、外力の影響下で、特に角度方向にかなり変形される故に、ばねワッシャーに対する場合よりも著しくより困難であろう。ばねワッシャーは、かなりの力の影響下でさえ、角度方向にその形を保ち得る。位置合わせエレメント/固定エレメントに従って供されるばねワッシャーを適用するときに、正確に整列された部品を有する薬物送達デバイスの提供が容易になる。
【0044】
カートリッジ保持部材45は、スリーブ部材60及びカートリッジ保持部材45の間に供されたねじ付き接合を介してハウジング10に固定することができる。スリーブ部材60は、好ましくはこの目的のために内ねじを備えている。
【0045】
遠位方向にカートリッジ15上に力を働かせることは、カートリッジを有するカートリッジ保持部材45が、例えば、カートリッジ保持具をスリーブ部材内にねじ込むことによってハウジング10に搭載されるときに、近位方向にばねワッシャー50に負荷をかけることによって実行することができる。そのようにして、カートリッジがばねワッシャー50に隣接して動き、そしてばねワッシャー50が近位方向にカートリッジと共に更に動かされるときに、ばねワッシャーは負荷をかけられ、そして遠位方向にカートリッジ上に力を働かせる。
【0046】
図1において描かれた実施態様の薬物送達デバイス5は、ハウジング10に対して及びカートリッジ保持部材45に対してカートリッジ15の軸方向の動きを排除する。これは、例えば、異なる長さを有するカートリッジ15が薬物送達デバイス5中で使用されるときに有利である。例えば、異なるカートリッジの間の製造許容差から生じ得る、又は異なるカートリッジタイプの性質であり得る、例えば、0.2及び2mmの間の長さの違いを、ばねワッシャーを適用することによって補正することが可能である。従って、薬物送達デバイス5の操作中に、カートリッジ保持部材45中のカートリッジ15の軸方向の動きが防がれ、そして薬物送達の正確さが改善される。
【0047】
なお、ハウジング10内のその位置に関して、ばねワッシャー50の異なる構成が、カートリッジの軸方向の動きを防ぐために使用することができる。例えば、カートリッジ保持部材45に又は直接ハウジング10に、ばねワッシャー50を固定することも可能である。
【0048】
ばねワッシャーが弾性変形の範囲内に保たれるのを確実にするために、更なるワッシャー70がばねワッシャー50の近位側上に配置することができる。更なるワッシャー70は、ディスクワッシャー、又はばねワッシャーに比べてより強い力を有する更なるばねワッシャーであってよい。
【0049】
更なるワッシャー70は、ばねワッシャー50が塑性的に変形されないようにばねワッシャー50の動きを制限する。このようにして、緩和された、つまり、負荷を外されたばねワッシャー50の幾何寸法、そして特に、そのばね強さは一定に留まる。図1において示される通り、更なるワッシャーはディスク状に形づくることができる。しかしながら、更なるワッシャーが、ばねワッシャー50の曲率に対応する曲率を有することも考えられる。
【0050】
ばねワッシャーは金属を含み得て又は金属で作られ得る。各々のばねワッシャーは、例えば、鋼材で作られ得る。ばねワッシャー50は、好ましくは、更なるばねワッシャー70のばね定数Dより小さいばね定数Dを有する。
【0051】
好ましくは、更なるワッシャー70は、ハウジング10に対する回転運動に抗して固定される。更なるワッシャーは、軸方向の動きに抗してハウジングに固定される必要はない。むしろ、ばねワッシャー50は、更なるワッシャーの遠位での動きを制限し得る。(はっきりとは示されていない)隣接エレメントは、更なるワッシャーのハウジングに対する近位での動きを制限し得る。しかしながら、更なるワッシャー70の軸方向の動きは、ばねワッシャー50が更なるワッシャー70に隣接することを、そしてばねワッシャーが塑性的に変形する前に、更なるワッシャーがハウジング10に隣接することを可能にするように、好都合に制限される。
【0052】
ここで、図1の実施態様を、図2を参照して更に説明する。図2は、部品がハウジング10内に挿入される前の側面図における薬物送達デバイス5の幾つかの部品を示す薬物送達デバイス5の展開図である。図2において、ばねワッシャー50を把持するための把持手段62を有する(ねじ付きの)スリーブ部材60が示されている。例えば、各々の把持手段62と相互作用している各々の固定エレメント52によって、ばねワッシャー50をスリーブ部材60に固定するために、ばねワッシャー50は、例えば、フック形状の二つの固定エレメント52を有する。
【0053】
更に、図2において、(リードねじ)ナット35及びロックナット36が示されている。更なるワッシャー70は、ハウジング10に対する回転方向及び/又は軸方向の動きに抗して更なるワッシャーを固定するために、固定部材72も含む。図2において示されるエレメントはハウジング10内にぴったり合う。スリーブ部材60は、例えば、ハウジング10にレーザー溶接され得る。図2から直ぐに明白なように、ばねワッシャー50は、それほど多くのスペースを必要とせずに、ハウジング10に対してそしてカートリッジ保持器内で、カートリッジ15の固定を可能にする。特に、ばねワッシャー50は、同じばね強さの螺旋コイルバネよりもはるかに多くスペースを節約できる。従って、非常にコンパクトな薬物送達デバイス5を形成することができる。
【0054】
図3を参照すると、薬物送達デバイス5の更なる実施態様が示されている。図3は、ばねワッシャー50及び更なるワッシャー70の詳細図を示す。図3において示される通り、更なるワッシャー70はディスク形状をしたワッシャーとして構成することができる。
【0055】
ここで図4を参照すると、更なる実施態様が示されている。この実施態様によると、更なるワッシャー70はばねワッシャーとしても形成される。更なるワッシャー70は、ばねワッシャー50の曲率に対応する又は類似するように、軸方向及び/又は半径方向に曲がっている。
【0056】
図5において、ばねワッシャー50の詳細図が示されている。ばねワッシャー50は、軸方向に及び/又は半径方向に曲がっており、そして固定エレメント52を含む。固定エレメント52は互いに対して反対に配置され得る。ばねワッシャーは皿型のばねワッシャーであってよい。
【0057】
ここで図6を参照すると、更なるワッシャー70がより詳細に示されている。更なるワッシャー70は、二つの反対側上に配置された固定部材72を有するディスク状ワッシャーとして供される。
【0058】
薬物送達デバイス5の製造方法は、次の工程を含む:近位端及び遠位端を有するハウジングを供すること;薬物を収容するように適合されたカートリッジを供すること;カートリッジを保持するように適合されたカートリッジ保持部材を供すること;ばねワッシャーをハウジング内に配置すること;及びカートリッジ保持部材をハウジングに固定し、そのことによってカートリッジ上で力を働かせるように、そしてカートリッジ保持部材に対する移動に抗して、特に、軸方向の移動に抗してカートリッジを固定するように、ばねワッシャーに負荷をかけること。
【0059】
他の実行例も以下の請求の範囲の範囲内にある。本明細書において具体的に述べられていない実行例を形成するために、異なる実行例のエレメントが組み合わされ得る。
【符号の説明】
【0060】
5 薬物送達デバイス
10 ハウジング
15 カートリッジ
20 ニードルユニット
25 遠位端
30 ピストン棒
35 ナット
36 ロックナット
40 投薬ボタン
45 カートリッジ保持部材
50 ばねワッシャー
52 固定エレメント
55 開口部
60 スリーブ部材
62 把持手段
65 近位端
70 更なるワッシャー
72 固定部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6