(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5777533
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】餌木
(51)【国際特許分類】
A01K 85/00 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
A01K85/00 301A
A01K85/00 C
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-18299(P2012-18299)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-153711(P2013-153711A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 幸則
【審査官】
竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−300834(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3091362(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0119090(US,A1)
【文献】
特開2007−020446(JP,A)
【文献】
特開平10−248439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 83/00−85/18;91/00−95/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
餌の形態を模した餌木であって、釣糸接続部を有する頭部側部分と釣り針を有する尾部側部分とが互いに所定の間隔を隔てて連結部材で連結されるとともに、前記頭部側部分と前記尾部側部分との間にこれらの部分よりも軟質な材料が前記連結部材を取り囲むように設けられて成り、
前記軟質な材料が少なくとも2つの別個の軟質部分として前記頭部側部分と前記尾部側部分との間に配列され、前記軟質部分のそれぞれを形成する材料の硬度が互いに異なることを特徴とする餌木。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イカ釣りで疑似餌として用いられる餌木に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣りに用いられる疑似餌としては様々な形態のものがあるが、特にイカ釣りに際しては、「餌木」と称される疑似餌を用いることが知られている。通常、餌木は、小魚や海老等に似せた胴部(本体)と、胴部の前方側の下部に突出するように取り付けられた錘と、胴部前端に設けられた釣糸接続環(アイ部とも称する)と、胴部の後端に設けられ、先端を前方に向けた釣り針とを有している。このように構成される餌木は、釣糸接続環に釣糸を取り付けて、ルアーキャスティングと同様、ポイントに投げ込んでリールで釣糸を巻く際に、釣竿を煽ることでアクションを与えると、イカは、餌木の動きに誘われて餌木に抱きつく。そして、餌木に抱きついたイカは、胴部後端に設けられた釣り針に掛かって釣り上げることが可能となる。
【0003】
ところで、このような餌木を用いたイカ釣りでは、餌木の自然な動きと、餌木に抱きついたイカが餌木を直ぐに離さないようにする工夫とが求められる。従来のルアーを含む疑似餌全体を眺めてみると、そうした疑似餌の動きや形態に様々な特徴を持たせるものが数多く提案されている。例えば、特許文献1ないし特許文献3には、疑似餌の動きに特徴を持たせるために、魚の形状を模した本体部を長手方向で2つに分割し、これらの分割された前部と後部とを揺動可能に連結するジョイントタイプのルアーが開示されている。また、疑似餌本体部の一部に軟質部材を採用して、実際の魚に近い感触等が得られるようにした疑似餌も開示されている(例えば、特許文献4および特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−154538号
【特許文献2】特開2008−182996号
【特許文献3】特開2005−143446号
【特許文献4】特開平10−248439号
【特許文献5】特開2002−136247号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したジョイントタイプのルアーでは、ルアーの前部と後部とが連結されているだけであるため、ルアーを水中で落下させている最中に前部と後部とが連結部を境として折れ曲がってしまい、ルアーを直線的に落下させることが難しい。そのため、魚の自然な水中降下アクションを再現することが難しい。また、このジョイントタイプのルアーでは、水中で静止させておくステイ時に、後部が垂れ下がってしまうという問題もある。したがって、ジョイントタイプのルアーの構成をそのままイカ釣り用の餌木において適用することは望ましくない。一方、疑似餌本体部の一部に軟質部材を採用する疑似餌にあっては、実際の魚に近い感触等が得られるものの、強度的に弱い部分を形成しているため、軟質部分でちぎれ易いという問題がある。したがって、このような構成を、ある程度の強度が求められるイカ釣り用の餌木においてそのまま適用することも望ましくない。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、イカを寄せ付ける自然な動きが得られ、抱きついたイカが直ぐに離さない形態を備える餌木を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明は、餌の形態を模した餌木であって、釣糸接続部を有する頭部側部分と釣り針を有する尾部側部分とが互いに所定の間隔を隔てて連結部材で連結されるとともに、前記頭部側部分と前記尾部側部分との間にこれらの部分よりも軟質な材料が前記連結部材を取り囲むように設けられて成
り、前記軟質な材料が少なくとも2つの別個の軟質部分として前記頭部側部分と前記尾部側部分との間に配列され、前記軟質部分のそれぞれを形成する材料の硬度が互いに異なることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、釣糸接続部を有する頭部側部分と釣り針を有する尾部側部分とが単に連結部材で連結されているだけでなく、連結部材を取り囲むように軟質材料が頭部側部分と尾部側部分との間に設けられるため、餌木を水中で落下させている最中に頭部側部分と尾部側部分とが連結部を境として折れ曲がってしまうことがなく、直線的に落下させることが可能となり、また、餌木を水中で静止させておくステイ時に、尾部側部分が垂れ下がってしまうこともない。すなわち、軟質材料によるソフトなジョイントにより、イカを寄せ付ける自然な動き及び静止態様が得られる。また、イカが抱きつく主要部に軟質材料を採用しているためイカの抱きつきが良く、抱きついたイカが直ぐに離れない(実際の魚に近い感触が得られる)。また、軟質材料中に連結部材が埋め込まれる形態となっているため、軟質材料だけの場合と比べて強度が高く、イカ釣りに適する。なお、本構成では、相対的に硬質な頭部側部分および尾部側部分と相対的に軟質な中間部分との少なくとも3つの構成部分から餌木本体が構成されてさえいれば、これらの長手方向の長さ寸法比率は任意であり、使用される材料等に応じて適宜設定されるべきものである。
【0009】
また、上記構成
において、前記軟質な材料は、少なくとも2つの別個の
軟質部分として前記頭部側部分と前記尾部側部分との間に配列され
、前記軟質部分のそれぞれを形成する材料の硬度が互いに異なるため、例えば、後側の軟質部分の硬度を前側の軟質部分の硬度よりも柔らかくすることにより、尾部側が屈曲し易くなり、より魚の動きに似せることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、釣糸接続部を有する頭部側部分と釣り針を有する尾部側部分とが単に連結部材で連結されているだけでなく、連結部材を取り囲むように軟質材料が頭部側部分と尾部側部分との間に設けられるため、イカを寄せ付ける自然な動きが得られ、抱きついたイカが直ぐに離さない形態を備える餌木を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る餌木の全体側面図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態に係る餌木の全体側面図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態に係る組立可能な餌木の全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の餌木の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る餌木1の全体側面図を示している。図示のように、本実施形態に係る餌木1は、イカ釣りに適した構造を成しており、前後方向に長く小魚や海老等の生き物(餌)の形態を模して構成された浮力を有する餌木本体2から成る。餌木本体2の前端部(先端部)下面には錘4が設けられている。また、餌木本体2の前端(先端)には、釣糸が連結できるように、金属等によって形成されたリング状のアイ部(釣糸接続部)3が設けられており、後端には、先端が前方を向いた複数の釣り針5が設けられている。また、餌木本体2には、必要に応じて目6やひれ部材等が設けられる。
【0013】
本実施形態において、餌木本体2は、アイ部3および錘4を有する硬質な頭部側部分10と、釣り針5を有する硬質な尾部側部分15と、頭部側部分10と尾部側部分15との間に設けられる軟質部分25とから成る。頭部側部分10および尾部側部分15は互いに所定の間隔を隔てて連結部材20で連結されている。この場合、連結部材20は、金属製ワイヤや形状記憶ワイヤなどの線材により形成されており、その一端が頭部側部分10の連結部10aに結合されるとともに、その他端が尾部側部分15の連結部15aに結合される。また、軟質部分25は連結部材20を取り囲むように頭部側部分10と尾部側部分15との間に介在される。
【0014】
このような構成において、頭部側部分10および尾部側部分15を形成する硬質材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエチレンまたはポリウレタンの発泡材などが挙げられる。また、軟質部分25を形成する軟質材料としては、例えば、ポリウレタン、エラストマー、塩化ビニル、シリコン、剛性ゴムなど、前記硬質材料よりも柔軟な材料が挙げられる。また、頭部側部分10と尾部側部分15との間に連結部材20を取り囲むように軟質部分25を設ける方法としては、例えば、連結部材20によって連結された頭部側部分10および尾部側部分15を金型内に配置して、この金型内に軟質材料を流し込むことにより、軟質材料が頭部側部分10と尾部側部分15とを接続するように軟質材料を頭部側部分10と尾部側部分15との間に充填する方法が考えられる。なお、本実施形態において、軟質部分25と頭部側部分10および尾部側部分15との間の接合部には段差がなく、軟質部分25の外面と頭部側部分10および尾部側部分15の外面とは略面一である。そのため(段差がないため)、水の抵抗を受けることがなく、前記接合部が水中での餌木1の動きに影響を及ぼすことはない。
【0015】
以上のように、本実施形態の餌木1は、釣糸接続部としてのアイ部3を有する頭部側部分10と釣り針5を有する尾部側部分15とが単に連結部材20で連結されているだけでなく、連結部材20を取り囲むように軟質材料から成る軟質部分25が頭部側部分10と尾部側部分15との間に設けられるため、餌木1を水中で落下させている最中に頭部側部分10と尾部側部分15とが連結部を境として折れ曲がってしまうことがなく、直線的に落下させることが可能となり、また、餌木1を水中で静止させておくステイ時に、尾部側部分15が垂れ下がってしまうこともない。すなわち、軟質部分25の軟質材料によるソフトなジョイントによって、イカを寄せ付ける自然な動き及び静止態様が得られる。また、イカが抱きつく主要部に軟質材料を採用しているためイカの抱きつきが良く、抱きついたイカが直ぐに離れない(実際の魚に近い感触が得られる)。また、軟質材料(軟質部分25)中に連結部材20が埋め込まれる形態となっているため、軟質材料だけの場合と比べて強度が高く、したがって、軟質部分25でちぎれることが防止され、イカ釣りに適する。
【0016】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る餌木1Aの全体側面図を示している。図示のように、本実施形態の餌木1Aは、頭部側部分10と尾部側部分15とを連結する連結部材が2つの連結部材20A,20Bから成る。これらの連結部材20A,20Bは、それぞれのリング状の結合部19,19を介して互いに連結される。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同一であり、したがって、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0017】
ここで、頭部側部分10と尾部側部分15とを連結する連結部材は、第1の実施形態における線材や第2の実施形態における2部品構造に限らない。例えば、
図3の(a)に示されるような板状の連結部材20Cや、
図3の(b)に示されるような螺旋状の連結部材20Dを使用することもできる。いずれの場合も、連結部材は金属製であることが好ましい。
【0018】
図4および
図5は本発明の第3の実施形態を示している。
図4に示されるように、本実施形態に係る餌木1Bは、各構成部品を組み立てることによって形成される。具体的には、餌木本体2は、アイ部3および錘4を有する硬質な頭部側部分10と、釣り針5を有する尾部側部分15と、頭部側部分10と尾部側部分15との間で長手方向(前後方向)に配列される2つの別個の軟質部分25A,25Bとから成る。第1の軟質部分25Aを形成する材料は、第2の軟質部分25Bを形成する材料と同じであってもよく或いは異なっていてもよい。第1および第2の軟質部分25A,25Bを形成する材料が互いに異なる場合には、例えば第1の軟質部分25Aを形成する材料の硬度と第2の軟質部分25Bを形成する材料の硬度とを異ならせてもよい。その場合、後側の第2の軟質部分25Bの硬度を前側の第1の軟質部分25Aの硬度よりも柔らかくすることにより、尾部側が屈曲し易くなり、より魚の動きに似せることができる。また、本実施形態では、軟質部分の数が3つ以上であっても構わない。また、軟質部分の配列方向は、長手方向に限らず、幅方向、高さ方向であってもよい。また、頭部側部分10と尾部側部分15とを連結する連結部材20は、第1の実施形態と同様に線材から成り、頭部側部分10および尾部側部分15のネジ穴10b,15b(
図5参照)に螺合されるネジ30によって頭部側部分10および尾部側部分15に取り付けられる。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同一である。
【0019】
このような餌木1Bを組み立てる場合には、
図5に示されるように、例えば、連結部材20の一端をネジ30により頭部側部分10に連結した状態で、連結部材20を2つの別個の軟質部分25A,25Bのそれぞれの貫通穴27,29に通した後、結部材20の他端をネジ30により尾部側部分15に連結すればよい。このような形態であっても、第1の実施形態と同様の構成を備えるため、第1の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0020】
1,1A,1B 餌木
3 アイ部(釣糸接続部)
5 釣り針
10 頭部側部分
15 尾部側部分
20,20A,20B,20C,20D 連結部材
25,25A,25B 軟質部分(軟質な材料)